説明

椎茸の凍結乾燥法

【課題】椎茸の凍結乾燥法を提供する。
【解決手段】椎茸に紫外線を20分〜1時間照射してから、30〜40℃の熱風で1〜2時間椎茸を熱風乾燥させた後、−35〜−45℃で10分〜1時間椎茸を急速凍結すると共に、前記急速凍結された椎茸を−35〜−45℃で40〜50×10−3torrの減圧真空状態で21〜48時間減圧凍結乾燥させることを特徴とする椎茸の凍結乾燥法を提供することにより、乾燥時、生椎茸の外形をそのまま維持する共に、使用時、椎茸を水中で迅速に原形に復元させる凍結乾燥の利点と、紫外線照射によるビタミンDの含量および椎茸の味と香りを高める熱風乾燥の効果とを同時に期待することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椎茸の凍結乾燥法に係り、より詳細には、椎茸に紫外線を照射してから、短時間で熱風乾燥させた後、前記椎茸を急速凍結および減圧凍結乾燥することにより、椎茸が収縮されず、外形を維持 しながら乾燥させることができ、乾燥した椎茸を簡便に調理することができ、さらにビタミンDの含量および椎茸の味と香りを高めることができる椎茸の凍結乾燥法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、椎茸(Pyogo mushroom, Shiitake mushroom, Lentinus edodes)は、各種のアミノ酸とエルゴステロール等を始めとした様々な栄養素がバランスよく含まれており、特有の味と香りを有し、抗癌効果もあるものと知られ、その消費が増加しつつある。
【0003】
一方、椎茸は、水分含量が高く、組織が軟らかくて新鮮な状態を長期間維持し難く、生産時期が限定されているため、椎茸のほとんどは、乾燥状態で貯蔵および流通されており、従来の椎茸の乾燥法では、通常、自然的な天日乾燥法または高温風を用いた熱風乾燥法が用いられ、このように乾燥した椎茸は、調理の際に水にふやかして原形を生かしてから用いる。
【0004】
しかしながら、このような従来の椎茸の乾燥法において、天日乾燥法の場合は、茸胞子の飛散、茸細胞組織のコロイド化、収縮による組織の変異、光沢等、品質の低劣化が生じ、熱風乾燥法の場合も、収縮による組織の変異と共に、その乾燥温度により品質の低下が生じ、特に45℃よりも低い温度で熱風乾燥を行うと、胞子の飛散および椎茸の笠が開いて先端が巻かれてしまうという問題があり、また、55℃以上の高温で熱風乾燥を行うと、乾燥初期に水分含量が多い生椎茸が熱損傷を受けて煮えてしまうという問題があった。
【0005】
また、組織が緻密な椎茸であるほど、栄養素が豊かであり、噛み味がよく、良質のものであるにもかかわらず、上記した従来の天日乾燥法および熱風乾燥法で椎茸を乾燥させる場合、組織が緻密でない椎茸であるほど、水中で迅速に原形に復元され、その使い勝手がよいということから、良質の椎茸よりも低質の椎茸を消費者が選好している。このため、このような従来の乾燥法は、乾燥法そのものの問題点だけでなく、良質の椎茸が消費者から嫌われるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、その目的は、乾燥時、茸胞子の飛散、茸細胞組織のコロイド化、収縮による組織の変異、椎茸の変形、熱損傷等の問題がなく、生椎茸の原形を最大限維持し、調理時、水中で迅速に原形に復元され、その使い勝手をよくした椎茸の乾燥法を提供し、特に、乾燥過程で椎茸の栄養素と共に味と香りを高めることができる乾燥法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による椎茸の凍結乾燥法は、通常の選別および切断工程以外に、紫外線照射工程と、熱風乾燥工程と、急速凍結工程と、減圧凍結乾燥工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、椎茸に紫外線を照射してから、比較的短時間で熱風乾燥させた後、前記椎茸を急速凍結および減圧凍結乾燥することにより、乾燥過程で生椎茸の外形を最大限維持し、調理時、水中で迅速に原形に復元され、その使い勝手がよいのみならず、特に、ビタミンDの含量および椎茸の味と香りを高めることができる。これは、究極的に良質の椎茸を消費者に提供し、消費の満足度を向上させることはもとより、椎茸の消費を促進して農家の所得向上にも寄与することが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施例による構成について、詳細に説明する。
【0010】
本発明による椎茸の凍結乾燥法は、通常の選別工程および切断工程を選択的に含むことができ、前記選別工程は、生椎茸をその形態及び大きさと毀損状態等により分類する通常の選別工程を意味する。また、前記選別工程を経た椎茸は、原形のまま用いてもよいが、スライス状または正方形状に切る切断工程をさらに含むことができ、前記切断工程の際に、椎茸の厚さは、その使用目的に応じて異ならせるが、好ましくは約3〜5mmに切断する。
【0011】
以下、本発明の特徴的な工程としての紫外線照射工程では、前記選別および切断工程を選択的に経た椎茸を、通常の紫外線照射装置または通常の紫外線照射装置が設けられた密室に20分〜1時間置いて紫外線を照射し、このように生椎茸に紫外線を照射すると、紫外線が透過する部分の茸菌に衝撃を与えて茸菌の活動を停止させるかまたは死滅させることにより、椎茸の原形を長時間維持することができ、さらに椎茸に含まれたビタミンDの含量を増大させることができる。
【0012】
すなわち、椎茸は、エルゴステロールという前駆体形態の成分を多量含有しているが、前記エルゴステロールは、紫外線を受けると、エルゴカルシフェロール(ergocalciferol)という活性型に転換され、ビタミンDの機能を果たすようになる。このビタミンDは、カルシウムとリンの体内吸収率と利用を調節して体内のカルシウムとリンの恒常性を維持すると共に、骨格と歯牙の正常な発育に関与する{茸の紫外線照射と調理条件によるVit.DとVit.B含量の変化(韓国食生活文化学会誌、Vol.16, No.5(2001), P463-469)参考}。
【0013】
以下、本発明による熱風乾燥工程は、従来の如く45〜55℃の熱風で8〜24時間以上を乾燥して生椎茸を完全に乾燥させるものではなく、30〜40℃で約1〜2時間の比較的短時間だけ露出するものであるから、従来の熱風乾燥法による生椎茸の収縮や組織の変異のような問題が生じなく、椎茸特有の味と香りを高めることができる。
【0014】
すなわち、椎茸の味成分のグアニル酸(Guanylic acid)と香り成分のレンチオニン(Lenthionine)が、茸の内部でタンパク質や糖類から生成酵素により生成されるもので、その最適温度が30〜40℃であることを考慮に入れ、椎茸を一時的に熱風乾燥することにより、熱風乾燥の欠点は排除して利点のみを取ることができる{椎茸の熱風乾燥速度論に関する研究(韓国霊食誌、10(1), 1981. P53-60)参考}。
【0015】
急速凍結工程は、前記紫外線照射工程および熱風乾燥を経た椎茸を、−35〜−45℃の環境で10分〜1時間急速凍結する工程であり、このように短時間で椎茸を凍結することにより、凍結前の椎茸の外形を維持することができる。
【0016】
また、減圧凍結乾燥工程は、前記急速凍結された椎茸を−35〜−45℃の環境で40〜50×10−3torrの減圧真空状態で21〜48時間乾燥させる工程であり、前記椎茸の残余水分含量を1〜12%として乾燥させ、茸菌の生育を防止するとともに、椎茸を変質せずに長期保存することができる。
【0017】
一方、前記減圧凍結乾燥工程において、スライス状に切断した椎茸は24〜30時間乾燥させ、正方形状に切断した椎茸は30〜36時間乾燥させ、切断せずに原形のまま乾燥させる椎茸は36〜48時間乾燥することが好ましい。
【0018】
上記方法で乾燥させた椎茸は、椎茸を急速凍結して減圧凍結乾燥させることにより、最大限乾燥前の状態と同じ外形を維持でき、さらに乾燥した椎茸の組織が多孔質状態であるため、水中で短時間で原形に復元できることはもとより、紫外線照射工程および熱風乾燥工程によりビタミンDの含量、及び椎茸固有の味と香りを高めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎茸の凍結乾燥法において、
生椎茸に20分〜1時間紫外線を照射し、茸菌を死滅し、ビタミンDを生成する紫外線照射工程と、
前記紫外線照射工程後、30〜40℃で1〜2時間熱風で椎茸を乾燥し、椎茸固有の味と香りを高める熱風乾燥工程と、
前記熱風乾燥した椎茸を−35〜−45℃で10分〜1時間凍結して外形を維持する急速凍結工程と、
前記急速凍結した椎茸を−35〜−45℃で40〜50×10−3torrの減圧真空状態で21〜48時間乾燥させ、水分含量を1〜12%とする減圧凍結乾燥工程と、を含むことを特徴とする椎茸の凍結乾燥法。

【公開番号】特開2009−165446(P2009−165446A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10143(P2008−10143)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(508020915)
【出願人】(508020926)
【Fターム(参考)】