説明

検査支援方法及びプログラム

【課題】搬送装置の異常動作又は異常状態が発生したときに、その原因である制御プログラムの不具合を検出することを支援する。
【解決手段】搬送される被搬送体の位置を管理する工程と、搬送路の任意の位置に、被搬送体が通過した時点で制御プログラムの実行を一時停止させるための制御プログラム停止位置を設定する工程と、被搬送体が前記制御プログラム停止位置に達したか否かを判断する工程と、被搬送体が前記制御プログラム停止位置に達したと判断した場合、前記制御プログラムの実行を一時停止させる工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査支援方法及びプログラムに関し、更に詳しくは被搬送体の搬送動作を制御する制御プログラムの検査支援プログラム及び検査支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シミュレーション技術を用いて計算機内に仮想的に制御対象装置を構築し、その仮想的な制御対象装置を用いて制御プログラムを検証することが行われている。例えばシート状被搬送体を搬送する制御プログラムの設計や検証を行うために、シミュレーションにより構築した仮想の搬送装置を仮想的な制御対象装置として用いる例が知られている。このような例としては、次のようなものがある。
【0003】
一つは、シート状被搬送体の変形挙動を簡易な3次元モデルにより計算することで、リアルタイムでシート状被搬送体の搬送動作をシミュレートする例(特許文献1参照)がある。即ち、この例では算出された搬送位置および形状とサイズ情報から搬送状態を表示する。
【0004】
他の例としては、1枚のシート状被搬送体の詳細な変形挙動を事前に計算しておき、制御プログラム実行時にその変形挙動を再生し、複数枚のシート状被搬送体の搬送動作を再現するものが知られている(特許文献2参照)。即ち、この例では1枚のシートの仮想検証結果から複数シートの搬送状態を確認する。
【0005】
このように構築された仮想的な搬送装置を制御プログラムと連動して動作させることにより、制御プログラムの不具合により発生する搬送装置の異常動作や異常状態の発生をシミュレーションで確認することが可能である。
【0006】
【特許文献1】特開2002−140372号公報
【特許文献2】特開2003−242197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来は搬送装置の異常動作や異常状態の発生を提示するのみで、その原因となる制御プログラムに含まれる不具合自体の検出はオペレータの技量に委ねられていた。例えば、制御プログラム内の不具合の検出方法としては、制御プログラムが出力するログを解析する方法や、制御プログラム内にブレークポイントを設定する方法が取られることが多かった。しかし、どちらも作業に多くの工数を要したり、オペレータの熟練が必要であったりした。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、搬送装置の異常動作又は異常状態が発生したときに、その原因である制御プログラムの不具合を検出することを支援する検査支援プログラム及び検査支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、搬送される被搬送体の位置を管理する工程と、搬送路の任意の位置に、被搬送体が通過した時点で制御プログラムの実行を一時停止させるための制御プログラム停止位置を設定する工程と、被搬送体が前記制御プログラム停止位置に達したか否かを判断する工程と、被搬送体が前記制御プログラム停止位置に達したと判断した場合、前記制御プログラムの実行を一時停止させる工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、搬送装置内の被搬送体の残数、搬送路上にあるローラの速度、前記搬送路上にある前記ローラ間の速度差、前記搬送路にあるセンサの値、先行する被搬送体と後続する被搬送体の間隔、前記搬送路上にある分岐点における被搬送体の搬送方向及び前記搬送路上の被搬送体の搬送方向のうち少なくとも一つの状態を管理する工程と、いずれかの前記状態に対して制御プログラムの実行を一時停止させるための条件を設定する工程と、シミュレーション実行中に前記条件を満たしたか否かを判断する工程と、前記条件を満たしたと判断した場合、前記制御プログラムの実行を一時停止させる工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、搬送装置及び搬送装置内の被搬送体が所望の状態となったときの制御プログラムの実行状況を容易に参照することができ、制御プログラムの不具合の検出を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について具体的な実施形態を一例としてあげて詳細に説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲において適宜変更、組み合わせが可能である。
(第1の実施形態)
本実施形態では、本発明の制御プログラムの検査支援プログラム及び検査支援方法を、紙搬送シミュレーションに適用した例である。近年、CAD(コンピュータ設計支援装置)上で構成した搬送経路内に、コンピュータ内で構成した柔軟媒体などの被搬送体を仮想的に搬送させ、その搬送状況を検討する所謂搬送シミュレーションが行われている。
【0013】
本実施形態ではその中でも、柔軟媒体の被搬送体としてシート状の紙を装置内の搬送路を搬送する代表例としてコンピュータ内での仮想空間上で搬送シミュレーションをする、つまり紙搬送シミュレーション実行を行う場合を例にとって説明する。
【0014】
本実施形態においては、搬送機構を制御するプログラムを実行するにおいて、仮想紙(シミュレーション内に設定した仮想的な紙)が設定した制御プログラム停止位置に到達した場合に制御プログラムの実行を停止することを可能にする。尚、シミュレーション上での被搬送体である仮想的な紙や搬送に利用されるローラ等の構成要素に対して、「仮想」という言葉を付け加えた。
【0015】
図2は、本発明に係る制御プログラムの検査支援方法を適用可能な検査支援装置の構成の一例を説明するための概略的ブロック図である。図2の検査支援装置に本実施形態に係る制御プログラムの検査支援プログラムはインストールされる。
図2において、1はソフトウエアシミュレーション部、2は機構シミュレーション部、3は入力部、4は入力監視部、5は表示制御部、6は表示部である。
【0016】
本実施形態の検査支援装置は複写機、プリンターなどに代表される画像形成装置の紙搬送シミュレーションを行うことができ、一般的にはパーソナルコンピュータに本発明の検査支援プログラムをインストールすることで構成することができる。
図2において、パーソナルコンピュータ内にはソフトウエアシミュレーション部1、機構シミュレーション部2、入力監視部6及び表示制御部5を有している。
【0017】
ソフトウエアシミュレーション部1には、画像形成装置内で使用される紙搬送を制御するためのファームソフトウエアがパーソナルコンピュータ上で仮想的に実行するために設けられている。ソフトウエアシミュレーション部1内において実行された上記ファームソフトウエアの実行結果は、機構シミュレーション部2に渡される。
【0018】
機構シミュレーション部2では紙搬送を行うための搬送機構、搬送路に関する情報などを利用して機構シミュレーションを行う。搬送機構は、被搬送体を搬送するためのローラ、被搬送体の搬送経路を形成するガイド、搬送路の選択をするフラッパ、搬送路上のローラを回転する駆動モータ、モータの駆動力を断続したりローラの回転方向を規制したりするために設けられるクラッチなどを有している。
【0019】
機構シミュレーション部2では、このような搬送機構を構成する紙搬送制御に関わる仮想ローラの速度などから仮想紙が紙搬送機構内のどの部位に存在するかを計算により求める。そして、求められた仮想紙の位置情報や必要な演算結果は、ソフトシミュレーション部1もしくは表示制御部5に渡される。
【0020】
入力監視部4はマン・マシン・インタフェースたるキーボードデバイスやマウスなどの入力デバイスを含む入力部3を監視しており、入力部3からの情報を必要に応じてソフトウエアシミュレーション部1に伝達する。入力監視部4は入力部3からの実行開始要求の入力があると、その情報をソフトウエアシミュレーション部1に送り、それによってソフトウエアシミュレーション部1では、ソフトウエアシミュレーション制御を開始する。
【0021】
液晶ディスプレイ、CRT、プラズマディスプレイに代表される表示手段を含む表示部6には、表示制御部5で表示制御部5に送られた情報を元に構成された画像情報(文字情報、静止画情報、動画情報等)を表示部6で表示可能な形式にして供給される。
【0022】
尚、ソフトウエアシミュレーション部1並びに機構シミュレーション部2に関わるソフトウエアは、それらの実行前においてはパーソナルコンピュータのHDD等(不図示)の中に保管されている。そしてそれらが実行される時には、パーソナルコンピュータのRAM(不図示)上に必要に応じて展開される。
【0023】
本実施形態では、このような構成の装置を用いて、現実世界の画像形成装置を制御するファームソフトウエアのシミュレーション実行中の処理動作の検証を行う場合について説明する。
【0024】
図3は、表示部6に表示される紙搬送シミュレーション画面W1の表示の一例を説明するための図である。紙搬送シミュレーション画面W1では、仮想紙搬送経路9は点線、仮想ローラ7は丸、仮想センサ8は三角、仮想紙Pは太い実線、その仮想紙Pが搬送される搬送経路10は細い実線で示されている。
【0025】
図3の例では、仮想紙Pがストックされている供給部が3段用意されており、図示される例では、一番下層に蓄積された供給部から一対の仮想ローラ7の間を通って図面上方に搬送される。上方に搬送された仮想紙Pは3つの仮想ローラ7の対とローラ7の対を通過した直後に設けられたセンサ8部分を通った後、左方向にほぼ90度曲げられて図面水平方向に搬送される。
【0026】
仮想紙Pが搬送される水平方向には3つの仮想ローラ7の対と3つの仮想ローラ7の対を有する群の前後に設けられたセンサ8が設けられている。この3つの仮想ローラ7の対を有する群とその両端に設けられたセンサ8部分を通過した仮想紙Pは、その後再び図面上方に搬送経路10を曲げられ、2つの仮想ローラ7の対を通過した後センサ8部を通過する。その後、図面右方向に搬送経路10を曲げて図中水平方向に搬送され仮想ローラ7の対を通って搬送される。
【0027】
図4は、本実施形態に使用されるソフトウエアシミュレーション部1及び機構シミュレーション部2の好適な一例を具体的に説明するための概略的構成図である。
ソフトウエアシミュレーション部1は、ファームソフトウエア実行部14、ファームソフトウエア記録部11、入力I/F部12、出力I/F部13を有する。
機構シミュレーション部2は、紙位置計算部20、停止条件判定部21、停止条件管理部22、入力I/F部29、出力I/F部27、紙位置表示部28を有する。
【0028】
ファームソフトウエア記録部11は、現実世界の画像形成装置の紙搬送制御を行うための制御プログラムを記録する部分である。ファームソフトウエア実行部である制御プログラム実行部14は、ファームソフトウエア記録部11に記録された制御プログラムを読み込み、実行する。
【0029】
ソフトウエアシミュレーション部1の制御プログラム実行部14には、機構シミュレーション部2からの演算結果情報が入力I/F部12を介して入力される。ソフトウエアシミュレーション部1の出力I/F部13は、制御プログラム実行部14で実行された駆動タイミングなどの制御情報を出力する。出力された制御情報は、機構シミュレーション部2に送られ、機構シミュレーション部2の入力I/F29を介して紙位置計算部20に入力される。
【0030】
機構シミュレーション部2へは、入力I/F部29を通じてソフトウエアシミュレーション部1の出力I/F部13を通じて出力された制御情報の出力結果が入力される。例えば、紙搬送制御に関わる仮想モータや仮想クラッチ、仮想フラッパなどの搬送機構を構成する各種要素の制御情報である。更に具体的には、仮想モータのオン・オフ、速度(加減速情報を含んでも良い)、仮想クラッチのオン・オフ、仮想フラッパの位置情報、センサの検知情報など機構シミュレーションを行うために必要な情報を含む制御情報の授受が行われる。
【0031】
機構シミュレーション部2の紙位置計算部20は、紙搬送制御に関わる仮想モータや仮想クラッチ、仮想フラッパの制御情報から紙搬送経路上の搬送速度を計算し、仮想紙の先端位置及び後端位置を計算する。紙位置表示部28は、紙位置計算部20により計算された仮想紙の先端位置及び後端位置に基づき、表示制御部5に図3に示したような紙搬送シミュレーション画面W1を表示させることに必要な画像情報を生成する。
【0032】
停止条件管理部22は、設計者がマン・マシン・インタフェースである入力部3を介して入力した制御プログラム停止条件を記録する部分である。本実施形態においては、制御プログラム停止条件は、紙搬送経路上の任意の位置に設定された制御プログラム停止位置である。停止条件判定部21は、停止条件管理部22に記録された停止条件が成り立つかを判断する部分である。紙位置計算部20の計算結果と停止条件判定部21の判定結果は出力I/F27を介して、ソフトウエアシミュレーション部1にフィードバックされる。
【0033】
停止条件判定部21では、紙位置計算部20により求められた仮想紙位置が停止条件管理部22に記録された停止位置に到達したかを判断する。仮想紙が停止位置に到達すると、出力I/F部27、入力I/F部12を通じて制御プログラム実行部10に制御プログラム停止信号を受け渡す。より詳細には、出力I/F部27は紙位置計算部20でセットされた仮想紙位置情報、及び停止条件判定部21により渡された制御プログラム停止信号をソフトウエアシミュレーション部1の入力I/F部12に与える。
【0034】
紙位置計算部20では仮想紙の位置情報を演算によって求めているが、その計算の一例をフローチャートとして図5に示す。
紙位置計算部20で計算が開始されると、所望の時間間隔Tで仮想紙の位置がどこにあるかを計算する。即ち、時刻tを増加する処理(工程S90)を、時刻tが時間間隔Tの整数倍となるまで繰り返し、時刻tが時間間隔Tの整数倍となった場合に次の処理へ移る(工程S91)。
【0035】
時間間隔Tを経過すると、その時点での出力I/F部13から入力I/F部29へ渡されたモータ速度やフラッパON/OFFなどの各要素の制御情報を取得する (工程S92)。制御情報を取得したら、モータ速度から紙搬送速度vを求め、紙搬送速度vと時間間隔Tから仮想紙Pが進む距離S=v×Tを求めることにより、仮想紙Pの位置を変更する(工程S93)。仮想紙Pの位置が変更される、つまり、仮想紙Pの位置が更新されると、更新された位置情報を紙位置表示部28に渡す。紙位置表示部28では受け取った位置情報を元に画像情報を構築し、表示制御部5を介して表示部6上に表示可能な信号として出力する。そして、表示部6上の、図3に示されるような紙搬送シミュレーション画面W1の情報を最新の情報に書き換える。
【0036】
工程S91で算出された仮想紙の位置変化情報は出力I/F部27を介して、ソフトウエアシミュレーション部1にフィードバックされる(工程S94)。そして、時刻tが所定の終了時刻に達しているかを判断する(工程S95)。終了時刻に達している場合はシミュレーションを終了し、達していない場合は最初の処理に戻る。
【0037】
図1Aは、本実施形態における機構シミュレーション部2においてシミュレーションを行う場合の好適な一例を説明するためのフローチャートである。以下の説明は、制御プログラムを所望の時点で停止させる場合の一例について説明する。従って、図1Aに説明されるフローチャートには、必要に応じて停止位置が設定されているかを判断し、停止位置が設定されていない場合は、設定するか、しないかを選択するようにしてよい。停止位置を設定することを選択した場合は設定位置の入力画面に移行し、設定を選択しない場合はそのままシミュレーションを行うようにすればよい。
【0038】
さて、本実施形態の場合は途中停止させるので、シミュレーションが開始されると、停止条件管理部22に設計者により入力部3を利用して停止位置が入力され、停止条件が設定される (工程S50)。
この停止位置の入力は、プログラム開始からの時間、仮想紙の搬送開始からの時間、センサを仮想紙の先端又は後端が通過した時の時間など時間的要素で規定することもできる。また、図3で説明したような紙搬送シミュレーション画面上を指示することによって行うこともできる。
【0039】
次に、制御プログラムが一時停止中か否かを判断し (工程S51)、一時停止中であれば、後述する図8の制御プログラム表示画面W3に設けられた実行再開ボタンW32などにより設計者が実行再開を指示したかを判断する(工程S56)。実行再開が指示されていない場合は、実行再開が指示されるまで上の判断を繰り返し、実行再開が指示された場合は、次の紙位置計算の処理へ移る。
【0040】
制御プログラムが一時停止中でなければ、紙位置計算部20により新たな仮想紙の位置を計算し求める (工程S52)。詳細な紙位置計算のフローチャートを図1Bに示す。このフローチャートは、終了時刻の判定を行っていないことを除いて、図5のフローチャートと同じ処理を行う。
【0041】
次に、停止条件管理部22に記録されたすべての停止位置のうち、現在の紙位置に一致するものが存在するかを停止条件判定部21により判断する (工程S53)。仮想紙の位置と一致する停止位置が存在するならば制御プログラムの実行の一時停止を通知する。この通知は出力I/F部27を介して行われる(工程S54)。計算して得られた仮想紙の位置と一致する停止位置がなければ制御プログラムを停止しない。そして、シミュレーション時刻tが終了時刻に達したかを判断する(工程S55)。シミュレーション時刻tが終了時刻に達していた場合、シミュレーションを終了する。
【0042】
次に、図6及び図7を用いて実際のシミュレーション動作に則して本発明を説明する。図6は、紙搬送制御に関する各種デバイス配置の一例を示す図である。紙搬送制御に際して制御情報として取り扱われる事項を図6に示された紙搬送機構を参照しながら説明する。尚、図6において、R1、R2はそれぞれ仮想ローラ対、S1はセンサ、Aは仮想紙が供給される点、Bは搬送経路の分岐点、Cは搬送経路の終点、Dは搬送経路の分岐路側の点である。また、M1、M2は仮想モータ、CL1は仮想クラッチ、FL1は仮想フラッパである。
【0043】
供給点Aから仮想紙Pの供給が開始されるとき、仮想紙Pに対して一意の識別番号を与える。この識別番号としては、例えば供給点Aから供給された仮想紙の供給順に番号を与えてもよい。供給された仮想紙Pは仮想ローラ対R1により、搬送パスAB上の実線矢印方向に搬送される。仮想ローラ対R1は仮想クラッチCL1を介して仮想モータM1から駆動される。仮想紙Pの先端が仮想センサS1を通過したタイミングで仮想フラッパFL1はオフされ供給点Aから分岐点B、終点Cに向けての経路を形成するように移動する。これによって仮想紙Pは進路を曲げられ、搬送パスBCに進む。仮想紙PはモータM2によって駆動されるローラ対R2によって引き取られ終点C方向に搬送される。
【0044】
仮想紙Pの後端が分岐点Bの下流の所望位置、例えば5mmに達した時点で、仮想モータM2を停止し、その後、仮想フラッパFL1をオンする。仮想フラッパFL1のオンにより搬送経路は終点Cから分岐点B、分岐路側の点Dに至るようになる。尚、仮想紙Pの後端は不図示のセンサによって後端検知してもよいし、センサS1で仮想紙Pの先端または後端を検出してからの時間によって決定しても良い。仮想紙Pが所望位置に到達したら仮想モータM2を反転回転させ、搬送パスBDに仮想紙Pを進める。図6において、点線矢印はモータM1、M2とローラ対R1、R2とのそれぞれの駆動関係を示している。
【0045】
図7は、表示制御部5によってパーソナルコンピュータに接続された表示部6であるディスプレイ上に表示される停止位置設定画面W2の表示例を説明するための概略図である。停止位置設定画面W2内には紙搬送経路表示画面W21と設定の条件を入力するための窓やプルダウンメニューを有する。本実施形態では、入力部3として設けられたマウスのようなポインティングデバイスにより紙搬送経路上に制御プログラムの停止位置を指定する場合を説明する。
【0046】
紙搬送経路表示画面W21内の搬送経路上にポインティングデバイスの指示位置を示す矢印PTを任意の位置に移動し、所望の位置でクリック等により停止位置を指定する。すると、紙搬送経路表示画面W21の搬送経路上に停止位置BP(ブレークポイント)が黒丸として表示される。これによって、機構シミュレーション部2内の停止条件管理部22に停止位置が登録される。
【0047】
紙搬送経路表示画面W21の下部に配された紙識別番号入力画面W22からは、制御プログラム停止を行う仮想紙の識別番号を入力することができる。ここで指定した識別番号を有する仮想紙が、停止位置BPに達した場合にのみ制御プログラムの一時停止を行い、それ以外の仮想紙に対しては制御プログラムの実行の一時停止を行わずにそのまま通過させるようにすることができる。
【0048】
プルダウンメニューW23では、仮想紙の先端又は後端のどちらが停止位置に達したときに停止させるかを選択できる。
設計者が入力部3より紙搬送シミュレーションの開始を指示すると、入力監視部4を介してソフトウエアシミュレーション部1及び機構シミュレーション部2が実行される。
【0049】
ソフトウエアシミュレーション部1の実行が開始されると、ファームソフトウエア部14は現実世界の画像形成装置の紙搬送制御を行うためのソフトウエアを逐次実行していく。制御プログラムの制御により仮想紙が紙搬送経路内を動く様子を、設計者は紙位置表示部28によりアニメーションとして観察することができる。
仮想紙が停止条件管理部22に登録されている停止位置に到達した場合、制御プログラムの実行は一時停止し、それに伴い紙位置表示部28に表示されていた仮想紙が動作するアニメーションも一時停止する。
【0050】
図8は、表示制御部5によってパーソナルコンピュータに接続された表示部6であるディスプレイ上に表示される制御プログラム表示画面W3の表示例を説明するための概略図である。
制御プログラムの実行が一時停止したとき、プログラムリスト表示領域W31には制御プログラムのソースコードが表示される。ここで、現在実行が一時停止中の行が矢印ARによって指示される。これによって、実行を一時停止した位置が画面状に明確に表示及び指示されるので詳細な分析を行うことが可能になる。
【0051】
入力部3のポインティングデバイスによって実行再開ボタンW32を選択すると、一時停止状態にあった制御プログラムは実行を再開する。
また、ステップ実行ボタンW33を選択すると、制御プログラムの現在一時停止中の行が実行され、次の行に実行が移ったときに制御プログラムは再び一時停止状態に入る。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、制御プログラムの一時停止の条件に紙間距離を適用する点において第1の実施形態と異なる。なお、一時停止の条件として、仮想搬送装置内の供給部にある仮想紙の残数、ローラの速度、ローラ間の速度差、センサの値、分岐点における仮想紙の搬送方向、搬送経路における仮想紙の搬送方向を用いる場合についても本実施形態と同様の構成で実現が可能である。
【0053】
本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様である。よって、以下では第1の実施形態の内容を引用しながら、第1の実施形態との差分のみ説明する。
本実施形態において、停止条件管理部22には制御プログラム停止条件として仮想紙間の許容間隔が記録される (工程S50)。停止条件判定部21は、紙位置計算部20により求められた仮想紙間の間隔が、停止条件管理部22に記録された許容間隔以上であるか否かを判定する (工程S53)。
【0054】
図9は、表示制御部5によってパーソナルコンピュータに接続された表示部6であるディスプレイ上に表示される紙間隔許容量設定画面W4の表示例を説明するための概略図である。
紙間隔許容量設定画面W4内には、紙搬送経路選択画面W41と仮想紙間の間隔の許容量を入力するための許容紙間距離入力画面W42を有する。紙搬送経路選択画面W41には、搬送経路全体の形状が点線により表示されている。
【0055】
本実施形態では、入力部3として設けられたマウスのようなポインティングデバイスにより紙搬送経路の区分領域を選択し、区分領域ごとに仮想紙間の間隔の許容量を指定する場合を説明する。
紙搬送経路選択画面W41内の搬送経路上にポインティングデバイスの指示位置を示す矢印PTを任意の位置に移動し、所望の位置でのクリック等により仮想紙間の間隔の許容量を指定する紙搬送経路を指定する。すると、紙搬送経路選択画面W41の紙搬送経路内の選択された区分領域PAが実線として表示される。この状態で、入力部3として設けられたキーボードのような入力デバイスにより、許容紙間距離入力画面W42に仮想紙間間隔の許容量を入力する。これにより、この区分領域における仮想紙間の間隔の許容量が停止条件管理部22に登録される。
【0056】
シミュレーション実行時に、先行する仮想紙と後続する仮想紙との間隔が、現在仮想紙が存在する搬送経路に設定された仮想紙間隔の許容値未満であれば、制御プログラムの実行を一時停止させる。
このとき、図7の制御プログラム表示画面W3には、制御プログラムのソースコードが表示され、さらに現在実行が停止中の行が矢印によって指示される。
【0057】
以上説明したように実施形態によれば、搬送シミュレーションの実行中に被搬送体がユーザ指定の所定の位置に達した場合、及び所定のイベントや例外的現象が発生した場合に、制御プログラムの実行を一時停止させる。そして、その現在実行位置を表示させることができる。これにより制御プログラムの記述の間違いや不具合によるバグの発見がより効率化される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】本発明の機構シミュレーション部の好適な一例を説明するためのフローチャートである。
【図1B】本発明の機構シミュレーション部の好適な一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明にかかる制御プログラムの検査支援方法を適用可能な検査支援装置の構成の一例を説明するための概略的ブロック図である。
【図3】本発明の紙搬送シミュレーション画面の表示の一例を説明するための図である。
【図4】本発明のソフトウエアシミュレーション部及び機構シミュレーション部の好適な一例を具体的に説明するための概略的構成図である。
【図5】本発明の実施形態で行われる紙位置計算の一例を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明紙の実施形態における搬送制御に関する各種デバイス配置の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態における停止位置設定画面の好適な表示例の一つを説明するための概略図である。
【図8】本発明の実施形態における制御プログラム表示画面の好適な表示例の一つを説明するための概略図である。
【図9】本発明の実施形態における紙間隔許容量設定画面の好適な表示例の一つを説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0059】
1 ソフトウェアシミュレーション部、2 機構シミュレーション部、3 入力デバイス、4 入力監視部、5 表示制御部、6 出力デバイス、14 制御プログラム実行部、11 制御プログラム記録部、12 入力I/F部、13 出力I/F部、20 紙位置計算部、21 停止条件判定部、22 停止条件管理部、27 出力I/F部、28 紙位置表示部、29 入力I/F部、P 仮想紙、BP 停止位置、PT ポインタ、AR 矢印、PA 搬送経路、R1 仮想ローラ、R2 仮想ローラ、M1 仮想モータ、M2 仮想モータ、CL1 仮想クラッチ、FL1 仮想フラッパ、S1 仮想センサ、W1 紙搬送シミュレーション画面、W2 停止位置設定画面、W3 制御プログラム表示画面、W4 紙間隔許容量設定画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される被搬送体の位置を管理する工程と、
搬送路の任意の位置に、被搬送体が通過した時点で制御プログラムの実行を一時停止させるための制御プログラム停止位置を設定する工程と、
被搬送体が前記制御プログラム停止位置に達したか否かを判断する工程と、
被搬送体が前記制御プログラム停止位置に達したと判断した場合、前記制御プログラムの実行を一時停止させる工程と、を有することを特徴とする検査支援方法。
【請求項2】
搬送装置内の被搬送体の残数、搬送路上にあるローラの速度、前記搬送路上にある前記ローラ間の速度差、前記搬送路にあるセンサの値、先行する被搬送体と後続する被搬送体の間隔、前記搬送路上にある分岐点における被搬送体の搬送方向及び前記搬送路上の被搬送体の搬送方向のうち少なくとも一つの状態を管理する工程と、
いずれかの前記状態に対して制御プログラムの実行を一時停止させるための条件を設定する工程と、
シミュレーション実行中に前記条件を満たしたか否かを判断する工程と、
前記条件を満たしたと判断した場合、前記制御プログラムの実行を一時停止させる工程と、を有することを特徴とする検査支援方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の検査支援方法の各工程をコンピュータに実施させるためのプログラム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−120300(P2009−120300A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294654(P2007−294654)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】