説明

植栽パネル、壁面緑化構造及び壁面緑化工法

【課題】植物の重み等によって壁面から落下したり、植物が植栽された基盤から剥離しないことを課題とする。
【解決手段】植栽パネル10を構成するパネル12には、開口部16が形成されており、この開口部16の周囲には、植物50の根を受けるポケット14が設けられている。これにより、植栽パネル10を壁面24に取り付けたとき、ポケット14で植物50の根の育成に必要な土壌48が受けられるため、植物50が良好に生育する。また、ポケット14が植物50の自重を受けるため、植物50が成長しても、植栽パネル10から落下したり、風が植物50に当たって植栽パネル10から剥離することがない。さらに、ポケット14に植栽された植物50の根は、開口部16から植栽パネル10の裏面に侵入する。これにより、植物50の根は、植栽パネル10の裏面に設けられた保水吸水シート34に絡みついて、しっかりと固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面を緑化する植物が植栽される植栽パネル、この植栽パネルを用いて壁面を緑化する壁面緑化構造及び、壁面緑化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物外壁等の垂直な壁面の緑化は、気温緩和効果(夏期には構造物の温度上昇抑制、冬期には構造物の断熱効果)、防音効果、暴風効果、防火的効用や火災延焼防止効果が認められ、景観の向上および植物のもつ環境改善効果もある。
【0003】
そこで、壁面にフェルトや不織布からなる基盤を配置して、この中に植物の苗を植え込むことで、垂直な壁面の緑化を行う方法が採用されている(特許文献1参照)。しかし、特許文献1の方法では、基盤に植え込んだ植物は、地面に対して略平行に生育するので、植物が成長することにより、植物の重みや植物が風から受ける力によって、基盤が変形してしまったり、基盤から植物が剥離する恐れもある。
【0004】
また、プラスチック素材からなる基板にポケットを設け、このポケットにポット栽培された植物を設置する方法がある(特許文献2参照)。特許文献2では、ポケットに傾斜が設けられ、植物は地面に対してやや斜め上方向に生育するようになっている。しかし、植物の根はポケット内でしか成長できないため、植物の大きな成長が見込めない。また、降雨の少ない乾期には、所定の頻度で各ポケット内に灌水を行う必要がある。
【特許文献1】特開2004254559号公報
【特許文献2】特開2006−20621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、植物の重み等によって壁面から落下したり、植物が植栽された基盤から剥離しないことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明の植栽パネルは、板状のパネルと、前記パネルに形成された開口部と、前記開口部の周囲から突設され、植物の根部を受ける根受部と、前記パネルの裏面に形成された凹部と、を有して構成されていることを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、板状のパネルには、開口部が形成されており、この開口部の周囲には、植物の根を受ける根受部が突設されている。
【0008】
これにより、植栽パネルを壁面に取り付けたとき、根受部で植物の根の育成に必要な土壌が受けられるため、植物が良好に生育する。
【0009】
また、壁面にフェルト等の基盤を配置して、この中に苗を植え込む従来技術と比較して、根受部が植物の自重を受けるため、植物が成長しても植物自体の重みによってパネルから落下したり、風が植物に当たってパネルから剥離することがない。
【0010】
さらに、根受部に植栽された植物の根は、開口部からパネルの裏面に侵入する。これにより、植栽パネルの裏面に例えば保水層を設けることで、この保水層に植物の根が絡みついて、植物がしっかりと固定される。
【0011】
また、パネルの裏面に形成された凹部に沿って、植物の根が伸張可能とされている。これにより、開口部を通じてパネルの裏面に伸張した植物の根が、溝に沿って這うことができるので、根が広範囲にわたって伸張可能となり、植物が成長しやすい。
【0012】
請求項2に記載の植栽パネルは、前記凹部は、格子状の溝とされていることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、パネルの裏面には、格子状の溝が形成されている。このように、凹部を溝状とすることで、パネルの裏面に容易に凹部が形成できる。
【0014】
請求項3に記載の植栽パネルは、前記パネルの裏面に、四角錐台状の凸部を所定の間隔で並べて前記凹部を形成していることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、パネルの裏面には、四角錐台状の凸部を所定の間隔で並べることで、複数の凹部を形成している。これにより、パネルの裏面に保水層を設けたとき、この保水層とパネルの間に広い隙間が形成されるので、植物の根がパネルの裏面に沿って伸張しやすく、植物が成長しやすいと共に、植物の根が保水層に絡みつきやすい。
【0016】
請求項4に記載の植栽パネルは、前記パネルの端部には、パネル同士を突き合わせて係合可能とする係合部が設けられていることを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、パネルの端部には係合部が設けられており、パネル同士を付き合わせたとき、係合部が係合するようになっている。これにより、複数の植栽パネルを並設したとき、植栽パネルの端部が壁面から浮き上がりにくくなる。
【0018】
請求項5に記載の発明の壁面緑化構造は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の植栽パネルを、保水層が取り付けられた壁面に固定して構成されたことを特徴としている。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、保水層が取り付けられた壁面に、植栽パネルを固定する。そして、植栽パネルの根受部に土壌を投入して植物を植栽することで、壁面の緑化が行われる。このとき、植物の根は植栽パネルの根受部によって受けられると共に、保水層に絡みつくので、植物が壁面から剥離したり落下する恐れがない。
【0020】
また、保水層には、灌水手段から灌水された水や雨水などが保水され、保水層から植物に水が常に供給されるので、植物を枯らしてしまうことがない。さらに、保水層によって植栽パネルに植栽された植物全体に水が供給されるので、灌水ムラによる植物の枯化を防止できる。
【0021】
請求項6に記載の壁面緑化構造は、前記保水層を背面ボードに固定し、前記背面ボードを壁面に固定したことを特徴としている。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、壁面に固定した背面ボードに保水層を固定する。これにより、保水層が背面ボードを介して壁面に固定されるので、保水層の姿勢が保たれる。また、保水層に植物の根が絡みついても、簡単に保水層が壁面から剥離しない。
【0023】
請求項7に記載の壁面緑化構造は、前記保水層の上部には、該保水層に灌水する灌水手段が設けられていることを特徴としている。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、保水層の上部には灌水手段が取り付けられており、灌水手段によって保水層に灌水される。これにより、植物の生育に必要な水分が保水層で保水されるので、必要に応じて(例えば、乾燥する時期など)保水層から植物の根に水が供給される。したがって、外部から定期的に灌水を行う必要がない。
【0025】
請求項8に記載の壁面緑化構造は、前記灌水手段は、前記保水層の上部が巻き付けられた有孔ホースであることを特徴としている。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、有孔ホースが保水層の上部に巻き付けられている。これにより、有孔ホースから灌水された水は、直接保水層に浸透して全体に行き渡るので、植栽パネルに植栽された植物全体にまんべんなく水分を供給できる。つまり、灌水ムラを引き起こすことがないので、部分的な植物の枯化が防止できる。
【0027】
請求項9に記載の壁面緑化構造は、前記パネルには、前記背面ボードに取り付けられたボルトが挿通可能な挿通孔が形成されていることを特徴としている。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、パネルには挿通孔が形成されており、背面ボードに取り付けられたボルトが挿通可能とされている。これにより、壁面に固定された背面ボードに、植栽パネルを固定する工程が簡単になる。
【0029】
請求項10に記載の発明の壁面緑化工法は、前記パネルの表面から突設され、前記根受部に植栽された植物を保持する横材が固定される固定手段が設けられていることを特徴としている。
【0030】
請求項10に記載の発明によれば、植栽パネルの表面には固定手段が突設され、この固定手段には横材が固定されている。そして、根受部に植栽された植物が、横材に固定される。これにより、根受部に植栽された植物が、根付いていなくても、根受部から落下しない。
【0031】
請求項11に記載の発明の壁面緑化工法は、前記パネルの上下の端面は、該パネルの表面から裏面に向かって下り勾配のテーパが形成されていることを特徴としている。
【0032】
請求項11に記載の発明によれば、パネルの上下の端面には、表面から裏面に向かって下り勾配のテーパが形成されており、パネルの表面に水分が流れ込まないようになっている。これにより、パネルの表面に苔が生えるのを防止できる。また、灌水手段から灌水された水分が、無駄にならずに保水吸水シートを介して植物に供給される。
【0033】
請求項12に記載の発明の壁面緑化工法は、壁面に背面ボードを取り付ける第1の工程と、前記背面ボードに保水層としての保水吸水シートを取り付ける第2の工程と、前記保水吸水シートに、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の植栽パネルを取り付ける第3の工程と、前記植栽パネルの根受部に土壌を投入し、植物を植栽する第4の工程と、を有することを特徴としている。
【0034】
請求項12に記載の発明によれば、壁面に背面ボードを取り付け、この背面ボードに保水層としての保水吸水シートを取り付けた後、保水吸水シートに植栽パネルを取り付ける。そして、植栽パネルの根受部に土壌を投入して植物を植栽することで、壁面の緑化が行われる。
【0035】
請求項13に記載の発明の壁面緑化工法は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の植栽パネルの裏面に、保水層としての保水吸水シートを取り付け、前記保水吸水シートに背面ボードを重ねて、前記植栽パネルと前記保水吸水シートと前記背面ボードを一体に固定し、壁面緑化パネルを形成する工程と、前記壁面緑化パネルを取付手段で、壁面に取り付ける工程と、を有することを特徴としている。
【0036】
請求項13に記載の発明によれば、まず、植栽パネルの裏面に保水吸水シートを取り付け、この保水吸水シートに背面ボードを重ねて、植栽パネルと保水吸水シートと背面ボードを一体に固定し、壁面緑化パネルを形成する。そして、この壁面緑化パネルを、取付手段を用いて壁面に取り付ける。つまり、壁面に背面ボードを取り付け、背面ボードに保水吸水シートを取り付けた後、植栽パネルを保水吸水シートに取り付けるのではなく、予め壁面緑化パネルを形成しておき、この壁面緑化パネルを施工場所に運び込んで、壁面に取り付けることで、壁面の緑化を行う。
【0037】
これにより、風雨の影響を受けない場所で、植栽パネルの根受部に植物を植栽し、植物の根が植栽パネルの根受部内で根付いてから、施工場所に壁面緑化パネルを運び込み、壁面に取り付けることができる。したがって、壁面に取り付けられた壁面緑化パネルの植物は、風雨などによって根受部から落下しにくい。
【0038】
また、植物を根受部に植栽する際に、作業者の手が届く範囲で作業を行うことができるので、壁面に植栽パネルを取り付けてから、根受部に植物を植栽する場合と比較して、作業効率が良くなる。
【0039】
請求項14に記載の発明の壁面緑化工法は、前記取付手段は、前記壁面に固定された固定板と、前記固定板から突出され、前記壁面緑化パネルに形成された孔に挿通される棒材と、前記棒材の先端部分に支持される押え板と、前記棒材に取り付けられ、前記押え板と前記固定板で前記壁面緑化パネルを狭持させる締結手段と、を有して構成されていることを特徴としている。
【0040】
請求項14に記載の発明によれば、棒材が突設された固定板を壁面に固定し、壁面緑化パネルに形成された孔に、この棒材を挿通させる。そして、棒材の先端部分に押え板を支持させ、締結手段によって、押え板と固定板で壁面緑化パネルを挟持する。
【0041】
これにより、壁面緑化パネルは壁面にしっかりと固定されるので、壁面に取り付けた壁面緑化パネルが、壁面から外れてしまう恐れがない。
【0042】
請求項15に記載の発明の壁面緑化工法は、前記壁面に形成された前記壁面緑化パネルが嵌合可能な凹部であることを特徴としている。
【0043】
請求項15に記載の発明によれば、壁面には凹部が形成されており、この凹部には壁面緑化パネルが嵌合可能とされている。これにより、壁面緑化パネルが壁面から出っ張らないので、壁面緑化パネルを取り付けることによって、壁面の周囲の空間が狭くならない。
【0044】
請求項16に記載の発明の壁面緑化工法は、前記取付手段は、前記壁面に取り付けられた前記壁面緑化パネルの周囲に設けられた囲い枠であることを特徴としている。
【0045】
請求項16に記載の発明によれば、壁面に取り付けられた壁面緑化パネルの周囲に囲い枠を設けることで、壁面緑化パネルが壁面に固定される。
【発明の効果】
【0046】
本発明は上記構成としたので、植物の重み等によって壁面から落下したり、植物が植栽された基盤から剥離しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
次に、本発明の第1の実施形態に係る植栽パネル10について説明する。
【0048】
植栽パネル10は、矩形状のパネル12を有している。本実施形態では、パネル12のサイズは、1000mm×1000mm×30mmとし、後述するポケット14と共に、発泡スチロール等の合成樹脂で形成されている。
【0049】
パネル12には、所定の間隔で開口部16が形成されている。開口部16は、後述するポケット14のサイズに対応した半円状とされている。本実施形態では、パネル12の中央部分に、球径Φ36mmの開口部16Aが形成され、この開口部16Aの上下左右にそれぞれ2箇所ずつと、パネル12の四隅に、合計12個の球径Φ18mmの開口部16Bが形成されている。
【0050】
この開口部16に連通するようにして、パネル12の裏面には、複数の溝18が所定の間隔で格子状に形成されている。これにより、植栽パネル10の裏面に、後述する保水吸水シート34(図2参照)を設けたとき、植栽パネル10と保水吸水シート34の間には、溝18によって隙間が形成される。
【0051】
また、パネル12には、所定の間隔で(本実施形態では、4箇所)、後述するボルト42(図2参照)が挿通可能な挿通孔22が形成されている。
【0052】
さらに、パネル12の端部には、段部20が形成されている。図1に示したパネル12は、図の右側端部及び上側端部の表面に段部20が形成されており、左側端部及び下側端部の裏面に段部20が形成されている。これにより、図11(A)に示すように、植栽パネル10を並設したときに、隣接する植栽パネル10の段部20が重なり合い、植栽パネル10の浮き上がりが防止されるようになっている。
【0053】
パネル12の表面には、開口部16を閉塞するようにして、ポケット14が設けられている。ポケット14は、球体を4分の1に分割した形状とされ、パネル12の平面に沿った方向に開口している。これにより、パネル12(植栽パネル10)を垂直状態に配置すると、ポケット14の開口が上を向くので、ポケット14内に土壌48(図8参照)を投入して植物50を植栽したとき、土壌48及び植物50の根が、ポケット14によって受けられる。
【0054】
ポケット14に植栽された植物50の根は、開口部16からパネル12の裏面に侵入し、開口部16と連通している溝18内を伸張可能とされている。
【0055】
ところで、ポケット14は、各開口部16に対応したサイズで設けられている。つまり、本実施形態では、パネル12の略中央に、球径Φ36mmの開口部16Aに対応して、球径Φ36mmのサイズのポケット14Aが設けられている。また、このポケット14Aの上下左右には、球径Φ18mmの開口部16Bに対応して球径Φ18mmのサイズのポケット14Bが各2個ずつ配置され、パネル12の四隅にも、球径Φ18mmの開口部16Bに対応して、球径Φ18mmのサイズのポケット14Bが配置されている。
【0056】
このように、サイズの異なるポケット14を設けることで、植栽パネル10には異なる種類の植物50が植栽可能とされる。例えば、ポケット14Aには、樹高が3m以上となるタブノキ、ヤマモモ、ヤブツバキ、ヤマザクラ、ヤマモミジ、コナラ等の高木が植栽可能とされ、ポケット14Bには、樹高が3m以下のアセビ、シャクナゲ、ビョウヤナギ、アジサイ、ヤマブキ等の低木が植栽可能とされる。
【0057】
パネル12とポケット14は、共に所定の厚みを有する発泡スチロールで形成され、表面にウレタン樹脂がコーティングされている。これにより、パネル12及びポケット14の表面強度及び耐久性がアップする。また、ウレタン樹脂のコーティング上に、耐水、耐酸、耐アルカリ等の抗菌作用のある下地材を塗装している。これによって、パネル12及びポケット14の表面に防水効果が施されるので、ウレタン樹脂にひびが入ったり、剥離するのが防止される。
【0058】
なお、開口部16、溝18、段部20及び挿通孔22は、表面にウレタン樹脂をコーティングする前工程で、パネル12に形成されている。このため、開口部16、溝18、段部20及び挿通孔22も、ウレタン樹脂及び下地材がコーティング(塗布)されている。
【0059】
次に、上記構成の植栽パネル10を用いた壁面24の壁面緑化工法について説明する。
【0060】
図2に示すように、壁面24にはアンカーボルト26(図3参照)によってS字プレート28が取り付けられている。このS字プレート28には、背面ボード30に設けられたS字プレート32(図4参照)が係合するようになっており、S字プレート28及びS字プレート32によって、背面ボード30が壁面24に取り付けられる。なお、背面ボード30は、PVC、コンパネ、コンクリート、石材、レンガ、鋼板等が用いられる。
【0061】
背面ボード30には、保水吸水シート34が接着剤もしくはタッカーによって固定される。保水吸水シート34は、1〜3cmの厚みを有し、フェルト、不織布、ウレタン、ヤシ繊維、スポンジ、またはこれらの素材に熱感応性ゲルや保水性ゲルを混入させたもので形成され、植物50(図8参照)の根が侵入可能とされている。
【0062】
このように、保水吸水シート34を設けることで、後述する灌水ホース38から灌水された水が、保水吸水シート34全体に吸収されるので、植栽パネル10の植物50の根へまんべんなく水が行き渡る。また、植栽パネル10のポケット14に植栽された植物50の根が、開口部16から植栽パネル10の裏面に侵入し、保水吸水シート34に絡みつくので、植物50の剥離や落下の恐れがなくなる。
【0063】
保水吸水シート34には、上述した植栽パネル10が複数枚(本実施形態では、7枚)取り付けられる。植栽パネル10は、背面ボード30、保水吸水シート34と共に壁面24に取り付けられ、植栽パネル10の表面に配置した鋼板バー36で、壁面24との間に背面ボード30及び保水吸水シート34を挟み込んだ状態で、壁面24に固定される。
【0064】
なお、本実施形態では、植栽パネル10は2段で配置されており、上側の段には3枚の1000mm×1000mm×30mmの植栽パネル10が、下側の段には、上側の段の植栽パネル10とずらした状態で、2枚の1000mm×1000mm×30mmの植栽パネル10と、この2枚の植栽パネル10の両側に、1000mm×500mm×30mmが配置されている。
【0065】
このとき、横方向に並設された3枚(上側の段は3枚、下側の段は4枚)の植栽パネル10は、1枚の鋼板バー36で壁面24に押さえつけられる。また縦方向に並設された2枚の植栽パネル10も、1枚の鋼板バー36で壁面24に押さえつけられる。このような構成により、複数枚の植栽パネル10を並設しても、鋼板バー36によってしっかりと壁面24に固定されるので、植栽パネル10の端部が浮き上がりにくい。
【0066】
保水吸水シート34の上端には、灌水ホース38が設けられる。灌水ホース38は、図示しないパイプを介して、高圧ポンプにより水槽から水が高圧で送水される。また、灌水ホース38には、水を灌水する灌水口40が所定の間隔(本実施形態では、2〜5cm)で設けられている。これにより、水槽から灌水ホース38に送水された水が、灌水口40から灌水されて、保水吸水シート34に吸水される。灌水は、1日4、5回程度実施し、1回の灌水時間は3〜5分とする。
【0067】
ここで、壁面緑化工法の手順について説明する。
【0068】
まず、図3に示すように、壁面24にアンカーボルト26を用いて、S字プレート28を所定の間隔で固定する。S字プレート28は、壁面24に固定される側を下側に位置させ、壁面24から浮き上がる側を上側に位置させて、壁面24にフック状に固定される。
【0069】
次に、図4に示すように、背面ボード30を壁面24に取り付ける。背面ボード30には、壁面24に固定されたS字プレート28と同じ間隔で、裏面(壁面24に対向する面)にS字プレート32がボルト42によって取り付けられている。S字プレート32は、背面ボード30に固定される側を上側に位置させ、背面ボード30から浮き上がる側を下側に位置させて、背面ボード30にフック状に固定される。これにより、壁面24に設けられたS字プレート28に、背面ボード30のS字プレート32を引っ掛けて、背面ボード30を壁面24に取り付ける。
【0070】
次に、図5に示すように、背面ボード30の表面に、保水吸水シート34を取り付ける。保水吸水シート34には、所定の間隔で切欠44が形成されており、背面ボード30の表面(保水吸水シート34が取り付けられる面)に突出したボルト42に、この切欠44を引っ掛ける。そして、接着剤もしくはタッカーを用いて、保水吸水シート34を背面ボード30に固定する。
【0071】
なお、保水吸水シート34は、背面ボード30よりも上下方向に長い構成とされており、上端が背面ボード30よりもはみ出した状態で、背面ボード30に取り付けられる。
【0072】
次に、図6に示すように、保水吸水シート34の表面(背面ボード30と対向する側と反対側の面)に、植栽パネル10を取り付ける。このとき、背面ボード30の表面に突出し、保水吸水シート34の切欠を貫通したボルト42を、植栽パネル10に設けられた挿通孔22(図1参照)に挿通させる。
【0073】
そして、図7に示すように、植栽パネル10の表面に、長板状の鋼板バー36を配置する。この鋼板バー36には孔46(図2参照)が形成されており、植栽パネル10の表面に突出したボルト42を、この孔46に挿通させて、ナット37を用いて締結する。
【0074】
そして、図8に示すように、植栽パネル10の上部に灌水ホース38を配置して、上側にはみ出している保水吸水シート34の上端を、灌水ホース38に巻き付けると共に、固定具41を用いて灌水ホース38を背面ボード30及び植栽パネル10の上端に固定する。
【0075】
このようにして、植栽パネル10を壁面24に取り付けた後、ポケット14内に土壌48を投入して植物50を植栽する。
【0076】
なお、図示は省略するが、壁面24に取り付けた背面ボード30、保水吸水シート34及び植栽パネル10の周囲には、見切り材を取り付けている。これにより、背面ボード30、保水吸水シート34及び植栽パネル10の横方向のズレを防いでいる。
【0077】
次に、本発明の第1の実施形態に係る植栽パネル10の作用について説明する。
【0078】
植栽パネル10を構成するパネル12には、開口部16が形成されており、この開口部16の周囲には、植物50の根を受けるポケット14が設けられている。
【0079】
これにより、植栽パネル10を壁面24に取り付けたとき、ポケット14で植物50の根の育成に必要な土壌48が受けられるため、植物50が良好に生育する。
【0080】
また、ポケット14が植物50の自重を受けるため、植物50が成長しても、植栽パネル10から落下したり、風が植物50に当たって植栽パネル10から剥離することがない。
【0081】
さらに、ポケット14に植栽された植物50の根は、開口部16から植栽パネル10の裏面に侵入する。これにより、植物50の根は、植栽パネル10の裏面に設けられた保水吸水シート34に絡みついて、しっかりと固定される。
【0082】
また、植栽パネル10の裏面に形成された溝18に沿って、植物50の根が伸張可能とされている。これにより、開口部16から侵入した植物50の根が、保水吸水シート34に広範囲で絡みつくので、植物50がしっかりと保水吸水シート34に固定されると共に、植物50が成長しやすい。
【0083】
さらに、パネル12の端部には段部20が設けられており、植栽パネル10を付き合わせたとき、段部20が係合するようになっている。これにより、植栽パネル10の端部が壁面24から浮き上がりにくくなる。
【0084】
また、植栽パネル10と壁面24との間に保水吸水シート34を配置することで、灌水ホース38から灌水された水や雨水などが、保水吸水シート34に保水される。そして、必要に応じて植栽パネル10のポケット14に収容された植物50の根に、保水吸水シート34に保水されている水が供給されるので、降雨の少ない時期に植物50に灌水しなくても、植物50を枯らしてしまうことがない。
【0085】
さらに、保水吸水シート34と壁面24の間に背面ボード30を配置することで、保水吸水シート34は姿勢が保たれた状態で、背面ボード30にしっかりと固定され、壁面24からずれることがない。
【0086】
また、パネル12及びポケット14を発泡スチロールで形成することで、植栽パネル10を軽量に構成できる。このため、ボルト42に植栽パネル10を固定したとき、ボルト42に掛かる荷重が大きくならないので、必要以上に径の太いボルト42を用いることがなく、また使用するボルト42の本数が多くならない。
【0087】
さらに、植栽パネル10が軽量化されるため、植栽パネル10を壁面24に施工する際に、大型建設機械を必要とせず、人力での施工が可能となる。また、施工時間がかからないため、急な傾斜地、狭い場所など、大型機械の使用が難しい場所での施工が容易となる。また、発泡スチロールは、施工現場で簡単に切断できるため、壁面24の形状に対応した加工が容易にできる。
【0088】
さらに、発泡スチロールは断熱性を有するため、厳冬期において植物の根を寒さから守ることができる。このため、植物50に良好な生育環境を提供でき、通気性を持たないため、植栽パネル10の裏面の保水吸水シート34に保水されている水分が蒸発しにくく、保水吸水シート34への灌水頻度が高くならない。また、発泡スチロールは外からの熱を遮断するため、夏場の暑さによって植物の根が損傷を受けることも防止できる。
【0089】
また、発泡スチロールの表面にウレタン及び下地材をコーティングすることで、植栽パネル10に強度を持たせると共に経年変化による劣化の心配がない。
【0090】
なお、本実施形態では、1000mm×1000mm×30mmの植栽パネル10を並設する構成で説明したが、植栽パネル10はこのサイズに限定されない。例えば、600mm×900mm×30、900×1800×30mm、1000mm×2000×30mm等のサイズの植栽パネルが、基本モジュールとして用意されており、施工する壁面24の面積に合わせて、適宜選択できるようにされている。また、植栽パネルの厚みは、強度を確保することができれば、30mmよりも薄くてよい。
【0091】
さらに、本実施形態の植栽パネル10は、図1に示すように、球径Φ36mmのサイズのポケット14Aと、球径Φ18mmのサイズのポケット14Bの2種類のポケット14を有する構成としたが、ポケット14のサイズは上記2種類に限定されない。例えば、低木用の球径Φ18mmのポケット14Bや、高木用の球径Φ36mmのポケット14Aの他にも、草本用の球径Φ10mm、Φ12mmのポケット、灌木用の球径Φ22mmのポケット、中木用の球径Φ30mmのポケットを用いて、植栽パネルを構成してもよい。
【0092】
また、図9(A)に示すように、同じサイズのポケット14を上下左右方向に同数配置したり、図9(B)に示すように、斜め方向に並べた状態でポケット14を配置してもよく、植栽パネル10を構成するポケット14は、サイズ、配置位置、個数など、本実施形態に限定されない。
【0093】
さらに、ポケット14の形状は、4分の1の球体状としたが、植物50が挿入可能なポケット状であれば、ポケット14の形状は限定されない。
【0094】
また、本実施形態では、植栽パネル10の表面に、長板状の鋼板バー26を配置して、植栽パネル10の浮き上がりを防止する構成としているが、図9(C)に示すように、ワッシャー64を用いて植栽パネル10の浮き上がりを防止する構成としてもよい。このように、面積の小さいワッシャー64を用いて、目立たなくすることで、見栄えが良くなる。
【0095】
さらに、本実施形態では、図8に示すように、背面ボード30の裏面(壁面24に対向する面)にS字プレート32を取り付けるボルト42を表面に突出させ、このボルト42に保水吸水シート34、植栽パネル10及び鋼板バー36を挿通させてナット37を用いて締結する構成としたが、図10(A)に示すように、背面ボード30の表面にボルト52のヘッド部52Aを取り付け、このボルト52に保水吸水シート34、植栽パネル10及び鋼板バー36を挿通させてナット37を用いて締結してもよい。
【0096】
また、本実施形態では、図8に示すように、壁面24に取り付けたS字プレート28に、背面ボード30に取り付けたS字プレート32を係合させることで、壁面24に背面ボード30を固定する構成としたが、図10(B)に示すように、壁面24にL字プレート54を取り付け、背面ボード30の裏面に取り付けたL字プレート56とネジ58を用いて連結させ、壁面24に背面ボード30を固定する構成としてもよい。このように、ネジ58でL字プレート54、56を連結すれば、背面ボード30や植栽パネル10に横方向(図10では、図の手前奥方向)に力が掛かったときに、背面ボード30及び植栽パネル10が横方向にずれる恐れがない。
【0097】
さらに、本実施形態では、図1に示すように、植栽パネル10の端部に段部20を形成し、図11(A)に示すように、植栽パネル10を並設する際に、隣接する植栽パネル10の段部20を係合させる構成としたが、図11(B)に示すように、係合部60の形状を略L字状とすれば、隣接する植栽パネル10同士の係合力が強くなり、成長した植物50(図8参照)の根によって、植栽パネル10の端部が浮き上がることが防止できる。
【0098】
また、本実施形態では、植栽パネル10の裏面に溝18を格子状に設ける構成で説明したが、必ずしも溝18は格子状に設ける必要もなく、開口部16に連通し、開口部16に侵入した植物の根が、植栽パネル10の裏面に伸張できれば、溝状でなくてもよい。
【0099】
例えば、図12に示すように、植栽パネル10の裏面に、所定の間隔で複数の四角錐台状の凸部62を設けてもよい。これにより、植栽パネル10の裏面には、広範囲に渡って凹部が形成されるので、植栽パネル10と、この植栽パネル10の裏面に配置される保水吸水シート34(図2参照)との間に、広い隙間ができる。したがって、植物50(図8参照)の根が、植栽パネル10の裏面に沿って伸張しやすく、植物50が成長すると共に、植物50の根が広範囲で保水吸水シート34に絡みつくので、植物50の剥離や落下の恐れがなくなる。
【0100】
また、植栽パネル10は、発泡スチロール等の合成樹脂で形成される構成で説明したが、植栽パネル10の材質は、発泡スチロール以外にも、木材、金属材料、段ボール、合成樹脂等を用いてもよい。
【0101】
さらに、本実施形態では、背面ボード30、保水吸水シート34及び植栽パネル10の周囲に見切り材を取り付けて、横方向のズレを防ぐ構成としているが、図13に示すように、壁面24にアンカー65を立設し、このアンカー65にCチャンネル68を介して背面ボード30、保水吸水シート34、植栽パネル10を取り付け、アンカー65の先端に設けられたタップにナット70を締結させることで、壁面24に背面ボード30、保水吸水シート34、植栽パネル10を固定させ、これらの横方向のズレを防ぐ構成としてもよい。
【0102】
次に、本発明の第2の実施形態に係る壁面緑化工法について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
【0103】
まず、図14に示すように、植栽パネル74の裏面に、保水吸水シート76を配置する。そして、保水吸水シート76の植栽パネル74に取り付けられる側と反対側に、背面ボード78を配置する。
【0104】
なお、本実施形態では、図16に示すように、2つのタイプの植栽パネル74A、74Bを用いている。植栽パネル74A、74Bは、共にサイズが600mm×900mm×30mmの矩形状の発泡スチロールからなるパネル80(図15参照)を有している。このパネル80の裏面には、図示は省略するが、植物94の根が伸張可能な溝が形成されている。そして、1つのタイプの植栽パネル74Aのパネル80には、四隅と中央の5箇所に同サイズの開口部82が形成され、この開口部82を閉塞するようにして、ポケット84が設けられている。また、もう1つのタイプの植栽パネル74Bのパネル80には、縦方向及び横方向に2個ずつ、合計4箇所に同サイズの開口部82が形成され、この開口部82を閉塞するようにして、ポケット84が設けられている。以降、植栽パネル74A、74Bは、特に区別を必要としない限り、符号は省略して説明する。
【0105】
また、第1の実施形態と同様に、背面ボード78は、PVC、コンパネ、コンクリート、石材、レンガ、鋼板等を用いて形成され、保水吸水シート76は、1〜3cmの厚みを有し、フェルト、不織布、ウレタン、ヤシ繊維、スポンジ、またはこれらの素材に熱感応性ゲルや保水性ゲルを混入させたもので形成され、植物94の根が侵入可能とされている。
【0106】
図14に示すように、植栽パネル74、保水吸水シート76及び背面ボード78には、それぞれ4箇所ずつ孔86、88、90が形成されており、背面ボード78の裏面(保水吸水シート76に取り付けられる側と反対側の面)から、孔90に差し込んだネジボルト92を、保水吸水シート76の孔88及び、植栽パネル74の孔86に挿通させる。そして、植栽パネル74の表面から露出したネジボルト92の先端部分に、ワッシャー96を介して長ナット98を締結する。
【0107】
このようにして、図15に示すように、植栽パネル74、保水吸水シート76及び背面ボード78からなる壁面緑化パネル72を形成する。
【0108】
なお、本実施形態では、植栽パネル74、保水吸水シート76及び背面ボード78を、4箇所でネジ留めする構成で説明したが、ネジ留めする箇所は4箇所に限定されるものではなく、ポケット84に植栽する植物94のサイズや、植栽パネル74のサイズ等に応じて、適宜決定される。
【0109】
この壁面緑化パネル72を、温室内に運び込み、図16に示すように、温室内に設けられたポール150に、横方向に並べた状態で立てかける。そして、壁面緑化パネル72を起立させた状態で、植栽パネル74のポケット84内に、土壌を投入して植物94を植栽する。
【0110】
また、図17(A)及び図17(B)に示すように、長ナット98のネジ92に締結されていない側に、支柱152の端部を嵌め込む。これにより、壁面緑化パネル72の表面から、複数の支柱152が突出した状態となり、この支柱152上に支持棒154を載置する。
【0111】
支持棒154は、水平となるように複数の支柱152上に掛け渡され、支持棒154と支柱152が交差している部分(接触している部分)を紐等で結び、支持棒154を支柱152に固定する。
【0112】
そして、この支持棒154に、ポケット84に植栽された植物94を、紐等で結びつける。これにより、植物94が支持棒154に固定されるので、ポケット84から植物94が落下するのが防止される。なお、植物94の根が、開口部82(図14参照)から植栽パネル74の裏面に侵入して、保水吸水シート76に絡み付けば、支持棒154及び支柱152を取り外しても、ポケット84から植物94が落下することはない。
【0113】
一方、図18に示すように、壁面156に、アンカーボルト158を用いて、複数本(本実施形態では4本)のフラットバー160を、地面に対して略垂直状態に所定の間隔で固定する。
【0114】
フラットバー160には、長手方向に沿って、所定の間隔で複数本(本実施形態では3本)のネジボルト162の一端が溶接されている。なお、ネジボルト162は、壁面156に壁面緑化パネル72を配置したときに、壁面緑化パネル72の角部に対応する位置に設けられている。
【0115】
このネジボルト162を、植栽パネル74の角部に形成された欠込部164から突出させるようにして、複数枚(本実施形態では6枚)の壁面緑化パネル72を壁面156に取り付ける。このとき、1本のネジボルト162によって、4枚の壁面緑化パネル72の角部が、壁面156に固定されるようになっている。
【0116】
そして、植栽パネル74の表面に、長板状の鋼板バー166を配置する。この鋼板バー166には、孔168が形成されており、欠込部164から突出されたネジボルト162を、この孔168に挿通させる。そして、ネジボルト162の先端に、ワッシャー170を介してナット172を締結する。これにより、図19に示すように、壁面緑化パネル72は、鋼板バー166と壁面156の間に挟持された状態で、壁面156に固定される。
【0117】
なお、本実施形態では、植栽パネル74の角部に欠込部164を形成し、壁面156から突出されたネジボルト162を欠込部164から突出させることで、1つのネジボルト162で4枚の壁面緑化パネル72の角部を同時に壁面156に固定しているが、壁面緑化パネル72を壁面156に固定する方法は、上記方法に限定されるものではなく、壁面緑化パネル72の内側(例えば、ポケット84近傍)で、ネジボルト162を用いて壁面156に固定させてもよい。
【0118】
壁面156に壁面緑化パネル72を取り付けた後、壁面緑化パネル72の上部に灌水ホース174を配置して、固定具176を用いて灌水ホース174を固定する。
【0119】
植栽パネル74の上部及び下部は、図17(A)に示すように、表側から裏側にかけて下り傾斜となるように、テーパが設けられている。これにより、灌水ホース174(図19参照)から散水された水は、テーパによって植栽パネル74の裏側へ流れ込むようになっている。これにより、植栽パネル74の表面に苔が生えるのを防止できる。また、灌水ホース174から灌水された水は、保水吸水シート76側に流れ込むので、必要以上に灌水ホース174から水を灌水することがない。
【0120】
次に、本発明の第2の実施形態に係る壁面緑化工法の作用について説明する。
【0121】
植栽パネル74の裏面に保水吸水シート76を取り付け、この保水吸水シート76に背面ボード78を取り付けることで、予め壁面緑化パネル72を形成しておく。そして、この壁面緑化パネル72を施工場所に運び込んで、壁面156に取り付けることで、壁面156の緑化を行う。
【0122】
これにより、例えば温室のような、風雨の影響を受けない場所において、植栽パネル74のポケット84に植物94を植栽することが可能となり、植物94の根が植栽パネル74のポケット84内で根付いてから(保水吸水シート76に絡み付いてから)、施工場所に壁面緑化パネル72を運び込み、壁面156に取り付けることができる。したがって、壁面156に取り付けられた壁面緑化パネル72の植物94は、風雨などによって根受部から落下しにくい。
【0123】
また、植物94をポケット84に植栽する際に、作業者の手が届く範囲で作業を行うことができるので、壁面156に植栽パネル74を取り付けてから、ポケット84に植物94を植栽する場合と比較して、作業効率が良くなる。
【0124】
さらに、壁面緑化パネル72は、壁面156に設けられてネジボルト162が突設されたフラットバー160と、壁面緑化パネル72の表面に配設された鋼板バー166の間に支持されて、ナット172によってフラットバー160と鋼板バー166で挟持されながら、壁面156に固定されている。これにより、壁面緑化パネル72は壁面156にしっかりと固定されるので、壁面156に取り付けた壁面緑化パネル72が、壁面156から外れてしまう恐れがない。
【0125】
また、植栽パネル74のサイズを小さくすることで(第1の実施形態では、1000mm×1000mm×30mmとしたのに対して、第2の実施形態では、600mm×900mm×30mmとした)、壁面緑化パネル72の重量が重くなりすぎず、また、壁面156に壁面緑化パネル72を取り付ける際に、壁面緑化パネル72が風に煽られにくくなるため、施工性が良くなる。
【0126】
さらに、ポケット84が5個のタイプの植栽パネル74からなる壁面緑化パネル72と、ポケット84が4個のタイプの植栽パネル74からなる壁面緑化パネル72とを、交互に配置することで、上下方向のポケット84同士の間隔を十分に取ることができる(図19参照)。このため、第1の実施形態のように、壁面緑化パネル72を水平方向にずらした状態で壁面156に取り付ける必要がない(図2参照)。
【0127】
なお、本実施形態では、壁面156に設けられてネジボルト162が突設されたフラットバー160と、壁面緑化パネル72の表面に配設された鋼板バー166で、壁面緑化パネル72を挟み込みながら壁面156に固定しているが、図20に示すように、アンカーボルト180を用いて壁面156にH型鋼178を垂直方向に所定の間隔で固定し、このH型鋼178の間に壁面緑化パネル72を嵌め込むことで、壁面156に壁面緑化パネル72を取り付けてもよい。
【0128】
また、図21に示すように、壁面156に所定の枚数(図21では6枚)の壁面緑化パネル72を並べたサイズの矩形状の孔182を形成し、この孔182に壁面緑化パネル72を嵌め込んでもよい。これにより、壁面緑化パネル72が壁面156から出っ張らないので、壁面緑化パネル72を取り付けることによって、壁面156の周囲の空間が狭くならない。
【0129】
さらに、図22に示すように、壁面156に壁面緑化パネル72を配置して、コ字型の鋼製枠184で、壁面緑化パネル72の周囲を固定することで、壁面156に壁面緑化パネル72を取り付けてもよい。
なお、図19のように、壁面緑化パネル72を、鋼板バー166と壁面156の間に挟持し、さらに、壁面緑化パネル72の周囲を鋼製枠で固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る植栽パネルの斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る壁面緑化構造を示す分解斜視図である。
【図3】(A)は第1の実施形態に係る壁面緑化工法の第1の工程を示す斜視図であり、(B)は側面断面図である。
【図4】(A)は第1の実施形態に係る壁面緑化工法の第1の工程を示す斜視図であり、(B)は側面断面図である。
【図5】(A)は第1の実施形態に係る壁面緑化工法の第2の工程を示す斜視図であり、(B)は側面断面図である。
【図6】(A)は第1の実施形態に係る壁面緑化工法の第3の工程を示す斜視図であり、(B)は側面断面図である。
【図7】(A)は第1の実施形態に係る壁面緑化工法の第3の工程を示す斜視図であり、(B)は側面断面図である。
【図8】(A)は第1の実施形態の壁面緑化工法の第4の工程を示す斜視図であり、(B)は側面断面図である。
【図9】その他の形態の植栽パネルの正面図である。
【図10】その他の形態の壁面緑化工法の部分断面図である。
【図11】(A)は第1の実施形態の植栽パネルの端部の係合状態を示す部分断面図であり、(B)はその他の形態の植栽パネルの端部の係合状態の部分断面図である。
【図12】その他の形態の植栽パネルの裏面を示す斜視図である。
【図13】その他の形態の壁面緑化工法を示す斜視図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る壁面緑化パネルの分解斜視図である。
【図15】第2の実施形態に係る壁面緑化パネルの斜視図である。
【図16】第2の実施形態に係る壁面緑化パネルを複数並べた状態を示す斜視図である。
【図17】第2の実施形態に係る壁面緑化パネルを示す図であり、(A)は側面図であり、(B)は正面図である。
【図18】第2の実施形態に係る壁面緑化工法を示す斜視図である。
【図19】第2の実施形態に係る壁面緑化パネルを壁面に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図20】その他の形態の壁面緑化パネルの壁面への取り付け状態を示す斜視図である。
【図21】その他の形態の壁面緑化パネルの壁面への取り付け状態を示す斜視図である。
【図22】その他の形態の壁面緑化パネルの壁面への取り付け状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0131】
10 植栽パネル
12 パネル
14 ポケット(根受部)
16 開口部
18 溝(凹部)
20 段部(係合部)
22 挿通孔
24 壁面
30 背面ボード
34 保水吸水シート(保水層)
38 灌水ホース(灌水手段、有孔ホース)
42 ボルト
48 土壌
50 植物
62 凸部
72 壁面緑化パネル
74 植栽パネル(パネル)
76 保水吸水シート
78 背面ボード
86 孔
88 孔
90 孔
94 植物
98 長ナット(固定手段)
152 支柱(固定手段)
154 支持棒(固定手段)
156 壁面
158 アンカーボルト(取付手段、ボルト)
160 フラットバー(取付手段、固定板)
166 鋼板バー(取付手段、押さえ板)
182 孔(取付手段)
184 鋼製枠(囲い枠)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のパネルと、
前記パネルに形成された開口部と、
前記開口部の周囲から突設され、植物の根部を受ける根受部と、
前記パネルの裏面に形成された凹部と、
を有して構成されていることを特徴とする植栽パネル。
【請求項2】
前記凹部は、格子状の溝とされていることを特徴とする請求項1に記載の植栽パネル。
【請求項3】
前記パネルの裏面に、四角錐台状の凸部を所定の間隔で並べて前記凹部を形成していることを特徴とする請求項1に記載の植栽パネル。
【請求項4】
前記パネルの端部には、パネル同士を突き合わせて係合可能とする係合部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の植栽パネル。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の植栽パネルを、保水層が取り付けられた壁面に固定して構成されたことを特徴とする壁面緑化構造。
【請求項6】
前記保水層を背面ボードに固定し、前記背面ボードを壁面に固定したことを特徴とする請求項5に記載の壁面緑化構造。
【請求項7】
前記保水層の上部には、該保水層に灌水する灌水手段が設けられていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の壁面緑化構造。
【請求項8】
前記灌水手段は、前記保水層の上部が巻き付けられた有孔ホースであることを特徴とする請求項7に記載の壁面緑化構造。
【請求項9】
前記パネルには、前記背面ボードに取り付けられたボルトが挿通可能な挿通孔が形成されていることを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載の壁面緑化構造。
【請求項10】
前記パネルの表面から突設され、前記根受部に植栽された植物を保持する横材が固定される固定手段が設けられていることを特徴とする請求項5〜請求項9のいずれか1項に記載の壁面緑化構造。
【請求項11】
前記パネルの上下の端面は、該パネルの表面から裏面に向かって下り勾配のテーパが形成されていることを特徴とする請求項5〜請求項10のいずれか1項に記載の壁面緑化構造。
【請求項12】
壁面に背面ボードを取り付ける第1の工程と、
前記背面ボードに保水層としての保水吸水シートを取り付ける第2の工程と、
前記保水吸水シートに、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の植栽パネルを取り付ける第3の工程と、
前記植栽パネルの根受部に土壌を投入し、植物を植栽する第4の工程と、
を有することを特徴とする壁面緑化工法。
【請求項13】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の植栽パネルの裏面に、保水層としての保水吸水シートを取り付け、前記保水吸水シートに背面ボードを重ねて、前記植栽パネルと前記保水吸水シートと前記背面ボードを一体に固定し、壁面緑化パネルを形成する工程と、
前記壁面緑化パネルを取付手段で、壁面に取り付ける工程と、
を有することを特徴とする壁面緑化工法。
【請求項14】
前記取付手段は、前記壁面に固定された固定板と、前記固定板から突出され、前記壁面緑化パネルに形成された孔に挿通される棒材と、前記棒材の先端部分に支持される押え板と、前記棒材に取り付けられ、前記押え板と前記固定板で前記壁面緑化パネルを狭持させる締結手段と、を有して構成されていることを特徴とする請求項13に記載の壁面緑化工法。
【請求項15】
前記取付手段は、前記壁面に形成された前記壁面緑化パネルが嵌合可能な凹部であることを特徴とする請求項13に記載の壁面緑化工法。
【請求項16】
前記取付手段は、前記壁面に取り付けられた前記壁面緑化パネルの周囲に設けられた囲い枠であることを特徴とする請求項13に記載の壁面緑化工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−29322(P2008−29322A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80305(P2007−80305)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(397018154)三井物産アグロビジネス株式会社 (1)
【出願人】(503075507)株式会社池田リレーションシップ (1)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)
【出願人】(593232000)株式会社朝日興産 (2)
【Fターム(参考)】