検査装置
【課題】照明光を短波長化しなくても、確実に繰り返しピッチの微細化に対応できる表面検査装置を提供する。
【解決手段】表面検査装置10は、被検物体20に形成された繰り返しパターンを直線偏光により照明する照明手段13と、前記直線偏光の入射面の前記表面における方向と前記繰り返しパターンの繰り返し方向とのなす角度を0以外の所定値に設定する設定手段11と、繰り返しパターンからの正反射光のうち、前記直線偏光の振動面に垂直な偏光成分を抽出する抽出手段38と、受光手段39から出力される前記正反射光の光強度に基づいて、前記繰り返しパターンの欠陥を検出する検出手段15とを備え、前記設定手段は、前記直線偏光の入射面の前記表面における方向と前記繰り返しパターンの繰り返し方向とのなす角度を、前記表面の正常部分からの光強度と前記表面の欠陥部分からの光強度との差が最大となるように設定する。
【解決手段】表面検査装置10は、被検物体20に形成された繰り返しパターンを直線偏光により照明する照明手段13と、前記直線偏光の入射面の前記表面における方向と前記繰り返しパターンの繰り返し方向とのなす角度を0以外の所定値に設定する設定手段11と、繰り返しパターンからの正反射光のうち、前記直線偏光の振動面に垂直な偏光成分を抽出する抽出手段38と、受光手段39から出力される前記正反射光の光強度に基づいて、前記繰り返しパターンの欠陥を検出する検出手段15とを備え、前記設定手段は、前記直線偏光の入射面の前記表面における方向と前記繰り返しパターンの繰り返し方向とのなす角度を、前記表面の正常部分からの光強度と前記表面の欠陥部分からの光強度との差が最大となるように設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関するものである。特に、被検物体の表面に形成された繰り返しパターンの欠陥検査を行う表面検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体回路素子や液晶表示素子の製造工程では、半導体ウエハや液晶基板(総じて「基板」という)の表面に形成された繰り返しパターン(配線パターンなどのライン・アンド・スペースのパターン)の欠陥検査が行われる。自動化された表面検査装置では、チルト可能なステージの上に基板を載置し、基板の表面に検査用の照明光(非偏光)を照射し、基板上の繰り返しパターンから発生する回折光(例えば1次回折光)に基づいて基板の画像を取り込み、この画像の明暗差(コントラスト)に基づいて繰り返しパターンの欠陥箇所を特定する。さらに、従来の表面検査装置は、ステージをチルト調整することにより、基板上の繰り返しピッチが異なる繰り返しパターンの欠陥検査を行うこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−232122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の表面検査装置では、原理的に、繰り返しパターンの繰り返しピッチが所定値(=(回折次数)×(照明光の波長)÷2)より小さくなると、繰り返しパターンから回折光が発生せず、欠陥検査を行うことができない。また、繰り返しピッチが所定値近傍の場合には、装置内での照明系や受光系の機械的な配置の制約から、回折光による欠陥検査を実現することは難しい。
【0005】
なお、繰り返しピッチの微細化(すなわち配線パターンなどのライン・アンド・スペースの微細化)に対応するためには、照明光の波長を短くして上記の所定値を小さくすることが考えられる。しかし、光源の種類が限定され、高価で大がかりな光源となってしまい、さらに、照明系や受光系を構成する光学素子の材料も高価なものに限定され、好ましくない。
【0006】
本発明の目的は、照明光を短波長化しなくても、確実に繰り返しピッチの微細化に対応できる表面検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の検査装置は、被検物を照射光で照射する照射光学系と、複数の波長についてそれぞれ所定の透過特性を有し、被検物を照射する光路中に配置されるフィルタと、被検物で反射した照射光を所定の波長範囲で検出する検出部を備え、前記フィルタの透過特性が、前記検出部の前記波長範囲内の感度特性に応じている。
また、前記照射光を発生する光源部を有し、該光源部は複数の輝線スペクトルを発生することが好ましい。
また、前記検出部は2次元撮像素子を含むことが好ましい。
また、被検物を照射する光路中に配置される第一の偏光部材と、前記被検物で反射し検出部に至る光路中に配置される第二の偏光部材と備えることが好ましい。
また、前記被検物の表面に垂直な軸周りに該被検物を回動する回動部を備えることが好ましい。
本発明の参考形態の表面検査装置は、被検物体の表面に形成された繰り返しパターンを直線偏光により照明する照明手段と、前記直線偏光の入射面の前記表面における方向と前記繰り返しパターンの繰り返し方向とのなす角度を0以外の所定値に設定する設定手段と、前記繰り返しパターンから正反射方向に発生した光のうち、前記直線偏光の振動面に垂直な偏光成分を抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出された光を受光し、該正反射光の光強度を出力する受光手段と、前記受光手段から出力される前記正反射光の光強度に基づいて、前記繰り返しパターンの欠陥を検出する検出手段とを備え、前記設定手段は、前記直線偏光の入射面の前記表面における方向と前記繰り返しパターンの繰り返し方向とのなす角度を、前記表面の正常部分からの光強度と前記表面の欠陥部分からの光強度とのコントラストが最大となるように設定する。
【0008】
また、前記直線偏光は、複数の異なる波長の光を含むことが好ましい。
【0009】
また、前記検出手段の感度に応じて、前記複数の異なる波長の光を含む直線偏光の強度分布を調整する強度調整手段を備えることが好ましい。
【0010】
また、波長毎に生じる前記表面の正常部分からの光強度と前記表面の欠陥部分からの光強度との差、及び前記波長毎の前記被検物体からの光の光強度に応じて、前記複数の異なる波長を選択する波長選択手段を備えることが好ましい。
【0011】
また、前記照射手段は直線偏光の波長を変更する波長選択手段を有し、前記照明手段から照射される直線偏光の波長を変更しながら前記正反射光の光強度を取得し、前記波長ごとの正反射光の光強度を合成して得た光強度に基づいて、前記繰り返しパターンの欠陥を検出することが好ましい。
【0012】
また、前記検出手段の感度に応じて、前記波長毎に取得した光強度の合成比率を変えることが好ましい。
【0013】
また、前記波長毎に生じる前記表面の正常部分からの光強度と前記表面の欠陥部分からの光強度との差、及び前記波長毎の前記被検物体からの光の光強度に応じて、前記波長毎に取得した光強度の合成比率を変えることが好ましい。
【0014】
また、前記直線偏光の入射面の前記表面における方向と前記繰り返しパターンの繰り返し方向とのなす角度φは次の式を満足することが好ましい。
φ=22.5°+45×N° (Nは0〜6何れかの整数)
【0015】
また、前記表面に直交する軸を中心に前記被検物体と前記照射手段と前記受光手段とを相対的に回転させる第1の回転手段を備えることが好ましい。
【0016】
また、前記入射面に直交して前記表面内に含まれる軸を中心に前記被検物体を回転させる第2の回転手段を備えることが好ましい。
【0017】
また、前記入射面に直交して前記表面内に含まれる軸を中心に前記照射手段と前記受光手段と前記被検物体との少なくとも2つをそれぞれ回転させる第2の回転手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、照明光を短波長化しなくても、確実に繰り返しピッチの微細化に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の表面検査装置10の全体構成を示す図である。
【図2】被検物体20の表面の外観図である。
【図3】繰り返しパターン22の凹凸構造を説明する斜視図である。
【図4】照明光L1の入射面(3A)と繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)との傾き状態を説明する図である。
【図5】直線偏光L1と楕円偏光L2の振動方向を説明する図である。
【図6】直線偏光L1の振動面の方向(V方向)と、繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)との傾き状態を説明する図である。
【図7】正常パターンの反射画像の輝度値(偏光成分L4の光強度)と直線偏光の振動面とのなす角度φとの関係(a)、及び欠陥パターンの反射画像の輝度値(偏光成分L4の光強度)と直線偏光の振動面とのなす角度φとの関係(b)を示す図である。
【図8】正常パターンの反射画像の輝度値と欠陥パターンの反射画像の輝度値とのコントラストを示す図である。
【図9】偏光成分L3の大きさと、繰り返しパターン22のライン部2Aの線幅DAとの関係を説明する図である。
【図10】ピッチPが異なると共に、ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比が同じ繰り返しパターン22の一例を示す図である。
【図11】繰り返し方向が異なる繰り返しパターン25,26を説明する図である。
【図12】エッジ形状が非対称な繰り返しパターン22と直線偏光L1の入射方向との関係を示す図である。
【図13】波長選択フィルタの切替機構を説明する図である。
【図14】光源31からの光に含まれる輝線スペクトルの一例を示す図である。
【図15】撮像素子39の感度の波長特性を示す図である。
【図16】照明光L1の各波長の分光強度(補正前)を説明する図である。
【図17】撮像素子39による受光後の実効強度(補正前)を説明する図である。
【図18】波長選択フィルタ32の分光透過率の一例を示す図である。
【図19】撮像素子39による受光後の実効強度(補正後)を説明する図である。
【図20】パターンアライメント系の撮像視野領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
第1実施形態の表面検査装置10は、図1に示す通り、被検物体20を支持するステージ11と、パターンアライメント系12と、照明系13と、受光系14と、画像処理装置15と、アライメント系16と、搬送ステージ17とで構成される。
【0022】
被検物体20は、例えば半導体ウエハや液晶ガラス基板などである。被検物体20の表面(レジスト層)には、図2に示すように、複数のショット領域21が配列され、各ショット領域21の中に検査すべき繰り返しパターン22が形成されている。繰り返しパターン22は、配線パターンなどのライン・アンド・スペースのパターンであり、図3に示すように、複数のライン部2Aをその短手方向(X方向)に沿って一定のピッチpで配列したものである。隣り合うライン部2Aどうしの間は、スペース部2Bである。ライン部2Aの配列方向(X方向)を「繰り返しパターン22の繰り返し方向」という。
【0023】
第1実施形態の表面検査装置10は、半導体回路素子や液晶表示素子の製造工程において、被検物体20の表面に形成された繰り返しパターン22の欠陥検査を自動で行う装置である。この表面検査装置10には、表面(レジスト層)への露光・現像が終わった後の被検物体20が、不図示の搬送系によってカセットまたは現像装置から運ばれ、アライメントステージ17に吸着される。
【0024】
アライメントステージ17によって被検物体20を回転させながら、アライメント系16によって被検物体20の外縁部を照明し、外縁部に設けられた外形基準(例えばノッチ)の回転方向の位置を検出し、所定の位置でアライメントステージ17を停止させる。その後、被検物体20は不図示の搬送系によりステージ11に搬送され、ステージ11に吸着される。
【0025】
繰り返しパターン22の欠陥とは、繰り返しパターン22の構造(すなわちデューティ比や断面形状)の変化であり、図3に示すライン部2Aの線幅DAの変化(またはスペー
ス部2Bの線幅DBの変化)に相当する。なお、線幅DA,DBが変化してもピッチpは変わらない。このような欠陥は、繰り返しパターン22を形成する際の露光フォーカスのずれに起因し、被検物体20のショット領域21ごとに現れる。ステージ11は回転機構とチルト機構を併せ持ち、ステージ上の被検物体20を回転、及びチルトする。
【0026】
ステージ11は、被検物体20を上面に載置して例えば真空吸着により固定保持する。また、ステージ11には、被検物体20の表面に直交する軸(例えば表面の中心における法線1A)を中心に、被検物体20を回転させる機構が設けられる。この回転機構により、被検物体20の繰り返しパターン22の繰り返し方向(図2,図3のX方向)を、被検物体20の表面内で回転させることができる。
【0027】
さらに、ステージ11には図1の軸AXを中心に、被検物体20をチルトさせる機構が設けられる。軸AXは照明系13による照明光の入射面と直交し、被検物体20のほぼ表面内で且つ、被検物体20の中心を通る軸である。このチルト機構により被検物体20をチルトさせることが可能であり、被検物体20の検査の際に所定の角度にチルトする。
【0028】
被検物体20はステージ11に吸着された後、パターンアライメント系12により、回転方向のアライメントの微調整を行う。パターンアライメント系12は二つの撮像系を持ち(不図示)、図20に示す通り、それぞれが被検物体上の領域121と122の撮像を行う。撮像された二つの画像から画像処理によりパターンの回転量を求める。そして、回転量が閾値内になる様、ステージ11の回転で調整を行う。
【0029】
撮像時は、照明系13により被検物体20を照明する。ステージを水平にした状態で被検物体20からの正反射光が入射するよう、パターンアライメント系12が配置されている。そしてパターンアライメントの後、図1に示すように照明系13で被検物体20を照明した際に正反射光が受光系14に入射するよう、ステージ11は被検物体20をチルトする。
【0030】
照明系13は、光源31と波長選択フィルタ32とライトガイドファイバ33と偏光フィルタ34と補正板341と凹面反射鏡35とで構成された偏心光学系であり、ステージ11上の被検物体20の繰り返しパターン22を直線偏光L1により照明する。この直線偏光L1が、繰り返しパターン22に対する照明光である。直線偏光L1は、被検物体20の表面全体に照射される。また、偏光フィルタ34と補正板341は不図示の挿脱機構により光路に挿脱可能である。
【0031】
直線偏光L1の進行方向(被検物体20の表面上の任意の点に到達する直線偏光L1の主光線の方向)は、凹面反射鏡35の光軸O1に略平行である。光軸O1は、ステージ11の中心を通り、ステージ11の法線1Aに対して所定の角度θだけ傾けられている。ちなみに、直線偏光L1の進行方向を含み、ステージ11の法線1Aに平行な平面が、直線偏光L1の入射面である。図4の入射面3Aは、被検物体20の中心における入射面である。
【0032】
また、第1実施形態では、直線偏光L1がp偏光である。つまり、図5(a)に示すように、直線偏光L1の進行方向と電気(または磁気)ベクトルの振動方向とを含む平面(直線偏光L1の振動面)が、直線偏光L1の入射面(3A)内に含まれる。図1においては紙面内に振動している偏光である。直線偏光L1の振動面は、凹面反射鏡35の前段に配置された偏光フィルタ34の透過軸により規定される。
【0033】
なお、照明系13の光源31は、メタルハライドランプや水銀ランプなどの放電光源である。波長選択フィルタ32は、光源31からの光のうち所定波長の輝線スペクトルを選択的に透過する。ライトガイドファイバ33は、波長選択フィルタ32からの光を伝送する。偏光フィルタ34は、ライトガイドファイバ33の射出端近傍に配置され、その透過軸が所定の方位に設定され、透過軸に応じてライトガイドファイバ33からの光を直線偏光にする。凹面反射鏡35は、球面の内側を反射面とした反射鏡であり、前側焦点がライトガイドファイバ33の射出端と略一致し、後側焦点が被検物体20の表面と略一致するように配置され、偏光フィルタ34からの光を被検物体20の表面に導く。照明系13は、被検物体20側に対してテレセントリックな光学系である。なお、補正板341については後述する。
【0034】
上記の照明系13において、光源31からの光は、波長選択フィルタ32とライトガイドファイバ33と偏光フィルタ34と凹面反射鏡35とを介し、p偏光の直線偏光L1(図5(a))となって、被検物体20の表面全体に入射する。被検物体20の各点における直線偏光L1の入射角度は、互いに同じであり、光軸O1と法線1Aとの成す角度θに相当する。
【0035】
第1実施形態では、被検物体20に入射する直線偏光L1がp偏光(図5(a))であるため、図4に示す通り、被検物体20の繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)が直線偏光L1の入射面(3A)に対して角度φで設定された場合、被検物体20の表面における直線偏光L1の振動面の方向(図6のV方向)と、繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)との成す角度も、角度φに設定される。設定角度φは22.5度又は67.5度である。
【0036】
換言すると、直線偏光L1は、被検物体20の表面における振動面の方向(図6のV方向)が繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)に対して角度φ(22.5度または67.5度)傾いた状態で、繰り返しパターン22を斜めに横切るように繰り返しパターン22に入射する。
【0037】
このような直線偏光L1と繰り返しパターン22との角度状態は、被検物体20の表面全体において均一である。なお、22.5度を115.5度,205.5度,295.5度の何れかに言い換えても、また、67.5度を157.5度,247.5度,337.5度の何れかに言い換えても直線偏光L1と繰り返しパターン22との角度状態は同じである。
【0038】
このような角度の設定は、ステージ11の回転機構を用いて行われる。回転機構には例えばパルスモータが使われ、所定の回転角度に相当するパルス数を送ることで、上記の角度(以下「回転角φ」)に設定することができる。
【0039】
そして、上記の直線偏光L1を用いて繰り返しパターン22を照明すると、繰り返しパターン22から正反射方向に楕円偏光L2が発生する(図1,図5(b))。この場合、楕円偏光L2の進行方向が正反射方向に一致する。正反射方向とは、直線偏光L1の入射面(3A)内に含まれ、ステージ11の法線1Aに対して角度θ(直線偏光L1の入射角度θに等しい角度)だけ傾いた方向である。なお、上記の通り、繰り返しパターン22のピッチPが照明波長と比較して十分小さい為、繰り返しパターン22から回折光が発生することはない。
【0040】
なお、直線偏光L1が繰り返しパターン22により楕円化し、繰り返しパターン22から楕円偏光L2が発生する理由については、本出願人の国際公開公報WO2005/040776に詳細に記載されており、ここでの説明は省略する。
【0041】
また、図6の振動面の方向(V方向)と繰り返し方向(X方向)との成す角度φを22.5度または67.5度に設定するのは、繰り返しパターン22の欠陥検査の感度を高くするためであり、その理由を以下に説明する。
【0042】
前記国際公開公報において、本発明者等は図6の振動面の方向(V方向)と繰り返し方向(X方向)との成す角度φを45度に設定するのが望ましく、これは、正常パターンの反射画像の輝度値から欠陥パターンの反射画像の輝度値への低下率(欠陥パターンの反射画像の輝度値/正常パターンの反射画像の輝度値)は角度φによらず一定と考えられ、即ち、正常パターンの反射画像の輝度値から欠陥パターンの反射画像の輝度値への低下量(輝度差)は、傾き角度φが45度から外れるほど小さくなると考えられるため、と述べた。
【0043】
正常な繰り返しパターンの輝度値と回転角φとの関係は、回転角φが45度の時に輝度値が最も高くなる(理由については国際公開公報WO2005/040776に詳細を記載しており、ここでの説明は省略する)。
【0044】
しかし、角度φによって、(欠陥パターンの反射画像の輝度値(測定値))と(正常パターンの反射画像の輝度値(測定値))との比が異なることをつきとめ、コントラストが最大になるような角度φの条件で欠陥検査を行うことが最も感度よく評価できることがわかった。
【0045】
正常パターンの反射画像の輝度値(偏光成分L4の光強度)と、直線偏光の振動面とパターンとのなす角φとの関係(a)、及び欠陥パターンの反射画像の輝度値(偏光成分L4の光強度)と、直線偏光の振動面とパターンとのなす角φとの関係(b)を図7に示す。さらに、正常パターンの反射画像の輝度値と欠陥パターンの反射画像の輝度値とのコントラストを図8に示す。図8より角度φが22.5度、67.5度でコントラストが最大となることがわかる。
【0046】
ここで、コントラストとは、絶対値(1−〔(欠陥パターンの反射画像の輝度値(測定値))/(正常パターンの反射画像の輝度値(測定値))〕)をいう。なお、1は、(正常パターンの反射画像の輝度値(測定値))/(正常パターンの反射画像の輝度値(測定値))である。即ち、正常パターンの反射画像の輝度値(測定値)を1に正規化したものである。
【0047】
以下、例を示して説明する。
【0048】
(1)角度φ=45度において
正常パターンの反射画像の輝度値=100
欠陥パターンの反射画像の輝度値=80
の場合、
角度φ=45度のコントラストは、〔1(=100/100)−(80/100)〕=0.2
(2)角度φ=35度において
正常パターンの反射画像の輝度値=85
欠陥パターンの反射画像の輝度値=62.5
の場合、
角度φ=35度のコントラストは、〔1(=85/85)−(62.5/85)〕=0.26
(3)角度φ=30度において
正常パターンの反射画像の輝度値=70
欠陥パターンの反射画像の輝度値=45
の場合、
角度φ=30度のコントラストは、〔1(=70/70)−(45/70)〕=0.36
(4)角度φ=22.5度において
正常パターンの反射画像の輝度値=45
欠陥パターンの反射画像の輝度値=25
の場合、
角度φ=22.5度のコントラストは、〔1(=45/45)−(25/45)〕=0.44
(5)角度φ=15度において
正常パターンの反射画像の輝度値=20
欠陥パターンの反射画像の輝度値=15
の場合、
角度φ=15度のコントラストは、〔1(=20/20)−(15/20)〕=0.25
(6)角度φ=10度において
正常パターンの反射画像の輝度値=10
欠陥パターンの反射画像の輝度値=8
の場合、
角度φ=10度のコントラストは、〔1(=10/10)−(8/10)〕=0.2
【0049】
以上から角度φ=22.5度でのコントラストは、他の角度でのコントラストに比べて大きいといえる。なお、角度φ=45度を中心に対称な光強度を分布を示すので、角度φ67.5度のコントラストも最大になる。
【0050】
他には、次のように定義される。
【0051】
各角度φにおける正常パターンの反射画像の輝度値(測定値)が所定の輝度値(正常パターンの規格値(例えば、100))になるように、各角度φ毎に照明光量を調整あるいは画像撮像時間を調整した状態において、正常パターンの反射画像の輝度値を取得するとともに、各角度φ毎にそれと同じ照明光量又は画像撮像時間を用いて欠陥パターンの反射画像の輝度値を取得する(欠陥パターンの規格値)。
【0052】
これらの各角度φの正常パターンの規格値と欠陥パターンの規格値との差の絶対値をコントラストと定義してもよい。
【0053】
次に、受光系14の説明を行う。受光系14は、図1に示すように、凹面反射鏡36と結像レンズ37と偏光フィルタ38と補正板381と撮像素子39とで構成された偏心光学系である。偏光フィルタ38と補正板381は不図示の挿脱機構により光路に挿脱可能である。
【0054】
凹面反射鏡36は、上記した照明系13の凹面反射鏡35と同様の反射鏡であり、その光軸O2が、ステージ11の中心を通り、かつ、ステージ11の法線1Aに対して角度θだけ傾くように配置されている。(換言すれば、照明系13の光軸O1と受光系14の光軸O2が両方ともステージ11の法線1Aに対して角度θになる様ステージ11がチルトする)したがって、繰り返しパターン22からの楕円偏光L2は、凹面反射鏡36の光軸O2に沿って進行することになる。凹面反射鏡36は、楕円偏光L2を反射して結像レンズ37の方に導き、結像レンズ37と協働して撮像素子39の撮像面に集光する。また、凹面反射鏡36で反射する前後の光軸の成す面は入射面と直交している(図は平行である)。
【0055】
ただし、結像レンズ37と凹面反射鏡36との間には、偏光フィルタ38が配置されている。偏光フィルタ38の透過軸の方位は、上記した照明系13の偏光フィルタ34の透過軸に対して直交するように設定されている(クロスニコル(直交ニコル)の状態)。したがって、偏光フィルタ38により、楕円偏光L2の図5(c)の偏光成分L3に相当する偏光成分L4(図1)のみを抽出して、撮像素子39に導くことができる。
【0056】
言い換えれば、被検物体20で反射した楕円偏光L2のうち、s偏光成分のみを抽出する。s偏光とは振動面が入射面に垂直な直線偏光で、図1においては紙面と垂直方向に振動している。そして撮像素子39の撮像面には、偏光成分L4(s偏光成分)による被検物体20の反射像が形成される。なお、補正板381については後述する。
【0057】
撮像素子39は、例えばCCD撮像素子などであり、撮像面に形成された被検物体20の反射像を光電変換して、画像信号を画像処理装置15に出力する。被検物体20の反射像の明暗は、偏光成分L4の光強度(図5(c)の偏光成分L3の大きさ)に略比例し、繰り返しパターン22の形状(ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比)に応じて変化する(図9参照)。被検物体20の反射像が最も明るくなるのは、繰り返しパターン22が理想的な形状(体積比が1:1)の場合である。なお、被検物体20の反射像の明暗は、ショット領域ごとに現れる。
【0058】
画像処理装置15は、撮像素子39から出力される画像信号に基づいて、被検物体20の反射画像を取り込む。なお、画像処理装置15は、比較のため、回転角φが、22.5度又は67.5度で取得した良品ウエハの反射画像を予め記憶している。良品ウエハとは、繰り返しパターン22が理想的な形状(体積比が1:1)で表面全体に形成されたものである。したがって、画像処理装置15は、被検物体である被検物体20の反射画像を取り込むと、その輝度情報を良品ウエハの反射画像の輝度情報と比較する。
【0059】
そして、良品ウエハの反射画像の輝度値と被検物体20の反射画像の輝度値とのコントラストに基づいて、繰り返しパターン22の欠陥(ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比の変化)を検出する。例えば、輝度値のコントラストが予め定めた閾値(許容値)より大きければ「欠陥」と判定し、閾値より小さければ「正常」と判断すればよい。
【0060】
なお、画像処理装置15においては、上記のように、良品ウエハの反射画像を予め記憶しておく構成の他、ウエハのショット領域の配列データと輝度値の閾値を予め記憶しておく構成でもよい。この場合、ショット領域の配列データに基づいて、取り込まれたウエハの反射画像中における各ショット領域の位置が分かるので、各ショット領域の輝度値を求める。そして、その輝度値と記憶されている閾値とを比較することにより、パターンの欠陥を検出する。閾値より輝度値が小さいショット領域を欠陥と判断すればよい。
【0061】
さらに、被検物体20のショット領域21ごとの繰り返しパターンの配置は同様であるため、良品のショット領域21を特定し、その輝度値を基準に欠陥検出を行ってもよい。被検物体20の画像の輝度値と限界サンプルの画像の輝度値とを比較してもよい。シミュレーションで輝度値の基準を決定し、その基準値との比較によって繰り返しパターン22の欠陥を検出してもよい。良品ウエハを用いない場合、全面良品の専用ウエハを作る必要がなくなるという利点がある。
【0062】
また、22.5度の画像と67.5度の画像の両方を撮像してそれぞれの画像に対して検査を行い、ANDやORを取って最終的な欠陥の有無を判断しても良い。
【0063】
上記したように、第1実施形態の表面検査装置10によれば、直線偏光L1を用い、図6の振動面の方向(V方向)が繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)に対して傾いた状態で、繰り返しパターン22を照明すると共に、正反射方向に発生した楕円偏光L2のうち、偏光成分L4の光強度(図5(c)の偏光成分L3の大きさ)に基づいて、繰り返しパターン22の欠陥を検出するため、照明波長と比較して繰り返しパターン22のピッチPが十分小さくても、確実に欠陥検査を行うことができる。つまり、照明光である直線偏光L1を短波長化しなくても、確実に繰り返しピッチの微細化に対応できる。
【0064】
さらに、第1実施形態の表面検査装置10では、図6の振動面の方向(V方向)と繰り返し方向(X方向)との成す角度φを22.5度または67.5度に設定したことにより、良品ウエハの反射画像の輝度値と被検物体20の反射画像の輝度値とのコントラストを大きく捉えることができ、繰り返しパターン22の欠陥検査を高感度で行うことができる。
【0065】
また、第1実施形態の表面検査装置10では、照明波長と比較して繰り返しパターン22のピッチPが十分小さい場合に限らず、繰り返しパターン22のピッチPが照明波長と同程度でも、照明波長より大きい場合でも、同様に繰り返しパターン22の欠陥検査を行うことができる。つまり、繰り返しパターン22のピッチPに拘わらず、確実に欠陥検査を行うことができる。繰り返しパターン22による直線偏光L1の楕円化は、繰り返しパターン22のライン部2Aとスペース部2Bとの体積比に依存して起こるものであり、繰り返しパターン22のピッチPに依存しないからである。
【0066】
さらに、第1実施形態の表面検査装置10では、繰り返しパターン22のライン部2Aとスペース部2Bとの体積比が同じであれば、反射画像の輝度値の低下量(図9の低下量Δ)が等しくなる。このため、繰り返しパターン22のピッチPに拘わらず、体積比の変化量が同じであれば、同じ感度で、その検出を行うことができる。例えば、図10(a),(b)に示す繰り返しパターン22のように、ピッチPが異なり、ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比が同じ場合、同じ感度で欠陥検査を行える。また、図10(a),(b)の比較から分かるように、ピッチPが小さいほど、微細な形状変化(ライン部2Aの線幅DAの設計値からのずれ量δ)を確実に検出することができる。
【0067】
さらに、第1実施形態の表面検査装置10では、照明系13の光源31として放電光源を用いることができ、表面検査装置10の全体構成が安価で簡素なものとなる。また、第1実施形態の表面検査装置10では、被検物体20の表面に複数種類の繰り返しパターンが形成され、ピッチPや繰り返し方向(X方向)の異なる繰り返しパターンが混在している場合でも、被検物体20の表面全体の反射画像を一括で取り込み、各々の箇所における輝度値のコントラストを調べるだけで、全ての繰り返しパターンの欠陥検査を簡単に行うことができる。ちなみに、繰り返し方向の異なる繰り返しパターンは、図11に示すように、0度方向の繰り返しパターン25と90度方向の繰り返しパターン26とである。これらの繰り返しパターン25,26は、互いに、繰り返し方向(X方向)が90度異なっている。
【0068】
しかし、各々の繰り返し方向(X方向)と直線偏光L1の振動面の方向(V方向)との成す角度は、22.5度或いは67.5度である。
【0069】
さらに、第1実施形態の表面検査装置10では、被検物体20の表面に対して直線偏光L1を斜めに入射させるため(図1参照)、繰り返しパターン22のライン部2Aのエッジ形状の非対称性(例えばエッジ形状の崩れの方向性)に関わる欠陥情報も得ることができる。このためには、ステージ11により被検物体20の繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)を180度回転させ、その前後の状態で被検物体20の反射画像を取り込み、同じ箇所の輝度差を調べることになる。
【0070】
図12には、エッジ形状が非対称な繰り返しパターン22と直線偏光L1の入射方向との関係を図示した。例えば、図12(a)は180度回転前の状態であり、ライン部2AのエッジE1,E2のうち崩れたエッジ(E1)側から照明光が入射される。図12(b)は180度回転後の状態であり、2つのエッジE1,E2のうち崩れていないエッジ(E2)側から照明光が入射される。そして、各々の状態で取り込んだ反射画像の輝度値は、入射方向にあるエッジE1,E2のエッジ形状を反映したものとなり、この例では図12(a)の場合の方が反射画像の輝度値が大きくなる。したがって、180度回転させる前後の反射画像の輝度差を調べることにより、ライン部2Aのエッジ形状の非対称性が分かる。180度回転させる前後の反射画像を合成して欠陥検査を行ってもよい。
【0071】
なお、第1実施形態のように、被検物体20の表面に対して直線偏光L1を斜めに入射させる場合(図1参照,入射角度θ)、繰り返しパターン22から発生する楕円偏光L2(図5(b))は、厳密に言えば、その進行方向を軸として僅かに回転している。また、偏光成分L1及び楕円偏光L2は凹面鏡35、36で反射する際にも僅かに回転する。反射の際の回転は反射面内で一様でない。このため、その回転角度を考慮して、受光系14の偏光フィルタ38の透過軸の方位を微調整することが好ましい。
【0072】
微調整後の状態では、2つの偏光フィルタ34,38の透過軸の方位が正確な90度ではなくなるが、このような角度も“垂直(または直交)”の範疇であり、クロスニコルの状態と言える。偏光フィルタ38の透過軸の方位を微調整することにより、検査精度を向上させることができる。
【0073】
微調整の方法としては、例えば、繰り返しパターンの無い表面で直線偏光L1を反射させて画像を取り込み、画像の輝度値が最も小さくなるように、偏光フィルタ38の透過軸の方位を回転させることが考えられる。また、補正板を偏光フィルタ34、38と凹面鏡35、36の間に挿入して更に微調整することが可能である。その為、図1の装置では補正板341、381を偏光フィルタ34、38と凹面鏡35、36の間に挿入している。補正板としては例えばガラスの平行平面板でその表面にガラスと同等の屈折率の保護膜を付けた物を用い、光路に斜めに挿入し、傾斜角度を調整することで、凹面鏡による回転を補正することが出来る。
【0074】
また、上記した第1実施形態では、直線偏光L1がp偏光である例を説明したが、本発明はこれに限定されない。p偏光ではなくs偏光にしても良い。このため、図4に示す通り、被検物体20の繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)が直線偏光L1であるs偏光の入射面(3A)に対して22.5度または67.5度の角度に設定された場合、被検物体20の表面におけるs偏光の振動面の方向と、繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)との成す角度も、22.5度または67.5度に設定される。なお、p偏光は、繰り返しパターン22のライン部2Aのエッジ形状に関わる欠陥情報を取得するのに有利である。s偏光は、被検物体20の表面の欠陥情報を効率よく捉えて、SN比を向上させるのに有利である。
【0075】
さらに、p偏光やs偏光に限らず、振動面が入射面に対して任意の傾きを持つような直線偏光でも構わない。この場合、繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)を直線偏光L1の入射面に対して22.5度または67.5度以外の角度に設定し、被検物体20の表面における直線偏光L1の振動面の方向と、繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)との成す角度を、22.5度または67.5度に設定することが好ましい。
【0076】
なお、照明光L1の波長λについては、被検物体20の反射防止膜(ARC)の吸収帯に含まれる波長を選択することがより好ましい。この場合、反射防止膜での吸収によって下地に到達する光量が減衰するため、表面と下地との分離に有利となる。このような波長選択は、検査レシピから波長λに関わる情報を読み出し、波長選択フィルタ32を切り替えて行えばよい。
【0077】
(第2実施形態)
ここでは、照明光L1が複数の異なる波長の光を含む例について説明する。複数の波長とは、複数の輝線スペクトルのように離散的な波長でも構わないし、ブロードな波長帯域のように連続的な波長でも構わない。以下の説明では、照明光L1が複数の異なる波長の輝線スペクトルを含むとする。
【0078】
複数の輝線スペクトルの各波長λは、波長選択フィルタ32を切り替えて適宜選択し、被検物体20の反射防止膜の吸収帯に含まれる波長を選択することがより好ましい。波長選択フィルタ32の切り替え機構としては、例えば図13に示す通り、透過帯域の異なる複数の波長選択フィルタ32を円盤状のターレット38に取り付け、ターレット38を不図示のモータなどの駆動機構により回転させる構成が考えられる。
【0079】
光源31からの光が例えば図14に示すような多数の輝線スペクトル(e線など)を含む場合、透過帯域αの波長選択フィルタ32を光路上に配置すれば、e線(546nm),g線(436nm),h線(405nm)の3つの輝線スペクトルを選択的に透過し、照明光L1として被検物体20に照射できる。さらに、透過帯域βの波長選択フィルタ32に交換すれば、g線,h線,i線(365nm)の3つの輝線スペクトルを選択的に透過し、また、透過帯域γの波長選択フィルタ32に交換すれば、h線,i線,j線(313nm)の3つの輝線スペクトルを選択的に透過し、被検物体20に照射することができる。
【0080】
そして、照明光L1が複数の輝線スペクトルを含む場合には、各波長λの輝線スペクトルにより被検物体20から楕円偏光L2が発生し、各波長λの楕円偏光L2のうち、偏光成分L4の光強度が撮像素子39の撮像面において合成される。また、撮像素子37から画像処理装置15に出力される画像信号は、各波長λの偏光成分L4の合成後の光強度に関わる情報となる。この場合、画像処理装置15は、合成後の光強度に基づいて繰り返しパターン22の欠陥検査を行うことになる。
【0081】
被検物体20の下地に膜厚ムラがある場合、この膜厚ムラを反映した干渉縞(下地での干渉による明暗の模様)が、検査すべき表面からの偏光成分L4(信号光)による反射像に重なってしまうと、表面の繰り返しパターン22の欠陥を検出し難くなる。照明光L1が単一波長の場合、下地の膜厚ムラを反映した干渉縞が発生すると、この干渉縞が表面の反射像に重なってしまい、良好な欠陥検査を行うことができない。
【0082】
しかし、本実施形態の表面検査装置では、照明光L1が複数の輝線スペクトルを含むため、下地の膜厚ムラを反映した干渉縞が発生しても、各波長λごとに干渉縞の状態(形状)が異なり、各波長λの干渉縞の光強度が合成されて明暗の模様を打ち消し合う。つまり、下地の膜厚ムラを反映した干渉縞の影響を軽減することができる。
【0083】
正常部分の反射画像の輝度値と欠陥部分の反射画像の輝度値とのコントラストが波長に依存して異なる場合は、正常部分の反射画像の輝度値と欠陥部分の反射画像の輝度値とのコントラストが比較的大きく、かつ波長毎に生じる干渉縞を相殺して、下地の膜厚ムラの影響を軽減するような波長帯域を波長選択フィルタにより選択すればよい。
【0084】
このように、複数の輝線スペクトルを含む照明光L1によって被検物体20を照明することで、下地に膜厚ムラがある場合でも、その膜厚ムラの影響を低減して表面の繰り返しパターン22の欠陥検査を良好に行うことができる。さらに、複数の基線スペクトルを含むため、コントラストの低い波長に対してもコントラストの高い波長で補える。照明光L1に含まれる複数の波長が離散的な場合に限らず、連続的な場合にも同様の効果を得ることができる。
【0085】
また、下地の膜厚ムラの影響を低減できるので、被検物体20の各ショット領域21(図2)において繰り返しパターン22の形成箇所が面積的に小さい(下地の露出箇所が面積的に大きい)プロセスの欠陥検査にも有効である。
【0086】
さらに、撮像素子39の感度は一般に各波長λごとに異なり、例えば図15に示す通り、500nm付近の波長に対する感度が最も高く、それより短波長側や長波長側では感度が低下する。図15では一例として400〜550nmの範囲の感度を示した。このような撮像素子39の感度の波長特性に応じて、照明光L1の各波長の光強度を調整することで、下地の膜厚ムラの影響をより効果的に低減することができる。
【0087】
ここで、光源31からの光のうち、図15の波長範囲に含まれる輝線スペクトル(図14のe線,g線,h線)を例に、照明光L1の各波長の光強度の調整について説明する。波長選択フィルタ32によってe線,g線,h線を選択的に透過する際、波長選択フィルタ32の透過帯域における分光透過率が一定であると、照明光L1に含まれるe線,g線,h線の分光強度は例えば図16のようになる。
【0088】
この場合、照明光L1が照射されたときに被検物体20から発生する楕円偏光L2の各波長λ(e線,g線,h線)の分光感度は図16と同様になるが、これを図15に示す感度特性の撮像素子39によって受光すると、受光後のe線,g線,h線の分光強度(以下「実効強度」)は、図17に示す通り、短波長側で低くなってしまう。このため、下地の膜厚ムラを反映した各波長λの干渉縞の打ち消し合いが、短波長側で不十分となってしまう。
【0089】
そこで、撮像素子39の感度の波長特性(図15)を考慮し、波長選択フィルタ32の透過帯域αにおける分光透過率を、図18に示す通り、500nm付近で低く、それより短波長側や長波長側では高くなるように設定する。この場合、波長選択フィルタ32の分光透過率(図18)に応じて、照明光L1の各波長λ(e線,g線,h線)の光強度が調整され、撮像素子39による受光後の実効強度を、図19に示す通り、各波長λ(e線,g線,h線)ごとに一定とすることができる。
【0090】
したがって、下地の膜厚ムラを反映した各波長λの干渉縞を十分に打ち消し合うことができ、下地の膜厚ムラの影響をより効果的に低減することができる。撮像素子39による受光後の実効強度を各波長λごとに一定とすれば、下地の膜厚ムラの影響を最も効果的に低減できるが、本発明はこれに限定されない。受光後の実効強度が各波長λごとに一定でなくても、撮像素子39の感度の波長特性を補正するように照明光L1の各波長λの光強度を調整すれば、下地の膜厚ムラの影響の低減効果を高めることができる。
【0091】
なお、波長選択フィルタ32で選択する波長帯域(図14)は、上記した波長帯域α,β,γに限定されない。膜厚ムラの影響を低減できる波長であれば、j線より短い波長帯域(例えば240nm〜313nm)の光を用いてもよいし、e線より長い波長帯域の光を用いてもよい。また、照明光L1に含まれる波長の数も上記のような3つに限らず、2つでも4つ以上でもよい。更に、膜厚ムラの影響が無くてもコントラストのつきにくい波長については波長選択フィルタで選択する波長から除外しても構わない。
【0092】
(変形例)
上記の実施形態では波長選択フィルタ32で複数の波長の光を同時に選択し、複数の波長による偏光成分の合成画像を得たが本発明はこれに限定されない。波長が異なる単一波長の画像をそれぞれ取得し、それらを画像処理により合成することでも下地の膜厚ムラの影響を低減することが出来る。この時は撮像素子の感度に応じて各波長の画像輝度値に所定の係数を乗じた後に合成を行えばよい。
【0093】
正常部分の反射画像の輝度値と欠陥部分の反射画像の輝度値とのコントラストが波長に依存して異なる場合は、正常部分の反射画像の輝度値と欠陥部分の反射画像の輝度値とのコントラストが比較的大きく、かつ波長毎に生じる干渉縞を相殺して、下地の膜厚ムラの影響を軽減するように各波長の画像輝度値に所定の係数を乗じた後に合成を行えばよい。
【0094】
また、上記の実施形態では、ステージ11がチルト機構を持つ例で説明したが、本発明はこれに限定されない。チルト機構を持たずに正反射光を受光する構成にすればチルト機構がない分、装置構成が簡素となる。
【0095】
また、上記実施形態の様にステージ11のみがチルト機構を持つ構成に限定されない。照明系13と受光系14と被検物体20との少なくとも2つを、それぞれ上記のチルト軸を中心に回転させてもよい。このような構成とすれば、被検物体20に対する照明光L1の入射角θを変化させることができ、入射角θの変化によって反射率が変わるため、被検物体20の表面の変化をより捉えやすくすることが可能となる。
【0096】
また、上記実施形態ではステージの回転により被検物体を回転させているが、本発明はこれに限定されない。照明光の入射面とパターンの成す角度が相対的に回転していれば良く、ステージ11の法線を中心に照明系13と受光系14が回転する構成でも良い。
【0097】
また、上記実施形態ではステージ11がチルト機構を持つ為、回折光を利用した検査も可能となる。その場合はパターンの繰り返し方向が0度になる様ステージ11を回転し、また、回折光が受光系14に入射するよう、適宜ステージ11をチルトすれば良い。回折光検査の時、偏光板および補正板は検査するパターンに応じて適宜挿脱機構により出し入れを行えばよい。
【0098】
また、上記実施形態では繰り返しパターンについて述べたが、ロジックウエハなどの繰り返しパターンが殆ど存在しないものについても本発明が適用される。ロジック回路を形成するパターンは基本的に直線であり、直線の方向は上記繰り返しパターンと同等の方向となる為、照明した直線偏光が楕円偏光に変化する作用は繰り返しパターンもロジックのパターンも同等と考えられるからである。この場合はパターンの直線方向に対して照明光の入射面が所定の角度になる様、ステージを回転させればよい。
【0099】
また、上記した実施形態では、撮像素子39としてCCDなどの2次元センサを用いたが、1次元センサを用いても良い。この場合、撮像素子である1次元センサと被検物体である半導体ウエハ(または液晶基板)を載せたステージとを相対移動させ、1次元センサが半導体ウエハ(または液晶基板)の表面全体を走査するようにして、その表面全面の画像を取り込むようにすればよい。
【0100】
また、半導体ウエハ製造における各工程ごとに、どの波長が膜厚ムラ、或いは正常なパターンとデフォーカスパターンとのコントラストの大小に関係するかを正常なパターンとデフォーカスパターンが混在するテストウエハを用いて予めその関係を求めておき、各工程の検査時に先に求めた関係から最適な条件を設定するのが望ましい。
【符号の説明】
【0101】
10…表面検査装置、11…ステージ、12…パターンアライメント系、13…照明系、14…受光系、15…画像処理装置、16…アライメント系、20…半導体ウエハ、21…チップ領域、22,25,26…繰り返しパターン、31…光源、32…波長選択フィルタ、33…ライトガイドファイバ、34,38…偏光フィルタ、341,381…補正板、35,36…凹面反射鏡、37…結像レンズ、39…撮像素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関するものである。特に、被検物体の表面に形成された繰り返しパターンの欠陥検査を行う表面検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体回路素子や液晶表示素子の製造工程では、半導体ウエハや液晶基板(総じて「基板」という)の表面に形成された繰り返しパターン(配線パターンなどのライン・アンド・スペースのパターン)の欠陥検査が行われる。自動化された表面検査装置では、チルト可能なステージの上に基板を載置し、基板の表面に検査用の照明光(非偏光)を照射し、基板上の繰り返しパターンから発生する回折光(例えば1次回折光)に基づいて基板の画像を取り込み、この画像の明暗差(コントラスト)に基づいて繰り返しパターンの欠陥箇所を特定する。さらに、従来の表面検査装置は、ステージをチルト調整することにより、基板上の繰り返しピッチが異なる繰り返しパターンの欠陥検査を行うこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−232122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の表面検査装置では、原理的に、繰り返しパターンの繰り返しピッチが所定値(=(回折次数)×(照明光の波長)÷2)より小さくなると、繰り返しパターンから回折光が発生せず、欠陥検査を行うことができない。また、繰り返しピッチが所定値近傍の場合には、装置内での照明系や受光系の機械的な配置の制約から、回折光による欠陥検査を実現することは難しい。
【0005】
なお、繰り返しピッチの微細化(すなわち配線パターンなどのライン・アンド・スペースの微細化)に対応するためには、照明光の波長を短くして上記の所定値を小さくすることが考えられる。しかし、光源の種類が限定され、高価で大がかりな光源となってしまい、さらに、照明系や受光系を構成する光学素子の材料も高価なものに限定され、好ましくない。
【0006】
本発明の目的は、照明光を短波長化しなくても、確実に繰り返しピッチの微細化に対応できる表面検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の検査装置は、被検物を照射光で照射する照射光学系と、複数の波長についてそれぞれ所定の透過特性を有し、被検物を照射する光路中に配置されるフィルタと、被検物で反射した照射光を所定の波長範囲で検出する検出部を備え、前記フィルタの透過特性が、前記検出部の前記波長範囲内の感度特性に応じている。
また、前記照射光を発生する光源部を有し、該光源部は複数の輝線スペクトルを発生することが好ましい。
また、前記検出部は2次元撮像素子を含むことが好ましい。
また、被検物を照射する光路中に配置される第一の偏光部材と、前記被検物で反射し検出部に至る光路中に配置される第二の偏光部材と備えることが好ましい。
また、前記被検物の表面に垂直な軸周りに該被検物を回動する回動部を備えることが好ましい。
本発明の参考形態の表面検査装置は、被検物体の表面に形成された繰り返しパターンを直線偏光により照明する照明手段と、前記直線偏光の入射面の前記表面における方向と前記繰り返しパターンの繰り返し方向とのなす角度を0以外の所定値に設定する設定手段と、前記繰り返しパターンから正反射方向に発生した光のうち、前記直線偏光の振動面に垂直な偏光成分を抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出された光を受光し、該正反射光の光強度を出力する受光手段と、前記受光手段から出力される前記正反射光の光強度に基づいて、前記繰り返しパターンの欠陥を検出する検出手段とを備え、前記設定手段は、前記直線偏光の入射面の前記表面における方向と前記繰り返しパターンの繰り返し方向とのなす角度を、前記表面の正常部分からの光強度と前記表面の欠陥部分からの光強度とのコントラストが最大となるように設定する。
【0008】
また、前記直線偏光は、複数の異なる波長の光を含むことが好ましい。
【0009】
また、前記検出手段の感度に応じて、前記複数の異なる波長の光を含む直線偏光の強度分布を調整する強度調整手段を備えることが好ましい。
【0010】
また、波長毎に生じる前記表面の正常部分からの光強度と前記表面の欠陥部分からの光強度との差、及び前記波長毎の前記被検物体からの光の光強度に応じて、前記複数の異なる波長を選択する波長選択手段を備えることが好ましい。
【0011】
また、前記照射手段は直線偏光の波長を変更する波長選択手段を有し、前記照明手段から照射される直線偏光の波長を変更しながら前記正反射光の光強度を取得し、前記波長ごとの正反射光の光強度を合成して得た光強度に基づいて、前記繰り返しパターンの欠陥を検出することが好ましい。
【0012】
また、前記検出手段の感度に応じて、前記波長毎に取得した光強度の合成比率を変えることが好ましい。
【0013】
また、前記波長毎に生じる前記表面の正常部分からの光強度と前記表面の欠陥部分からの光強度との差、及び前記波長毎の前記被検物体からの光の光強度に応じて、前記波長毎に取得した光強度の合成比率を変えることが好ましい。
【0014】
また、前記直線偏光の入射面の前記表面における方向と前記繰り返しパターンの繰り返し方向とのなす角度φは次の式を満足することが好ましい。
φ=22.5°+45×N° (Nは0〜6何れかの整数)
【0015】
また、前記表面に直交する軸を中心に前記被検物体と前記照射手段と前記受光手段とを相対的に回転させる第1の回転手段を備えることが好ましい。
【0016】
また、前記入射面に直交して前記表面内に含まれる軸を中心に前記被検物体を回転させる第2の回転手段を備えることが好ましい。
【0017】
また、前記入射面に直交して前記表面内に含まれる軸を中心に前記照射手段と前記受光手段と前記被検物体との少なくとも2つをそれぞれ回転させる第2の回転手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、照明光を短波長化しなくても、確実に繰り返しピッチの微細化に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の表面検査装置10の全体構成を示す図である。
【図2】被検物体20の表面の外観図である。
【図3】繰り返しパターン22の凹凸構造を説明する斜視図である。
【図4】照明光L1の入射面(3A)と繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)との傾き状態を説明する図である。
【図5】直線偏光L1と楕円偏光L2の振動方向を説明する図である。
【図6】直線偏光L1の振動面の方向(V方向)と、繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)との傾き状態を説明する図である。
【図7】正常パターンの反射画像の輝度値(偏光成分L4の光強度)と直線偏光の振動面とのなす角度φとの関係(a)、及び欠陥パターンの反射画像の輝度値(偏光成分L4の光強度)と直線偏光の振動面とのなす角度φとの関係(b)を示す図である。
【図8】正常パターンの反射画像の輝度値と欠陥パターンの反射画像の輝度値とのコントラストを示す図である。
【図9】偏光成分L3の大きさと、繰り返しパターン22のライン部2Aの線幅DAとの関係を説明する図である。
【図10】ピッチPが異なると共に、ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比が同じ繰り返しパターン22の一例を示す図である。
【図11】繰り返し方向が異なる繰り返しパターン25,26を説明する図である。
【図12】エッジ形状が非対称な繰り返しパターン22と直線偏光L1の入射方向との関係を示す図である。
【図13】波長選択フィルタの切替機構を説明する図である。
【図14】光源31からの光に含まれる輝線スペクトルの一例を示す図である。
【図15】撮像素子39の感度の波長特性を示す図である。
【図16】照明光L1の各波長の分光強度(補正前)を説明する図である。
【図17】撮像素子39による受光後の実効強度(補正前)を説明する図である。
【図18】波長選択フィルタ32の分光透過率の一例を示す図である。
【図19】撮像素子39による受光後の実効強度(補正後)を説明する図である。
【図20】パターンアライメント系の撮像視野領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
第1実施形態の表面検査装置10は、図1に示す通り、被検物体20を支持するステージ11と、パターンアライメント系12と、照明系13と、受光系14と、画像処理装置15と、アライメント系16と、搬送ステージ17とで構成される。
【0022】
被検物体20は、例えば半導体ウエハや液晶ガラス基板などである。被検物体20の表面(レジスト層)には、図2に示すように、複数のショット領域21が配列され、各ショット領域21の中に検査すべき繰り返しパターン22が形成されている。繰り返しパターン22は、配線パターンなどのライン・アンド・スペースのパターンであり、図3に示すように、複数のライン部2Aをその短手方向(X方向)に沿って一定のピッチpで配列したものである。隣り合うライン部2Aどうしの間は、スペース部2Bである。ライン部2Aの配列方向(X方向)を「繰り返しパターン22の繰り返し方向」という。
【0023】
第1実施形態の表面検査装置10は、半導体回路素子や液晶表示素子の製造工程において、被検物体20の表面に形成された繰り返しパターン22の欠陥検査を自動で行う装置である。この表面検査装置10には、表面(レジスト層)への露光・現像が終わった後の被検物体20が、不図示の搬送系によってカセットまたは現像装置から運ばれ、アライメントステージ17に吸着される。
【0024】
アライメントステージ17によって被検物体20を回転させながら、アライメント系16によって被検物体20の外縁部を照明し、外縁部に設けられた外形基準(例えばノッチ)の回転方向の位置を検出し、所定の位置でアライメントステージ17を停止させる。その後、被検物体20は不図示の搬送系によりステージ11に搬送され、ステージ11に吸着される。
【0025】
繰り返しパターン22の欠陥とは、繰り返しパターン22の構造(すなわちデューティ比や断面形状)の変化であり、図3に示すライン部2Aの線幅DAの変化(またはスペー
ス部2Bの線幅DBの変化)に相当する。なお、線幅DA,DBが変化してもピッチpは変わらない。このような欠陥は、繰り返しパターン22を形成する際の露光フォーカスのずれに起因し、被検物体20のショット領域21ごとに現れる。ステージ11は回転機構とチルト機構を併せ持ち、ステージ上の被検物体20を回転、及びチルトする。
【0026】
ステージ11は、被検物体20を上面に載置して例えば真空吸着により固定保持する。また、ステージ11には、被検物体20の表面に直交する軸(例えば表面の中心における法線1A)を中心に、被検物体20を回転させる機構が設けられる。この回転機構により、被検物体20の繰り返しパターン22の繰り返し方向(図2,図3のX方向)を、被検物体20の表面内で回転させることができる。
【0027】
さらに、ステージ11には図1の軸AXを中心に、被検物体20をチルトさせる機構が設けられる。軸AXは照明系13による照明光の入射面と直交し、被検物体20のほぼ表面内で且つ、被検物体20の中心を通る軸である。このチルト機構により被検物体20をチルトさせることが可能であり、被検物体20の検査の際に所定の角度にチルトする。
【0028】
被検物体20はステージ11に吸着された後、パターンアライメント系12により、回転方向のアライメントの微調整を行う。パターンアライメント系12は二つの撮像系を持ち(不図示)、図20に示す通り、それぞれが被検物体上の領域121と122の撮像を行う。撮像された二つの画像から画像処理によりパターンの回転量を求める。そして、回転量が閾値内になる様、ステージ11の回転で調整を行う。
【0029】
撮像時は、照明系13により被検物体20を照明する。ステージを水平にした状態で被検物体20からの正反射光が入射するよう、パターンアライメント系12が配置されている。そしてパターンアライメントの後、図1に示すように照明系13で被検物体20を照明した際に正反射光が受光系14に入射するよう、ステージ11は被検物体20をチルトする。
【0030】
照明系13は、光源31と波長選択フィルタ32とライトガイドファイバ33と偏光フィルタ34と補正板341と凹面反射鏡35とで構成された偏心光学系であり、ステージ11上の被検物体20の繰り返しパターン22を直線偏光L1により照明する。この直線偏光L1が、繰り返しパターン22に対する照明光である。直線偏光L1は、被検物体20の表面全体に照射される。また、偏光フィルタ34と補正板341は不図示の挿脱機構により光路に挿脱可能である。
【0031】
直線偏光L1の進行方向(被検物体20の表面上の任意の点に到達する直線偏光L1の主光線の方向)は、凹面反射鏡35の光軸O1に略平行である。光軸O1は、ステージ11の中心を通り、ステージ11の法線1Aに対して所定の角度θだけ傾けられている。ちなみに、直線偏光L1の進行方向を含み、ステージ11の法線1Aに平行な平面が、直線偏光L1の入射面である。図4の入射面3Aは、被検物体20の中心における入射面である。
【0032】
また、第1実施形態では、直線偏光L1がp偏光である。つまり、図5(a)に示すように、直線偏光L1の進行方向と電気(または磁気)ベクトルの振動方向とを含む平面(直線偏光L1の振動面)が、直線偏光L1の入射面(3A)内に含まれる。図1においては紙面内に振動している偏光である。直線偏光L1の振動面は、凹面反射鏡35の前段に配置された偏光フィルタ34の透過軸により規定される。
【0033】
なお、照明系13の光源31は、メタルハライドランプや水銀ランプなどの放電光源である。波長選択フィルタ32は、光源31からの光のうち所定波長の輝線スペクトルを選択的に透過する。ライトガイドファイバ33は、波長選択フィルタ32からの光を伝送する。偏光フィルタ34は、ライトガイドファイバ33の射出端近傍に配置され、その透過軸が所定の方位に設定され、透過軸に応じてライトガイドファイバ33からの光を直線偏光にする。凹面反射鏡35は、球面の内側を反射面とした反射鏡であり、前側焦点がライトガイドファイバ33の射出端と略一致し、後側焦点が被検物体20の表面と略一致するように配置され、偏光フィルタ34からの光を被検物体20の表面に導く。照明系13は、被検物体20側に対してテレセントリックな光学系である。なお、補正板341については後述する。
【0034】
上記の照明系13において、光源31からの光は、波長選択フィルタ32とライトガイドファイバ33と偏光フィルタ34と凹面反射鏡35とを介し、p偏光の直線偏光L1(図5(a))となって、被検物体20の表面全体に入射する。被検物体20の各点における直線偏光L1の入射角度は、互いに同じであり、光軸O1と法線1Aとの成す角度θに相当する。
【0035】
第1実施形態では、被検物体20に入射する直線偏光L1がp偏光(図5(a))であるため、図4に示す通り、被検物体20の繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)が直線偏光L1の入射面(3A)に対して角度φで設定された場合、被検物体20の表面における直線偏光L1の振動面の方向(図6のV方向)と、繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)との成す角度も、角度φに設定される。設定角度φは22.5度又は67.5度である。
【0036】
換言すると、直線偏光L1は、被検物体20の表面における振動面の方向(図6のV方向)が繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)に対して角度φ(22.5度または67.5度)傾いた状態で、繰り返しパターン22を斜めに横切るように繰り返しパターン22に入射する。
【0037】
このような直線偏光L1と繰り返しパターン22との角度状態は、被検物体20の表面全体において均一である。なお、22.5度を115.5度,205.5度,295.5度の何れかに言い換えても、また、67.5度を157.5度,247.5度,337.5度の何れかに言い換えても直線偏光L1と繰り返しパターン22との角度状態は同じである。
【0038】
このような角度の設定は、ステージ11の回転機構を用いて行われる。回転機構には例えばパルスモータが使われ、所定の回転角度に相当するパルス数を送ることで、上記の角度(以下「回転角φ」)に設定することができる。
【0039】
そして、上記の直線偏光L1を用いて繰り返しパターン22を照明すると、繰り返しパターン22から正反射方向に楕円偏光L2が発生する(図1,図5(b))。この場合、楕円偏光L2の進行方向が正反射方向に一致する。正反射方向とは、直線偏光L1の入射面(3A)内に含まれ、ステージ11の法線1Aに対して角度θ(直線偏光L1の入射角度θに等しい角度)だけ傾いた方向である。なお、上記の通り、繰り返しパターン22のピッチPが照明波長と比較して十分小さい為、繰り返しパターン22から回折光が発生することはない。
【0040】
なお、直線偏光L1が繰り返しパターン22により楕円化し、繰り返しパターン22から楕円偏光L2が発生する理由については、本出願人の国際公開公報WO2005/040776に詳細に記載されており、ここでの説明は省略する。
【0041】
また、図6の振動面の方向(V方向)と繰り返し方向(X方向)との成す角度φを22.5度または67.5度に設定するのは、繰り返しパターン22の欠陥検査の感度を高くするためであり、その理由を以下に説明する。
【0042】
前記国際公開公報において、本発明者等は図6の振動面の方向(V方向)と繰り返し方向(X方向)との成す角度φを45度に設定するのが望ましく、これは、正常パターンの反射画像の輝度値から欠陥パターンの反射画像の輝度値への低下率(欠陥パターンの反射画像の輝度値/正常パターンの反射画像の輝度値)は角度φによらず一定と考えられ、即ち、正常パターンの反射画像の輝度値から欠陥パターンの反射画像の輝度値への低下量(輝度差)は、傾き角度φが45度から外れるほど小さくなると考えられるため、と述べた。
【0043】
正常な繰り返しパターンの輝度値と回転角φとの関係は、回転角φが45度の時に輝度値が最も高くなる(理由については国際公開公報WO2005/040776に詳細を記載しており、ここでの説明は省略する)。
【0044】
しかし、角度φによって、(欠陥パターンの反射画像の輝度値(測定値))と(正常パターンの反射画像の輝度値(測定値))との比が異なることをつきとめ、コントラストが最大になるような角度φの条件で欠陥検査を行うことが最も感度よく評価できることがわかった。
【0045】
正常パターンの反射画像の輝度値(偏光成分L4の光強度)と、直線偏光の振動面とパターンとのなす角φとの関係(a)、及び欠陥パターンの反射画像の輝度値(偏光成分L4の光強度)と、直線偏光の振動面とパターンとのなす角φとの関係(b)を図7に示す。さらに、正常パターンの反射画像の輝度値と欠陥パターンの反射画像の輝度値とのコントラストを図8に示す。図8より角度φが22.5度、67.5度でコントラストが最大となることがわかる。
【0046】
ここで、コントラストとは、絶対値(1−〔(欠陥パターンの反射画像の輝度値(測定値))/(正常パターンの反射画像の輝度値(測定値))〕)をいう。なお、1は、(正常パターンの反射画像の輝度値(測定値))/(正常パターンの反射画像の輝度値(測定値))である。即ち、正常パターンの反射画像の輝度値(測定値)を1に正規化したものである。
【0047】
以下、例を示して説明する。
【0048】
(1)角度φ=45度において
正常パターンの反射画像の輝度値=100
欠陥パターンの反射画像の輝度値=80
の場合、
角度φ=45度のコントラストは、〔1(=100/100)−(80/100)〕=0.2
(2)角度φ=35度において
正常パターンの反射画像の輝度値=85
欠陥パターンの反射画像の輝度値=62.5
の場合、
角度φ=35度のコントラストは、〔1(=85/85)−(62.5/85)〕=0.26
(3)角度φ=30度において
正常パターンの反射画像の輝度値=70
欠陥パターンの反射画像の輝度値=45
の場合、
角度φ=30度のコントラストは、〔1(=70/70)−(45/70)〕=0.36
(4)角度φ=22.5度において
正常パターンの反射画像の輝度値=45
欠陥パターンの反射画像の輝度値=25
の場合、
角度φ=22.5度のコントラストは、〔1(=45/45)−(25/45)〕=0.44
(5)角度φ=15度において
正常パターンの反射画像の輝度値=20
欠陥パターンの反射画像の輝度値=15
の場合、
角度φ=15度のコントラストは、〔1(=20/20)−(15/20)〕=0.25
(6)角度φ=10度において
正常パターンの反射画像の輝度値=10
欠陥パターンの反射画像の輝度値=8
の場合、
角度φ=10度のコントラストは、〔1(=10/10)−(8/10)〕=0.2
【0049】
以上から角度φ=22.5度でのコントラストは、他の角度でのコントラストに比べて大きいといえる。なお、角度φ=45度を中心に対称な光強度を分布を示すので、角度φ67.5度のコントラストも最大になる。
【0050】
他には、次のように定義される。
【0051】
各角度φにおける正常パターンの反射画像の輝度値(測定値)が所定の輝度値(正常パターンの規格値(例えば、100))になるように、各角度φ毎に照明光量を調整あるいは画像撮像時間を調整した状態において、正常パターンの反射画像の輝度値を取得するとともに、各角度φ毎にそれと同じ照明光量又は画像撮像時間を用いて欠陥パターンの反射画像の輝度値を取得する(欠陥パターンの規格値)。
【0052】
これらの各角度φの正常パターンの規格値と欠陥パターンの規格値との差の絶対値をコントラストと定義してもよい。
【0053】
次に、受光系14の説明を行う。受光系14は、図1に示すように、凹面反射鏡36と結像レンズ37と偏光フィルタ38と補正板381と撮像素子39とで構成された偏心光学系である。偏光フィルタ38と補正板381は不図示の挿脱機構により光路に挿脱可能である。
【0054】
凹面反射鏡36は、上記した照明系13の凹面反射鏡35と同様の反射鏡であり、その光軸O2が、ステージ11の中心を通り、かつ、ステージ11の法線1Aに対して角度θだけ傾くように配置されている。(換言すれば、照明系13の光軸O1と受光系14の光軸O2が両方ともステージ11の法線1Aに対して角度θになる様ステージ11がチルトする)したがって、繰り返しパターン22からの楕円偏光L2は、凹面反射鏡36の光軸O2に沿って進行することになる。凹面反射鏡36は、楕円偏光L2を反射して結像レンズ37の方に導き、結像レンズ37と協働して撮像素子39の撮像面に集光する。また、凹面反射鏡36で反射する前後の光軸の成す面は入射面と直交している(図は平行である)。
【0055】
ただし、結像レンズ37と凹面反射鏡36との間には、偏光フィルタ38が配置されている。偏光フィルタ38の透過軸の方位は、上記した照明系13の偏光フィルタ34の透過軸に対して直交するように設定されている(クロスニコル(直交ニコル)の状態)。したがって、偏光フィルタ38により、楕円偏光L2の図5(c)の偏光成分L3に相当する偏光成分L4(図1)のみを抽出して、撮像素子39に導くことができる。
【0056】
言い換えれば、被検物体20で反射した楕円偏光L2のうち、s偏光成分のみを抽出する。s偏光とは振動面が入射面に垂直な直線偏光で、図1においては紙面と垂直方向に振動している。そして撮像素子39の撮像面には、偏光成分L4(s偏光成分)による被検物体20の反射像が形成される。なお、補正板381については後述する。
【0057】
撮像素子39は、例えばCCD撮像素子などであり、撮像面に形成された被検物体20の反射像を光電変換して、画像信号を画像処理装置15に出力する。被検物体20の反射像の明暗は、偏光成分L4の光強度(図5(c)の偏光成分L3の大きさ)に略比例し、繰り返しパターン22の形状(ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比)に応じて変化する(図9参照)。被検物体20の反射像が最も明るくなるのは、繰り返しパターン22が理想的な形状(体積比が1:1)の場合である。なお、被検物体20の反射像の明暗は、ショット領域ごとに現れる。
【0058】
画像処理装置15は、撮像素子39から出力される画像信号に基づいて、被検物体20の反射画像を取り込む。なお、画像処理装置15は、比較のため、回転角φが、22.5度又は67.5度で取得した良品ウエハの反射画像を予め記憶している。良品ウエハとは、繰り返しパターン22が理想的な形状(体積比が1:1)で表面全体に形成されたものである。したがって、画像処理装置15は、被検物体である被検物体20の反射画像を取り込むと、その輝度情報を良品ウエハの反射画像の輝度情報と比較する。
【0059】
そして、良品ウエハの反射画像の輝度値と被検物体20の反射画像の輝度値とのコントラストに基づいて、繰り返しパターン22の欠陥(ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比の変化)を検出する。例えば、輝度値のコントラストが予め定めた閾値(許容値)より大きければ「欠陥」と判定し、閾値より小さければ「正常」と判断すればよい。
【0060】
なお、画像処理装置15においては、上記のように、良品ウエハの反射画像を予め記憶しておく構成の他、ウエハのショット領域の配列データと輝度値の閾値を予め記憶しておく構成でもよい。この場合、ショット領域の配列データに基づいて、取り込まれたウエハの反射画像中における各ショット領域の位置が分かるので、各ショット領域の輝度値を求める。そして、その輝度値と記憶されている閾値とを比較することにより、パターンの欠陥を検出する。閾値より輝度値が小さいショット領域を欠陥と判断すればよい。
【0061】
さらに、被検物体20のショット領域21ごとの繰り返しパターンの配置は同様であるため、良品のショット領域21を特定し、その輝度値を基準に欠陥検出を行ってもよい。被検物体20の画像の輝度値と限界サンプルの画像の輝度値とを比較してもよい。シミュレーションで輝度値の基準を決定し、その基準値との比較によって繰り返しパターン22の欠陥を検出してもよい。良品ウエハを用いない場合、全面良品の専用ウエハを作る必要がなくなるという利点がある。
【0062】
また、22.5度の画像と67.5度の画像の両方を撮像してそれぞれの画像に対して検査を行い、ANDやORを取って最終的な欠陥の有無を判断しても良い。
【0063】
上記したように、第1実施形態の表面検査装置10によれば、直線偏光L1を用い、図6の振動面の方向(V方向)が繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)に対して傾いた状態で、繰り返しパターン22を照明すると共に、正反射方向に発生した楕円偏光L2のうち、偏光成分L4の光強度(図5(c)の偏光成分L3の大きさ)に基づいて、繰り返しパターン22の欠陥を検出するため、照明波長と比較して繰り返しパターン22のピッチPが十分小さくても、確実に欠陥検査を行うことができる。つまり、照明光である直線偏光L1を短波長化しなくても、確実に繰り返しピッチの微細化に対応できる。
【0064】
さらに、第1実施形態の表面検査装置10では、図6の振動面の方向(V方向)と繰り返し方向(X方向)との成す角度φを22.5度または67.5度に設定したことにより、良品ウエハの反射画像の輝度値と被検物体20の反射画像の輝度値とのコントラストを大きく捉えることができ、繰り返しパターン22の欠陥検査を高感度で行うことができる。
【0065】
また、第1実施形態の表面検査装置10では、照明波長と比較して繰り返しパターン22のピッチPが十分小さい場合に限らず、繰り返しパターン22のピッチPが照明波長と同程度でも、照明波長より大きい場合でも、同様に繰り返しパターン22の欠陥検査を行うことができる。つまり、繰り返しパターン22のピッチPに拘わらず、確実に欠陥検査を行うことができる。繰り返しパターン22による直線偏光L1の楕円化は、繰り返しパターン22のライン部2Aとスペース部2Bとの体積比に依存して起こるものであり、繰り返しパターン22のピッチPに依存しないからである。
【0066】
さらに、第1実施形態の表面検査装置10では、繰り返しパターン22のライン部2Aとスペース部2Bとの体積比が同じであれば、反射画像の輝度値の低下量(図9の低下量Δ)が等しくなる。このため、繰り返しパターン22のピッチPに拘わらず、体積比の変化量が同じであれば、同じ感度で、その検出を行うことができる。例えば、図10(a),(b)に示す繰り返しパターン22のように、ピッチPが異なり、ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比が同じ場合、同じ感度で欠陥検査を行える。また、図10(a),(b)の比較から分かるように、ピッチPが小さいほど、微細な形状変化(ライン部2Aの線幅DAの設計値からのずれ量δ)を確実に検出することができる。
【0067】
さらに、第1実施形態の表面検査装置10では、照明系13の光源31として放電光源を用いることができ、表面検査装置10の全体構成が安価で簡素なものとなる。また、第1実施形態の表面検査装置10では、被検物体20の表面に複数種類の繰り返しパターンが形成され、ピッチPや繰り返し方向(X方向)の異なる繰り返しパターンが混在している場合でも、被検物体20の表面全体の反射画像を一括で取り込み、各々の箇所における輝度値のコントラストを調べるだけで、全ての繰り返しパターンの欠陥検査を簡単に行うことができる。ちなみに、繰り返し方向の異なる繰り返しパターンは、図11に示すように、0度方向の繰り返しパターン25と90度方向の繰り返しパターン26とである。これらの繰り返しパターン25,26は、互いに、繰り返し方向(X方向)が90度異なっている。
【0068】
しかし、各々の繰り返し方向(X方向)と直線偏光L1の振動面の方向(V方向)との成す角度は、22.5度或いは67.5度である。
【0069】
さらに、第1実施形態の表面検査装置10では、被検物体20の表面に対して直線偏光L1を斜めに入射させるため(図1参照)、繰り返しパターン22のライン部2Aのエッジ形状の非対称性(例えばエッジ形状の崩れの方向性)に関わる欠陥情報も得ることができる。このためには、ステージ11により被検物体20の繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)を180度回転させ、その前後の状態で被検物体20の反射画像を取り込み、同じ箇所の輝度差を調べることになる。
【0070】
図12には、エッジ形状が非対称な繰り返しパターン22と直線偏光L1の入射方向との関係を図示した。例えば、図12(a)は180度回転前の状態であり、ライン部2AのエッジE1,E2のうち崩れたエッジ(E1)側から照明光が入射される。図12(b)は180度回転後の状態であり、2つのエッジE1,E2のうち崩れていないエッジ(E2)側から照明光が入射される。そして、各々の状態で取り込んだ反射画像の輝度値は、入射方向にあるエッジE1,E2のエッジ形状を反映したものとなり、この例では図12(a)の場合の方が反射画像の輝度値が大きくなる。したがって、180度回転させる前後の反射画像の輝度差を調べることにより、ライン部2Aのエッジ形状の非対称性が分かる。180度回転させる前後の反射画像を合成して欠陥検査を行ってもよい。
【0071】
なお、第1実施形態のように、被検物体20の表面に対して直線偏光L1を斜めに入射させる場合(図1参照,入射角度θ)、繰り返しパターン22から発生する楕円偏光L2(図5(b))は、厳密に言えば、その進行方向を軸として僅かに回転している。また、偏光成分L1及び楕円偏光L2は凹面鏡35、36で反射する際にも僅かに回転する。反射の際の回転は反射面内で一様でない。このため、その回転角度を考慮して、受光系14の偏光フィルタ38の透過軸の方位を微調整することが好ましい。
【0072】
微調整後の状態では、2つの偏光フィルタ34,38の透過軸の方位が正確な90度ではなくなるが、このような角度も“垂直(または直交)”の範疇であり、クロスニコルの状態と言える。偏光フィルタ38の透過軸の方位を微調整することにより、検査精度を向上させることができる。
【0073】
微調整の方法としては、例えば、繰り返しパターンの無い表面で直線偏光L1を反射させて画像を取り込み、画像の輝度値が最も小さくなるように、偏光フィルタ38の透過軸の方位を回転させることが考えられる。また、補正板を偏光フィルタ34、38と凹面鏡35、36の間に挿入して更に微調整することが可能である。その為、図1の装置では補正板341、381を偏光フィルタ34、38と凹面鏡35、36の間に挿入している。補正板としては例えばガラスの平行平面板でその表面にガラスと同等の屈折率の保護膜を付けた物を用い、光路に斜めに挿入し、傾斜角度を調整することで、凹面鏡による回転を補正することが出来る。
【0074】
また、上記した第1実施形態では、直線偏光L1がp偏光である例を説明したが、本発明はこれに限定されない。p偏光ではなくs偏光にしても良い。このため、図4に示す通り、被検物体20の繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)が直線偏光L1であるs偏光の入射面(3A)に対して22.5度または67.5度の角度に設定された場合、被検物体20の表面におけるs偏光の振動面の方向と、繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)との成す角度も、22.5度または67.5度に設定される。なお、p偏光は、繰り返しパターン22のライン部2Aのエッジ形状に関わる欠陥情報を取得するのに有利である。s偏光は、被検物体20の表面の欠陥情報を効率よく捉えて、SN比を向上させるのに有利である。
【0075】
さらに、p偏光やs偏光に限らず、振動面が入射面に対して任意の傾きを持つような直線偏光でも構わない。この場合、繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)を直線偏光L1の入射面に対して22.5度または67.5度以外の角度に設定し、被検物体20の表面における直線偏光L1の振動面の方向と、繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)との成す角度を、22.5度または67.5度に設定することが好ましい。
【0076】
なお、照明光L1の波長λについては、被検物体20の反射防止膜(ARC)の吸収帯に含まれる波長を選択することがより好ましい。この場合、反射防止膜での吸収によって下地に到達する光量が減衰するため、表面と下地との分離に有利となる。このような波長選択は、検査レシピから波長λに関わる情報を読み出し、波長選択フィルタ32を切り替えて行えばよい。
【0077】
(第2実施形態)
ここでは、照明光L1が複数の異なる波長の光を含む例について説明する。複数の波長とは、複数の輝線スペクトルのように離散的な波長でも構わないし、ブロードな波長帯域のように連続的な波長でも構わない。以下の説明では、照明光L1が複数の異なる波長の輝線スペクトルを含むとする。
【0078】
複数の輝線スペクトルの各波長λは、波長選択フィルタ32を切り替えて適宜選択し、被検物体20の反射防止膜の吸収帯に含まれる波長を選択することがより好ましい。波長選択フィルタ32の切り替え機構としては、例えば図13に示す通り、透過帯域の異なる複数の波長選択フィルタ32を円盤状のターレット38に取り付け、ターレット38を不図示のモータなどの駆動機構により回転させる構成が考えられる。
【0079】
光源31からの光が例えば図14に示すような多数の輝線スペクトル(e線など)を含む場合、透過帯域αの波長選択フィルタ32を光路上に配置すれば、e線(546nm),g線(436nm),h線(405nm)の3つの輝線スペクトルを選択的に透過し、照明光L1として被検物体20に照射できる。さらに、透過帯域βの波長選択フィルタ32に交換すれば、g線,h線,i線(365nm)の3つの輝線スペクトルを選択的に透過し、また、透過帯域γの波長選択フィルタ32に交換すれば、h線,i線,j線(313nm)の3つの輝線スペクトルを選択的に透過し、被検物体20に照射することができる。
【0080】
そして、照明光L1が複数の輝線スペクトルを含む場合には、各波長λの輝線スペクトルにより被検物体20から楕円偏光L2が発生し、各波長λの楕円偏光L2のうち、偏光成分L4の光強度が撮像素子39の撮像面において合成される。また、撮像素子37から画像処理装置15に出力される画像信号は、各波長λの偏光成分L4の合成後の光強度に関わる情報となる。この場合、画像処理装置15は、合成後の光強度に基づいて繰り返しパターン22の欠陥検査を行うことになる。
【0081】
被検物体20の下地に膜厚ムラがある場合、この膜厚ムラを反映した干渉縞(下地での干渉による明暗の模様)が、検査すべき表面からの偏光成分L4(信号光)による反射像に重なってしまうと、表面の繰り返しパターン22の欠陥を検出し難くなる。照明光L1が単一波長の場合、下地の膜厚ムラを反映した干渉縞が発生すると、この干渉縞が表面の反射像に重なってしまい、良好な欠陥検査を行うことができない。
【0082】
しかし、本実施形態の表面検査装置では、照明光L1が複数の輝線スペクトルを含むため、下地の膜厚ムラを反映した干渉縞が発生しても、各波長λごとに干渉縞の状態(形状)が異なり、各波長λの干渉縞の光強度が合成されて明暗の模様を打ち消し合う。つまり、下地の膜厚ムラを反映した干渉縞の影響を軽減することができる。
【0083】
正常部分の反射画像の輝度値と欠陥部分の反射画像の輝度値とのコントラストが波長に依存して異なる場合は、正常部分の反射画像の輝度値と欠陥部分の反射画像の輝度値とのコントラストが比較的大きく、かつ波長毎に生じる干渉縞を相殺して、下地の膜厚ムラの影響を軽減するような波長帯域を波長選択フィルタにより選択すればよい。
【0084】
このように、複数の輝線スペクトルを含む照明光L1によって被検物体20を照明することで、下地に膜厚ムラがある場合でも、その膜厚ムラの影響を低減して表面の繰り返しパターン22の欠陥検査を良好に行うことができる。さらに、複数の基線スペクトルを含むため、コントラストの低い波長に対してもコントラストの高い波長で補える。照明光L1に含まれる複数の波長が離散的な場合に限らず、連続的な場合にも同様の効果を得ることができる。
【0085】
また、下地の膜厚ムラの影響を低減できるので、被検物体20の各ショット領域21(図2)において繰り返しパターン22の形成箇所が面積的に小さい(下地の露出箇所が面積的に大きい)プロセスの欠陥検査にも有効である。
【0086】
さらに、撮像素子39の感度は一般に各波長λごとに異なり、例えば図15に示す通り、500nm付近の波長に対する感度が最も高く、それより短波長側や長波長側では感度が低下する。図15では一例として400〜550nmの範囲の感度を示した。このような撮像素子39の感度の波長特性に応じて、照明光L1の各波長の光強度を調整することで、下地の膜厚ムラの影響をより効果的に低減することができる。
【0087】
ここで、光源31からの光のうち、図15の波長範囲に含まれる輝線スペクトル(図14のe線,g線,h線)を例に、照明光L1の各波長の光強度の調整について説明する。波長選択フィルタ32によってe線,g線,h線を選択的に透過する際、波長選択フィルタ32の透過帯域における分光透過率が一定であると、照明光L1に含まれるe線,g線,h線の分光強度は例えば図16のようになる。
【0088】
この場合、照明光L1が照射されたときに被検物体20から発生する楕円偏光L2の各波長λ(e線,g線,h線)の分光感度は図16と同様になるが、これを図15に示す感度特性の撮像素子39によって受光すると、受光後のe線,g線,h線の分光強度(以下「実効強度」)は、図17に示す通り、短波長側で低くなってしまう。このため、下地の膜厚ムラを反映した各波長λの干渉縞の打ち消し合いが、短波長側で不十分となってしまう。
【0089】
そこで、撮像素子39の感度の波長特性(図15)を考慮し、波長選択フィルタ32の透過帯域αにおける分光透過率を、図18に示す通り、500nm付近で低く、それより短波長側や長波長側では高くなるように設定する。この場合、波長選択フィルタ32の分光透過率(図18)に応じて、照明光L1の各波長λ(e線,g線,h線)の光強度が調整され、撮像素子39による受光後の実効強度を、図19に示す通り、各波長λ(e線,g線,h線)ごとに一定とすることができる。
【0090】
したがって、下地の膜厚ムラを反映した各波長λの干渉縞を十分に打ち消し合うことができ、下地の膜厚ムラの影響をより効果的に低減することができる。撮像素子39による受光後の実効強度を各波長λごとに一定とすれば、下地の膜厚ムラの影響を最も効果的に低減できるが、本発明はこれに限定されない。受光後の実効強度が各波長λごとに一定でなくても、撮像素子39の感度の波長特性を補正するように照明光L1の各波長λの光強度を調整すれば、下地の膜厚ムラの影響の低減効果を高めることができる。
【0091】
なお、波長選択フィルタ32で選択する波長帯域(図14)は、上記した波長帯域α,β,γに限定されない。膜厚ムラの影響を低減できる波長であれば、j線より短い波長帯域(例えば240nm〜313nm)の光を用いてもよいし、e線より長い波長帯域の光を用いてもよい。また、照明光L1に含まれる波長の数も上記のような3つに限らず、2つでも4つ以上でもよい。更に、膜厚ムラの影響が無くてもコントラストのつきにくい波長については波長選択フィルタで選択する波長から除外しても構わない。
【0092】
(変形例)
上記の実施形態では波長選択フィルタ32で複数の波長の光を同時に選択し、複数の波長による偏光成分の合成画像を得たが本発明はこれに限定されない。波長が異なる単一波長の画像をそれぞれ取得し、それらを画像処理により合成することでも下地の膜厚ムラの影響を低減することが出来る。この時は撮像素子の感度に応じて各波長の画像輝度値に所定の係数を乗じた後に合成を行えばよい。
【0093】
正常部分の反射画像の輝度値と欠陥部分の反射画像の輝度値とのコントラストが波長に依存して異なる場合は、正常部分の反射画像の輝度値と欠陥部分の反射画像の輝度値とのコントラストが比較的大きく、かつ波長毎に生じる干渉縞を相殺して、下地の膜厚ムラの影響を軽減するように各波長の画像輝度値に所定の係数を乗じた後に合成を行えばよい。
【0094】
また、上記の実施形態では、ステージ11がチルト機構を持つ例で説明したが、本発明はこれに限定されない。チルト機構を持たずに正反射光を受光する構成にすればチルト機構がない分、装置構成が簡素となる。
【0095】
また、上記実施形態の様にステージ11のみがチルト機構を持つ構成に限定されない。照明系13と受光系14と被検物体20との少なくとも2つを、それぞれ上記のチルト軸を中心に回転させてもよい。このような構成とすれば、被検物体20に対する照明光L1の入射角θを変化させることができ、入射角θの変化によって反射率が変わるため、被検物体20の表面の変化をより捉えやすくすることが可能となる。
【0096】
また、上記実施形態ではステージの回転により被検物体を回転させているが、本発明はこれに限定されない。照明光の入射面とパターンの成す角度が相対的に回転していれば良く、ステージ11の法線を中心に照明系13と受光系14が回転する構成でも良い。
【0097】
また、上記実施形態ではステージ11がチルト機構を持つ為、回折光を利用した検査も可能となる。その場合はパターンの繰り返し方向が0度になる様ステージ11を回転し、また、回折光が受光系14に入射するよう、適宜ステージ11をチルトすれば良い。回折光検査の時、偏光板および補正板は検査するパターンに応じて適宜挿脱機構により出し入れを行えばよい。
【0098】
また、上記実施形態では繰り返しパターンについて述べたが、ロジックウエハなどの繰り返しパターンが殆ど存在しないものについても本発明が適用される。ロジック回路を形成するパターンは基本的に直線であり、直線の方向は上記繰り返しパターンと同等の方向となる為、照明した直線偏光が楕円偏光に変化する作用は繰り返しパターンもロジックのパターンも同等と考えられるからである。この場合はパターンの直線方向に対して照明光の入射面が所定の角度になる様、ステージを回転させればよい。
【0099】
また、上記した実施形態では、撮像素子39としてCCDなどの2次元センサを用いたが、1次元センサを用いても良い。この場合、撮像素子である1次元センサと被検物体である半導体ウエハ(または液晶基板)を載せたステージとを相対移動させ、1次元センサが半導体ウエハ(または液晶基板)の表面全体を走査するようにして、その表面全面の画像を取り込むようにすればよい。
【0100】
また、半導体ウエハ製造における各工程ごとに、どの波長が膜厚ムラ、或いは正常なパターンとデフォーカスパターンとのコントラストの大小に関係するかを正常なパターンとデフォーカスパターンが混在するテストウエハを用いて予めその関係を求めておき、各工程の検査時に先に求めた関係から最適な条件を設定するのが望ましい。
【符号の説明】
【0101】
10…表面検査装置、11…ステージ、12…パターンアライメント系、13…照明系、14…受光系、15…画像処理装置、16…アライメント系、20…半導体ウエハ、21…チップ領域、22,25,26…繰り返しパターン、31…光源、32…波長選択フィルタ、33…ライトガイドファイバ、34,38…偏光フィルタ、341,381…補正板、35,36…凹面反射鏡、37…結像レンズ、39…撮像素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物を照射光で照射する照射光学系と、
複数の波長についてそれぞれ所定の透過特性を有し、被検物を照射する光路中に配置されるフィルタと、
被検物で反射した照射光を所定の波長範囲で検出する検出部を備え、
前記フィルタの透過特性が、前記検出部の前記波長範囲内の感度特性に応じている検査装置。
【請求項2】
前記照射光を発生する光源部を有し、
該光源部は複数の輝線スペクトルを発生する請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記検出部は2次元撮像素子を含む請求項1または請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
被検物を照射する光路中に配置される第一の偏光部材と、
前記被検物で反射し検出部に至る光路中に配置される第二の偏光部材と備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記被検物の表面に垂直な軸周りに該被検物を回動する回動部を備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項1】
被検物を照射光で照射する照射光学系と、
複数の波長についてそれぞれ所定の透過特性を有し、被検物を照射する光路中に配置されるフィルタと、
被検物で反射した照射光を所定の波長範囲で検出する検出部を備え、
前記フィルタの透過特性が、前記検出部の前記波長範囲内の感度特性に応じている検査装置。
【請求項2】
前記照射光を発生する光源部を有し、
該光源部は複数の輝線スペクトルを発生する請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記検出部は2次元撮像素子を含む請求項1または請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
被検物を照射する光路中に配置される第一の偏光部材と、
前記被検物で反射し検出部に至る光路中に配置される第二の偏光部材と備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記被検物の表面に垂直な軸周りに該被検物を回動する回動部を備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−154941(P2012−154941A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87340(P2012−87340)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2008−524772(P2008−524772)の分割
【原出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2008−524772(P2008−524772)の分割
【原出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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