説明

模様付半硬化樹脂シートとその製造法及び模様付半硬化樹脂シートを用いた成形品

【課題】 本発明は、製作時間が短く、型への追随性が良好である模様付半硬化樹脂シート、またその製造方法、更に、この模様付半硬化樹脂シートを用いた成形品を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、クリアフィルムと、そのクリアフィルム上の模様層と、この模様層の上の織布又は不織布とを備え、上記織布又は不織布が、加熱硬化剤及び光硬化剤を添加された成形用樹脂を含浸され、半硬化とした模様付半硬化樹脂シートである。
(B)以下の工程にて製造される模様付半硬化樹脂シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室ユニット等の住宅設備の防水パン等に用いられる模様付半硬化樹脂シート、この樹脂シートの製造方法、樹脂シートを用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の浴室ユニットの模様入り成形品は、インキで模様付けした転写フィルムを用いて、ベースフィルム上の表面樹脂に転写フィルムの模様を転写し半硬化状態とする模様付半硬化樹脂シートを形成し、更に模様付半硬化樹脂シートと熱硬化性繊維強化成形材料を重ね合せ成形型内で加圧・加熱し一体成形する方法が採用されている。そして、転写フィルムを用いて模様付半硬化樹脂シートを製造する方法としては、特許文献1に示すものが知られている。
【0003】
また、模様付半硬化樹脂シートと熱硬化性繊維強化成形材料を重ね合せ表面用型と裏面用型により加圧・加熱成形し一体化する方法としては、特許文献2に示すものが知られている。
【0004】
特許文献1により得られる模様付半硬化樹脂シートは、連鎖移動剤の作用により硬化度を容易に調整できるので、べとつきがなく、柔軟性があるため、転写フィルム及びベースフィルムを剥がしてもシートの形状を保ち、取扱いが容易であり、重合が停止しているため一定の期間保存が可能であり、表面に模様を有するFRP成形品の製造が効率的に行える利点がある。また、プレス成形時のSMCの流動に対しても流出、クラック破壊等を起こさない程度の強度と柔軟性を有し、完全硬化時に成形材料との接着を可能とするだけの反応基(架橋点)を残しているため、成形材料との密着性も確保される。
【特許文献1】特開平06−134785号公報
【特許文献2】特開平06−134784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記方法は次のような問題もある。
転写フィルムを用いて模様付半硬化樹脂シートを製造する工程、すなわち未硬化の熱硬化性樹脂を硬化又は半硬化状態にする工程で、熱硬化性樹脂に配合された加熱硬化剤は加熱処理により分解作用を受け、硬化が徐々に進行した後、連鎖移動剤の作用で停止するが、所望の硬化又は半硬化状態に至るまでに処理時間(約20分間加熱)を要する。
【0006】
また、浴室ユニットに搭載される防水パンの洗い場床表面は、排水性、乾き性、ノンスリップ性(転倒防止)等の顧客要求から、微細凹凸加工、艶消し加工、細かい排水溝加工等が施されてきた。これに伴い、表面用型の表面形状も従来表面用型に比べ、より微細な凹凸、艶消し形状に変化しており、上記方法においては表面形状の十分な転写性が得られない。
【0007】
すなわち、熱硬化性繊維強化成形材料と模様付半硬化樹脂シートを表面用型と裏面用型により加熱・加圧成形して一体化し、表面に模様を有する成形品を成形する工程において、模様付半硬化樹脂シートを高温の表面用型上に載置した直後より、模様付半硬化樹脂シートに含まれる加熱硬化剤の残存分は熱による分解作用を受け、徐々に硬化が進行するため、模様付半硬化樹脂シートは硬くなり、表面用型の表面形状、特に微細凹凸、艶消し形状の場合、追随性が不足し、所望の表面形状の転写性が得られないことがある。
【0008】
本発明は、製作時間が短く、型への追随性が良好である模様付半硬化樹脂シート、またその製造方法、更に、この模様付半硬化樹脂シートを用いた成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(A)本発明は、クリアフィルムと、そのクリアフィルム上の模様層と、この模様層の上の織布又は不織布とを備え、上記織布又は不織布が、加熱硬化剤及び光硬化剤を添加された成形用樹脂を含浸され、半硬化とした模様付半硬化樹脂シートである。
(B)以下の工程にて製造される模様付半硬化樹脂シートの製造方法。
(1)表面層形成用樹脂に可溶なインキで片面を模様付けした転写フィルムの模様付け面上に織布及び/又は不織布を重ねる工程。
(2)織布及び/又は不織布の一端に予め加熱硬化剤及び光硬化剤を添加した未硬化の表面層形成用樹脂を塊状に載置する工程。
(3)光透過可能なクリアフィルムの端部を、前記塊状の表面層形成用樹脂に押し付け、次いでクリアフィルムをローラにより転写フィルム表面上の織布及び/又は不織布の一端部側から押圧して、塊状の表面層形成用樹脂を均一に延伸しながら脱泡すると同時に織布及び/又は不織布に含浸させながら表面層形成用樹脂の上に重ね合わせる工程。
(4)光硬化処理して延伸した表面層形成用樹脂を硬化又は半硬化状態にすると共に転写フィルムから模様を転写する工程。
(C)以下の工程にて製造される模様付半硬化樹脂シートの製造方法。
(1)クリアフィルム表面上にインキで片面を模様付けした模様印刷不織布を重ねる工程。
(2)不織布の一端に予め加熱硬化剤及び光硬化剤を添加した未硬化の表面層形成用樹脂を塊状に載置する工程。
(3)光透過可能なクリアフィルムの端部を、前記塊状の表面層形成用樹脂に押し付け、次いでクリアフィルムをローラにより転写フィルム表面上の不織布の一端部側から押圧して、塊状の表面層形成用樹脂を均一に延伸しながら脱泡すると同時に不織布に含浸させながら表面層形成用樹脂の上に重ね合わせる工程。
(4)光硬化処理して延伸した表面層形成用樹脂を硬化又は半硬化状態にすると共に転写フィルムから模様を転写する工程。
(D)項(A)に記載の模様付半硬化樹脂シートのクリアフィルムを剥がし、成形材料を重ねて加熱・加圧し、模様付半硬化樹脂シートと成形材料とを一体化した模様付成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれは、型への追随性が良好である模様付半硬化樹脂シートを得ることができ、その製造方法では、製造時間を短縮することができる。また、本発明の模様付半硬化樹脂シートを用いた成形品は、柄の制限がなく、模様が鮮明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に用いる転写フィルムは、ベースフィルムの片面に表面樹脂に可溶なインキの単色層とその単色層上に配された模様層とが形成されている転写フィルムを用いることが好ましい。転写フィルムを構成するベースフィルムとしては、耐熱性、剥離性を有し、かつ表面樹脂に不溶であれば特に制限はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、フッ素系フィルム等のプラスチックフィルム、アルミ箔等の金属箔を単体又は他のフィルムと貼り合わせたもの、紙又はプラスチックフィルムの表面に離型性のある樹脂を塗布したもの等が使用できる。
【0012】
ベースフィルムの厚さは、表面樹脂を均一に延伸するために10μm〜100μm程度であることが好ましく、25μm〜50μmがより好ましい。この厚さが10μm未満では、フィルム取扱時にしわが入りやすく模様付半硬化樹脂シートの外観を損なうことがある。また、ローラによる表面層形成用樹脂の延伸時に穴明き等の不具合が発生しやすく模様付半硬化樹脂シート内に気泡が混入する傾向がある。
【0013】
ベースフィルムの片面に印刷する単色インキ層及び模様インキ層に使用するインキは、表面樹脂に可溶であるものから選ぶ。具体的には、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、硝化綿(ニトロセルロース)系樹脂等に顔料又は染料を混合したもの等が好ましい。模様は、木目、石調、抽象柄等いずれでもよく、特に制限するものではない。
【0014】
本発明に用いる織布及び/又は不織布は、好ましくは、表面形成用樹脂が含浸・硬化後に透明性が得られるもので、紙類や、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の有機繊維、あるいはガラス等の無機繊維製の織布、不織布を用いる。また、織布としては、平織り、綾織り等があり、不織布としては、フェルト状、マット状等があるが特に制限はない。また、繊維の目付け量は、5g/m〜250g/m程度であることが好ましく、15g/m〜100g/mがより好ましい。この目付け量が、5g/m未満では、加圧・加熱成形時の成形材料の流動により模様付半硬化樹脂シートが破損しやすい傾向があり、250g/mを超えると、表面形成用樹脂の使用量が増加し経済性が損なわれる傾向がある。
【0015】
本発明に用いる表面層形成用樹脂は、特に制限はないが、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましい。また、加熱硬化剤としては、有機過酸化物を用いる。有機過酸化物の10時間半減期温度は、摂氏90度〜130度(以下温度表示は、全て摂氏である。)程度であることが好ましく、100度〜125度がより好ましい。この有機過酸化物の10時間半減期温度が、90度未満では、成形材料と模様付半硬化樹脂シートを表面用型と裏面用型により加熱・加圧成形して一体化し、表面に模様を有する成形品を成形する工程において、模様付半硬化樹脂シートを高温の表面用型上に載置した直後より、模様付半硬化樹脂シートに含まれる熱分解型の硬化剤残存分が熱による分解作用を受け、硬化が進行する度合いが早くなる。
すなわち模様付半硬化樹脂シートが硬くなり、表面用型の表面形状、特に微細凹凸、艶消し形状の場合、追随性が不足したまま完全硬化に至るため、所望の表面形状の転写性が得られない傾向がある。
一方、有機過酸化物の10時間半減期温度が、130度を越えると成形材料と模様付半硬化樹脂シートを表面用型と裏面用型により加熱・加圧成形して一体化し、模様入り成形品を成形する工程において、所定の成形時間内に完全硬化に至らず、模様入り成形品の強度、耐水性等の性能が低下する傾向がある。あるいは、成形時間を延ばすことで対応する場合は、模様入り成形品の生産性が低下する傾向がある。
【0016】
本発明に用いる光硬化剤としては、ラジカル系光重合開始剤を用いる。光重合開始剤の紫外線吸収波長は、200nm〜450nm程度であることが好ましく、表面層形成用樹脂の光透過性、膜厚に応じ、光硬化処理に使用する紫外線ランプの放射する波長と合せ適宜選択する。
【0017】
本発明に用いるクリアフィルムは、光透過性、剥離性を有し、且つ熱硬化性樹脂に不溶であれば特に制限はない。通常は、アルミ箔等の金属箔を単体又は他のフィルムと貼り合わせたもの、紙等の不透明なものを除き、転写フィルムのベースフィルムと同じ素材のものが使用可能である。フィルムの厚さは、表面樹脂を均一に延伸するために10μm〜100μm程度であることが好ましく、25μm〜50μmがより好ましい。また、転写フィルムを押圧する方法は、表面層形成用樹脂を全面にわたって均一に脱泡、延伸でき、且つ、織布及び/又は不織布に含浸できればよく、特に制限はない。具体的には、ローラ等を用いて押圧することができる。
【0018】
表面層形成用樹脂の延伸された厚みは、50μm〜1000μm程度であることが好ましく、200μm〜500μmがより好ましい。この厚みが、50μm未満では、加圧・加熱成形時の成形材料の流動により模様付半硬化樹脂シートが破損しやすい傾向があり、1000μmを超えると、表面層形成用樹脂の使用量が増加し経済性が損なわれる傾向がある。
【0019】
光硬化処理としては、表面層形成用樹脂にクリアフィルムを介して紫外線を照射する方法を用いる。紫外線照射は、水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ等の紫外線照射ランプを用い、放射する紫外線の波長は、200nm〜450nm程度であることが好ましく、表面層形成用樹脂の光透過性、膜厚に応じ、光硬化処理に使用する光硬化剤の紫外線吸収波長と合せ適宜選択する。
【0020】
光硬化処理による表面層形成用樹脂の硬化又は半硬化状態としては、硬化度40%〜90%程度であることが好ましく、硬化度50%〜70%がより好ましい。この硬化度が、40%未満では、模様付半硬化樹脂シートは、転写フィルムを剥がした状態で模様が十分に転写されず、また、転写フィルム及びクリアフィルムを剥がした状態で、べとつきが有り、取扱い性が低下する傾向がある。また、模様付半硬化樹脂シートの強度が不足し、場合によってはプレスによる加熱・加圧成形時に破壊することがある。一方、硬化度が、90%を超えると、模様付半硬化樹脂シートを所望の形状に切断する際に割れたり、加圧・加熱成形時に表面用型表面の微細凹凸、光沢、艶消し形状への追従性が低下したり、未反応の反応基(架橋点)が不足し、成形材料との密着性が低下する傾向がある。
【0021】
光硬化処理における硬化度の調整は、光硬化剤の紫外線吸収波長、光硬化剤の添加量、紫外線照射ランプの放射する波長を選択し、紫外線照射量(=照射強度×照射時間)により調整する。尚、硬化度は、模様付半硬化樹脂シート内に残存するモノマー量を測定し、算出する。
【0022】
本発明に用いる模様印刷不織布は、インキで片面を模様付けした不織布が好ましく、紙類や、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の有機繊維、あるいはガラス等の無機繊維製の不織布を用いる。不織布としては、フェルト状、マット状等があるが特に制限はない。また、繊維の目付け量は、15g/m〜250g/m程度であることが好ましく、30g/m〜100g/mがより好ましい。この目付け量が、15g/m未満では、繊維表面へのインキ付着面積が少なく、模様が粗くなり鮮明性が低下する傾向があり、250g/mを超えると、表面層形成用樹脂の使用量が増加し経済性が損なわれる傾向がある。
【0023】
模様付半硬化樹脂シートの切断方法としては、特に制限はないが、切断寸法精度及び生産性に鑑み、トムソン型等を用いることが好ましい。
【0024】
本発明に用いる成形材料としては、SMC、TMC、BMC等の熱硬化性繊維強化成形材料を用いる。
【0025】
本発明にて述べる加圧・加熱成形方法としては、成形圧力が、3.98MPa〜9.81MPa程度(40kgf/cm〜100kgf/cm)であることが好ましく、4.90MPa〜7.85MPa(50kgf/cm〜80kgf/cm)であることがより好ましい。成形圧力が、3.98MPa未満では、模様付半硬化樹脂シートと成形材料の界面の空気が抜けにくい不具合が発生する傾向がある。
また、表面用型及び裏面用型温度が、110度〜155度程度であることが好ましく、120度〜145度であることがより好ましい。表面用型及び裏面用型温度が110度未満では、模様付半硬化樹脂シート及び成形材料が完全硬化するまでの時間が長く、生産性が低下する傾向がある。一方、表面用型及び裏面用型温度が155度を超えると、成形材料や模様付半硬化樹脂シートの硬化進行が早くなり、成形材料のプリゲルや、模様付半硬化樹脂シートの表面用型表面の微細凹凸、光沢、艶消し形状への追従性低下により、模様入りFRP成形品の外観が低下する傾向がある。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を説明する。
実施例1
工程1
図1(a)に示すように、表面層形成用樹脂に可溶なインキで片面を模様付けして御影石調の模様層1を形成した厚さ50μmのポリエステルフィルムの転写フィルム2の模様付け面上にガラス繊維の目付け量30g/mのガラスペーパー3を重ね、この表面上の一端部に、透明な未硬化のイソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂(ディーエイチ・マテリアル株式会社製、商品名 ポリセット3717)100重量部に、あらかじめ加熱硬化剤としてパークミルD(日本油脂株式会社製 商品名)を0.6重量部及び光硬化剤としてダロキュア1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 商品名)を0.3重量部添加した表面層形成用樹脂4を塊状に載置した。厚さ50μmからなるポリエステルフィルムのクリアフィルム5を用意した。このクリアフィルム5の端部側を塊状の表面層形成用樹脂4に押し付け、次いでクリアフィルム5をローラ6により転写フィルム2表面の一端部側から押圧しながら脱泡すると同時にガラスペーパー3に含浸させながら、塊状の表面層形成用樹脂4を均一に延伸し表面層形成用樹脂4の上に重ね合せた。
【0027】
次に、図1(b)に示すように、延伸した表面層形成用樹脂4に、水銀ランプ7より365nmを主波長とし、254nm、303nm、313nmの紫外線を照射して表面層形成用樹脂4の光硬化を進めた。光硬化は、紫外線照射量(900mJ/cm=照射強度60mW/cm×照射時間15sec)及びあらかじめ添加した光硬化剤の作用により硬化度60%で停止し、半硬化状態で第一段目の硬化が終了した。この後、転写フィルム2を剥がすと、半硬化状態の表面層形成用樹脂4の上面に御影石調の模様層1が転写された模様付半硬化樹脂シート8が形成された。この模様付半硬化樹脂シート8は表面にべとつきがなく、柔軟性があるためシート形状を保持し、取扱いも容易であつた。
【0028】
工程2
工程1で形成された模様付半硬化樹脂シート8は、光を遮断した状態で3日間常温保管した後に、300×300mmに切断、更に転写フィルム2及びクリアフィルム5を剥がし、図2(a)に示すように模様層1を上にして、即ちクリアフィルム5を剥がした面を表面用型9表面と接するように載置し、続いて成形材料10としてSMC(シート・モールディング・コンパウンド)を模様付半硬化樹脂シート8の上に重ね載置し、図2(b)に示すように、裏面用型11をプレス機により締めて加圧(7.85MPa)、加熱(表面用型9;140度、裏面用型11;130度)して成形(加圧・加熱;5分間)した。模様付半硬化樹脂シート8は、表面用型9及び裏面用型11内で成形材料10が流動し加熱硬化するのに伴い表面用型9に押し付けられ、表面用型9の表面形状に十分に追従した後に完全硬化して成形材料10と一体化し、第二段目の硬化が終了した。図2(c)に示すように、表面用型9及び裏面用型11を開き、図2(d)に示すように、成形品を取り出し、御影石調の模様が入った成形品12を得た。
【0029】
実施例2
工程1
図3(a)に示すように、厚さ50μmからなるポリエステルフィルムのクリアフィルム5の表面上に片面をインクで模様付けした大理石調の模様層13を有するポリエステル繊維の目付け量100g/mの模様印刷不織布14を模様層13が下になるよう重ね、この表面上の一端部に、透明な未硬化のイソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂(ディーエイチ・マテリアル株式会社製、商品名 ポリセット3717)100重量部に、あらかじめ加熱硬化剤としてパーブチルD(日本油脂株式会社製 商品名)を0.8重量部及び光硬化剤としてイルガキュア651(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 商品名)を0.3重量部添加した表面層形成用樹脂15を塊状に載置した。もう1枚の厚さ50μmからなるポリエステルフィルムのクリアフィルム16を用意した。このクリアフィルム16の端部側を塊状の表面層形成用樹脂15に押し付け、次いでクリアフィルム17をローラ6によりクリアフィルム5表面の一端部側から押圧しながら脱泡すると同時に模様印刷不織布14に含浸させながら、塊状の表面層形成用樹脂15を均一に延伸し表面層形成用樹脂15の上に重ね合せた。
【0030】
次に、図3(b)に示すように、延伸した表面層形成用樹脂15に、水銀ランプ7より365nmを主波長とし、254nm、303nm、313nmの紫外線を照射して表面層形成用樹脂15の光硬化を進めた。光硬化は、紫外線照射量(1200mJ/cm=照射強度60mW/cm×照射時間20sec)及び先に添加した光硬化剤の作用により硬化度60%で停止し、半硬化状態で第一段目の硬化が終了した。半硬化状態の表面層形成用樹脂15内部に大理石調の模様層13が含浸一体化された模様付半硬化樹脂シート17が形成された。この模様付半硬化樹脂シート17は表面にべとつきがなく、柔軟性があるためシート形状を保持し、取扱いも容易であつた
【0031】
工程2
工程1で形成された模様付半硬化樹脂シート17は、光を遮断した状態で7日間常温保管した後に、1400×700mmに切断、更にクリアフィルム5、16を剥がし、図4(a)に示すように模様層13の意匠面を下にして、即ちクリアフィルム5を剥がした面を表面用型18表面と接するように表面用型18の上に載置し、続いて成形材料10としてSMC(シート・モールディング・コンパウンド)を模様付半硬化樹脂シート17の上に重ね、図4(b)に示すように、裏面用型19をプレス機により締めて加圧(5.88MPa)、加熱(表面用型18;140度、裏面用型19;130度)して成形(加圧・加熱;5分間)した。模様付半硬化樹脂シート18は、表面用型18及び裏面用型19内で成形材料10が流動し加熱硬化するのに伴い表面用型18に押し付けられ、表面用型18の表面形状に追従した後に完全硬化して成形材料10と一体化し、第二段目の硬化が終了した。図4(c)に示すように、表面用型18及び裏面用型19を開き、成形品を取り出し、図4(d)に示す大理石調の模様が入ったFRP成形品20を得た。
【0032】
上記実施例において、模様付半硬化樹脂シートは、べとつきがなく、柔軟性があるため、フィルムを剥がしてもシートの形状を保ち、取扱いが容易であり、硬化が停止しているため一定の期間保存可能である。また、加圧・過熱成形時の成形材料の流動に対しても流出、クラック破壊等を起こさない程度の強度と柔軟性を有し、完全硬化時に成形材料との接着を可能とするだけの反応基(架橋点)を残しているため、成形材料との密着性も確保される。また、高温の表面用型上に模様付半硬化樹脂シートを載置してからの硬化進行において、模様付半硬化樹脂シートに含まれる光硬化剤の残存分は熱による分解作用を受けず、且つ加熱硬化剤は高温分解型を選択することで硬化進行を抑制でき、従来の加熱硬化剤及び連鎖移動剤を添加した模様付半硬化樹脂シートに比べ、加圧・加熱成形中の柔軟性が長く維持され、表面用型表面の微細凹凸、光沢、艶消し形状への追従性が向上する。これにより、表面用型表面形状の転写性に優れた模様入り成形品が得られる。
【0033】
模様付半硬化樹脂シートは、模様の色や、木目、石調、抽象柄等の柄の制限がなく、模様の鮮明性に優れ、模様入りFRP成形品の製造に好適である。
模様付半硬化樹脂シートの製造法は、紫外線照射量と光硬化剤の作用により短時間で製造することができ、生産性に優れる。更に、保管時に光を遮断した状態では光硬化剤の残存分の分解を抑止でき、また常温状態では加熱硬化剤の分解を抑止できるため、半硬化状態での保存性に優れる。また、硬化度を容易に調整できるので、表面がべとつかず取扱いが容易で、模様入りFRP成形品の製造工程における加圧・過熱成形時の成形材料の流動に対しても流出、クラック破壊等を起こさない程度の強度と柔軟性を有し、完全硬化時に成形材料との接着を可能とするだけの反応基(架橋点)を残しているため、成形材料との密着性も確保される。また、高温の表面用型上に模様付半硬化樹脂シートを載置してからの硬化進行において、模様付半硬化樹脂シートに含まれる光硬化剤の残存分は熱による分解作用を受けず、且つ加熱硬化剤は高温分解型を選択することで硬化進行を抑制でき、従来の加熱硬化剤及び連鎖移動剤を添加した模様付半硬化樹脂シートに比べ、加圧・加熱成形中の柔軟性が長く維持され、表面用型表面の微細凹凸、光沢、艶消し形状への追従性が優れる 模様付半硬化模様シートを製造できる。
模様入り成形品は、高い生産性を実現し、模様の鮮明性に優れ、型表面形状の転写性が高く意匠性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1における模様付半硬化樹脂シートの製造法を示す概略断面図であり、(a)は樹脂含浸工程を示し、(b)は硬化工程を示す。
【図2】本発明の実施例1における模様入り成形品の製造法を示す概略断面図であり、(a)は型への設置状態を示し、(b)は型締め状態を示し、(c)は型あけ状態を示し、(d)は模様入り成形品を示す。
【図3】本発明の実施例2における模様付半硬化樹脂シートの製造法を示す概略断面図であり、(a)は樹脂含浸工程を示し、(b)は硬化工程を示す。
【図4】本発明の実施例1における模様入り成形品の製造法を示す概略断面図であり、(a)は型への設置状態を示し、(b)は型締め状態を示し、(c)は型あけ状態を示し、(d)は模様入り成形品を示す。
【符号の説明】
【0035】
1…模様層、2…転写フィルム、3…ガラスペーパー、4…表面層形成用樹脂、5…クリアフィルム、6…ローラ、7…水銀ランプ、8…模様付半硬化樹脂シート、9…表面用型、10…成形材料、11…裏面用型、12…模様入りFRP成形品、13…模様層、14…模様印刷不織布、15…表面層形成用樹脂、16…クリアフィルム、17…模様付半硬化樹脂シート、18…表面用型、19…裏面用型、20…模様入りFRP成形品




【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリアフィルムと、そのクリアフィルム上の模様層と、この模様層の上の織布又は不織布とを備え、上記織布又は不織布が、加熱硬化剤及び光硬化剤を添加された成形用樹脂を含浸され、半硬化とした模様付半硬化樹脂シート。
【請求項2】
以下の工程にて製造される模様付半硬化樹脂シートの製造方法。
(1)表面層形成用樹脂に可溶なインキで片面を模様付けした転写フィルムの模様付け面上に織布及び/又は不織布を重ねる工程。
(2)織布及び/又は不織布の一端に予め加熱硬化剤及び光硬化剤を添加した未硬化の表面層形成用樹脂を塊状に載置する工程。
(3)光透過可能なクリアフィルムの端部を、前記塊状の表面層形成用樹脂に押し付け、次いでクリアフィルムをローラにより転写フィルム表面上の織布及び/又は不織布の一端部側から押圧して、塊状の表面層形成用樹脂を均一に延伸しながら脱泡すると同時に織布及び/又は不織布に含浸させながら表面層形成用樹脂の上に重ね合わせる工程。
(4)光硬化処理して延伸した表面層形成用樹脂を硬化又は半硬化状態にすると共に転写フィルムから模様を転写する工程。
【請求項3】
以下の工程にて製造される模様付半硬化樹脂シートの製造方法。
(1)クリアフィルム表面上にインキで片面を模様付けした模様印刷不織布を重ねる工程。
(2)不織布の一端に予め加熱硬化剤及び光硬化剤を添加した未硬化の表面層形成用樹脂を塊状に載置する工程。
(3)光透過可能なクリアフィルムの端部を、前記塊状の表面層形成用樹脂に押し付け、次いでクリアフィルムをローラにより転写フィルム表面上の不織布の一端部側から押圧して、塊状の表面層形成用樹脂を均一に延伸しながら脱泡すると同時に不織布に含浸させながら表面層形成用樹脂の上に重ね合わせる工程。
(4)光硬化処理して延伸した表面層形成用樹脂を硬化又は半硬化状態にすると共に転写フィルムから模様を転写する工程。
【請求項4】
請求項1に記載の模様付半硬化樹脂シートのクリアフィルムを剥がし、成形材料を重ねて加熱・加圧し、模様付半硬化樹脂シートと成形材料とを一体化した模様付成形品。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−315365(P2006−315365A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142502(P2005−142502)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【Fターム(参考)】