説明

検査対象受体、分取装置、及び分取方法

【課題】 規定量を正確に流路に流すことができる検査対象受体、分取装置、分取方法、検査装置、プログラム、及び記憶媒体を提供すること。
【解決手段】 検査対象受体3は、上方が開口した断面が略長方形の溝である検査パターン構成部25等を備える。検査パターン構成部25の一部である導入部25aに供給された検査対象は、そのうちの一定量が、突起を多数配置して成る保持部25gに、毛細管現象により吸収される。保持部25gに保持された検査対象は、検査対象受体3を回転させて生じる遠心力により、外周側に送り出され、突起を多数配列して成る検査部25h至る。検査部25hには予め抗体を固定しておき、検査対象と反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望する液体の容量を定量したり、定量後に分離する微小流体工学構成要素に関し、例えば、化学的、医学的、生物学的な化学分析を行うための検査対象受体、分取装置、分取方法、検査装置、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
基板(チップ)上にポンプ、バルブ、リアクターなど様々な機能を微小化、集積化させたシステムにて、より高速、高効率な分析や合成などの化学反応を行う方法が研究されている。
【0003】
このようなシステムの報告例として、例えば、回転によって検査対象受体(チップ)を操作し、回転により生じる遠心力を利用して、検査対象受体内に形成された流路内の液体を移動させ、反応させるポンプレスの微量システム検査装置(以下、背景技術1とする)がある。この装置は、遠心力を利用するため、液体を駆動するためのポンプが不要となり、シンプルなシステムとすることができ、且つ、遠心力の特性上、回転の中心から同一距離にある液体に対しては、同一の力をかけることができるという利点がある。
【0004】
また、他のシステムとしては、計量キャピラリーアレイを検査対象受体内に配置した例が知られている(特許文献1参照、以下、背景技術2とする)。
【特許文献1】特許第3537813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、背景技術1の装置では、所望する量の反応液を再現性良く供給することができないため、検査結果の再現性が十分でなかった。
また、背景技術2では、計量する液の体積が10〜50μL(マイクロリットル)という量であり、より微量の液体に対する検査に対応できないため、検査対象受体を用いた微量システムの検査において、効率性、正確性が不十分であった。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、nL(ナノリットル)〜μLと、従来よりも1オーダー小さい微量な液体の正確な定量、分離が可能であり、計量する液体の体積が数十〜数百μLといった液体量においても、精度よく定量できるので、あらゆる定量や、定量後に分離する微小流体工学構成要素に展開できる検査対象受体、分取装置、分取方法、検査装置、プログラム、及び記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1の発明は、
液状の検査対象を検査する用途に用いられる検査対象受体であって、前記検査対象を一定の経路を経て移動させる流路と、複数の突起部を、当該突起部の間に前記検査対象が毛細管現象により広がる間隔にて前記流路に配置して成る保持部と、を備えることを特徴とする検査対象受体を要旨とする。
【0008】
本発明の検査対象受体において、流路にある液状の検査対象を保持部に接触させると、毛細管現象により所定量の検査対象が保持部の中に吸収される。その後、保持部に吸収された検査対象に、例えば遠心力などの駆動力を作用させれば、保持部に吸収された検査対象の一部又は全部の所望した容量を取り出すことができる。
【0009】
このとき、保持部に一旦吸収される検査対象の量は保持部全体の体積から突起部の体積を差し引いたものであるから一定の量となる。そのため、本発明の検査対象受体を用いて上記のような操作を行えば、所定量の検査対象を計り取ることができる。また、本発明によれば、nL〜μLオーダーの微細な量を精度良く計り取ることができる。
【0010】
また、本発明の検査対象受体は、従来の検査対象受体のように、微小バルブを別途作製し、高精度の組付けを行う必要がないので、製造が容易であり、製造コストが低い。
本発明の検査対象受体では、上記のように計り取った検査対象に対し、例えば、流路の一部に設けた検査部において生物、化学反応による検査を行うことができる。
(2)請求項2の発明は、
前記流路に、前記検査対象を導入する導入部を備えることを特徴とする請求項1記載の検査対象受体を要旨とする。
【0011】
本発明では、導入部を介して流路に検査対象を導入することができる。
(3)請求項3の発明は、
前記保持部の少なくとも一部が前記導入部内に張り出していることを特徴とする請求項2に記載の検査対象受体を要旨とする。
【0012】
本発明では、保持部の少なくとも一部が導入部内に張り出しているので、導入部に供給した検査対象は、保持部のうち張り出した部分から保持部に毛細管現象により吸収される。そのため、検査対象を容易に計り取ることができる。
(4)請求項4の発明は、
前記導入部は、前記導入部内に張り出した保持部により2つの領域に区分されるとともに、前記2つの領域は、前記保持部の周辺に設けられた切り欠き部により連通していることを特徴とする請求項3に記載の検査対象受体を要旨とする。
【0013】
本発明によれば、2つの領域のうちの、保持部よりも上流側(検査対象受体を回転させ、遠心力で検査対象を流路に沿って送る場合は、回転における内周側)の領域に検査対象を導入し、その検査対象を保持部に吸収させる。そして、保持部に吸収されずに残った検査対象は、切り欠き部を通して、導入部のうちの他方の領域(保持部よりも下流側の領域)に移動させることができる。この他方の領域に入った検査対象に、例えば遠心力などの駆動力を作用させて保持部から遠ざけるようにすれば、余分な検査対象が保持部に流れ込んでしまうようなことがない。
(5)請求項5の発明は、
前記流路において、前記導入部と前記保持部との間に、突起部を複数配列して成る異物除去部を有することを特徴とする請求項2に記載の検査対象受体を要旨とする。
【0014】
本発明によれば、導入部に導入した検査対象が異物を含んでいたとしても、異物除去部によりその異物を除くことができるので、異物が保持部に入り込んでしまうようなことがない。
(6)請求項6の発明は、
前記流路に、突起部を複数配置してなる検査部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0015】
本発明では、保持部を用いて所定量を計り取った検査対象を検査部に移動させ、生物、化学的反応による検査を行うことができる。本発明における検査部は突起部を複数配置してなるので表面積が大きく、検出感度を高めることができる。
(7)請求項7の発明は、
前記流路のうち、前記保持部と前記検査部との間に、試薬を導入するための試薬導入部を少なくとも1つ備えることを特徴とする請求項6記載の検査対象受体を要旨とする。
【0016】
本発明によれば、保持部と検査部との間に設けられた少なくとも1つの試薬導入部により、検査部に検査対象や試薬を導入することができる。保持部から検査部へ向かう方向を検査対象の流れ方向とすると、試薬導入部は、保持部よりも下流方向にあるので、試薬導入部から試薬を導入すれば、精密な計量の必要がない試薬等は、保持部を経ずに、検査部に送ることができるので、保持部で計量を行う前に、保持部を濡らして、精密な計量を阻害する恐れがなくなる。尚、試薬導入部が他の流路につながる位置は、検査部に重なっていてもよい。
(8)請求項8の発明は、
前記試薬導入部に、複数の突起部を当該突起部の間に前記検査対象が毛細管現象により広がる間隔にて配置して成るピラー部、又は前記試薬導入部における他の部分よりも疎水性である疎水部を備え、前記試薬導入部のうちの少なくとも一部は、前記ピラー部又は疎水部により、前記試薬導入部以外の流路と隔てられていることを特徴とする請求項7記載の検査対象受体を要旨とする。
【0017】
本発明では、試薬導入部にピラー部または疎水部が設けられているので、試薬導入部に供給した試薬が、試薬導入部内に留まり、使用者の意図に反して他の流路に流れ込んでしまうようなことがない。
(9)請求項9の発明は、
前記保持部から前記検査部へ向かう方向を前記検査対象の移動方向とするとき、前記流路のうち、前記検査部よりも、前記移動方向における下流の領域である液溜まり部に、複数の突起部を当該突起部の間に前記検査対象が毛細管現象により広がる間隔にて配置して成るピラー部、又は他の液溜まり部よりも疎水性である疎水部を備え、
前記液溜まり部のうちの少なくとも一部は、前記ピラー部又は疎水部により、前記検査部と隔てられていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0018】
本発明では、液溜まり部に設けられたピラー部又は疎水部により、液溜まり部からの逆流を防止することができる。
(10)請求項10の発明は、
前記流路は、前記検査部が設けられた下流部と、前記下流部から分岐し、前記導入部に接続する上流部とを有し、前記保持部は、前記上流部と前記下流部とに跨って設けられていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0019】
本発明では、保持部の一部は、検査部と同じく、下流部に位置する。そのため、保持部に保持されている検査対象に対し、下流部に沿って検査部に向かう方向の遠心力などの駆動力を作用させれば、少なくとも、保持部のうちの下流部にある部分に保持されている検査対象を取り出し、検査部に送ることができる。
(11)請求項11の発明は、
前記検査対象受体は、所定の中心部を軸として回転するものであるとともに、前記下流部は、前記回転における動径方向に設けられ、前記上流部と前記下流部とは、分岐している部分において、鋭角をなすことを特徴とする請求項10記載の検査対象受体を要旨とする。
【0020】
本発明では、図7(a)に示すように、上流部25bと、動径方向に設けられた下流部25cとのなす角度が鋭角であるので、保持部25gのうちの下流部25c側に保持された検査対象に対し、例えば、検査対象受体を所定の中心部を軸として回転させ、遠心力により、流路に沿って、検査部に向かう方向の駆動力をかけると、保持部25gのうち上流部25b側にある検査対象には、流路に沿って、検査部25hから遠ざかる方向への駆動力がかかる。
【0021】
そのため、保持部25gのうちの、下流部25c側に保持された検査対象のみを、検査部25hに再現性よく移動させるとともに、保持部25gのうちの、上流部25b側にある検査対象が検査部25hに流れ込むことを防止できる。
【0022】
本発明では、上記のように、保持部25gのうちの、上流部25b側に保持された検査対象が下流部25c側に流れることを防止できるので、上流部25bに導入部を兼ねさせても、導入部から下流部25cに検査対象が不本意に流れてしまうようなことがない。よって、上流部25bに導入部を兼ねさせ、省スペース可することが可能である。
(12)請求項12の発明は、
前記検査対象受体は、所定の中心部を軸として回転するものであるとともに、前記下流部は、前記回転における動径方向に設けられ、前記上流部と前記下流部とは、分岐している部分において、直角をなすことを特徴とする請求項10記載の検査対象受体を要旨とする。
【0023】
本発明では、図7(b)に示すように、上流部25bと、動径方向に沿って設けられた下流部25cとのなす角度が直角であるので、保持部25gのうちの下流部25c側に保持された検査対象に対し、例えば、検査対象受体を所定の中心部を軸として回転させ、遠心力により、流路に沿って、検査部25hに向かう駆動力をかけると、保持部25gのうちの上流部25b側に保持された検査対象には、駆動力がかからない。そのため、保持部25gのうちの、下流部25c側に保持された検査対象のみを、検査部25hに再現性よく移動させることができる。この場合、保持部25gのうちの、下流部25c側に保持された検査対象を送り出した後も、保持部25gには検査対象が残っているので、再度、検査対象を保持部25gから下流部25c側に送り出すときには、検査対象の追加量が少なくて済み、検査対象の少量化が可能となる。
(13)請求項13の発明は、
前記検査対象受体は、所定の中心部を軸として回転するものであるとともに、前記下流部は、前記回転における動径方向に設けられ、前記上流部と前記下流部とは、分岐している部分において、鈍角をなすことを特徴とする請求項10記載の検査対象受体を要旨とする。
【0024】
本発明では、図7(c)に示すように、上流部25bと、動径方向に設けられた下流部25cとのなす角度が鈍角であるので、保持部25gのうちの下流部25c側に保持された検査対象に対し、例えば、検査対象受体を所定の中心部を軸として回転させ、遠心力により、流路に沿って、検査部25hに向かう駆動力をかけると、保持部25gのうちの上流部25b側に保持された検査対象にも、同じ方向への駆動力がかかる。
【0025】
そのため、保持部25gのうちの、下流部25c側に保持された検査対象と、上流部25b側に保持された検査対象とを、検査部25hに再現性よく移動させることができる。本発明は特に、検査部25hへ移動させる検査対象の量を多くする必要があるときに有効である。
(14)請求項14の発明は、
前記流路において、前記保持部と検査部との間に、突起部を設けない中間部を有することを特徴とする請求項6〜13のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0026】
本発明では、保持部と検査部との間に、突起部を設けない中間部を有するので、保持部に保持された検査対象が、保持部内に留まり、使用者の意図に反して検査部に流れてしまうようなことがない。
【0027】
本発明では、例えば、中間部を疎水性の表面を持つ材料で形成することができる。また、中間部の表面の全部又は一部を疎水処理することができる。こうすることにより、中間部を検査対象が流れにくくなるので、保持部に保持された検査対象が使用者の意図に反して検査部に流れてしまうことを一層確実に防止できる。
(15)請求項15の発明は、
前記保持部は、前記検査部に近い側に、前記保持部における他の部分よりも突起間隔が小さい部分を有することを特徴とする請求項6〜14のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0028】
本発明では、保持部のうち、検査部に近い側に、突起間隔が小さい部分がある。この部分は、検査対象の粘性抵抗が大きくなる為流れにくくなるので、保持部に保持された検査対象が、使用者の意図に反して検査部に流れてしまうようなことがない。
(16)請求項16の発明は、
前記保持部は、前記検査部に近い側に、前記保持部における他の部分よりも疎水性である部分を有することを特徴とする請求項6〜15のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0029】
本発明では、保持部のうち、検査部に近い側に、疎水性の部分がある。この部分は、検査対象が比較的流れにくいので、保持部に保持された検査対象が、使用者の意図に反して検査部に流れてしまうようなことがない。
(17)請求項17の発明は、
前記保持部は、前記検査部に近い側であって、前記流路の壁面近傍にある周辺部に、前記保持部における他の部分よりも突起間隔が小さい部分を有することを特徴とする請求項6〜16のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0030】
本発明では、保持部のうち、検査部に近い側であって、流路の壁面近傍にある周辺部では、突起間隔が小さくなっている。この部分は、検査対象の粘性抵抗が大きくなる為流れにくくなるので、検査対象が保持部を通過するときは、その中心を流れるようになる。そして、保持部から出た検査対象も、流路の中心を通り、検査部の中心に入る。このことにより、検査部の壁面だけを検査対象が流れてしまい、十分に検査部に吸着されなくなるようなことがない。
(18)請求項18の発明は、
前記保持部は、前記検査部に近い側であって、前記流路の壁面近傍にある周辺部に、前記保持部における他の部分よりも疎水性である部分を有することを特徴とする請求項6〜17のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0031】
本発明では、保持部のうち、検査部に近い側であって、流路の壁面近傍にある周辺部は、疎水性となっている。この部分は検査対象が比較的流れにくいので、検査対象が保持部を通過するときは、その中心を流れるようになる。そして、保持部から出た検査対象も、流路の中心を通り、検査部の中心に入る。このことにより、検査部の壁面だけを検査対象が流れてしまい、十分に検査部に吸着されなくなるようなことがない。
(19)請求項19の発明は、
前記検査部は、前記流路の壁面近傍にある周辺部に、前記検査部における他の部分よりも突起間隔が小さい部分を有することを特徴とする請求項6〜18のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0032】
本発明では、検査部のうち、流路の壁面近傍の周辺部では、突起間隔が小さい。この部分は、検査対象の粘性抵抗が大きくなる為流れにくくなるので、検査対象が検査部を通過するときは、その中心を流れるようになる。このことにより、検査部の壁面だけを検査対象が流れてしまい、十分に検査部に吸着されなくなるようなことがない。
(20)請求項20の発明は、
前記検査部は、前記流路の壁面近傍にある周辺部に、前記検査部における他の部分よりも疎水性である部分を有することを特徴とする請求項6〜19のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0033】
本発明では、検査部のうち、流路の壁面近傍の周辺部では、疎水性である。この部分は検査対象が比較的流れにくいので、検査対象が検査部を通過するときは、その中心を流れるようになる。このことにより、検査部の壁面だけを検査対象が流れてしまい、十分に検査部に吸着されなくなるようなことがない。
(21)請求項21の発明は、
前記検査部のうち、検査対象の移動方向における下流側は、上流側に比べて、突起間隔が小さいことを特徴とする請求項6〜20のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0034】
本発明において、検査部は、その下流側の突起間隔が、上流側よりも狭くなっているので、検査部を流れる検査対象や試薬の流動抵抗は、上流よりも下流において大きくなっている。遠心力を、検査対象や試薬を駆動する駆動力とする場合、その力の大きさは、円運動における外周側(つまり流路の下流側)にゆくほど大きくなるが、本発明では、それに応じて流動抵抗も下流の方が大きいので、検査対象や試薬が、検査部内を一定の速度で流れることが出来、下流で速く流れすぎてしまうようなことがないので、吸着や反応を一定の速度で行うことができる。
(22)請求項22の発明は、
前記保持部が備える突起部の形状が略円柱形状であることを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0035】
本発明では、突起部の形状が略円柱形状であるので、検査対象が保持部を抵抗を少なくスムーズに流れることが可能となる。
(23)請求項23の発明は、
前記保持部は、親水性の表面を持つ材料にて形成されているか、或いは、前記保持部の一部又は全てに親水性処理が施されていることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0036】
本発明では、保持部が親水性の表面を持つ材料にて形成されているか、或いは、保持部の一部又は全てに親水性処理が施されているので、検査対象をスムーズに保持部に吸収させることができる。
【0037】
親水性の表面を持つ材料としては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド、グリセロールメタクリレート、メチルメタクリレート等が挙げられる。また、親水性処理としては、例えば、プラズマ処理、紫外線照射処理、親水性樹脂(ポリビニルアルコール等)のコーティング処理等が挙げられる。
(24)請求項24の発明は、
前記導入部は、親水性の表面を持つ材料にて形成されているか、或いは、前記導入部の一部又は全てに親水性処理が施されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0038】
本発明では、導入部が親水性の表面を持つ材料にて形成されているか、或いは、導入部の一部又は全てに親水性処理が施されているので、検査対象をスムーズに導入部に導入することができる。
(25)請求項25の発明は、
前記流路が溝であることを特徴とする請求項1〜24のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0039】
本発明では、流路が溝であることにより、検査対象を安定して移動させることができる。
(26)請求項26の発明は、
前記導入部は、複数の突起部を、当該突起部の間に前記検査対象が毛細管現象により広がる間隔にて配置して成るピラー部、又は導入部における他の部分よりも疎水性である疎水部を備えるとともに、前記導入部は、前記ピラー部又は疎水部により、前記導入部以外の流路に連通した甲領域と、前記ピラー部又は疎水部により、前記導入部以外の流路と隔てられた乙領域とに区分されることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の検査対象受体を要旨とする。
【0040】
本発明では、導入部のうちの甲領域に検査対象を供給する。甲領域は導入部以外の流路に連通しているので、所望量の検査対象を、導入部以外の流路に流すことができる。
そして、余分な検査対象は、例えば、遠心力等の駆動力により、乙領域に送ることができる。乙領域に入った検査対象は、導入部以外の流路との間をピラー部又は疎水部により隔てられているので、残った検査対象は甲領域に戻りにくく、使用者の意図に反して再度保持部や甲領域に流れてしまうようなことがない。
【0041】
前記ピラー部又は疎水部は、保持部よりも下流側(検査対象受体を回転させ、遠心力で検査対象を流路に沿って送る場合は、回転における外周側)に設けることができる。
(27)請求項27の発明は、
液状の対象物から所定の量を計り取る用途に用いられる分取装置であって、前記対象物を一定の経路を経て移動させる流路と、複数の突起部を、当該突起部の間に前記対象物が毛細管現象により広がる間隔にて前記流路に配置して成る保持部と、を備えることを特徴とする分取装置を要旨とする。
【0042】
本発明の分取装置において、流路にある液状の対象物を保持部に接触させると、毛細管現象により所定量の対象物が保持部の中に吸収される。その後、保持部に吸収された対象物に、例えば遠心力などの駆動力を作用させれば、保持部に吸収された対象物の一部又は全部の所望した容量を取り出すことができる。
【0043】
このとき、保持部に一旦吸収され、その後取り出される対象物の量は保持部全体の体積から突起部の体積を差し引いたものであるから一定の量となる。そのため、本発明の分取装置を用いて上記のような操作を行えば、所定量の対象物を計り取ることができる。また、本発明によれば、nL〜μLオーダーの微細な量を精度良く計り取ることができる。
(28)請求項28の発明は、
前記流路に、前記対象物を導入する導入部を備えることを特徴とする請求項27記載の分取装置を要旨とする。
【0044】
本発明では、導入部を介して流路に検査対象を導入することができる。
(29)請求項29の発明は、
前記保持部の少なくとも一部が前記導入部内に張り出していることを特徴とする請求項28に記載の分取装置を要旨とする。
【0045】
本発明では、保持部の少なくとも一部が導入部内に張り出しているので、導入部に供給した対象物は、保持部のうち張り出した部分から保持部に毛細管現象により吸収される。そのため、対象物を容易に計り取ることができる。
(30)請求項30の発明は、
前記導入部は、前記導入部内に張り出した保持部により2つの領域に区分されるとともに、前記2つの領域は、前記保持部の周辺に設けられた切り欠き部により連通していることを特徴とする請求項29に記載の分取装置を要旨とする。
【0046】
本発明によれば、2つの領域のうち、保持部よりも上流側(検査対象受体を回転させ、遠心力で検査対象を流路に沿って送る場合は、回転における内周側)の領域に対象物を導入し、その対象物を保持部に吸収させることができる。そして、保持部に吸収されずに残った対象物は、切り欠き部を通して、導入部のうちの他方の領域に移動させることができる。この他方の領域に入った対象物に、例えば遠心力などの駆動力を作用させて保持部から遠ざけるようにすれば、余分な対象物が保持部に流れ込んでしまうようなことがない。
(31)請求項31の発明は、
前記突起部の形状が略円柱形状であることを特徴とする請求項27〜30のいずれかに記載の分取装置を要旨とする。
【0047】
本発明では、突起部の形状が略円柱形状であるので、検査対象が保持部を抵抗を少なくスムーズに流れることが可能となる。
(32)請求項32の発明は、
前記保持部は、親水性の表面を持つ材料にて形成されているか、或いは、前記保持部の一部又は全てに親水性処理が施されていることを特徴とする請求項27〜31のいずれかに記載の分取装置を要旨とする。
【0048】
本発明では、保持部が親水性の表面を持つ材料にて形成されているか、或いは、保持部が備える突起部の表面が親水性処理を施されているので、対象物をスムーズに保持部に吸収させることができる。
(33)請求項33の発明では、
前記流路が溝であることを特徴とする請求項27〜32のいずれかに記載の分取装置を要旨とする。
【0049】
本発明では、流路が溝であることにより、対象物を安定して移動させることができる。
(34)請求項34の発明は、
液状の対象物から所定の量を計り取る分取方法であって、前記対象物を複数の突起部を配置して成る保持部に接触させ、前記対象物を前記保持部の中に毛細管現象により広げる工程と、前記保持部の中に広がった対象物に駆動力を作用させ、前記保持部から取り出す工程と、を有することを特徴とする分取方法を要旨とする。
【0050】
本発明において、液状の対象物を保持部に接触させると、毛細管現象により所定量の対象物が保持部の中に吸収される。その後、保持部に吸収された対象物に、例えば遠心力などの駆動力を作用させれば、保持部に吸収された対象物を取り出すことができる。
【0051】
このとき、保持部に一旦吸収され、その後取り出される対象物の量は保持部全体の体積から突起部の体積を差し引いたものであるから一定の量となる。そのため、本発明によれば、所定量の対象物を計り取ることができる。また、本発明によれば、nL〜μLオーダーの微細な量を精度良く計り取ることができる。
(35)請求項35の発明は、
前記駆動力が遠心力であることを特徴とする請求項34記載の分取方法を要旨とする。
【0052】
本発明では、保持部に吸収された対象物に対し遠心力を作用させることで、保持部から取り出すことができる。
(36)請求項36の発明は、
前記突起部の形状が略円柱形状であることを特徴とする請求項34又は35に記載の分取方法を要旨とする。
【0053】
本発明では、突起部の形状が略円柱形状であるので、検査対象が保持部を抵抗を少なくスムーズに流れることが可能となる。
(37)請求項37の発明は、
前記保持部は、親水性の表面を持つ材料にて形成されているか、或いは、前記保持部が備える突起部の表面が親水性処理を施されていることを特徴とする請求項34〜36のいずれかに記載の分取方法を要旨とする。
【0054】
本発明では、保持部が親水性の表面を持つ材料にて形成されているか、或いは、保持部が備える突起部の表面が親水性処理を施されているので、対象物をスムーズに保持部に吸収させることができる。
(38)請求項38の発明は、
請求項6〜20のいずれかに記載の検査対象受体と、前記検査対象が遠心力により前記流路に沿って流れるように、前記検査対象受体を回転させる回転部と、前記回転部の動作を制御する制御部と、を備える検査装置であって、前記制御部は、液状の対象物を、前記検査部から、それよりも下流に廃液するときの前記検査対象受体の回転数R1を、前記液状の対象物を、前記検査部に導入するときの前記検査対象受体の回転数R2よりも大きくすることを特徴とする検査装置を要旨とする。
【0055】
本発明によれば、回転数R1が大きいので、検査部にある液状の対象物(例えば、検査対象、試薬、洗浄液等)を、迅速且つ確実に送り出すことができる。また、回転数R2が小さいので、液状の対象物が検査部内を流れる速度が過大になることがない。
(39)請求項39の発明は、
コンピュータを請求項38における制御部として機能させるプログラムを要旨とする。
(40)請求項40の発明は、
請求項39記載のプログラムを記憶した記憶媒体を要旨とする。
【0056】
本発明の記憶媒体は、プログラムを記憶できるものであればよく、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等の磁気記憶媒体、光ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD、フラッシュメモリ等が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0058】
a)まず、本実施例1における検査装置の構成を図1を用いて説明する。検査装置1は、ポリスチレン樹脂から成る円盤形状の検査対象受体3と、回転部5とから成る。回転部5は、図1に示すように、チャック部15と、チャック部15の下面中央に取り付けられた回転軸17と、回転軸17を回転駆動する回転モーター19と、回転軸17を軸支する軸受け21と、軸受け21に取り付けられたカバー部23とを有している。そして、上記チャック部15の上面には、図示しない開口部が形成され、その開口部は図示しない吸引ポンプと連通しており、吸引ポンプが吸引することにより、検査対象受体3の下面とチャック部15の上面15bが相対移動不可能に密着する。すなわち、チャック部15及び検査対象受体3とが一体に回転する。
【0059】
検査対象受体3を、その中心が回転軸17と同軸となるように、チャック部15に固定した状態で回転モータ19を駆動すると、検査対象受体3は回転軸17(すなわち、検査対象受体3の中心)を回転中心として回転する。回転部5は、CPU、ROM、RAM等を有する制御部(図示略)を備えている。この制御部のROM(記憶媒体)に記憶されたプログラムにより、回転部5の動作は制御される。回転部5の動作(即ち、検査対象受体3の回転数の制御)の詳細は、後述するb)において述べる。
【0060】
次に、検査対象受体3の構成を図2〜7を用いて説明する。検査対象受体3は、図2(a)に示す本体部37と、図2(b)に示す蓋39とから成る。
本体部37は、円盤型の部材の片面に、検査パターン構成部(流路)25、27、29、31、33、33、35を形成したものである。これら検査パターン構成部25等は、 図3(a)に示すように、上方が開口した断面が略長方形の溝である。尚、図3(a)は、図2(a)におけるX−X断面での断面図である。
【0061】
検査パターン構成部25は、図2(a)および図4(a)に示すように、本体部37の動径方向に伸びる、幅一定の溝である下流部25cと、下流部25cから分岐し、本体部37の周方向に伸びる、幅一定の溝である上流部25bと、上流部25bと接続し、その長手方向が本体部37の動径方向に伸びる、瓢箪型の凹部である導入部25aと、下流部25cと、本体部37における内周側において接続する、略チューリップ形状の凹部である第2導入部25dと、上流部25bが分岐する位置よりも、本体部37における外周側で下流部25cに接続する、略ナス型形状の凹部である第3導入部(試薬導入部)25eと、下流部25cに、その最外周で接続する、周方向に伸びる弧状の凹部である液溜まり部25fとから成る。
【0062】
ここで、上流部25bは本体部37の周方向(図4(a)における横方向)に伸び、下流部25cは本体部37の動径方向(図4(a)における縦方向)に伸びているので、上流部25bと下流部25cとが接続する部分において、上流部25bと下流部25cとのなす角度は直角である。また、液溜まり部25fには、本体部37の最外周まで達している。また、第2導入部25d、第3導入部25eは、それらの下流部25cに接続する側の端が、本体部37における外周側となり、反対側の端が本体部37における内周側となるように設けられている。
【0063】
図4(a)に示すように、上流部25bの全体、導入部25aのうち上流部25bに隣接する部分、および下流部25cのうち上流部25bに隣接する部分(図4において斜線を付した部分)には、保持部25gが形成されている。この保持部25gは、図4(b)に示すように、下流部25c内にある計量部25g2と、それ以外の部分である誘導部25g1とに区分される。
【0064】
保持部25gは、図5(a)、図5(b)および図3(b)に示すように、直径が30μmの円筒形状を有する突起を、検査パターン構成部25の底面から多数立設させた部分である。尚、図5(a)は、図4(a)おける点線で囲まれた領域(a)の拡大写真であり、図5(b)は、図4(a)における点線で囲まれた領域(b)の拡大写真であり、図3(b)は、図4(a)におけるY−Y断面での断面図である。図5(a)および図5(b)に示すように、保持部25gにおける突起は千鳥格子状に規則正しく配列されており、突起同士の間隔は、液状の検査対象が毛細管現象により広がる間隔である。また、図3(b)に示すように、保持部25gにおいて個々の突起の軸方向は、上流部25bの底面に直交する方向であり、突起の高さは、上流部25bにおける溝の深さと同じである。そのため、突起の上面は、本体部37における検査パターン構成部25以外の部分と同一平面上にある。また、保持部25gは、全体にわたってプラズマ処理による親水性処理が施されている。
【0065】
保持部25gは、図4(a)および図5(a)に示すように、導入部25aの内部に張り出しており、導入部25aは、その張り出した保持部25gより内周側(図4(a)における上側)の領域と、外周側(図4(b)における下側)の領域とに分けられる。ただし、それら2つの領域は、保持部25gと、導入部25aにおける反対側の側面との隙間(切り欠き部)25kにより連通している。
【0066】
また、図4(a)に示すように、下流部25cのうち、第3導入部25eと接続する部分よりも下流側から、液溜まり部25fまでの部分(図4(a)において斜線を付してある部分)には、検査部25hが設けられている。この検査部25hは、上記保持部25gと同様に、突起を多数配列したものである。但し、検査部25hを構成する突起同士の間隔は、図9(d)に示すように、本体部37の外側にゆくほど狭くなっている。
【0067】
検査部25hと保持部25gとの間には、図4に示すように、突起が形成されていない領域(中間部25N)が形成されている。
また、導入部25aにおいて、その外周側から略1/3の部分に、ピラー部25iが設けられている。このピラー部25iは、上記保持部25gと同様に、検査パターン構成部25の底面に突起を多数配列したものである。ピラー部25iは、導入部25aを二つの領域に区分している。つまり、ピラー部25iは、このピラー部25iより内周側にある上流部25bに連通する部分である25a1と、ピラー部25iより外周側であり、上流部25bとはピラー部25iにより隔てられた部分である25a2とに区分している。
【0068】
また、液溜まり部25fにおいて、下流部25cと接続する部分を一定の距離を置きながら円弧状に囲むように、ピラー部25jが設けられている。このピラー部25jは、上記保持部25gと同様に、検査パターン構成部25の底面に突起を多数配列したものである。ピラー部25jは、液溜まり部25fを二つの領域に区分している。つまり、このピラー部25jより内周側であり、下流部25cに連通する部分である25f1と、ピラー部25jより外周側であり、下流部25cとはピラー部25jにより隔てられた部分である25f2とに区分している。
【0069】
また、第3導入部25eにおいて、下流部25cと接続する出口付近に、ピラー部25Lが設けられており、下流部25cとの間を隔てている。このピラー部25Lは、上記保持部25gと同様に、検査パターン構成部25の底面に突起を多数配列したものである。
【0070】
第2導入部25dについても、図4(a)に示すように、その下流側にピラー部25Mが設けられており、下流部25cとの間を隔てている。このピラー部25Mも、ピラー部25Lと同様に、検査パターン構成部25の底面に突起を多数配列したものである。
【0071】
検査パターン構成部27〜35の構成も、基本的には検査パターン構成部25と同様であるが、一部相違点を有するものがある。以下では、主として検査パターン構成部25との相違点について説明する。
【0072】
検査パターン構成部27では、導入部27aと第3導入部27eとの配置が、計量部27cを中心として対称となっている。
検査パターン構成部29では、下流部29cの伸びる方向が、本体部37の動径方向に対し傾斜している。また、上流部29bと下流部29cとが一直線に形成されている。従って、上流部29bと下流部29cとが成す角度は180°(鈍角)である。そのため、検査パターン構成部29では、検査パターン構成部25の場合とは異なり、保持部29gは、誘導部と計量部との区分がない。更に、検査パターン構成部29では、第3導入部29eが、検査パターン構成部25における第2導入部25dの様に、本体部37の中心から動径方向に伸びている。この第3導入部29eは、検査パターン構成部25における第2導入部25d及び第3導入部25eの機能を奏することができる。また、検査パターン構成部29では、液溜まり部29fにピラー部が形成されていない。
【0073】
検査パターン構成部31では、下流部31cが、本体部37の動径方向に対し傾斜している。上流部31bは下流部31cに対し直角をなすように接続しているので、上流部31bも、本体部37における周方向に対し傾斜している。また、検査パターン構成部31では、液溜まり部31fにピラー部が形成されていない。
【0074】
検査パターン構成部33は、検査パターン構成部25と同様である。また、検査パターン構成部35は検査パターン構成部29と同様である。
検査対象受体3を本体部37とともに構成する蓋39は、図2(b)に示すように、本体部37と同一の直径を有する円盤型の部材であり、透明な樹脂から成る。この蓋39は、本体部37のうち、検査パターン構成部27〜35が形成されている面に、互いの中心が一致するように取り付けられる。こうすることにより、本体部37の検査パターン構成部25〜35は、図6(a)に示すように、蓋39によって上方の開口部を閉じられる。ただし、液溜まり部25f〜35fは、上記のように本体部37の最外周まで達しているので、蓋39を取り付けたときでも、液溜まり部25f〜35fの外周側は検査対象受体3の外部に連通している。また、蓋39において、液溜まり部25f〜25fの上部に対応する部分に穴が開けられていても良い。
【0075】
また、保持部25gや検査部25h、ピラー部25i、25jのように、突起部が設けられた部分では、図6(b)に示すように、突起部の上面が蓋39に接するようになる。
更に、蓋39には、図2(b)に示すように、微小な穴41が多数設けられている。これら穴41は、蓋39を本体部37に取り付けたとき、検査パターン構成部25〜35において検査対象や試薬を導入する必要がある位置(例えば、導入部25a、第2導入部25d、第3導入部25e)に重なるように形成されている。このことにより、蓋39を本体部37に取り付けた状態で、検査対象や試薬を検査パターン構成部25〜35に供給することができる。
【0076】
b)次に、検査対象受体3の使用方法の1例として、ELISA法により、人の血液中のトランスフェリン濃度を定量し、貧血の程度を正確に調べる方法を説明する。
(i)検査対象受体3への抗体の固定
各検査パターン構成部25〜35のそれぞれについて、検査部25h〜35hにGoat由来のトランスフェリン抗体の炭酸ナトリウム緩衝溶液希釈液(0.05M NaHCO3、pH9.6、10μg/ml、以下一次抗体溶液とする)を15μLずつ流す。
【0077】
具体的には、検査対象受体3を図1示すように検査装置1に取り付け、各検査パターン構成部25〜35の第3導入部25e〜35eのそれぞれに、上記一次抗体溶液を15μLずつ注入する。尚、第3導入部25e〜35eへの注入は、蓋39に形成された穴41(図2(b)参照)を通して行う。注入された溶液は、ピラー部25L〜35Lによって第3導入部25e〜35eの内部にとどまっている。
【0078】
その後、検査対象受体3を100〜3000rpmの回転数(回転数R2)で、図2の方向から見て反時計回りに回転させる。すると、遠心力により、一次抗体液は、第3導入部25e〜35eから流れだし、下流部25c〜35cに入り、検査部25h〜35hの中を流れ、液溜まり部25f〜35fに至る。そして、液溜まり部25f〜35fの外周側は、上述したように外部に連通しているので、一次抗体溶液は外部に排出される。その後、検査対象受体3の回転を停止する。
【0079】
(ii)ブロッキング
各検査パターン構成部25〜35のそれぞれについて、検査部25h〜35hにブロッキング溶液(50mM Tris、0.14M NaCl 1%BSA、pH8.0)15μLを流す。
【0080】
具体的には、まず、検査対象受体3を150〜15000rpmの回転数(回転数R1)で回転させることにより、検査部25h〜35hから、前記(i)の工程で流した一次抗体溶液を除く。次に、第3導入部25e〜35eのそれぞれに、上記ブロッキング溶液を15μLずつ注入し、検査対象受体3を100〜3000rpmの回転数(回転数R2)で反時計回りに回転させる。すると、ブロッキング液は、前記(i)の工程における一次抗体溶液と同様に、第3導入部25e〜35eから下流部25c〜35cに入り、検査部25h〜35hの中を流れ、液溜まり部25f〜35fから外部に排出される。
【0081】
ここまでの工程で、検査部25h〜35hには一次抗体が固定される。その後、以下の洗浄工程を行う。洗浄工程では、まず、各検査パターン構成部25〜35に、洗浄液(50mM Tris、0.14M NaCl、0.05% Tween20、pH8.0、以下、洗浄液とする)を注入する。洗浄液を注入する場所は、第3導入部25e〜35eで、注入は、それぞれに対応した穴41(図2(b)参照)を通して行う。
【0082】
次に、検査対象受体3を100〜3000rpmの回転数(回転数R2)で回転させることにより、検査部25h〜35hを洗浄液で満たした後、検査対象受体3を150〜15000rpm(回転数R1)で回転させ、検査部25h〜35hから洗浄液を除く。除かれた洗浄液は、液溜まり部25f〜35fを経て外部に排出される。
【0083】
(iii)検査対象の抗原−抗体反応による捕捉
ここでは、検査対象をトランスフェリンとする。トランスフェリンのトリス緩衝食塩水(50mM Tris、0.14M NaCl、1% BSA、0.05 Tween20、pH8.0)で濃度を125ng/mlに調製した溶液(以下、抗原溶液とする)1μLずつ各検査パターン構成部25〜35に流す。
【0084】
具体的には、各検査パターン構成部25〜35のそれぞれについて、導入部25a〜35aに上記抗原溶液を1μLずつ注入する。このとき、抗原溶液の注入は、導入部25a〜35aに対応するように蓋39に設けられた穴41(図2(b)参照)を通して行う。この穴41は、導入部25a〜25aにおいて、導入部25a〜35a内に入り込んだ保持部25g〜35gよりも内周側に設けられている。そのため、抗原溶液は、導入部25a〜35aのうち、保持部25g〜35gよりも内周側に供給される。
【0085】
供給された抗原溶液は、保持部25g〜35gの内部に毛細管現象により広がる。このとき、保持部25g〜35gの中に広がる抗原溶液の量は、保持部25g〜35gを構成する多数の突起の隙間の体積に等しくなる。次に、検査対象受体3を100〜3000rpm(回転数R2)の回転数で回転させると、保持部25g〜35gに保持されていた抗原溶液は、下流部25c〜35cに入り、検査部25h〜35hの中を進み、その外周端まで至る。その後、検査対象受体3の回転を停止する。
【0086】
このとき、検査パターン構成部25では、保持部25gのうち、計量部25g2に保持されたものだけが検査部25hに流れ、誘導部25g1に保持されたものは、そのまま残る。これは、誘導部25g1がある上流部25bは本体部37の周方向に沿っているので、検査対象受体3を回転させても、検査パターン構成部に沿って検査対象を流そうとする力が働かないためである。検査パターン構成部27、33も同様である。それに対し、検査パターン構成部29、31、35では、保持部29g、31g、35gに保持された検査対象は、全て検査部29h、31h、35hに送られる。また、導入部25a〜35aに注入された抗原溶液のうち、保持部25g〜35gに保持されず、導入部25a〜35aに残ったものは、検査対象受体3を回転させたとき、導入部25a〜35aのうち、保持部25g〜35gよりも外周側に運ばれ、ピラー部25i〜35iに捕捉されるので、検査部25h〜35hには流入しない。従って、検査部25h〜35hに流入する抗原溶液は、保持部25g〜35aに保持されていた、一定量だけである。
【0087】
この工程により、検査部25h〜35hに固定されていた抗体が、トランスフェリンを捕捉する。その後、前記(ii)と同様の洗浄液を用い、以下の工程により、検査部25h〜35hを洗浄する。洗浄液を注入する場所は、検査パターン構成部25では第2導入部25d、検査パターン構成部27では第2導入部27d、検査パターン構成部29では第3導入部29e、検査パターン構成部31では第2導入部31d、検査パターン構成部33では第2導入部33d、検査パターン構成部35では第3導入部35eである。洗浄液の注入は、それぞれに対応した穴41(図2(b)参照)を通して行う。
【0088】
(iv)標識された抗体の結合
各検査パターン構成部25〜35のそれぞれについて、検査部25h〜35hに、HRP標識されたGoat由来のトランスフェリン抗体をトリス緩衝食塩水(50mM Tris、0.14M NaCl、1%BSA、0.05Tween20、pH8.0)で濃度10ng/mlに調製した溶液(以下、二次抗体溶液)を10μLずつ流す。
【0089】
具体的には、各検査パターン構成部25〜35の第3導入部25e〜35eのそれぞれに、上記二次抗体溶液を10μLずつ注入し、検査対象受体3を100〜3000rpmの回転数(回転数R2)で反時計回りに回転させる。すると、遠心力により、二次抗体液は、第3導入部25e〜35eから下流部25c〜35cに入り、検査部25h〜35hの中を流れ、その外周端まで至る。
【0090】
この工程により、前記(iii)で捕捉されたトランスフェリンに、Goat由来のトランスフェリン抗体が結合する。その後、前記(iii)と同様の洗浄工程により、検査部25h〜35hを洗浄する。
【0091】
(v)検査対象の定量
各検査パターン構成部25〜35のそれぞれについて、検査部25h〜35hに、基質溶液としての、ABTSのリン酸−クエン酸溶液(0.05M リン酸ナトリウム、0.05M クエン酸)と過酸化水素水(以下、発色溶液とする)を流し、検査対象であるトランスフェリンを発色させる。
【0092】
具体的には、各検査パターン構成部25〜35の第3導入部25e〜35eのそれぞれに、上記発色溶液を注入し、検査対象受体3を100〜3000rpmの回転数(回転数R2)で反時計回りに回転させる。すると、遠心力により、発色溶液は、第3導入部25e〜35eから下流部25c〜35cに入り、検査部25h〜35hの中を流れ、その外周端まで至る。その後、検査対象受体3を蛍光アナライザーにかけ、その画像をスキャナーで取り込み、暗度解析ソフトにより発色の度合いを数値化する。
【0093】
(vi)測定結果の解析
前記(i)〜(v)の手順による測定を10回行い、発色の度合い(輝度)をそれぞれ測定した。表1に、10回の測定それぞれの輝度の値を示す。また、表1には、10回の測定値の平均値、標準偏差、および変動係数(標準偏差を平均値で割った値)を示す。
【0094】
【表1】

【0095】
比較例として、基本的には前記(i)〜(v)と同様の工程であるが、前記(iii)の工程において、抗原溶液を導入部25a〜35aに注入するのではなく、マイクロピペットで採取した抗原溶液1μLを第3導入部25e〜35eに注入し、そこから検査部25h〜35hに直接流し込む方法でも測定を行った。この比較例では、検査部25h〜35hに流れる抗原溶液の量は、保持部25g〜35gに保持される量ではなく、マイクロピペットで計り取られた量となる。
【0096】
この比較例の方法でも、10回測定を行い、その平均値、標準偏差、および変動係数を上記表1に示す。
表1に示すように、本実施例1の方法では、変動係数が0.027と非常に小さかった。これは、保持部25g〜35gに一旦保持された抗原溶液のみを検査部25h〜35hに導入するため、検査部25h〜35hに導入される抗原溶液の量が正確に一定量となるためである。それに対し、比較例では、変動係数が0.087となり、本実施例1の値よりも3倍以上大きくなった。
【0097】
この結果から、本実施例1の検査対象受体3を用いると、通常利用されるマイクロピペットでの計量に対し、計量ばらつきが1/3以下に抑えられ、すなわち、極めて再現性が良く、ばらつきのない安定した測定結果が得られることが確認できた。
【0098】
c)次に、本実施例1の検査対象受体が奏する効果を説明する。
(i)本実施例1の検査対象受体3において、検査パターン構成部25〜35に導入した液状の検査対象を保持部25g〜35gに接触させると、毛細管現象により所定量の検査対象が保持部25g〜35gの中に吸収される。その後、保持部25g〜35gに吸収された検査対象に、検査対象受体3を回転させることにより生じる遠心力を作用させれば、保持部25g〜35gに吸収された検査対象を取り出すことができる。
【0099】
このとき、保持部25g〜35gに一旦吸収される検査対象の量は、保持部25g〜35g保持部全体の体積から突起部の体積を差し引いたもの(つまり、突起間の隙間の体積)であるから一定の量となる。そのため、本実施例1の検査対象受体3を用いて上記のような操作を行えば、所定量の検査対象を計り取ることができる。尚、検査パターン構成部25、27、33では、保持部のうち、下流部にある計量部に保持された検査対象のみが検査部に送られるが、この場合でも、検査部に送られる検査対象の量は一定となる。
【0100】
また、本実施例1の検査対象受体3によれば、nL〜μLオーダーの微細な量を精度良く計り取ることができる。
更に、本実施例1の検査対象受体3は、樹脂の射出成形法を用いれば一工程で作製できるので、微小バルブを別途作製し、高精度の組付けを行う必要がないので、製造が容易であり、量産性に富み、製造コストが低い。
【0101】
本実施例1の検査対象受体3では、上記のように計り取った検査対象に対し、検査パターン構成部25〜35の一部に設けた検査部25h〜35hにおいて生物、化学反応による検査を行うことができる。
【0102】
(ii)本実施例1の検査対象受体3は、各検査パターン構成部25〜35のそれぞれに導入部25a〜35aを備えているので、そこから検査対象を導入することができる。
また、本実施例1の検査対象受体3では、図4(a)に示すように、検査パターン構成部25の導入部25aは、ピラー部25iにより、ピラー部25iより内周側であり、上流部25bに連通する部分(甲領域)である25a1と、ピラー部25iより外周側であり、上流部25bとはピラー部25iにより隔てられた部分(乙領域)である25a2とに区分されている。
【0103】
上述したように、導入部25aにおいて検査対象が供給されるのは、蓋39に設けられた穴41に対応する位置(図2(a)参照)であり、保持部25gよりも内周側(25a1の一部)であるので、供給された検査対象は、ピラー部25iに妨げられず、上流部25b内の保持部25gに吸収される。
【0104】
一方、保持部25gが一定量の検査対象を吸収した後、25a1内に残った検査対象は、検査対象受体3を回転させたとき、遠心力により、切り欠き部25kを通り抜けて導入部25aの外周側に流れ、ピラー部25iを乗り越え、25a2に流れる。一旦25a2に入った検査対象は、上流部25bとの間をピラー部25iの粘性抵抗により隔てられているので、25a1の領域に戻りにくく、使用者の意図に反して上流部25bに流れてしまうようなことがない。尚、ここでは検査パターン構成部25を例に説明したが、他の検査パターン構成部27〜35でも同様である。
【0105】
尚、ピラー部25iを設ける代わりに、導入部25aにおいてピラー部25iに対応する領域の壁面を疎水性としてもよい。疎水性領域は検査対象を通過しにくくするので、上記と同様の作用効果を奏する。疎水性とするには、例えば、含フッ素化合物のコーティング等の処理を行えばよい。または、表面が疎水性である材料(例えば、フッ素樹脂等)により壁面を形成してもよい。
【0106】
(iii)本実施例1の検査対象受体3では、図4(a)に示すように、保持部25g〜35gの一部が導入部25a〜35a内に張り出しているので、導入部25a〜35aに供給した検査対象は、保持部25g〜35gのうち張り出した部分から、保持部25g〜35gに毛細管現象により吸収される。そのため、検査対象を容易に計り取ることができる。
【0107】
また、導入部25a〜35aは、それらの中に張り出した保持部25g〜35gにより、保持部25g〜35gより内周側の領域(検査パターン構成部25においては25a1)と、外周側の領域(検査パターン構成部25においては25a2)とに分けられる。ただし、それら2つの領域は、保持部25g〜35gと、導入部25a〜35aにおける反対側の側面との隙間(検査パターン構成部25においては切り欠き部25k(図4(a)参照))により連通している。
【0108】
このことにより、導入部25a〜35aのうち、保持部25g〜35gよりも内周側の領域に検査対象を導入し、その検査対象を保持部25g〜35gに吸収させることができる。そして、保持部25g〜35gに吸収されずに残った検査対象は、切り欠き部を通して、導入部のうちの外周側の領域に移動させることができる。この外周側の領域に入った検査対象に、遠心力を作用させて保持部25g〜35gから遠ざけるようにすれば、余分な検査対象が保持部25g〜35gに流れ込んでしまうようなことがない。
【0109】
(iv)本実施例1の検査対象受体3では、各検査パターン構成部25〜35に、突起部を複数配置してなる検査部25h〜35hを有する。このことにより、保持部25g〜35gを用いて所定量を計り取った検査対象を検査部25h〜35hに移動させ、生物、化学的反応による検査を行うことができる。検査部25h〜35hは突起部を複数配置してなるので表面積が大きく、検出感度を高めることができる。
(v)本実施例1の検査対象受体3では、各検査パターン構成部25〜35において、第3導入部25e〜35eを備えている。これら第3導入部25e〜35eは、保持部25g〜35gよりも、検査対象の流れ方向における下流(つまり、検査対象受体3において保持部25g〜35gよりも外周側)にて、下流部25c〜35cに繋がっている。そのため、精密な計量の必要がない試薬等は、第3導入部25e〜35eから、保持部25g〜35gを経ずに、検査部25h〜35hに導入することができるので、保持部25g〜35gで計量を行う前に、保持部25g〜35gを濡らして、精密な計量を阻害する恐れがなくなる。
【0110】
また、図2(a)及び図9(c)に示すように、第3導入部25e〜35eの出口付近に、ピラー部25L〜35Lが設けられているので、第3導入部25e〜35eに供給した試薬が、第3導入部25e〜35e内に留まり、使用者の意図に反して他の流路に流れ込んでしまうようなことがない。
【0111】
(vi)本実施例1の検査対象受体3では、検査パターン構成部25、27、33の液溜まり部25f、27f、33fに、複数の突起部を配置して成るピラー部25j、27j、33jを備えている。そのため、それらピラー部25j、27j、33jよりも下流側からの、検査対象、試薬、洗浄液などの逆流を防止することができる。
【0112】
尚、ピラー部25j、27j、33jを設ける代わりに、液溜まり部25f等においてピラー部25j等に対応する領域の壁面を疎水性としてもよい。疎水性領域は検査対象を通過しにくくするので、上記と同様の作用効果を奏する。
【0113】
(vii)本実施例1の検査対象受体3において、検査パターン構成部25では、図7(b)に示すように、上流部25bと、動径方向に設けられた下流部25cとが直角をなすように接続されており、上流部25bは検査対象受体3の動径方向と直交している。そのため、保持部25に保持された検査対象に、検査対象受体3の動径方向への遠心力をかけても、保持部25gの一部である誘導部25g1に保持された検査対象には、上流部25bに沿って流れようとする駆動力はかからない。そのため、保持部25gの一部である、計量部25g2に保持された検査対象のみを、検査部25hに再現性よく移動させることができる。この場合、保持部25gの一部である、計量部25g2に保持されていた検査対象を送り出した後も、誘導部25g1には検査対象が残っているので、再度、検査対象を保持部25gから検査部25hに送り出すときには、検査対象の追加量が少なくて済み、検査対象の少量化が可能となる。検査パターン構成部27、33も同様である。
【0114】
また、検査パターン構成部29では、上流部29bと、下流部29cとが180°をなすように接続されている。この様に、90°C以上の鈍角にした図として、図7(c)、図9(a)を示す。図9(a)は、下流部29cから上流部29bが分岐する部分の拡大写真である。
【0115】
上流部29bは検査対象受体3の略径方向に沿っているので、検査対象受体3を回転させると、保持部29gに保持された検査対象全体に、検査部29hの方に向かう遠心力がかかる。その結果、保持部29gのうち、下流部29c側にある検査対象と、上流部29b側にある検査対象とを、検査部29hに再現性よく移動させることができる。これは特に、検査部29hへ移動させる検査対象の量を多くする必要があるときに有効である。検査パターン構成部37も同様である。
【0116】
尚、図7(a)及び図9(b)に示すように、上流部25bと、下流部25cとを鋭角をなすように接続してもよい。尚、図9(b)は、下流部29cから上流部29bが分岐する部分の拡大写真である。
【0117】
この場合、保持部25gの一部である計量部25g2に保持された検査対象に対し、検査部25hへ向かうように遠心力をかけると、保持部25gの一部である誘導部25g1に保持された検査対象には、検査部25hから遠ざかる方向への遠心力がかかるようになる。
【0118】
こうすることにより、保持部25gの一部である、計量部25g2に保持された検査対象のみを、検査部25hに再現性よく移動させるとともに、保持部25gの一部である誘導部25g1に保持された検査対象が検査部25hに流れ込むことを防止できる。つまり、検査部25hには、保持部25gの一部である計量部25g2に保持された検査対象のみを移動させることができる。
【0119】
この場合、誘導部25g1に保持された検査対象が検査部25hに流れることを防止できるので、上流部25bに導入部25aを兼ねさせても、導入部25aから検査部25hに検査対象が不本意に流れてしまうようなことがない。よって、上流部25bに導入部25aを兼ねさせ、省スペース可することが可能である。
【0120】
(viii)本実施例1の検査対象受体3では、保持部25g〜35gと、検査部25h〜35hとの間に、突起部を設けない中間部(検査パターン構成部25においては25N)を有するので、保持部25g〜35gに保持された検査対象が、使用者の意図に反して検査部25h〜35hに流れてしまうようなことがない。尚、検査対象受体3を回転させ、十分な遠心力を加えれば、保持部25gに保持された検査対象を中間部25Nを経て検査部25hに流すことができる。
(ix)本実施例1の検査対象受体3では、保持部25g〜35gを構成する突起の形状が円柱形状であるので、検査対象をスムーズに流すことができる。また、保持部25g〜35gは親水性処理を施されているので、検査対象をスムーズに吸収することができる。
【0121】
(x)本実施例1の検査対象受体3では、第3導入部25eのうち、下流部25cと接続する出口付近に、ピラー部25Lが設けられているので、第3導入部25eに供給した試薬が、使用者の意図に反して下流部25cに流れ込んでしまうようなことがない。また、第2導入部25dのうち、下流部25cと接続する出口付近に、ピラー部25Mが設けられているので、第2導入部25dに供給した試薬が、使用者の意図に反して下流部25cに流れ込んでしまうようなことがない。
【0122】
(xi)本実施例1の検査対象受体3では、図9(d)のように、本体部37の外周にゆくほど、検査部25h〜35hを構成する突起の間隔が狭くなっており、検査部25h〜35hを流れる検査対象や試薬の流動抵抗が大きくなっている。検査部25h〜35hを流れる検査対象や試薬にかかる遠心力は、本体部37の外周にゆくほど大きくなるが、それに応じて流動抵抗も外周にゆくほど大きくなるので、検査対象や試薬が、検査部25h〜35h内を一定の速度で流れることができ、外周で速く流れすぎてしまうようなことがない。そのため、検査部25h〜35hにおいて、検査対象や試薬の吸着や反応を一定の速度で行うことができる。
【実施例2】
【0123】
本実施例2の検査対象受体3の構成は基本的には前記実施例1と同様であるが、保持部の構成において一部相違する。ここでは、検査パターン構成部25を例にとって、その相違点を説明するが、他の検査パターン構成部27〜35でも同様である。
【0124】
図8(a)に示すように、保持部25gの一部である計量部25g2は、検査部25hに近い側の部分である25g2Bと、その他の部分である25g2Aとに分かれる。25g2Bの部分は、25g2Aに比べて、突起間隔が小さくなっており、25g2Aに比べて、検査対象の粘性抵抗が大きくなる為流れにくくなる。そのため、本実施例2では、保持部25gに保持された検査対象が、使用者の意図に反して検査部25hに流れてしまうようなことがない。
【0125】
また、本実施例2では、計量部25g2のうち、25g2Bの部分の突起間隔を小さくすることの代わりに、またはそれに加えて、25g2Bの部分にある突起を、25g2Aの部分にある突起よりも疎水性としてもよい。こうすれば、疎水性の部分は、検査対象が比較的流れにくいので、保持部25gに保持された検査対象が、使用者の意図に反して検査部25hに流れてしまうようなことがない。突起を疎水性とするには、例えば、含フッ素化合物のコーティング等の処理を行えばよい。または、表面が疎水性である材料(例えば、フッ素樹脂等)により突起を形成してもよい。
【実施例3】
【0126】
本実施例3の検査対象受体3の構成は基本的には前記実施例1と同様であるが、保持部および検査部の構成において一部相違する。ここでは、検査パターン構成部25を例にとって、その相違点を説明するが、他の検査パターン構成部27〜35でも同様である。
【0127】
図8(b)に示すように、保持部25の一部である計量部25g2は、検査部25hに近い側であって、検査パターン構成部25の側壁近傍の部分25g2Dと、その他の部分である25g2Cとに区分される。25g2Dの部分は、図9(a)及び図9(b)に示すように、25g2Cの部分に比べて、突起間隔が小さくなっており、25g2Cの部分よりも、検査対象が比較的流れにくい。ここで、図9(a)、図9(b)は保持部25b付近の拡大写真であり、縦に伸びる検査パターン構成部が下流部25c、斜め左側に伸びる検査パターン構成部が上流部25bである。そして、円筒形の突起が並ぶ保持部25gのうち、下側且つ左右両側にある三角形の領域が、突起間隔が小さい25g2Dである。尚、図9(a)、図9(b)では、下流部25cと上流部25bとが成す角度が、それぞれ鈍角、鋭角であるが、その角度が直角であってもよい。
【0128】
保持部25を上記のような構成にすることにより、検査対象が保持部25gを通過するときは、25g2D以外の部分(すなわち、検査パターン構成部25における中心付近)を流れるようになる。そして、保持部25gから出た検査対象は、検査パターン構成部25の中心を通り、検査部25hの中心に入る。このことにより、検査部25hの側壁付近だけを検査対象が流れてしまい、十分に検査部25hに吸着されなくなるようなことがない。
【0129】
また、本実施例3では、図8(b)に示すように、検査部25hは、検査パターン構成部25の側壁近傍にある周辺部25h1と、その他の部分(つまり、検査パターン構成部25における中心付近にある部分)25h2とに区分される。そして、周辺部25h1では、25h2の部分よりも、突起間隔が小さくなっており、検査対象が比較的流れにくい。そのため、検査対象が検査部25hを通過するときは、その中心にある25h2の部分を流れるようになる。このことにより、検査部25hの側壁付近だけを検査対象が流れてしまい、十分に検査部25hに吸着されなくなるようなことがない。
【0130】
尚、本実施例3では、保持部25gのうち、25g2Dの部分の突起間隔を小さくすることの代わりに、またはそれに加えて、25g2Dの部分にある突起を、25g2Cの部分にある突起よりも疎水性としてもよい。疎水性の部分は、検査対象が比較的流れにくいので、25g2Dの部分の突起間隔を小さくする場合と同様の作用効果を奏する。
【0131】
また、検査部25hのうち、25h1の部分の突起間隔を小さくすることの代わりに、またはそれに加えて、25h1の部分にある突起を、25h2の部分にある突起よりも疎水性としてもよい。疎水性の部分は、検査対象が比較的流れにくいので、25h1の部分の突起間隔を小さくする場合と同様の作用効果を奏する。
【0132】
突起を疎水性とするには、例えば、含フッ素化合物のコーティング等の処理を行えばよい。または、表面が疎水性である材料(例えば、フッ素樹脂等)により突起を形成してもよい。
【0133】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
前記実施例1〜3の検査パターン構成部25〜35において、導入部25a〜35aと保持部25g〜35gとの間に、別の突起を複数配列して成る異物除去部を形成してもよい。こうすることにより、導入部25a〜35aに導入した検査対象が異物を含んでいたとしても、異物除去部によりその異物を除くことができるので、異物が保持部25g〜35gに入り込んでしまうようなことがない。
【0134】
また、前記実施例1〜3の検査対象受体3は、分取装置として用いることができる。つまり、導入部25a〜35aに供給した液状の対象物を保持部25g〜35gに接触させると、毛細管現象により所定量の対象物が保持部25g〜35gの中に吸収される。その後、保持部25g〜35gに吸収された対象物に遠心力を作用させれば、保持部25g〜35gに吸収された対象物を取り出すことができる。
【0135】
このとき、保持部25g〜35gに一旦吸収され、その後取り出される対象物の量は保持部25g〜35g全体の体積から突起部の体積を差し引いたものであるから一定の量となる。そのため、この分取装置を用いて上記のような操作を行えば、所定量の対象物を計り取ることができる。また、この分取装置を用いれば、nL〜μLオーダーの微細な量を精度良く計り取ることができる。
【0136】
尚、分取装置として用いる場合は、検査部25h〜35h、第2導入部25d、27d、31d、33d、第3導入部25e、27e、29e、31e、33e、35eなどは無くてもよい。
【0137】
前記実施例1〜3において、検査対象や試薬を駆動する力は、遠心力には限定されず、例えば、検査対象受体3に高低差を付けることにより検査パターン構成部25〜35に沿って生じる重力、検査パターン構成部25〜35にガス流を吹き付けることによる駆動力等も用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】検査装置1の回転部分の構成を表す側面図である。
【図2】(a)は検査対象受体3における本体部37の構成を表す平面図であり、(b)は検査対象受体3における蓋39の構成を表す平面図である。
【図3】(a)は図2(a)におけるX−X断面での断面図であり、(b)は図4におけるY−Y断面での断面図である。
【図4】検査パターン構成部25を表す平面図である。
【図5】(a)、(b)は保持部25gを上方から見たときの拡大写真である。
【図6】検査対象受体3を構成する本体部37および蓋39を組み付けた状態を表す断面図であり、(a)は検査パターン構成部25に突起のない位置を表し、(b)は保持部25gの突起がある位置を表す。
【図7】上流部25bと下流部25cとのなす角度を表す説明図であり、(a)は鋭角の場合、(b)は直角の場合、(c)は鈍角の場合である。
【図8】(a)は保持部25gの構成を表す説明図であり、(b)は保持部25gおよび検査部25hの構成を表す説明図である。
【図9】(a)、(b)は保持部25gを上方から見たときの拡大写真であり、(c)は第3導入部25eの出口付近を上方から見たときの拡大写真であり、(d)は検査部25hを上方から見たときの拡大写真である。
【符号の説明】
【0139】
1・・・検査装置
3・・・検査対象受体
5・・・回転部
7・・・本体部
15・・・チャック部
17・・・回転軸
19・・・回転モーター
21・・・軸受け
25、27、29、31、33、35・・・検査パターン構成部
25a、27a、29a、31a、33a、35a・・・導入部
25b、27b、29b、31b、33b、35b・・・上流部
25c、27c、29c、31c、33c、35c・・・下流部
25d、27d、31d、33d・・・第2導入部
25e、27e、29e、31e、33e、35e・・・第3導入部
25f、27f、29f、31f、33f、35f・・・液溜まり部
25g、27g、29g、31g、33g、35g・・・保持部
25g1・・・誘導部
25g2・・・計量部
25h、27h、29h、31h、33h、35h・・・検査部
25i、27i、29i、31i、33i、35i・・・ピラー部
25j、27j、29j、31j、33j、35j・・・ピラー部
25K・・・切り欠き部
37・・・本体部
39・・・蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の検査対象を検査する用途に用いられる検査対象受体であって、
前記検査対象を一定の経路を経て移動させる流路と、
複数の突起部を、当該突起部の間に前記検査対象が毛細管現象により広がる間隔にて前記流路に配置して成る保持部と、を備えることを特徴とする検査対象受体。
【請求項2】
前記流路に、前記検査対象を導入する導入部を備えることを特徴とする請求項1記載の検査対象受体。
【請求項3】
前記保持部の少なくとも一部が前記導入部内に張り出していることを特徴とする請求項2に記載の検査対象受体。
【請求項4】
前記導入部は、前記導入部内に張り出した保持部により2つの領域に区分されるとともに、
前記2つの領域は、前記保持部の周辺に設けられた切り欠き部により連通していることを特徴とする請求項3に記載の検査対象受体。
【請求項5】
前記流路において、突起部を複数配列して成る異物除去部を有することを特徴とする請求項2に記載の検査対象受体。
【請求項6】
前記流路に、突起部を複数配置してなる検査部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項7】
前記流路のうち、前記保持部と前記検査部との間に、試薬を導入するための試薬導入部を少なくとも1つ備えることを特徴とする請求項6記載の検査対象受体。
【請求項8】
前記試薬導入部に、複数の突起部を当該突起部の間に前記検査対象が毛細管現象により広がる間隔にて配置して成るピラー部、又は前記試薬導入部における他の部分よりも疎水性である疎水部を備え、
前記試薬導入部のうちの少なくとも一部は、前記ピラー部又は疎水部により、前記試薬導入部以外の流路と隔てられていることを特徴とする請求項7記載の検査対象受体。
【請求項9】
前記保持部から前記検査部へ向かう方向を前記検査対象の移動方向とするとき、前記流路のうち、前記検査部よりも、前記移動方向における下流の領域である液溜まり部に、複数の突起部を当該突起部の間に前記検査対象が毛細管現象により広がる間隔にて配置して成るピラー部、又は他の液溜まり部よりも疎水性である疎水部を備え、
前記液溜まり部のうちの少なくとも一部は、前記ピラー部又は疎水部により、前記検査部と隔てられていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項10】
前記流路は、前記検査部が設けられた下流部と、
前記下流部から分岐し、前記導入部に接続する上流部とを有し、
前記保持部は、前記上流部と前記下流部とに跨って設けられていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項11】
前記検査対象受体は、所定の中心部を軸として回転するものであるとともに、
前記下流部は、前記回転における動径方向に設けられ、
前記上流部と前記下流部とは、分岐している部分において、鋭角をなすことを特徴とする請求項10記載の検査対象受体。
【請求項12】
前記検査対象受体は、所定の中心部を軸として回転するものであるとともに、
前記下流部は、前記回転における動径方向に設けられ、
前記上流部と前記下流部とは、分岐している部分において、直角をなすことを特徴とする請求項10記載の検査対象受体。
【請求項13】
前記検査対象受体は、所定の中心部を軸として回転するものであるとともに、
前記下流部は、前記回転における動径方向に設けられ、
前記上流部と前記下流部とは、分岐している部分において、鈍角をなすことを特徴とする請求項10記載の検査対象受体。
【請求項14】
前記流路において、前記保持部と検査部との間に、突起部を設けない中間部を有することを特徴とする請求項6〜13のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項15】
前記保持部は、前記検査部に近い側に、前記保持部における他の部分よりも突起間隔が小さい部分を有することを特徴とする請求項6〜14のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項16】
前記保持部は、前記検査部に近い側に、前記保持部における他の部分よりも疎水性である部分を有することを特徴とする請求項6〜15のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項17】
前記保持部は、前記検査部に近い側であって、前記流路の壁面近傍にある周辺部に、前記保持部における他の部分よりも突起間隔が小さい部分を有することを特徴とする請求項6〜16のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項18】
前記保持部は、前記検査部に近い側であって、前記流路の壁面近傍にある周辺部に、前記保持部における他の部分よりも疎水性である部分を有することを特徴とする請求項6〜17のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項19】
前記検査部は、前記流路の壁面近傍にある周辺部に、前記検査部における他の部分よりも突起間隔が小さい部分を有することを特徴とする請求項6〜18のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項20】
前記検査部は、前記流路の壁面近傍にある周辺部に、前記検査部における他の部分よりも疎水性である部分を有することを特徴とする請求項6〜19のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項21】
前記検査部のうち、検査対象の移動方向における下流側は、上流側に比べて、突起間隔が小さいことを特徴とする請求項6〜20のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項22】
前記保持部が備える突起部の形状が略円柱形状であることを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項23】
前記保持部は、親水性の表面を持つ材料にて形成されているか、或いは、前記保持部の一部又は全てに親水性処理が施されていることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項24】
前記導入部は、親水性の表面を持つ材料にて形成されているか、或いは、前記導入部の一部又は全てに親水性処理が施されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項25】
前記流路が溝であることを特徴とする請求項1〜24のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項26】
前記導入部は、複数の突起部を、当該突起部の間に前記検査対象が毛細管現象により広がる間隔にて配置して成るピラー部、又は導入部における他の部分よりも疎水性である疎水部を備えるとともに、
前記導入部は、前記ピラー部又は疎水部により、前記導入部以外の流路に連通した甲領域と、前記ピラー部又は疎水部により、前記導入部以外の流路と隔てられた乙領域とに区分されることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の検査対象受体。
【請求項27】
液状の対象物から所定の量を計り取る用途に用いられる分取装置であって、
前記対象物を一定の経路を経て移動させる流路と、
複数の突起部を、当該突起部の間に前記対象物が毛細管現象により広がる間隔にて前記流路に配置して成る保持部と、を備えることを特徴とする分取装置。
【請求項28】
前記流路に、前記対象物を導入する導入部を備えることを特徴とする請求項27記載の分取装置。
【請求項29】
前記保持部の少なくとも一部が前記導入部内に張り出していることを特徴とする請求項28に記載の分取装置。
【請求項30】
前記導入部は、前記導入部内に張り出した保持部により2つの領域に区分されるとともに、
前記2つの領域は、前記保持部の周辺に設けられた切り欠き部により連通していることを特徴とする請求項29に記載の分取装置。
【請求項31】
前記突起部の形状が略円柱形状であることを特徴とする請求項27〜30のいずれかに記載の分取装置。
【請求項32】
前記保持部は、親水性の表面を持つ材料にて形成されているか、或いは、前記保持部の一部又は全てに親水性処理が施されていることを特徴とする請求項27〜31のいずれかに記載の分取装置。
【請求項33】
前記流路が溝であることを特徴とする請求項27〜32のいずれかに記載の分取装置。
【請求項34】
液状の対象物から所定の量を計り取る分取方法であって、
前記対象物を複数の突起部を配置して成る保持部に接触させ、前記対象物を前記保持部の中に毛細管現象により広げる工程と、
前記保持部の中に広がった対象物に駆動力を作用させ、前記保持部から取り出す工程と、を有することを特徴とする分取方法。
【請求項35】
前記駆動力が遠心力であることを特徴とする請求項34記載の分取方法。
【請求項36】
前記突起部の形状が略円柱形状であることを特徴とする請求項34又は35に記載の分取方法。
【請求項37】
前記保持部は、親水性の表面を持つ材料にて形成されているか、或いは、前記保持部が備える突起部の表面が親水性処理を施されていることを特徴とする請求項34〜36のいずれかに記載の分取方法。
【請求項38】
請求項6〜20のいずれかに記載の検査対象受体と、
前記検査対象が遠心力により前記流路に沿って流れるように、前記検査対象受体を回転させる回転部と、
前記回転部の動作を制御する制御部と、
を備える検査装置であって、
前記制御部は、液状の対象物を、前記検査部から、それよりも下流に廃液するときの前記検査対象受体の回転数R1を、前記液状の対象物を、前記検査部に導入するときの前記検査対象受体の回転数R2よりも大きくすることを特徴とする検査装置。
【請求項39】
コンピュータを請求項38における制御部として機能させるプログラム。
【請求項40】
請求項39記載のプログラムを記憶した記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−208183(P2006−208183A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20289(P2005−20289)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】