説明

検体分析装置および検体分析方法

【課題】尿検体を採取した被験者が単純性の尿路感染症に感染しているかの指標を、ユーザに提示できるようにする。また、検体中に含まれる細菌の種類の判定の指標をユーザに提示できるようにする。
【解決手段】検体分析装置は、測定試料から生じる散乱光および蛍光を検出し、散乱光情報と蛍光情報とに基づきスキャッタグラムを生成し、このスキャッタグラムの原点を回転中心とした所定の傾斜角毎にスキャッタグラムを区分して複数の領域を設定し、傾斜角と各領域に含まれるスキャッタグラムのプロット数とからヒストグラムを生成し、ヒストグラムの形状から被験者が単純性尿路感染症に感染しているか否かの診断を支援する情報を表示する。診断支援情報とヒストグラムは表示部に表示される。ユーザは、診断支援情報から尿路感染症の分類を把握でき、ヒストグラムの形状から検体中に含まれた細菌の種類を把握できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とから調製された測定試料に光を照射して検体を分析する検体分析装置および検体分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、臨床検査等において、細菌の検出が行われている。かかる細菌の検出は、たとえば、検体を培養して作られたコロニーを、直接目視して検査する方法により為され得る。この検査方法では、検体中に含まれる細菌の種類や数が同定され得る。しかし、検体が培養されてコロニーが作られるまでに数日を要するため、検査の迅速性に欠けるとの問題がある。
【0003】
これに対し、特許文献1には、スキャッタグラムを用いた細菌の判定方法が開示されている。この方法では、検体に含まれる細菌の大きさ情報と蛍光情報とをパラメータとするスキャッタグラムが作成される。そして、スキャッタグラム上の細菌の分布状態が解析され、その解析結果に基づいて、検体中の細菌の種類が桿菌であるか球菌であるかが判定される。この判定手法によれば、検体中の細菌の種類を迅速に判定することができる。
【0004】
ところで、細菌が引き起こす感染症として、尿路感染症が知られている。尿路感染症とは、尿路に細菌や微生物等が侵入して尿路で生じた感染症のことである。尿路感染症には、単純性と複雑性とがある。単純性の尿路感染症は、大腸菌(桿菌)等、概ね一種類の細菌により引き起こされる。これに対し、複雑性の尿路感染症は、一般に、様々な菌が感染することによって引き起こされる。したがって、尿検体に含まれる細菌の種類の数に基づいて、尿路感染症が単純性か複雑性かを、大まかに知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−305173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、検体中に複数種類の細菌が含まれている場合に、検体中の細菌を判定することが困難であった。このため、上記特許文献1の方法を尿検体の分析に用いても、ユーザは、尿路感染症が単純性か複雑性かを見極めることが困難であった。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、尿検体を採取した被験者が単純性の尿路感染症に感染しているかの指標を、ユーザに提示可能な検体分析装置および検体分析方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、検体中に含まれる細菌の種類の判定の指標をユーザに提示可能な検体分析装置および検体分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る検体分析装置は、被験者の尿検体と試薬とから調製された測定試料に光を照射する光源部と、前記光源部からの光により前記測定試料から生じる散乱光および蛍光を検出する検出部と、表示部と、前記検出部により検出された散乱光情報と蛍光情報に基づいて得られる細菌の分布状態に基づき、前記被験者が単純性尿路感染症に
感染しているか否かの診断を支援する情報を生成し、生成した前記情報を前記表示部に表示させる制御部と、を備える。
【0010】
第1の態様に係る検体分析装置によれば、尿検体を採取した被験者が単純性尿路感染症に感染しているか否かの診断を支援する情報が表示されるため、ユーザは、被験者が単純性尿路感染症に感染しているかの指標となる情報を得ることができる。
【0011】
第1の態様に係る検体分析装置において、前記制御部は、前記散乱光情報と前記蛍光情報とに基づく細菌の特徴値をプロットしたスキャッタグラムを生成し、前記スキャッタグラムに複数の領域を設定し、前記各領域に含まれるプロット数に基づいて、前記診断支援情報を生成するよう構成され得る。
【0012】
この場合、第1の態様に係る検体分析装置において、前記制御部は、前記スキャッタグラムの原点を回転中心とした所定の傾斜角毎に前記スキャッタグラムを区分して前記複数の領域を設定するよう構成され得る。
【0013】
また、この場合、前記制御部は、隣り合う領域よりも前記プロット数が多い前記領域の数に基づいて、前記診断支援情報を生成するよう構成され得る。
【0014】
あるいは、前記制御部は、前記傾斜角と前記プロット数とから生成されたヒストグラムに基づいて、前記診断支援情報を生成するよう構成され得る。
【0015】
この場合、前記制御部は、前記ヒストグラムの形状に基づいて、前記診断支援情報を生成する。
【0016】
より詳しくは、前記制御部は、前記ヒストグラム上に現れるピークの数あるいは前記ヒストグラムの歪度に基づいて、前記診断支援情報を生成する。
【0017】
このように、スキャッタグラムまたはヒストグラムを用いて判定を行うと、被験者が単純性尿路感染症に感染しているか否かの診断を支援する情報を、比較的精度良く、生成することができる。
【0018】
なお、上記のようにスキャッタグラムを区分して設定される複数の領域は、スキャッタグラムの原点を含む所定の領域をそれぞれ除いたものとするのが望ましい。こうすると、被験者が単純性尿路感染症に感染しているか否かの診断を支援する情報を、より精度良く、生成することができる。
【0019】
第1の態様に係る検体分析装置において、前記制御部は、前記ヒストグラムに基づいて、前記被験者が複雑性尿路感染症に感染しているか否かの診断を支援する他の情報を生成し、生成した前記他の情報を前記表示部に表示させる構成とされ得る。
【0020】
こうすると、ユーザは、被験者が単純性尿路感染症と複雑性尿路感染症の何れに感染しているかの指標となる情報を得ることができる。
【0021】
この構成において、前記制御部は、前記ヒストグラムの形状に基づいて、前記他の診断支援情報を生成するよう構成され得る。
【0022】
より詳しくは、前記制御部は、前記ヒストグラム上に現れるピークの数あるいは前記ヒストグラムの歪度に基づいて、前記他の診断支援情報を生成する。
【0023】
このようにすることで、被験者が複雑性尿路感染症に感染しているか否かの診断を支援する他の情報を、比較的精度良く、生成することができる。
【0024】
本発明の第2の態様に係る検体分析装置は、検体と試薬とから調製された測定試料に光を照射する光源部と、前記光源部からの光により前記測定試料から生じる散乱光および蛍光を検出する検出部と、前記検出部により検出された散乱光情報と蛍光情報とを処理する制御部と、表示部とを備える。ここで、前記制御部は、前記散乱光情報と前記蛍光情報とに基づきスキャッタグラムを生成し、前記スキャッタグラムに複数の領域を設定し、前記各領域に含まれるプロット数からヒストグラムを生成し、生成した前記ヒストグラムを前記表示部に表示する処理を含む。
【0025】
第2の態様に係る検体分析装置によれば、ユーザは、表示部に表示されたヒストグラムの形状から、検体中に含まれた細菌の種類の判定の指標となる情報を取得することができる。よって、この検体分析装置が尿検体の分析に用いられると、ユーザは、ヒストグラムの形状から取得した情報(たとえば、ピークの数や歪具合、等)に基づき、被験者が単純性あるいは複雑性の尿路感染症に感染している可能性を把握することができる。
【0026】
第2の態様に係る検体分析装置において、前記スキャッタグラムの原点を回転中心とした所定の傾斜角毎に前記スキャッタグラムを区分して前記複数の領域を設定し、前記傾斜角と前記各領域に含まれる前記スキャッタグラムのプロット数とからヒストグラムを生成することが望ましい。
【0027】
なお、第2の態様に係る検体分析装置において、スキャッタグラムを区分して設定される複数の領域は、スキャッタグラムの原点を含む所定の領域をそれぞれ除いたものとするのが望ましい。こうすると、ユーザは、細菌の種類の判定を、より精度良く、行うことができる。
【0028】
なお、第2の態様に係る検体分析装置は、尿検体に限らず、他の検体のための検体分析にも、適宜、利用可能なものである。
【0029】
本発明の第3の態様に係る検体分析方法は、被験者の尿検体と試薬とから調製された測定試料に光を照射することにより得られた散乱光情報および蛍光情報を検出し、検出した前記散乱光情報と前記蛍光情報に基づいて得られる細菌の分布状態に基づき、前記被験者が単純性尿路感染症に感染しているか否かの診断を支援する情報を生成し、生成した前記情報を表示する。
【0030】
第3の態様に係る検体分析方法によれば、上記第1の態様と同様の効果が奏され得る。
【0031】
本発明の第4の態様に係る検体分析方法は、測定試料に光を照射することにより得られた散乱光情報と蛍光情報とに基づきスキャッタグラムを生成し、生成した前記スキャッタグラムに複数の領域を設定し、前記各領域に含まれるプロット数からヒストグラムを生成し、生成した前記ヒストグラムを表示する。
【0032】
第4の態様に係る検体分析方法によれば、上記第2の態様と同様の効果が奏され得る。
【0033】
第4の様態に係る検体分析方法において、前記スキャッタグラムの原点を回転中心とした所定の傾斜角毎に前記スキャッタグラムを区分して前記複数の領域を設定し、前記傾斜角と前記各領域に含まれる前記スキャッタグラムのプロット数とからヒストグラムを生成することが望ましい。
【0034】
なお、第4の態様に係る検体分析方法においても、上記第2の態様と同様、スキャッタグラムを区分して設定される複数の領域は、スキャッタグラムの原点を含む所定の領域をそれぞれ除いたものとするのが望ましい。
【0035】
なお、第4の態様に係る検体分析方法は、尿検体に限らず、他の検体のための検体分析にも、適宜、利用可能なものである。
【発明の効果】
【0036】
以上のとおり、本発明によれば、尿検体を採取した被験者が単純性の尿路感染症に感染しているかの指標を、ユーザに提示可能な検体分析装置および検体分析方法を提供することができる。
【0037】
また、本発明によれば、検体中に含まれる細菌の種類の判定の指標をユーザに提示可能な検体分析装置および検体分析方法を提供することができる。
【0038】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1の実施形態に係る尿検体分析装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る測定装置の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る光学検出部およびアナログ信号回路の構成を示す模式図である。
【図4】第1の実施形態に係る情報処理装置の構成を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る検体の測定処理および分析処理を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態に係る分析処理を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施形態に係るスキャッタグラム、スキャッタグラムの分割について説明する図およびスキャッタグラム上で細菌の数を計測するための領域を示す図である。
【図8】第1の実施形態に係るヒストグラムの例示図である。
【図9】第1の実施形態に係る情報処理装置の表示部に表示される情報表示画面の例示図である。
【図10】第2の実施形態に係る分析処理を示すフローチャートの変更例である。
【図11】第2の実施形態に係る情報処理装置の表示部に表示されるヒストグラム領域と細菌情報領域の例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本実施形態は、尿検体に含まれる細菌について測定を行い、かかる測定結果から得られる尿検体中の細菌の種類を判定する尿検体分析装置に本発明を適用したものである。
【0041】
1.第1の実施形態
以下、本実施形態に係る尿検体分析装置について、図面を参照して説明する。
【0042】
図1は、本実施形態に係る尿検体分析装置1の構成を示す図である。
【0043】
尿検体分析装置1は、測定装置2と情報処理装置3を備える。測定装置2は、尿検体に含まれている細菌をフローサイトメーターにより光学的に測定する。情報処理装置3は、測定装置2による測定結果を分析し、分析結果を表示部320に表示する。
【0044】
図2は、測定装置2の構成を示す図である。
【0045】
測定装置2は、検体分配部201と、試料調製部202と、光学検出部203と、信号処理回路210と、CPU204と、通信インターフェース205と、メモリ206とを有する。信号処理回路210は、アナログ信号処理回路211と、A/Dコンバータ212と、デジタル信号処理回路213と、メモリ214とを有する。
【0046】
検体分配部201は、ピペットとポンプ(図示せず)を備えている。ポンプが駆動されることにより、ピペット内に所定量の検体(尿)が吸引され、ピペット内に吸引された検体が吐出される。かかるピペットとポンプにより、検体分配部201は、検体容器から吸引された所定量の検体を、試料調製部202に供給する。
【0047】
試料調整部202は、試薬容器と、混合容器と、ポンプ(図示せず)を備えている。混合容器では、検体分配部201から供給された検体に対して、試薬容器から供給される希釈液と染色液が混合され、測定試料の調製が行われる。混合容器で調製された測定試料は、ポンプにより、シース液と共に光学検出部203のシースフローセル203c(図3参照)に供給される。
【0048】
光学検出部203は、測定試料に対してレーザ光を照射し、これにより生じた前方散乱光と、側方蛍光と、側方散乱光に基づく電気信号を、アナログ信号処理回路211に出力する。アナログ信号処理回路211は、CPU204の指示に従って、光学検出部203から出力された電気信号を増幅し、A/Dコンバータ212に出力する。
【0049】
A/Dコンバータ212は、アナログ信号処理回路211によって増幅された電気信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号処理回路213に出力する。デジタル信号処理回路213は、CPU204の指示に従って、A/Dコンバータ212から出力されるデジタル信号に対して所定の波形処理を施す。波形処理が施されたデジタル信号はメモリ214に記憶される。ここで、メモリ214に記憶されるデジタル信号は、シースフローセル203cを細菌が通過する度に生じる前方散乱光および側方蛍光のパルス信号に基づく信号を含んでいる。
【0050】
CPU204は、アナログ信号処理回路211とデジタル信号処理回路213を制御する。また、CPU204は、メモリ214に記憶されたデジタル信号から、前方散乱光および側方蛍光のパルス信号の高さを取得する。ここで、前方散乱光のパルス信号の高さは、シースフローセル203cを1つの細菌が通過したことによって生じた前方散乱光の強度を示している。同様に、側方蛍光のパルス信号の高さは、シースフローセル203cを1つの細菌が通過したことによって生じた側方蛍光の強さを示している。なお、前方散乱光のパルス信号の高さは、細菌の大きさを反映しており、側方蛍光のパルス信号の高さは、細菌に含まれる核酸の染色度合いを反映している。
【0051】
CPU204は、前方散乱光と側方蛍光のパルス信号の高さを取得した後、パルス信号の高さに基づき、シースフローセル203cを通過した各々の細菌についての前方散乱光強度と側方蛍光強度のデータ群(以下、「測定データ」という)を生成する。CPU204は、かかる測定データを通信インターフェース205に出力する。また、CPU204は、通信インターフェース205を介して情報処理装置3から制御信号を受信し、かかる制御信号に従って測定装置2の各部を駆動する。
【0052】
通信インターフェース205は、CPU204から出力される測定データを情報処理装置3に送信し、情報処理装置3から出力される制御信号を受信する。メモリ206は、CPU204の作業領域として用いられる。
【0053】
図3は、測定装置2のうち光学検出部203とアナログ信号処理回路211の構成を示す模式図である。
【0054】
光学検出部203は、発光部203aと、照射レンズユニット203bと、シースフローセル203cと、集光レンズ203dと、ピンホール板203eと、PD(フォトダイオード)203fと、集光レンズ203gと、ダイクロイックミラー203hと、光学フィルタ203iと、ピンホール板203jと、PMT(光電子倍増管)203kと、PD(フォトダイオード)203lとを備えている。アナログ信号処理回路211は、アンプ211a、211b、211cを備えている。
【0055】
発光部203aから出射されるレーザ光は、照射レンズユニット203bにより平行光とされ、シースフローセル203cの内部を通過する測定試料を含む試料流に照射される。なお、シースフローセル203cの内部を通過する測定試料は、測定対象となる検体(尿)に、希釈液と染色液が混合されたものである。
【0056】
集光レンズ203dは、発光部203aから出射されるレーザ光の進行方向に配置されている。シースフローセル203cから生じる前方散乱光は、集光レンズ203dによって収束されて、ピンホール板203eを通り、PD203fによって受光される。
【0057】
集光レンズ203gは、発光部203aから出射されるレーザ光の進行方向と交差する方向に配置されている。シースフローセル203cから生じる側方蛍光と側方散乱光は、集光レンズ203gによって収束されて、ダイクロイックミラー203hに入射する。ダイクロイックミラー203hは、側方蛍光と側方散乱光を分離する。ダイクロイックミラー203hにより分離された側方蛍光は、光学フィルタ203iとピンホール板203jを通り、PMT203kによって受光される。他方、ダイクロイックミラー203hにより分離された側方散乱光は、PD203lによって受光される。
【0058】
PD203f、PMT203k、PD203lは、それぞれ、受光した前方散乱光、側方蛍光、側方散乱光に応じて電気信号を出力する。アンプ211a、211b、211cは、それぞれ、PD203f、PMT203k、PD203lから出力される電気信号を増幅し、A/Dコンバータ212に出力する。なお、アンプ211a、211b、211cは、図2に示すアナログ信号処理回路211を構成する。
【0059】
図4は、情報処理装置3の構成を示す図である。
【0060】
情報処理装置3は、パーソナルコンピュータからなっており、本体300と、入力部310と、表示部320(図1参照)から構成されている。本体300は、CPU301と、ROM302と、RAM303と、ハードディスク304と、読出装置305と、入出力インターフェース306と、画像出力インターフェース307と、通信インターフェース308とを有する。
【0061】
CPU301は、ROM302に記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM303にロードされたコンピュータプログラムを実行する。RAM303は、ROM302およびハードディスク304に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、RAM303は、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU301の作業領域としても利用される。
【0062】
ハードディスク304には、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU301に実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびコンピ
ュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。また、ハードディスク304には、測定装置2から受信した測定データが記憶されている。
【0063】
さらに、ハードディスク304には、測定データに基づいて、スキャッタグラムとヒストグラムを生成し、これらを表示部320上に表示するプログラムや、検体に含まれる細菌の数を取得し検体についての分析を行うためのプログラムや、分析結果を表示部320上に表示するプログラムがインストールされている。これらプログラムがインストールされることで、後述の分析処理や表示処理が行われる。すなわち、CPU301は、かかるプログラムにより、後述する図5(b)と図6の処理を実行する機能や、図9の画面を表示する機能が付与されている。
【0064】
読出装置305は、CDドライブまたはDVDドライブ等によって構成されており、記録媒体などの外部記憶に記録されたコンピュータプログラムおよびデータを読み出すことができる。これにより、情報処理装置3で実行されるプログラムは、記録媒体などの外部記憶を介して更新可能となっている。
【0065】
入出力インターフェース306には、マウスやキーボードからなる入力部310が接続されており、ユーザが入力部310を使用することにより、情報処理装置3に対する指示が行われる。画像出力インターフェース307は、ディスプレイ等で構成された表示部320に接続されており、画像データに応じた映像信号を、表示部320に出力する。表示部320は、入力された映像信号をもとに、画像を表示する。
【0066】
また、通信インターフェース308により、測定装置2から送信された測定データの受信が可能となる。かかる測定データは、ハードディスク304に記憶される。
【0067】
図5は、測定装置2のCPU204と情報処理装置3のCPU301の制御を示すフローチャートである。図5(a)は、測定装置2のCPU204による測定処理を示すフローチャートであり、図5(b)は、情報処理装置3のCPU301による分析処理を示すフローチャートである。
【0068】
同図(b)を参照して、CPU301は、入力部310を介してユーザからの測定開始指示があると(S11:YES)、測定装置2に測定開始信号を送信する(S12)。続いて、CPU301は、測定データを受信したかを判定する(S13)。測定データが受信されていないと(S13:NO)、処理が待機される。
【0069】
他方、同図(a)を参照して、CPU204は、情報処理装置3から測定開始信号を受信すると(S21:YES)、上述した検体の測定を行う(S22)。検体の測定が終了すると、CPU204は、情報処理装置3に測定データを送信し(S23)、処理がS21に戻される。
【0070】
同図(b)を参照して、CPU301は、測定装置2から測定データを受信すると(S13:YES)、ハードディスク304に測定データを記憶し、かかる測定データに基づいて分析処理を行う(S14)。続いて、CPU301は、S14で取得した分析結果を表示部320に表示する(S15)。しかる後、処理がS11に戻される。
【0071】
図6は、図5のS14における“分析処理”の処理フローチャートである。
【0072】
まず、CPU301は、ハードディスク304から測定データをRAM303に読み出し、読み出した測定データに基づき、前方散乱光強度を縦軸とし、側方蛍光強度を横軸とする2次元スキャッタグラムを作成する(S101)。この2次元スキャッタグラムには
、上記測定データを構成する各々の細菌についての前方散乱光強度と側方蛍光強度のデータがプロットされる。図7(a)は、S101で作成されるスキャッタグラムの例示図である。CPU301は、作成した2次元スキャッタグラムから、測定対象となった検体に含まれる細菌の総数を計測する(S102)。
【0073】
続いて、CPU301は、測定対象となった検体に含まれる細菌の数が所定値以上であるかを判定する(S103)。すなわち、S102で計測した細菌の総数から、1mLの検体に含まれる細菌の数を取得し、かかる細菌の数が所定値以上であるかを判定する。なお、本実施形態では、S103の判定に用いる所定値は、尿路感染症であるか否かを判定するための細菌の数の閾値であり、例えば、1mLの検体に対して1.0×10^4(個)とされる。
【0074】
測定に用いた検体に含まれる細菌の数が所定値よりも小さいと判定されると(S103:YES)、CPU301は、被験者に尿路感染症の疑いがないと判定し(S104)、処理が終了となる。他方、測定対象となった検体に含まれる細菌の数が所定値以上と判定されると(S103:NO)、処理がS105に進められる。
【0075】
次に、CPU301は、S101で作成した2次元スキャッタグラムを、所定の傾斜角毎に複数の領域に分割する(S105)。CPU301は、S105で分割した2次元スキャッタグラム上の各領域に含まれる細菌の数を計測する(S106)。
【0076】
ここで、スキャッタグラム上の複数の領域について、図7(b)、(c)を参照して説明する。
【0077】
図7(b)は、S105で作成されるスキャッタグラムの模式図である。
【0078】
直線d0、d1、d2、d3、d4、…は、スキャッタグラムの原点Oを中心とする仮想の円Aの径方向の直線である。直線d0は横軸に一致する直線であり、他の直線は、図示の如く、それぞれ隣り合う直線に対してθの角度を有している。領域D0、D1、D2、D3、…は、直線d0、d1、d2、d3、d4、…によって分割された領域である。なお、θは任意に定めることができ、例えば、1°に設定してもよいし、10°に設定しても良い。このようにスキャッタグラムを複数の領域に分割した後、領域D0、D1、D2、D3、…から、さらに原点Oを含む矩形の領域Bが除かれる。
【0079】
図7(c)は、スキャッタグラム上で細菌の数を計測するための各領域を示す図である。図示の如く、細菌の数を計測するための領域E0、E1、E2、E3、…は、図7(b)で示した領域D0、D1、D2、D3、…から領域Bが除かれた領域である。
【0080】
ここで、図7(b)の領域D0、D1、D2、D3、…から領域Bが除かれる理由は、後述する尿路感染症の分類の判定と細菌の種類の判定の精度を高めるためである。すなわち、図7(a)のスキャッタグラムからも分かる通り、原点O付近に細菌の分布が偏り易い。このため、原点O付近の細菌を領域D0、D1、D2、D3、…についてカウントすると、各領域のカウント結果に差が生じ難くなり、細菌の判定を円滑に行えない。加えて、領域Bでは、領域B以外の領域(前方散乱光強度と側方蛍光強度が大きい領域)と比較して、直線d0、d1、d2、d3、d4、…によって分割される領域が狭い。他方、原点付近では、異なる細菌の分布が互いに重なり合い易い。このため、原点付近で細菌をカウントすると、本来その領域ではカウントすべきでない細菌を多くカウントすることになり、カウント結果に大きな誤差が含まれ易い。
【0081】
このような理由から、後述する尿路感染症の分類の判定と細菌の種類の判定では、原点
O付近の細菌の数をカウントしないようにして各領域に含まれる細菌の数の差を顕著なものとするために、領域D0、D1、D2、D3、…から領域Bが除かれる。
【0082】
なお、領域Bの大きさは、領域E0、E1、E2、E3、…に含まれる細菌の数に基づいて判定した細菌の種類が、培養による細菌の測定結果に最も近くなるよう設定されている。
【0083】
図6に戻って、次に、CPU301は、S106で取得した領域E0、E1、E2、E3、…ごとの細菌の数に基づいて、ヒストグラムを作成する(S107)。
【0084】
図8(a)は、S107で作成されるヒストグラムの例示図である。図8(a)において、横軸は、領域E0、E1、E2、E3、…を分割している直線d0、d1、d2、d3、d4、…の直線d0に対する角度を表している。すなわち、横軸は、小さい方から順に、領域E0、E1、E2、E3、…に対応している。縦軸は、領域E0、E1、E2、E3、…に含まれる細菌の数を表している。
【0085】
図6に戻って、次に、CPU301は、S107で作成されたヒストグラムにおいて、細菌の数がピークとなっている領域を選択する(S108)。
【0086】
ここで、細菌の数がピークとなっている領域とは、ヒストグラムが上向きに凸状となっている部分の頂点に対応する領域(角度範囲)である。すなわち、領域E0、E1、E2、E3、…のうち、角度の変化方向に隣接する前後の領域においてカウントされた細菌の数よりも、自身の領域においてカウントされた細菌の数の方が大きい領域が、頂点の領域として選択される。
【0087】
例えば、図8(a)に示すヒストグラムでは、細菌の数のピークは1つ存在しており、ピーク地点での細菌の数はN1である。この場合、CPU301は、ピークに対応する領域En1を選択する。また、図8(b)に示すヒストグラムの例示図では、細菌の数のピークは2つ存在しており、2つのピーク地点での細菌の数はN2、N3である。この場合、CPU301は、左側のピークに対応する領域En2と、右側のピークに対応する領域En3とを選択する。
【0088】
次に、CPU301は、S108で選択したピークに対応する領域が1つである場合(S109:YES)、この測定データの元となる検体の尿路感染症の分類は、単純性尿路感染症であると判定する(S110)。他方、ピークに対応する領域が2つ以上ある場合(S109:NO)、この測定データの元となる検体の尿路感染症の分類は、複雑性尿路感染症であると判定する(S111)。
【0089】
次に、CPU301は、S108で選択された領域に基づいて、この測定データの元となる検体に含まれる細菌の種類を判定する(S112)。すなわち、CPU301は、選択された領域の直線d0に対する角度範囲が、細菌の種類を特定するために予め設定された角度範囲に含まれるかによって、細菌の種類を判定する。たとえば、図7(b)の場合、領域D2の角度範囲は、2θ〜3θである。S108にて選択された領域が領域D2の場合、2θ〜3θの角度範囲が、細菌の種類を特定するために設定された何れの角度範囲に含まれるかによって、細菌の種類が判定される。
【0090】
本実施形態では、細菌の種類を特定するための角度範囲が、以下のように設定されている。
【0091】
(a)0°〜25° … 桿菌
(b)26°〜44° … 連鎖球菌
(c)45°〜80° … ブドウ球菌
(d)81°〜90° … 該当無し
【0092】
なお、本実施形態では、S108で選択された領域が3つ以上の場合、カウントされた細菌の数が多いものから2つ目までの領域についてのみ、細菌の種類が判定される。ただし、カウントされた細菌の数が多いものから3つ目までの領域について、細菌の種類を判定しても良く、あるいは、選択された全ての領域について細菌の種類を判定しても良い。
【0093】
次に、CPU301は、上記の如く得られた尿路感染症の分類と細菌の種類とを含む分析結果を、ハードディスク304に記憶し(S113)、処理が終了する。
【0094】
図9は、情報処理装置3の表示部320に表示される情報表示画面400の例示図である。情報表示画面400は、図5のS15に従って表示される。
【0095】
情報表示画面400は、被験者ID領域401と、測定日時領域402と、スキャッタグラム領域403と、ヒストグラム領域404と、被験者情報領域405と、細菌情報領域406と、区分角度領域407とを含んでいる。細菌情報領域406は、尿路感染症分類領域406aと種類領域406bを含んでいる。
【0096】
被験者ID領域401には、この分析の元となった検体を採取した被験者を識別する被験者IDが表示される。測定日時領域402には、この測定が行われた測定日時が表示される。スキャッタグラム領域403には、この測定によって得られた図7(a)に対応するスキャッタグラムが表示される。ヒストグラム領域404には、スキャッタグラム403で表示されているスキャッタグラムに基づいて得られた図8(a)、(b)に対応するヒストグラムが表示される。
【0097】
被験者情報領域405には、被験者IDに対応する被験者の名前、担当医、担当医からのコメントなどが表示される。この他、この被験者に対して投与された薬剤に関する情報が、入力部310(図4参照)を介して入力され、被験者情報領域405に表示されるようにしても良い。
【0098】
尿路感染症分類領域406aには、図6で示した分析処理において、S110またはS111で判定された結果が表示される。すなわち、尿路感染症分類領域406aには、この分析の元となった検体の尿路感染症の分類が単純性尿路感染症である場合、“単純性感染症?”と表示され、この分析の元となった検体の尿路感染症の分類が複雑性尿路感染症である場合、“複雑性感染症?”と表示される。
【0099】
なお、尿路感染症分類領域406aの表示内容の末尾に付加される“?”は、この検体が単純性尿路感染症または複雑性尿路感染症に罹患している可能性が高いということを、ユーザに示している。また、尿路感染症の分類が判定されなかった場合や、尿路感染症の分類が判定できなかった場合は、尿路感染症分類領域406aには空白または“UNKNOWN”が表示される。
【0100】
種類領域406bには、図6で示した分析処理において、S112で判定された細菌の種類が表示される。なお、種類領域406bの表示内容の末尾に付加される“?”は、この検体に表示内容の細菌が含まれる可能性が高いということを示している。また、細菌の種類が判定されなかった場合や、細菌の種類が判定できなかった場合は、種類領域406bには空白または“UNKNOWN”が表示される。
【0101】
区分角度領域407には、図7(b)に示した領域D0、D1、D2、D3、…を分割する直線d0、d1、d2、d3、d4、…と、隣り合う直線との角度θが表示される。
【0102】
以上、本実施形態によれば、図6に示すような分析処理から得られる分析結果により、図9に示すように、尿路感染症の分類を表示する尿路感染症分類領域406aが、情報処理装置3の表示部320に表示される。これにより、ユーザは、検体を採取した被験者が、単純性尿路感染症に感染しているか複雑性尿路感染症に感染しているかの指標を得ることができる。
【0103】
また、本実施形態によれば、図9に示すヒストグラム領域404にヒストグラムが併せて表示される。ユーザは、ヒストグラムの形状から、検体中に含まれた細菌の種類の判定の指標となる情報を取得することができる。すなわち、ユーザは、ヒストグラム領域404に表示されたヒストグラム上のピークの位置や数によって、細菌の種類や種類数を把握することができる。たとえば、0°〜25°の範囲にピークが一つだけ現われていれば、検体中に主として桿菌が含まれていることを把握できる。
【0104】
本実施形態において、ユーザは、尿路感染症分類領域406aに表示された情報の他、ヒストグラムの形状から把握した細菌の種類や種類数によっても、検体を採取した被験者が、単純性尿路感染症に感染しているか複雑性尿路感染症に感染しているかの指標を得ることができる。
【0105】
たとえば、ユーザは、ヒストグラム上の0°〜25°の範囲にピークが一つだけ現われていれば、当該検体中には主として桿菌が含まれているとして、当該検体の尿路感染症の分類を単純性と推測することができる。これにより、ユーザは、尿路感染症分類領域406aに表示された尿路感染症の分類を、ヒストグラムの形状から推測される尿路感染症の分類をもって確認することができる。
【0106】
たとえば、図9に示すヒストグラムにおいて、50°付近にノイズ等により小さなピークが現れると、ピークが2つ存在するとして、尿路感染症は、複雑性と判定され、図9の尿路感染症分類領域406aには、尿路感染症が複雑性である旨の表示が行われる。しかし、このような場合であっても、ユーザは、ヒストグラム領域404に表示されたヒストグラムを参照することで、50°付近に現れた小さなピークはノイズ等の影響によるものであると確認でき、当該検体の尿路感染症を単純性と推定することができる。
【0107】
2.第2の実施形態
上記第1の実施形態では、図6のS109において、ヒストグラムにおける細菌の数のピークが1つであるかが判定され、これにより、測定データの元となった検体の尿路感染症の分類が判定された。本実施形態では、ピークが1つであるか否かが、ヒストグラムの歪度を用いて判定される。この場合、上記実施形態のS109の判定に加えて、ヒストグラムの歪度を用いて、尿路感染症の分類を判定しても良い。
【0108】
以下、ヒストグラムの歪度を用いてピークが1つであるか否かを判定する方法について説明する。
【0109】
上記第1の実施形態で示したヒストグラムと同様のヒストグラムにおいて、データの個数をn、各角度に対応する細菌の数をX、細菌の数の平均をX、標準偏差をS(X)とすると、歪度αは以下の式により算出される。
【数1】

【0110】
ヒストグラムが正規分布等の左右対称の分布となるとき、歪度αの値は0となる。歪度αが負のとき、分布は負に歪んでおり、ヒストグラムは左に裾が長い形状となる。歪度αが正のとき、分布は正に歪んでおり、ヒストグラムは右に裾が長い形状となる。
【0111】
ヒストグラムが左右対称である場合には、ヒストグラム上にピークが一つしか現われていない可能性が高い。他方、ヒストグラムが正または負の方向に大きく歪んでいる場合には、ヒストグラム上にピークが複数現われているか、あるいは、ヒストグラム上にはピークが一つしか現われていないものの裾の長い部分に他のピークが埋もれている可能性が高い。
【0112】
このことから、歪度αの値が0から正負に所定の範囲内にある場合は、ピークは1つであるとし、他方、歪度αの値がこの範囲外にある場合は、ピークが複数存在すると判定できる。すなわち、ピークが複数であるかを判定するための、歪度αの正負の閾値範囲を調整することにより、歪度αがこの閾値範囲外にあるかによって、ヒストグラムのピークが1つであるか否かを判定することができる。
【0113】
図10(a)は、ピークが1つであるか否かについて、図6のS109の替わりにS121を用いた場合の“分析処理”の処理フローチャートの一部である。S106で作成したヒストグラムの歪度の絶対値が所定値(閾値)以下である場合(S121:YES)、ヒストグラムのピークが一つであるとして、この測定データの元となる検体の尿路感染症の分類は、単純性尿路感染症であると判定する(S110)。他方、S106で作成したヒストグラムの歪度の絶対値が所定値よりも大きい場合(S121:NO)、ヒストグラムのピークが複数あるとして、この測定データの元となる検体の尿路感染症の分類は、複雑性尿路感染症であると判定する(S111)。
【0114】
この判定処理によれば、たとえば図11(a)のヒストグラム領域404に示すように、ノイズ等の影響によりピークが複数現われているヒストグラムにおいても、ヒストグラムの形状が略左右対称となっていることで、ピークは一つであると判定される。この場合、この測定データの元となる検体の尿路感染症の分類は、図11(b)の尿路感染症分類領域406aに示すように、単純性尿路感染症と判定される。また、たとえば図11(c)のヒストグラム領域404に示すように、ヒストグラム上にはピークが一つしか現われていないものの裾の長い部分に他のピークが埋もれているヒストグラムにおいても、ピークは複数あると判定される。この場合、この測定データの元となる検体の尿路感染症の分類は、図11(d)の尿路感染症分類領域406aに示すように、複雑性尿路感染症と判定される。
【0115】
図10(b)は、ピークが1つであるか否かについて、図6のS109とS110の間にS121が追加された場合の“分析処理”の処理フローチャートの一部である。この場合、S109でヒストグラムのピークが1つかが判定されることに加えて、S121で歪度によってヒストグラムの形状が判定される。こうすると、ピークが1つと判定された場合でも、ヒストグラムの裾が左右に長い形状の場合、この測定データの元となる検体の尿路感染症の分類は、複雑性尿路感染症であると判定される。
【0116】
以上、本発明の実施形態ついて説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0117】
たとえば、上記実施形態には、尿検体を分析するための検体分析装置を例示したが、請求項13ないし16に係る発明は、血液等、尿以外の検体に含まれた細菌を測定するための検体分析装置にも適宜適用可能である。
【0118】
また、上記実施形態では、S105で作成したスキャッタグラムを複数の領域に分割し、各領域に含まれる細菌の数に基づいてヒストグラムを作成し、このヒストグラムにおいて、隣り合う領域よりもプロット数が多い領域の数に基づいて、尿検体を採取した被験者が単純性尿路感染症に感染しているか否かが判定された。しかしながら、これに限らず、ヒストグラムを作成せずに、スキャッタグラムの各領域に含まれるプロット数が、隣り合う領域よりも多い領域の数に基づいて、尿検体を採取した被験者が単純性尿路感染症に感染しているか否かが判定されても良い。
【0119】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 … 尿検体分析装置(検体分析装置)
203 … 光学検出部(検出部)
203a … 発光部(光源部)
203f … PD(検出部)
203k … PMT(検出部)
301 … CPU(制御部)
320 … 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の尿検体と試薬とから調製された測定試料に光を照射する光源部と、
前記光源部からの光により前記測定試料から生じる散乱光および蛍光を検出する検出部と、
表示部と、
前記検出部により検出された散乱光情報と蛍光情報に基づいて得られる細菌の分布状態に基づき、前記被験者が単純性尿路感染症に感染しているか否かの診断を支援する情報を生成し、生成した前記情報を前記表示部に表示させる制御部と、
を備える検体分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記散乱光情報と前記蛍光情報とに基づく細菌の特徴値をプロットしたスキャッタグラムを生成し、前記スキャッタグラムに複数の領域を設定し、前記各領域に含まれるプロット数に基づいて、前記診断支援情報を生成する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記スキャッタグラムの原点を回転中心とした所定の傾斜角毎に前記スキャッタグラムを区分して前記複数の領域を設定する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の検体分析装置において、
前記複数の領域は、前記原点を含む所定の領域がそれぞれ除かれている、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項5】
請求項2ないし4の何れか一項に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、隣り合う領域よりも前記プロット数が多い前記領域の数に基づいて、前記診断支援情報を生成する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項6】
請求項3または4に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記傾斜角と前記プロット数とから生成されたヒストグラムに基づいて、前記診断支援情報を生成する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記ヒストグラムの形状に基づいて、前記診断支援情報を生成する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記ヒストグラム上に現れるピークの数に基づいて、前記診断支援情報を生成する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項9】
請求項7に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記ヒストグラムの歪度に基づいて、前記診断支援情報を生成する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項10】
請求項6ないし9の何れか一項に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記ヒストグラムに基づいて、前記被験者が複雑性尿路感染症に感染しているか否かの診断を支援する他の情報を生成し、生成した前記他の情報を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項11】
請求項10に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記ヒストグラムの形状に基づいて、前記他の診断支援情報を生成する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項12】
請求項11に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記ヒストグラム上に現れるピークの数に基づいて、前記他の診断支援情報を生成する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項13】
請求項11に記載の検体分析装置において、
前記制御部は、前記ヒストグラムの歪度に基づいて、前記他の診断支援情報を生成する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項14】
検体と試薬とから調製された測定試料に光を照射する光源部と、
前記光源部からの光により前記測定試料から生じる散乱光および蛍光を検出する検出部と、
前記検出部により検出された散乱光情報と蛍光情報とを処理する制御部と、
表示部と、を備え、
前記制御部は、前記散乱光情報と前記蛍光情報とに基づきスキャッタグラムを生成し、前記スキャッタグラムに複数の領域を設定し、前記各領域に含まれるプロット数からヒストグラムを生成し、生成した前記ヒストグラムを前記表示部に表示する処理を含む、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項15】
請求項14に記載の検体分析装置において、
前記スキャッタグラムの原点を回転中心とした所定の傾斜角毎に前記スキャッタグラムを区分して前記複数の領域を設定し、前記傾斜角と前記各領域に含まれる前記スキャッタグラムのプロット数とからヒストグラムを生成する、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項16】
請求項15に記載の検体分析装置において、
前記複数の領域は、前記原点を含む所定の領域がそれぞれ除かれている、
ことを特徴とする検体分析装置。
【請求項17】
被験者の尿検体と試薬とから調製された測定試料に光を照射することにより得られた散乱光情報および蛍光情報を検出し、検出した前記散乱光情報と前記蛍光情報に基づいて得られる細菌の分布状態に基づき、前記被験者が単純性尿路感染症に感染しているか否かの診断を支援する情報を生成し、生成した前記情報を表示する、
ことを特徴とする検体分析方法。
【請求項18】
測定試料に光を照射することにより得られた散乱光情報と蛍光情報とに基づきスキャッタグラムを生成し、生成した前記スキャッタグラムに複数の領域を設定し、前記各領域に含まれるプロット数からヒストグラムを生成し、生成した前記ヒストグラムを表示する、ことを特徴とする検体分析方法。
【請求項19】
請求項18に記載の検体分析方法において、
前記スキャッタグラムの原点を回転中心とした所定の傾斜角毎に前記スキャッタグラムを区分して前記複数の領域を設定し、前記傾斜角と前記各領域に含まれる前記スキャッタグラムのプロット数とからヒストグラムを生成する、
ことを特徴とする検体分析方法。
【請求項20】
請求項18または19に記載の検体分析方法において、
前記複数の領域は、前記原点を含む所定の領域がそれぞれ除かれている、
ことを特徴とする検体分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−141242(P2011−141242A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3211(P2010−3211)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】