説明

構造体の加圧支持機構

【課題】生化学反応カセットに取付けられたDNAマイクロアレイに対して伝熱体を面接触させて密着させるのに有効な加圧支持機構を提供する。
【解決手段】上下動ステージ26上に、サーマルブロック28が、弾性シート48,49を介して支持され、支持部29が設けられている。サーマルブロック28は、生化学反応カセット19の底面の、平坦面を形成している基板33に面接触し、支持部29は、生化学反応カセット19の底面の、基板33とは別の位置に形成された凹み部45に係合している。生化学反応カセット19の上面には、加圧ばね52,54によって付勢された加圧棒51と接続パッド53が当接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一側面の一部に平坦面を有する第1の構造体を、第2の構造体の平坦面を第1の構造体の平坦面に面接触させ、その接触面に圧力が加わるようにして支持する加圧支持機構に関する。より具体的には、本発明は、血液等の検体中の病原菌などに由来する遺伝子の有無に関する検査を行うDNAマイクロアレイなどのプローブ担体を備える生化学反応カセットを用いた生化学反応装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸試料中の標的核酸の検出と、それに基づく核酸の塩基配列の解析を迅速かつ正確に行う方法として、プローブ担体を用いたハイブリダイゼーション反応を利用した方法が多く提案されている。ハイブリダイゼーション反応に用いられるプローブ担体としては、標的核酸と相補的な塩基配列を有するプローブを、ビーズやガラス板等の固相基板上に高密度で固定したDNAマイクロアレイが代表的なものとして知られている。
【0003】
このDNAマイクロアレイに対しては、病原菌を特定する医療診断や患者の体質等を検査する遺伝子診断への応用が期待されており、そのために、検査の各工程における処理を簡便にして、解析・検査の効率化を図ることが求められている。特に、DNAマイクロアレイ上でハイブリダイゼーション反応を行う際、プローブ固定面が露出している状態で検査を行うと、DNAマイクロアレイを構成する固相基板上に物が触れる恐れがある。そのため、プローブが欠落したり汚染されたりすると、正確な検査が困難となる。したがって、作業者は固相基板上に指などが触れないように、DNAマイクロアレイの取り扱いを慎重に行う必要があり、そのために、作業効率が低下してしまう。そこで、作業性の改善のために、反応チャンバー内にDNAマイクロアレイを備え、反応チャンバー内でハイブリダイゼーション反応を行い、その後に検出もできるようになった生化学反応カセットの構造がいくつか提案されている。
【0004】
このような生化学反応カセットを用いてハイブリダイゼーション反応を行う際には、DNAマイクロアレイおよび反応チャンバーを所定の温度に制御する必要がある。温度制御には、DNAマイクロアレイを構成する固相基板に伝熱体を面接触させ、密着させるのが有利である。
【0005】
面接触する構造物同士を良好に密着させる技術として、特許文献1に開示された、液晶パネルを構成する2つの剛体基板を密着させる技術がある。この従来例では、2つの加圧板の間に2つの剛体基板を配置し、2つの加圧板の間の閉空間内を減圧することにより、大気圧によって加圧板を互いに接近移動させて2つの剛体基板に加圧力を加える手法が採られている。この際、加圧板の一方の、剛体基板との当接面に緩衝材を配置しており、それによって、加圧力が加わる際、緩衝材の圧縮変形によって、各剛体基板の厚みむらなどが相殺され、剛体基板同士が片あたりしないように、良好に面接触し、密着するようにしている。
【特許文献1】特開2001-209057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生化学反応カセットは、一般に、反応チャンバーや廃液溜めチャンバーなどを形成する一定の大きさのハウジングを有している。前述の特許文献1に開示された構成は、平面状の構造体同士を面接触させて密着させるのには適しているが、このように一定の大きさを有する構造体同士を面接触させて密着させるのには向いていない。
【0007】
特に、生化学反応カセットにおいては、DNAマイクロアレイは、生化学反応カセットの表面の一部を形成しているにすぎないのが一般的である。したがって、温度制御のための伝熱体を生化学反応カセットのDNAマイクロアレイに密着せるには、構造体の一部の面に、他の構造体の面を当接させることになる。そして、DNAマイクロアレイは、生化学反応カセットの端または端近傍に位置することが一般的であるので、密着させるために加圧した時、特許文献1におけるように、単純に加圧板間で加圧したのでは、力学的なバランスを取るのが困難である。
【0008】
したがって、この場合には、以下の2つを同時に行う必要がある。
(1)生化学反応カセットを、全体の力学的バランスがとれるように支持する。
(2)DNAマイクロアレイとそれを温度制御するための伝熱体が面接触し密着するように、両者間に加圧力を加える。
【0009】
本発明の目的は、以上のような課題を鑑み、生化学反応カセットに取付けられたDNAマイクロアレイに対して伝熱体を面接触させ密着させるのに有効な加圧支持機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明の加圧支持機構は、一側面の一部に第1の平坦面を有する第1の構造体を、第2の構造体の第2の平坦面を第1の構造体の第1の平坦面に面接触させ、その接触面に圧力が加わるようにして支持する加圧支持機構であって、第2の構造体を、第2の平坦面の向きを変えることができるように支持する手段と、第1の構造体の、第1の平坦面が位置する側面の、第1の平坦面外の位置に当接する位置に配置された支持手段と、第1の構造体を、第2の構造体と支持手段に向かって付勢する付勢手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のもう1つの加圧支持機構は、一側面の一部に第1の平坦面を有する第1の構造体を、第2の構造体の第2の平坦面を第1の構造体の第1の平坦面に面接触させ、その接触面に圧力が加わるようにして支持する加圧支持機構であって、第1の構造体の、第1の平坦面が位置する側面の、第1の平坦面外の位置に当接する支持手段と、第1の構造体を、第2の構造体と支持手段に向かって付勢する付勢手段と、を有し、第2の構造体は弾性体であることを特徴とする。
【0012】
なお、本発明において一側面は、平面であることに限定されず、段差や曲面等が存在しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1の構造体に面接触させられる第2の構造体が、第1の構造体との接触面の向きを変えることができるように支持され、あるいは、第2の構造体が弾性体であるため、第1の構造体と第2の構造体をしっかりと面接触させることができる。さらに、第1の構造体の、第2の構造体との接触面が設けられた一側面の、接触面外の位置に当接する支持手段が設けられているため、第1の構造体を力学的にバランスよく支持することができる。それによって、接触面に、その面内にわたって実質的に均等に圧力を加え、第1の構造体と第2の構造体を良好に密着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明に係る実施例について説明する。
【0015】
まず、図1〜3を参照して、本実施例の生化学反応装置1の全体構成について説明する。図1は、生化学反応装置1の平面図、図2は、図1のA−A線に沿った断面図、図3A〜Cは、図1のハイブリダイゼーション部4付近の正面図であり、ハイブリダイゼーションの処理を時系列に示している。
【0016】
本実施例の生化学反応装置1は、DNAマイクロアレイを用いて標的核酸を検出する装置である。DNAマイクロアレイを用いた標的核酸の検出は一般に以下のような工程を有する。
【0017】
第1の工程として、PCR法に代表される増幅方法によって、標的核酸を増幅する。具体的には、まず、核酸試料中に第1および第2のプライマーを加え、温度サイクルをかける。第1のプライマーは標的核酸の一部と特異的に結合し、第2のプライマーは標的核酸と相補的な核酸の一部と特異的に結合する。標的核酸を含む二本鎖核酸と第1および第2のプライマーが結合すると伸長反応によって標的核酸を含む二本鎖核酸が増幅される。十分に標的核酸を含む二本鎖核酸が増幅された後に、核酸試料中に第3のプライマーを加えて温度サイクルをかける。第3のプライマーは、酵素、蛍光物質、発光物質等で標識されており、標的核酸と相補的な核酸の一部と特異的に結合する。標的核酸に相補的な核酸と、第3のプライマーが結合すると伸長反応によって酵素、蛍光物質、発光物質等で標識された標的核酸が増幅される。結果として、核酸試料中に標的核酸が含まれている場合は、標識された標的核酸が生成され、核酸試料中に標的核酸が含まれない場合は標識された標的核酸は生成されない。
【0018】
第2の工程として、この核酸試料をDNAマイクロアレイに接触させ、DNAマイクロアレイのプローブとハイブリダイゼーション反応させる。ハイブリダイゼーション反応を生じさせる工程には、DNAマイクロアレイおよび核酸試料の温度を上昇させる工程が含まれる。ハイブリダイゼーション反応によって、プローブと相補的な標的核酸があれば、プローブと標的核酸がハイブリッド体を形成する。
【0019】
第3の工程として、標的核酸の検出を行う。例えば、標識物質が蛍光物質である場合、この蛍光物質をレーザーなどで励起こしてその輝度を測定する。つまり、プローブと標的核酸がハイブリッド体を形成しているかどうかは、標的核酸の標識物質によって検出が可能であり、これにより特定の塩基配列の有無などを確認できる。
【0020】
本実施例の生化学反応装置1は、上記の各工程に加えて、検体である生体試料から、標的核酸の有無の確認対象であるDNAを抽出する工程を加えた各工程を実施するように構成されている。そのために、生化学反応装置1には、図1に示すように、各工程を実施するための抽出部2、増幅部3、ハイブリダイゼーション部4、および検出部5が、図のX方向に順に並んでレイアウトされている。さらに、生化学反応装置1には、検体や試薬などの液体をハンドリングするためのピペットチップが配置されるピペットチップ収納部8、および検体試料置場9が抽出部2に並んで配置されている。
【0021】
生化学反応装置1は、ピペットチップを装着して液体の所定のハンドリングを行うピペットユニット6を有している。ピペットユニット6は、図1のX方向に延びるピペット駆動軸7に接続され、それに沿って、上述のピペットチップ収納部8、検体試料置場9、抽出部2、増幅部3、およびハイブリダイゼーション部4の範囲に亘って移動可能になっている。
【0022】
また、生化学反応装置1は、図1のY方向に延びる搬送軸11,14,17に沿って、抽出部2、増幅部3、およびハイブリダイゼーション部4へと移動可能な搬送キャリア10,13,16を有している。各搬送キャリア10,13,16には、各処理に必要な試薬を入れるための試薬容器12,13,16がそれぞれ支持されている。
【0023】
ハイブリダイゼーション部4に対応する搬送キャリア16には、さらに、後述する生化学反応カセット(第1の構造体)19を複数纏めて支持するためのトレイ18が配置されている。各生化学反応カセット1は、図2に示すように、押さえ部材23によってトレイ18から外れないように支持される。なお、生化学反応カセット1をトレイ18に支持する構造は、図2に示す構造に限られるものではなく、生化学反応カセット19が、少なくともトレイ18の中から容易には外れないような構造であればよい。
【0024】
図3A〜Cに示すように、ハイブリダイゼーション部4には、搬送キャリア16の下方に、モータ24と上下動軸25によって上下動する上下動ステージ26が配置されている。上下動ステージ26には、棒状の支持部(支持手段)29が上面から突出して設けられており、また、ペルチェ素子27とその上に載せられたサーマルブロック(第2の構造体)28が配置されている。サーマルブロック28は、アルミなどの熱伝動性のよい部材から形成することができる。
【0025】
支持部29とサーマルブロック28は、上下動ステージ26を上昇させると、搬送キャリア16上の生化学反応カセット19に当接するようになっている。それによって、生化学反応カセット19は、図3Bに示すように、トレイ18と共に上昇させられる。この時、生化学反応カセット19の上面に当接する位置に、加圧機構30と接続機構31(付勢手段)が配置されている。加圧機構30と接続機構31も、不図示の上下動機構によって移動させることができるように支持してもよい。
【0026】
図示していないが、支持部29は、各生化学反応カセット19に対応して複数設けられている。サーマルブロック28、加圧機構30、および接続機構31も、各生化学反応カセット19に対応して複数設けてもよいが、複数の生化学反応カセット19に同時に当接するようにしてもよい。
【0027】
また、上昇させられたトレイ18に係合可能な高さに搬送部21が配置されている。搬送部21は、図1のX方向に、ハイブリダイゼーション部4から検出部5までの範囲にわたって延びる搬送ガイド22に接続され、この範囲を移動可能である。
【0028】
次に、生化学反応装置1による検査処理について説明する。
【0029】
検査前には、ピペットチップ収納部8に必要な数のピペットチップがセットされ、検体試料置場9に検体試料がセットされる。また、各搬送キャリア10,13,16には、所定の試薬が入った試薬容器12,15,20がセットされ、ハイブリダイゼーション部4に対応する搬送キャリア16には、トレイ18に支持された生化学反応カセット19がセットされる。
【0030】
ただし、検査開始時には、最低限、検体試料、ピペットチップ、抽出用の試薬容器12がセットされていれば、検査を開始できるので、生化学反応装置1は、これらがセットされると処理を開始する構成とすることができる。さらに、試薬容器15,20やトレイ18に支持された生化学反応カセット19がセットされなければ、処理が開始されないようにしてもよい。
【0031】
検査が開始されると、まず、抽出工程の処理を行うために、搬送キャリア10が抽出部2まで移動する。次に、ピペットユニット6がピペットチップ収納部8に配置された未使用のピペットチップを装着し、検体試料置場9の検体試料を吸引後、抽出部2の位置まで移動し、検体を試薬容器12内に吐出する。そして、抽出部2において所定の処理が行われ、抽出工程の処理が終了する。この処理は抽出・精製処理であり、例えば、試薬の混合、攪拌などの工程を含むことができる。抽出の工程が終了すると、試薬容器12内には検体試料から取り出されたDNAがセットされる。なお、使用されたピペットチップは、図示しない方法で廃棄され、ピペットユニット6は、次の工程では、新たなピペットチップを装着してハンドリングを行う。これは、後の工程でも同様である。
【0032】
次に、増幅工程の処理を行うために、搬送キャリア13が増幅部3まで移動する。ピペットユニット6は抽出・精製処理産物であるDNAを試薬容器12から吸引し、試薬容器15に吐出する。そして、試薬容器15内において所定の処理が行われて増幅処理が終了する。増幅処理は、試薬の混合、攪拌、温調などの工程を含むことができる。増幅工程が終了すると、試薬容器15には増幅されたDNAがセットされる。
【0033】
次に、ハイブリダイゼーション工程の処理を行うために、搬送キャリア16がハイブリダイゼーション部4まで移動する。ピペットユニット6は増幅処理産物を試薬容器15から吸引し、試薬容器20に吐出する。試薬容器20において試薬混合、攪拌が行われ、混合液が作成される。
【0034】
図3Aは、この時の状態を示している。この状態から、図3Bに示すように上下動ステージ26が上昇させられる。また、必要に応じて、加圧機構30と接続機構31が下降させられる。それによって、トレイ18に支持された状態の生化学反応カセット19は、下面側に支持部29とサーマルブロック28が当接し、上面側から加圧機構30と接続機構31によって加圧されて支持される。この加圧支持については、後により詳細に説明する。
【0035】
次に、試薬容器20内の混合液がピペットユニット6によって生化学反応カセット19にセットされる。また、ペルチェ素子27が制御部(不図示)によって駆動制御され、生化学反応カセット19の温度制御が行われる。それによって、ハイブリダイゼーション反応を生じさせることができる。
【0036】
ハイブリダイゼーション反応終了後、搬送部21が所定位置、すなわち搬送部21がトレイ18を受け入れる位置に移動した後に、上下動ステージ26が下降することによって、生化学反応カセット19を支持したトレイ18が搬送部21にセットされる。そして、図3Cに示すように、搬送部21はトレイ18と共に生化学反応カセット19を検出部5に搬送する。最後に、検出部5において、ハイブリダイゼーション結果の検出が行われる。
【0037】
以上の各処理工程において、搬送キャリア10,13,16は、各処理の終了後、試薬容器12,15,20と共に、図1に示す退避位置に移動する。試薬容器12,15,20は試薬の混合あるいは反応の場を兼ねており、各処理工程の終了後、図示しない方法で回収・廃棄される。必要に応じて、検出部5での検出処理中に、次の検査用に新たな生化学反応カセット19、試薬容器12,15,20、および検体とピペットチップをセットすれば、並列処理が可能な構成としてもよい。
【0038】
なお、上記の例では、試薬を、全て予め試薬容器12,15,20に入れた状態で搬送キャリア10,13,16上に載せる構成としているが、試薬を予め装置内に保管し、必要に応じて試薬容器12,15,20にセットする構成としてもよい。試薬のセットには、 ピペットや他の機構を用いることができる。
【0039】
また、検体試料置場9やピペットチップ収納部8も、搬送キャリア上に配置した構成としてもよい。生化学反応カセット19は、トレイ18に装着せずに、搬送キャリア16に直接載せる構成としてもよい。その場合、搬送部21は、生化学反応カセット19をひとつずつ検出部5に搬送する構成としてもよいし、もしくは、複数個の生化学反応カセット19を同時に支持できる構成にしてもよい。
【0040】
また、上記の例において、生化学反応カセット19は、ハイブリダイゼーション反応中にトレイ18と共に搬送キャリア16から浮いた状態となる。したがって、この時、搬送キャリア16を、サーマルブロック28や支持部29と干渉することなくある程度移動させることができる構成としてもよい。それにより、ハイブリダイゼーション反応中に、必要に応じて試薬容器20を移動させ、例えば試薬容器20の位置を所定量だけずらしてピペッティングを行うといった処理をすることも可能である。
【0041】
次に、本実施例における生化学反応カセット19、支持部29、ペルチェ素子27、サーマルブロック28、加圧機構30、および接続機構31の構成について、図4〜6を参照してさらに詳細に説明する。
【0042】
図4は、生化学反応カセット19の構造を示す図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は図4(a)におけるA−A線に沿った断面図、図4(c)は図4(b)におけるB−B線に沿った断面図、図4(d)は底面図である。
【0043】
生化学反応カセット19は、標的核酸と特異的に結合するDNAプローブが固定された基板33、すなわちDNAマイクロアレイと、それを接合することができるハウジング32を有している。DNAプローブは、核酸試料溶液に接した状態で所定の温度にすることにより、核酸試料溶液中に標的核酸があると、それとハイブリダイゼーション反応を生じてハイブリッド体を形成する物質である。DNAプローブとしては、標的核酸に応じて、標的核酸であるDNAとハイブリダイゼーション反応を生じる他のDNAなど、適切なものが選択される。
【0044】
基板33はハウジング32の底面の一端近傍に接合されており、ハウジング32には、基板33の接合部上に、所定の断面形状の窪みが設けられている。それによって、基板33が接合されると、基板33上に反応チャンバー34が形成される。ガラス基板33は、反応チャンバー34の底面となる表面の所定の領域に、図示しないプローブ固定領域を有している。
【0045】
反応チャンバー34には、反応チャンバー34から上方に延びる注入流路35と排出流路36が接続されている。注入流路35の、反応チャンバー34と接続された側と反対側の端部は液体溜めチャンバー38に接続されている。排出流路36の、反応チャンバー34側の端部近傍は、幅が広くなったバッファー部37となっている。排出流路36の、反応チャンバー34側とは反対側の一端は廃液溜めチャンバー39に接続されている。廃液溜めチャンバー39は、内部に吸収体40が収められており、廃液を吸収体40に吸収させて保持することができる。吸収体40としては、PP(ポリプロピレン)繊維からなるものを用いることができる。
【0046】
ハウジング32の底面には、基板33が接合されたのとは反対側の端部近傍に、断面形状が円錐形の凹み部45が設けられている。ハウジング32の上面には蓋部材41が結合されている。蓋部材41は、樹脂製とすることができ、その場合、超音波溶着によって蓋部材41をハウジング32に溶着し、ハウジング32と蓋部材41の間の気密性を確保することができる。
【0047】
蓋部材41には、液体溜めチャンバー38につながる位置に穴42が開いており、廃液溜めチャンバー39につながる位置に穴43が開いている。蓋部材40の上面には、全域にシール44が接着されており、それによって、穴42,43は覆われている。シール44はアルミ箔によって形成することができる。
【0048】
穴42,43は、ハイブリダイゼーション処理前には、このようにシール44によって覆われているが、ハイブリダイゼーション処理時に、図5に示すような穴開け機構46,47によって穿孔される。それによって、生化学反応カセット19内の液体溜めチャンバー38および廃液溜めチャンバー39は、蓋部材41の穴42および穴43を介して外気と連通する。穴開け機構46,47は、図1,3A〜3Cには図示していないが、生化学反応装置1の適当な位置に、駆動機構と共に設けることができる。
【0049】
なお、基板33に対するハウジング32の接合形態は図示した例に限定されず、種々の形態を採り得る。また、ハウジング32の材質は、ポリカーボネードとすることができるが、これに限定されるものではなく、ポリカーボネード以外のプラスチックやガラス・ゴム・シリコン等としてもよい。基板33の材質はガラスとすることができるが、これに限定されるものではなく、プラスチック・シリコン等でもよい。
【0050】
生化学反応カセット19は、先に述べたように、ハイブリダイゼーション処理時に、サーマルブロック28と支持部29が下面に当接し、加圧機構30と接続機構31が上面に当接した状態で支持される。図6は、この時の状態を示している。
【0051】
図6に示すように、サーマルブロック28は、平坦な上面を有しており、この上面が生化学反応カセット19の基板33の下面に面接触させられる。サーマルブロック28は、前述のようにペルチェ素子27上に配置されているが、この際、上下動ステージ26とペルチェ素子27の間、およびペルチェ素子27とサーマルブロック28の間には、熱伝導性のよい弾性シート48および49が配置されている。
【0052】
支持部29は、ハウジング32の底面の凹み部45に対応する位置にある。支持部29は、先端が、円錐形の凹み部45に対応した円錐形になっており、この先端が凹み部45に係合して生化学反応カセット14の底面に接触する。このように、支持部29は、ハウジング32の底面に実質的に点接触する。
【0053】
加圧機構30は、加圧棒51とこれを下方に付勢する加圧ばね52を有しており、接続機構31は、接続キャップ53とこれを下方に付勢する加圧ばね54を有している。加圧棒51はサーマルパッド28と基板33の接触面のほぼ中央の直上で、接続キャップ53は支持部29のほぼ直上で生化学反応カセット19の上面に当接している。接続キャップ53は、ゴム製で円筒形であり、生化学反応カセット19に、その穴43を覆うように当接させられる。接続キャップ53は、生化学反応装置1に設けられた不図示の加圧減圧機構に接続されている。
【0054】
この構成において、生化学反応カセット19は、加圧ばね52,54によって所定の加圧力が加えられた状態で支持される。この際、生化学反応カセット19の初期のセット位置が多少不正確であっても、それぞれ円錐形に形成された凹み部45と支持部29がならって係合するため、生化学反応カセット19を正確に位置決めすることができる。また、生化学反応カセット19がハイブリダイゼーション部にセットされた後に、仮に予期しない振動や衝撃が加わったとしても、生化学反応カセット19が所定の位置から外れるのを抑制することができる。このような作用が得られるように、凹み部45の断面形状は、前述の円錐形の他、円錐台形など、斜面を有する形状とするのが望ましく、支持部29の先端は、凹み部45に対応する形状とするのが好ましい。
【0055】
また、サーマルブロック28は、弾性体である弾性シート48および49を介して支持されているため、加圧力によって、その接触面が基板33にならうように向きを調整され、すなわちイコライズする。また、この時、生化学反応カセット19の、基板33が設けられたのとは反対側の端部が支持部29によって支持されることによって力学的バランスがとられる。すなわち、生化学反応カセット19が加圧力によって傾斜させられ、サーマルブロック28と基板33の接触面に加わる加圧力が、接触面の、支持部29側で大きくなるといったことが抑制される。これらのことによって、基板33とサーマルブロック28とは、接触面内にわたってほぼ均等に加圧力が加えられて、隙間を生じることなく良好に密着させられる。
【0056】
なお、この際、生化学反応カセット19の生化学反応カセット19の、基板33の底面が設けられた一側面、すなわち底面には、段差や曲面が設けられ、凹み部45が、基板33の底面に対して段差のついた面や、多少傾斜した面に設けられていてもよい。その場合でも、支持部29が、生化学反応カセット19の底面内の、基板33の底面とは別の位置に当接することによって、生化学反応カセット19の支持の力学的バランスを取り、安定した支持を実現することができる。
【0057】
前述のように、生化学反応カセット19には、このように支持された状態で、ハイブリダイゼーション反応に供される核酸試料溶液が、ピペットユニット6によって供給される。供給された核酸試料溶液は、蓋部材41の穴42を通って液体溜めチャンバー38に入る。この時、液体溜めチャンバー38の断面積より注入流路35の断面積が小さく、注入流路35が抵抗となることなどから、液体溜めチャンバー38に入った核酸試料溶液は、そのままでは反応チャンバー34へ流入しない。そこで、接続キャップ53を介して加圧減圧機構によって廃液溜めチャンバー39側を負圧にすることで、核酸試料溶液を反応チャンバー34およびバッファー部37に導入する。こうして、気体を残すことなく反応チャンバー34内を核酸試料溶液によって満たすことができる。
【0058】
そして、反応チャンバー34およびバッファー部37を核酸試料溶液で充填した状態で、ペルチェ素子27が駆動制御される。それによって、弾性シート49、サーマルブロック28を介して基板33に熱が伝達され、基板33上のDNAプローブおよび反応チャンバー34内の核酸試料溶液の温度を適切に調節することができる。この際、本実施例によれば、前述のように、基板33とサーマルブロック28を、隙間を生じることなくしっかりと面接触させ、密着させることができるので、サーマルブロック28と基板33の間で良好な熱伝達が行われる。このため、基板33をその接触面の全面に亘っておいてむらなくかつ正確に温度制御することが可能である。
【0059】
ハイブリダイゼーション反応が終了したら、再度、廃液溜めチャンバー39側を加圧減圧機構によって負圧にして核酸試料溶液を廃液溜めチャンバー39へ流す。なお、廃液溜めチャンバー39の断面積より排出流路36の断面積が小さいので、排出流路36が抵抗となることなどから、核酸試料溶液は反応チャンバー34へ逆流することはなく、廃液溜めチャンバー39内の吸収体40に吸収されて、底に溜まる。その後、前述のように生化学反応カセット19は検出部5へ搬送され、検出処理が行われる。検出処理は、基板33上のハイブリダイゼーション反応生成物を、前述のように、例えば蛍光標識を利用して検出することによって行われる。
【0060】
なお、本実施例では、サーマルブロック28を、弾性シート48,49を介在させることによって、その接触面の向きを、基板33との当接時にある程度変えることができるようにした例を示した。このような弾性シート48,49を用いる代わりに、サーマルブロック28をいわゆるジンバル機構によって支持して、自由に向きを変え、すなわちイコライズできるようにしてもよい。また、本実施例では、サーマルブロック28をそれ自身はリジッドな構成としたが、サーマルブロック28自身を熱伝導性がよくかつ弾性変形可能な材料から構成しても同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施例に係る生化学反応装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3A】図1の生化学反応装置の、ハイブリダイゼーション部付近の正面図であり、ハイブリダイゼーション反応前の状態を示している。
【図3B】図1の生化学反応装置の、ハイブリダイゼーション部付近の正面図であり、ハイブリダイゼーション反応時の状態を示している。
【図3C】図1の生化学反応装置の、ハイブリダイゼーション部付近の正面図であり、ハイブリダイゼーション反応後の状態を示している。
【図4】図1の生化学反応装置に用いられる生化学反応カセットの構造を示す図である。
【図5】図4の生化学反応カセットの穴開け機構を示す図である。
【図6】図4の生化学反応カセットの、図1の生化学反応装置のハイブリダイゼーション部において支持された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
19 生化学反応カセット(第1の構造体)
28 サーマルブロック(第2の構造体)
29 支持部(支持手段)
30 加圧機構(付勢手段)
31 接続機構(付勢手段)
33 基板(第1の構造体の平坦面の形成部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側面の一部に第1の平坦面を有する第1の構造体を、第2の構造体の第2の平坦面を前記第1の構造体の前記第1の平坦面に面接触させ、その接触面に圧力が加わるようにして支持する加圧支持機構であって、
前記第2の構造体を、前記第2の平坦面の向きを変えることができるように支持する手段と、
前記第1の構造体の、前記第1の平坦面が位置する側面の、前記第1の平坦面外の位置に当接する位置に配置された支持手段と、
前記第1の構造体を、前記第2の構造体と前記支持手段に向かって付勢する付勢手段と、
を有することを特徴とする加圧支持機構。
【請求項2】
前記第2の構造体を支持する手段は、弾性体を介して前記第2の構造体を支持することによって、前記第2の構造体を、前記第2の平坦面の向きを変えることができるように支持している、請求項1に記載の加圧支持機構。
【請求項3】
一側面の一部に第1の平坦面を有する第1の構造体を、第2の構造体の第2の平坦面を前記第1の構造体の前記第1の平坦面に面接触させ、その接触面に圧力が加わるようにして支持する加圧支持機構であって、
前記第1の構造体の、前記第1の平坦面が位置する側面の、前記第1の平坦面外の位置に当接する支持手段と、
前記第1の構造体を、前記第2の構造体と前記支持手段に向かって付勢する付勢手段と、
を有し、
前記第2の構造体は弾性体であることを特徴とする加圧支持機構。
【請求項4】
前記第2の構造体は、前記接触面を介して熱を伝達し前記第1の構造体に対して温度制御を施すための部材である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加圧支持機構。
【請求項5】
複数の前記第1の構造体を、単一の前記第2の構造体に面接触させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の加圧支持機構。
【請求項6】
前記第1の構造体は、その内部において生化学反応を起こさせるための生化学反応カセットである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の加圧支持機構。
【請求項7】
前記生化学反応カセットの前記第1の平坦面は、生化学反応を生じるチャンバーの壁面を形成する基板によって形成されている、請求項6に記載の加圧支持機構。
【請求項8】
前記基板はDNAマイクロアレイである、請求項7に記載の加圧支持機構。
【請求項9】
前記付勢手段は、前記生化学反応カセットに対して流体制御を施す機構の接続部材を含んでいる、請求項6〜8のいずれか1項に記載の加圧支持機構。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載した加圧支持機構を備える生化学反応装置。

【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−101347(P2007−101347A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291151(P2005−291151)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】