説明

検出ユニットの対を有する磁気センサ装置

本発明は、第1の及び第2の検出ユニットP、Sを持つ磁気センサ装置100に関し、前記検出ユニットの各々が、磁気センサ素子及び磁界生成器を有する。好適な実施例において、前記磁気センサ素子は、同じ感度方向D12、D22を持つGMR素子であり、前記磁界生成器は、逆平行の磁界励起電流を評価及び制御ユニット40により供給される平行なワイヤである。前記磁界励起電流は、調査領域2において供給された磁化粒子1において反対方向の応答磁界B11'、B21'を誘導する反対の回転方向を持つ励起磁界Bn、B2iを生成する。応答磁界B11'、B21'は、したがって、前記GMR素子に対して反対の効果を持ち、これらの素子の出力信号間の差Δの増加を生じる。好適な実施例において、4つの検出ユニットが、ホイートストンブリッジに構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界生成器及び磁気センサ素子を持つ検出ユニットの対を有する磁化粒子の検出用の磁気センサ装置に関する。更に、このような磁気センサ装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2005/010543A1及びWO2005/010542A2から、例えば磁気ビーズでラベル付けされた目標分子、例えば生体分子の検出用のマイクロ流体バイオセンサにおいて使用されることができる磁気センサ装置が既知である。このマイクロセンサ装置は、磁化固定化ビーズにより生成される応答磁界(magnetic reaction fields)の検出に対する励起磁界及び巨大磁気抵抗(GMR)の生成に対するワイヤを有する検出ユニットのアレイを備える。前記GMRの信号(抵抗変化)は、この場合、前記センサに近いビーズの数を示す。
【0003】
目標分子の極端に低濃度が測定されるべきである場合、及び/又は測定時間が最小化されるべきである場合、前述の種類の磁気センサ装置が信号対雑音比を最大化することは不可欠である。これは、しかしながら、多くの異なる干渉源、例えば電源ノイズ、温度ドリフト、コモンモード干渉及びクロストーク等を考慮すると難しいタスクである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この状況に基づき、本発明の目的は、調査領域において磁化粒子のより正確な検出に対する手段を提供することであり、関連した磁気センサ装置が複雑な製造ステップを持たずに製造されることができることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載の磁気センサ装置及び請求項13に記載の使用により達成される。
【0006】
本発明による磁気センサ装置は、主に(しかし排他的にではなく)、調査領域における磁化粒子の検出、例えばサンプルチャンバ内に供給されたサンプル流体における目標分子にラベルとして付着された磁気ビーズの検出に役立つ。前記磁気センサ装置は、以下の構成要素を有する。
a)"第1の検出ユニット"及び"第2の検出ユニット"。ここで用語"第1の"及び"第2の"は、これらのユニットを区別するためだけに選択され、これらの間に違い又は階層が存在しなければならないことを意味すべきでない。前記第1の及び第2の検出ユニットの各々は、以下の構成要素を有する。
a1)感度方向を持つ"磁気センサ素子"。これに関して、第一に、以下の用語及び定義が、幾何学的対象間の空間的関係を記述するためにこの文章を通して使用されることに注意する。
−(幾何学的)"線"は、1若しくは2方向に無限に又は有限にまっすぐ延在し、特定の向きを持たない。
−"方向"は、向き、すなわち始点から終点(これらの点は無限遠に位置してもよい)に走る向きを持つ線である。方向は、数学的には、ベクトルとして記述されることができる。通常は、方向は、有限の広がりを持ち、矢印として視覚化される。
−2本の線又は方向は、どこでも互いに同じ距離を持つ場合に"平行"と称される。
−2つの方向は、同じ/反対の向きを持つ場合、又はより厳密に、関連したベクトルa、bが正/負のスカラ積a・bを持つ場合に、"等しい向き"/"反対向き"と称される。反対向きの平行な方向は、ときどき"逆平行"とも称される。
前記磁気センサ素子の"感度方向"は、この場合、前記センサ素子が、この空間的方向に平行である磁界ベクトルの成分に対して(のみ又は)最も良感度であることを意味する。更に、これらの成分が前記感度方向に対して等しい向き又は反対向きである場合に差を生じる。通常は、前記磁気センサ素子は、1つの単一感度方向のみを持ち、この方向に垂直な磁界の成分に対して実質的に無反応である。
a2)前記調査領域(の少なくとも一部)における"励起磁界"を生成する"磁界生成器"。ここで前記励起磁界は、磁化粒子が前記調査領域内に存在する場合にこのような粒子の"応答磁界"を励起することができる。更に、前記磁化粒子の前記応答磁界は、定義により前記応答磁界のベクトルとこの関連した磁気センサ素子の場所における前記関連した磁気センサ素子の感度方向との間の角度である"交角"を持つべきである。ほとんどの場合、前記応答磁界は、前記関連した磁気センサ素子の感度方向に平行(及び等しい向き)又は逆平行であり、これは、前記交角がそれぞれ0°又は180°であることを意味する。一般に、前記交角は、しかしながら、0ないし180°のいかなる値を仮定してもよい。
厳密にいえば、前記応答磁界の向きは、印加される励起磁界だけでなく、前記磁化粒子の実際の分布にも依存する。前記交角の一意的な定義に対して、"応答磁界"は、したがって、本発明に関連して、常に、所定の代表的向き、例えば実際に可能な全ての応答磁界の平均的な向きを指す。
更に、前記検出ユニットの上で規定された構成要素xyz(磁気センサ素子、感度方向、磁界生成器、励起磁界、応答磁界、交角)は、下記において、ときどき、それぞれ前記第1の又は第2の検出ユニットに対する帰属に依存して"第1の構成要素xyz"又は"第2の構成要素xyz"と称される。"第1の磁気センサ素子"は、したがって、例えば、"前記第1の検出ユニットの磁気センサ素子"に対する短い表記法である。
b)(上で定義された)関連した交角が互いに異なるように前記第1の及び第2の検出ユニットの前記磁界生成器を制御する制御ユニット。
c)前記第1の及び第2の検出ユニットの前記磁気センサ素子の出力信号の差を感知する評価ユニット。前記評価ユニット及び前記制御ユニットは、前記検出ユニットとして同じマイクロ電子チップ上の回路として実装されてもよく、又はこのチップから(少なくとも部分的に)外部に実現されてもよい。
【0007】
前記磁気センサ装置は、前記評価ユニットが、2つの測定信号間の差を感知するので、高い信号対雑音比を達成し、これは、両方の磁気センサ素子に同様に作用するかく乱(例えば電源ノイズ、温度ドリフト、コモンモード干渉、クロストーク)が相互に相殺することを意味する。所望の測定信号、すなわち前記磁化粒子において励起された前記応答磁界の強度の相殺は、しかしながら、防止される。これは、フィーチャa2)によると、前記励起された応答磁界が、前記第1の及び第2の磁気センサ素子において異なる交角を持ち、したがって異なる測定を生じるという事実による。
【0008】
本発明の好適な実施例によると、前記第1の及び第2の検出ユニットは、実質的に同じ設計を持つ(すなわち、同じ寸法及び相対的配置で同じ材料/構成要素を有する)。このような同一の構成は、かく乱が、両方の検出ユニットに同様に作用し、したがって前記出力信号の差において(ほとんど)正確に相殺することを保証する。
【0009】
一般に、前記第1の及び第2の励起磁界は、前記調査領域においていくらか重複するかもしれない。好適な実施例において、前記第1の及び第2の磁界生成器は、しかしながら、励起磁界が前記調査領域の異なる部分において支配的である(すなわち前記部分の磁界強度のすくなくとも70%に寄与する)ように構成される。最も好ましくは、前記励起磁界は、実質的に重複を持たず、これは、前記第1の検出ユニットと前記第2の検出ユニットとの間の関連したクロストークを最小化する。
【0010】
一般的な場合に、前記第1の磁気センサ素子及び/又は前記第2の磁気センサ素子の場所において(前記磁化粒子により生成された)前記第1の応答磁界と前記第2の応答磁界との間に重複があってもよい。しかしながら、前記第1の及び第2の磁気センサ素子は、それぞれ前記第1の又は第2の応答磁界によってのみ支配的に到達されることが好ましい。理想的には、前記第1の応答磁界は、前記関連した第1の磁気センサ素子のみに到達し、前記第2の応答磁界は、前記関連した第2の磁気センサ素子のみに到達する。この場合、前記第1の検出ユニットと前記第2の検出ユニットとの間の磁気クロストークは、大幅に減少されることができる。前記クロストークの最小化は、もちろん、前述の実施例と組み合わせて、すなわち前記第1の及び第2の励起磁界も重複しない場合に到達される。
【0011】
前記(第1の及び/又は第2の)磁界生成器は、例えば少なくとも1つの導体ワイヤにより実現されることができる。典型的な実施例において、これは、2つの平行に延在するワイヤの対により実現される。
【0012】
前記(第1の及び/又は第2の)磁気センサ素子は、特にホールセンサを有することができ、このセンサの感度方向は、前記センサを通る電流の方向により決定される。2つの同一の平行なホールセンサは、例えば、逆平行の電流がこれらを通って導通される場合に反対の極性の信号を生成する。前記(第1の及び/又は第2の)磁気センサ素子は、GMR(巨大磁気抵抗)、TMR(トンネル磁気抵抗)又はAMR(異方性磁気抵抗)素子のような磁気抵抗素子を有することもでき、GMR素子の感度方向は、例えばピン止め層により決定される。更に、前記磁界生成器及び前記磁気センサ素子は、例えばCMOS技術をCMOS回路の上に前記磁気抵抗構成要素を実現する追加ステップと一緒に使用して、集積回路として実現されることができる。前記集積回路は、オプションとして、前記磁気センサ装置の前記制御ユニット及び/又は前記評価ユニットをも有することができる。
【0013】
前記第1の及び第2の感度方向は、一般に、空間において任意に位置することができ、これらは平行及び等しい向きであることが好ましい。原理的に、逆平行の感度方向を持つ磁気センサ素子として近隣GMRを生成することが既知である(WO2004/109725A1を参照)が、これは、マイクロチップ上の前記磁気センサ素子が全て同じ感度方向を持つことができれば大幅に容易になる。関心の(すなわち前記応答磁界の)信号の異なる効果は、提案された磁気センサ装置において、異なる励起磁界の印加による等しい向きの感度方向にもかかわらず達成されることができる。
【0014】
本発明の好適な実施例において、前記制御ユニットは、前記第1の及び第2の磁界生成器に等しい強度の反対方向の電流をそれぞれ供給する。前記磁界生成器がマイクロチップ上の平行な導体ワイヤであると仮定すると、前記反対方向の電流は、反対の回転方向を持つ励起磁界を生成し、これは、結果的に前記磁化粒子における反対向きの応答磁界を誘導する。これらの応答磁界と前記第1の及び第2の感度方向との間の交角は、それぞれ、したがって、180°異なり、前記第1の磁気センサ素子の出力信号と前記第2の磁気センサ素子の出力信号との間の最大の差を生じる。
【0015】
前記磁気センサ装置は、第1の及び第2の検出ユニットの1より多い対を有することができる(典型的には有する)。第1の及び第2の検出ユニットの複数の対を持つこのような磁気センサ装置の好適な実施例において、複数の(オプションとして全ての)検出ユニットの磁気センサ素子は、共通ライン、例えば接地に接続される。このように、配線の数は、大幅に減少されることができる。
【0016】
本発明の他の重要な実施例において、前記磁気センサ装置は、第1の及び第2の検出ユニットの第2の対を有し、4つ全ての検出ユニットの磁気センサ素子が、ホイートストンブリッジとして接続される。前記磁気センサ素子が(磁気)抵抗により実現される場合、前記ホイートストンブリッジは、温度ドリフトのようなかく乱が最適に抑制されると同時に抵抗変化の非常に良感度の検出を可能にする。
【0017】
前述の実施例の他の発展形において、前記ホイートストンブリッジの全ての磁気センサ素子の感度方向は、互いに平行であり、等しい向きである。既に上で述べたように、これは、追加の製造ステップ無しの最も単純な製造を可能にする。
【0018】
前記ホイートストンブリッジの実施例の他の発展形において、直列に接続された2つの磁気センサ素子の(上で規定されたように、応答磁界と感度方向との間の)交角は、約180°異なる。これらの磁気センサ素子に作用する応答磁界は、したがって、反対の効果を持ち、例えば一方の抵抗を増加し、他方の磁気センサ素子の抵抗を減少する。前記磁気センサ素子間の電圧は、したがって、両方の素子により同じ方向にシフトされる。好ましくは、提案された設計は、前記ホイートストンブリッジの両方の枝において−反対の符号で−実現される。第1の枝の2つの磁気センサ素子間のノードにおける降下電圧は、この場合、他方の枝の磁気センサ素子間のノードにおける上昇電圧が付随して生じ、逆も同様であり、これら2つのノード間の最大電圧差を生じる。
【0019】
本発明は、更に、分子診断、生物学的サンプル分析、及び/又は化学サンプル分析、特に小さな分子の検出に対する上記のマイクロ電子磁気センサ装置の使用に関する。分子診断は、例えば、目標分子に直接又は間接的に付着された磁気ビーズの助けで達成されることができる。
【0020】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施例を参照して説明され、明らかになる。これらの実施例は、添付の図面の助けで例として記載される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による磁気センサ装置の第1の及び第2の検出ユニットを概略的に示す。
【図2】応答磁界と磁気センサ素子の感度方向との間の交角を示す。
【図3】フルホイートストンブリッジとして接続された第1の及び第2の検出ユニットの2つの対を概略的に示す。
【図4】ハーフホイートストンブリッジとして接続された第1の及び第2の検出ユニットの1つの対を概略的に示す。
【図5】2つのハーフホイートストンブリッジが共通ラインに結合される図4の実施例の変型例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
同様の参照番号は、図において同一又は同様の構成要素を示す。
【0023】
図1は、調査領域(サンプルチャンバ2)内の磁気的に相互作用する粒子、例えば超常磁性ビーズ1の検出に対するバイオセンサとしての特定のアプリケーションにおける本発明によるマイクロ電子磁気センサ装置100を示す。磁気抵抗バイオチップ又はバイオセンサは、感度、特異性、集積性、使いやすさ及びコストに関して、バイオ分子診断に対する有望な性質を持つ。このようなバイオチップの例は、参照により本出願に組み込まれるWO2003/054566、WO2003/054523、WO2005/010542A2、WO2005/010543A1及びWO2005/038911A1に記載されている。
【0024】
バイオセンサは、典型的には、図1に示される種類の(例えば100個の)磁気センサ装置100のアレイからなり、したがって、溶液(例えば血液又は唾液)中の多数の異なる目標分子(例えばタンパク質、DNA、アミノ酸、乱用薬物)の濃度を同時に測定することができる。結合スキームの1つの可能な例、いわゆる"サンドイッチアッセイ"において、これは、結合表面3に前記目標分子が結合することができる第1の抗体を備えることにより達成される。第2の抗体を持つ超常磁性ビーズ1は、この場合、結合された目標分子に付着することができる。単純にするため、ビーズ1のみが図に示されている。
【0025】
図1は、更に、実質的に同一の設計であり、表面3の下の基板に実現された"第1の検出ユニット"P及び"第2の検出ユニット"Sを示す。検出ユニットP及びSは、それぞれ(磁界生成器として機能する)第1の及び第2の励起ワイヤ11及び21並びに(磁気センサ素子として機能する)第1の及び第2のGMR素子12及び22を各々有する。励起ワイヤ11及び21を流れる電流は、第1の励起磁界B11及び第2の励起磁界B21をそれぞれ生成し、これらは超常磁性ビーズ1を磁化させる。超常磁性ビーズ1からの第1の及び第2の応答磁界B11'、B21'は、最終的に、それぞれGMR12及び22の面内磁化成分を取り入れ、これは、測定可能な抵抗変化に帰着する。
【0026】
第1のGMR素子21及び第2のGMR素子22は、信号差Δ(典型的には等しい感知電流が印加される場合に前記GMR素子の両端間の電圧降下の差)を感知する結合された評価及び制御ユニット40に接続される。
【0027】
評価/制御ユニット40は、励起電流を供給する平行な励起ワイヤ11及び21に更に接続される。これらの励起電流は、生成される励起磁界B11及びB12が反対の回転方向を持つように、同じ強度を持ち、反対方向にされる。結果として、誘導される応答磁界B11'及びB21'も、反対の回転方向を持つ。これは、示された例において、第1の応答磁界B11'と第1の感度方向D21との間の交角α1が180°であり、第2の応答磁界B21'と第2の感度方向D22との間の交角α2は0°であることを意味する。第1のGMR素子21の抵抗が減少されるのに対し、第2のGMR素子22の抵抗は、対応して増加され、これらの反対の効果は、出力差Δに合計される。
【0028】
図2は、第1の及び第2の感度方向D12及びD22並びに関連した第1の及び第2の応答磁界B11'及びB21'に対する一般的な場合に関する主要なスケッチを含む。前記感度方向が、図1の例において平行であり、等しい向きであるが、前記感度方向は、一般に、いかなる空間的向きをも持ちうる。感度方向と関連した応答磁界との間の交角、例えば第1の感度方向D12と第1の応答磁界B11'との間の交角α1は、この場合、関連したベクトル間の角度として定義される。
【0029】
それぞれ第1の及び第2のGMR素子における前記第1の及び第2の応答磁界の効果の差を観測することができるように、ここで、第1の交角α1及び第2の交角(図2のα2)が異なることが望ましい。この条件は、図において点線により示される第2の応答磁界B21'の2つの方向を除き、多くの構成に対して満たされ、これらの方向は、前記第1の検出ユニットと同じ交角α2=α1を生じるので"禁じられる"。
【0030】
前記第1の及び第2のGMR素子により生成される信号の最大の広がりは、第1の交角と第2の交角との間の差|α1−α2|が、図1の構成の場合のように180°の最大値を仮定する場合に達成される。このような最適化は、(i)平行な感度方向及び逆平行の応答磁界(図1)並びに(ii)逆平行の感度方向及び平行な応答磁界の両方により達成されることができる。後者のオプションは、しかしながら、製造するのが難しいので好ましくない。更に、逆平行の感度方向は、測定信号が図1の構成において相殺するのに対し、前記第1の及び第2の検出ユニットP、Sの領域において近似的に一様である外部磁界が、出力差に合計される測定信号を誘導するという欠点を持つ。
【0031】
図3は、2つの第1の検出ユニットP、P'及び2つの第2の検出ユニットS、S'がフルホイートストンブリッジとして構成される、本発明による好適な磁気センサ装置200のレイアウトを示す。より正確には、関連したGMR素子12、22、32及び42が、フルホイートストンブリッジとして接続される。評価/制御ユニット40は、GMR素子12、22,32、42を通るバイアス電流を供給するために端子AとBとの間に電圧差を生成することができる。端子CとDとの間の差動センサ出力信号Δは、この場合、後で獲得され、評価/制御ユニット40内の差動増幅器により更に処理される。センサ出力信号Δは、差分電圧又は電流であることができる。
【0032】
励起ワイヤ11、21、31及び41は、対応するGMR素子に隣接して示される。評価/制御ユニット40は、励起ワイヤ11、21、31及び41を通る励起電流を提供することもでき、対応する接続は、単純にするために完全に描かれていない。更に、1つの励起ワイヤのみが示されるが、一般に各検出ユニットにおいて1より多く存在してもよい。
【0033】
電流は、(前記磁気粒子から生じる)局所的な応答磁界が、関連したGMRのピン止め層に平行に(これはGMR12及び42の場合)又は逆平行に(GMR22、32)のいずれかで位置合わせされるように励起ワイヤ11、21、31及び41を通される。
【0034】
示された磁気センサ装置の利点は、
−前記装置がコモンモード磁気干渉に無反応であること、
−前記装置のDC動作点が、GMR素子12、22、32、42の温度変化に無反応であること、
−温度変化、ノイズ、端子AとBとの間の電圧差の広がり等が、C及びD端子を横切るコモンモード信号として現れ、評価/制御ユニット40の中の前記差動増幅器のコモンモード拒否により抑制されること、
−励起ワイヤから前記ブリッジへのコモンモード容量性及び誘導性クロストークも前記差動増幅器により抑制されること、
を有する。
【0035】
図4は、前の実施例の変更例として、ハーフホイートストンブリッジが第1の及び第2の検出ユニットP及びSの1つの対により実現される磁気センサ装置300を示す。評価/制御ユニット40は、再び、励起ワイヤ11及び21に励起電流を供給する。更に、これは、一方で端子A及びBを介して、他方で端子Cを介してGMR素子12、22を通るバイアス電流を供給する。差分出力信号Δは、端子A及びBにおいて得られる。これは、差分電圧又は電流であることができる。
【0036】
この実施例の追加の利点は、フルホイートストンブリッジより少数のセンサ素子及び配線が必要とされることである。
【0037】
図5は、前の実施例の変型例として、より少数の配線を持つハーフホイートストンブリッジを有する磁気センサ装置400を示す。図4と比較して、(場合により多数の中の)2つのハーフホイートストンブリッジが備えられ、これらはすべて共通ノードC、例えば基板(接地)を使用する。このように、複数のセンサユニットが、同じ端子Cを共有し、これは、評価/制御ユニット40に対するより少数の配線に導く。
【0038】
記載された実施例が、全てのGMR素子の感度方向が同じであることができるという利点を持つことは、既に記述された。センサ装置のマイクロ加工後に、全てのGMR素子のピン止め層は、同じ向きを持つ。したがって、追加の後処理ステップは、2つのGMR素子のピン止め層の一部がフリップされるべきである場合(例えば図3のホイートストンブリッジのGMR素子22及び32の層)に必要とされる。このようなフリップを達成する技術は、(スタンプから複製される)前記ピン止め層の方向を局所的に再プログラムするために、センサ表面の上に近い硬質磁性"スタンプ"の印加及び加熱を伴う。他の技術は、外部磁界の同時印加とともに、局所加熱に対する前記GMR素子を通る電流パルスの制御された印加に基づく(WO2004/109725A1を参照)。両方の技術は、例えば標準的なCMOSプロセスの絶縁破壊電圧を大きく上回る可能性がある高電流及び関連した高電圧の印加又は正確な機械的位置合わせのいずれかを伴う製造プロセスにおける追加ステップを必要とする。更に、前記ピン止め層の向きの再プログラムは、追加の磁区の生成を生じることができ、センサ不安定性(バルクハウゼンノイズ、ベースラインポッピングノイズ)に対する原因であることができる。
【0039】
(近隣の)GMR素子のフリップされた感度方向を持つ前述の実施例は、本発明の範囲に属するが、追加の加工ステップ無しで、かつ前記センサを高温及び大きな磁界にさらすことなく差動センサを製造する手段を提供することが好ましい。上に記載された本発明の実施例は、このような手段を提供する特定の利点を持つ。前記実施例は、前記ピン止め層の向きを反転するのではなく、センサセグメントにおける励起磁界の方向を反転するという提案に基づく。これは、例えば励起電流の反転により達成されることができ、関連したGMR素子が前記磁気粒子に対して反対の応答を示す効果を持つ。したがって、完全差分センサ動作が確立されることができる。
【0040】
最終的に、本出願において、用語"有する"が他の要素又はステップを除外せず、"1つの"が複数を除外せず、単一のプロセッサ又は他のユニットが複数の手段の機能を満たすことができることが指摘される。本発明は、ありとあらゆる新規な特徴的フィーチャ及び特徴的フィーチャのありとあらゆる組み合わせに存在する。更に、請求項内の参照符号は、前記請求項の範囲を限定するように解釈されるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調査領域における磁化粒子の検出に対する磁気センサ装置において、
a)第1の検出ユニット及び第2の検出ユニットであって、
a1)感度方向を持つ磁気センサ素子、
a2)前記磁化粒子の応答磁界を励起することができる励起磁界を前記調査領域において生成する磁界生成器であって、前記応答磁界が、前記関連した磁気センサ素子において前記磁気センサ素子の感度方向に対して交角を持つ、当該磁界生成器、
を有する当該第1の検出ユニット及び第2の検出ユニットと、
b)前記関連した交角が互いに異なるように前記第1の検出ユニット及び前記第2の検出ユニットの前記磁界生成器を制御する制御ユニットと、
c)前記第1の検出ユニット及び前記第2の検出ユニットの前記磁気センサ素子の出力信号の差を感知する評価ユニットと、
を有する磁気センサ装置。
【請求項2】
前記第1の検出ユニット及び前記第2の検出ユニットが同じ設計を持つことを特徴とする、請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記磁界生成器は、前記励起磁界が前記調査領域の異なる部分において支配的であるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
前記磁気センサ素子が、前記関連した検出ユニットの前記応答磁界により支配的に到達されるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記磁界生成器の少なくとも1つが少なくとも1つの導体ワイヤを有することを特徴とする、請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記磁気センサ素子の少なくとも1つが、ホールセンサ又はGMRのような磁気抵抗素子、AMR又はTMR素子を有することを特徴とする、請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
前記検出ユニットの前記感度方向が、平行であり、等しい向きであることを特徴とする、請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項8】
前記制御回路が、前記磁界生成器に等しい強度の反対方向の電流を供給する、請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項9】
前記磁気センサ装置が、第1の検出ユニット及び第2の検出ユニットの複数の対を有し、前記検出ユニットの磁気センサ素子が共通ラインに接続されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項10】
前記磁気センサ装置が、第1の検出ユニット及び第2の検出ユニットの第2の対を有し、4つの前記検出ユニットの前記磁気センサ素子が、ホイートストンブリッジとして接続されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項11】
全ての前記磁気センサ素子の感度方向が、互いに平行であり、等しい向きであることを特徴とする、請求項10に記載の磁気センサ装置。
【請求項12】
直列に接続された前記磁気センサ素子の交角が約180°異なることを特徴とする、請求項10に記載の磁気センサ装置。
【請求項13】
分子診断、生物学的サンプル分析及び/又は化学サンプル分析、特に小さな分子の検出に対する請求項1に記載の磁気センサ装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−521649(P2010−521649A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530982(P2009−530982)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053944
【国際公開番号】WO2008/044162
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】