説明

検針データ収集システム

【課題】自動検針システムにおいて、コストを抑制する。
【解決手段】各需要家Hに設置された計量器端末Uがマルチホップ無線通信ネットワークを構成して、検針データをサーバ装置1Aへ送信するにあたって、各計量器端末Uが無線LANでの通信を行うようにするとともに、その通信モードを、アドホックモードとインフラストラクチャモードとのいずれのモードにもフレーム単位で対応可能として、識別符号を付す一方、ネットワークの終端には、検針データを収集するサーバ装置1Aと無線LANサービスのサーバ装置1Bとへ専用の有線ネットワーク4を有するゲートウェイ3を設け、当該ゲートウェイ3が、前記識別符号からデータを振り分ける。したがって、セキュリティを確保しつつ、無線LANの大容量の伝送容量を使用して、検針モードで余剰分の伝送容量を無線LANサービスに開放して、コストを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積算電力量計などの各需要家に設置された多数の計量器端末がネットワークを構成して、その検針データを予め定める時間毎(定時検針)や予め定める事象(停電等)の発生時点などにマルチホップ無線通信によってサーバ装置へ送信し、収集することで、自動検針を実現するようにしたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気、ガス、水道の検針データ等を前記計量器端末からマルチホップ無線通信によってサーバ装置に定期的に吸い上げるようにした典型的な従来技術が、特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−187793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、無線システムに、PHS(Personal Handyphone System)のトランシーバモードが用いられている。したがって、データ伝送容量が小さく、検針の密度を上げたり、送信すべき情報を増加させたり(ダイアグ情報や負荷情報)、収容端末数を増加させたりするのに制限が生じる。また、サーバ装置から各端末までホップの経路が定まっており、経路途中の端末の故障などに弱いという問題もある。
【0005】
一方、近年の無線通信技術の進歩に伴い、前記無線システムに無線LANを用いることが非常に有望である。それによれば、汎用のチップを使用して、極めて安価にシステムを構成することができるとともに、データ伝送容量が大きく、また障害時は迂回ルートを自動的に探索する等の多くの特徴を持たせることができる。
【0006】
ところで、通常、無線LANは、規格にもよるけれども、屋外設置の基地局(アクセスポイント)と、宅内設置の端末との間のように、比較的遠距離で通信を行うシステムの場合には、前記基地局(アクセスポイント)は、電柱や高い建物等に設置され、各戸の端末との間は、前記遠距離での通信となる。したがって、建物の影やノイズなど、通信品質を大きく損なう要素がそれらの間に存在する。これに対して、前記のように無線LANを用いるようにした自動検針システムにおいて、その大容量の伝送容量を使用して、余剰分の伝送容量を一般の無線LANサービスに開放すると、各戸に設置された計量器端末が、無線LAN端末に至近で、多数の基地局(アクセスポイント)となり、極めて高い品質のサービスを提供できるものと期待される。
【0007】
しかしながら、各計量器端末をインターネットのTCP/IPプロトコルに対応させ、検針のサーバ装置がインターネット経由で検針のデータを受取るようにした場合、一般のインターネット回線の障害などによってデータを受取れない可能性がある。また、一般のインターネット回線を使用した場合、外部からの不正なアクセスの機会が増し、検針データ収集システムの信頼性が低下する。前記電気、ガス、水道等は重要なライフラインであり、その管理が脆弱になる可能性があると、検針データ収集システムを保有する側は、上述のような極めて高い品質のサービスの提供を期待できても、汎用の無線LANサービスを提供することは困難であり、結果として、検針データ収集システムが高価になるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、検針データ収集システムに独立性を確保した上で無線LANサービスを展開することで、コストを抑えることができる検針データ収集システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の検針データ収集システムは、各需要家に設置された計量器端末と、前記計量器端末と無線通信ネットワークで接続され、前記各計量器端末から検針データがマルチホップ方式で送信されるゲートウェイと、前記ゲートウェイと有線ネットワークを介して接続される第1および第2のサーバ装置と、前記計量器端末と無線通信ネットワークで接続される他用途の端末とを備え、前記各計量器端末は、無線LAN規格での通信を行う無線通信部と、フレーム単位でアドホックモードとインフラストラクチャモードとに対応可能であり、自機で発生した検針データには前記アドホックモードに対応した識別符号を、前記無線通信部においてインフラストラクチャモードで受信した前記他用途の端末からのデータには前記インフラストラクチャモードに対応した識別符号を、それぞれ付して前記無線通信部からアドホックモードで送信させるとともに、前記無線通信部において受信された識別符号付きのデータはそのまま前記アドホックモードで転送させる通信制御部とを備え、前記ゲートウェイは、前記識別符号を判読して、前記検針データを第1のサーバ装置へ、前記他用途の端末からのデータを第2のサーバ装置へ転送することを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、各需要家に設置された計量器端末がマルチホップ無線通信ネットワークを構成して、その検針データを予め定める時間毎や予め定める事象の発生時点などにサーバ装置へ送信し、収集することで、自動検針などを実現するようにしたシステムにおいて、前記各計量器端末は、無線LAN規格での通信を行うようにするとともに、その無線LANの大容量の伝送容量を使用して、余剰分の伝送容量を無線LANサービスに開放する。具体的には、前記無線LANで無線通信を行う無線通信部は、主に端末間通信用のアドホックモードと、基地局−端末間通信用のインフラストラクチャモードとに切換え使用可能となっており、これらのいずれかに通信モードを固定するのではなく、通信制御部が、フレーム単位でいずれのモードのデータにも対応可能とする。そして、前記通信制御部は、自機で発生した検針データには前記アドホックモードに対応した識別符号を、前記無線通信部においてインフラストラクチャモードで受信した当該システム以外の他用途の(前記無線LANサービスの)端末からのデータにはそのインフラストラクチャモードの識別符号をそれぞれ付して前記無線通信部からアドホックモードで送信させるとともに、前記無線通信部において受信された識別符号付きのデータはそのまま前記アドホックモードで転送させる。
【0011】
一方、無線通信ネットワークの終端には、前記検針データを収集する第1のサーバ装置と、無線LANサービスの第2のサーバ装置とへ、それぞれ専用の有線ネットワークを有するゲートウェイが設けられており、当該ゲートウェイは、前記識別符号を判読して(VLAN等で論理分割し)、前記検針データと他用途の(無線LANサービスの)データとを前記フレーム単位で振り分けて、それぞれのサーバ装置へ転送する。
【0012】
したがって、各計量器端末の検針データをマルチホップ無線通信によって収集するシステムに、無線LANを使用して、前記のように余剰分の伝送容量を無線LANサービスに開放しても、検針システムと無線LANサービスシステムとは、それぞれ別個のネットワークとして機能させることができ、セキュリティや運用性を向上することができる。また、各需要家に設置される計量器端末を無線LANの基地局(アクセスポイント)として併用するので、無線LANサービスを開始するにあたって専用の基地局を設ける必要がなく、コストを大幅に削減することができるとともに、特に都市部では、各無線LAN端末から見える(通信可能な)基地局(アクセスポイント)が多数存在し(たとえば、自宅の計量器端末だけでなく、隣家の計量器端末が窓越しに見える)、高い通信品質を得ることができる。こうして、構築した検針システムに、高い品質の無線LANサービスを併せて提供可能にし、結果的に検針システムのコストを大幅に抑制することができる。
【0013】
また、本発明の検針データ収集システムでは、前記通信制御部は、無線LAN規格およびEthernet規格におけるMACフレームのタイプフィールドに前記識別符号を埋込むことを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、無線LAN規格(IEEE802.11)およびEthernet(登録商標)規格(IEEE802.3)におけるMACフレームにおいて、通常では使用されないタイプフィールドに前記識別符号を埋込むので、特に前記識別符号を付加するために新たなフィールドを定義する必要はない。
【0015】
さらにまた、本発明の検針データ収集システムでは、前記通信制御部は、無線LAN規格におけるWDSフレームのLLCヘッダおよびEthernet規格におけるMACフレームのタイプフィールドに前記識別符号の一部を、それぞれのデータヘッダに設けた回線番号に前記識別符号の残余の部分を埋込むことを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、無線通信部は、上述のように、無線LAN規格(IEEE802.11)の内、主に端末間通信用のアドホックモードと、基地局−端末間通信用のインフラストラクチャモードとを使用して通信を行うけれど、その無線LAN規格で使用するデータフレームを、主に基地局−基地局間通信用のWDS(無線ディストリビューションシステム)フレームを使用する。具体的には、前記WDSフレームのLLCヘッダに前記識別符号の一部であるアドホックモードとインフラストラクチャモードとのいずれであるかの識別符号を、データヘッダに設けた回線番号に前記識別符号の残余の部分である具体的にどのようなサービスであるのかの細かな情報を埋込む。これに対応して、Ethernet規格側では、MACフレームのタイプフィールドに前記識別符号の一部を、データヘッダに設けた回線番号に前記識別符号の残余の部分を埋込む。
【0017】
したがって、無線LANであまり使用されない基地局、すなわちアクセスポイント同士の通信に主に用いられるWDSフレームを使用して、本発明の検針データ収集システム以外の他の基地局、すなわちアクセスポイントが反応しないようにすることができる。なお、無線LANでのデータのフレーム構成には、WDSフレームを使用するけれども、各計量器端末は前述のようにアドホックモードでデータの転送を行ってゆく。このような設定は、アドホックレイヤを規定することで実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の検針データ収集システムは、以上のように、各需要家に設置された計量器端末が、その検針データをマルチホップ無線通信によってサーバ装置へ送信し、収集するシステムにおいて、前記各計量器端末の無線通信部が、無線LAN規格での通信を行うようにするとともに、主に端末間通信用のアドホックモードと、基地局−端末間通信用のインフラストラクチャモードとのいずれかに通信モードを固定するのではなく、フレーム単位でいずれのモードのデータにも対応可能とし、検針データと、他用途の(前記無線LANサービスの)データとに、それぞれ異なる識別符号を付加して、有線ネットワークとのゲートウェイで振り分けを行い、それぞれのサーバ装置へ転送する。
【0019】
それゆえ、検針システムと無線LANサービスシステムとを、それぞれ別個のネットワークとして機能させることができ、無線LANの大容量の伝送容量を使用して、検針システムで余剰分の伝送容量を無線LANサービスに開放しても、セキュリティや運用性を向上することができる。また、各需要家に設置される計量器端末を無線LANの基地局として併用するので、無線LANサービスを開始するにあたって専用の基地局を設ける必要がなく、コストを大幅に削減することができるとともに、特に都市部では、各無線LAN端末から見える基地局が多数存在し、高い通信品質を得ることができる。こうして、構築した検針システムに、高い品質の無線LANサービスを併せて提供可能にし、結果的に検針システムのコストを大幅に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の一形態に係る検針データ収集システムの概略的構成を示すブロック図である。
【図2】前記検針データ収集システムの論理構成を説明するための図である。
【図3】前記検針データ収集システムにおける各計量器端末の構成を示すブロック図である。
【図4】無線LANとEthernetとのMACフレーム構成を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の一形態の検針データ収集システムにおける通信の態様を詳しく説明するための図である。
【図6】前記図5に対応して、前記図4で示すMACフレームにおけるアドレスデータおよび識別符号の変化を具体的に示す表である。
【図7】本発明の実施の他の形態の無線LANとEthernetとのフレーム構成を説明するための図である。
【図8】前記図5に対応して、前記図7で示すフレームにおけるアドレスデータおよび識別符号の変化を具体的に示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の一形態に係る検針データ収集システムの概略的構成を示すブロック図である。この検針データ収集システムは、各需要家H1,H2,・・・(総称するときは、以下参照符号Hで示す)にそれぞれ設置された計量器端末U1,U2,・・・(総称するときは、以下参照符号Uで示す)が、動的に、すなわち常時周囲を見渡し、自律的に一番好ましルートに切替えてマルチホップ無線通信ネットワークを構成して、その検針データを予め定める時間毎や予め定める事象の発生時点などにサーバ装置1へ送信し、収集することで、自動検針を実現するようにしたシステムである。
【0022】
前記計量器端末Uは、本実施の形態では積算電力量計として実現され、注目すべきは、本実施の形態では、各計量器端末Uは、無線LAN規格での通信を行うとともに、その無線LANの大容量の伝送容量を使用して、余剰分の伝送容量を無線LANサービスに開放することである。前記無線LANサービスで使用される端末2としては、パーソナルコンピュータや携帯端末などで、ホームページ閲覧や楽曲のダウンロードなどが前記無線LANサービスを介して行われる。
【0023】
そのため、各計量器端末Uは、無線LANの基地局(アクセスポイント)として機能して、無線LANの基地局−端末間通信用のインフラストラクチャモードによって参照符号I1で示すように無線通信を行うとともに、各計量器端末U間は、前記無線LANの端末間通信用のアドホックモードによって参照符号A1,A2,A3,A4,A5(総称するときは、以下参照符号Aで示す)で示すように無線通信を行う。前記無線LAN端末2は、起動(電源投入)すると、周囲の電波状況を監視し、最も通信品質の良好な基地局(ぶら下がり先:図1の例では計量器端末U1)を判定して接続を行い、前記インフラストラクチャモードによって通信を開始する。また、各計量器端末Uも、起動(電源投入)すると、周囲の電波状況を監視し、最も通信品質の良好な計量器端末(ぶら下がり先:図1の例では計量器端末U3に対してU4)を判定して接続、すなわちネットワークに参加するとともに、無線通信ネットワークの終端であるゲートウェイ3に至る経路を自律的に選択して、前記アドホックモードによって通信を開始する。
【0024】
前記ゲートウェイ3は、無線通信ネットワークと、電力会社などのネットワーク運営会社専用の有線ネットワーク4とを接続するもので、前記有線ネットワーク4には前記サーバ装置1が接続されている。このゲートウェイ3は、たとえば主要な電柱に設けられ、収容端末数は数百である。また、各計量器端末Uのホップ数は、最大で数十、好ましくは十ホップ以下である。
【0025】
一方、メンテナンス用に、ハンディターミナルHTも使用可能となっており、該ハンディターミナルHTは起動(電源投入)すると、接続すべき計量器端末(ぶら下がり先:図1の例では計量器端末U3)にインフラストラクチャモードによって参照符号I2で示すように無線通信を行い、検針データの直接の吸い上げや、通電の開始/停止、各種の設定などが可能となる。
【0026】
図2は、前記のような検針データ収集システムの論理構成を説明するための図である。各計量器端末Uに接続される端末としては、他の計量器端末Uに、無線LAN端末2としての、たとえばパーソナルコンピュータ2aや携帯音楽プレーヤ2bが考えられるとともに、現地で検針や設定を行うことができる前記ハンディターミナルHTが考えられる。各計量器端末Uは、前記のようにパーソナルコンピュータ2aや携帯音楽プレーヤ2bなどとはインフラストラクチャモードによって通信を行い、他の計量器端末Uとはアドホックモードによって通信を行う。さらに、ハンディターミナルHTは、この計量器端末Uとだけ通信を行うので、インフラストラクチャモードによって通信を行う。
【0027】
各計量器端末U間およびゲートウェイ3へは、各計量器端末U内の無線LAN通信ユニットUaは、アドホック論理ネットワークを構成する。一方、ゲートウェイ3は、前記のアドホック無線通信ネットワークの終端に設けられ、PPPoE(Point-to-point protocol over Ethernet)などを用いて、前記アドホック無線通信ネットワークを電力会社の光ファイバネットワークなどの常時接続の有線ネットワーク4と接続するためのものである。
【0028】
このため、ゲートウェイ3は、VLAN(Virtual Local Area Network(IEEE802.5))を用いて、前記検針データの収集や給電/停電の制御などの本来の配電監視業務を行うセンターに設置され、第1のサーバ装置であるサーバ装置1Aと、追加の無線LANサービスを提供するセンターに設置され、第2のサーバ装置であるサーバ装置1Bとに、後述するようにしてフレーム単位でデータを振り分ける(接続するプロバイダを切り替える)ものである。このようにVLANを用いてネットワークを分割し、アクセスを制限することで、サーバ装置1A側と、サーバ装置1B側とを別個のネットワークとして機能させることができ、セキュリティや運用性を向上することができるようになっている。なお、後述の説明では、前記VLANによるネットワーク分離には、MACアドレスから所属するVLANグループを識別しているが(MACベースVLAN)、端末のIPアドレスから所属するVLANグループを識別してもよい(サブネットベースVLAN)。
【0029】
図3は、前記各計量器端末Uの構成を示すブロック図である。この計量器端末Uは、先ず無線LAN規格(たとえばIEEE802.11)に対応した無線デバイス11およびそのドライバ12から成る無線通信部10と、後述するように検針のネットワークと無線LANサービスのネットワークとにデータを振り分ける振り分けインタフェイス13、前記アドホックモードでの無線通信のためのインタフェイス14、前記インフラストラクチャモードでの無線通信のためのインタフェイス15、それぞれのモードでのIPスタック16,17およびアプリケーション18,19から成る通信制御部20とを備えて構成される。2つのモード間は、IPスタック16,17のところでデータのやり取り(無線LANサービスのデータをアドホックネットワーク側へ転送する)が可能となっている。
【0030】
そして、前記インフラストラクチャモードとアドホックモードとで共用の無線デバイス11で受信された信号は、ドライバ12を介して振り分けインタフェイス13に入力され、フレーム毎に、アドホックインタフェイス14と、前記インフラストラクチャインタフェイス15とに振り分けられ、アドホックプロトコルまたはIEEE802.11プロトコルで処理され、IPスタック16,17からアプリケーション18,19に与えられ、所定の処理が行われる。
【0031】
これに対して、アプリケーション18,19で発生した送信のデータは、フレーム毎に、IPスタック16,17を介して対応するモードのインタフェイス14またはインタフェイス15に与えられ、それぞれのプロトコルで処理され、そのデータは前記振り分けインタフェイス13ではフレーム処理が行われず、そのままドライバ12から共用の無線デバイス11に与えられて送信される。
【0032】
図4は、前記インタフェイス13,14,15における本発明の実施の一形態の機能を説明するための図である。本実施の形態では、前記のアドホックモードとインフラストラクチャモードとを、無線LAN規格(IEEE802.11)およびEthernet(登録商標)規格(IEEE802.3)におけるMACフレームにおいて、通常では使用されないMACフレームのタイプフィールドに前記識別符号を埋込むことで切替える。このようにタイプフィールドに識別符号を埋込むことで、特に前記識別符号を付加するために新たなフィールドを定義する必要はない。
【0033】
具体的には、先ず無線LAN規格(IEEE802.11)のMACフレームにおいて、フレーム制御フィールドのFrom DS,To DSのフラグで、送信側と受信側とのどちらが基地局となるのかを指定する。次に、無線LAN規格(IEEE802.11)のMACフレームおよびEthernet規格(IEEE802.3)におけるMACフレームの前記タイプフィールドに前記識別符号を埋込むことで実現する。
【0034】
図5は、本実施の形態の検針データ収集システムにおける通信の態様を詳しく説明するための図である。この図5に対応して、図6は、前記図4で示すMACフレームにおけるアドレスデータおよび前記識別符号の変化を具体的に示す表である。先ず図5(a)で示す検針データの送信時には、参照符号F1で示すように、アプリケーション18で発生した検針データD1に、Ethernet規格(IEEE802.3)におけるMACフレームのタイプフィールドに、その検針データであることを表す識別符号L1が付加されて、無線LAN規格(IEEE802.11)のMACフレームのアドレス2の送信元アドレスフィールドには、この図5(a)の場合には、自機計量器端末U3のアドレスが、またアドレス1の基地局アドレスフィールドには上位の計量器端末U4のアドレスが、アドレス3の最終の宛先アドレスのフィールドにはサーバ装置1Aのアドレスが、それぞれIPスタック16で付加され、アドホックインタフェイス14から、振り分けインタフェイス13を通過して、ドライバ12から無線LANデバイス11によってアドホックモードで送信される。なお、この検針データの送信時には、フレーム制御フィールドにおけるFrom DS,To DSのフラグは、受信側が基地局側に設定される。
【0035】
同様に、参照符号F1’で示すように、サーバ装置1Aからのその検針データのACKなどのデータD1にも、識別符号L1が付加されており、アドレス2の送信元アドレスフィールドにはサーバ装置1Aのアドレスが、またアドレス1の基地局アドレスフィールドには上位の計量器端末U4のアドレスが、アドレス3の最終の宛先アドレスのフィールドには自機計量器端末U3のアドレスが、それぞれ記述されており、それを振り分けインタフェイス13からアドホックインタフェイス14を介してIPスタック16が読取り、アプリケーション18に提供する。
【0036】
一方、図5(b)で示す前記検針データの再送要求や給電のON/OFFなどの制御データの送信時には、参照符号F2で示すように、サーバ装置1Aからのその制御データD2には予め制御データであることを表す識別符号L2が付加されて、アドレス2の送信元アドレスフィールドにはサーバ装置1Aのアドレスが、またアドレス1の基地局アドレスフィールドには上位の計量器端末U4のアドレスが、アドレス3の最終の宛先アドレスのフィールドには自機計量器端末U3のアドレスが、それぞれ記述されており、無線LANデバイス11で受信されると、ドライバ12から振り分けインタフェイス13に与えられ、アドホックインタフェイス14から、IPスタック16を介して、アプリケーション18に与えられる。
【0037】
これに応答して、アプリケーション18は、参照符号F2’で示すように、返信の信号D2に識別符号L2を付加し、アドレス2の送信元アドレスフィールドには自機計量器端末U3のアドレスが、アドレス1の基地局アドレスフィールドには上位の計量器端末U4のアドレスが、アドレス3の最終の宛先アドレスのフィールドにはサーバ装置1Aのアドレスが、それぞれIPスタック16で付加され、アドホックインタフェイス14から、振り分けインタフェイス13を通過して、ドライバ12から無線LANデバイス11によってアドホックモードで送信される。この制御データの送信時にも、フレーム制御フィールドにおけるFrom DS,To DSのフラグは、受信側が基地局側に設定される。
【0038】
これらの検針データおよび制御データの送信時に、中継局となる計量器端末(図1の例ではU2,U4)では、無線LANデバイス11、ドライバ12、振り分けインタフェイス13、アドホックインタフェイス14およびIPスタック16を使用するアドホックモード側の構成のみを使用し、自機のホッピング先のBSSIDを順次書替え、残余のデータはそのままとすることで、アドホックモードで順次転送が行われる。
【0039】
これに対して、図5(c)で示す前記無線LANサービスのデータの送信時において、参照符号F5で示すように、端末2からの送信データD3は、Ethernet規格におけるMACフレームのタイプフィールドは通常通りであり、アドレス2の送信元アドレスフィールドには自機端末2のアドレスが、またアドレス1の基地局アドレスフィールドには上位の計量器端末U1のアドレスが、アドレス3の最終の宛先アドレスのフィールドにはサーバ装置1Bのアドレスが、それぞれ記述されて送信されている。しかしながら、各計量器端末Uが無線LANのインフラモードで持つ複数のSSIDの内、予め無線LANサービスに定められる識別符号S1が、SSIDのフィールドに設定されている。前記インフラモードでは、このアクセスポイントに割当てられたSSIDと、ネットワーク鍵とを相互に認証し、一致すると通信可能となる。
【0040】
このデータを前記無線LANデバイス11、ドライバ12、振り分けインタフェイス13およびインフラストラクチャインタフェイス15を介して受信した計量器端末U1は、IPスタック17からIPスタック16側へデータを引き渡し、これによってアドホックインタフェイス14、振り分けインタフェイス13、ドライバ12および無線LANデバイス11を介して、参照符号F3で示すように、アドホックモードでの転送が行われるようになる。この際、アドレス1の基地局アドレスフィールドには、前記図1の場合、上位の計量器端末U2のアドレスが設定される。また、前記無線LAN規格のSSIDのフィールドにおける識別符号S1が解除され、代わって、Ethernet規格のタイプフィールドに、無線LANデータであることを表す識別符号L3が付加される。
【0041】
また、参照符号F3’で示すように、サーバ装置1Bからの無線LANのデータD3にも、識別符号L3が付加されており、アドレス2の送信元アドレスフィールドにはサーバ装置1Bのアドレスが、アドレス1の基地局アドレスフィールドには上位の計量器端末U2のアドレスが、アドレス3の最終の宛先アドレスのフィールドには端末2のアドレスが、それぞれ記述されている。このデータを前記無線LANデバイス11、ドライバ12、振り分けインタフェイス13およびアドホックインタフェイス14を介して受信した計量器端末U1は、IPスタック16からIPスタック17側へデータを引き渡し、これによってインフラストラクチャインタフェイス15、振り分けインタフェイス13、ドライバ12および無線LANデバイス11を介して、参照符号F4で示すように、インフラストラクチャモードでの転送が行われるようになる。この際、Ethernet規格のタイプフィールドから識別符号L3が解除されるとともに、無線LAN規格のSSIDのフィールドには、前記無線LANサービスのために設定される識別符号S1が設定される。この無線LANデータの送信時には、フレーム制御フィールドにおけるFrom DS,To DSのフラグは、サーバ装置1B側が基地局側に設定される。
【0042】
さらにまた、図5(d)で示すハンディターミナルHTの接続時には、接続される計量器端末U3は、無線LANデバイス11、ドライバ12、振り分けインタフェイス13、インフラストラクチャインタフェイス15、IPスタック17およびアプリケーション19のインフラストラクチャモード側の構成のみを使用し、参照符号F6,F7で示すように、インフラストラクチャモードで通信を行う。この場合、参照符号F6で示す計量器端末U3からのデータに関しては、アドレス1の宛先アドレスフィールドとアドレス2の上位局アドレスフィールドとが同じアドレスとなり、参照符号F7で示すハンディターミナルHTからのデータに関しては、アドレス1の上位局アドレスフィールドとアドレス3の宛先アドレスフィールドとが同じアドレスとなる。また、フレーム制御フィールドにおけるFrom DS,To DSのフラグは、計量器端末U3側が基地局側に設定される。さらにまた、前記SSIDのフィールドには、このハンディターミナルHT用に予め設定される識別符号S2が設定される。
【0043】
以上のように、本実施の形態の検針データ収集システムは、各需要家Hに設置された計量器端末Uがマルチホップ無線通信ネットワークを構成して、その検針データを予め定める時間毎や予め定める事象の発生時点などにサーバ装置1へ送信し、収集することで、自動検針などを実現するようにしたシステムにおいて、前記各計量器端末Uの無線通信部10を無線LAN規格での通信を行うようにするとともに、その無線通信部10の通信モードを、主に端末間通信用のアドホックモードと、基地局−端末間通信用のインフラストラクチャモードとのいずれかに固定するのではなく、通信制御部20が、それぞれのモードに対応した識別符号を付加して、フレーム単位でいずれのモードのデータにも対応可能とする一方、無線通信ネットワークの終端には、前記検針データを収集するサーバ装置1Aと、無線LANサービスのサーバ装置1Bとへ、それぞれ専用の有線ネットワーク4を有するゲートウェイ3を設け、当該ゲートウェイ3が、前記識別符号を判読してデータをフレーム単位で振り分けて、それぞれのサーバ装置1A,1Bへ転送する。
【0044】
したがって、無線LANの大容量の伝送容量を使用して、検針モードで余剰分の伝送容量を無線LANサービスに開放しても、検針システムと無線LANサービスシステムとは、それぞれ別個のネットワークとして機能させることができ、セキュリティや運用性を向上することができる。また、各需要家に設置される計量器端末Uを無線LANの基地局(アクセスポイント)として併用するので、無線LANサービスを開始するにあたって専用の基地局を設ける必要がなく、コストを大幅に削減することができるとともに、特に都市部では、各無線LAN端末2から見える(通信可能な)基地局(アクセスポイント)が多数存在し(たとえば、自宅の計量器端末だけでなく、隣家の計量器端末が窓越しに見える)、高い通信品質を得ることができる。こうして、構築した検針システムに、高い品質の無線LANサービスを併せて提供可能にし、結果的に検針システムのコストを大幅に抑制することができる。
【0045】
[実施の形態2]
図7は、前記インタフェイス13,14,15における本発明の実施の他の形態の機能を説明するための図である。注目すべきは、本実施の形態では、前記のアドホックモードとインフラストラクチャモードとの切替えを、無線LAN規格(IEEE802.11)におけるWDSフレームのLLCヘッダおよびEthernet(登録商標)規格(IEEE802.3)におけるMACフレームの前記タイプフィールドと、それぞれのデータヘッダとを用いて実現することである。
【0046】
具体的には、図7(a)で示す無線LAN規格(IEEE802.11)での送信データの内、図7(b)で示す802.11ヘッダをWDSフレームで構成し、そのLLCヘッダの下位2バイトに、前記アドホックモードとインフラストラクチャモードとの切替えを行うための識別符号の一部を埋込む。これに対して、図7(c)で示すEthernet(登録商標)規格(IEEE802.3)の送信データにおける802.3ヘッダのMACフレームの前記タイプフィールドにも、前記2バイトでアドホックモードとインフラストラクチャモードとの切替えの識別符号の一部を埋込む。
【0047】
さらにまた、独自に規定できるデータヘッダには、図7(e)で示すように、アドレス、送信回数、リトライ回数などの一般事項に、新たに回線番号を規定し、前記アドホックモードとインフラストラクチャモードとの切替えを行うための識別符号の残余の部分を埋込む。たとえば、前記WDSフレームのLLCヘッダおよびMACフレームのタイプフィールドには、単にアドホックモードとインフラストラクチャモードとの切替えを行うだけの識別符号を埋込み、たとえばユーザがどのような無線LANサービスを受けるのか等の回線種別を、前記回線番号に埋込む。
【0048】
図8は、前記図7で示すフレームにおけるアドレスデータおよび前記識別符号の変化を具体的に示す表であり、前述の図6に類似している。図6と異なる点は、前記のように基地局間通信用のWDSフレームを使用しているので、アドホックモードでの通信は、From DS,To DSのフラグは、いずれも基地局に設定されるとともに、アドレス1の宛先アドレスフィールドはアドレス3の宛先アドレスフィールドと同じ隣接端末のアドレスとなる。また、アドレス4の送信元アドレスフィールドはアドレス2の送信元アドレスフィールドと同じ自機のアドレスとなる。
【0049】
さらにまた、アドホックモードでの通信では、802.3ヘッダのMACフレームのタイプフィールドは、独自の識別符号が付されるものの、アドホックモードでの通信であることを表すだけの共通の識別符号で、具体的なサービス内容は、前記回線番号で識別される。
【0050】
このように構成することで、端末間通信用のアドホックモードと、基地局−端末間通信用のインフラストラクチャモードとを使用して通信を行うけれど、無線LANであまり使用されない基地局、すなわちアクセスポイント同士の通信に主に用いられるWDSフレームを使用して、本発明の検針データ収集システム以外の他の基地局、すなわちアクセスポイントが反応しないようにすることができる。なお、無線LANでのデータのフレーム構成には、WDSフレームを使用するけれども、各計量器端末Uは前述のようにアドホックモードでデータの転送を行ってゆく。このような設定は、アドホックレイヤを規定することで実現することができる。
【符号の説明】
【0051】
1;1A,1B サーバ装置
2 端末
2a パーソナルコンピュータ
2b 携帯音楽プレーヤ
3 ゲートウェイ
4 有線ネットワーク
10 無線通信部
11 無線デバイス
12 ドライバ
13 振り分けインタフェイス
14 アドホックモードインタフェイス
15 インフラストラクチャモードインタフェイス
16,17 IPスタック
18,19 アプリケーション
20 通信制御部
H1,H2,・・・ 需要家
HT ハンディターミナル
U1,U2,・・・ 計量器端末


【特許請求の範囲】
【請求項1】
各需要家に設置された計量器端末と、前記計量器端末と無線通信ネットワークで接続され、前記各計量器端末から検針データがマルチホップ方式で送信されるゲートウェイと、前記ゲートウェイと有線ネットワークを介して接続される第1および第2のサーバ装置と、前記計量器端末と無線通信ネットワークで接続される他用途の端末とを備え、
前記各計量器端末は、
無線LAN規格での通信を行う無線通信部と、
フレーム単位でアドホックモードとインフラストラクチャモードとに対応可能であり、自機で発生した検針データには前記アドホックモードに対応した識別符号を、前記無線通信部においてインフラストラクチャモードで受信した前記他用途の端末からのデータには前記インフラストラクチャモードに対応した識別符号を、それぞれ付して前記無線通信部からアドホックモードで送信させるとともに、前記無線通信部において受信された識別符号付きのデータはそのまま前記アドホックモードで転送させる通信制御部とを備え、
前記ゲートウェイは、前記識別符号を判読して、前記検針データを第1のサーバ装置へ、前記他用途の端末からのデータを第2のサーバ装置へ転送することを特徴とする検針データ収集システム。
【請求項2】
前記通信制御部は、無線LAN規格およびEthernet規格におけるMACフレームのタイプフィールドに前記識別符号を埋込むことを特徴とする請求項1記載の検針データ収集システム。
【請求項3】
前記通信制御部は、無線LAN規格におけるWDSフレームのLLCヘッダおよびEthernet規格におけるMACフレームのタイプフィールドに前記識別符号の一部を、それぞれのデータヘッダに設けた回線番号に前記識別符号の残余の部分を埋込むことを特徴とする請求項1記載の検針データ収集システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−81497(P2011−81497A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231582(P2009−231582)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】