説明

極低温タンク・システム

極低温タンク・システムにおいて、極低温液体貯蔵用の主タンク1からの極低温液体が冷凍器16による冷却によって過冷却され、補助タンク13に送られ、加圧され、そして好ましくは冷凍機16を通って貯蔵用の主タンク1に戻され、それによって貯蔵タンク1の内容物を冷却して、貯蔵タンク1内の圧力、および貯蔵タンク1からの蒸気の損失を低減させる極低温タンク・システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、極低温液体の格納および分配用のタンク・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
極低温液体の貯蔵または他の格納は、容器内への熱の漏出による冷媒の一部の損失をできるだけ低減するために、断熱容器または断熱タンクの使用を伴う。しかし、利用可能な最も優れた断熱システムを用いても、格納されている冷媒のかなりの部分が熱の漏出によって蒸発し、制御弁、逃がし弁または安全弁を介して放出される。分配中のシステムの動作を考慮すると、液体冷媒は、ポンプまたはラインの熱の漏出による蒸発によって、およびポンプ呼び水損失によって、または移送および充填時の損失によって、失われる可能性もある。この液体冷媒の損失は、かなりの経済的損害をもたらす。
【発明の開示】
【0003】
本発明の一つの観点は、
(A)主タンク、冷凍機、および液体冷媒を主タンクから冷凍機まで渡すための手段、
(B)補助タンク、および液体冷媒を冷凍機から補助タンクに渡すための手段、
(C)補助タンクに渡された液体冷媒を加圧するための手段、および
(D)その結果生じた加圧液体冷媒を主タンクに渡すための手段
を有する極低温タンク装置である。
【0004】
本発明の他の観点は、
(A)液体冷媒を主タンクから引き出し、引き出された液体冷媒を過冷却するステップ、
(B)過冷却された液体冷媒を補助タンクに渡すステップ、
(C)過冷却された液体冷媒を加圧するステップ、および
(D)加圧された液体冷媒を主タンクに渡すステップ
を含む極低温タンク・システムを動作させるための方法である。
【0005】
本明細書で使用する「冷凍機」という用語は、240Kより低い冷却を生じさせることができる冷凍機を意味する。
【0006】
本明細書で使用する「極低温液体」および「液体冷媒」という用語は、大気圧において240Kの温度で気体である流体を意味する。
【0007】
本明細書で使用する「過冷却」という用語は、液体を、既存の圧力に対するその液体の飽和温度より低い温度になるように冷却することを意味する。
【0008】
本明細書で使用する「上側部分」および「下側部分」という用語は、それぞれ主タンクの、タンクの中央の箇所より上および下の部分を意味する。
【実施例】
【0009】
図面を参照して本発明について詳しく記述する。ここで、図を参照すると、断熱容器または主タンク1は、貯蔵空間11および断熱空間12を有している。貯蔵空間11は通常、一般的に0〜4.14MPa(0〜600ポンド毎平方インチ・ゲージ(psig))の範囲内の圧力で極低温液体2を収容する。本発明の使用によって処理することができる極低温液体としては、水素、ヘリウム、ネオン、酸素、窒素、アルゴン、二酸化炭素、メタンおよび空気や天然ガスなどの混合物を挙げることができる。
【0010】
液体冷媒は主タンク1から管路3の中に引き込まれ、弁4および管路5を通過してポンプ6に達する。液体冷媒は、ポンプ6から汲み上げられてライン7に入り、液体の使用箇所へ送り出され、あるいは蒸気の使用箇所へ渡される前に気化のための蒸発器へ送り出される。使用箇所の例には、高圧シリンダの充填、液体シリンダの充填、ジュワーの充填、気体のサンプリングおよび分析、ならびにトレーラの移送充填が含まれる。
【0011】
ポンプは全体的に冷媒より暖かいため、ポンプ6によって処理される過程で液体冷媒の一部が蒸発する。この蒸発した流体は、ポンプ6からライン8に入り、弁9を通過し、次いでライン10に入り、蒸気を収容する貯蔵空間11の上側部分に送られる。図に示すように、蒸気の戻りライン10は、貯蔵空間11の上側部分と連通する前に、断熱空間または断熱ボリューム12を通過して、タンク1の下側部分から上側部分へ送られることが好ましい。
【0012】
補助タンク13は、最初は主タンク1の圧力より低い圧力である。液体冷媒の一部が主タンク1からライン14に入り、弁15を通過して冷凍機16まで流され、そこで主タンク1内の圧力に対して1K〜100Kだけ過冷却される。
【0013】
本発明を実施する際には、任意の適切な冷凍機を用いることができる。そのような冷凍機としては、スターリング冷凍機、ギフォード・マクマホン冷凍機、およびパルス管冷凍機を挙げることができる。液体窒素の熱交換器など、他の冷却システムを用いることもできる。パルス管冷凍機は、閉じたサイクルにおいて作動ガスを振動させ、その際に熱負荷を低温部分から高温部分へ移動させる閉じた冷凍システムである。振動の周波数および位相は、システムの構成によって決まる。駆動装置または圧力波発生装置は、ピストンもしくはいくつかの他の機械的な圧縮装置、または音響波もしくは熱音響波の発生装置、あるいは作動ガスにパルスまたは圧縮波を提供するための他の任意の適切な装置とすることができる。すなわち、圧力波発生装置はパルス管内の作動ガスにエネルギーを与え、圧力および速度の振動を引き起こす。ヘリウムが好ましい作動ガスであるが、パルス管冷凍機に任意の効果的な作動ガスを用いることが可能であり、そうしたものの中には、窒素、酸素、アルゴン、キセノンおよびネオン、あるいはそれらの1つまたは複数を含む空気などの混合物が含まれる。
【0014】
振動する作動ガスは、それがコールド・エンドに向かって移動するにつれ、後部冷却器で、次いで再生器で冷却されることが好ましい。パルス管冷凍システムの形状寸法およびパルス構成は、コールド・ヘッド内で振動する作動ガスがパルス・サイクルの一部の間に膨張し、そして間接的な熱交換によって熱が作動ガスに吸収されるようになっており、この間接的な熱交換は、過冷却のために液体冷媒に冷却をもたらす。ガス置換および圧力パルスを適当な段階(phase)に維持するために、パルス管冷凍システムはイナータンス管およびリザーバを使用することが好ましい。リザーバのサイズは、振動が流れる間に、リザーバ内に本質的にきわめて小さい圧力振動が生じるのに十分な大きさである。
【0015】
過冷却された液体冷媒は、冷凍機16からライン17に入り、補助タンク13に送られる。次いでこの過冷却された液体冷媒は、主タンク1の圧力より大きい圧力になるように、また一般的には0.14〜4.27MPa(20〜620psig)の範囲内の圧力になるように加圧される。この加圧は、補助タンク13内で行われることが好ましい。図は、過冷却された液体冷媒がライン18に入り、それを加熱および蒸発させる圧力発生コイル19まで送られる圧力発生回路を用いた、この加圧を実施するための好ましい手段の1つを示している。次いで蒸発した冷媒はライン20に入り、弁21を通過して補助タンク13に戻され、補助タンク13では、蒸発によって生じた体積膨張がその内部の圧力を高めるように働く。過冷却された極低温液体の圧力を高めるための他の手段は、補助タンク13内に配置された水中用の液体ポンプなどの液体ポンプの使用、または図示していない配管および弁装置を用いたポンプ6によるものである。補助タンク内の過冷却された極低温液体の圧力を高めるための他の方法には、相溶性(compatible)のある蒸気を外部の供給源から適当な圧力でタンクに導入することが含まれる。
【0016】
過冷却された液体冷媒の圧力が上昇して主タンク内の圧力を超えると、液体の流れが反転し、補助タンク13からライン17に入り、冷凍機16および弁15を通過してライン14および3に入り、液体を収容する主タンク1の下側部分に流入するようになる。この液体冷媒の流れの反転は、そうでない場合よりも主タンクの内容物を低温に保つように働き、したがって圧力はより低く保たれ、その結果、主タンク1からの蒸気の損失が減少する。冷凍機による液体の流れの反転は液体をさらに冷却するようにも働き、したがってシステムの効率を高める。任意選択で、過冷却された液体冷媒は、冷凍機16を迂回して補助タンク13から主タンク1の下側部分へ流れてもよい。補助タンク13からの蒸気は、タンク13から流出されてライン22に入り、弁23を通過し、次いで主タンク1の上側部分の中に移動するための蒸気の戻りライン10に流入される。補助タンク13からの流体の流出によって、補助タンク内の圧力が主タンクの底部の圧力より低く下げられると、極低温液体の流れは再び反転され、前述のように極低温液体が主タンク1から補助タンク13に流入する。
【0017】
図に示した本発明の実施例は、加圧され、過冷却された液体冷媒を、蒸気を収容する主タンクの上側部分に流入させることができる特に好ましい実施例である。この方法では、弁24は開放されており、加圧され、過冷却された液体冷媒の一部が補助タンク13から流出されてライン17に入り、冷凍機16を通過し、次いでライン25に入り、弁24を通過して戻りライン10に達する。次いで、加圧され、過冷却された液体冷媒はライン10の中を流され、主タンク1の上側部分に達し、そこに流入する。過冷却された液体冷媒を主タンクの上側部分に導入すると、この空間内の蒸気の一部を凝縮させるように働く。これによって主タンクの貯蔵空間内の圧力が低下し、それが主タンクからの蒸気の損失の可能性をさらに低下させる。
【0018】
特に好ましい実施例を参照して本発明を詳しく記述してきたが、特許請求の範囲の趣旨および範囲内において、本発明の他の実施例が存在することが当業者には理解されよう。例えば本発明を、2つ以上の主タンクおよび/または2つ以上の補助タンクを用いて実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の極低温タンク・システムの好ましい一実施例の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温タンク装置であって、
(A)主タンク、冷凍機、および液体冷媒を前記主タンクから前記冷凍機まで渡すための手段、
(B)補助タンク、および液体冷媒を前記冷凍機から前記補助タンクに渡すための手段、
(C)前記補助タンクに渡された前記液体冷媒を加圧するための手段、および
(D)その結果生じた前記加圧液体冷媒を前記主タンクに渡すための手段
を有する極低温タンク装置。
【請求項2】
加圧液体冷媒を主タンクに渡すための前記手段が、前記冷凍機を含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
加圧液体冷媒を主タンクに渡すための前記手段が、前記主タンクの下側部分に連絡している請求項1に記載の装置。
【請求項4】
加圧液体冷媒を主タンクに渡すための前記手段が、前記主タンクの上側部分に連絡している請求項1に記載の装置。
【請求項5】
蒸気を前記補助タンクから前記主タンクに渡すための手段をさらに有している請求項1に記載の装置。
【請求項6】
液体冷媒を加圧するための前記手段が、圧力発生コイルを有している請求項1に記載の装置。
【請求項7】
液体冷媒を加圧するための前記手段が、液体ポンプを有している請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記冷凍機がパルス管冷凍機である請求項1に記載の装置。
【請求項9】
極低温タンク・システムを作動させるための方法であって、
(A)液体冷媒を主タンクから引き出し、前記引き出した液体冷媒を過冷却するステップ、
(B)前記過冷却された液体冷媒を補助タンクに渡すステップ、
(C)前記過冷却された液体冷媒を加圧するステップ、および
(D)前記加圧された液体冷媒を前記主タンクに渡すステップ
を含む極低温タンク・システムを作動させるための方法。
【請求項10】
前記過冷却された液体冷媒が、前記補助タンク内にある間に加圧される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記加圧された液体冷媒が、前記主タンクに渡されたときに依然として過冷却される請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記加圧された液体冷媒が、前記主タンクの下側部分で前記主タンクに渡される請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記加圧された液体冷媒が、前記主タンクの上側部分で前記主タンクに渡される請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記補助タンクに渡された、前記過冷却された液体冷媒の一部が蒸発させられ、その結果生じた蒸気が前記主タンクに渡される請求項9に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−500579(P2009−500579A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520303(P2008−520303)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/025552
【国際公開番号】WO2007/008453
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(392032409)プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】