説明

植え込み可能な器具用の被覆及びその形成方法

被覆の形成方法を含めて、ステントのような植え込み可能な器具又は腔内人工補助物のための被覆を提供する。有効成分又は有効成分の組み合わせを送達するのに該被覆を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントのような植え込み可能な医療器具又は腔内人工補助物の上の被覆及び被覆を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮経管冠動脈形成術(PTCA)は心疾患を治療するための処置である。バルーン部を有するカテーテル組立品が上腕又は大腿動脈から経皮的に患者の循環系に導入される。カテーテル組立品は、バルーン部が閉塞した病変部の位置に来るまで、冠状血管系内を推進する。病変部の位置に来るとすぐ、バルーンは所定の大きさまで膨張され病変部のアテローム斑に対して半径方向に押圧し血管壁を再構築する。その後バルーンはより小さい外形に縮小して、カテーテルが患者の血管系から除去できるようにする。
【0003】
上記処置に関する問題としては、内膜の弁の形成や動脈内壁の破れが挙げられ、これらはバルーンが縮小した後に管を虚脱及び閉塞させうる。さらに、動脈の血栓形成や再狭窄が処置後数ヶ月以上経って発症するかもしれず、再度の血管形成処置や外科的なバイパス手術が必要になるかもしれない。動脈内壁の虚脱による動脈の部分的あるいは全体的閉塞を緩和し、血栓形成や再狭窄の進行の可能性を減少させるために、ステントを管腔内に植え込み、血管の開通性を維持する。
【0004】
ステントは機械的な処置のためだけに使われるのではなく、生物療法を提供するための運搬手段としても使われる。医学的な発明として、ステントは足場として働き、物理的に開いた状態を保ち、望むならば、通路の壁を拡張するために機能する。典型的には、ステントは、カテーテルを通じて小さな管腔中に挿入できその後所望の位置に到れば直ちにより大きな直径まで拡張することが出来るように、圧縮することが可能である。ステントによる機械的干渉は、バルーン血管形成術に比べ再狭窄率を減少させるが、依然再狭窄は20〜40%の範囲の率を伴う重大な臨床上の問題である。再狭窄がステントされた区域で発生した場合、バルーン単独で治療した病変と比較して臨床上の選択肢がより限定されるので、その治療は挑戦的なものとなりえる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生物療法はステントに薬を添加することによってなしえる。薬を添加されたステントは患部における治療用物質の局所投与に供する。治療箇所に有効な濃度を供給するために、そのような薬物の全身投与がしばしば反対の、又は有害な副作用を患者に引き起こす。全身投与に比べ、全体でより低いレベルの薬物が投与され、しかし特定の個所に集中するという点で、局所的な送達が治療の好ましい方法である。局所的な送達はこのように副作用はほとんど生じず、より良好な結果を達成する。本発明の実施の態様は、薬物の局所送達の為のステント被覆を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の側面の1つに従って、植え込み可能な器具用の被覆の形成方法が提供される。該方法は、植え込み可能な器具の表面の少なくとも一部にポリマーを含む、Xの重量測定値を有する下地層を形成すること、及び下地層の少なくとも選択された部分にポリマー及び有効成分を含む、Yの重量測定値を有する貯蔵層を形成することを包含し、その際、X/Yは0.25以上である。実施の態様の1つでは、被覆は30%以上の薬物装填を有する。他の実施の態様では、該方法は、貯蔵層の形成に先立って、下地層の表面に凸凹を形成することをさらに含む。さらに別の実施の態様では、下地層は、ある程度の多孔性を有する少なくとも領域を包含する。
【0007】
他の側面では、植え込み可能な器具用の被覆の形成方法が提供される。該方法は、植え込み可能な器具の表面の少なくとも一部にポリマーを含む、厚さXを有する下地層を形成すること、及び下地層の少なくとも選択された部分にポリマー及び有効成分を含む、厚さYを有する貯蔵層を形成することを包含し、その際、X/Yは0.25以上である。実施の態様の1つでは、厚さXは約0.5ミクロン〜約3ミクロンであり、厚さYは約1ミクロン〜約10ミクロンである。
【0008】
本発明のさらに別の側面では、有効成分の送達用の被覆を含む植え込み可能な器具が提供される。該被覆は、植え込み可能な器具の表面の少なくとも一部にポリマーを含む、厚さXを有する下地領域、及び下地層の少なくとも選択された部分にポリマー及び有効成分を含む、厚さYを有する貯蔵領域を包含し、その際、X/Yは0.25以上である。厚さXは、有効成分が貯蔵領域から下地領域に移動する前に、下地領域の外表面から植え込み可能な器具の表面まで測定される。実施の態様の1つでは、該被覆は、患者の体内に器具を挿入した後、有効成分が被覆から放出される速度を抑えるために、貯蔵領域の少なくとも選択された部分に位置するバリア領域をさらに包含する。他の実施の態様では、下地領域は、下地領域と貯蔵領域との界面から下地に延びる多孔性マトリクスを包含する。
【0009】
他の側面では、有効成分送達用の被覆を含むステントが提供され、その際、被覆は、ポリマーを含む下地領域並びにポリマー及び有効成分を含む貯蔵領域を包含し、ステントを拡張する際、被覆に有意な亀裂を生じずに貯蔵領域において30%の薬物装填ができるように、下地領域の厚さ又は重量が十分に大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
議論し易くするために、ステント用の被覆を参照して、本明細書で詳説される方法及び装置を説明する。しかしながら、本発明の実施の態様に従って被覆される植え込み可能な器具は、ヒト又は動物の患者に植え込むことができるいかなる好適な医用基体であってもよい。そのような植え込み可能な器具には、自己拡張可能なステント、バルーン拡張可能なステント、ステントグラフト、グラフト(たとえば、大動脈グラフト)、人工弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカー電極、及び心内膜リード(例えば、ガイダント社より入手可能なファインライン及びエンドタック)が挙げられる。器具の基礎構造は事実上どのようなデザインでも良い。器具は、コバルトクロム合金(エルギロイ)、ステンレス鋼(316L)、「MP35N」、「MP20N」、エラスチナイト(ニチノール)、タンタル、ニッケルタンタル合金、白金イリジウム合金、金、マグネシウム、又はこれらの組み合わせのような、これらに限定されるものではないが、金属素材あるいは合金で構成することが可能である。MP35N」及び「MP20N」は、ペンシルベニア州ジェンキンタウンのスタンダードプレススチール社から入手可能なコバルト、ニッケル、クロムおよびモリブデンの合金の商標である。「MP35N」はコバルト35%、ニッケル35%、クロム20%及びモリブデン10%からなる。「MP20N」はコバルト50%、ニッケル20%、クロム20%及びモリブデン10%からなる。生分解性又は生体安定性のポリマーから成る器具も本発明の実施の態様と共に使用すればよい。
【0011】
被覆
図1Aを参照して、表面22、たとえば、ステンレス鋼のような金属表面を有するステント20の本体を説明する。被覆24を表面22の上に配置する。被覆24は有効成分を含有する貯蔵領域26を包含する。実質的に有効成分を含まない下地領域28は貯蔵領域26の少なくとも一部の下に配置される。図1Bで説明されるように、被覆24はまた実質的に有効成分を含まないバリア領域30を包含することができる。図は縮尺比に従って描いているわけではなく、様々な領域や層は、説明の目的で大きく又は小さく強調されている。
【0012】
本発明の実施の態様の1つでは、下地領域と貯蔵領域との界面が、下地領域の有効成分に対する透過性を高めるように改変されている。幾つかの方法の1つを用いて、界面を改変することができる。これらの方法には、以下にさらに十分に記載されるように、たとえば、下地領域のポリマーを貯蔵領域のポリマーと部分的に混合すること、粗い領域を形成することによって下地層の表面を改変すること、又は、下地層の表面に多孔性のマトリクスを形成することが挙げられる。
【0013】
共通の溶媒の使用を介して被覆過程の間で、下地領域のポリマーを貯蔵領域のポリマーと部分的に混合することによって下地領域と貯蔵領域との界面を改変することができる。たとえば、溶媒に溶解されたポリマーを有する下地被覆組成物を塗布することによりステント20の上に下地領域28を形成することができる。次いで、ステント20を焼成し、組成物中の溶媒を実質的に除き、被覆を形成することができる。その後、ポリマー、溶媒及びその中に分散させた有効成分を有するもう1つの組成物を塗布する。有効成分組成物中の溶媒が下地層のポリマーを溶解することができれば、下地領域のポリマーと貯蔵領域のポリマーは混ざる又は混合する。この混合により有効成分は下地層28に吸収される又は流れる。
【0014】
他の実施の態様では、凸凹又は粗い領域が下地層の表面に形成されて下地層の透過性を高める。凸凹によって下地領域は物理的に貯蔵領域を捉えることができる。さらに、凸凹は毛管作用により、有効成分の貯蔵領域から下地領域への移動を促進する。有効成分は被覆のさらに深い部分に移動するので、被覆器具を患者の体内に挿入した場合、被覆からの有効成分の拡散速度は低下する。その結果、凸凹は有効成分の停留時間の増大を促進し、それによって有効成分の被覆からの「噴出現象」を防ぐ。「噴出現象」は、器具を生体管腔に挿入した場合の高分子被覆からの有効成分の突然の放出を言う。
【0015】
下地領域は、下地領域と貯蔵領域との界面から下地領域に延びる多孔性マトリクスを包含することができる。多孔性マトリクスは、下地領域に部分的に延びることができ、又は、植え込み可能な器具の表面までの全経路に延びることができる。有効成分は、毛管作用により、貯蔵領域から下地領域に移動することができる。
【0016】
本発明の他の実施の態様では、下地領域の厚さは、貯蔵領域の厚さに比べて大きい。下地領域が厚いほど、有効成分の被覆からの拡散速度を下げることができる。さらに、下地領域を厚くすることによって、下地領域は、器具の表面と貯蔵領域との間でさらに効果的な結着層として作用する。たとえば、下地領域が厚いほど、実施例37〜39に示すように、ステントが拡張する際、ステント被覆での亀裂の形成を減らす又は防ぐ。通常、高分子マトリクスにおける有効成分の存在は、器具の表面に効果的に付着するというマトリクスの能力を妨害する。有効成分の量的増大は、付着の有効性を低下させる。被覆における、たとえば、10〜40重量%の高い薬物装填は、器具の表面における被覆の保持を有意に妨げる。「薬物装填」は、有効成分のポリマーに対する重量比率を意味する。貯蔵領域26に比べて下地領域28の厚さを増やすことによって、器具の送達中、及び適用可能であれば、器具の拡張中、器具に効果的に含有されるべき貯蔵領域26の能力を妥協することなく、下地領域28は、貯蔵領域26中の有効成分の量を増やすことができる。たとえば、実施例37で実証するように、本発明の被覆は、薬物装填が比較的高い場合、優れた結果を有する。特に、本発明の被覆の機械的整合性は、被覆における薬物装填が比較的高くてもステントの拡張に耐えることができる(すなわち、被覆は有意に剥がれたり、割れたりしない)。本発明の実施の態様の1つでは、30%以上の薬物装填を達成することができる。
【0017】
例示の目的で、図1Bを参照して、被覆24用の貯蔵領域26は、約0.5ミクロン〜約10ミクロンの厚さT1を有することができる。下地領域28は、厚さT2を有することができ、その例は、約0.1〜約10ミクロン、さらに狭くは約0.5〜約5ミクロンの範囲であることができる。貯蔵領域の厚さT1は、有効成分が貯蔵領域から下地領域に移動する前に貯蔵領域の外表面から下地領域までで測定される。同様に、下地領域の厚さT2は、有効成分が貯蔵領域から下地領域に移動する前に下地領域の外表面からステントの表面までで測定される。本発明の実施の態様では、T2/T1は0.25以上である。他の実施の態様では、T2/T1は0.33以上である。特定の厚さT1及びT2は、ステント20が採用される処置の種類及び送達されるように所望される有効成分の量にある程度基づく。
【0018】
図1Bを参照して、厚さT3は、たとえば、放出速度又は期間、及びステント20が使用される処置のような、しかし、これらに限定されないパラメータに依存するとして、拡散バリア領域30は、任意の好適な厚さT3を有することができる。拡散バリア領域30は、約0.1〜約10ミクロン、さらに狭くは約0.25〜約2ミクロンの厚さT3を有することができる。さらに、図1Cを参照して、バリア層30は、粒子32を含有して被覆からの有効成分の放出速度を抑えることができる。粒子が採用されれば、滑らかな外表面のために、粒子のサイズは、拡散バリア領域30の厚さT3の10%を超えるべきではない。さらに、粒子容積分画Xpは約0.74を超えるべきではない。詰込密度又は粒子容積分画Xpは、以下の方程式で定義することができる:
p=Vparticles/(Vparticles+Vpolymer) (式中、Vは容積)
【0019】
被覆に可変の有効成分放出パラメータを設けるために、高分子被覆の各層は、様々な特性を持った様々な区分を有することができる。図1Dに説明するように、たとえば、貯蔵領域26は、第1及び第2の貯蔵区分26A及び26Bを包含することができ、それぞれ、異なった有効成分、たとえば、それぞれ、アクチノマイシンD及びタキソールを含有することができる。従って、被覆24は、持続する送達のために、少なくとも2つの異なって有効成分の組み合わせを運ぶことができる。たとえば、第2の区分26Bの上に下地領域28の区域を覆い、第1の有効成分を含有する第1の組成物を塗布して第1の区分26Aを形成することにより、第1及び第2の区分26A及び26Bを配置することができる。次いで、第1の区分26Aを覆うことができ、第2の有効成分を含有する第2の組成物を塗布して第2の区分26Bを形成することができる。この手順に追随して異なった有効成分を含有する好適な数の区分を形成することができる。
【0020】
図1Dに説明されるように、バリア領域30は、貯蔵領域26A及び26B上に形成することができる。図1Eを参照して、バリア領域30も、第1の有効成分、たとえば、アクチノマイシンDを含有する第1の貯蔵区分26Aの上に配置される第1のバリア区分30Aを包含することができる。第2の有効成分、たとえば、タキソールを含有する第2の貯蔵区分の上に、第2のバリア区分30Bを形成することができる。第1のバリア区分30Aは、粒子を含まず、第2のバリア区分30Bは粒子32を含有する。その結果、被覆24は、貯蔵区分26A及び26Bに含有される各有効成分のために2つの異なった放出パラメータを抱く。
【0021】
界面適合性を有する異なった高分子物質を用いて、被覆の個々の、別個の下地、貯蔵のための層、及び拡散バリア成分を形成することができる。図2Aを参照して、ステント20の表面22に形成された、第1の高分子物質から成る下地領域36を有する被覆34が提供される。第2の高分子物質から成る貯蔵領域38が下地領域36の選択された区域に配置される。第3の高分子物質から成るバリア領域40を貯蔵領域38の上に配置することができる。界面適合性を有する様々な高分子物質の例には、たとえば、エチレンビニルアセテートの貯蔵層を持つEVAL下地;EVAL貯蔵層を持つポリ(n−ブチルメタクリレート)下地;EVAL下地とポリカプロラクトンの貯蔵層;及びEVAL貯蔵層を持つ、ポリアミン硬化剤で硬化したビスフェノールAのジグリシジルエーテルから成るエポキシ下地が挙げられる。そのほかの組み合わせは当業者の1人によって引き出すことができる。
【0022】
当業者の1人は、種々の被覆の組み合わせを提供できることを十分理解することができる。たとえば、図2Bで説明されるように、被覆34は、第1の高分子物質から成る下地領域36を含有する。第2の高分子物質から成る貯蔵領域38は、下地領域36の上に形成される。貯蔵領域は、38A及び38Bで示される第1及び第2の区分を含有する。第1及び第2の区分38A及び38Bはそれぞれ、異なった有効成分を含有する。第3の高分子物質から成るバリア領域40を、貯蔵領域38の上に配置することができる。バリア領域40は、貯蔵領域38の第1の区分38Aの上に配置された第1の区分40Aを包含する。バリア領域40は、貯蔵領域38の第2の区分38Bの上に配置された第2の区分40Bをさらに包含する。第2の区分40Bは、粒子32を包含することができ、及び/又は第4の高分子物質で作り上げられさまざまな異なる放出パラメータを創出する。
【0023】
下地層用の組成物
下地層用組成物の実施の態様は、成分すべてを配合し、次いで混合する従来の方法で調製される。さらに詳しくは所定の量のポリマー又はプレポリマーを所定の量の溶媒又は溶媒の組み合わせに加える。常圧及び無水雰囲気下で混合物を調製することができる。必要に応じてプレポリマーの硬化又は架橋を開始させるために、遊離のラジカル又はUV開始剤を組成物に加えることができる。加熱、攪拌及び/又は混合を採用して、ポリマーの溶媒への溶解を達成することができる。
【0024】
「ポリマー」、「ポリ」及び「高分子の」は、重合反応の生成物である化合物として定義され、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどが含まれ、そのランダム、交互、ブロック及びグラフトの変形物が含まれる。ポリマーは、植え込み可能な器具の表面、たとえば、ステントの金属表面への高い付着能を有するべきである。316Lのようなステンレス鋼は、ステント製造に汎用される材料である。ステンレス鋼は、ステントを腐食耐性にし、大部分、ステントに生体適合性特性を付与する酸化クロム表面層を包含する。酸化クロム層は、酸化物、アニオン基及び極性であるヒドロキシル部分を提示する。その結果、極性置換基及びカチオン基を伴った高分子物質が表面に付着することができる。好適な高分子物質の代表例には、ポリイソシアネート類、不飽和ポリマー、アミン高含量のポリマー、アクリレート類、高含量の水素結合基を持つポリマー、シランカップリング剤、チタン酸塩及びジルコン酸塩が挙げられる。
【0025】
ポリイソシアネート類の代表例には、トリイソシアヌレート、ヘキサメチレンジイソシアネート系アルファティックポリイソシアヌレート樹脂(alphatic polyisocyanate resins based on hexamethylene diisocyanate)、ジフェニルメタンジイソシアネート系芳香族ポリイソシアネートプレポリマー、ジフェニルメタンイソシアネート系ポリイソシアネートポリエーテルポリウレタン、トルエンジイソシアネート系高分子イソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート及びポリエステルポリウレタンが挙げられる。
【0026】
不飽和ポリマーの代表例には、ポリエステルジアクリレート、ポリカプロラクトンジアクリレート、ポリエステルジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、少なくとも2つのアクリレート基を持つポリアクリレート、ポリアクリレート化ポリウレタン及びトリアクリレートが挙げられる。不飽和プレポリマーを用いて、熱又はUVによる硬化又は架橋の工程のために遊離のラジカル又はUVの開始剤を組成物に加えることができる。熱硬化については、遊離のラジカル開始剤の例は、ベンゾイルペルオキシド;ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジクミルペルオキシド;2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン;過硫酸アンモニウム及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリルである。当業者の1人によって理解されるように、各開始剤は分解を誘導するために異なった温度を必要とする。UV硬化については、開始剤の例には、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾフェノンが挙げられる。250〜350nmの波長を含有する中間圧のHg電球で照明することによりこれらの開始剤を活性化することができる。
【0027】
アミン高含量のポリマーの代表例には、ポリエチレンアミン、ポリアリルアミン及びポリリジンが挙げられる。
【0028】
アクリレート類の代表例には、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸及びシアノアクリレートのコポリマーが挙げられる。
【0029】
水素結合基高含量のポリマーの代表例には、ポリエチレン−コ−ポリビニルアルコール、アミン架橋剤によるビスフェノールAのジグリシジルエーテルに基づいたエポキシポリマー、ポリオール及びルイス酸触媒で硬化したエポキシポリマー、エポキシフェノール類、エポキシポリスルフィド、エチレンビニルアセテート、メラミンホルムアルデヒド、ポリビニルアルコール−コ−ビニルアセテートポリマー、レゾルシノール−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、アルキドポリエステル樹脂、アクリル酸修飾エチレンビニルアセテートポリマー、メタクリル酸エチレンビニルアセテートポリマー、アクリル酸修飾エチレンアクリレートポリマー、メタクリル酸修飾エチレンアクリレートポリマー、無水物修飾エチレンアクリレートポリマー、及び無水物修飾エチレンビニルアセテートポリマーが挙げられる。
【0030】
シランカップリング剤の代表例には、3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び(3−グリジドキシプロピル)メチルジエトキシシランが挙げられる。
【0031】
チタン酸塩の代表例には、テトラ−イソ−プロピルチタネート及びテトラ−n−ブチルチタネートが挙げられる。
【0032】
ジルコン酸塩の代表例には、n−プロピルジルコネート及びn−ブチルジルコネートが挙げられる。
【0033】
生体適合性ポリマーもポリマー材料に使用することができる。生体適合性ポリマーの例には、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(L−乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−バレレート)、ポリジオキサノン、ポリオルソエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、コポリ(エーテル−エステル)(たとえば、PEO/PLA)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、並びに、たとえば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン及びヒアルロン酸のような生体分子が挙げられる。また、ポリウレタン、シリコーン及びポリエステルを使用すればよく、ステント上で溶解し、硬化し、重合することができれば、そのほかのポリマーを使用してよく、そのほかのポリマーは、ポリオレフィン、ポリイソブチレン及びエチレン−αオレフィンコポリマー;アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリ塩化ビニルのようなビニルハロゲン化合物ポリマー及びコポリマー;ポリビニルメチルエーテルのようなポリビニルエーテル;ポリ塩化ビニリデン及びポリフッ化ビニリデンのようなポリビニリデンハロゲン化合物;ポリアクリロニトリル;ポリビニルケトン;ポリスチレンのようなポリビニル芳香物;ポリ酢酸ビニルのようなポリビニルエステル;ビニルモノマーのそのほか及びオレフィンのそれぞれとのコポリマー、たとえば、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂及びエチレン−ビニルアセテートコポリマー;ナイロン66及びポリカプロラクタムのようなポリアミド;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂;レーヨン;レーヨントリアセテート;セルロース、セルロースアセテート、セルロースブチレート;セルロースアセテートブチレート;セロファン;硝酸セルロース;プロピオン酸セルロース;セルロースエーテル及びカルボキシメチルセルロースである。
【0034】
下地層用のポリマーの極めて好適な選択の代表例は、ポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)である。エチレンビニルアルコールも機能的に極めて好適なポリマーの選択である。一般名EVOH又は商標EVALで一般に知られているエチレンビニルアルコールコポリマーは、エチレンモノマー及びビニルアルコールモノマー双方の残基を含むコポリマーを言う。当業者の1人は、エチレンビニルアルコールコポリマーが、少量の追加のモノマー、たとえば、5モル%未満のスチレン、プロピレン又はそのほかの好適なモノマーを含めるようにターポリマーであってもよいことを理解する。有用な実施の態様では、該コポリマーは、約27%〜約47%のモル%のエチレンを含む。通常、44モル%のエチレンが好適である。エチレンビニルアルコールコポリマーは、ウィスコンシン州、ミルウォーキーのアルドリッチ化学会社又はイリノイ州ライルのEVOHカンパニーオブアメリカから市販されており、または、当業者の1人に周知である従来の重合手順によって調製することができる。コポリマーは、ステントの表面、特にステンレス鋼表面への良好な付着性を持ち、ステントの表面からコポリマーが有意に剥離することなく、ステントと共に拡張する能力を例証してきた。
【0035】
溶媒は、コポリマーと相互に相溶性であるべきであり、溶液における所望の濃度にてコポリマーを溶液に入れることが可能であるべきである。有用な溶媒は、器具の表面、たとえば、ステントの金属表面との最大限の相互作用のために、ポリマーの鎖を拡張することができるべきである。溶媒の例には、ジメチルスルホキシド(DMSO),クロロホルム、水(緩衝化された生理食塩水)、キシレン、アセトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、テトラヒドロフラン、1−ブタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソプロパノール、N−メチルピロリジノン、トルエン、及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0036】
限定ではなく、例示を目的として、ポリマーは、組成物の総重量の約0.1〜約35重量%、さらに狭くは約2〜約20重量%を含むことができ、溶媒は、組成物の総重量の約65〜約99.9重量%、さらに狭くは約80〜約98重量%を含むことができる。具体的な重量比は、植え込み可能な器具が作成される材料及び器具の幾何学的構造のような因子に依存する。
【0037】
さらに均一な被覆の塗布のために、流体を組成物に添加して組成物の濡れを高めることもできる。組成物の濡れを高めるには、好適な流体は通常、高い毛管浸透を有する。毛管浸透又は濡れは、界面のエネルギー特性によって駆動される固形基体上での流体の動きである。毛管浸透は、固形表面で平衡形状を取った流体相における液滴の接線での角として定義される接触角により定量される。小さな接触角は、濡れ液体がさらに大きいことを意味する。好適な高い毛管浸透は、約90°未満の接触角に相当する。図3Aは、固形基体12、たとえば、ステンレス鋼表面上での流体液滴10Aを説明している。流体液滴10Aは、約90°未満である接触角Φ1に相当する高い毛管浸透を有する。それにひきかえ、図3Bは、約90°を超える接触角Φ2に相当する低い毛管浸透を有する固形基体上の流体液滴10Bを説明している。濡れ流体は通常、室温にて約50センチポアズを超えない、狭くは、約0.3〜約5センチポアズ、さらに狭くは、約0.4〜約2.5センチポアズの粘度を有するべきである。従って、濡れ流体は、組成物に添加した場合、組成物の粘度を低下させる。
【0038】
濡れ流体は、ポリマー及び溶媒と相互に相溶性であるべきであり、ポリマーを沈殿すべきでない。濡れ流体もまた溶媒として作用することができる。濡れ流体の有用な例には、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、1−ブタノール、n−ブチルアセテート、ジメチルアセトアミド(DMAC)、並びにこれらの混合物及び組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。限定ではなく、例示を目的として、ポリマーは、組成物総重量の約0.1〜約35重量%、さらに狭くは約2〜約20重量%を含むことができ、溶媒は、組成物総重量の約19.9〜約98.9重量%、さらに狭くは約58〜約84重量%を含むことができ、濡れ流体は、組成物総重量の約1〜約80重量%、さらに狭くは約5〜約40重量%を含むことができる。濡れ流体の具体的な重量比は、採用される濡れ流体の種類並びにポリマー及び溶媒の種類及び重量比に依存する。さらに詳しくは、濡れ流体として使用されるテトラヒドロフランは、たとえば、溶液の総重量の約1〜約44重量%、さらに狭くは約21重量%を含むことができる。濡れ流体として使用されるジメチルホルムアミドは、たとえば、溶液の総重量の約1〜約80重量%、さらに狭くは約8重量%を含むことができる。濡れ流体として使用される1−ブタノールは、たとえば、溶液の総重量の約1〜約33重量%、さらに狭くは約9重量%を含むことができる。濡れ流体として使用されるn−ブチルアセテートは、たとえば、溶液の総重量の約1〜約34重量%、さらに狭くは約14重量%を含むことができる。濡れ流体として使用されるジメチルアセトアミドは、たとえば、溶液の総重量の約1〜約40重量%、さらに狭くは約20重量%を含むことができる。
【0039】
Table1は、下地組成物の好適な組み合わせの例の一部を説明する。
【表1】

【0040】
有効成分層用の組成物
有効成分を含有する層又は貯蔵層のための組成物の実施の態様は、成分すべてを配合し、次いで混合する従来の方法によって調製される。さらに詳しくは、所定の量の高分子化合物を所定の量の相互に相溶性の溶媒又は溶媒の組み合わせに加える。常圧及び無水の雰囲気下で高分子化合物を加えることができる。必要に応じて、たとえば、約60℃の温水槽にて12時間、穏やかな加熱及び攪拌及び/又は混合を採用してポリマーの溶媒への溶解を達成することができる。
【0041】
選択されるポリマーは、生体適合性であり、且つ、器具が植え込まれた場合、血管壁への刺激をできるだけ抑えるポリマーでなければならない。ポリマーは、生体安定性又は生体吸収性のポリマーのいずれであってもよい。使用すればよい生体吸収性のポリマーには、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(L−乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−バレレート)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、コポリ(エーテル−エステル)(たとえば、PEO/PLA)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、並びに、たとえば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン及びヒアルロン酸のような生体分子が挙げられる。また、ポリウレタン類、シリコーン類及びポリエステル類のような比較的低い慢性の組織反応を持つ生体安定性のポリマーを使用すればよく、ステント上で溶解し、硬化し、重合することができれば、そのほかのポリマーを使用すればよく、そのほかのポリマーは、ポリオレフィン、ポリイソブチレン及びエチレン−αオレフィンコポリマー;アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリ塩化ビニルのようなビニルハロゲン化合物ポリマー及びコポリマー;ポリビニルメチルエーテルのようなポリビニルエーテル;ポリ塩化ビニリデン及びポリフッ化ビニリデンのようなポリビニリデンハロゲン化合物;ポリアクリロニトリル;ポリビニルケトン;ポリスチレンのようなポリビニル芳香物;ポリ酢酸ビニルのようなポリビニルエステル;ビニルモノマーの同士及びオレフィンとのコポリマー、たとえば、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂及びエチレン−ビニルアセテートコポリマー;ナイロン66及びポリカプロラクタムのようなポリアミド;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂;レーヨン;レーヨントリアセテート;セルロース、セルロースアセテート、セルロースブチレート;セルロースアセテートブチレート;セロファン;硝酸セルロース;プロピオン酸セルロース;セルロースエーテル及びカルボキシメチルセルロースなどである。
【0042】
エチレンビニルアルコールは機能的に極めて好適なポリマーの選択である。コポリマーは、有効成分の放出速度に対する良好な制御能を持つ。一般則として、エチレンコモノマー含量の増加によって有効成分がコポリマーマトリクスから放出される速度が低下する。有効成分の放出速度は通常、コポリマーの親水性が減るにつれて低下する。エチレンコモノマー含量の増加は、特に、付随してビニルアルコール含量が低下するので、コポリマーの全体的な疎水性を高める。放出される有効成分の放出速度及び累積量は、コポリマーマトリクス中の成分の最初の総含量に直接比例することも知られている。従って、エチレンコモノマーの含量及び有効成分の最初の量を改変することにより広いスペクトルの放出速度を達成することができる。
【0043】
貯蔵層のためのポリマーの選択は、下地層のために選択されたポリマーと同一でも異なっていてもよい。同一ポリマーの使用は、2つの異なった高分子層の採用では存在してもよい、付着性の結着又は結合の欠如のような、界面不適合性を低減する又は排除する。
【0044】
溶媒は、溶液における所望の濃度にて溶液にポリマーを入れることが可能であるべきである。溶媒の例には、DMSO、クロロホルム、水(緩衝化された生理食塩水)、キシレン、アセトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、テトラヒドロフラン、1−ブタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン及びN−メチルピロリジノンを挙げることができるが、これらに限定されない。低含量のエチレン、たとえば、29モル%のエチレンビニルアルコールの使用にともなう、溶媒の好適な選択は、水と混合されたイソ−プロピルアルコール(IPA)である。
【0045】
十分な量の有効成分が、ポリマー及び溶媒の混合組成物に分散される。有効成分は、実際の溶液の中にあるか、又は混合組成物において飽和されるべきである。有効成分が組成物に完全に溶解しなければ、混合、攪拌及び/又はかき混ぜを含む操作を用いて、残留物の均質化を達成することができる。有効成分は、微粒子に分散するように加えてよい。有効成分の混合は、有効成分の過飽和が所望されないように、無水の雰囲気下、常圧及び室温にて行うことができる。
【0046】
有効成分は、血管の平滑筋細胞の活性を阻害すべきである。さらに具体的には、有効成分は、平滑筋細胞の異常な、又は不適当な移動及び/又は増殖を阻害することを目的とする。
【0047】
「平滑筋細胞」は、血管の外傷又は損傷に続いて脈管内膜の肥厚性の血管部位で増殖する血管の内側層及び外膜層に由来する細胞を包含する。光学顕微鏡での検討では、平滑筋細胞の特徴には、核小体のある細胞の中央に位置する長楕円形の核及び筋形質中に筋原線維を持つ紡錘形の組織学的形態が挙げられる。電子顕微鏡による検討では、平滑筋は、核近傍の筋形質に細長いミトコンドリアを有し、顆粒状の小胞体の2、3の管状要素、及び遊離のリボソームの多数の群を有する。小さなゴルジ複合体が核の一方の極の近傍に位置してもよい。
【0048】
平滑筋の「移動」は、たとえば、時間差シネマトログラフィ又はビデオ記録を用いて1つの位置から他への細胞の動きを追跡することによって、及び経時的な組織培養において定義した区分の外への平滑筋細胞の移動を手動で計数することによって、試験管内で調べてもよいような、血管の内側層から内膜への生体内でのこれらの細胞の移動を意味する。
【0049】
平滑筋細胞の「増殖」は、細胞数の増加を意味する。
【0050】
「異常な」又は「不適当な」増殖は、同一種類の正常に機能する細胞で通常起きるよりもさらに速く起きる又は有意に大きな程度で起きる細胞の分裂、成長又は移動、すなわち過増殖を意味する。
【0051】
細胞の活性を「阻害すること」は、特に生物学的に又は機械的に生じた血管の損傷又は外傷に続く、或いは哺乳類がそのような血管の損傷又は外傷を被りやすくする状況下での平滑筋細胞の過形成、再狭窄及び血管の閉塞を軽減すること、遅延させること又は排除することを意味する。本明細書で使用されるとき、用語「軽減すること」は、平滑筋細胞の増殖による刺激から生じる内膜の肥厚を減らすことを意味する。「遅延させること」は、過増殖性の血管疾患の進行を遅らせること、或いは、組織学的検査又は血管造影検査で認められるような目に見える内膜の肥厚化を遅らせることを意味する。血管の外傷又は損傷に続く再狭窄の排除は、もはや外科的介入、すなわち、たとえば、反復血管形成術、アテローム切除術又は冠状動脈バイパス手術によって血管を介した好適な血流を再構築することを必要としない程度までまで、患者における内膜の肥厚化を完全に「軽減する」及び/又は「遅延させる」ことを意味する。再狭窄の軽減、遅延又は排除の効果は、当業者の1人に既知の方法で判定すればよく、それには、血管造影、血管内超音波、蛍光透視画像、光ファイバー可視化法(fiber optic visualization)、光コヒーレンス断層撮影法、血管内MRI又は生検及び組織検査が挙げられるが、これらに限定されない。生物学的に生じる血管の損傷には、自己免疫障害によって生じる又はそれに起因する損傷、異種免疫に関連する障害、エンドトキシン及びサイトメガロウイルスのようなヘルペスウイルスを含む感染性の障害、アテローム性硬化症のような代謝性の障害、並びに低体温症及び放射線照射により生じる血管の損傷が挙げられるが、これらに限定されない。機械的に生じる血管の損傷には、カテーテル挿入処置により起きる血管の損傷、又は血管スクラップ処置、たとえば、経皮経管冠状動脈形成、血管手術、ステント留置、移植手術、レーザー治療及び血管の内膜及び内皮の整合性を乱すそのほかの侵襲的処置により起きる血管の損傷が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の有効成分は、血管の損傷又は外傷に続く治療への使用において制約されず、むしろ、有効成分の有用性は、平滑筋細胞の細胞活性を阻害する、又は再狭窄の発生を阻害する成分の能力によって決定される。
【0052】
有効成分は、本発明の実践において治療効果又は予防効果を発揮可能であると共に、細胞外マトリクスの発現に積極的な医薬効果を有することが可能であるいかなる物質も包含する。有効成分は、血管部位における創傷治癒を高め、且つ血管部位の構造的特性及び弾性特性を改善するためのものであることができる。有効成分の例には、抗腫瘍剤のような増殖抑止物質、抗炎症剤、抗血小板剤、抗凝固剤、抗フィブリン剤、抗血栓剤、細胞分裂抑止剤、抗生剤、抗酸化剤及びこれらの組み合わせが挙げられる。増殖抑止物質の好適な例には、アクチノマイシンD、あるいはその誘導体および類似物質(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ化学会社により製造、又はメルクから入手可能なCOSMEGEN)が挙げられる。アクチノマイシンDの同族としてはダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI1、アクチノマイシンX1、及びアクチノマイシンC1が挙げられる。好適な抗腫瘍剤の例には、パクリタキセル及びドセタキセルが挙げられる。好適な抗血小板剤、抗凝血剤、抗フィブリン剤、及び抗血栓剤の例としては、ヘパリン、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリン硫酸、疎水性対イオンを有するヘパリン、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタシクリンおよびプロスタシクリン類似物質、デキストラン、D−Phe−Pro−Arg−クロロメチルケトン(合成アンチトロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体拮抗剤、組み換えヒルジン、トロンビン阻害薬(バイオゲン社より入手可能)、及び7E−3B(登録商標)(セントコアの抗血小板剤)が挙げられる。好適な細胞分裂抑止剤の例には、メソトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、フルオロウラシル、アドリアマイシン及びムタマイシンが挙げれられる。好適な細胞分裂抑制又は抗増殖剤の例には、アンギオペプチン(イブセンのソマトスタチン類縁体)、カプトプリル(スクイブから入手可能)やシラザプリル(ホフマン・ラ・ロシュから入手可能)やリシノプリル(メルクから入手可能)のようなアンギオテンシン変換酵素阻害薬、(ニフェジピンのような)カルシウムチャネル遮断薬(たとえば、ニフェジピン)、コルヒチン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)拮抗薬、魚油(ω−3−脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン(HMG−CoA還元酵素抑制剤、メルクのコレステロール低下薬)、モノクローナル抗体(たとえば、PDGF受容体)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害薬、プロスタグランジン抑制剤(グラゾから入手可能)、スラミン(PDGF拮抗剤)、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ抑制剤、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗薬)及び一酸化窒素が挙げられる。適当であるかもしれない他の治療用物質又は剤としては、マンノース6リン酸、スーパーオキシドジスムターゼ、レチノイン酸、スラミン、アシアチコシド、ヒアルロナン、アルファ−インターフェロン、遺伝子組換えした上皮細胞、デキサメタゾン、並びに、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(ノバルティス社から入手可能なエバロリムス(EVEROLIMUS)の商品名で知られる)や40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシンや40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシンや40−O−テトラゾール−ラパマイシンのようなラパマイシン及びそれの誘導体又は類似化合物が挙げられる。有効成分の組成又は特徴を有害に変化させるような有効成分への組成物の暴露は許可されない。従って、混合された組成物との相互適合性のために特定の有効成分が選択される。
【0053】
好ましい治療効果を生じるのに必要とされる有効成分の投与量又は濃度は、有効成分が毒性効果を生じるレベル未満であり、治療効果が得られないレベルを超えるべきである。血管領域における所望の細胞活性を阻害するのに必要とされる有効成分の投与量又は濃度は、患者の特定の状況、外傷の性質、所望される治療の性質、投与された成分が血管部位にとどまる時間並びに他の生物活性のある物質が採用されれば、該物質又は該物質の組み合わせの性質及び種類に依存することができる。治療上有効な投与量は、経験的に、たとえば、好適な動物モデル系の血管に注入し、免疫組織化学的、蛍光法又は電子顕微鏡法を用いて、作用剤及びその効果を検出し、或いは試験管内の検討を行うことによって決定することができる。投与量を決定するための標準的な薬学試験は当業者の1人によって理解される。
【0054】
例示を目的として、ポリマーは、組成物総重量の約0.1〜約35重量%、さらに狭くは約2〜約20重量%を含むことができ、溶媒は、組成物総重量の約59.9〜約99.8重量%、さらに狭くは約79〜約87重量%を含むことができ、有効成分は、組成物総重量の約0.1〜約75重量%、さらに狭くは約20〜約60重量%を含むことができる。ポリマー及び溶媒の具体的な重量比の選択は、器具が作成される材料、器具の幾何学的構造並びに採用される有効成分の種類及び量のような因子に依存するが、これらに限定されない。組成物内に混合される有効成分の特定の重量比率は、放出の期間、放出の累積量及び所望される放出速度のような因子に依存する。
【0055】
随意に、テトラヒドロフラン(THF)又はジメチルホルムアミド(DMF)のような第2の流体又は溶媒を用いて、組成物における有効成分の溶解性を改善し、及び/又は組成物の濡れを高めることができる。組成物の濡れを高めることはさらに均一な被覆の塗布を招くことが見い出されている。第2の流体又は溶媒を、組成物に加えることができ、又は混合物との混合に先立って有効成分を第2の溶媒に加えることができる。
【0056】
例示を目的として、第2の流体を用いて、ポリマーは、組成物総重量の約0.1〜約35重量%、さらに狭くは約2〜約20重量%を含むことができ、溶媒は、組成物総重量の約19.8〜約98.8重量%、さらに狭くは約49〜約79重量%を含むことができ、第2の溶媒は、組成物総重量の約1〜約80重量%、さらに狭くは約5〜約40重量%を含むことができ、有効成分は、組成物総重量の約0.1〜約40重量%、さらに狭くは約1〜約9重量%を含むことができる。ポリマー、溶媒、及び第2溶媒の具体的な重量比の選択は、植え込み可能な器具が作成される材料、器具の幾何学的構造並びに採用される有効成分の種類及び量のような因子に依存するが、これらに限定されない。組成物内に混合される有効成分の特定の重量比率は、放出の期間、放出の累積量及び所望される放出速度のような因子に依存する。
【0057】
Table2は、好適な組成物の例示リストである。
【表2】

【0058】
速度低減膜用の組成物
速度低減膜又は拡散バリア層のための組成物の実施の態様は、成分すべてを配合する従来の方法によって調製される。粒子の使用による実施の態様では、分散技術を採用して、凝集又は粒子の綿状沈殿物の形成を回避すべきである。
【0059】
さらに詳しくは、バリア層用の組成物を貯蔵層の選択された部分に塗布することができる。バリア層は、放出速度を低減する又は有効成分が貯蔵層から放出される時間を遅延させることができる。実施の態様の1つでは、最大限の血液適合性のために、ポリエチレングリコール又は酸化ポリエチレンも混合物に加える。エチレンビニルアルコールは機能的に極めて好適なポリマーの選択である。コポリマーは、有効成分の放出速度に対して良好な制御能を持つ。一般則として、エチレンコモノマー含量の増加によって有効成分がコポリマーマトリクスから放出される速度が低下する。有効成分の放出速度は、コポリマーの親水性が減るにつれて低下する。エチレンコモノマー含量の増加は、特に、付随してビニルアルコール含量が低下するので、コポリマーの全体的な疎水性を高める。
【0060】
通常、バリア層のためのポリマーの選択は、貯蔵層のために選択されたポリマーと同一であることができる。同一ポリマーの使用は、2つの異なった高分子層の採用では存在してもよい、付着性の欠如のような、界面不適合性を低減する又は排除する。
【0061】
無機系又は有機系の粒子を混合物に加えることができる。粒子は、たとえば、ねじれ、無視される容積及び吸着力のような、しかしこれらに限定されないバリア型の特性を有するいかなる好適な材料からも作成することができる。「ねじれ」は、有効成分が層から放出されるために通らなければならない規定された空間又はねじれた経路を創出するためのポリマーマトリクスにおける空間の排除を言う。「無視される容積」は、さもなければ、有効成分の拡散に利用される、粒子によって置き換えられる容積を言う。「吸着力」は、粒子と組成物で使用される有効成分との相互作用に依存するクロマトグラフィ作用を言う。有効成分は、シリカ又はヒューム炭素の粒子のような粒子の表面に部分的に吸着し、放出されてもよい。
【0062】
粒子は混合物内で分散されるべきである。「分散される」は、粒子が、凝塊や綿状沈殿物ではなく、個々の粒子として存在するとして定義される。特定のポリマー/溶媒の混合物では、特定の粒子が普通の混合によって分散する。さもなければ、たとえば、ボールミル、ディスクミル、サンドミル、アトライタ、ローターステータ、超音波処理のような高剪断力工程によって粒子を分散することができ、そのような高剪断力技術は、当業者の1人に周知である。随意に、前述の濡れ流体も混合物に加えることができる。濡れ流体は攪拌に先立って、それと同時に又はそれに続いて加えることができる。界面活性剤、乳化剤又は安定剤の形状で生体適合性の分散剤を混合物に加えて、粒子の分散を助けることができる。
【0063】
粒子は、たとえば、ルチル型酸化チタン、アナタース型酸化チタン、酸化ニオビウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、又は酸化タングステンのような金属酸化物から作製することができる。他の実施の態様では、主流の酸化物、たとえばシリカ(酸化珪素)又はアルミナ(酸化アルミニウム)から作製することができる。金、ハフニウム、白金、イリジウム、パラジウム、タングステン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタン、アルミニウム又はクロムのような金属粒子も採用することができる。他の実施の態様では、たとえば、灰墨、ファーネス・ブラック、カーボンブラック、ヒュームカーボンブラック、ガスブラック、チャンネルブラック、活性炭、ダイヤモンド、ダイヤモンド様炭素又はCVDダイヤモンドのような炭素質の粒子を採用することができる。さらに他の実施の態様では、窒化チタン、窒化クロム、及び窒化ジルコニウムのような窒化物から粒子を作製することができる。さらに他の実施の態様では、タングステンカーバイド、シリコンカーバイド、又はチタンカーバイドのようなカーバイド、並びにハイドロキシアパタイト、ダーライト、ブルッシャイト、リン酸三カルシウム、硫酸カルシウム、及び炭酸カルシウムのようなカルシウム塩を使用することができる。そのほかの無機粒子には、珪素化合物、チタン酸バリウム、及びチタン酸ストロンチウムからできた粒子を挙げることができる。
【0064】
粒子はまた、好適なポリマーから作製することもでき、該ポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリウレタン、セルロース誘導体(すなわち、セルロースに由来する部分単位を有するポリマー)、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド)(Selar Pa(商標)として市販)、ポリ(エチレンテレフタレート−コ−p−オキシベンゾエート)(PET/PHB、たとえば、約60〜80モル%のPHBを有するコポリマー)、ポリ(ヒドロキシアミドエーテル)、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレンコポリマー(Lopacとして市販)、ゴム修飾アクリロニトリル/アクリレートコポリマー(Barexとして市販)、ポリ(メチルメタクリレート)、液晶ポリマー(LCP)(たとえば、Hoechst-Celaneseから入手可能なVectra、DuPontから入手可能なZenite、Amoco Performance Chemicalsから入手可能なXydar)、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンビニルアルコール)(たとえば、約27〜約47モル%のエチレン含量を有するEVAL)、硬化アミンとともにビスフェノールA系ジエポキシドから成るエポキシ、脂肪族ポリケトン(Shellから入手可能なCarilon及びBritish Petroleumから入手可能なKetonex)、ポリスルホン、ポリ(エステル−スルホン)、ポリ(ウレタン−スルホン)、ポリ−(カーボネート−スルホン)、ポリ(3−ヒドロキシオキセタン)、ポリ(アミノエーテル)、ゼラチン、アミロース、パリレン−C、パリレン−D、パリレン−Nが挙げられる。
【0065】
代表的なポリオレフィンには、約2〜6の炭素原子を有するα−モノオレフィンモノマー及びハロゲン置換されたオレフィン、すなわち、ハロゲン化ポリオレフィンが挙げられる。限定ではなく、例示を目的として、低〜高密度のポリエチレン、本質的に可塑化されていないポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(テフロン(登録商標))、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)(KEL-F)及びこれらの混合物は好適である。低〜高密度のポリエチレンは一般に、約0.92g cm-3〜0.96g cm-3の密度を有すると理解されるが、密度の分類に明瞭な線を引くことはできず、密度は供給元によって異なることができる。
【0066】
代表的なポリウレタンには、保存温度又は常温より高いガラス転移温度を有するポリウレタン、たとえば、少なくとも40〜60℃のガラス転移温度を有するポリウレタン、又は、炭化水素、シリコーン、フルオロシリコーン若しくはこれらの混合物を包含する非極性の軟断片を有するポリウレタンが挙げられる。たとえば、Elastomedic/CSIROモレキュラーサイエンスにより製造されるELAST-EONは、1,4−ブタンジオール、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートから成る非極性軟断片及び混合されたポリ(ヘキサメチレンオキシド)(PHMO)とビスヒドロキシエトキシプロピルポリジメチルシロキサン(PDMS)から成る軟断片を持つポリウレタンである。有用な例は、20重量%のPHMO及び80重量%のPDMSの混合物を有する。
【0067】
セルロース誘導体の代表例には、約0.8より大きく、又は約0.6より小さい置換度(DS)を有するセルロースアセテート、エチルセルロース、硝酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、メチルセルロース及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
代表的なポリエステルには、たとえば、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレートジカルボキシレート)(PEN)、及びポリ(エチレンテレフタレート)のような飽和又は不飽和のポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
代表的なポリアミドには、たとえば、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,9、ナイロン−6,10、芳香族ナイロンMXD6(三菱ガス化学アメリカ社により製造される)のような結晶性又は非晶性のポリアミド、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
代表的なポリアクリレートには、ポリ(メチルメタクリレート)及びポリメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
粒子は、前述のポリマーの混合物であることができる。たとえば、ポリマーは、約70〜約99重量%のアクリロニトリル及び約30〜約1重量%のスチレンを含むことができる。同様に、約1〜約30モル%の塩化ビニル含量を持つ塩化ビニルと塩化ビニリデンのコポリマー及び約60〜約80モル%のPHB含量を持つPET/PHBコポリマーは有効に機能する。
【0072】
組成物を器具に塗布する方法
下地層を塗布する前に、器具又は人工補助物の表面を清浄にして、製造中導入される可能性がある混入物をなくす。しかしながら、人工補助物の表面は、塗布された被覆を保持するのに特別の表面処理を必要としない。ステントの金属表面は、たとえば、当業者の1人に周知であるようにアルゴンプラズマ法によって清浄にすることができる。塗布は、人工補助物に組成物を噴霧すること又は組成物に人工補助物を浸漬することのような従来のいかなる方法によることもできる。ぬぐうこと、遠心、吹きつけ又はそのほかの繊維で掃除する行為のような操作を行って、さらに均一な被覆を達成することができる。簡単に言えば、ぬぐうことは、ステントの表面から過剰の被覆を物理的に除去することを言い;遠心は、回転軸のまわりでのステントの高速回転を言い、吹きつけは堆積させた被覆に選択された圧力で空気を適用することを言う。過剰の被覆は、器具の表面から減圧吸引で除くこともできる。濡れ流体の添加によって組成物の一貫した塗布が導かれ、それによって、人工補助物の表面に均一に堆積されるべき被覆を生じる。
【0073】
EVAL、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)などのような熱可塑性のポリマーを使用することによって、堆積された下地組成物を、選択されたポリマーのガラス転移温度(Tg)より高く、溶融温度(Tm)より低い範囲の温度での熱処理に暴露することができる。この温度範囲下での組成物の処理によって、予期しない結果、特に、ステントの金属表面への被覆の強い付着又は結合が見い出された。器具の表面に下地被覆が形成され、溶媒又は溶媒の組み合わせ及び濡れ流体が蒸発できる好適な時間の間、器具を熱処理に暴露すべきである。本質的にすべての溶媒及び濡れ流体が組成物から除かれるが、微量又は残留物がポリマーに混合して残りうることが理解される。
【0074】
Table3は、本発明の実施の態様で使用されるポリマーの一部のTg及びTmを列記する。Tg及びTmは当業者の1人によって到達可能である。引用した例示の温度及び暴露時間は、説明の目的で提供されるのであって、限定を意味するものではない。
【表3】

【0075】
前述の熱硬化性ポリマーの1つの使用によって、開始剤の使用が必要とされてもよい。例示の目的で、ビスフェノールA樹脂のジグリシジルエーテルから成るエポキシシステムをアミン硬化剤で硬化することができ、熱硬化性ポリウレタンプレポリマーをポリオール、ポリアミン又は水(水分)で硬化することができ、アクリル化ウレタンをUV光で硬化することができる。焼成するならば、温度は、選択されたポリマーのTgより高くてもよい。
【0076】
シラン、チタネート及びジルコネートのような無機ポリマーの使用によって、プレポリマー又は前駆体を含有する組成物を塗布し、溶媒を蒸発させる。
【0077】
下地層を塗布しながら、又は下地被覆を形成した後で、下地の表面区域を増やすために、下地の表面を改変することができる。たとえば、実施の態様の1つでは、下地層の表面に凸凹、又は粗い区域を創出する。人工補助物の外表面を覆う下地層に凸凹を創出するために種々の方法を使用することができる。方法の1つでは、下地層が乾燥した後、加圧した蒸気又は粗粒子物質を高分子下地被覆に向ける。そのような方法の例にはビーズ噴射加工及び砂噴射加工が挙げられる。ビーズ噴射加工は、高い粘度にて目的物で相対的に均一な直径のビーズを投射するための加圧された気体の使用を言う。ビーズは、たとえば、酸化アルミニウム、酸化珪素又はラテックスのような、しかし、これらに限定されない材料から作製されてもよい。砂噴射加工では、投射される粗粒子は、ビーズ噴射加工ほど均一な直径を有さない。ビーズ噴射加工及び砂噴射加工の双方は、当業者に周知の技術である。加圧した粗粒子源を用いて達成される粗さは、粗粒子のサイズ、たとえば、ビーズの直径、使用する圧力、粗粒子源と下地表面との間の距離及び粗粒子が下地表面で噴射加工される時間の長さによって制御することができる。限定ではなく、例示を目的として、粗粒子は、10〜50μmの間の直径を有するビーズであることができる。30PSI(平方インチ当たりのポンド)〜60PSIの圧力を用いて、ステントからおよそ3〜10cmの距離からビーズを投射することができる。
【0078】
レーザーエッチングを用いて、下地被覆が乾燥した後、下地被覆に凸凹又は孔を創出することができる。レーザーリソグラフィ法は、当業者に既知である。エッチング速度及び所望のエッチングの深さに依存する所定の時間の間、レーザーを下地被覆に向ける。レーザーを使用する前に、開口部を有するパターン化したマスクを下地被覆に適用してもよい。次いで、レーザーを用いて、マスクの開口部を介して下地をエッチングする。レーザーエッチングによるパターン化したマスクの使用は当業者に既知である。
【0079】
さらに、下地がステントの外表面に堆積される方式によって凸凹を創出することができる。たとえば、スパッタリングによるような物理的な堆積法を介して下地を加えてもよい。さらに低い圧力及びさらに短い堆積時間が通常薄膜の堆積で使用される方法条件を用いて、下地被覆の凸凹を形成する。
【0080】
さらに、多孔性マトリクスを形成する方法を用いて、下地被覆の表面を改変することができる。下地被覆のための多孔性マトリクスは、たとえば、下地層のポリマーの一部の位相反転沈殿によって設けることができる。例示を目的として、ポリマーを2つの混和性溶媒と混合して溶液を形成する。溶媒の一方(溶媒A)は、他方の溶媒(溶媒B)よりも揮発性を低くすべきである。さらに、ポリマーは溶媒Aへの溶解性がより低くあるべきである。次いで、溶液を植え込み可能な器具の表面の一部に塗布することができる。次に、溶媒が蒸発すると、溶媒Bが本質的に被覆から除かれるにつれて、ポリマーはゆっくりと沈殿する。その結果、完全に乾燥した後、ポリマーマトリクスは多孔性となる。当業者の1人は、孔のサイズは、ポリマーと溶媒の選択及び溶液の相対的濃度によって制御することができることを理解するであろう。多孔性マトリクスの下地領域への深さは、下地層の一部がステント表面に塗布された後、位相反転技術を使用するだけで制御することができる。直径約0.1ミクロン〜約1ミクロンの範囲の孔が好適であってもよい。
【0081】
下地層における多孔性マトリクスは、ポロゲンを用いて形成することもできる。たとえば、単一分散された粒子としてポロゲンを下地組成物に加えてポロゲン懸濁液を創る。ポロゲン粒子は、下地組成物の総重量の約5〜約50重量%を含むことができる。ポロゲン粒子のサイズは約0.1ミクロン〜2ミクロンでありうる。次いで組成物を器具に塗布し、層が形成された後、適当な溶媒でポロゲンを溶解して除き、下地層に空洞又は孔を残して、多孔性マトリクスを形成する。ポロゲン粒子の代表例は、塩化ナトリウム及びグリシンの球体が挙げられる。普通、適当な溶媒はポロゲンに対して相溶性の溶媒であるが、下地層を形成するのに使用されたポリマーを本質的に溶解しない。塩化ナトリウム又はグリシンの球体がポロゲンとして使用されるならば、水は、適当な溶媒の代表例である。
【0082】
多孔性マトリクスは、焼結法を用いても形成することができる。焼結は、粒子の一部を部分的に融解することによって粒子を一緒に結合する成形加工の方法である。たとえば、高分子粉末又は粒子を器具の表面に塗布し、次いで一緒に押圧することができる。粒子は有用には約1〜約10ミクロンでありうる。次いで、高分子粒子をポリマーの融点よりやや低い又はほぼ融点の温度に加熱することができる。粒子全部を全体的に溶融しないで、粒子はそれぞれの表面で互いに結合する。粒子の格子の間に空間が残り、多孔性の空洞を形成する。
【0083】
下地層の塗布に続いて、有効成分(すなわち、貯蔵層)を含有する組成物を下地被覆の指定された部分に塗布する。下地層の選択された部分に異なった有効成分を含有する組成物を塗布するのにマスキング技術が実施される。従って、種々の有効成分の種々のカクテルの処方又は配合を有するステントを製造することができる。溶媒又は溶媒の組み合わせ又は濡れ流体を蒸発させることによって、溶媒又は溶媒の組み合わせ又は濡れ流体を組成物から除く。所定の温度で所定の時間、器具を加熱することによって蒸発を誘導する。たとえば、約60℃にて約12〜24時間、器具を加熱することができる。加熱は、無水の雰囲気下、常圧で行うことができ、有効成分に有害な影響を及ぼす温度を超えるべきではない。又は、加熱は、減圧条件下で行うことができる。本質的にすべての溶媒及び濡れ流体が有効成分を含有する組成物から除かれるが、微量又は残留物がポリマーに混合して残りうることが理解される。
【0084】
溶媒又は溶媒濡れ流体の蒸発及び有効成分含有被覆用のポリマーの乾燥に続いて、有効成分含有被覆の指定された部分に、拡散バリア層を塗布することができる。器具の上に組成物を噴霧することによって、又は組成物に器具を浸漬することによって拡散バリア層を塗布することができる。バリア領域の形成のために上述の方法を反復することができる。
【0085】
使用方法
上述の方法に従って、有効成分は、医用器具、たとえばステントに塗布され、送達及び拡張の間ステント上で保持され、植え込み部位にて所望の制御速度にて所定の時間放出される。上述の被覆層を有するステントは、例示の目的で、胆管、食道、気管/気管支及びそのほかの生体通路における腫瘍により生じた障害の治療を含む種々の医学処置に有用である。上述の被覆層を有するステントは、特に、平滑筋細胞の異常な又は不適当な移動、血栓及び再狭窄で生じた血管の閉塞領域を治療するのに有用である。ステントは、多様な血管、動脈及び静脈の双方に設置してもよい。部位の代表例は、腸骨動脈、腎動脈及び冠状動脈である。しかしながら、本発明の適用は、被覆の実施の態様が医用基体とともに使用されるように限定されるべきである。
【0086】
簡単に言えば、先ず、血管造影を行ってステント療法のための適当な位置決めを行う。血管造影は通常、X線撮影をしながら、動脈又は静脈に挿入されたカテーテルを介してX線不透過性の造影剤を注入することにより達成される。次いで、病変又は治療予定部位にガイドワイヤを進める。崩れた構成中のステントが通路に挿入されるようにする送達カテーテルをガイドワイヤを越えて通す。送達カテーテルは経皮的に又は外科的に、大腿動脈、大腿静脈又は気管支静脈に挿入し、蛍光透視の指示のもとで血管系を介してカテーテルを操作することにより、適当な血管に進める。治療の所望の区分で、次いで上述の被覆領域を有するステントを拡張してもよい。挿入後の血管造影図を利用して、適当な位置合わせを確認してもよい。
【実施例】
【0087】
本発明の実施の態様を以下に述べる実施例によって説明するが、それらは、説明の目的のみで提供されるものであり、限定が目的ではない。パラメータ及びデータは、本発明の実施の態様の範囲を過度に限定するように解釈されない。
【0088】
(実施例1)
イソプロピルアルコール溶液の超音波浴槽に10分間入れることにより、Multi-Link(商標)ステント(ガイダント社より入手可能)を清浄にした。ステントを乾燥し、プラズマチャンバーでプラズマ清浄にした。EVAL:DMSOの比1:7にて1gのEVAL及び7gのDMSOによりEVAL溶液を作成した。混合物を60℃の温めた振盪水槽に24時間入れた。溶液を冷却し、ボルテックスした。清浄化したMulti-Link(商標)ステントをEVAL溶液に浸し、次いで温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置いた。被覆されたステントを風箱で6時間加熱し、次いで、減圧条件下60℃のオーブンに24時間入れた。4.0mmの血管形成バルーン上で被覆されたステントを拡張した。被覆はステント上で無傷のままだった。被覆は透明で、Multi-Link(商標)ステントに光沢のある光を与えていた。
【0089】
(実施例2)
イソプロピルアルコール溶液の超音波浴槽に10分間入れることにより、Multi-Link(商標)ステント(ガイダント社より入手可能)を清浄にした。ステントを乾燥し、プラズマチャンバーでプラズマ清浄にした。EVAL:DMSOの比1:4にて1gのEVAL及び4gのDMSOによりEVAL溶液を作成した。デキサメタゾンを1:4のEVAL:DMSO溶液に加えた。デキサメタゾンは、溶液の総重量の9重量%を構成した。溶液をボルテックスし、チューブに入れた。清浄化したMulti-Link(商標)ステントを心棒ワイヤに取り付け、溶液に浸した。被覆したステントを、温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置いた。被覆したステントを風箱で6時間硬化し、次いで、減圧条件下60℃のオーブンに24時間入れた。上記の工程を2回反復した。被覆の平均重量は、0.0003gであり、ステント当たり75μgの概算デキサメタゾン含量を有した。4.0mmの血管形成バルーン上で被覆したステントを拡張した。被覆はステント上で無傷のままだった。走査電子顕微鏡を用いて、被覆の検査及び被覆の物理的特性を視覚化した。被覆は透明で、Multi-Link(商標)ステントに光沢のある光を与えていた。
【0090】
(実施例3)
イソプロピルアルコール溶液の超音波浴槽に10分間入れることにより、Multi-Link Duet(商標)ステントを清浄にする。ステントを乾燥し、プラズマチャンバーでプラズマ清浄する。EVAL:DMSOの比1:4にて1gのEVAL及び4gのDMSOによりEVAL溶液を作成する。デキサメタゾンを1:4のEVAL:DMSO溶液に加える。デキサメタゾンは、溶液の総重量の9重量%を構成する。溶液をボルテックスし、チューブに入れる。清浄化したMulti-Link(商標)ステントを心棒ワイヤに取り付け、溶液に浸す。被覆したステントを、温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置く。被覆したステントを風箱で6時間硬化し、次いで、減圧条件下60℃のオーブンに24時間入れる。一層のデキサメタゾン/EVALで被覆したステントをデキサメタゾンの入っていない1:4比のEVAL:DMSO溶液に浸す。ステントをホットプレートに載せ、硬化し、前に記載したオーブンに入れる。上塗被覆は、薬物被覆層からのデキサメタゾンの放出を制御するバリア層を提供するであろう。4.0mmの血管形成バルーン上で被覆したステントを拡張することができる。被覆はステント上で無傷のままであることが予測される。被覆は透明で、Multi-Link(商標)ステントに光沢のある光を与えるであろう。
【0091】
(実施例4)
イソプロピルアルコール溶液の超音波浴槽に10分間入れることにより、Multi-Link(商標)ステント(ガイダント社より入手可能)を清浄にした。ステントを乾燥し、プラズマチャンバーでプラズマ清浄した。EVAL:DMSOの比1:7にて1gのEVAL及び7gのDMSOによりEVAL溶液を作成した。ビンブラスチンを1:7のEVAL:DMSO溶液に加えた。ビンブラスチンは、溶液の総重量の2.5重量%を構成した。溶液をボルテックスし、チューブに入れた。清浄化したMulti-Link(商標)ステントを心棒ワイヤに取り付け、溶液に浸した。被覆したステントを、温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置いた。被覆したステントを風箱で6時間硬化し、次いで、減圧条件下60℃のオーブンに24時間入れた。上記の工程を2回反復し、合計3層を有した。被覆の平均重量は、0.00005gであり、ステント当たり12μgの概算ビンブラスチン含量を有した。電子線の照射によりステントの一部を滅菌した。回転しながら、滅菌したステント1つと滅菌しなかったステント1つを室温にてリン酸化生理食塩水溶液(pH7.4)5mLに入れることにより、24時間の溶出時間について、滅菌した、及び滅菌しなかったビンブラスチン被覆のステントを調べた。溶出したビンブラスチンの量は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析により評価した。この試験の結果を以下に示し、図4にプロットした。データは、電子線照射の手段は、EVALからのビンブラスチンの放出を妨害しないことを示している。
【表4】

【表5】

【0092】
(実施例5)
イソプロピルアルコール溶液の超音波浴槽に10分間入れることにより、Multi-Link(商標)ステントを清浄にした。ステントを乾燥し、プラズマチャンバーでプラズマ清浄した。EVAL:DMSOの比1:7にて1gのEVAL及び7gのDMSOによりEVAL溶液を作成した。セファロタキシンを1:7のEVAL:DMSO溶液に加えた。セファロタキシンは、溶液の総重量の5重量%を構成した。溶液をボルテックスし、チューブに入れた。清浄化したMulti-Link(商標)ステントを心棒ワイヤに取り付け、溶液に浸した。被覆したステントを、温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置いた。被覆したステントを風箱で6時間硬化し、次いで、減圧下60℃のオーブンに24時間入れた。上記の工程を2回反復し、合計3層を有した。被覆の平均重量は、0.00013gであり、ステント当たり33μgの概算セファロタキシン含量を有した。電子線の照射によりステントを滅菌した。Robert S. Schwarz et al., Circulation 82(6):2190-2200, Dec. 1990による「バルーン血管形成後の再狭窄:ブタ冠状動脈における実践的な増殖モデル」及びRobert S. Schwartz et al., J Am Coll Cardiol; 19:267-74 Feb. 1992による「再狭窄及び冠状動脈損傷に対する釣り合った新生内膜の反応:ブタモデルの結果」に述べられている手順に従って、セファロタキシン/EVAL被覆のステント及びEVAL被覆のステントを4頭のブタの冠状動脈に植え込んだ。ブタの動脈における検討の結果は、動脈損傷の結果生じる新生内膜の増殖において、非被覆ステント、EVAL被覆ステント及びセファロタキシン被覆ステントに有意な差異がないことを示した。
【0093】
(実施例6)
イソプロピルアルコール溶液の超音波浴槽に20分間入れ、次いで風乾することにより、Multi-Link Duet(商標)ステント(ガイダント社より入手可能)を清浄にした。EVAL:DMSOの比1:7にて1gのEVAL及び7gのDMSOによりEVALストック溶液を作成した。混合物を60℃の温めた振盪水槽に12時間入れた。溶液を混合し、室温に冷却した。EVAL溶液に補助溶媒を加えてMulti-Link Duet(商標)ステントのストラットの濡れを助長した。テトラヒドロフラン(THF)1gをEVAL:DMSO溶液1.2gと混合した。清浄化したMulti-Link Duet(商標)ステントを心棒ワイヤに取り付け、溶液に浸した。被覆したステントを、温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置いた。次いで、被覆したステントを実験室オーブンで90℃にて4時間加熱した。剥がれたり、割れたりすることなく、薄いEVALの被覆がステンレス鋼に付着した。EVALは、ステンレス鋼に上手く付着しないそのほかのポリマーのための優れた下地基礎被覆を形成する。
【0094】
(実施例7)
イソプロピルアルコール溶液の超音波浴槽に20分間入れ、次いで風乾することにより、Multi-Link Duet(商標)ステントを清浄にした。EVAL:DMSOの比1:5にて1gのEVAL及び5gのDMSOによりEVAL溶液を作成した。混合物を60℃の温めた振盪水槽に12時間入れた。溶液を混合し、室温に冷却した。溶解したEVAL:DMSO溶液をTHF24.6g及びDMSO19.56gと混合した。溶液を混合し、次いで、空気加圧式の噴霧スプレーの容器に入れた。ステントを30〜120rpmで回転させながら、Multi-Link Duet(商標)ステントに噴霧した。噴霧時間は、スプレーの流速に依存した。ステントを1〜30秒間噴霧するには、1〜20mg/秒の流速を必要とした。強制空気対流式のオーブンでポリマーを被覆したMulti-Link Duet(商標)ステントを12時間加熱した。被覆は透明で、Multi-Link Duet(商標)ステントに光沢のある光を与えていた。
【0095】
(実施例8)
イソプロピルアルコール溶液の超音波浴槽に20分間入れ、次いで風乾することにより、Multi-Link Duet(商標)ステントを清浄にした。EVAL:DMSOの比1:4にて、EVALストック溶液を作成した。混合物を60℃の温めた振盪水槽に12時間入れた。溶液を混合し、室温に冷却した。種々の補助溶媒を調べ、どの補助溶媒がさらに厚い被覆を促進するかを決定した。これらの補助溶媒は、THF、DMF、1−ブタノール及びn−ブチルアセテートであった。補助溶媒の処方は以下のとおりである。溶解したEVAL:DMSO溶液3gをTHF0.9gと混合し、溶解したEVAL:DMSO溶液3gをDMF0.39gと混合し、溶解したEVAL:DMSO溶液3gを1−ブタノール0.5gと混合し、溶解したEVAL:DMSO溶液3gをn−ブチルアセテート0.68gと混合した。清浄化したMulti-Link Duet(商標)ステントを心棒ワイヤに取り付け、溶液に浸した。被覆したステントを、温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置いた。強制空気対流式のオーブンでポリマーを被覆したステントを24時間加熱した。被覆したMulti-Link Duet(商標)ステントに被覆の第2層を塗布し、上記と同じ方式でステントを加熱した。種々の補助溶媒で被覆されたステントの間で差異は見られなかった(たとえば、さらに大きな被覆重量又は物理的外観)。被覆すべては透明で、Multi-Link Duet(商標)ステントに光沢のある光を与えていた。被覆したMulti-Link Duet(商標)ステントのストラットの間には被覆の網張りや突っ張りは認められなかった。被覆の重量は、0.2〜0.27mg/ステントだった。
【0096】
(実施例9)
イソプロピルアルコール溶液の超音波浴槽に20分間入れ、次いで風乾することにより、Multi-Link Duet(商標)ステントを清浄にする。EVAL:DMSOの比1:4にて、EVAL溶液を作成する。混合物を60℃の温めた振盪水槽に12時間入れる。溶液を混合し、室温に冷却する。9重量%のデキサメタゾン溶液を以下のように配合する:EVAL:DMSO溶液2.96gをデキサメタゾン0.29gと混合し、次いでTHF0.9gを加える。清浄化したMulti-Link Duet(商標)ステントを心棒ワイヤに取り付け、溶液に浸す。被覆したステントを、温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置く。強制空気対流式のオーブンで被覆したステントを2時間硬化する。被覆の第2層を塗布し、上記と同じ方式で硬化する。被覆は透明で、Multi-Link Duet(商標)ステントに光沢のある光を与えることが予測される。
【0097】
(実施例10)
イソプロピルアルコール溶液の超音波浴槽に20分間入れ、次いで風乾することにより、Multi-Link Duet(商標)ステントを清浄にする。EVAL:DMSOの比1:4にて、EVALストック溶液を作成する。混合物を60℃の温めた振盪水槽に12時間入れる。溶液を混合し、室温に冷却する。9重量%のデキサメタゾン溶液を以下のように配合する:EVAL:DMSO溶液2.96gをデキサメタゾン0.29gと混合し、次いでTHF0.9gを加える。清浄化したMulti-Link Duet(商標)ステントを心棒ワイヤに取り付け、溶液に浸す。被覆したステントを、温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置く。強制空気対流式のオーブンで被覆したステントを2時間硬化する。被覆の第2層を塗布し、上記と同じ方式で硬化する。被覆は透明で、Multi-Link Duet(商標)ステントに光沢のある光を与えることが予測される。
【0098】
(実施例11)
イソプロピルアルコール溶液の超音波浴槽に20分間入れ、次いで風乾することにより、Multi-Link Duet(商標)ステントを清浄にした。EVAL:DMSOの比1:4にて、EVALストック溶液を作成した。混合物を60℃の温めた振盪水槽に12時間入れた。溶液を混合し、室温に冷却した。4.75重量%のアクチノマイシンD溶液を以下のように配合した:EVAL:DMSO溶液600mgをアクチノマイシンD40mgと混合し、次いでTHF200mgを加えた。清浄化したMulti-Link Duet(商標)ステントを心棒ワイヤに取り付け、溶液に浸した。被覆したステントを、温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置いた。強制空気対流式のオーブンで被覆したステントを2時間硬化した。被覆の第2層を塗布し、上記と同じ方式で硬化した。
【0099】
(実施例12)
イソプロピルアルコール溶液の超音波浴槽に20分間入れ、次いで風乾することにより、Multi-Link Duet(商標)ステントを清浄にした。EVAL:DMSOの比1:4を有するEVALストック溶液を作成した。混合物を60℃の温めた振盪水槽に12時間入れた。溶液を混合し、室温に冷却した。3.60重量%のアクチノマイシンD溶液を以下のように配合した:EVAL:DMSO溶液600mgをアクチノマイシンD40mgと混合し、次いでDMF480mgを加えた。清浄化したMulti-Link Duet(商標)ステントを心棒ワイヤに取り付け、溶液に浸した。被覆したステントを、温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置いた。強制空気対流式のオーブンで被覆したステントを2時間硬化した。被覆の第2層を塗布し、上記と同じ方式で硬化した。
【0100】
(実施例13)
イソプロピルアルコール溶液の超音波浴槽に20分間入れ、次いで風乾することにより、Multi-Link Duet(商標)ステントを清浄にした。EVAL:DMSOの比1:4を有するEVALストック溶液を作成した。混合物を60℃の温めた振盪水槽に12時間入れた。溶液を混合し、室温に冷却した。6.45重量%のアクチノマイシンD溶液を以下のように配合した:EVAL:DMSO溶液680mgをアクチノマイシンD80mgと混合し、次いでDMF480mgを加えた。清浄化したMulti-Link Duet(商標)ステントを心棒ワイヤに取り付け、溶液に浸した。被覆したステントを、温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置いた。強制空気対流式のオーブンで被覆したステントを2時間硬化した。被覆の第2層を塗布し、上記と同じ方式で硬化した。
【0101】
(実施例14)
イソプロピルアルコール溶液の超音波浴槽に20分間入れ、次いで風乾することにより、Multi-Link Duet(商標)ステントを清浄にする。EVAL:DMSOの比1:40を有するEVALストック溶液を作成する。混合物を60℃の温めた振盪水槽に12時間入れる。溶液を混合し、室温に冷却する。0.60重量%のアクチノマイシンD溶液を以下のように配合することができる:EVAL:DMSO溶液4920mgをアクチノマイシンD40mgと混合し、次いでTHF2000mgを加える。上記処方で清浄化したMulti-Link Duet(商標)ステントを噴霧することができる。強制空気対流式のオーブンで被覆したステントを2時間硬化する。被覆の第2層を塗布し、上記と同じ方式で硬化する。
【0102】
(実施例15)
アクチノマイシンDによるSMC増殖の阻害
ラットの大動脈から内側性の平滑筋細胞(SMC)を単離し、当業者に既知の外植片法に従って培養した。トリプシン処理を介して細胞を回収し、継代した。その特徴的な山谷型の増殖パターン及び抗SMCαアクチンモノクローナル抗体による間接免疫蛍光法を介して細胞を血管SMCとして同定した。継代3〜4の細胞で検討を行った。24穴培養皿にて単層SMCを樹立し、こすって傷つけ、アクチノマイシンD、マイトマイシン及びドセタキセルで処理した。細胞を様々な濃度の薬物溶液に2時間暴露し、次いで緩衝化生理食塩水溶液で洗浄した。細胞の増殖は、チミジンの取り込みの常法により定量した。検討の結果は図5にて表にした。
【0103】
IC50(50%の細胞が増殖を止める濃度)は、マイトマイシンの5x10-5M及びドセタキセルの10-6Mに比べて、アクチノマイシンDは10-9Mであった。アクチノマイシンDは、他の医薬剤に比べて、SMCの増殖を阻害する最も強力な作用剤であった。
【0104】
(実施例16)
ブタの冠状動脈モデルにおける再狭窄の軽減
ブタの冠状動脈モデルを用いて、ブタのステント損傷の冠状動脈における新生内膜の形成のアクチノマイシンDによる阻害を評価した。尚、ステントは多微孔性バルーンカテーテル(0.2〜0.8ミクロンの範囲のサイズの1x106/mm2の孔)により送達した。
【0105】
前臨床動物試験は、実験動物の扱い及び使用に関するNIHの指針に従って行った。新生内膜形成の阻害に対する薬物の効果を評価するのに家畜ブタを利用した。フォローアップの終点での血管造影分析を除いて、各試験処置は滅菌技法を用いて行った。検討処置の間、活性化凝固時間(ACT)を定期的にモニターし、確実に適当な抗凝固を行った。処置を開始する前にベースラインの血液試料を各動物から採取した。定量的冠状動脈血管造影解析(QCA)及び血管内超音波(IVUS)解析を用いて血管サイズを評価した。
【0106】
PTCAバルーンを1:1のバルーン対動脈比まで膨張させ、バルーンを前後に5回動かすことによって送達部位の血管を露出した。ステントを配置する前に多微孔性バルーンカテーテルを用いて3.5atm(3.61Kg/sqcm)にて2分間、露出した部位に薬物を送達した。送達の平均容量は、3.3±1.2mLであった。薬物送達に続いて、最終的なステント対動脈の比が1.1:1になるように送達部位にステントを設置した。
【0107】
ステント配置の指針には、QCA解析及びIVUS解析を用いた。バルーン(サイズ)の膨張圧を決定するために、ステント配置前にIVUSで標的血管部位の管腔サイズを測定した。ステント配置前、ステント配置後、フォローアップの最小管腔直径、ステントの反跳、バルーン/ステント対動脈の比を比較するためにステント配置した冠状動脈の定量的解析を行った。ステントの植え込み及び最終の血管造影に続いて、器具をすべて取り出し、傷を閉じ;研究センターの、参加した獣医又は動物管理の専門家によって管理されるように、動物を麻酔から回復させた。
【0108】
28日の終点で実験室に戻り、血管造影評価を行った。冠状動脈の血流を評価し、ステント配置した血管を評価して最小管腔直径を決定した。終点でのこの処置の後、動物を安楽死させた。安楽死に続いて、心臓を加圧潅流によりホルマリン固定し、光学顕微鏡及び形態計測を含む組織学的分析に供した。ステント配置した動脈の形態計測分析には、ステントストラットの位置の評価及び血管/管腔面積の測定、%狭窄、損傷スコア、内膜/内側の面積及び内膜/内側の比が含まれる。%狭窄は、以下の方程式:
100(IEL面積−管腔面積)/IEL面積
により定量されるが、IELは、内弾性板である。
【0109】
対照群の動物は、薬物の代わりに水の送達を受けた。試験群の動物は2種類の異なった濃度、10-5M及び10-4MのアクチノマイシンDを投与された。試験の結果は、Table4に表す。処理群における%狭窄(32.3±11.7)は、対照群(48.8±9.8)に比べて有意に減少した。図6A及び図6Bは、それぞれ、対照及び投与第1群の冠状動脈血管の組織スライドの試料写真を説明する。
【表6】

【0110】
試験管内及び生体内の標準的な試験処置の結果は、アクチノマイシンDが過増殖性の血管系疾患の治療に有用であることを実証している。具体的には、アクチノマイシンDは、哺乳類における平滑筋細胞の過形成、再狭窄及び血管の閉塞、特に、機械的に生じた血管の外傷又は損傷に続く閉塞の阻害に有用である。
【0111】
(実施例17)
イソプロピルアルコールの超音波浴槽に20分間入れ、次いで風乾することにより、Multi-Link Duet(商標)ステント(長さ13mm)を清浄にした。EVAL:DMSOの比1:4を有するEVALストック溶液を作成した。混合物を60℃の温めた振盪水槽に12時間入れた。溶液を混合し、室温に冷却した。5.06重量%のアクチノマイシンD溶液を以下のように配合した:アクチノマイシンD40mgをTHF150mgに溶解し、次いで、EVAL:DMSOを600mg加えた。清浄化したMulti-Link Duet(商標)ステントを心棒ワイヤに取り付け、溶液に浸した。被覆したステントを、温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置いた。強制空気対流式のオーブンで60℃にて被覆したステントを1時間硬化した。被覆の第2層を上記と同じ方式で塗布し、強制空気対流式のオーブンで60℃にて4時間硬化した。約260μgの平均被覆重量及び約64μgの平均アクチノマイシンD装填を達成した。
【0112】
(実施例18)
イソプロピルアルコールの超音波浴槽に20分間入れ、次いで風乾することにより、Multi-Link Duet(商標)ステント(長さ13mm)を清浄にした。EVAL:DMSOの比1:4を有するEVALストック溶液を作成した。混合物を60℃の温めた振盪水槽に12時間入れた。溶液を混合し、室温に冷却した。3.75重量%のアクチノマイシンD溶液を以下のように配合した:アクチノマイシンD60mgをDMF310mgに溶解し、次いで、EVAL:DMSO溶液を1.22g加えた。清浄化したMulti-Link Duet(商標)ステントを心棒ワイヤに取り付け、溶液に浸した。被覆したステントを、温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置いた。強制空気対流式のオーブンで60℃にて被覆したステントを1時間硬化した。被覆の第2層を上記と同じ方式で塗布し、強制空気対流式のオーブンで60℃にて4時間硬化した。約51μgの平均アクチノマイシンD含量と共に約270μgの平均被覆重量を達成した。
【0113】
(実施例19)
イソプロピルアルコールの超音波浴槽に20分間入れ、次いで風乾することにより、Multi-Link Duet(商標)ステントを清浄にした。EVAL:DMSOの比1:4を有するEVALストック溶液を作成した。混合物を60℃の温めた振盪水槽に12時間入れた。溶液を混合し、室温に冷却した。6.1重量%のアクチノマイシンD溶液を以下のように配合した:アクチノマイシンD100mgをDMF310mgに溶解し、次いで、EVAL:DMSO溶液を1.22g加えた。清浄化したMulti-Link Duet(商標)ステントを心棒ワイヤに取り付け、溶液に浸した。被覆したステントを、温度を約60℃に設定したホットプレートに約3〜5秒置いた。強制空気対流式のオーブンで60℃にて被覆したステントを1時間硬化した。被覆の第2層を上記と同じ方式で塗布し、強制空気対流式のオーブンで60℃にて4時間硬化した。約250μgの平均被覆重量及び約75μgの平均アクチノマイシンD装填を達成した。
【0114】
(実施例20)
イソプロピルアルコールの超音波浴槽に20分間入れ、次いで風乾することにより、Multi-Link Duet(商標)ステントを清浄にする。EVAL:DMSOの比1:40を有するEVALストック溶液を作成する。混合物を60℃の温めた振盪水槽に12時間入れる。溶液を混合し、室温に冷却した。0.60重量%のアクチノマイシンD溶液を以下のように配合することができる:EVAL:DMSO溶液4920mgをアクチノマイシンD40mgと混合し、次いでTHF2000mgを加える。上記処方により清浄化したMulti-Link Duet(商標)ステントを噴霧する。強制空気対流式のオーブンで60℃にて被覆したステントを15分間、硬化する。被覆の追加の層を上記と同じ方式で塗布し、硬化する。被覆したステントの最終硬化工程を約4時間行う。
【0115】
(実施例21)
上記実施例のいずれかにあらかじめ記載されたようなEVAL及び薬物の処方でステンレス鋼ステントをスプレー被覆することができる。ジメチルスルホキシド20gと混合したEVAL2gによって拡散バリア組成物を処方することができる。ヒュームドシリカ2.2gを加え、高い剪断力処理により分散することができる。一定の攪拌によって、テトラヒドロフラン50g及びジメチルホルムアミド30gを混合物と混合する。EVAL被覆を有するステントを拡散バリア組成物に浸漬して層を形成することができる。
【0116】
(実施例22)
上記実施例のいずれかにあらかじめ記載されたようなEVAL及び薬物の処方でステンレス鋼ステントをスプレー被覆することができる。EVAL8gをジメチルスルホキシド32gに溶解することによって拡散バリアの処方を作ることができる。これに、ルチル型二酸化チタン14g及びジメチルスルホキシドをさらに7g加える。ボールミルを用いて粒子を分散することができる。一定に攪拌しながら、ゆっくり加えて、最終溶液をテトラヒドロフラン39gで希釈する。拡散バリアは薬物がステントから放出される速度を低下させることが予測される。
【0117】
(実施例23)
上記実施例のいずれかにあらかじめ記載されたようなEVAL及び薬物の処方でステンレス鋼ステントをスプレー被覆することができる。EVAL8gをジメチルスルホキシド32gに溶解することによって拡散バリアの処方を作ることができる。ヒドロキシアパタイトを沈殿させた溶液10.5gを混合物に加えることができる。ローターステータミキサーを用いて粒子を分散することができる。一定に攪拌しながら、テトラヒドロフラン30gを加えることができる。浸漬その後の遠心によってステントを被覆することができる。
【0118】
(実施例24)
上記実施例のいずれかにあらかじめ記載されたようなEVAL及び薬物の処方によりステントを被覆することができる。EVAL8gをジメチルスルホキシド50gに加え、攪拌及び加熱によってポリマーを溶解することができる。灰墨4gを加えて、ボールミルで分散することができる。攪拌しながら、ジメチルスルホキシド60g及びテトラヒドロフラン110gをゆっくり加える。ステントをスプレー被覆することができる。
【0119】
(実施例25)
上記実施例のいずれかにあらかじめ記載されたようなEVAL及び薬物の処方によりステントを被覆することができる。テトラクロロ金酸をクエン酸ナトリウム水溶液で還元することによりコロイド状の金を調製することができる。テトラヒドロフランですすぐことにより溶液を交換することができる。EVAL8gをジメチルスルホキシド32gに溶解することができる。これに、テトラヒドロフラン32g中のコロイド状の金77gの溶液を加える。ステントを浸漬被覆法で被覆することができる。
【0120】
(実施例26)
生体内では、アクチノマイシンDの適用で起きる積極的なリモデリングが説明されるデータが提供される。アクチノマイシンDを含浸させたEVALで被覆したステント及びアクチノマイシンDを含まないEVALで被覆した対照群のステントをブタの冠状動脈に植え込んだ。28日目に動物を屠殺した。アクチノマイシンDを負荷した血管のEEL面積は、対照の血管のEEL面積よりも統計的に有意に大きかった。リモデリングの指数は、1.076(8.54/7.94)であった。
【表7】

【表8】

【表9】

【0121】
図7A及び7Bはそれぞれ、対照群64RCA(右冠状動脈群)及びアクチノマイシンD装填ステント群68LAD(左前下行)の冠状動脈血管の組織スライドの試料写真を説明する。使用したステントは、Advanced Cardiovascular Systemsの Multi-Link Duet(商標)(ステンレス鋼)であった。図7Bで説明されるように、アクチノマイシンDの適用によって生じたEELの積極的なリモデリングは、ストラット52とEEL50との間に隙間を創っている。参照番号54で説明される、血栓の沈着が経時的に隙間の中に形成される。自己拡張可能なステントの使用によって、IELの積極的なリモデリングに反応してステントが自己拡張しながら、隙間の形成がなくなる。従って、血栓の沈着を排除することができる。
【0122】
アクチノマイシンDは、血管壁の積極的なリモデリング、特に外弾性板(EEL)の積極的なリモデリングを誘導する。積極的なリモデリングは、管腔サイズを増すことによって血管壁が慢性の刺激に構造的に適応する能力として一般に定義される。積極的にリモデリングされた管腔壁は、リモデリング効果の対象とされなかった管腔に比べて大きな直径又はサイズを有する。従って、リモデリングされた部位を介した血液の流れは増すが、−さもなければ、流れは、たとえば、プラーク形成の存在又は細胞の移動及び増殖のために低下していた。リモデリングの指数は、病変部位のEELによって境界が引かれた面積の参照部位のEELによって境界が引かれた面積に対する比によって定義される。EELの積極的なリモデリングの結果、反応における内弾性板(IEL)も面積又は直径を増すことができる。アクチノマイシンD又はその類縁体又は誘導体は、再狭窄を招きうる平滑筋細胞の異常な又は不適当な移動及び/又は増殖を阻害することができるだけではなく、血管壁の積極的なリモデリングも誘導することができる。従って、病変領域の拡張はさらに顕著になる。
【0123】
(実施例27)
アクリレート末端のウレタン(Henkel 12892)2gをベンゾフェノン0.08g及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.08gと共に酢酸エチル18gに加えることができる。塗布した後、ステントを中圧水銀ランプのもとで5分間硬化することができる。
【0124】
(実施例28)
熱硬化システムのために、Epon828 (Shell)樹脂1.67gをプロピレングリコールモノメチルエーテル98g及びJeffamine T-430 (Huntsman) 0.33gに加えることができる。塗布した後、ステントを80℃で2時間及び160℃で2時間焼成することができる。
【0125】
(実施例29)
無水酢酸エチルにおいて0.25%(w/w)のテトラ−n−ブチルチタネートの溶液を作成することができる。ステンレス鋼のステントの表面に噴霧することによって溶液を塗布することができる。ステントを100℃で2時間加熱することができる。
【0126】
(実施例30)
目的
被覆の機械的整合性を調べるために標的病変への模倣送達を介して調べた被覆ステント
【表10】

【0127】
背景
本実験では、模倣した送達及び使用を介して、4つの異なった処理群を調べた。裸のステント又は被覆の下層をさらすために被覆を取り除いたステント上の位置として定義される剥離欠損を伴った、リング3、5及び7におけるいくつかの剥離欠損が認められた。
【0128】
材料及び器具
1.8個の13mmのSoloステント(ガイダント社から入手可能)
2.8本の3.0x30mmのDuetカテーテル
3.100%のIPA
4.TominatorステントクリンパS/N400
5.7FJL4ガイドカテーテル
6.0.014”バランスミドルウエイト・ガイドワイヤ
7.回転止血バルブ、及び
8.SVS蛇行木(2.5mmの管腔が1.5mmの管腔に先細る)
【0129】
調製
Tominatorクリンパを用い、以下の条件:3クリンプ、65psi、折れ目間での回転、を用いてカテーテル上にステントをクリンプした。
【0130】
試験手順
1.蛇行を有し水を満たした桶に含有される心臓モデルを用いて模倣を行った。
a)以下の設定:RHF、7FJL4ガイドカテーテル、SVS蛇行木(2.5mmの管腔が出口で1.5mmの管腔に先細る)を介してステントを挿入した。
b)いったんステントを蛇行の遠位開口部に通して、遠位カテーテルから近位マーカーまでバルーンを切断した。
2.清浄環境の部屋(CER)で、Leica MZFLIII顕微鏡のもとで100倍に拡大してステントを調べた。
3.ステントリング3、5及び7における剥離欠損の数を記録した。剥離欠損については、外側直径のみを調べた。
4.試験試料はすべて薬物含有ステントに適当である保護具によって取り扱った。
【0131】
データの要約及び結果
【表11】

【0132】
考察
病変のない蛇行に対する、模倣した送達後の被覆の整合性を観察するために試験を行った。下地層は、ステントへの被覆の付着性を改善し、その結果、模倣使用後の欠損が減った。B群は多くの欠損があった。B群の被覆表面は、端を発するほど粗悪であったが、欠損はさほど深刻ではなかった。
【0133】
(実施例31)
目的
0.67%アクチノマイシンD(5%EVAL、1:1のTHF:DMSO溶液中)被覆のステントへの2つの異なった表面処理による付着を対照試料と比較した。具体的な表面処理は、(1)アルゴンプラズマ処理、並びに(2)浸漬/スピン工程、すなわち、遠心工程及びそれに続く120℃2時間と60℃10時間の加熱処理により塗布された5%EVAL、1:1のTHF:DMSO溶液の下地層を伴ったアルゴンプラズマ処理から成った。ステントへの被覆の付着性を調べるのに用いた試験方法は、37℃の水又は生理食塩水にてTecoflexチュービング中でステントを拡張する、湿式流れ試験であった。次いで水又は生理食塩水をステントの中に勢いよく流し、ステント中の血流を模倣した。次いで、ステントを「ステントキャッチャー」によりTecoflexから取り外し、光学顕微鏡下で欠損について観察した。
【表12】

【0134】
材料及び器具
1.30個の13mmの被覆したSoloステント、IPA中で15分間超音波処理して清浄した;
2.ステントを拡張するための30本のバルーンカテーテル又は部分組み立て品(3.0x20mmのRX Rocket);
3.1:1THF:DMSOを伴った5%EVAL溶液中の0.67%アクチノマイシンD;
4.1:1THF:DMSO中の5%EVAL;
5.3.0mmの薄壁Tecoflexチュービング;
6.生理食塩水;
7.糸屑の出ないワイプSU00126又は同等品;
8.100%のIPA;
9.オーブン;
10.タイマー;
11.遠心機;
12.プラズママシーン(Advanced Plasma Systemから入手可能);
13.超音波洗浄機;
14.0.1μgの最小変位のメトラーバランス;及び
15.ファンエアキャップ及びEFDディスペンサの付いたスプレーコーター(ロードアイランド州、イーストプロビデンスのEFD社)。
【0135】
調製
1.IPA中にて15分間ステントを超音波処理した。
2.最も近いμgまで各ステントを計量した。
3.5つのステント試料を調製した。
A.A群及びD群
i)以下の条件:3回パス、3秒噴霧、吹き付けない、のもとでCERにてスプレー被覆工程を行った。
ii)最後のパス時に最も近いμgまで各ステントを計量した。
iii)60℃にて4時間、試料を焼成した。
iv)バルーンカテーテルとともにステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の生理食塩水に沈めた。
B.B群及びE群
i)試料を試料ホルダーに入れた。プラズママシーンを用いてアルゴンプラズマ処理を行った。
ii)以下の条件:3回パス、3秒噴霧、吹き付けない、のもとでCERにてスプレー被覆工程を行った。
iii)最後のパス時に最も近いμgまで各ステントを計量した。
iv)60℃にて4時間、試料を焼成した。
v)バルーンカテーテルとともにステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の生理食塩水に沈めた。
C.C群及びF群
i)試料を試料ホルダーに入れた。アルゴンプラズマ処理を行った。
ii)浸漬/スピン工程を用いて、2%EVAL下地層、1:1DMSO:DMFを塗布した。
iii)120℃にて2時間ステントを焼成した。
iv)60℃にて10時間ステントを焼成した。
v)以下の条件:3回パス、3秒噴霧、吹き付けない、のもとでCERにてスプレー被覆工程を行った。
vi)最後のパス終了時に最も近いμgまで各ステントを計量した。
vii)60℃にて4時間、試料を焼成した。
viii)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の生理食塩水に沈めた。
【0136】
試験手順
各群の3つの試料を調べた。湿式流れ試験:
1.37℃の生理食塩水中で3.0mmのTecoflexチュービング内にステントを拡張した。
2.湿式流れ試験を18時間行った。
3.ステントキャッチャーによりTecoflexチュービングからステントを取り出した。
4.以下のカテゴリー:欠損の種類、欠損のサイズ、欠損の位置並びにリング3、5及び7における剥離欠損に基づいて欠損を計数する。
5.薬物の喪失及び水の取り込みのためにステント重量は測定可能ではなかった。
6.試験試料はすべて薬物を含有するステントに適当であるPPEにより取り扱った。
【0137】
データの要約
【表13】

【0138】
考察
剥離欠損は、被覆がステントから分離した区域として定義される。リング3、5及び7のステントのOD/側壁にて剥離欠損の数を数えた。流れ領域は、ステント表面の内径(「ID」)であった。OD表面への損傷の一部は、Tecoflexチュービングにより拡大されえた。C群及びF群(EVAL下地)で見られた剥離欠損の数は、流速にかかわりなく他の2つの試験群よりも明らかに少なかった。流速を高めてもさらなる剥離欠損は誘導されなかった。
【0139】
(実施例32)
目的
本実験の目的は、EVAL下地層を有するステンレス鋼ステントへのアクチノマイシンDを含有する被覆の付着特性を調べることであった。37℃に加熱した生理食塩水の湿式流れ試験条件で被覆したステントを調べた。選択した数のステントリングにおける「剥離欠損」の数を観察した。「剥離欠損」は、被覆を欠いたステント表面の位置、すなわち、100倍未満の光学的拡大で見える裸の金属又は下塗層として定義される。
【表14】

【0140】
材料及び器具
1.10個の13mmの被覆したSoloステント、IPA中で15分間超音波処理して清浄した;
2.ステントを拡張するための10本のバルーンカテーテル又は部分組み立て品;
3.1:1THF:DMSO中の15%EVAL溶液;
4.アクチノマイシンD溶液(3:1のEVAL:ActDを伴う1:1THF:DMSO);
5.Tecoflexチュービング
6.生理食塩水
7.糸屑の出ないワイプSU00126又は同等品;
8.100%のIPA;
9.オーブン;
10.タイマー;
11.プラズママシーン(Advanced Plasma Systemから入手可能);
12.超音波洗浄機;
13.0.1μgの最小変位のメトラーバランス
【0141】
調製
1.IPA中にて15分間ステントを超音波処理した。
2.最も近いμgまで各ステントを計量した。
3.各群5つのステント試料を調製した。
A群(対照)
i)試料ホルダーに試料を平らに置いた。アルゴンプラズマ処理を行った。
ii)浸漬/スピン法を用いて、すなわち、6000rpmで1分遠心して1:1DMSO:DMFのEVAL下地層を塗布した。
iii)対流オーブン中で140℃にて2時間ステントを焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)減圧オーブンで60℃にて2時間ステントを焼成した。
vi)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
vii)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
viii)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
ix)60℃にて4時間試料を焼成した。
x)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
xi)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
B.B群
i)試料ホルダーに試料を平らに置いた。アルゴンプラズマ処理を行った。
ii)6000rpmで1分間の浸漬/スピン法を用いて1:1DMSO:DMFのEVAL下地層を塗布した。
iii)対流オーブン中で120℃にて2時間ステントを焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)減圧オーブンで60℃にて10時間ステントを焼成した。
vi)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
vii)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
viii)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
ix)60℃にて4時間試料を焼成した。
x)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
xi)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
【0142】
試験手順
1.一晩、約18時間、湿式流れ試験を行った。
2.ステントキャッチャーによりTecoflexチュービングからステントを取り出した。
3.ステントODでのリング3、5及び7における剥離欠損に基づいて欠損を数えた。同一リングのIDにおける欠損を数えた。
4.薬物の喪失及び水の取り込みのためにステント重量は測定可能ではなかった。
5.試験試料はすべて薬物を含有するステントに適当であるPPEにより取り扱った。
【0143】
データの要約及び結果
【表15】

【0144】
(実施例33)
目的
本試験の目的は、EVAL下地層を有するステンレス鋼ステントへのアクチノマイシンDを含有する被覆の付着特性を調べることであった。37℃に加熱した生理食塩水の湿式流れ試験条件で被覆したステントを調べた。選択した数のステントリングにおける「剥離欠損」の数を観察した。「剥離欠損」は、被覆を欠いたステント表面の位置、すなわち、100倍以下の光学的拡大で見える裸の金属又は下塗層として定義される。
【表16】

【0145】
材料及び器具
1.25個の13mmの被覆したSoloステント、IPA中で15分間超音波処理して清浄した;
2.ステントを拡張するための25本のバルーンカテーテル又は部分組み立て品;
3.1:1THF:DMSO中の2%EVAL溶液;
4.アクチノマイシンD溶液、3:1のEVAL:ActDを伴う1:1THF:DMSO;
5.3.0mmTecoflexチュービング
6.生理食塩水
7.糸屑の出ないワイプSU00126又は同等品;
8.100%のIPA;
9.対流オーブン;
10.タイマー;
11.プラズママシーン;
12.超音波洗浄機;
13.0.1μgの最小変位のメトラーバランス
【0146】
調製
1.IPA中にて15分間ステントを超音波処理した。
2.最も近いμgまで各ステントを計量した。
3.各群5つのステント試料を調製した。
A.A群(対照)
i)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
ii)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
iii)60℃にて4時間試料を焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
B.B群
i)試料ホルダーに試料を平らに置いた。アルゴンプラズマ処理を行った。
ii)浸漬/スピン法を用いて1:1DMSO:DMFのEVAL下地層を塗布した(6000rpmで1分間)。
iii)対流オーブン中で140℃にて4時間ステントを焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
vi)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
vii)60℃にて4時間試料を焼成した。
viii)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
ix)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
C.C群
i)浸漬/スピン法を用いて1:1DMSO:DMFのEVAL下地層を塗布した(6000rpmで1分間)。
ii)対流オーブン中で140℃にて4時間ステントを焼成した。
iii)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
iv)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
v)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
vi)60℃にて4時間試料を焼成した。
vii)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
viii)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
D.D群
i)試料ホルダーに試料を平らに置いた。アルゴンプラズマ処理を行った。
ii)ステント上に下地層(2%EVAL、1:1DMF:DMSO)をスプレー被覆した。1.5秒の噴霧時間、1〜2回のパスを使って10〜40μgの被覆を達成した。
iii)対流オーブン中で140℃にて4時間ステントを焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
vi)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
vii)60℃にて4時間試料を焼成した。
viii)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
ix)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
E.E群
i)ステント上に下地層(2%EVAL、1:1DMF:DMSO)をスプレー被覆した。1.5秒の噴霧時間、1〜2回のパスを使って10〜40μgの被覆を達成した。
ii)対流オーブン中で140℃にて4時間ステントを焼成した。
iii)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
iv)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
v)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
vi)60℃にて4時間試料を焼成した。
vii)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
viii)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
【0147】
試験手順
1.一晩、約18時間、湿式流れ試験を行った。
2.ステントキャッチャーによりTecoflexチュービングからステントを取り出した。
3.ステントODでのリング1、3、5及び7における剥離欠損に基づいて欠損を数えた。同一リングのIDにおける欠損を数えた。
4.薬物の喪失及び水の取り込みのためにステント重量は測定可能ではなかった。
5.試験試料はすべて薬物を含有するステントに適当であるPPEにより取り扱った。
【0148】
データの要約及び結果
【表17】

【0149】
考察
下地被覆ステントの剥離欠損対未処理の対照の剥離欠損
EVAL下地層を塗布した場合のTri-Starステントへの薬物を含有する被覆の付着性の改善を、剥離欠損の数に基づいて説明する。4つの処理群はすべて、未処理の対照ステントに比べてステント当たり有意に少ない剥離欠損を示した。下地としてのスプレー被覆された1:1DMF:DMSO中2%EVALの使用によって、Tri-StarステントへのアクチノマイシンDを含有する被覆の付着性は、対照に比べて有意に改善された。スプレー被覆した下地は、浸漬スピン堆積した下地に比べてやや高い剥離欠損数を生じた。
【0150】
(実施例34)
目的
本実験の目的は、EVAL下地層を有するステンレス鋼ステントへのアクチノマイシンDを含有する被覆の付着特性を調べることであった。さらに具体的には、本実験は、異なった焼成時間の最終結果に及ぼす影響を説明しようとした。37℃に加熱した生理食塩水の湿式流れ試験の条件下で被覆したステントを調べた。ステントリングの選択した数での「剥離欠損」を観察した。
【表18】

【0151】
材料及び器具
1.25個の13mmの被覆したSoloステント、IPA中で15分間超音波処理して清浄した;
2.ステントを拡張するための25本のバルーンカテーテル又は部分組み立て品;
3.1:1THF:DMSO中の2%EVAL溶液;
4.アクチノマイシンD溶液、3:1のEVAL:ActDを伴う1:1THF:DMSO;
5.3.0mmTecoflexチュービング
6.生理食塩水
7.糸屑の出ないワイプSU00126又は同等品;
8.100%のIPA;
9.対流オーブン;
10.タイマー;
11.プラズママシーン;
12.超音波洗浄機;
13.0.1μgの最小変位のメトラーバランス
【0152】
調製
1.IPA中にて15分間ステントを超音波処理した。
2.最も近いμgまで各ステントを計量した。
3.各群5つのステント試料を調製した。
A.A群(対照)
i)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
ii)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
iii)50℃にて240分試料を焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
B.B群
i)試料ホルダーに試料を平らに置いた。アルゴンプラズマ処理を行った。
ii)ステント上に下地層(2%EVAL、1:1DMF:DMSO)をスプレー被覆した。1.5秒の噴霧時間、1〜2回のパスを使って10〜40μgの被覆を達成した。
iii)対流オーブン中で140℃にて15分間ステントを焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
vi)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
vii)50℃にて240分間試料を焼成した。
viii)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
ix)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
C.C群
i)試料ホルダーに試料を平らに置いた。アルゴンプラズマ処理を行った。
ii)ステント上に下地層(2%EVAL、1:1DMF:DMSO)をスプレー被覆した。1.5秒の噴霧時間、1〜2回のパスを使って10〜40μgの被覆を達成した。
iii)対流オーブン中で140℃にて30分間ステントを焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
vi)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
vii)50℃にて240分間試料を焼成した。
viii)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
ix)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
D.D群
i)試料ホルダーに試料を平らに置いた。アルゴンプラズマ処理を行った。
ii)ステント上に下地層(2%EVAL、1:1DMF:DMSO)をスプレー被覆した。1.5秒の噴霧時間、1〜2回のパスを使って10〜40μgの被覆を達成した。
iii)対流オーブン中で140℃にて60分間ステントを焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
vi)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
vii)50℃にて240分間試料を焼成した。
viii)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
ix)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
E.E群
i)試料ホルダーに試料を平らに置いた。アルゴンプラズマ処理を行った。
ii)ステント上に下地層(2%EVAL、1:1DMF:DMSO)をスプレー被覆した。1.5秒の噴霧時間、1〜2回のパスを使って10〜40μgの被覆を達成した。
iii)対流オーブン中で140℃にて120分間ステントを焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
vi)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
vii)50℃にて240分間試料を焼成した。
viii)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
ix)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
【0153】
試験手順
1.一晩、約18時間、湿式流れ試験を行った。
2.ステントキャッチャーによりTecoflexチュービングからステントを取り出した。
3.ステントODでのリング3、5及び7における剥離欠損に基づいて欠損を数えた。同一リングのIDにおける欠損を数えた。
4.薬物の喪失及び水の取り込みのためにステント重量は測定可能ではなかった。
5.試験試料はすべて薬物を含有するステントに適当であるPPEにより取り扱った。
【0154】
データの要約及び結果
【表19】

【0155】
考察
下地層のある処理群に比べて、下地層のない対照群は、有意に多い剥離欠損を有した。焼成時間の短い(15分及び30分)群は、焼成時間の長い群よりも高い欠損数を有した。
【0156】
(実施例35)
目的
本実験の目的は、EVAL下地層を有するステンレス鋼ステントへのアクチノマイシンDを含有する被覆の付着特性を調べることであった。さらに具体的には、異なった溶媒系(たとえば、THF及びDMF)を評価した。37℃に加熱した生理食塩水の湿式流れ試験の条件下で被覆したステントを調べた。ステントリングの選択した数での「剥離欠損」の数を観察した。
【表20】

【0157】
材料及び器具
1.25個の13mmの被覆したSoloステント、IPA中で15分間超音波処理して清浄した;
2.ステントを拡張するための25本のバルーンカテーテル又は部分組み立て品;
3.1:1DMF:DMSO中の2%EVAL溶液;
4.1:1THF:DMSO中の2%EVAL溶液;
5.アクチノマイシンD溶液、3:1のEVAL:ActD、2%EVALを伴う1:1THF:DMSO;
6.3.0mmTecoflexチュービング
7.生理食塩水
8.糸屑の出ないワイプSU00126又は同等品;
9.100%のIPA;
10.対流オーブン;
11.タイマー;
12.プラズママシーン;
13.超音波洗浄機;及び
14.0.1μgの最小変位のメトラーバランス
【0158】
調製
1.IPA中にて15分間ステントを超音波処理した。
2.最も近いμgまで各ステントを計量した。
3.各群5つのステント試料を調製した。
A.A群(対照)
i)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
ii)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
iii)50℃にて240分試料を焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
B.B群
i)試料ホルダーに試料を平らに置いた。アルゴンプラズマ処理を行った。
ii)ステント上に下地層(2%EVAL、1:1DMF:DMSO)をスプレー被覆した。1.5秒の噴霧時間、1〜2回のパスを使って10〜40μgの被覆を達成した。
iii)対流オーブン中で140℃にて15分間ステントを焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
vi)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
vii)50℃にて240分間試料を焼成した。
viii)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
ix)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
C.C群
i)試料ホルダーに試料を平らに置いた。アルゴンプラズマ処理を行った。
ii)ステント上に下地層(2%EVAL、1:1DMF:DMSO)をスプレー被覆した。1.5秒の噴霧時間、1〜2回のパスを使って10〜40μgの被覆を達成した。
iii)対流オーブン中で140℃にて60分間ステントを焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
vi)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
vii)50℃にて240分間試料を焼成した。
viii)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
ix)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
D.D群
i)試料ホルダーに試料を平らに置いた。アルゴンプラズマ処理を行った。
ii)ステント上に下地層(2%EVAL、1:1DMF:DMSO)をスプレー被覆した。1.5秒の噴霧時間、1〜2回のパスを使って10〜40μgの被覆を達成した。
iii)対流オーブン中で140℃にて240分間ステントを焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
vi)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
vii)50℃にて240分間試料を焼成した。
viii)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
ix)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
E.E群
i)試料ホルダーに試料を平らに置いた。アルゴンプラズマ処理を行った。
ii)ステント上に下地層(2%EVAL、1:1THF:DMSO)をスプレー被覆した。1.5秒の噴霧時間、1〜2回のパスを使って10〜40μgの被覆を達成した。
iii)対流オーブン中で140℃にて60分間ステントを焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
v)以下の条件下、3回のパス、3秒の噴霧、吹き付けなしで、CERでスプレー被覆法を行った。
vi)最後のパスの終了時に最も近いμgまで各試料を計量した。
vii)50℃にて240分間試料を焼成した。
viii)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
ix)バルーンカテーテルと共にステントをTecoflexチュービング内に留置し、37℃の水に沈めた。
【0159】
試験手順
1.一晩、約18時間、湿式流れ試験を行った。
2.ステントキャッチャーによりTecoflexチュービングからステントを取り出した。
3.ステントODでのリング3、5及び7における剥離欠損に基づいて欠損を数えた。同一リングのIDにおける欠損を数えた。
4.薬物の喪失及び水の取り込みのためにステント重量は測定可能ではなかった。
5.試験試料はすべて薬物を含有するステントに適当であるPPEにより取り扱った。
【0160】
データの要約及び結果
【表21】

【0161】
(実施例36)
目的
本実験の目的は、ステントに塗布されたDMSO:THFの溶液から作製されたEVAL下地層を有するステンレス鋼ステントへのアクチノマイシンDを含有する被覆の付着特性を調べることであった。37℃に加熱した生理食塩水の湿式流れ試験の条件下で被覆したステントを調べた。ステントリングの選択した数での「剥離欠損」の数を観察した。
【表22】

【0162】
材料及び器具
1.10個の13mmの被覆したSoloステント、IPA中で15分間超音波処理して清浄した;
2.1:1THF:DMSO中の2%EVAL溶液;
3.ステントを拡張するための10本のバルーンカテーテル;
4.アクチノマイシンD溶液、3:1のEVAL:ActD、2%EVALを伴う1:1THF:DMSO;
5.4.0mmTecoflexチュービング
6.生理食塩水
7.糸屑の出ないワイプSU00126又は同等品;
8.100%のIPA;
9.対流オーブン;
10.タイマー;
11.プラズママシーン;
12.超音波洗浄機;
13.0.1mgの最小変位のメトラーバランス;
14.噴霧/焼成用心棒及びチップ;
15.流量計、N1429;
16.最低倍率50倍の顕微鏡;
17.並進ステージなしの噴霧装置付きEFDコントローラ;及び
18.並進ステージ付きの噴霧装置付きのEFDコントローラ
【0163】
調製
1.IPA中にて15分間ステントを超音波処理した。
2.最も近いμgまで各ステントを計量した。
3.各群のステント試料を調製する。
A.下地被覆
i)試料ホルダーに試料を置いた。アルゴンプラズマ処理を行った。
ii)ステント上に下地層(2%EVAL、1:1THF:DMSO)をスプレー被覆した。1.5秒の噴霧時間、速度7を使って10〜40μgの被覆を達成した。
iii)対流オーブン中で140℃にて特定の時間ステントを焼成した。
iv)最も近いμgまで各ステントの重量測定を行った。
B.薬物被覆
i)1回当たり3秒の3回のパスで、3:1EVAL:ActD、2%EVAL、1:1DMSO:THFの溶液をステントに噴霧した。各噴霧パス後、対流オーブンにて50℃で15分間、ステントを乾燥した。
ii)ステントを計量し、記録した。薬物被覆の重量が目標重量に一致したら、ステントをオーブンに240分間戻した。重量増加が一致しなければ、ステントをグローブボックスに戻し、追加の噴霧被覆を塗布した。後のパスにおける噴霧時間は、目標重量を達成するように調整した。
4.湿式流れ試験用試料の調製
A.バルーンカテーテル上でステントをクリンプした。
B.Tecoflexチュービング中でステントをバルーンカテーテルと共に4.0mmに膨張させ、37℃の水に沈めた。
C.Act−Dが混入した水を有害廃棄物として捨てた。
【0164】
試験方法/手順
1.流速を50mL/分に設定する。
2..一晩、約18時間、湿式流れ試験を行った。
3.ステントキャッチャーによりTecoflexチュービングからステントを取り出した。
4..ステントODでのリング1、3、5、7及び10における剥離欠損に基づいて欠損を数えた。同一リングのIDにおける欠損を数えた。
5.試験試料はすべて薬物を含有するステントに適当であるPPEにより取り扱った。
【0165】
データの要約及び結果
【表23】

【0166】
(実施例37)
Multi-Link Tetra(商標)ステント(ガイダント社から入手可能)が提供された。ジメチルアセトアミド(DMAC)中の2%EVAL溶液を調製した。2%EVAL溶液をステントに噴霧した。次いで、約140℃にて約1時間、オーブンでステントを加熱し、層からDMAC溶媒を本質的に除いて下地層を形成した。下地被覆上のEVALの重量は160μgであると判定された。EVALと有効成分クロベタソールの混合物を含有するもう1つの溶液をDMAC溶媒中で調製した。次いで、EVAL−クロベタソール溶液を下地被覆上に噴霧した。次いで、約50℃にて約2時間、オーブンでステントを加熱し、層からDMAC溶媒を本質的に除いて薬物貯蔵領域を形成した。薬物貯蔵領域の重量は500μgであると判定された。次いで、2%EVAL溶液をステントに噴霧した。次いで、約50℃にて約2時間、オーブンでステントを加熱し、層からDMAC溶媒を本質的に除いてバリア層を形成した。バリア層の重量は300μgであると判定された。
【0167】
最終的に乾燥した後、被覆は透明であり、ステントに光沢の有る光を与えた。約3mmに拡張されることにより、ステントを模倣試験に暴露した。剥離は検出されなかった。また、塗布されたように、被覆は合計で、2重量%のEVAL、2重量%のクロベタソール及び96重量%のDMACを含有すると計算された。
【0168】
(実施例38)
18mmのVision-Dステント(ガイダント社に準備されたコバルト/クロム合金のステント)が提供された。2つの変数:(1)下地層の厚さ及び(2)薬物:ポリマーの比を検討するためにステントを異なる試験群に分けた。
【0169】
60%のアセトン及び40%のキシレンを含有する溶媒にポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)を混合し2%のPBMA溶液を作ることによって下地溶液を調製した。複数の噴霧サイクルにより、2%のPBMA溶液を試験群から選択されたステントに噴霧した。各噴霧を繰り返した後、暖かい空気をステントに向け、蒸発を促進した。次いで、約80℃にて約1/2時間、オーブンでステントを加熱し、層から溶媒を本質的に除いて下地被覆を形成した。次いで下地被覆上のPBMAの重量を測定した。
【0170】
以下の表に下地層を含む各層についての噴霧法のパラメータを要約する。
【表24】

【0171】
60%のアセトン及び40%のキシレンを含有する溶媒中でPBMAと有効成分、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(EVEROLIMUS)とを混合することによりもう1つの溶液を調製した。次いで、下地被覆の塗布と同様の噴霧法パラメータで、下地被覆の上にポリマー/薬物溶液を噴霧した。個々のステントに噴霧された薬物溶液の量は、試験群に依存した。各試験群は3つのステントを含有した。次いで、約80℃にて約1/2時間、オーブンでステントを加熱し、層から溶媒を本質的に除いて薬物貯蔵層を形成した。次いで貯蔵領域の重量を測定した。
【0172】
15%アセトン、40%キシレン及び45%ヒドロフルオロエーテル(HFE)(Novec(商標)、ミネソタ州、セントポールの3Mスペシャルティ・マテリアルズから入手可能)を含有する溶媒とPBMAを混合し、2%のPBMA溶液を作製することによりバリア層を調製した。次いで、下地被覆の塗布と同じ噴霧法パラメータで、PBMA溶液を貯蔵被覆上に噴霧した。次いで、約80℃にて約1/2時間、オーブンでステントを加熱し、溶媒を本質的に除いてバリア層を形成した。
【0173】
最終的な乾燥の後、被覆を拡張して被覆の機械的整合性を調べた。特に、各試験群のステントを約37℃の水にて約3.5mmの内径に拡張した。次いで、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて被覆を調べ、ステントの拡張の結果としての目に見える亀裂があるかどうかを確認した。結果が以下の表で明らかにするように、厚い下地層を持つステントほど、大きな機械的整合性を有する。
【表25】

【0174】
(実施例39)
18mmのVision-Dステントが提供された。3つの変数:(1)下地層の厚さ、(2)薬物:ポリマーの比、及び(3)下地層に使用するポリマーの種類を検討するために、ステントを様々な試験群に分けた。
【0175】
60%のアセトン及び40%のキシレンを含有する溶媒とPBMAを混合して、2%のPBMA溶液を作製することにより第1の下地溶液を調製した。80%のジメチルアセトアミド(DMAC)及び20%のペンタンを含有する溶媒とEVALを混合し、4%のEVAL溶液を作製することにより第2の下地溶液を調製した。選択された試験群のステントに、2%PBMA溶液又は4%EVAL溶液のいずれかを複数の噴霧サイクルで噴霧した。各噴霧の反復の後、温めた空気をステントに向けて蒸発を促進した。次いで、約80℃にて約2時間、オーブンでステントを加熱し、層から溶媒を本質的に除いて下地被覆を形成した。次いで、下地被覆におけるPBMA又はEVALの重量を測定した。
【0176】
以下の表は、下地層を含む各層のための噴霧法パラメータを要約する。
【表26】

【0177】
80%のDMAC及び20%のペンタンを含有する溶媒にEVAL及び有効成分、エバロリムスを混合することによりもう1つの溶液を調製した。次いで、ポリマー−薬物溶液を下地被覆に噴霧した。個々のステントに噴霧した薬物溶液の量は、試験群に依存した。各試験群は5つのステントを含有した。次いで、ステントを80℃にて2時間、オーブンで加熱し、本質的に溶媒を除いて薬物貯蔵層を形成した。次いで貯蔵領域の重量を測定した。
【0178】
80%のDMAC及び20%のペンタンを含有する溶媒をEVALと混合し、4%EVAL溶液を作製することにより、バリア層溶液を調製した。次いでEVAL溶液を貯蔵層に噴霧した。次いで、ステントを80℃にて2時間、オーブンで加熱し、本質的に溶媒を除いてバリア層を形成した。以下の表に試験群のパラメータを要約する。
【表27】

【0179】
最終的な乾燥の後、被覆を拡張して被覆の機械的整合性を調べた。特に、各試験群のステントを37℃の水で5分間水和した。次いで、バルーンカテーテルを用いて内径約3.5mmを有するようにステントを拡張した。次いで、37℃にてステントを乾燥し、SEMを用いて、ステントの拡張の結果としての目に見える亀裂があるかどうかを確認した。
【0180】
EVAL下地層を持つステントのSEM写真は、亀裂の数及び深刻さは、下地被覆の厚さの増加に伴って減少することを示した。結果はまた、薬物対ポリマーの比が高まるにつれて、下地層の厚さは、亀裂を防ぐ又は減らすために厚くすべきであることを示唆している。亀裂の最小数は、相対的に薄い下地層(図8B)を有するC1群よりも有意に少ない亀裂を有するB2群(図8A)で認められた。B2群は、160μgのEVAL下地層を有し、薬物対ポリマーの比は、1:2.3(すなわち、約30%の薬物装填)であった。
【0181】
PBMA下地層を持つステントのSEM写真も、亀裂の数及び深刻さは、下地被覆の厚さの増加に伴って減少することを示した。たとえば、160μgの下地(図9A)を持つE2群は、F1群(図9B)よりも有意に少ない亀裂を有した。
【0182】
(実施例40)
本実施例は、下地層のための多孔性マトリクスの形成を記載する。60%のアセトン、20%のキシレン及び20%のエチレングリコールを含有する溶媒溶液とPBMAを穏やかに混合することにより4%(w/w)のPBMA溶液を調製する。エチレングリコールはアセトン及びキシレンよりもPBMAに対する相溶性が低い。ポリマー溶液を18mmのVision-Dステントに塗布する。次いで、ステントを80℃にて1/2時間、オーブンで加熱し、本質的に溶媒を除いて下地層を形成する。組成物中のエチレングリコールの存在のために蒸発工程の間に下地層に多孔性マトリクスが形成される。
【0183】
(実施例41)
本実施例は、下地層のための多孔性マトリクスの形成を記載する。EVALのペレットが提供される。低温でペレットを粉砕することによりEVAL粉末を形成する。粉砕後、粉末は、約1ミクロン〜約10ミクロンの平均粒径を有する。18mmのVision-Dステントの外表面に粉末を塗布する。高分子粉末を少量の非溶媒と混合し、粉末にペースト様の粘度を与えることにより粉末のステント表面への付着性を改善することができる。次いで、粒子が一緒に押圧されるようにステント上の粉末に圧力を適用する。次いでステントをオーブンに入れ、約150℃〜約170℃にて、約15分間〜約1時間加熱する。この焼結工程の後、EVAL粒子の格子の間に空隙が残り、多孔性の空洞が形成される。
【0184】
(実施例42)
本実施例は、下地層のための多孔性マトリクスの形成を記載する。80%のDMAC及び20%のペンタン中の2%(w/w)のEVAL溶液を調製する。18mmのVision-Dにポリマー溶液を塗布する。次いで、100%ペンタンをステント表面に塗布し、ポリマーを沈殿させて多孔性マトリクスを形成する。ステントを80℃にて2時間、オーブンで加熱し、本質的に溶媒を除いて下地層を形成する。
【0185】
本発明の特定の実施の態様を示し、記載してきたが、さらに広い側面において本発明から逸脱することなく、変更及び修正を行うことができることは当業者に明白であろう。従って、添付のクレームは、本発明の真の精神及び範囲の中に入るようにそのような変更及び修正のすべてをその範囲内に包含すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1A】本発明の実施の態様の一部に係る被覆を説明する。
【図1B】本発明の実施の態様の一部に係る被覆を説明する。
【図1C】本発明の実施の態様の一部に係る被覆を説明する。
【図1D】本発明の実施の態様の一部に係る被覆を説明する。
【図1E】本発明の実施の態様の一部に係る被覆を説明する。
【図2A】異なった層を有する被覆を説明する。
【図2B】異なった層を有する被覆を説明する。
【図3A】接触角Φ1を有する固形基体上の流体を説明する。
【図3B】接触角Φ2を有する固形基体上の流体を説明する。
【図4】実施例4に従って作製された、ビンブラスチンを含浸させたエチレンビニルアルコールコポリマーの被覆を持つステントの溶出特性をグラフで説明する。
【図5】平滑筋細胞の増殖に対するアクチノマイシンD,マイトマイシン及びドセタキセルの効果を示す、実施例15による試験管内実験のデータを説明する。
【図6A】実施例16による対照群における冠状動脈の組織スライドの写真である。
【図6B】実施例16によるアクチノマイシンD群における冠状動脈の組織スライドの写真である。
【図7A】実施例26による対照群における冠状動脈の組織スライドの写真である。
【図7B】実施例26によるアクチノマイシンD群における冠状動脈の組織スライドの写真である。
【図8A】実施例39に従って塗布されたエチレンビニルアルコールコポリマーによる下地層を有するステント被覆の走査電子顕微鏡写真である。
【図8B】実施例39に従って塗布されたエチレンビニルアルコールコポリマーによる下地層を有するステント被覆の走査電子顕微鏡写真である。
【図9A】実施例39に従って塗布されたポリ(ブチルメタクリレート)による下地層を有するステント被覆の走査電子顕微鏡写真である。
【図9B】実施例39に従って塗布されたポリ(ブチルメタクリレート)による下地層を有するステント被覆の走査電子顕微鏡写真である。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
植え込み可能な器具の被覆を形成する方法であって、
植え込み可能な器具の表面の少なくとも一部にポリマーを含む、Xの重量測定値を有する下地層を形成することと、
下地層の少なくとも選択された部分にポリマー及び有効成分を含む、Yの重量測定値を有する貯蔵層を形成することと、
を有し、X/Yが0.25以上である方法。
【請求項2】
前記被覆が30%以上の薬物装填を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
X/Yが0.33以上である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記貯蔵層の少なくとも選択された部分にバリア層を形成して、患者の体内に器具を挿入した後、貯蔵層から有効成分が放出される速度を抑えることをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記下地層が、エチレンビニルアルコールコポリマー又はポリ(ブチルメタクリレート)を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
貯蔵層の形成に先立って下地層の表面に凹凸を形成することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記下地層がある程度の多孔性を有する領域を少なくとも含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
植え込み可能な器具の被覆を形成する方法であって、
植え込み可能な器具の表面の少なくとも一部にポリマーを含む、Xの厚さを有する下地層を形成しすることと、
下地層の少なくとも選択された部分にポリマー及び有効成分を含む、Yの厚さを有する貯蔵層を形成することと、
を有する、X/Yが0.25以上である方法。
【請求項9】
厚さXが約0.5ミクロン〜約3ミクロンであり、厚さYが約1ミクロン〜約10ミクロンである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
有効成分の送達用の被覆を含む植え込み可能な器具であって、被覆が、
植え込み可能な器具の表面の少なくとも一部にポリマーを含む、厚さXを有する下地領域と、
前記下地領域の少なくとも選択された部分にポリマー及び有効成分を含む、厚さYを有する貯蔵領域と、を含み、
前記有効成分が前記貯蔵領域から前記下地領域に移動する前に、下地領域の外表面から植え込み可能な器具の表面まで、厚さXを測定し、X/Yが0.25以上である植え込み可能な器具。
【請求項11】
前記植え込み可能な器具が、バルーン拡張可能なステント及び自己拡張可能なステントから成る群から選択される請求項10の植え込み可能な器具。
【請求項12】
前記下地領域又は貯蔵領域がエチレンビニルアルコールコポリマー又はポリ(ブチルメタクリレート)を含む請求項10に記載の植え込み可能な器具。
【請求項13】
有効成分が、ヘパリン、ヘパリン硫酸、疎水性対イオンを有するヘパリン、マンノース−6−リン酸、スーパーオキシドジスムターゼ、クロベタゾール、レチノイン酸、ラパマイシン、ラパマイシン類縁体及び誘導体、スラミン、アジアチコシド、ヒアルロナン並びにこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項10に記載の植え込み可能な器具。
【請求項14】
患者の体内に器具を挿入した後、有効成分が被覆から放出される速度を抑えるために貯蔵層の少なくとも選択された部分に位置するバリア領域をさらに含む請求項10に記載の植え込み可能な器具。
【請求項15】
下地領域が下地領域と貯蔵領域との界面から下地に延びる多孔性マトリクスを含む請求項10に記載の植え込み可能な器具。
【請求項16】
有効成分の送達用の被覆を含むステントであって、前記被覆が、ポリマーを含む下地領域並びにポリマー及び有効成分を含む貯蔵領域を含み、ステントを拡張する際、被覆に有意な亀裂を生じずに貯蔵領域において30%の薬物装填ができるように、下地領域の厚さ又は重量が十分に大きい、ステント。

【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−509598(P2006−509598A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565200(P2004−565200)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/038572
【国際公開番号】WO2004/060428
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(504183388)アドヴァンスド カーディオヴァスキュラー システムズ, インコーポレイテッド (40)
【Fターム(参考)】