説明

構造用集成材

【課題】撓み難く、所要の剪断強度を備える構造用集成材を提供する。
【解決手段】接着一体とされた五層以上の角材状をなす構造用集成材10であって、最も外側に位置する外側層Aaと、当該外側層Aaに隣り合う強化層Abと、前記外側層Aaとの間に当該強化層Abを挟む内側隣接層Acとを備えており、前記強化層Abは並設された複数本の角状材12と強化繊維シート13を備えてなり、この強化繊維シート13が、前記角状材12と外側層Aa又は内側隣接層Acとの間と、互いに隣り合う角状材12、12間とに屈曲されて挟み込まれて前記強化層Abの幅方向の一方端から他方端にわたるように備えられており、前記接着一体とされている各層Aを構成する板状材11及び前記角状材12が繊維の向きをほぼ平行にして構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、荷重の付加側に生ずる強い圧縮応力と、反対側に生ずる強い引っ張り応力に適応して、小さな断面積にもかかわらず撓み難く、剪断し難い梁や耐風梁等の構造用集成材を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
木材の有効活用や、個々の木材に特有の癖等を極力少なくして品質管理のされた各種集成材が、建築用材として用いられている。かかる集成材は、各種の条件を考慮して人為的に、当該集成材の使用対象に適合するように構成できる利点を備えている。
【0003】
かかる点から、近時、造作用材に限らず、梁等の構造用材を集成材で構成する傾向にあり、例えば、梁等の高い曲げ応力を受ける構造材では、異等級構成集成材等の材が用いられる傾向にあり、集成材の構成素材の確保や、製作コストの面で不都合を生ずる傾向にある。
【0004】
かかる点から、集成材を各種の素材を用いて補強したり、強化することが試みられている。例えば、曲げ強度を大きくする目的から、単板の間に補強繊維シートを単板の繊維方向に挟み込み、それらを接着して大判の合板とし、その合板を補強繊維シートの縁に沿って切断して合板部材とし、複数の合板部材を、互いの補強繊維シートを下部に配して一体に左右に積層接着し木製梁とすることが開示されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、安価で容易に製造することができる繊維強化集成材を提供する目的から、複数層の木材素材の層間に、炭素繊維束を配置して接合し、繊維強化集成材を形成することが提案されている(例えば、特許文献2)。
【0006】
また、繊維強化樹脂複合体を少なくとも一層含む集成材であり、軽量で、高
タフネス、高剛性、高吸湿性で且つ木材の乾燥収縮に対する追随性の良好な集成材として、特定のアラミド繊維、特にパラ型アラミド繊維及び/又はメタ型アラミド繊維強化樹脂複合体を少なくとも一層貼り合わせてなる集成材が提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−21252号公報
【特許文献2】特開2007−245431号公報
【特許文献3】特開2007−245457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かかる特許文献1〜特許文献3に所載の木製梁及び木製梁や柱などの建築部材の製造方法、繊維強化集成材、アラミド繊維強化集成材では、いずれも、集成材の強化が目的とされているものの、集成材の積層方向において最も外側に位置する当該集成材の各外側層に続く当該各外側層の内側に位置している各層を強化層とし、当該木製梁等における荷重側に生ずる圧縮応力と、当該荷重側と反対の側に生ずる引っ張り応力に効果的に対応し、かつ、当該集成材の幅方向と厚さ方向とに順次、屈曲するように連続して備えられる一枚の強化繊維シートで強化された集成材は見あたらなかった。
【0009】
かかる点から、梁等の構造材において圧縮応力の作用する側と、引っ張り応力の作用される側とに、効果的に、曲げに対する強化と、せん断に対する強化手段とを備えた集成材の提供が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、接着一体とされた五層以上の角材状をなす構造用集成材であって、
この構造用集成材が、最も外側に位置する外側層と、当該外側層に隣り合う強化層と、前記外側層との間に当該強化層を挟む内側隣接層とを備えており、
前記強化層は並設された複数本の角状材と強化繊維シートを備えてなり、
この強化繊維シートが、前記角状材と外側層又は内側隣接層との間と、互いに隣り合う角状材間とに屈曲されて挟み込まれて前記強化層の幅方向の一方端から他方端にわたるように備えられており、前記接着一体とされている各層を構成する板状材及び前記角状材が繊維の向きをほぼ平行にしてあることを特徴とする構造用集成材としてある。
【0011】
このように構成される集成材にあっては、当該集成材を梁等に用いた際に、圧縮応力の作用する側と、引っ張り応力の作用される側とに、強化繊維シートで強化された強化層が備えられており、しかも、この強化層を、板状をなすように並設されている複数本の角状材と強化繊維シートを備えて構成してあり、この強化繊維シートを、前記角状材と外側層又は内側隣接層との間と、互いに隣り合う角状材間に挟み込んだ状態で、前記強化層の幅方向の一方端から他方端にわたるように屈曲して備えるようにしてあることから、構成される角材状をなす構造用集成材に要請される曲げ強度と、剪断強度とを効果的にもたらすことができる。
【0012】
すなわち、この発明にあっては、積層状態にある角材状をなす構造用集成材の最も外側に位置している層に隣り合って備えられている強化層を、当該強化層の幅方向の向きと、この幅方向の向きに交差する向きとに、一連に連続するように一枚の強化繊維シートを備えた構成とし、この強化繊維シートによって撓み難く、必要とされる剪断強度を備える構造用集成材としてある。
【0013】
また、前記積層状態に構成されている角材状の構造用集成材において、前記強化層の幅方向の一方端から他方端にわたるように屈曲して備えられている前記強化繊維シートの長手縁に沿った部分が、前記構造用集成材の長手縁に沿って備えられている前記強化層を構成する角状材と前記外側層との間に挟み込まれている構造用集成材にあっては、積層状態に構成されている角材状の構造用集成材における最も外側に位置している外側層と強化層との間に、より多くの強化繊維シートが介在される構成とされ、より撓み難い構造用集成材とされる。
【0014】
さらに、前記強化繊維シートを、炭素繊維製クロスとして構成される角材状の構造用集成材にあっては、撓み難く、必要とされる剪断強度を備え、かつ、耐熱性に優れた構造用集成材とされる。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、積層されてなる角材状の構造用集成材の最も外側に位置する外側層に隣り合う層を強化層とし、この各強化層に備えられる強化繊維シートを、当該強化層の角状材と外側層又は内側隣接層との間と、互いに隣り合う角状材間とに屈曲されて挟み込まれて当該強化層の幅方向の一方端から他方端にわたるように備えた構成とし、撓み難く、所要の剪断強度を備える構造用集成材としてあり、極力小さい断面積からなる構造用集成材で梁等を構成することができ、例えば、当該構造用集成材を梁材として上階の床組をすることで、天井裏空間の設計の自由度を増すことができ、下階に十分な天井高さを備えた居室の設計をなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、典型的な厚さ方向に積層してなる構造用積層材を、当該積層状態で、その要部を斜め上方から見て示している。
【図2】図2は、典型的な構造用積層材を製作する一過程を示したものであって、最も外側に位置づけられる外側層をなす板状材と、この板状材に接着された強化繊維シート及び強化層を構成するために用いる角状材の各要部とを斜め上方から見て示している。
【図3】図3は、典型的な構造用積層材を製作する一過程を示したものであって、最も外側に位置づけられる外側層をなす板状材に強化繊維シートを接着し、当該板状材における幅方向の一方端側(当該板状材における一方の長手縁に沿った部分)の当該強化繊維シートの幅方向の一端側(当該強化繊維シートにおける一方の長手縁に沿った部分)を挟み入れるように第一の角状材を接着した状態の要部を斜め上方から見て示している。
【図4】図4は、典型的な構造用集成材を製作する他の一過程を示したものであって、図3の状態から強化繊維シートを第一の角状材に沿って起立させ、この上方の屈曲させた強化繊維シートを挟むように第二の角状材を前記第一の角状材に並べるように接着する状態の要部を斜め上方から見て示している。
【図5】図5は、この典型的な構造用集成材を製作する更に他の一過程を示したものであって、前記第一の角状材に並設された第二の角状材を覆った強化繊維シートを外側に位置している板状材に接着した状態で、この第二の角状材に対して第三の角状材を、当該角状材で前記第二の角状材と外側に位置している板状材との間に前記強化繊維シートを挟み込むように、前記第二の角状材に並設した状態に接着した状態の要部を斜め上方から見て示している。
【図6】図6は、下側に位置されている最も外側に位置している外側層をなす板状材に複数の角状材と強化繊維シートとで強化層を構成すると共に、この強化層を前記外側層との間で挟む内側隣接層を構成する板状材を前記強化層に積層、接着し、当該構造用集成材に要請される必要な層数の板状材を、更に、積層、接着し、これに、前記強化層と同様の強化層、すなわち、前記の積層された内側隣接層をなす板状材における幅方向の一方端側(当該板状材における一方の長手縁に沿った部分)に第一の角状材を接着すると共に、この設置した角状材上と、当該角状材を覆って強化繊維シートの幅方向の一方端側(当該強化繊維シートの一方の長手縁に沿った部分)を接着し、この強化繊維シートを前記内側隣接層をなす板状材まで垂れさげて第二の角状材との間及び当該第二角状材と前記内側隣接層をなす板状材との間に挟み入れ、ついで、この第二角状材から外方に伸び出している当該強化繊維シートを上方に引き上げて、この強化繊維シートと前記内側隣接層をなす板状材間に第三の角状材を入れ込み、この第三の角状材と前記第二の角状材間に当該強化繊維シートを挟み入れるようにしながら、当該第三の角状材を強化繊維シートで覆うようにして、この第三の角状材から外方に伸び出している当該強化繊維シートを第三の角状材の側面から内側隣接層を構成する板状材面に貼り付け、第四の角状材で、当該強化繊維シートを第三の角状材と内側隣接層を構成する板状材に押しつけ、かかる第四の角状材で内側隣接層をなす板状材との間から上方に引き上げられた強化繊維シートの下方に第五の角状材を入れ込み、この第五の角状材で前記強化繊維シートを第四の角状材の側面に押しつけた状態で前記強化繊維シートの長手方向縁に沿った部分を当該第五の角状材の上面に添装状態に接着した状態と、この強化層に積層される最に位置される他方の外側層用板状材とを斜め上方から見て示している。
【図7】図7は、本発明に係る典型的な構造用集成材であって、長手方向に直交する向きで断面して側方から見て示している。
【図8】図8は、本発明に係る集成材に対応する従来例に係る集成材であって、長手方向に直交する向きで断面して示している。
【図9】図9は、本発明に係る集成材に対応した更に他の従来例に係る集成材であって、長手方向に直交する向きで断面して示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係る典型的な構造用集成材10は、接着一体とされた積層体よりなり、繊維の向きを長手向きとする所定長さに構成された角材状をなす構造用集成材であって、この構造用集成材10は、積層されて角材状の構造用集成材10を構成し得る長尺状の所定長さと、所定幅と、所定厚さの層を五層以上備えており、当該層のなす幅寸法の幅寸法で、当該層の重ね合わせた厚さ寸法で、かつ当該重ね合わせ層の長さ寸法の長さ寸法の構造用集成材10とされており、例えば、梁や耐風梁等の構造用材等として用いることができる。
【0018】
そして、当該構造用集成材10は、積層される最も外側に位置する外側層Aaと、当該外側層Aaに隣り合う強化層Abと、前記外側層Aaとの間に当該強化層Abを挟む内側隣接層Acとを備えている。すなわち、当該構造用集成材10は、最も外側に位置する各外側層Aa、Aaと、この各外側層Aa、Aaの内側隣接層Ac、Acとの間に、それぞれ強化層Ab、Abを備えた構成としてあり、この強化層Abは、前記外側層Aa、内側隣接層Acと共に構造用集成材10を構成するものであって、これらの外側層Aa、内側隣接層Acと同様に、当該構造用集成材10を構成する長尺状の長さ寸法と、幅寸法と、厚さ寸法とを備える構成としてある。
【0019】
かかる各強化層Abは並設される複数本の角状材12〜12と強化繊維シート13を備えて構成されており、しかも、この強化繊維シート13が、前記角状材12と外側層Aa又は内側隣接層Acとの間と、互いに隣り合う角状材12、12間に挟み込まれた状態で前記強化層Abの幅方向の一方端から他方端にわたるように屈曲して備えられた構成としてあり、当該強化層Abが、これらの角状材12と強化繊維シート13の接着一体とされた板状材11’をなすように構成してある。すなわち、この接着一体とされた長尺状をなす板状材11’の幅方向の一方端から他方端に、当該強化繊維シート13が、わたるように備えられている。
【0020】
かかる構造用集成材10は、前記接着一体とされている各層Aを構成する長板状をなす板状材11及び長尺状をなす前記角状材12が、その繊維の向きをほぼ平行にして構成されている。
【0021】
このように構成される構造用集成材10にあっては、当該構造用集成材10を梁等に用いた際に、典型的に圧縮応力の作用する側と、引っ張り応力の作用される側とに、強化繊維シート13で強化された強化層Abが備えられており、しかも、この強化層Abを、板状をなすように並設されている複数本の角状材12〜12と強化繊維シート13を備えて構成してあり、この強化繊維シート13を、前記角状材12と外側層Aa又は内側隣接層Acとの間と、互いに隣り合う角状材12、12間に挟み込んだ状態で、前記強化層Abの幅方向の一方端から他方端にわたるように屈曲して備えてあり、この強化層Abによって、構成される構造用集成材10に必要とされる曲げ強度と、せん断強度とを効果的にもたらすことができる。
【0022】
すなわち、この発明にあっては、所定の長尺材として用意される構造用集成材10であって、この構造用集成材10が、所定の幅寸法で、かつ、積層一体とされて所定厚さ寸法を備えたものとしてあり、しかも、この積層される最も外側に位置している外側層Aaに隣り合って備えられている強化層Abが、当該構造用集成材10における幅方向の一方端から他方端にわたるように強化繊維シート13を備えており、しかも、この強化繊維シート13が当該構造用集成材10の幅方向の向きと、当該幅方向の向きに交差する向きとに、一連に連続するように備えられる一枚の強化繊維シート13としてあり、この強化繊維シート13が、この構造用集成材10における幅方向の向きと、この幅方向の向きに交差する向きの引っ張りと圧縮とに効果的に対応し得るようにしてある。
【0023】
ここで構成される構造用集成材10は五層以上の厚さ寸法を備える積層体として構成してあれば、何層に構成してあってもよく、また、各層は、構成用集材層を構成する板状材であれば、いかなる素材で構成してあっても、また、いかなる態様に構成してあってもよい。
例えば、ひき板等の無垢の木製の板材であっても、また、各種の材を当該各材の繊維の向きを揃えるように定法に従って長さ方向に接合した縦継ぎ、幅方向に接着接合した幅はぎ等により所定形状の板厚寸法、幅寸法、長さ寸法を備えるように構成した木製の集成板材等を用いて構成してあっても、また、各種形状の無垢の木製の角材であっても、また、各種の材よりなる角状材を、当該角状材の繊維の向きを揃えるように定法に従って縦継ぎ、幅はぎ等により所定形状の厚さ寸法、幅寸法、長さ寸法を備えるように構成した木製の集成角材などによって、板状に構成してあってもよい。なお、前記強化層を構成する角状材は、板状をなす強化層を強化繊維シートと共に構成し得るものであれば、断面が直角四辺形の角材、断面が三角形の角材、断面が台形の角材等、いかなる形態の角状材で構成してあってもよい。
【0024】
かかる積層構造よりなる角材状の構造用集成材10は、当該構造用集成材10における積層構造の最も外側に位置する外側層Aaと、当該外側層Aaに隣り合う強化層Abと、前記外側層Aaとの間に当該強化層Abを挟む内側隣接層Acとを備えており、この強化層Abが板状をなすように並設される複数本の角状材12〜12と強化繊維シート13を備えて構成されており、しかも、この強化繊維シート13が、前記角状材12と外側層Aa又は内側隣接層Acとの間と、互いに隣り合う角状材12、12間に挟み込まれた状態で前記強化層Abの幅方向の一方端から他方端にわたるように屈曲して備えられた構成としてあれば、他の補強手段、強化手段等を備えたものであってもよい。
【0025】
また、前記強化層Abは、強化繊維シート13を介して並設、接着されて板状材11’を構成し、当該積層体としての構造用集成材10における強化層Abを構成し得るものであれば、いかなる素材で構成してあっても、また、いかなる態様で構成されていてもよく、前もって、板状材11’に構成してあっても、また、他の層を構成する板状材11間に並設するようにして接着して構成するようにしてあってもよい。
【0026】
また、前記構造用集成材10は、当該構造用集成材10に要請される曲げ強度、剪断強度等を総合的に勘案して、当該構造用集成材10に必要な曲げ強度、剪断強度をもたらす、板厚寸法、板幅寸法、長さ寸法の板状材11を、必要数積層接着して構成する。
【0027】
また、前記強化繊維シート13は、構成される構造用集成材10に所期の曲げ強度、剪断強度をもたらすものであれば、いかなる、素材のものであってもよく、また、いかなる態様に構成してあってもよく、例えば、アラミド繊維等の合成樹脂繊維、各種金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の各種の繊維素材をクロス等の適宜の形態にして構成したものを用いることができる。
【0028】
また、前記接着剤14は、構造用集成材10に所期の曲げ強度、剪断強度をもたらして、当該構造用集成材10を構成する木材を確実に接着し得るものであれば、いかなる接着剤であってもよく、構造用集成材10に要請される曲げ強度、剪断強度等をもたらす目付量の接着剤が用いられる。
【0029】
また、前記構造用集成材10において、前記強化層Abの幅方向の一方端から他方端にわたるように屈曲して備えられている前記強化繊維シート13の幅方向の両端部分が、前記強化層Abの幅方向の両側部にある角状材12と前記外側層Aaとの間に挟み込まれている構造用集成材10にあっては、当該構造用集成材10における幅方向の両端部分にある強化繊維シート13部分が、積層体として構成されている構造用集成材10における当該積層方向における最も外側に位置している外側層Aaと、これに隣接している強化層Abにおける角状材12との間に位置づけられることから、積層体として構成される構造用集成材10にあって、積層方向における最も外側に位置している外側層Aaと強化層Abとの間に、より多くの強化繊維シート13が介在される構成とされ、これによって、より撓みにくい構造用集成材10とすることができる。
【0030】
さらに、前記強化繊維シート13を、炭素繊維製クロスとすることによって、構成される構造用集成材に、効果的に圧縮強さと引っ張り強さとをもたらし、しかも、優れた耐熱性をもたらすことができる。
【0031】
ついで、図1に示される典型的な構造用集成材10の製作手法の一例を図2〜図6を参考に具体的に説明する。
【0032】
この図示例に係る構造用集成材10は、接着一体とされた五層以上の角材状をなす構造用集成材であって、
この構造用集成材10が、最も外側に位置する外側層Aaと、当該外側層Aaに隣り合う強化層Abと、前記外側層Aaとの間に当該強化層Abを挟む内側隣接層Acとを備えており、
前記強化層Abは並設された複数本の角状材12と強化繊維シート13を備えてなり、
この強化繊維シート13が、前記角状材12と外側層Aa又は内側隣接層Acとの間と、互いに隣り合う角状材12、12間とに屈曲されて挟み込まれて前記強化層Abの幅方向の一方端から他方端にわたるように備えられており、前記接着一体とされている各層Aを構成する板状材11及び前記角状材12が繊維の向きをほぼ平行にして構成してある。
【0033】
この図示例に係る構造用集成材10は、六層からなる所要長さの角材状であって、長さ方向に直交する断面形状が、各内角を直角とする四角形としてあり、梁や耐風梁等の構造材として用い得る長尺のものとして構成されている。
かかる構造用集成材の層Aを構成する板状材11と前記強化層Abを構成する角状材12は、その繊維の向きを当該構造用集成材10の長手方向に向けて、各材の繊維の向きがほぼ平行をなすように接着一体として角材状をなす当該構造用集成材10を構成してある。なお、この図示例において、当該構造用集成材10を構成する各層Aは、当該構造用集成材10の長さ寸法の長さ寸法で、当該構造用集成材10の幅寸法の幅寸法とされており、積層されて当該角材状の構造用集成材10を構成する六層の薄板様の構成とされている。
【0034】
なお、この各層Aを構成する板状材11は、角材状をなす前記構造用集成材10を構成する長さ寸法を備え、長さ方向に直交する断面形状を長方形とするものであって、無垢材で構成してあっても、また、各種板材等をフィンガージョイント等の各種の手法で接着一体に縦継ぎし、かつ、幅方向に適宜の手法で接着一体となるように幅はぎをして構成される板状材であっても、角材等を並設状態に接着一体にして構成される板状材等、いかなる形態の板状材であってもよい。また、前記強化層Abを構成する角状材12は、構造用集成材10の長さの長さ寸法を備えるものとして用意してあれば、長さ方向に直交する断面形状が必ずしも正方形や長方形である必要は無く、並設して接着剤等で板状をなすように構成できるものであれば、断面形状が三角形状、台形状等の各種の角材で構成してもよい。また、前記板状材11と同様に、この種の角状材12も縦継ぎ、幅はぎ等の適宜の手法で構成される集成材を用いてもよい。
【0035】
また、強化繊維シート13は、強化層Abを構成する角状材12、12間と、この角状材12と外側層Aa又は内側隣接層Acとの間の挟まれれて屈曲されながら、当該強化層Abの幅方向の一方端から他方端に到る幅寸法と、当該構造用集成材の長さ寸法とを備える一枚のシートとして用意されている。
【0036】
この図示例に係る構造用集成材10の、更に、具体的な、作成過程の典型例を、以下に詳細に説明する。
【0037】
まず、積層構成される構造用集成材10における積層方向において最も外側に位置される外側層Aaを構成する二組の外側層用板状材11a、11a’を用意する。この外側層用板状材11a、11a’は、構造用集成材の長さ寸法の長さを備える当該長さ方向に直交する向きの断面形状を長方形とした所定厚さ寸法、幅寸法、長さ寸法を構成する板状体11としてある。
【0038】
また、前記構造用集成材10に備えられる強化層Abを構成する角状材12と強化繊維シート13は、並設される各角状材12、12間に強化繊維シート13を介在させた状態で、当該各角状材12、12を互いに押しつけあうように接着した際に、前記外側層Aaと内側隣接層Ac間に都合よく納まる構造に構成してある。
【0039】
すなわち、前記外側層用板状材11a、11a’の幅寸法を適宜の数で除した各寸法幅よりも、介在される強化繊維シート13の厚さ相当分を小さくした幅寸法で、前記外側層用板状材11a、11a’の幅寸法と同一の幅寸法となり、各角状材12〜12が均一の高さに揃えられた複数の角状材12を一組とし、これを二組用意する。
【0040】
また、前記外側層Aaと共に強化層Abを挟んで、当該構造用集成材10に二組の強化層Abを構成する内側隣接層Acをなす板状材11を二組用意する。この内側隣接層Acは、構造用集成材10の長さ寸法の長さを備え、かつ、当該長さ方向に直交する向きの断面形状を長方形とした所定厚さ寸法、幅寸法、長さ寸法を構成する板状体11として構成してある。
【0041】
まず、当該構造用集成材10における最も外側に位置づけられる外側層Aaの一方である第一の外側層Aa’を構成する一方の外側層用板状材11aを作業台にセットする。
【0042】
ついで、この作業台にセットされた第一の外側層Aa’を構成する第一の外側層用板状材11aに接着剤14を塗布し、この塗布接着剤14上に強化繊維シート13を載せ置き、当該板状材11aの幅方向にある一方の長手縁に当該強化繊維シート13の幅方向の端にある一方の長手縁を位置づけるようにして、当該第一の外側層用板状材11aの幅方向にある一方長手縁に沿って第一の角状材12aを載せる強化繊維シート13部分をローラー等で押しつけ、当該強化繊維シート13を前記第一の外側層用板状材11aに確実に接着する。
【0043】
ついで、この強化繊維シート13面に接着剤14を塗布する。また、前記第一の外側層用板状材11aの幅方向の一方側に寄せて、当該板状材11aの一方の長手縁に沿わせるように前記第一の強化層Ab’を構成する第一の角状材12aを載せ置く。この第一の角状材12aは、その下面と、当該第一の角状材12aに隣り合わせて並設される第二の角状材12bに向き合う面とに接着剤14を塗布した状態で、前記第一の外側層用板状材11aの幅方向の側縁から、当該角状材12aの長手縁が、ややはみ出すように当該第一の角状材12aを、この第一の外側層用板状材11aの一方の長手縁に沿って接着する。(図3参照:なお、この図示例では、典型的な一例として、五本の角状材を並設することで当該強化層Ab’を構成している。)
【0044】
ついで、両木口面を除く周面に接着剤14を塗布した前記第一の強化層Ab’用の第二の角状材12bを用意し、前記第一の角状材12aの側面から上方に持ち上げた強化繊維シート13の下側に入れ込み(図3及び図4参照)、この第二の角状材12bで当該強化繊維シート13を前記第一の角状材12aの側面との間で強く挟みつけるように、当該第二の角材12bの一方側面を前記第一の角材12aの側面に押しつけると共に、前記強化繊維シート13で当該第二の角状材12bの上面と他方側面とを当該強化繊維シート13で覆うようにして、第三の角状材12cを並設する。この第三の角状材12cは、前記第二の角状材12bにおけると同様に、両木口面を除く周面に接着剤14を塗布した状態で、前記第二の角状材12bの側面を覆っている強化繊維シート13を当該第二の角状材12bの側面に一方側面を押しつけ、かつ、底面を前記第一の外側層用板状材11aとの間で当該強化繊維シート13を挟み込むように設置する。(図5参照)
【0045】
ついで、前記第二の角状材12bと同様にして、第四の角状材12dを第三の角状材12cに並設する。かかる第四の角状材12dを覆うようにして前記第一の外側層用板状材11aの上面に案内された強化繊維シート13の側縁が当該第一の外側層用板状材11aの長手縁に到るようにした状態で、当該第四の角状材12dに向き合っている面と底面とに接着剤14を塗布した第五の角状材12eを、この接着剤14の塗布されている側面を当該側面に向き合っている前記第四の角状材14dの側面に、かつ、底面を前記第一の外側層用板状材11aの長手方向にある上面に前記強化繊維シート13を挟みつけるように押しつけ状態に接着して当該強化層Ab’の幅方法の側端部の構造用集成材10における長手向きに第五角状材12eを備え付ける。なお、この第五の角状材12eも前記第一の角状材12aにおけると同様に第二の角状材12b〜第四の角状材12dに対して、幅寸法を大きく構成してあり、この大きめに構成されている余剰部分12a”、12e”が前記第一の外側層用板状材11aの長手縁からはみ出すように構成される。
【0046】
このようにして角状材12a〜12eを強化繊維シート13を絡ませながら並設するとともに、適宜、接着剤14を介して内側隣接層Acである第一の内側隣接層Ac’を構成する内側隣接層用板状材11bを前記外側層用板状材11aと共に当該第一の強化層Ab’を挟み込むように接着する。この内側隣接層用板状体11bは、前記外側層用板状体11aと同一の形状、寸法に構成してあり、前記外側層用板状体11aと都合よく前記強化層Ab’を挟み込み得るように構成してある。
【0047】
このように第一の外側層用板状材11aに前記第一の角状材12a〜第五の角状材12eで強化繊維シート13を折り曲げながら当該強化層Abの一方端から他方端にわたるように備えた第一の強化層Ab’は、前記の態様で外側層Aa’を構成する第一の外側層用板状材11aと第一の内側隣接層用板状材11b間に挟まれて、角状材12a〜12eが接着一体とされて板状材11’とされており、前記第一の外側層用板状材11a及び第一の内側隣接層用板状材11bと接着されて効果的な強化層Abを当該角材状の構造用集成材10にもたらす。
【0048】
なお、この図示例には示されていないが、この内側隣接層用板状材11bに、必要とされる当該内側隣接層用板状材11bと同様な長さで、かつ、板幅で、所要厚さを備える任意数の板状材を接着剤を介して接着積層するようにしてあってもよい。
【0049】
ついで、この図示例に係る角材状をなす構造用集成材10では、前記第一の内側隣接層Ac’を構成する前記第一の内側隣接層用板状材11bに、第二の内側隣接層Ac”を構成する当該第一の内側隣接層用板状材11bと同寸法、同幅寸法、同厚寸法の第二の内側隣接層用板状材11b’を積層、接着する。
【0050】
そして、この第二の内側隣接層Ac”を構成する第二の内側隣接層用板状材11b’に対して、前記第一強化層Ab’における強化繊維シート13の挟み位置を逆とするように当該第二強化層Ab”を構成する第一の角状材12a’〜第五の角状材12e’を当該第二の内側隣接層用板状材11b’に並設する。
【0051】
まず、当該第二の内側隣接層用板状材11b’の上面に接着剤14を塗布する。ついで、当該第二の内側隣接層用板状材11b’の幅方向の一方端側の上面に第一の角状材12a’を当該内側隣接層用板状材11b’の長手縁に沿うように接着状態に設置する。
【0052】
この第一の角状材12a’は、上下の面と、第二の角状材12b’の備えられる側の面に接着剤14を塗布してあり、この接着剤14面に強化繊維シート13の幅方向の一方側にある長手縁の面を当該第一の角状材12a’の上面に、ついで、側面に貼り付けるようにする。ついで、この繊維強化シート13に対して必要な量の接着剤14を塗布する。
【0053】
ついで、木口面以外の周面に接着剤14を塗布された第二の角状材12b’を用意し、この第二の角状材12b’で強化繊維シート13を前記の第一の角状材12a’の側面に押しつけ、かつ、第二の内側隣接層用板状材11b’の面に押しつけるようにして、当該第二に角状材12b’を接着する。このようにして、順次に各第三、第四の角状材12c’、12d’を接着させると共に、強化繊維シート13を上方に引き上げて、第四の角状材12d’に面する側と底面及び上面とに接着剤の塗布された第五の角状材12e’を側方から、当該第二の強化層Ab”の幅方向の側端部である当該構造用集成材10の長手方向に沿うように第二の内側隣接層用板状材11b’面に乗せ置き、これを強化繊維シート13を介して第四の角状材12d’と第二の内側隣接層用板状材11b’に接着させる。
【0054】
このように構成される第二の強化層Ab”を、前記第二に内側隣接層Ac”を構成する第二の内側隣接層用板状体11b’と、前記第一の外側層Aa’の反対側にある当該構造用集成材10における第二の外側層Aa”を構成する第二の外側層用板状材11a’とで挟み込む。この第二の外側層Aa”を構成する第二の外側層用板状材11a’は、前記第一の外側層用板状材11aと同様の構成からなり、前記第二の強化層Ab”に積層状態に接着される。また、この強化層Ab”を構成する角状材12a’〜12e’は前記強化繊維シート13と共に強固に接着されて一体の板状材11’を構成する。
【0055】
このようにして得られた構造用集成材10に対して、その積層面に垂直の向きと、積層面に平行な向きからプレス装置等を用いて所定時間加圧し、養生をさせて、各角状材12、板状材11相互を強固に接着させる。より典型的には、前記の手法で積層形成された角材状の構造用集成材10に所期に接着強度をもたらすように、台上にセットし、このセットされた前記の積層材に対して、木口側を除く、両側と上下側とから加圧し、構成各材を完全な接着状態にする。なお、この加圧接着は、使用される接着剤等を総合的に判断して、最適な条件下で施されるものであって、例えば、ホットプレス、コールドプレス等、当該構造用集成材10を構成する各材が効果的に固着される手法で接着される。
【0056】
かかる積層、加圧、接着によって、各材が一体に密着された状態で、前記強化層から、構造用集成材10における長手方向にはみ出している角状材12の余剰部分12a”、12e”をカットし、必要な表面処理を施す。
【0057】
なお、前記の製作過程における接着手順等は、たんなる一例を示したものであって、安定した接着力を得る目的で、例えば、強化層Abを構成する各角状材12の接着に対応して、再度、該当する強化繊維シート13面に接着剤を塗布したり、あるいは、強化層Abを挟む内側隣接層用板状体11b、11b’における当該強化層Ab’、Ab”に接する側に別段に接着剤を塗布する等によって、それぞれの目的とする曲げ強度、剪断強度に優れた構造用集成材を得るようにしてあってもよい。
【0058】
「実験例」
(1)第一の外側層Aa’を構成する第一の外側層用板状材11a、第二の外側層Aa”を構成する第二の外側層用板状材11a’、第一の内側隣接層Ac’を構成する第一の内側隣接層用板状材11b、第二の内側隣接層Ac”を構成する第二の内側隣接層用板状材11b’を:
幅寸法105mm、厚さ寸法30mm、長さ寸法4000mmの欧州赤松とした。
(2)第一の強化層Ab’と第二の強化層Ab”を構成する角状材12を:
中間部分に挟み込まれる6本の角状材12b〜12d、12b’〜12d’を、幅寸法21mm、厚さ寸法30mm、長さ寸法4000mmの欧州赤松とし、当該強化層Abの幅方向の両端部分にあって構造用集成材10の長さ方向に渡るように備えられる4本の角状材12a、12e、12a’、12e’を幅寸法31mm、厚さ寸法30mm、長さ寸法4000mmの欧州赤松として用意した。
(3)強化繊維シート13は:
東レ株式会社製の「トレカクロス」の一方向中段製クロスの0.217mm厚さのもので、幅寸法が225mmの余裕を持たせた4000mmの炭素繊維クロスを用いた。
(4)強化層Abを構成する炭素繊維クロスと、各角状材12及び前記板状材11との接着部分には:
高強度構造補強用エポキシ樹脂接着剤(コニシ株式会社製:コニシE250S)を600g/mで塗布した。
(5)内側隣接層用板状材11b、11b’相互の接着部分には:
レゾルシノール樹脂系接着剤(株式会社オーシカ製:ディアノールD−90)を塗布量300g/mで塗布した。
(6)第一の外側層用板状材11aの長手縁に沿った上面部に、前記高強度構造用エポキシ樹脂接着剤14を塗布し、これに、前記強化繊維シート13として用いた炭素繊維クロスの一方の長手縁に沿った部分を接着させ、幅寸法31mmの第一の角状材12aを、この外側層用板状材11aの長手縁から、ほぼ10mm突き出させた状態で、前記炭素繊維クロス上に高強度構造補強用エポキシ樹脂接着剤14を塗布した状態で乗せ付け接着した。
【0059】
ついで、炭素繊維クロスに前記エポキシ樹脂接着剤14を塗布し、かつ、両木口面を除く周面に接着剤14を塗布した第二の角状材12bをなす21mm×30mm×4000mmの欧州赤松を前記第一の角状材12aの側面から上方に持ち上げた炭素繊維クロスの下側に入れ込み(図3及び図4参照)、この第二の角状材12bで当該炭素繊維クロスを前記第一の角状材12aの側面との間で強く挟みつけるように、当該第二の角状材12bの一方側面を前記第一の角状材12aの側面に押しつけると共に、前記炭素繊維クロスで当該第二の角状材12bの上面と他方側面とを当該炭素繊維クロスで覆うようにして、第三の角状材12cを並設する。第三の角状材12cは、両木口面を除く周面に接着剤14を塗布し、かつ、前記エポキシ樹脂接着剤14を炭素繊維クロスに塗布した状態で、前記第二の角状材12bの側面を覆っている炭素繊維クロスを当該第二の角状材12bの側面に押しつけ、かつ、底面を前記第一の外側層用板状材11aとの間で当該炭素繊維クロスを挟み込むように設置する。(図5参照)
【0060】
ついで、前記第二の角状材12bと同様に、炭素繊維クロスに前記エポキシ樹脂接着剤14を塗布し、かつ、木口面を除く周面に接着剤を塗布した第四の角状材12dを第三の角状材12cに並設する。かかる第四の角状材12dを覆うようにして前記第一の外側層用板状材11aの上面に案内された炭素繊維クロスの側縁が当該第一の外側層用板状材11aの長手縁に到るようにした状態で、当該第四の角状材12dに向き合っている面と底面とに接着剤14を塗布した31mm×30mm×4000mmの第五の角状材12eを、当該接着剤の塗布されている側面を当該側面に向き合っている前記第四の角状材12dの側面に、かつ、底面を、エポキシ樹脂接着剤14の塗布されている前記第一の外側層用板状材11aの長手方向にある上面の前記炭素繊維クロスを挟みつけるように押しつけ状態に接着し、当該第五の角状材12eを、当該強化層Abの幅方法の一方端に、構造用集成材10の長手の向きに備え付ける。なお、この第五の角状材12eも第一の外側層用板状体11aの長手縁から、ほぼ10mmほど突きだした構成とされている。
【0061】
このように第一の外側層用板状材11aに前記第一の角状材12a〜第五の角状材12eで炭素繊維クロスを折り曲げながら当該強化層Abの一方端から他方端にわたるように備えた第一の強化層Ab’は、前記の態様で外側層Aaである第一の外側層Aa’を構成する第一の外側層用板状材11aと第一の内側隣接層用板状材11b間に挟まれて効果的な強化層Abを当該角材状の構造用集成材10にもたらす。
【0062】
ついで、この図示例に係る角材状をなす構造用集成材10では、第一の内側隣接層Ac’を構成する105mm×30mm×4000mmの欧州赤松製の第一内側隣接層用板状材11bを前記強化層Ab’に重ねて、前記エポキシ樹脂接着剤14で接着する。
【0063】
さらに、この第一の内側隣接層Ac’を構成する第一内側隣接層用板状材11bに重ねて、第二の内側隣接層Ac”を構成する105mm×30mm×4000mmの欧州赤松製の第に二内側隣接層用板状材11b’を前記レゾルシノール樹脂系接着剤14で積層状態に接着する。
【0064】
そして、この第二の内側隣接層用板状材11b’に対して、前記第一強化層Ab’における炭素繊維クロスの挟み位置を逆とするように当該第二強化層Ab”を構成する第一の角状材12a’〜第五の角状材12e’を当該第二の内側隣接層用板状材11b’に並設する。
【0065】
まず、当該第二の内側隣接層用板状材11b’の上面に接着剤14を塗布する。ついで、当該第二の内側隣接層用板状材11b’の幅方向の一方端側の上面に第一の角状材12a’を当該内側隣接層用板状材11b’の長手縁に沿うように接着状態に設置する。
【0066】
この第一の角状材12a’は、上下の面と、第二の角状材12b’の備えられる側の面に接着剤14を塗布してあり、この接着剤面に炭素繊維クロスの幅方向の一方側にある長手縁の面を当該第一の角状材の上面に、ついで、側面に貼り付けるようにする。ついで、この炭素繊維クロスに対して必要な量の接着剤14を塗布する。
【0067】
ついで、木口面以外の周面に接着剤14を塗布された第二の角状材12b’を用意し、前記エポキシ樹脂接着剤14の塗布された炭素繊維クロスを該第二の角状材12b’で前記の第一の角状材12aの側面に押しつけ、かつ、第二の内側隣接層用板状材11b’の面に押しつけるようにして、当該第二に角状材12b’を接着する。このようにして、順次に各第三、第四の角状材12c’、12d’を接着させると共に、炭素繊維クロスを上方に引き上げて、第四の角状材12d’に面する側と底面及び上面とに接着剤14の塗布された第五の角状材12e’を側方から、当該第二の強化層Ab”の長手方向に沿うように第二の内側隣接層用板状材面11b’に乗せ置き、前記エポキシ樹脂接着剤14の塗布された炭素繊維クロスを介して第四の角状材12d’と第二の内側隣接層用板状材11b’に接着させる。
【0068】
かかる第二の強化層Ab”の上に105mm×30mm×4000mmの欧州赤松製の第二の外側層Aa”を構成する第二の外側層用板状材11a’を積層して、前記エポキシ樹脂接着剤14で一体に積層状態として角材状の構造用集成材10を得る。
【0069】
このようにして得られた構造用集成材10に対して、その積層面に垂直な向きP−Pに10kgf/cm 、積層面に平行な向きQ−Qに5kgf/cmの加圧を24時間施して、前記強化層Abからはみ出している余剰部分12a”、12e”をカットして、本発明試験体100を得た。
【0070】
「比較例1」
幅寸法105mm、厚さ寸法30mm、長さ寸法4000mmの欧州赤松の板材を6枚用意し、最も外側に積層される板材201と、これに隣り合う板材201との間に幅寸法105mm、長さ寸法4000mmの、東レ株式会社製の「トレカクロス」の0.217mm厚の一方向中段製クロス202を介在させて、高強度構造補強用エポキシ樹脂接着剤(コニシ株式会社製:コニシE250S)を600g/mで塗布して接着し、また、この炭素繊維クロス202の介在層以外は各板材201を前記レゾルシノール樹脂系接着剤(株式会社オーシカ社製:ディアノールD−90)を塗布量300g/mで塗布して接着して角材状の構造用集成材を造った後、前記各板材201の積層面に垂直の向きに10kgf/cmの圧力を24時間付加して、180mm×105mm×4000mmの比較試験体200を得た。
【0071】
「比較例2」
幅寸法105mm、厚さ寸法30mm、長さ寸法4000mmの欧州赤松の板材を6枚用意し、各板材301を前記レゾルシノール樹脂系接着剤(株式会社オーシカ社製:ディアノールD−90)を塗布量300g/mで塗布して接着して角材状の構造用集成材を造った後、前記各板材301の積層面に垂直の向きに10kgf/cmの圧力を24時間付加して、180mm×105mm×4000mmの比較試験体300を得た。
【0072】
このようにして得られた各試験体に、JAS集成材準拠の4点曲げ試験(幅105mm、梁成180mm、支点間距離3240mm、荷重点間距離720mm)を積層面に垂直の向きに荷重を施してなし、その撓み量から各試験体におけるヤング係数を算定し、表1を得た。
【0073】
【表1】

【0074】
次いで、前記で得られた各試験体を、90°回転させて、縦横を入れ換えた状態で、JAS集成材準拠の4点曲げ試験(幅180mm、梁成105mm、支点間距離1890mm、荷重点間距離420mm)を積層面に平行の向きに荷重を施してなし、その撓み量から各試験体におけるヤング係数を算定し、表2を得た。
【0075】
【表2】

【0076】
本件発明に係る構造用集成体の試験体100は、他の構造用集成体として構成された比較例1の比較試験体200、比較例2の比較試験体300に対して、ヤング係数が大きく、撓み難い傾向を顕著に示すことが認められた。
【符号の説明】
【0077】
Aa 外側層
Ab 強化層
Ac 内側隣接層
10 構造用集成材
11 板状材
12 角状材
13 強化繊維シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着一体とされた五層以上の角材状をなす構造用集成材であって、
この構造用集成材が、最も外側に位置する外側層と、当該外側層に隣り合う強化層と、前記外側層との間に当該強化層を挟む内側隣接層とを備えており、
前記強化層は並設された複数本の角状材と強化繊維シートを備えてなり、
この強化繊維シートが、前記角状材と外側層又は内側隣接層との間と、互いに隣り合う角状材間とに屈曲されて挟み込まれて前記強化層の幅方向の一方端から他方端にわたるように備えられており、前記接着一体とされている各層を構成する板状材及び前記角状材が繊維の向きをほぼ平行にしてあることを特徴とする構造用集成材。
【請求項2】
前記強化層の幅方向の一方端から他方端にわたるように屈曲して備えられている前記強化繊維シートの長手縁に沿った部分が、前記構造用集成材の長手縁に沿って備えられている前記強化層を構成する角状材と前記外側層との間に挟み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の構造用集成材。
【請求項3】
前記強化繊維シートが、炭素繊維製クロスであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構造用集成材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−221514(P2010−221514A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71032(P2009−71032)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】