説明

構造部材の溶接継手構造及びその溶接方法

【課題】溶接する構造部材の肉厚方向における応力腐食割れの発生を抑制することができる構造部材の溶接継手構造及びその溶接方法を提供する。
【解決手段】溶接トーチ50を配管1a,1bの突合せ面2に垂直にして配管1aの軸方向に配置し、溶接トーチ50を突合せ面2に対向させて配管1aの周方向に移動させながら、それぞれの突合せ面2に肉盛層3a,3bを形成する(B)。肉盛層3a,3bにそれぞれ開先4a,4bを形成し(C)、配管1aの開先4aと配管1bの3開先4bを対向させて配置する(D)。配管1aと配管1bの突合せ溶接を行い、開先4aと開先4bの間に溶接金属部5を形成する。各肉盛層内に、配管の母材と肉盛層の境界部から、肉盛層の溶接線に直交する方向(配管の軸方向)に伸びるデンドライトが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材の溶接継手構造及びその溶接方法に係り、特に、応力腐食割れ(以下、SCCという)を抑制するのに好適な構造部材の溶接継手構造及びその溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーステナイト系ステンレス鋼製の配管(または板材)を突合せ溶接する場合には、一般的に、接合する配管(または板材)の突合せ面に開先を形成し、それらの開先で溶接を行って配管(または板材)同士を接合することが行われている。しかしながら、このような溶接では、溶接継手構造の表面に引張残留応力が発生するため、溶接継手構造が腐食環境に曝された場合にはSCCが発生し、この溶接継手構造を有する構造部材の健全性が損なわれる可能性があった。
【0003】
このため、溶接後における溶接継手構造の引張残留応力を低減するために、各種の技術が開発され、適用されている。しかし、残留応力改善技術(例えば、熱処理)の適用により溶接継手構造におけるSCCを抑制することができるが、残留応力改善技術を適用するための工程を構造部材の製造工程に追加する必要があり、製造工程が長くなる。そこで、製造工程短縮のため、残留応力改善工程を削減することが望まれている。
【0004】
一方、SCCが、主に溶接熱影響部(HAZ)で発生することが知られている。そこで、耐応力腐食割れ性に優れた溶接金属を、溶接後の溶接熱影響部の表面に肉盛溶接して、溶接継手構造におけるSCCを抑制する溶接方法が、特開2009−50889号公報及び特開2005−28405号公報で提案されている。しかし、このような耐応力腐食割れ性に優れた溶接金属の肉盛方法でも、肉盛部の端部に溶接熱影響部が形成されるため、溶接継手構造におけるSCC発生の懸念を完全に払拭することはできない。
【0005】
また、配管(または板材)の開先に肉盛溶接を施した後、2つの配管(または板材)の肉盛部同士を、突合せ溶接する方法が、特開2000−254774号公報、開2009−39734号公報及び特開昭61−249681号公報に記載されている。特開2000−254774号公報は、溶接割れを抑制する溶接方法を記載している。この溶接割れを抑制する溶接方法では、Cr−Mo鋼製の導入側ノズルの端部に肉盛溶接を行い、この肉盛溶接部(Ni−Cr−Fe系溶材)にFe基超合金製の出口レジューサを溶接している。これによって、突合せ溶接部での溶接割れを抑制している。
【0006】
特開2009−39734号公報は、溶接部で発生したSCCの進展を抑制することができる配管の肉盛溶接方法を記載している。この溶接方法では、溶接する一対の配管のそれぞれの端部に、配管内面に発生するSCCの進展方向と交差する方向に溶接金属のデンドライト組織を成長させる肉盛溶接層を形成し、これらの肉盛溶接層にそれぞれ開先を加工し、一対の配管の肉盛溶接同士を溶接にて接合している。デンドライト組織がSCCの進展方向と交差する方向に形成されるので、デンドライト組織によってSCCの進展が抑制される。
【0007】
特開昭61−249681号公報に記載された溶接方法は、部品(母材)の炉水に接触する表面に肉盛溶接を行い、一対の部品を溶接にて接合している。この溶接においても、肉盛溶接部の端部付近に溶接熱影響部が形成される。特開昭61−249681号公報でも、肉盛溶接部の端部付近に溶接熱影響部においてSCCが発生する可能性がある。このため、特開昭61−249681号公報では、溶接後に熱処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−50889号公報
【特許文献2】特開2005−28405号公報
【特許文献3】特開2000−254774号公報
【特許文献4】特開2009−39734号公報
【特許文献5】特開昭61−249681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
突合せ溶接部での溶接割れを抑制している特開2000−254774号公報では、溶接部におけるSCCの発生を抑制することはできない。特開2009−39734号公報に記載された溶接方法は、発生したSCCの進展を抑制することを目的としており、SCCの発生を抑制するものではない。特開昭61−249681号公報では、肉盛溶接部の端部付近に形成される溶接熱影響部においてSCCが発生する可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、溶接する構造部材の肉厚方向における応力腐食割れの発生を抑制することができる構造部材の溶接継手構造及びその溶接方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、肉盛層を形成した一対の構造部材と、それぞれの構造部材の肉盛層同士を接合した溶接金属部とを有し、それぞれの肉盛層内に、肉盛層に形成される肉盛りの溶接線と直交する方向に伸びるデンドライトが形成されていることにある。
【0012】
各構造部材の肉盛層同士を接合した溶接金属部を有し、それぞれの肉盛層内に、肉盛りの溶接線と直交する方向に伸びるデンドライトが形成されているので、その溶接線と直交する方向における引張残留応力が低減され、構造部材の肉厚方向における応力腐食割れの発生を抑制することができる。
【0013】
肉盛りの溶接線と直交する方向に伸びるデンドライトが形成される肉盛層を、接合される一対の構造部材のそれぞれの溶接側端部に形成し、一対の構造部材に形成されたそれぞれの肉盛層に開先を形成し、それぞれの開先同士を対向させてその一対の構造部材を溶接にて接合することによっても、上記した目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、溶接する構造部材の肉厚方向における応力腐食割れの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1における構造部材の溶接方法の手順を示す説明図である。
【図2】図1に示す構造部材の溶接方法において配管の突合せ面に実行される肉盛溶接の具体的な説明図である。
【図3】図2に示す肉盛溶接によって形成された肉盛層の溶融金属が凝固する際に成長するデンドライト組織の状態を示す説明図である。
【図4】本発明の他の実施例である実施例2における配管に適用した構造部材の溶接方法の手順を示す説明図である。
【図5】図4に示す構造部材の溶接方法において施工された配管の肉盛溶接部における残留応力分布を示す説明図である。
【図6】図4に示す構造部材の溶接方法で形成された配管の溶接継手構造部の内面における配管軸方向の残留応力分布を示す説明図である。
【図7】図4に示す構造部材の溶接方法で形成された配管の溶接継手構造部の内面における配管周方向の残留応力分布を示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例3における板部材に適用した構造部材の溶接方法の手順を示す説明図である。
【図9】図8に示す構造部材の溶接方法で形成された板部材の溶接継手構造部の一面であるA面における溶接線に直交する方向の残留応力分布を示す説明図である。
【図10】図8に示す構造部材の溶接方法で形成された板部材の溶接継手構造のA面における溶接線に平行な方向の残留応力分布を示す説明図である。
【図11】図8に示す構造部材の溶接方法で形成された板部材の溶接継手構造の他面であるB面における溶接線に直交する方向の残留応力分布を示す説明図である。
【図12】図8に示す構造部材の溶接方法で形成された板部材の溶接継手構造のB面における溶接線に平行な方向の残留応力分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明者らは、応力腐食割れの発生を抑制することができる構造部材の溶接継手構造について種々の検討を行った。この結果、発明者らは、構造部材の溶接端部に形成する肉盛層に、溶接線と直交する方向に伸びるデンドライト組織を形成することによって、構造部材の母材と肉盛溶接部の境界付近での引張残留応力を低減することができ、構造部材の溶接継手構造において構造部材の肉厚方向における応力腐食割れの発生が抑制できることを新たに見出した。本発明は、発明者らが見出したこの新たな知見に基づいて成されたのである。
【0017】
この新たな知見を考慮して得られた本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の好適な一実施例である実施例1における構造部材の溶接方法を、図1を用いて説明する。
【0019】
本実施例の構造部材の溶接方法は、配管1a,1bの突合せ溶接に適用される。配管1aの一端に突合せ面2が形成されている(図1(A)参照)。8が配管1aの外面であり、9が配管1aの内面である。図示されていないが、配管1bの一端にも突合せ面2が形成されている。図1において、x方向が配管の軸方向、y方向が配管の半径方向、z方向が配管の周方向を表している。
【0020】
配管1aの突合せ面2に肉盛溶接が行われ、突合せ面2で配管1aの肉厚方向の全体に亘って肉盛層3aが形成される(図1(B)参照)。突合せ面2への肉盛層3aの形成は、溶接トーチ50(または溶接ワイヤー)を突合せ面2に垂直にして配管1aの軸方向xに配置し、溶接トーチ50を突合せ面2に対向させて配管1aの周方向zに移動させながら溶接金属を溶融させて行われる(図1(B)及び図2参照)。突合せ面2上に形成された溶融池(ビード)7は、溶接トーチ50の移動に伴って配管1aの周方向zに移動する。このようなビードを重ねることにより、配管1aの突合せ面2に肉盛層3aが形成される。肉盛層3aの形成に用いられる溶接金属は、配管1aの母材と同種材あるいは高耐食材であることが好ましい。ちなみに、配管1a,1bはオーステナイト系ステンレス鋼で作られている。
【0021】
このような肉盛溶接によると、配管1aの肉盛層3aと配管1aの母材の境界部12(図3参照)に溶接熱影響部が形成されるが、主たる引張残留応力は配管1aの半径方向yに発生し、SCCが発生しやすい、配管1aの軸方向xの引張残留応力はほぼ0MPaである。このため、SCC発生要因の一つである配管1aの軸方向xの引張残留応力を低減できるため、配管母材の溶接熱影響部での配管の肉厚方向のSCCの発生を抑制することができる。
【0022】
また、肉盛層3aを形成する溶接金属の溶融金属13、すなわち、溶融池における溶融金属13が凝固する際に溶接金属組織である複数のデンドライトが形成される。溶接トーチ50(または溶接ワイヤー)を突合せ面2に垂直になる状態にして、溶接トーチ50及び溶接ワイヤーを配管1aの周方向zに移動させることにより、これらのデンドライトは、その溶融金属13が凝固するときに、配管1aの母材6と肉盛層3aの境界部12に直交する方向(配管1aの軸方向)に成長する。境界部12は、配管1aの周方向zに形成され、配管1aの全周に亘って形成される。境界部12に直交して境界部12から溶融金属13に向うデンドライトの成長の状態を図3に模式的に示す。配管1aが例えばSUS304Lステンレス鋼(またはSUS316Lステンレス鋼)製である場合、溶融金属13内には、凝固する際に、フェライト相10とオーステナイト相11が形成され、デンドライトが、境界部12から境界部12に直交する方向である配管1aの軸方向に成長する。境界部12から配管1aの軸方向に所定厚みの肉盛層3aが形成されたとき、デンドライトは、配管1aの軸方向において、その境界部12から肉盛層3aの先端に向って伸びている。肉盛層3aにおける肉盛りの溶接線が、溶融池が移動する方向である配管1aの周方向zに形成される。この溶接線は境界部12と実質的に平行になっている。このため、デンドライトは、肉盛層3aの溶接線に直交して形成されるとも言える。
【0023】
配管1aに肉盛層3aが形成された後、肉盛層3aに開先加工を施し、肉盛層3aに開先4aを形成する(図1(C)参照)。
【0024】
配管1aに突合せ溶接される他方の配管1bにも、配管1aと同様に、肉盛層3bを形成し、肉盛層3aに開先加工を行って開先4bを形成する。配管1bの肉盛層3bにも、配管1aと同様に、配管1bの軸方向において、その境界部12から肉盛層3bの先端に向って伸びているデンドライトが存在する。
【0025】
その後、配管1aの開先4aと配管1bの開先4bを対向させて配置し(図1(D)参照)、開先4aと開先4bを溶接により接合する(図1(E)参照)。この配管1aと配管1bの突合せ溶接は、向かい合っている開先4aと開先4bの間に配管の半径方向yを向くように溶接トーチ50(または溶接ワイヤー)を配置し、溶接トーチ50及び溶接ワイヤーを配管の周方向zに移動させて溶接ビードを順次形成しながら、開先4aと開先4bの配管1a,1bの内面側の初層溶接を行う。その後、溶接トーチ50及び溶接ワイヤーの配管の半径方向yへの移動及び配管の周方向zへの移動を繰り返しながら、多層多パスの溶接ビードを形成して開先4aと開先4bの間を溶接する。このような突合せ溶接により、肉盛層3aと肉盛層3bの間に溶接金属部5が形成され、配管1aと配管1bの突合せ溶接が終了する。これにより、本実施例における構造部材の溶接継手構造が構成される。
【0026】
溶接金属部5と肉盛層3a、3bの境界には配管の軸方向xに引張残留応力が発生するが、この引張残留応力が存在する領域は母材よりも耐食性の高い金属で形成された肉盛層3a,3bが存在すると共に、肉盛層3a,3b内のそれぞれのデンドライトがこの肉盛層と配管の母材との境界部12に直交する方向、つまり、肉盛層3a,3b内での肉盛溶接の溶接線と直交する方向(配管1aの軸方向)に境界部12から溶接金属部5に向かって伸びているため、突合せ溶接された配管1a及び配管1bにおいて、配管の肉厚方向でのSCCの発生を抑制することができる。これは、肉盛層3a,3b内での肉盛溶接の溶接線と直交する方向(配管1aの軸方向)に境界部12からデンドライトが伸びるように、溶接トーチ50(または、溶接ワイヤー)を、突合せ面2に垂直にして配管の軸方向に配置し、溶接トーチ50及び溶接ワイヤーを配管の周方向zに移動させるので、SCCが発生しやすい配管の軸方向xにおける引張残留応力がほぼ0MPaになるからである。
【0027】
本実施例の構造部材の溶接方法では、突合せ面2の全体に肉盛溶接を行うことについて述べたが、実施例2に示すように、SCC発生が懸念される部分(例えば、配管の内面部分)にのみ肉盛溶接を行ってもよい。
【実施例2】
【0028】
本発明の他の実施例である実施例2における構造部材の溶接方法を、図4を用いて説明する。
【0029】
本実施例の構造部材の溶接方法は、外径600mmのオーステナイト系ステンレス鋼製の配管21a,21bの突合せ溶接に適用される。配管21aの一端に突合せ面27が形成されている(図4(A)参照)。28が配管21aの外面であり、29が配管21aの内面である。図示されていないが、配管21bの一端にも突合せ面27が形成されている。本実施例は、突合せ面27の全体ではなく、SCCの発生が懸念される部分、例えば、配管の内面部分にのみ肉盛層を形成する構造部材の溶接方法である。
【0030】
配管21aの突合せ面27において内面29側に、肉盛層を形成するために開先22(第2開先)を形成する(図4(B)参照)。開先22は突合せ面27から配管21aの内面に沿って形成されており、開先22の突合せ面27からの長さは、配管21aの軸方向xにおいて、例えば、20mmである。開先を形成した環状の当て材23を、この当て材23に形成された開先が配管21aに形成された開先22に面するように、配管21a内に配置して配管21aの内面に取り付ける(図4(C)参照)。
【0031】
当て材23を取り付けた状態で、配管21aに形成された開先22と当て材23に形成された開先との間で肉盛溶接が行われる。当て板23を取り付けることによって、配管21aの開先22に、所定形状の肉盛溶接を行うことができる。この肉盛溶接は、実施例1における突合せ面27における肉盛溶接と同様に、溶接トーチ50(または溶接ワイヤー)を突合せ面2に対して垂直にして配管1aの軸方向xに配置し、この状態で、溶接トーチ50を配管21aの周方向zに移動させながら配管21aの開先22と当て材23の開先との間で溶接ワイヤーを溶融させて行われる(図4(D)参照)。本実施例では、溶接ワイヤーはオーステナイト系ステンレス鋼製のワイヤーを使用し、肉盛溶接はTIG溶接で行っている。配管21aの開先22と当て材23の開先との間での肉盛溶接は、具体的には、両開先の、配管21aの軸方向xにおける底部に溶接ワイヤーの溶融池(ビード)を形成し、溶接トーチ50を配管21aの周方向zに移動させることによって、この溶融池も配管21aの周方向zに移動される。このようにして、その底部で初層の肉盛溶接が行われる。その後、溶接トーチ50を配管21aの軸方向xで突合せ面27に向かって移動させ、初層の肉盛溶接部の上に次層の肉盛溶接を、溶接トーチ50の姿勢を初層の肉盛溶接時と同じ姿勢に保って、溶接トーチ50及び溶接ワイヤーを配管21aの周方向zに移動させる。1つのパスで次層の肉盛溶接が終了しない場合には、溶接トーチ50を、配管21aの開先22と当て材23の開先との間で、配管21aの半径方向yに移動させ、その後、溶接トーチ50及び溶接ワイヤーを配管21aの周方向zに移動させて、次層の1つ目のパスに隣接した、次層の2つ目のパスの肉盛溶接を行う。このように、溶接トーチ50の、配管21aの軸方向xで突合せ面2に向かう移動、配管21aの半径方向yへの移動、及び配管21aの周方向zへの移動を繰り返して、配管21aの開先22と当て材23の開先との間で肉盛溶接を行う。この肉盛溶接が、配管21aの開先22と当て材23の開先との間で、突合せ面27まで行われたとき、配管21aの開先22と当て材23の開先との間に、これらの開先の底部から突合せ面27に達する肉盛層24aが形成される(図4(D)参照)。
【0032】
本実施例においても、実施例1と同様に、溶融池が凝固するに伴って、配管21aの開先22と当て材23の開先との間の底部から配管21aの軸方向xに伸びるデンドライトが形成される。配管21aの開先22と当て材23の開先との間に存在する肉盛層24a内に形成されたデンドライトが、配管21aの周方向zに形成された、配管21aの母材と肉盛層24aの境界部12から、肉盛溶接の、配管21aの周方向zに伸びる溶接線に直交する方向(配管21aの軸方向x)に伸びている。
【0033】
上記のように、デンドライトが伸びている肉盛層24aを形成することによって、本実施例も、実施例1と同様に、SCCが発生しやすい配管1aの軸方向xにおける引張残留応力がほぼ0MPaになる。
【0034】
配管21aの開先22と当て材23の開先との間に肉盛層24aが形成された後、配管21aの内面29から当て材23が取り外され、肉盛層24aの内面が配管21aの内径と同じになるように機械加工され、配管21aの溶接側の端部に機械加工により開先25a(第1開先)が形成される(図4(E)参照)。この状態では、肉盛層24aの内面が配管21aの内面に連なっている。
【0035】
配管21aに突合せ溶接される他方の配管21bにも、配管21aと同様に、肉盛層24bを形成し、肉盛層24aの内面を機械加工し、さらに配管21bの溶接端部に開先25b(第1開先)を形成する。配管21bに形成された肉盛層23bにも、配管21aと同様に、配管21bの軸方向において、その境界部12から肉盛層23bの先端に向って伸びているデンドライトが形成されている。
【0036】
その後、配管21aの開先25aと配管21bの開先25bを対向させて配置し(図4(F)参照)、開先25aと開先25bを溶接により接合する(図4(G)参照)。この配管21aと配管21bの突合せ溶接は、向かい合っている開先25aと開先25bの間に配管の半径方向yを向くように溶接トーチ50(または溶接ワイヤー)を配置し、溶接トーチ50及び溶接ワイヤーを配管の周方向zに移動させて溶接ビードを順次形成しながら、開先25aと開先25bの間で配管21a,21bの内面側の初層溶接を行う。その後、溶接トーチ50及び溶接ワイヤーの配管の半径方向yへの移動及び配管の周方向zへの移動を繰り返しながら、多層多パスの溶接ビードを形成して開先25aと開先25bの間を溶接する。このような突合せ溶接により、肉盛層24aと肉盛層24bの間に溶接金属部26が形成され、配管21aと配管21bの突合せ溶接が終了する。溶接金属部26の形成にもオーステナイト系ステンレス鋼製の溶接ワイヤーを使用した。肉盛層24a,24bのそれぞれの、配管軸方向xの長さは、ほぼ20mmである。溶接金属部26の内面における配管軸方向xでの幅は、約5mmである。
【0037】
配管内面29でのSCCの発生を抑制するためには、その内面29において、肉盛層24aと配管21aとの境界部12で軸方向xに引張残留応力を発生させないことが重要である。そこで、上記した図4(B)から図4(E)の工程によって内面29側に肉盛層24aを形成した、管状試験体である配管21aを作製し、この配管21aの内面に複数の歪ゲージを張り付けた。これらのひずみゲージを用い、歪開放法により、配管21aの内面29における軸方向xの残留応力を測定した。この測定結果を図5に示す。図5は、配管21aの軸方向xにおける測定された残留応力の変化を示している。図5において、横軸は、配管21aの母材と肉盛層24aとの境界からの配管21aの軸方向xにおける距離を示している。測定された圧縮残留応力は、肉盛層24a内では若干であるが圧縮残留応力になっている。配管21aの母材内では、引張残留応力が肉盛層24a近傍で僅かに生じているが、この引張残留応力の値は50MPa以下である。この値は、従来の配管の突合せ溶接法により接合された配管の溶接熱影響部に発生する引張残留応力に比べれば6分の1以下になる。
【0038】
さらに、図4(B)から図4(E)に示す工程により、配管21bの溶接端部の内面に肉盛層24bを形成し、内面に肉盛層24aを形成した配管21aと内面に肉盛層24bを形成した配管21bを図4(F)に示す突合せ溶接可能な状態に配置し、図4(F)に示す突合せ溶接により配管21aと配管21bを接合し、突合せ溶接された管状試験体を作成した。肉盛層24a,24bはこの環状試験体の外径は600mmであり、管状試験体に用いられた配管21a,21bはオーステナイト系ステンレス鋼で作られている。この管状試験体の内面の残留応力を、管状試験体の内面に歪ゲージを貼って歪開放法を用いて測定した。この測定結果を図6及び図7に示す。
【0039】
図6は、管状試験体内面での軸方向xの残留応力の変化を示している。図6において、横軸は金属溶接部26の軸方向xの中心からの配管軸方向xの距離を示している。測定された管状試験体内面での軸方向xの残留応力は、金属溶接部26の軸方向xの中心近傍で300MPaの引張残留応力になっており、金属溶接部26の軸方向xの中心から軸方向xに±20mmの範囲では引張残留応力になっている。金属溶接部26の軸方向xの中心から軸方向xにさらに離れた、配管21a,21bの母材の内面では、軸方向xの残留応力が圧縮残留応力になっていた。
【0040】
図7は、管状試験体内面での周方向zの残留応力の変化を示している。図7において、横軸は金属溶接部26の軸方向xの中心からの配管軸方向xの距離を示している。測定された管状試験体内面での周方向zの残留応力は、金属溶接部26の軸方向xの中心から軸方向xに±100mmの範囲では圧縮残留応力になっている。
【0041】
図6及び図7に示す測定結果から、図4に示す工程に基づいて行った本実施例の構造部材の溶接方法により作成された配管の溶接継手構造は、金属溶接部26の軸方向xの中心から軸方向xに±20mmの範囲で引張残留応力になっているが、この領域は耐食性の高い肉盛層24a及び24bであるため、この部分でのSCC発生を抑制できる。また、配管21a,21bのそれぞれの母材の溶接熱影響部、すなわち、配管21aの母材と肉盛層24aの境界部12、及び配管21bの母材と肉盛層24bの境界部12では、図6に示された、金属溶接部26の軸方向xの中心から軸方向xに±20mm離れた各位置に相当するため、軸方向xの引張残留応力が存在しない(または極めて小さい)。このため、配管21a,21bのそれぞれの母材の溶接熱影響部における、配管の肉厚方向でのSCCも抑制することができる。金属溶接部26の軸方向xの中心では、300MPaの引張残留応力が生じているが、一般的に、金属溶接部26ではSCCが発生しない。
【0042】
本実施例の構造部材の溶接方法で作製された配管の溶接継手構造において、肉盛層24a及び24bのそれぞれの断面金属組織を観察した。この結果、前述したように、配管の母材と肉盛層の境界部12から、配管の周方向zに伸びる肉盛りの溶接線に直交する方向(軸方向x)に伸びている柱状晶(デンドライト)、すなわち、一つ一つの溶接ビードの断面で初期凝固部(境界部12に接した凝固部)から最終凝固部(金属溶接部26に接した凝固部)へ向けて伸長したデンドライトが認められた。また、配管内面29での肉盛層24aの金属組織を観察した場合にも、配管の周方向zに伸びる肉盛溶接の溶接線に直交する方向(軸方向x)に伸長したデンドライトが確認された。配管内面29の肉盛層24aにおいて溶接金属部26境界近傍に配管軸方向xに引張残留応力が存在するが、デンドライトの伸長方向が引張残留応力が作用する方向と平行であるため、この肉盛層24a、及び肉盛層24a近傍の配管21aの溶接熱影響部における、配管の肉厚方向でのSCCの発生を抑制することができる。
【0043】
なお、本実施例の配管(構造部材)の溶接継手構造では、金属溶接部26の軸方向xの中心から軸方向xに±10mm離れた各位置でも、引張残留応力が約100MPaまで低下するので、肉盛層24a,24bの軸方向xの長さを10mm程度にしても、配管21a,21bのそれぞれの母材の溶接熱影響部におけるSCCの発生を抑制することができると考えられる。配管21a,21bの外径により、溶接後において配管に生じる、軸方向x及び周方向zのそれぞれの残留応力分布が異なるため、配管寸法に応じて肉盛層の寸法及び形状を変更する必要がある。
【0044】
外径600mmのオーステナイト系ステンレス鋼配管を用いて、実施例2の図4(B)から図4(G)示す各工程を適用し、肉盛層24a,24bをNi基合金の溶接ワイヤーを用いて形成し、金属溶接部26をオーステナイト系ステンレス鋼製の溶接ワイヤーを用いて形成した。このような構造部材の溶接方法で得られた構造部材の溶接継手構造においても、図6及び図7に示すそれぞれの残留応力分布を得ることができた。Ni基合金で配管の内面に肉盛層24a,24bを形成し、オーステナイト系ステンレス鋼で金属溶接部26を形成した場合でも、実施例2と同様に、構造部材の溶接継手構造におけるSCCの発生を抑制することができる。
【実施例3】
【0045】
本発明の他の実施例である実施例3における構造部材の溶接方法を、図8を用いて説明する。
【0046】
実施例1及び2は配管の溶接を対象にしたものであるのに対し、本実施例は板部材の溶接を対象にしたものである。本実施例の構造部材の溶接方法は、SUS316Lオーステナイト系ステンレス鋼製の2つの板部材(板厚50mm)の突合せ溶接に適用される。本実施例も、実施例2と同様に、突合せ面全体に肉盛溶接を行うのではなく、SCCが懸念される部分、特に、板部材の表及び裏のそれぞれの表面部分にのみ肉盛溶接を施している。
【0047】
平板である板部材41aの一端に突合せ面51が形成されている(図8(A)参照)。板部材41aは、2つの表面、すなわち、A面及びB面を有する。図示されていないが、板部材41aに突合せ溶接される板部材41bの一端にも突合せ面51が形成されている。実施例3においては、突合せ面51に直交する方向をx軸方向、A面及びB面に直交する方向をy軸方向、及びx軸方向及びy軸方向に直交する方向(突合せ面51に平行な方向)をz軸方向という。
【0048】
板部材41aの突合せ面51においてA面及びB面29側に、肉盛層を形成するために開先42及び43(第1開先)をそれぞれ形成する(図8(B)参照)。形成された開先42及び43は、突合せ面27から板部材41aの表面に沿って形成されており、x軸方向における突合せ面27からの長さがそれぞれ50mmである。開先44aを形成した当て材44が板部材41aのA面に取り付けられ、開先45aを形成した当て材45が板部材41aのB面に取り付けられる(図8(C)参照)。開先44aは板部材41aに形成した開先42と向き合っており、開先45aは板部材41aに形成した開先43と向き合っている。
【0049】
当て材44,45を取り付けた状態で、開先44aと開先42の間、及び開先45aと開先43の間で、肉盛溶接がそれぞれ行われる。開先44aと開先42の間及び開先45aと開先43の間での肉盛溶接の方法は同じであるので、代表して、開先44aと開先42の間での肉盛り溶接について説明する。この肉盛溶接は、実施例1における突合せ面2における肉盛溶接と同様に、溶接トーチ50(または溶接ワイヤー)を突合せ面51に対して垂直に(A面に平行に)して軸方向xに配置し、この状態で、溶接トーチ50を突合せ面51に平行な方向(z軸方向)に移動させながら開先44aと開先42の間で溶接ワイヤーを溶融させて行われる(図8(D)参照)。本実施例では、溶接ワイヤーはオーステナイト系ステンレス鋼製のワイヤーを使用し、肉盛溶接はTIG溶接で行っている。
【0050】
開先44aと開先42の間での肉盛溶接は、具体的には、開先44a及び42のx軸方向における底部に溶接ワイヤーの溶融池(ビード)を形成し、溶接トーチ50をz軸方向に移動させることによって、この溶融池もz軸方向に移動される。このようにして、その底部で初層の肉盛溶接が行われる。その後、溶接トーチ50をx軸方向で突合せ面51に向かって移動させ、初層の肉盛溶接部の上に次層の肉盛溶接を、溶接トーチ50の姿勢を初層の肉盛溶接時におけるその姿勢と同じ状態に保って、溶接トーチ50及び溶接ワイヤーをz軸方向に移動させる。1つのパスで次層の肉盛溶接が終了しない場合には、溶接トーチ50を、開先42と開先44aとの間で、y軸方向に移動させ、その後、溶接トーチ50及び溶接ワイヤーをz軸方向に移動させて、次層の1つ目のパスに隣接した、次層の2つ目のパスの肉盛溶接を行う。このように、溶接トーチ50の、x軸方向で突合せ面51に向かう移動、y軸方向への移動、及びz軸方向への移動を繰り返して、開先42と開先44aとの間で肉盛溶接を行う。この肉盛溶接が、開先42と開先44aとの間で、突合せ面51まで行われたとき、開先42と開先44aとの間に、これらの開先の底部から突合せ面51に達する肉盛層46aが形成される。開先43と開先45aとの間でも、同様にして、突合せ面51に達する肉盛層47aが形成される(図8(D)参照)。肉盛層46a及び47aのx軸方向における長さは、それぞれほぼ50mmである。
【0051】
本実施例においても、実施例1と同様に、肉盛溶接時に溶融池が凝固するに伴って、肉盛層46a内で開先42と開先44aとの間の底部からx軸方向に伸びるデンドライトが形成される。開先42と開先44aとの間に存在する肉盛層24a内に形成されたデンドライトが、z軸方向に形成された、板部材41aの母材と肉盛層46aの境界部12から、z軸方向に伸びる肉盛りの溶接線に直交する方向(x軸方向)に伸びている。開先43と開先45aとの間に存在する肉盛層47a内においても、デンドライトが、z軸方向に形成された、板部材41bの母材と肉盛層47aの境界部12から、z軸方向に伸びる肉盛りの溶接線に直交する方向(x軸方向)に伸びている。
【0052】
肉盛層46a及び47aが形成された後、板部材41aのA面から当て材44が取り外され、板部材41aのB面から当て材45が取り外される。そして、肉盛層46aのA面側がA面と同じ面になるように機械加工され、肉盛層47aのA面側がB面と同じ面になるように機械加工される。板部材41aの溶接側の端部(突合せ面51側)に機械加工により開先48(第1開先)が形成される(図8(E)参照)。この状態で、肉盛層46aの表面が板部材41aのA面に連なっており、肉盛層47aの表面が板部材41aのB面に連なっている。
【0053】
板部材41aに突合せ溶接される他方の板部材41bに対しても、図8(B)から図8(E)の各工程が実行され、板部材41aと同様に、肉盛層46b,47bを形成して溶接端部に開先48(第1開先)を形成する。板部材41aの溶接端部と板部材41bの溶接端部を対向させたとき、それぞれに形成された開先48がX型になる。
【0054】
その後、板部材41aの開先48と板部材41bの開先48を対向させて配置し(図8(F)参照)、両方の開先48を溶接により接合する(図8(G)参照)。これらの板部材41aと板部材41bの突合せ溶接は、向かい合っている両開先48間にy軸方向を向くように溶接トーチ50(または溶接ワイヤー)を配置し、溶接トーチ50(または溶接ワイヤー)をz軸方向に移動させて溶接ビードを順次形成しながら、対向する両開先48の間のA面側の底部で板部材41aと板部材41bを接合する初層溶接を行う。その後、溶接トーチ50(または溶接ワイヤー)のy軸方向でA面に向かう移動、x軸方向への移動及びz軸方向への移動を繰り返しながら、多層多パスの溶接ビードを形成してA面側での対向する両開先48(図8(F)で上部の開先48)を溶接する。このような突合せ溶接により、肉盛層46aと肉盛層46bの間に溶接金属部49が形成される。そして、対向する両開先48の間のB面側の底部で板部材41aと板部材41bを接合する初層溶接が行われ、その後、多層多パスの溶接ビードを形成してB面側での対向する両開先48(図8(F)で下部の開先48)を溶接する。このような突合せ溶接により、肉盛層47aと肉盛層47bの間に溶接金属部50が形成され、板部材41aと板部材41bの突合せ溶接が終了する。溶接金属部49及び50の形成にもオーステナイト系ステンレス鋼製の溶接ワイヤーを使用した。肉盛層46a,46b,47a,47bのそれぞれのx軸方向の長さは、ほぼ50mmである。溶接金属部49のA面でのx軸方向での幅及び溶接金属部50のB面でのx軸方向での幅は、それぞれ約20mmである。
【0055】
以上のようにして作製したSUS316Lを用いたオーステナイト系ステンレス鋼板部材の溶接継手構造において、A面及びB面でのそれぞれの残留応力を歪ゲージを用いた歪開放法で測定した。これらの測定結果を図9、図10、図11及び図12に示す。
【0056】
図9は突合せ溶接された、平板である板部材(板部材41a,41b)のA面における溶接線に直交する方向(x軸方向)の、x軸方向における残留応力の変化、図10は突合せ溶接された板部材(板部材41a,41b)のA面における溶接線に平行な方向(z軸方向)の、x軸方向における残留応力の変化、図11は突合せ溶接された板部材(板部材41a,41b)のB面における溶接線に直交する方向(x軸方向)の、x軸方向における残留応力の変化、及び図12は突合せ溶接された板部材(板部材41a,41b)のB面における溶接線に平行な方向(z軸方向)の、x軸方向における残留応力の変化をそれぞれ示している。
【0057】
いずれの測定結果においても、溶接金属部(溶接金属部49または50)のx軸方向の中心近傍では300MPa以上の引張残留応力が生じている。肉盛層46a,46b(または肉盛層47a,47b)はx軸方向において溶接金属部のx軸方向の中心から±50mmの範囲内にあり、これらの領域の外側に存在する板部材41a,41bのそれぞれの母材では、いずれの測定でも引張残留応力が150MPa未満になっている。
【0058】
図9から図12に示された測定結果から、図8に示す本実施例の構造部材の溶接方法で作製した板部材の溶接継手構造は、x軸方向において溶接金属部のx軸方向の中心から±50mmまでの範囲内では150MPa以上の引張残留応力が生じているが、この領域は、A面側では溶接金属部49及び耐食性の高い肉盛層46a、46bが存在し、B面側では溶接金属部50及び耐食性の高い肉盛層47a、47bが存在しているため、SCCの発生を抑制できる。また、板部材の母材における溶接熱影響部、すなわち、板部材41aの母材と肉盛層46a及び47aのそれぞれとの境界部12、及び板部材41bの母材と肉盛層46b及び47bのそれぞれとの境界部12は、x軸方向において、溶接金属部のx軸方向の中心から±50mmの各位置に位置している。このため、肉盛層46Aa,46b,47Aa,47bのそれぞれに上記したデンドライトが形成されるので、それぞれの境界部12における引張残留応力が150MPa未満に低減され、板部材の母材における溶接熱影響部における、肉厚方向でのSCCの発生も抑制することができる。
【符号の説明】
【0059】
1a,1b,21a,21b…配管、2,27,51…突合せ面、3Aa,3b,24a,24b,46a,46b,47a,47b…肉盛層、4Aa,4b,22,25a,25b,42,43,44Aa,45a,48…開先、5,26,49,50…溶接金属部、6…母材、10…フェライト相、11…オーステナイト相、13…溶融金属、41a,41b…板部材、50…溶接トーチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉盛層を形成した一対の構造部材と、それぞれの前記構造部材の前記肉盛層同士を接合した溶接金属部とを有し、それぞれの前記肉盛層内に、前記肉盛層に形成される肉盛りの溶接線と直交する方向に伸びるデンドライトが形成されていることを特徴とする構造部材の溶接継手構造。
【請求項2】
前記肉盛層が前記構造部材の肉厚方向の全体に亘って形成されている請求項1に記載の構造部材の溶接継手構造。
【請求項3】
前記肉盛層が前記構造部材の肉厚方向の一部に形成されて前記肉盛層の表面が前記構造部材の表面に連なっている請求項1に記載の構造部材の溶接継手構造。
【請求項4】
前記構造部材が管状部材であり、前記デンドライトが形成される前記肉盛層が前記管状部材の内面に形成され、前記肉盛層の表面が前記管状部材の表面に連なっている請求項1または3に記載の構造部材の溶接継手構造。
【請求項5】
前記構造部材が板状部材であり、前記デンドライトが形成される前記肉盛層が前記板状部材の肉厚方向の一部に形成されて前記肉盛層の表面が前記板状部材の表面に連なっている請求項1に記載の構造部材の溶接継手構造。
【請求項6】
前記デンドライトが、前記構造部材の母材と前記肉盛層の境界部から、前記直交する方向に伸びている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の構造部材の溶接継手構造。
【請求項7】
前記構造部材がオーステナイト系ステンレス鋼製の構造部材である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の構造部材の溶接継手構造。
【請求項8】
肉盛りの溶接線と直交する方向に伸びるデンドライトが形成される肉盛層を、接合される一対の構造部材のそれぞれの溶接側端部に形成し、
前記一対の構造部材に形成されたそれぞれの前記肉盛層に第1開先を形成し、
それぞれの前記第1開先同士を対向させて前記一対の構造部材を溶接にて接合することを特徴とする構造部材の溶接方法。
【請求項9】
前記肉盛層を前記構造部材の肉厚方向の全体に亘って形成する請求項8に記載の構造部材の溶接方法。
【請求項10】
前記肉盛層を前記構造部材の肉厚方向の一部に形成する請求項8に記載の構造部材の溶接方法。
【請求項11】
前記肉盛層を前記構造部材の肉厚方向の一部に形成する際に、前記肉盛層を形成する、前記構造部材の表面に第2開先を形成し、この第2開先に前記肉盛層を形成する請求項10に記載の構造部材の溶接方法。
【請求項12】
前記第2開先での前記肉盛層の形成は、当て材を、前記第2開先に対向させて前記構造部材の表面に取り付け、前記第2開先と前記当て材の間に前記肉盛層を形成し、その後、前記当て材を前記構造部材から取り外す請求項11に記載の構造部材の溶接方法。
【請求項13】
前記肉盛層の形成に際して、溶接トーチ及び溶接ワイヤーのいずれかを、前記構造部材の前記溶接側端部に存在する、前記構造部材の端面に垂直になる状態で、移動させる請求項8ないし12のいずれか1項に記載の構造部材の溶接方法。
【請求項14】
前記構造部材が管状部材であり、前記溶接トーチ及び前記溶接ワイヤーのいずれかを、前記垂直になる状態で、前記管状部材の周方向に移動させる請求項13に記載の構造部材の溶接方法。
【請求項15】
前記構造部材が板状部材であり、前記溶接トーチ及び前記溶接ワイヤーのいずれかを、前記肉盛り溶接線と直交する状態で移動させて前記肉盛層を形成する請求項13に記載の構造部材の溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−30237(P2012−30237A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170064(P2010−170064)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】