説明

検査装置及び検査方法

【課題】補正パターンを有するフォトマスクの欠陥検査において、補正パターンに由来する欠陥を除外すること。
【解決手段】本発明に係る検査装置10は、結像面に転写される主パターンと、主パターンに対して光学近接効果補正を行う補正パターンとを有するフォトマスクを検査する。検査装置10は、照明光源111と、照明光源111からの光を集光して前記フォトマスクに照射する光学系と、フォトマスク20の透過像を取得する検出器142と、検出器142により得られた透過像と補正パターンのみに対応する検索画像とを用いて補正パターンに対応する除外領域を決定し、当該除外領域を欠陥検出から除外するためのフィルタを生成する処理部30と、フィルタを用い、除外領域を除外して欠陥検査を行う欠陥判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超解像技術(RET:Resolution Enhancement Technology)のための補正パターンを有するフォトマスクを検査する検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の微細化に伴い、露光用フォトマスク上に形成されるパターンサイズの縮小化が要求されている。フォトマスクに形成されるパターンの微細化に起因して、光の回折現象による干渉効果が顕著に現れるようになる。このため、設計データと異なるパターンがウエハに転写され、最終的に形成される半導体装置の歩留りの低下や動作の不具合が起こる場合がある。
【0003】
これを解決するために、RETの一例として、光の干渉効果による露光後のパターン変形を低減する光学近接効果補正(OPC)法が知られている。OPC法では、干渉効果の影響をシミュレーションで評価し、フォトマスク上のパターンを補正する。例えば、パターンのコーナー部にSERIFパターンやHAMMER HEADパターンを付加する。これにより、ウエハに転写されたパターンが設計データを忠実に再現できる。
【0004】
半導体装置の製造工程において、フォトマスク上のパターンに欠陥があると、配線の絶縁不良や短絡などの不良原因が生じ歩留りが低下する。そこで、フォトマスクに欠陥が生じているか否を検査する検査装置が利用されている。
【0005】
一般に、パターンが形成されたフォトマスクの欠陥検査法には、フォトマスクパターンと設計データとの比較法(Die-to-Database比較法)と、フォトマスク上の異なる位置に配置された同一のパターンの比較法(Die-to-Die比較法)との2通りの方法が広く知られている。
【0006】
一定の値以下のパターン幅又はパターン間隔の補正パターンは、フォトマスクの作成プロセス限界によりサイズの変動が生じやすい。このため、補正パターンを有するフォトマスクを検査する場合、検査によって得られた検出データと比較データとの間に差異が生じ、擬似的に欠陥と判定してしまうおそれがある。
【0007】
RETの他の例では、補正パターンとして、露光装置の解像度以下の線幅を有するアシストバーやスキャッタリングバー等のサブ分解能補助構造(SRAF:Sub?Resolution Assist Features)がある。このような補正パターンはウエハ上に転写されず、主パターンの露光に影響を与えないため、欠陥を高感度で検出する必要がない。特に、微細なSRAFパターンはばらつきが大きいため、検査装置が高感度である場合には疑似欠陥が多く発生し、欠陥評価に支障をきたすこととなる。
【0008】
そこで、特許文献1では、補正パターンを有するフォトマスクにおいて二つの画像を取り込み、これらを比較することによって補正領域を抽出している。補正領域では、低感度で検出した欠陥候補を欠陥として判定し、疑似欠陥の発生を低減させている。
【0009】
また、特許文献2では、設計データから補正パターンと被検査領域の抽出を行い、補正パターンの欠陥検査を行う際に、他の部分よりも検査感度を下げることにより、疑似欠陥の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−310162号公報
【特許文献2】特開2005−37513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような事情を背景としてなされたものであり、補正パターンを有するフォトマスクの欠陥検査において、補正パターンに由来する欠陥を除外する検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様に係る検査装置は、結像面に転写される主パターンと、前記主パターンに対して光学近接効果補正を行う補正パターンとを有するフォトマスクを検査する検査装置であって、照明光源と、前記照明光源からの光を集光して前記フォトマスクに照射する光学系と、前記フォトマスクからの光を検出し、前記フォトマスクの画像を取得する検出器と、前記検出器により得られた前記フォトマスクの画像と前記補正パターンのみに対応する検索画像とを用いて前記補正パターンに対応する除外領域を決定し、当該除外領域を欠陥検出から除外するためのフィルタを生成する処理部と、前記フィルタを用い、前記除外領域を除外して欠陥検査を行う欠陥判定部とを備えるものである。これにより、補正パターンに由来する欠陥を除外して、補正パターンを有するフォトマスクの欠陥検査を効率よく行うことが可能となる。
【0013】
本発明の第2の態様に係る検査装置は、上記の検査装置において、前記処理部は、前記画像の各画素の輝度に応じて、前記主パターンに対応する領域と前記補正パターンに対応する領域とそれら以外の領域とを分類した分類データを生成し、前記分類データと前記検索画像とを用いて、前記除外領域を欠陥検出から除外するためのフィルタを生成することを特徴とするものである。このように、フォトマスク画像の画素を輝度により分類することにより、検索画像の登録に必要な負荷を軽減することができる。また、除外領域の決定にかかる演算処理の負荷を軽減することが可能となる。
【0014】
本発明の第3の態様に係る検査装置は、上記の検査装置において、前記補正パターンはバー状であり、前記検索画像は複数の画素からなり、前記補正パターンの短手方向の幅と略等しい幅を有する主部と、前記主部の前記幅を有する辺を挟んで対向する二辺に沿って設けられたエッジ部とを有するものである。これにより、より正確に補正パターンに対応する除外領域を決定することが可能となる。
【0015】
本発明の第4の態様に係る検査装置は、上記の検査装置において、前記処理部は、前記主部と前記エッジ部とを異なる重みづけ処理を行って、前記除外領域を決定することを特徴とするものである。これにより、検索画像とのパターンマッチングにおいて、誤った判断がなされることを防止することが可能となる。
【0016】
本発明の第5の態様に係る検査装置は、上記の検査装置において、前記検索画像の長さは、前記補正パターンの長手方向の長さよりも短いことを特徴とするものである。このような検索画像を用いることにより、1つの検索画像で長さの異なる補正パターンのパターンマッチングを行うことが可能となる。
【0017】
本発明の第6の態様に係る検査装置は、上記の検査装置において、前記検索画像は複数設けられていることを特徴とするものである。これにより、さまざまな形状の補正パターンのパターンマッチングをすることが可能となる。
【0018】
本発明の第7の態様に係る検査装置は、上記の検査装置において、前記処理部は、前記検索画像とは異なる前記フィルタを作成するためのフィルタパターンを用いて、前記フィルタを作成することを特徴とするものである。このように、検索画像とフィルタパターンとを別にすることで、除外領域のサイズを任意の方向に変更することが可能となる。
【0019】
本発明の第8の態様に係る検査装置は、上記の検査装置において、前記フォトマスクを透過した光により得られる第1の像同士、または前記フォトマスクで反射した光により得られる第2の像同士、または前記第1の像と前記第2の像とを比較して、前記フォトマスクの欠陥を検出することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第9の態様に係る検査方法は、結像面に転写される主パターンと、前記主パターンに対して超解像技術のための補正パターンとを有するフォトマスクを検査する検査方法であって、前記フォトマスクに光を照射し、前記フォトマスクからの光を検出して前記フォトマスクの画像を取得し、得られた前記フォトマスクの画像と前記補正パターンのみに対応する検索画像とを用いて前記補正パターンに対応する除外領域を決定して当該除外領域を欠陥検出から除外するためのフィルタを生成し、前記フィルタを用い、前記除外領域を除外して欠陥検査を行う。これにより、補正パターンに由来する欠陥を除外して、補正パターンを有するフォトマスクの欠陥検査を効率よく行うことが可能となる。
【0021】
本発明の第10の態様に係る検査方法は、上記の検査方法において、前記画像の各画素の輝度に応じて、前記主パターンに対応する領域と前記補正パターンに対応する領域とそれら以外の領域とを分類した分類データを生成し、前記分類データと前記検索画像とを用いて、前記除外領域を欠陥検出から除外するためのフィルタを生成することを特徴とする。このように、フォトマスクの画像を輝度により分類することにより、検索画像の登録に必要な負荷を軽減することができる。また、除外領域の決定にかかる演算処理の負荷を軽減することが可能となる。
【0022】
本発明の第11の態様に係る検査方法は、上記の検査方法において、前記補正パターンはバー状であり、前記検索画像は複数の画素からなり、前記補正パターンの短手方向の幅と略等しい幅を有する主部と、前記主部の前記幅を有する辺を挟んで対向する二辺に沿って設けられたエッジ部とを有する。これにより、より正確に補正パターンに対応する除外領域を決定することが可能となる。
【0023】
本発明の第12の態様に係る検査方法は、上記の検査方法において、前記主部と前記エッジ部とを異なる重みづけ処理を行って、前記除外領域を決定することを特徴とする。これにより、検索画像とのパターンマッチングにおいて、誤った判断がなされることを防止することが可能となる。
【0024】
本発明の第13の態様に係る検査方法は、上記の検査方法において、前記検索画像の長さは、前記補正パターンの長手方向の長さよりも短いことを特徴とする。このような検索画像を用いることにより、1つの検索画像で長さの異なる補正パターンのパターンマッチングを行うことが可能となる。
【0025】
本発明の第14の態様に係る検査方法は、上記の検査方法において、前記検索画像は複数設けられていることを特徴とする。これにより、さまざまな形状の補正パターンのパターンマッチングをすることが可能となる。
【0026】
本発明の第15の態様に係る検査方法は、上記の検査方法において、前記検索画像とは異なる前記フィルタを作成するためのフィルタパターンを用いて、前記フィルタを作成することを特徴とするものである。このように、検索画像とフィルタパターンとを別にすることで、除外領域のサイズを任意の方向に変更することが可能となる。
【0027】
本発明の第16の態様に係る検査方法は、上記の検査方法において、前記フォトマスクを透過した光により得られる第1の像同士、または前記フォトマスクで反射した光により得られる第2の像同士、または前記第1の像と前記第2の像とを比較して、前記フォトマスクの欠陥を検出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、補正パターンを有するフォトマスクの欠陥検査において、補正パターンに由来する欠陥を除外する検査装置及び検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態に係る検査装置の構成を示す図である。
【図2】実施発明における検査対象のフォトマスクの構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る検査装置に用いられる処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施の形態におけるフィルタの作成方法を説明するための図である。
【図5】本実施の形態に係る検査方法を説明するための図である。
【図6】検索画像と分類データとを用いたパターンマッチングの手法を説明するための図である。
【図7】検索画像の主部とエッジ部とで異なる重みづけ処理を行う例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【0031】
本発明の実施の形態1に係る検査装置について、図1を参照して説明する。ここでは試料であるフォトマスク20の欠陥を検出する検査装置を例に挙げて説明する。111は透過照明光源、112は透過側フィルタ、113は駆動モータ、114はミラー、115は対物レンズ、116はステージ、121は落射照明光源、122は落射側フィルタ、123は駆動モータ、124はビームスプリッタ、125は対物レンズ、141はレンズ、142は検出器、150は処理装置である。
【0032】
本発明の実施の形態に係る検査方法及び検査装置においては、結像面に転写される主パターンと、主パターンに対して超解像技術のための補正パターンとを有するフォトマスクを検査対象とする。以下の説明では、超解像技術のための補正パターンを補正パターンと呼ぶ。
【0033】
ここで、図2を参照して、本発明における検査対象であるフォトマスクの構成について説明する。図2に示すように、フォトマスク20には、主パターン21、補正パターン22、透過領域23を有する。主パターン21、補正パターン22は、光を反射する遮光パターンである。透明なガラス基板の上にクロム膜又はMoSi膜等の遮光膜を成膜、パターニングすることにより、フォトマスク20上に遮光パターンが形成される。なお、MoSi膜からなる遮光パターンが形成されたものは、位相シフトマスク(PSM:Phase Shift Mask)と呼ばれる。
【0034】
補正パターン22は、例えば、主パターン21より細く、露光装置の解像度以下の線幅を有するものであり、スキャッタリングバーやアシストバーと呼ばれるバー状の遮光パターンである。このような補正パターン22は、サブ分解能補助構造(SRAF:Sub?Resolution Assist Features)とも呼ばれる。図2に示す例では、矩形状の主パターン21の長手方向の辺に沿って形成されている。なお、補正パターン22としては、これに限定されず、コンタクトホール等を形成するための主パターン21の近傍に形成される円形状、楕円形状のもの等がある。本発明はバー状の補正パターン22のみではなく、他の形状のものにも適用可能である。
【0035】
フォトマスク20のうち、遮光パターンが設けられていない領域は光を透過する透過領域23となる。主パターン21に対応する領域を主パターン領域、補正パターン22に対応する領域を補正領域、透過領域23に対応する領域を透過領域とする。
【0036】
フォトマスク20は図示ない駆動機構に接続されたステージ116に載置されている。フォトマスク20をラスタ走査することにより、フォトマスク全面を照明することにより、フォトマスク20の全面の検査を行うことができる。
【0037】
透過照明光源111から出射された透過照明光をフォトマスク20に入射させるための透過照明用光学系について説明する。透過照明光源111は、例えば、ランプ光源であり、透過照明光を透過側フィルタ112の方向に出射する。透過照明光源111からの透過照明光は、透過側フィルタ112を通過して、ミラー114に入射する。ミラー114はフォトマスク20が載置されたステージ116の下方に配置されており、透過照明光源111からの透過照明光をフォトマスク20の方向に反射する。ミラー114で反射された透過照明光は、対物レンズ115に入射する。対物レンズ115により屈折された透過照明光はステージ116を介してフォトマスク20に入射する。また、対物レンズ115は透過照明光をフォトマスク20のパターン面上に集光する。
【0038】
対物レンズ115によって集光されフォトマスク20に入射した透過照明光のうち、フォトマスク20を透過した透過光は、対物レンズ125で屈折され、ビームスプリッタ124に入射する。ビームスプリッタ124は、例えば、ハーフミラーであり、入射光のうち半分を透過し、半分を反射する。ビームスプリッタ124を透過した透過光は、レンズ141で屈折され、検出器142に入射する。検出器142は、CCDカメラなどの撮像素子であり、フォトマスク20の光学像を撮像する。すなわち、レンズ141は、透過光を検出器142の受光面上に集光する。これにより、フォトマスク20の透過照明光が照射された領域の透過像を撮像することができる。検出器142は、検出した光の光量に基づく検出信号を処理装置150に出力する。処理装置150は、例えば、検出信号に基づいて欠陥判定を行なうためのアナログ回路と、欠陥判定した結果を、記憶、表示するためのパーソナルコンピュータとを含む。
【0039】
次に、落射照明光源121から出射された落射照明光をフォトマスク20に入射させるための落射照明用光学系について説明する。落射照明光源121は、例えば、ランプ光源であり、落射照明光を落射側フィルタ122の方向に出射する。落射照明光源121からの落射照明光は、落射側フィルタ122を通過して、ビームスプリッタ124に入射する。ビームスプリッタ124はステージ116上に載置されたフォトマスク20の上方に配置されており、入射した落射照明光のうちの一部をフォトマスク20の方向に反射する。ビームスプリッタ124で反射された落射照明光は、対物レンズ125に入射する。対物レンズ125は落射照明光をフォトマスク20のパターン面上に集光する。
【0040】
対物レンズ125によって集光されフォトマスク20に入射した落射照明光のうち、フォトマスク20で反射された反射光は、対物レンズ125で屈折され、ビームスプリッタ124に入射する。ビームスプリッタ124を透過した反射光は、レンズ141で屈折され、検出器142に入射する。レンズ141は、反射光を検出器142の受光面上に集光する。これにより、フォトマスク20の落射照明光が照射された領域の反射像を撮像することができる。
なお、以下の実施例においては透過照明光による透過光検出の場合を例に説明するが、反射照明による反射光検出においても同様である。
【0041】
フォトマスク欠陥検査において、補正パターンの欠陥については露光に影響を与えないことから、欠陥検出を除外したいという需要がある。本発明においては、補正パターンに対応する領域を除外するフィルタを作成し、当該フィルタを用いることにより補正パターンの欠陥検出を除外する。以下、本実施の形態に係る検査方法について、詳細に説明する。
【0042】
図3に、検査装置10に用いられる処理部30の構成を示す。図3に示すように、処理部30は、記憶部31、画像変換部32、フィルタ作成部33、欠陥判定部34を備えている。なお、処理部30は、LCDやCRTなどの表示装置を備え、パターンイメージを表示できるようにしてもよい。
【0043】
記憶部31は、それぞれの画素における光の輝度に基づく輝度データを記憶する。また、記憶部31は、フォトマスク20の補正パターン22に対応する検索画像、及び、フィルタを作成するためのフィルタパターンを記憶する。
【0044】
画像変換部32は、記憶部31に記憶された輝度データに基づき、主パターン領域、補正領域、透過領域を分類する分類データの作成を行う。本実施の形態では、分類データの作成の一例として、三値化処理を行う。なお、分類データの作成は、三値化処理に限定されない。補正パターン22は、主パターン21よりも透過領域23との輝度差が出にくい。すなわち、フォトマスク20の透過像において、透過領域23の輝度が最も高く、線幅の細い補正パターン22の輝度が次に高く、主パターン21の輝度は最も低い。
【0045】
従って、異なる2つの閾値をあらかじめ設定して、検出器142により得られる透過像の各画素の輝度を当該閾値と比較することにより、主パターン領域、補正領域、透過領域を区別することができる。このように、分類する分類データの作成を行うことにより、補正パターン22のパターンマッチングにかかる時間を削減することができる。また、検索画像の登録に必要な記憶領域を削減することが可能である。
なお、上記の説明は、補正パターン22が露光された基板を現像した後に、レジストが当該パターンで基板上に残るポジパターンの場合である。ネガパターンの場合には、主パターン21、補正パターン22、透過領域23に対応する各画素の輝度の大きさが逆になる。このような場合でも、閾値を設定することにより、各領域を分類する処理を適用できる。
【0046】
フィルタ作成部33は、スキャッタリングバーなどの補正パターン22を隠すためのフィルタを作成する。このフィルタは補正パターン22が形成される補正領域を含む除外領域を覆い隠すためのフィルタである。そして、フォトマスク20に対して欠陥候補検出を行い、このときに得られた欠陥領域に上述のフィルタをかける。これにより、補正パターン22に由来する欠陥の検出を除外する。
【0047】
なお、補正領域内の検出したい欠陥までも除去されてしまうおそれがあるため、補正領域に対して補正領域以外の領域の検査感度よりも低感度の欠陥検出を行ってもよい。これにより、補正領域内の検出したい欠陥を補償することができる。ここで、比較する2つの像の輝度データの差が所定の閾値以上であるときに欠陥とするが、この閾値を補正領域よりも補正領域以外の領域のほうを高くする。これにより、露光時の転写に影響のある欠陥のみを確実に検出することができる。
【0048】
欠陥判定部34は、検出器142により検出された透過像に基づいて欠陥候補の判定を行う。なお、欠陥の検査方法としては、従来から知られている、フォトマスクパターンと設計データとを比較するDie-to-Database比較法や、フォトマスク上の異なる位置に配置された同一のパターンを比較するDie-to-Die比較法、フォトマスクの主パターンと異なる特徴(反射率等)を捉えて異物とみなすSingle Die法等を用いることが可能である。記憶部31は、欠陥候補を判定した結果を記憶する。欠陥判定部34は、欠陥候補判定結果から、フィルタにより除外領域の欠陥候補を除外し、除外領域以外の欠陥候補を実欠陥として最終欠陥検出画像を作成する。
【0049】
ここで、補正パターン22を欠陥検出から除外するためのフィルタの作成方法について図4を参照して説明する。図4は、本実施の形態におけるフィルタの作成方法を説明するための図である。ここでは、補正パターン22は、1画素分の幅を有し、10画素分の長さを有しているバー形状であるものとする。まず、検出器142により取得された透過像から分類データを作成する。そして、分類データと記憶部31に記憶された検索画像とを用いて、補正パターン22に対応する除外領域を決定する。
【0050】
図4に示すように、検索画像40とは、補正パターン22の形状にのみ対応する複数の画素からなる画像である。検索画像は、補正パターン22のフォトマスク20上での位置等の情報は有しておらず、設計データとは異なるものである。具体的には、図4に示すように、検索画像40は、主部41、エッジ部42を含む。本実施の形態では、検索画像40には、無効領域43が含まれる。
【0051】
主部41は、補正パターン22の短手方向の幅と略等しい幅を有している。本実施の形態では、主部41は1画素分の幅となっている。このように、検索画像として、補正パターン22のみに対応する画像を用いることにより、検索画像の記憶に必要な記憶部31の領域を削減することができる。
【0052】
また、主部41の補正パターン22の幅と等しい辺を挟んで対向する二辺に沿って、エッジ部42が設けられている。図4に示す例では、エッジ部42は、1画素分の幅を有し、主部41と等しい長さとなっている。エッジ部42を設けることにより、実際には補正パターン22ではないパターンにおいて、誤って補正パターン22であると判定されるのを防止することができ、より正確に補正パターン22のパターンマッチングをすることが可能となる。
【0053】
また、上述の通り、エッジ部42の対向する二辺のみにエッジ部42が設けられている。このため、検索画像40の角度を変化させて補正パターン22のパターンマッチングを行えば、異なる角度で補正パターン22が形成されている場合でも補正パターン22を検索することが可能である。
【0054】
また、検索画像40の長さは、補正パターン22の長手方向の長さよりも短くなっている。この例では、検索画像の左右方向の長さが4画素であるのに対し、補正パターン22の左右方向の長さは10画素となっている。このような検索画像を用い、パターンマッチングすることにより、1つの検索画像で長さの異なる補正パターンの検索を行うことが可能となる。さらに、複数のことなる形状の検索画像40が設けられていてもよい。これにより、さまざまな形状の補正パターンを検索することができる。
【0055】
このような検索画像40と分類データを用いて、分類データ中に、検索画像40に一致する部分があるかどうかを検索する。これにより得られた一致箇所が補正パターン22である。
ここで、パターンマッチングの手法について、図6を参照して説明する。図6に示すように、入力画像f、テンプレートtとする。テンプレートtのサイズは、(m、n)であるものとする。入力画像f中から、テンプレートtに一致する部分を検索したい場合、以下の式を適用する。dが0に近い部分がテンプレートtに一致する箇所とみなすことができる。
【数1】

入力画像fにおいてテンプレートtが重なる範囲内で、テンプレートtの始点座標(i、j)を変更することで、入力画像fの全体におけるテンプレートtに一致する箇所が得られる。すなわち、検索画像tの位置を変更して、入力画像fの全体をスキャンすることにより、検索画像tとのマッチング箇所がわかる。
本実施の形態においては、入力画像として分類データを用い、テンプレートとして検索画像40が用いられる。上記の式を用いて、分類データにおける検索画像40との一致箇所を特定する。検索画像40で分類データの全体をスキャンすることにより、分類データの全体における検索画像40に一致する箇所を特定することができる。なお、本実施の形態においては、テンプレートtの内容に応じて重み係数を乗じている。
そして、フィルタパターン50を用いて補正領域を覆うフィルタを作成する。フィルタパターン50は、主フィルタパターン51、エッジフィルタパターン52、無効領域53を湯含む。主フィルタパターン51は、主部41と略等しい形状である。エッジフィルタパターン52は、主フィルタパターン51の周囲を囲むように形成される。
【0056】
補正パターン22は、長さ方向の変動が大きいことが知られている。このため、補正パターン22の長さ方向で、疑似欠陥が発生する確率が高い。従って、エッジフィルタパターン52は、主フィルタパターン51の幅方向よりも、長さ方向を大きくすることが好ましい。
【0057】
これにより、フィルタパターン50を用いて作成されるフィルタにおいて、補正領域からはみ出した除外領域は補正パターン22の幅方向よりも、長さ方向のほうが大きくなる。図4に示す例では、補正領域からはみ出した除外領域は幅方向に対して1画素ずつであるのに対し、長さ方向に対しては2画素ずつとなっている。これにより、疑似欠陥の発生をより抑制することが可能となる。
【0058】
ここで、図5を参照して、本実施の形態に係る検査方法について説明する。まず、検出器142により透過像が得られる。そして、透過像を用いて欠陥候補の検出が行われる。一方、上述したフィルタ作成方法を用いて、補正パターン22を検出し、除外領域を欠陥検査から除外するフィルタが作成される。
【0059】
そして、欠陥候補が検出された画像に当該フィルタを適用することにより、除外領域における欠陥候補が除外される。そして、除外領域以外の欠陥候補が実際に露光時に問題となる実欠陥として判定され、最終欠陥検出画像が生成される。
【0060】
一般に、補正パターンは線幅が細いことからの不出来が多く、欠陥として検出されやすい。結果として、不要な欠陥レビューに多数の時間を要していた。しかしながら、本発明によれば、フォトマスクに形成されるパターンのうち、補正パターンのみに対応する検索画像を用いて、補正パターンを含む領域を欠陥検出から除外することができる。これにより、欠陥検査を効率よく行うことが可能となる。
【0061】
なお、分類データに対して検索画像が完全に一致する部分とすると、画像の揺らぎにより透過像のエッジが歪なものについては正確に補正領域を特定することが難しい場合がある。検索画像と分類データとの一致をパターンマッチングにより決定する場合に、所定の許容値を設定してもよい。
【0062】
この場合、主部41とエッジ部42とで異なる重みづけ処理を行って、除外領域を決定してもよい。図7を参照して、主部41とエッジ部42とで異なる重みづけ処理を行って、除外領域を決定する方法について説明する。
【0063】
例えば、検索画像40の主部41と分類データの補正パターン22の主部が一致しない場合のミスマッチ係数を1とし、エッジ部42と補正パターン22の周辺の輝度が一致しない場合のミスマッチ係数を2とする。ミスマッチ係数が4以上の場合、検索画像40を分類データにおけるパターンは一致していないと判断するものとする。
【0064】
図7に示す(1)の領域では、エッジ部42において3画素が一致していない。この場合、ミスマッチ係数は2x3=6となる。一方、(2)の領域では、エッジ部42において1画素、主部41において2画素が一致していない。この場合のミスマッチ係数は(1x2)+(1x2)=4となる。(3)の領域では、主部41において3画素が一致していない。この場合のミスマッチ係数は1x3=3となる。従って、この場合には、(1)領域は補正領域に該当しないと判断され、(2)領域と(3)領域におけるパターンが補正パターン22であると判断される。
【0065】
このように、主部41とエッジ部42において異なる重み付け処理を行い、分類データのパターンと検索画像とを比較することにより、補正パターン22の誤検出を防止することが可能となる。
【0066】
以上説明したように、本発明によれば、フィルタとして用いることによって、スキャッタリングバーなどの補正領域を取り除いた最終欠陥検出画像を取り出すことができる。このように、欠陥候補の検出結果にこのフィルタをかけることによって、補正パターン22近傍に発生する可能性の高い、無視したい欠陥候補を除去することができる。
【0067】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。上述の装置においては、透過像によるパターンイメージを取得したが、反射像によるパターンイメージを取得してもよい。また、フォトマスクを透過した光により得られる透過像と、フォトマスクで反射した光により得られる反射像とを比較して、フォトマスクの欠陥を検出することも可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 検査装置
20 フォトマスク
21 主パターン
22 補正パターン
23 透過領域
30 処理部
31 記憶部
32 画像変換部
33 フィルタ作成部
34 欠陥判定部
40 検索画像
41 主部
42 エッジ部
43 無効領域
50 フィルタパターン
51 主フィルタパターン
52 エッジフィルタパターン
53 無効領域
111 透過照明光源
112 透過側フィルタ
114 ミラー
115 対物レンズ
116 ステージ
121 落射照明光源
122 落射側フィルタ
124 ビームスプリッタ
125 対物レンズ
141 レンズ
142 検出器
150 処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像面に転写される主パターンと、前記主パターンに対して光学近接効果補正を行う補正パターンとを有するフォトマスクを検査する検査装置であって、
照明光源と、
前記照明光源からの光を集光して前記フォトマスクに照射する光学系と、
前記フォトマスクからの光を検出し、前記フォトマスクの画像を取得する検出器と、
前記検出器により得られた前記フォトマスクの画像と前記補正パターンのみに対応する検索画像とを用いて前記補正パターンに対応する除外領域を決定し、当該除外領域を欠陥検出から除外するためのフィルタを生成する処理部と、
前記フィルタを用い、前記除外領域を除外して欠陥検査を行う欠陥判定部と、
を備える検査装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記画像の各画素の輝度に応じて、前記主パターンに対応する領域と前記補正パターンに対応する領域とそれら以外の領域とを分類した分類データを生成し、
前記分類データと前記検索画像とを用いて、前記除外領域欠陥検出から除外するためのフィルタを生成することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記検索画像は複数の画素からなり、前記補正パターンの短手方向の幅と略等しい幅を有する主部と、前記主部の前記幅を有する辺を挟んで対向する二辺に沿って設けられたエッジ部とを有する請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記主部と前記エッジ部とを異なる重みづけ処理を行って、前記除外領域を決定することを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記検索画像の長さは、前記補正パターンの長手方向の長さよりも短いことを特徴とする請求項3又は4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記検索画像は複数設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記検索画像とは異なる前記フィルタを作成するためのフィルタパターンを用いて、前記フィルタを作成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記フォトマスクを透過した光により得られる第1の像同士、または前記フォトマスクで反射した光により得られる第2の像同士、または前記第1の像と前記第2の像とを比較して、前記フォトマスクの欠陥を検出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項9】
結像面に転写される主パターンと、前記主パターンに対して超解像技術のための補正パターンとを有するフォトマスクを検査する検査方法であって、
前記フォトマスクに光を照射し、
前記フォトマスクからの光を検出して前記フォトマスクの画像を取得し、
得られた前記フォトマスクの画像と前記補正パターンのみに対応する検索画像とを用いて前記補正パターンに対応する除外領域を決定して当該除外領域を欠陥検出から除外するためのフィルタを生成し、
前記フィルタを用い、前記除外領域を除外して欠陥検査を行う、
検査方法。
【請求項10】
前記画像の各画素の輝度に応じて、前記主パターンに対応する領域と前記補正パターンに対応する領域とそれら以外の領域とを分類した分類データを生成し、
前記分類データと前記検索画像とを用いて、前記除外領域を欠陥検出から除外するためのフィルタを生成することを特徴とする請求項9に記載の検査方法。
【請求項11】
前記補正パターンはバー状であり、
前記検索画像は複数の画素からなり、前記補正パターンの短手方向の幅と略等しい幅を有する主部と、前記主部の前記幅を有する辺を挟んで対向する二辺に沿って設けられたエッジ部とを有する請求項9又は10に記載の検査方法。
【請求項12】
前記主部と前記エッジ部とを異なる重みづけ処理を行って、前記除外領域を決定することを特徴とする請求項11に記載の検査方法。
【請求項13】
前記検索画像の長さは、前記補正パターンの長手方向の長さよりも短いことを特徴とする請求項10又は11のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項14】
前記検索画像は複数設けられていることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項15】
前記検索画像とは異なる前記フィルタを作成するためのフィルタパターンを用いて、前記フィルタを作成することを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項16】
前記フォトマスクを透過した光により得られる第1の像同士、または前記フォトマスクで反射した光により得られる第2の像同士、または前記第1の像と前記第2の像とを比較して、前記フォトマスクの欠陥を検出することを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−237465(P2011−237465A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105860(P2010−105860)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】