説明

横型ホットプレス

【課題】横型ホットプレス装置に於ける油圧シリンダの所要行程を短縮して、平面的な占有スペースの狭小化と、装置の廉価化を図る。
【解決手段】固定フレーム1Aの反対側へ、間に多数の熱盤4A、4Bを介在させて、可動フレーム1Bを対設し、各熱盤4A、4Bの間に単板11を挿入して熱圧処理する際に、フレーム移動機構8を介して、予め可動フレーム1Bを、固定フレーム1Aに向けて適宜位置まで前進させると共に、固定フレーム1Aに付設した鉤付アーム9を、揺動機構10を介して、図5に於て点線で示す待機位置から実線で示す係合位置へ揺動させて、鉤付アーム9の鉤部位9aと可動フレーム1Bに付設した鉤掛け部位(1a)とを係合させ、然る後に、油圧シリンダ3aを作動させ、加圧盤3を介して、熱盤4A、4Bを可動フレーム1Bに向けて押圧し、単板11を熱圧処理する構成を採る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベニヤ単板(以下、単に単板と称す)、合板などの被処理板材の複数枚を、個々に垂直方向へ並べ立てた状態(起立状態)にて熱圧処理する、横型ホットプレスの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱蒸気、加熱油、電熱器等の適宜の熱源を用いて、所望温度に加熱して成る熱盤の複数枚を、垂直方向に並べて、夫々水平方向へ移動自在に支持(保持)すると共に、各熱盤の間へ被処理板材を挿入してから、各熱盤を加熱面と垂直な水平方向へ押圧することによって、被処理板材を熱圧処理する横型ホットプレスが種々提案されており、代表的な構造として、例えば特許文献1に開示される構造が挙げられる。
【0003】
而して、特許文献1等に開示される横型ホットプレスの具体的な構造は、前後方向(被処理板材の押圧方向)に配設した一対の固定フレームを、上下方向(被処理板材の起立方向)及び左右方向(被処理板材の搬送方向)に夫々適宜間隔を隔てて並設した、上下各一対の横梁を用いて、固定的に連結すると共に、上方の一対の横梁に敷設された軌条に係合する、一対のロール状の移動部材を介して、前記固定フレームの一方又は双方の内側に、単一又は一対の押圧盤を前後方向へ移動自在に吊り下げ、該一対の押圧盤の内側に又は単一の押圧盤及び反対側の固定フレームの内側に、夫々片面加熱型の熱盤を付設し(通常は、断熱材を間に挟んで)、更に該片面加熱型の熱盤の内側に、前記移動部材と同様の構成で成る移動部材を介して、複数枚の両面加熱型の熱盤を前後方向へ移動自在に吊り下げ、且つ、前記移動部材の近傍に、前記各熱盤同士の開放間隔を一定に規制する間隔規制部材を併設し、而も前記固定フレームの一方又は双方に付設した油圧シリンダを介して、前記単一又は一対の押圧盤を前後方向に移動させることによって、固定フレームに付設した熱盤以外の熱盤を前後方向に移動させ、熱盤による被処理板材の熱圧処理と開放とを交互に行うものであり、被処理板材の搬入及び搬出は、熱盤の下方に配設したロールコンベヤ等の搬送体を介して行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−313863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、述上の如き構造によると、前記押圧盤を介して、前記各熱盤を、熱盤同士が最も離隔した状態の位置から、被処理板材を熱圧し得る位置まで移動させるに足る行程を有する、精密で長大な油圧シリンダを備えることが必須要件となるので、該長大な油圧シリンダを迅速に作動させるに足る油圧ポンプを含めた、装置全体の製造原価が高額化する難点があり、加えて、装置全体(特に、前後方向)の平面的な占有スペースも長大となってしまう難点もある。因に、各熱盤同士の最大間隔を50〜100mmと仮定し(一般的に、被処理板材の厚さ、反り具合等の処理条件に対応させて、適切な所要最大間隔を定める)、被処理板材の最多挿入枚数を40枚とすると、熱圧処理を施すに足る油圧シリンダの所要行程は約2m〜4mとなり、最多挿入枚数を60枚とすれば、所要行程は約3m〜6mにも及ぶので、たとえ、一対の固定フレームの夫々に対向状に油圧シリンダを備える構成を採ったとしても、結果的に、長大な油圧シリンダの後部が固定フレームから突出せざるを得ないこととなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記従来の横型ホットプレスの問題点を解消すべく開発したものであって、具体的には、被処理板材の押圧方向の前後いずれか片側へ固定的に備えられたた固定フレームと、該固定フレームの反対側に位置し、前記押圧方向の左右に配設された一対のフレームガイドに沿って、前記押圧方向へ移動可能に備えられた可動フレームと、前記両フレームの間に位置し、前記押圧方向の左右に配設された一対の加圧盤ガイドに沿って前記押圧方向へ移動可能に備えられた加圧盤と、前記固定フレーム又は可動フレームの内側と加圧盤の内側とに夫々断熱材を介して付設された片面加熱型の熱盤と、該片面加熱型の熱盤の内側に位置し、前記押圧方向の左右に配設された一対の熱盤ガイドに沿って前記押圧方向へ移動可能に備えられた複数枚の両面加熱型の熱盤と、前記各熱盤に係合する適宜位置に配設されており、各熱盤同士の開放間隔を一定に規制する間隔規制部材と、前記各熱盤の下方に配設されており、各熱盤の間に挿入される被処理板材の下辺を支持する支持部材と、前記可動フレームに係合する適宜位置に配設されており、可動フレームを前記押圧方向へ前進・後退移動させるフレーム移動機構と、前記両フレームの内のいずれか片方のフレームに付設されており、前記加圧盤を前記押圧方向へ前進・後退移動させる油圧シリンダと、前記両フレームの内のいずれか片方のフレームの左右に夫々設けられた適数箇所の鉤掛け部位と、前記可動フレームが固定フレームに所定距離まで接近した際に、前記鉤掛け部位と係合し得る鉤部位を先端側に有し、而も前記鉤掛け部位を有するフレームとは反対側のフレームの左右に夫々基端側が枢着された適数本の鉤付アームと、該鉤付アームを揺動させる揺動機構とを備えたことを特徴とする横型ホットプレス(請求項1)と、コロを介して、可動フレームとフレームガイドとを係合させて成る請求項1記載の横型ホットプレス(請求項2)と、加圧盤ガイド兼用の熱盤ガイドを備えると共に、片面加熱型の熱盤を介して、加圧盤を前記加圧盤ガイド兼用の熱盤ガイドに係合させて成る請求項1又は請求項2記載の横型ホットプレス(請求項3)と、コロを介して、熱盤と熱盤ガイドとを係合させて成る請求項1又は請求項2又は請求項3記載の横型ホットプレス(請求項4)と、固定フレーム及び可動フレームの左右に夫々二箇所の鉤掛け部位と、二本の鉤付アームとを設けて成る請求項1〜請求項4のいずれか一つの項に記載の横型ホットプレス(請求項5)とを提案する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に係る横型ホットプレスを、従来の横型ホットプレスと比較すると、可動フレームのフレームガイド、フレーム移動機構、鉤付アーム、揺動機構等が余分に必要となる反面、フレーム移動機構を介して、可動フレームを固定フレームに所定距離(例えば、全ての被処理板材と熱盤がほぼ密接状に接近する距離)まで接近させ、次いで、揺動機構を介して、鉤付アームの鉤部位を鉤掛け部位に係合させるように揺動させた後に、油圧シリンダ及び加圧盤を介して、各熱盤を押圧することにより、被処理板材に所望通りの熱圧処理を施し得るので、精密性を要する高価な油圧シリンダの所要行程を、従来に比べて顕著に短縮し得ると共に、油圧ポンプの容量も軽減して差支えないので、総じて、装置全体の製造原価の低減化が可能となり、而も油圧シリンダを短小化し得るので、平面的な占有スペースの狭小化も併せて可能となる。
【0008】
而して、本発明に係る横型ホットプレスに於ては、可動フレームをフレームガイド上へ直に載置する係合形態とし、前後に摺動させる構成を採ることも可能ではあるが、請求項2に開示する如く、コロを介する係合形態を採れば、円滑な移動が可能となり、フレーム移動機構の簡略化・省動力化が図り得るので有効である。また、加圧盤ガイドと熱盤ガイドとを個別に設ける構成を採っても差支えないが、請求項3に開示する如く、加圧盤ガイド兼用の熱盤ガイドを備えると共に、片面加熱型の熱盤を介して、加圧盤を前記加圧盤ガイド兼用の熱盤ガイドに係合させる構成を採れば、構造が一段と簡素化するので有効である。また、熱盤についても、可動フレームの場合と同様に、請求項4に開示する如く、コロを介して、熱盤ガイドに係合させる方が、熱盤ガイド上へコロを介さずに載置して前後に摺動させる係合形態を採る場合に比べて、円滑な移動が可能となるので、総じて有効である。また、熱圧時に於ける、前記両フレーム同士の係合の安定性、機構の簡略性などからして、鉤付アーム(及び鉤掛け部位)の配設数は、請求項5に開示する如く、両フレームの左右に夫々二本(二箇所)づつの、都合四本(四箇所)とするのが適当である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る横型ホットプレスの正面説明図である。
【図2】図1に例示した横型ホットプレスの一部破断平面説明図である。
【図3】図1に例示した横型ホットプレスの側面説明図である。
【図4】各熱盤の離隔時に於ける間隔規制部材の拡大斜視説明図である。
【図5】図1〜図4に例示した横型ホットプレスの平面作動説明図である。
【図6】各熱盤の接近時に於ける間隔規制部材の拡大斜視説明図である。
【図7】本発明に係る横型ホットプレスの異なる実施例の正面説明図である。
【図8】図6に例示した横型ホットプレスの一部破断平面説明図である。
【図9】図6に例示した横型ホットプレスの一部破断側面説明図である。
【図10】被処理板材用挿入ガイドの拡大斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に例示した実施の一例と共に更に詳述するが、横型ホットプレスを構成する各機構、機器類の作動を制御する制御機構については、格別特異な形態は必要なく、後述するように各機構、機器類の作動を制御できる機能を有する制御機構であれば足りるので、図示及び詳細な説明を省略した。
【実施例】
【0011】
図1〜図4に例示した横型ホットプレスに於て、1Aは、固定フレームであって、後述する可動フレーム用の左右一対のフレームガイドを兼用する基台2上の後端側(便宜上、図1の手前側、図2の下側、図3の左側を前端側、図1の奥側、図2の上側、図3の右側を後端側と称する)に固定的に備えられている。
【0012】
1Bは、左右の側面側の夫々に、後述する鉤付アーム9の鉤部位9aと係合する窓状の鉤掛け部位1a(但し、実質的に鉤部位9aと直接係合するのは窓の縁に相当する部位である)を有して成り、前記固定フレーム1Aの反対側(基台2上の前端側)に配設された可動フレームであって、下部に付設されたコロ1bを介して、前後方向へ移動可能に備えられており、図示しない制御機構の制御に基づき、後述するフレーム移動機構8の作動を得て、適時、単板11(被処理板材)の押圧方向へ前進・後退移動させられる。尚、前記窓状の鉤掛け部位の穿設位置、及び大きさについては、被処理板材の厚さの変更、処理枚数の不足等に適応し得るよう、鉤付アームの長さに対して、相応の余裕を有する穿設位置、及び大きさとする必要がある。
【0013】
2は、前記可動フレーム1Bの前進・後退移動をガイドする左右一対のフレームガイド兼用の基台であって、後述する熱盤ガイド5、支持部材7、フレーム移動機構8等の取付けを許容する部位も有している。
【0014】
3は、前記固定フレーム1Aの内側に配設された加圧盤であって、後述する片面加熱型の熱盤4Aと一体状を成すように断熱材4aを介して固着されると共に、該熱盤4Aに付設されたコロ4bを介して、後述する熱盤ガイド5に沿って前後方向へ移動可能に備えられており、図示しない制御機構の制御に基づき、前記固定フレーム1Aに配設された適数個(実施例は二個であるが、必要に応じて、変更可)の油圧シリンダ3aの作動を得て、適時、被処理板材の押圧方向へ前進・後退移動させられる。
【0015】
4Aは、断熱材4aを介して、前記可動フレーム1B、及び加圧盤3の夫々の内側に固着された片面加熱型の熱盤であって、加圧盤3に固着された熱盤4Aは、該熱盤4Aの左右ニ付設された一対のコロ4bを介して、後述する熱盤ガイド5に沿って前後方向へ移動可能に備えられいる。尚、図示する如く、加熱面の上側に面取りを施すか、或は図示省略は省略したが、適宜形状の被処理板材ガイドを付設すれば、被処理板材等の挿入が容易化するので好ましい。
【0016】
4Bは、前記片面加熱型の熱盤4Aの内側に配設された複数枚の両面加熱型の熱盤であって、各熱盤4Bの左右に付設された一対のコロ4bを介して、後述する熱盤ガイド5に沿って前後方向へ移動可能に備えられいる。尚、図示する如く、各加熱面の上側に面取りを施すか、或は図示省略は省略したが、適宜形状の被処理板材ガイドを付設すれば、被処理板材等の挿入が容易化するので好ましい。
【0017】
5は、一端を前記固定フレーム1Aに、他端を前記基台2に夫々固着された逆L字状の加圧盤ガイド兼用の熱盤ガイドであって、上面に載せられたコロ4bを介して、前記加圧盤と一体状を成す片面加熱型の熱盤4Aと、両面加熱型の熱盤4Bの前進・後退をガイドする。尚、必要に応じては、後述する実施例の如く、ガイド溝5aを設けることにより、ガイドの一層の安定化を図ることも可能である。
【0018】
6、6aは、各々が隣合う熱盤4A、4B、又は隣合う熱盤4B同士に分けて付設された二個で一組の間隔規制部材であって、被処理板材の押圧方向の左右夫々に適数(少なくとも被処理板材の処理枚数と同じ数)付設(実施例は熱盤側面に付設)されており、前記各熱盤同士の接近は無条件で許容し(図6参照)、且つ、各熱盤同士の離隔は一定限度までしか許容しないように規制する。
【0019】
7は、帯板状の支持部材であって、前記各熱盤4A、4B同士が離隔した際に、各熱盤4A、4B同士の間隔を下方から筋状に遮るように、複数条(実施例は7条)が連結支持具7aを介して、前記基台2の上方に付設されており、前記各熱盤4A、4Bの間に挿入される単板11の下辺を支持して、間隔内からの落下を防止する。因に、被処理板材が単板等の如く、比較的軟弱な板材である場合には、側方(左右方向)から直に各熱盤の間に搬入(及び搬出)するには不向きであるから、適宜の挟持搬送機構、図示は省略したが、例えば上部から垂下させた挟持部材によって、板材を挟持して搬送する形式の挟持搬送機構を用いて、図1に於て矢印で示す如く、上方から挟持して搬入(及び搬出)する形態が望ましく、また、単板の如く、強度に異方性を有する板材である場合には、比較的強度の有る方向を上下方向に向けるのが望ましい。
【0020】
8は、軸8a、軸受8b、鎖車8c、無端状の鎖8d、繋止具8e、連結具8f、減速機付電動機等から成る駆動源8g等を有するフレーム移動機構であって、図示しない制御機構の制御に基づき、適時、駆動源8gを正逆駆動させて、前記可動フレーム1Bを前進・後退移動させる。
【0021】
9は、先端側に、前記可動フレーム1Bの鉤掛け部位1aと係合する鉤部位9a(但し、実質的に鉤掛け部位1aと直接係合するのは鉤の内側面に相当する部位である)を有する鉤付アームであって、基端側が、前記固定フレーム1Aに付設された枢軸受け9b、該枢軸受け9bに嵌装された枢軸9cを介して、回動自在に枢支されており、図示しない制御機構の制御に基づき、後述する揺動機構10の作動を得て、適時、図示矢印の如く揺動することにより、単板11の熱圧処理に先立って、単板11の押圧方向に対する固定フレーム1Aと可動フレーム1Bとの係止を可能化し、また熱圧処理の終了後には、当該係止を無用化する。
【0022】
10は、流体シリンダ等から成る作動部材10a、接続具10b、支軸受10c等を有する揺動機構であって、図示しない制御機構の制御に基づき、適時、前記鉤付アーム9を図示矢印の如く揺動させる。
【0023】
本発明に係る横型ホットプレスは、例えば述上の如く構成するものであって、当初は、図示しない制御機構の制御に基づき、揺動機構10を介して、各鉤付アーム9を外方へ揺動させ、実線で示した待機位置で待機させると共に、フレーム移動機構8を介して、可動フレーム1Bを前端側へ後退させることにより、間隔規制部材6、6aを介して可動フレーム1Bに付設された片面加熱型の熱盤4Aと係合している、複数枚の両面加熱型の熱盤4Bを、順々に前端側へ移動させ、隣合う熱盤4A、4B、及び熱盤4B同士を互いに離隔させた状態とする(図2〜図4参照)。
【0024】
そして、処理すべき単板11は、適宜の挟持搬送機構(図示省略)を用いて、各別に挟持し、横型ホットプレスの上部の側方から、一旦、各熱盤4A、4Bの間隔の上方まで移送した後に、各熱盤4A、4Bの間に下降させ、適当な位置、好ましくは、下辺が支持部材7に当接する直前位置に於て、挟持を一斉に開放する(図1、図3参照)。
【0025】
然る後に、制御機構の制御に基づき、図5、図6に例示する如く、フレーム移動機構8を介して、可動フレーム1Bを後端側へ前進させ、而も適宜位置、例えば各熱盤4A、4Bが、全ての単板11と軽接触する位置、乃至はその直前位置に於て、前進を停止させ、次いで、揺動機構10を介して、図5に於て点線で示した待機位置に待機させていた各鉤付アーム9を、実線で示した係合位置へ揺動させた後に、油圧シリンダ3aを作動させることにより、加圧盤3を介して、各熱盤4A、4Bを可動フレーム1Bに向けて押圧し、各単板11を熱圧処理する。
【0026】
各単板11に所望の熱圧処理を施した後は、制御機構の制御に基づき、油圧シリンダ3aの作動を復帰させると共に、揺動機構10を介して、各鉤付アーム9を、前記係合位置から待機位置へ揺動させ、更にフレーム移動機構8を介して、可動フレーム1Bを前端側へ後退させることにより、間隔規制部材6、6aを介して可動フレーム1Bに付設された片面加熱型の熱盤4Aと係合している、複数枚の両面加熱型の熱盤4Bを、順々に前端側へ移動させ、隣合う各熱盤4A、4Bを互いに離隔した状態に復帰させる。
【0027】
然る後に、適宜の挟持搬送機構を用いて、熱圧処理した各単板11を各別に挟持し、一旦、各熱盤4A、4B同士の間隔の上方まで移送した後に、搬入時とは反対側の上部の側方へ搬出する。また、好ましくは、併せて、次に熱圧処理すべき複数枚の単板11を、挟持搬送機構によって、各熱盤4A、4Bの間隔の上方まで移送した後に、各熱盤4A、4Bの間に下降させ、適宜位置に於て、挟持を開放する。以下、同様の動作の繰り返しによって、都度、複数枚の単板に所望の熱圧処理を施すことができる。
【0028】
一方、被処理板材が合板等の如く、丈夫な板材である場合には、側方(左右方向)から直に各熱盤の間に搬入(及び搬出)することが容易であるから、例えば図7〜図10に例示する実施例の如く、前記実施例の構成とは異なる形態の構成を採ることができる。
【0029】
即ち、図7〜図10に例示する如く、前記図1〜図4に例示した実施例に於ける可動フレーム1Bに代えて、上面及び下面の左右に夫々窓状の鉤掛け部位1aを有する可動フレーム1Cを備えると共に、固定フレーム1Aの上面及び下面の左右に夫々鉤付アーム9を備え、而も各鉤付アーム9の夫々に揺動機構10を付設して、実線で示す待機位置と点線で示す係合位置との間を交互に揺動させるよう構成する。
【0030】
また、各熱盤4A、4Bの加熱面上方の面取りに代えて、各熱盤4A、4Bの左右いずれか片方の側面に、蒲鉾状の被処理板材ガイド4dを付設すると共に、コロ支持具4cを介して、コロ4bを所望の各熱盤4A、4Bに付設し、而も熱盤ガイド5の高さを、図1〜図4に例示した実施例の熱盤ガイド5の高さよりも幾分高く設定し、更に間隔規制部材6、6aを各熱盤4A、4Bの上面側へ移設することにより、各熱盤4A、4Bの左右の側方を全面的に開放状態と成す。尚、図10に例示する如く、熱盤ガイド5にガイド溝5aを設けることによって、ガイドの一層の安定化を図ることができる。
【0031】
また更に、帯板状の支持部材7及び連結支持具7aに代えて、支持部材を兼用する搬送ロール12a、軸受12b、駆動源(図示省略)等から成る板材搬送機構12を、基台2の上方に付設することによって、被処理板材である合板14を、各熱盤4A、4Bの側方(左右方向)から、直に各熱盤4A、4Bの間へ搬入(及び搬出)可能な構成とする。
【0032】
本発明に係る横型ホットプレスは、例えば述上の如き構成を採っても差支えなく、先記実施例と同様に、当初は、制御機構の制御に基づき、揺動機構10を介して、上側の鉤付アーム9を上方へ、下側の鉤付アーム9を下方へ揺動させ、夫々実線で示した待機位置で待機させると共に、フレーム移動機構8を介して、可動フレーム1Bを前端側へ後退させることにより、間隔規制部材6、6aを介して可動フレーム1Bに付設された片面加熱型の熱盤4Aと係合している、複数枚の両面加熱型の熱盤4Bを、順々に前端側へ移動させ、隣合う熱盤4A、4B、及び熱盤4B同士を互いに離隔させた状態とする。
【0033】
そして、熱圧処理すべき合板14は、適宜の板材移送機構、例えば前記板材搬送機構12の構成に準ずる構成で成る板材移送機構13、及び板材搬送機構12を介して、図示矢印で示す如く、各熱盤4A、4Bの側方から、直に各熱盤4A、4Bの間へ搬入し、然る後に、図示は省略したが、制御機構の制御に基づき、フレーム移動機構8を介して、可動フレーム1Cを後端側へ前進させ、而も適宜位置、例えば各熱盤4A、4Bが、全ての合板14と軽接触する位置、乃至はその直前位置に於て、前進を停止させ、次いで、揺動機構10を介して、図9に於て実線で示した待機位置に待機させていた各鉤付アーム9を、点線で示した係合位置へ揺動させた後に、油圧シリンダ3aを作動させることにより、加圧盤3を介して、各熱盤4A、4Bを可動フレーム1Bに向けて押圧し、各合板14を熱圧処理する。
【0034】
各合板14に所望の熱圧処理を施した後は、制御機構の制御に基づき、油圧シリンダ3aの作動を復帰させると共に、揺動機構10を介して、各鉤付アーム9を、前記係合位置から待機位置へ揺動させ、更にフレーム移動機構8を介して、可動フレーム1Cを前端側へ後退させることにより、間隔規制部材6、6aを介して可動フレーム1Cに付設された片面加熱型の熱盤4Aと係合している、複数枚の両面加熱型の熱盤4Bを、順々に前端側へ移動させ、隣合う各熱盤4A、4Bを互いに離隔した状態に復帰させる。
【0035】
然る後に、板材搬送機構12及び板材移送機構13を介して、熱圧処理した各合板14を、搬入時とは反対側の側方へ搬出する。また、好ましくは、併せて、板材移送機構13及び板材搬送機構12を介して、次に熱圧処理すべき複数枚の合板14を、各熱盤4A、4Bの間へ搬入する。以下、同様の動作の繰り返しによって、都度、複数枚の合板に所望の熱圧処理を施すことができる。
【0036】
前記両実施例からも明らかな如く、本発明に係る横型ホットプレスには、可動フレームのフレームガイド、フレーム移動機構、鉤付アーム、揺動機構等が必要であるが、フレーム移動機構を介して、可動フレームを固定フレームに所定距離まで接近させ、次いで、揺動機構を介して、鉤付アームの鉤部位を鉤掛け部位に係合させるように揺動させた後に、油圧シリンダ及び加圧盤を介して、各熱盤を押圧することにより、被処理板材に所望通りの熱圧処理を施し得るので、精密性を要する高価な油圧シリンダの所要行程を、従来に比べて顕著に短縮することができ(被処理板材の厚さの変更や、処理枚数の不足等に適応できる程度の行程で足りる)、且つ、油圧ポンプの容量も軽減して差支えないので、総じて、装置全体の製造原価の低減化が可能となり、而も油圧シリンダを短小化し得るので、平面的な占有スペースの狭小化も併せて可能となる。因に、斯様な構成に於ける油圧シリンダの所要行程は、被処理板材の厚さの変更に若干の余裕を以って対処し得る程度で足り、例えば2〜12mm厚さの合板を60枚処理する場合には、12×60+α≒0.75m程度で差支えなく、従来の1/4〜1/8に短小化できる。
【0037】
また、本発明に係る横型ホットプレスに於ては、可動フレームをフレームガイド上へ直に載置する係合形態とし、前後に摺動させる構成を採ることも可能ではあるが、前記両実施例の如く、コロを介する係合形態を採れば、円滑な移動が可能となり、フレーム移動機構の簡略化・省動力化が図り得るので有効である。また、加圧盤ガイドと熱盤ガイドとを個別に設ける構成を採っても差支えないが、前記両実施例の如く、加圧盤ガイド兼用の熱盤ガイドを備えると共に、片面加熱型の熱盤を介して、加圧盤を前記加圧盤ガイド兼用の熱盤ガイドに係合させる構成を採れば、構造が一段と簡素化するので有効である。また、熱盤についても、可動フレームの場合と同様に、前記両実施例の如く、コロを介して、熱盤ガイドに係合させる方が、熱盤ガイド上へコロを介さずに載置して前後に摺動させる係合形態を採る場合に比べて、円滑な移動が可能となるので、総じて有効である。また、熱圧時に於ける、前記両フレーム同士の係合の安定性、機構の簡略性などからして、鉤付アーム(及び鉤掛け部位)の配設数は、前記両実施例の如く、両フレームの左右に夫々二本(二箇所)づつの、都合四本(四箇所)とするのが適当である。
【0038】
尚、前記両実施例に於ては、いずれも固定フレーム側に加圧盤を配設し、油圧シリンダを用いて押圧する形態としたが、逆に可動フレーム側に加圧盤を配設し、油圧シリンダを用いて押圧する形態としても差支えない。また、図示する如く、油圧シリンダの本体部分が、フレーム内部に収容されるように備えれば、装置の占有スペースが甚だ狭くて済む利点があるが、フレームの剛性を保障するリブの配設位置に相応の制約が生じることから、例えば油圧シリンダの保守点検を実施する場合、或は例えば被処理板材の大きさ(幅と長さ)の変更に対応させて、油圧シリンダの配設位置を移動する構成を採る場合等には些か不便である。そこで、図示は省略したが、必要に応じては、加圧盤とフレームの間に、油圧シリンダ本体が露出するように備える形態としても、本発明に用いる油圧シリンダは、所要行程自体が短いので、実用的に格別な支障はなく、斯様な形態を採れば、占有スペースが幾分広くなる反面、リブの配設位置に殆ど制約が生じないことから、油圧シリンダの保守点検を実施する場合、或は油圧シリンダの配設位置を移動する構成を採る場合等には好都合となる。
【0039】
また、前記両実施例に於ては、固定フレーム側に鉤付アームを付設すると共に、可動フレーム側に鉤掛け部位を設ける構成を採ったが、逆に可動フレーム側に鉤付アームを付設すると共に、固定フレーム側に鉤掛け部位を設ける構成を採っても差支えない。また、鉤付アームの鉤部位と係合する鉤掛け部位として、窓状の鉤掛け部位を例示したが、鉤掛け部位の形態としては、窓状に限るものではなく、図示は省略したが、例えば庇状の鉤掛け部位であっても差支えなく、要は被処理板材を熱圧処理する際に、固定フレームと可動フレームとの相対距離を、暫時一定に規制するように、鉤付アームの鉤部位と係合し得る形態であれば足り、更に鉤付アームの形態についても格別な制約はなく、要は安定的に鉤掛け部位と係合し得る鉤部位を有する形態であれば足りる。
【0040】
また、前記両実施例に於ては、可動フレームを、単にコロを介して、フレームガイド上に載せる形態としたが、必要に応じては、先記図10の実例に於ける熱盤に付設したコロと熱盤ガイドに設けたガイド溝との係合態様と同様に、フレームガイドにガイド溝を設けて、ガイドの一層の安定化を図ることも可能であり、また、図示は省略したが、必要に応じては、ガイド溝に代えて、各ガイド上に適数条のレールを付設すると共に、各熱盤、若しくは可動フレームに、前記レールと係合する鍔付コロを付設して、ガイドの安定化を図るようにしても差支えない。
【0041】
また、間隔規制部材の形態についても、前記両実施例に図示する如き形態に限るものではなく、図示は省略したが、例えば一方の部材に付設したストッパ付の棒材を、他方の部材に穿設した穴に挿通して成り、該穴を往来する棒材の移動量が、ストッパによって一様に規制されるような形態、或は例えば両端を夫々別の熱盤に固着した鎖、又は両端を夫々別の熱盤に固着し、中央部をナックル継手にて連結した対のリンク等の如く、一定範囲内に於て自在に伸縮する形態など、要は各熱盤同士の接近は無条件で許容し、各熱盤同士の離隔は一定限度までしか許容しない機能を有する部材であれば足り、間隔規制部材の形態に格別な限定はない。
【0042】
また、支持部材の形態についても、格別な限定はないが、被処理板材から欠落する木屑等の屑類が滞留、蓄積することない形態が好ましく、前記両実施例に図示したロール状、帯板状等のように、各々は比較的細長く、而も屑類が落下し得る隙間を有して多列状に並ぶ形態が好適である。
【0043】
また、各熱盤の加熱面は、平滑状に形成するのが通例であるが、必要に応じては(例えば未乾燥単板を乾燥する為に、熱圧処理を施す場合など)、熱圧処理に伴って被処理板材から発生する蒸気の排出を円滑化させるのに有効な、適宜断面の幅と深さとを有する細溝の適数条を、各熱盤の加熱面に穿設しても差支えなく、細溝の延在方向としては、単板の繊維方向と交差する方向が好ましい。
【0044】
また、各熱盤の下端部分の形状は、必ずしも図示例の如く、支持部材よりも上方に位置して、而も直線的である必要はなく、図示は省略したが、全体的には支持部材よりも下方に位置し、而も支持部材と対向する部分のみを幾分抉り取ったような、換言すると、支持部材と対向する部分以外の部分が、支持部材と対向する部分よりも幾分下方に突出するような、凹凸状であっても差支えなく、各熱盤の下端部分を斯様な形状にすれば、被処理板材の下端部位の大部分(支持部材によって支持される部分の近辺以外の部分)に、適確に熱圧処理が施し得るので、処理の均等化に有効である。
【0045】
而して、各熱盤の寸法、各熱盤同士の最大間隔、加圧盤に付与する加圧力、油圧シリンダの配設本数、油圧シリンダの配設位置(位置を移動させる必要性の有無)、被処理板材ガイドの必要性の有無、被処理板材ガイドの形状等については、被処理板材の性状に対応させて設定すれば差支えなく、更に本発明に係る横型ホットプレスに併設する、被処理板材用の搬送機構、搬入機構、搬出機構、移送機構等の形態についても、被処理板材の性状に対応させて設定すれば差支えない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上明らかな如く、本発明は、横型ホットプレスの廉価化を図ると共に、利便性を向上させるものであり、斯界に於ける本発明の実施効果は著大である。
【符号の説明】
【0047】
1A :固定フレーム
1a :窓状の鉤掛け部位
1B、1C :可動フレーム
1b、4b :コロ
2 :フレームガイド兼用の基台
3 :加圧盤
3a :油圧シリンダ
4A :片面加熱型の熱盤
4B :両面加熱型の熱盤
5 :加圧盤ガイド兼用の熱盤ガイド
6、6a :間隔規制部材
7 :帯板状の支持部材
8 :フレーム移動機構
9 :鉤付アーム
10 :揺動機構
11 :単板
12 :板材搬送機構
13 :板材移送機構
14 :合板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理板材の押圧方向の前後いずれか片方へ固定的に備えられたた固定フレームと、該固定フレームの反対側に位置し、前記押圧方向の左右に配設された一対のフレームガイドに沿って、前記押圧方向へ移動可能に備えられた可動フレームと、前記各フレームの間に位置し、前記押圧方向の左右に配設された一対の加圧盤ガイドに沿って前記押圧方向へ移動可能に備えられた加圧盤と、前記固定フレーム又は可動フレームの内側と加圧盤の内側とに夫々断熱材を介して付設された片面加熱型の熱盤と、該片面加熱型の熱盤の内側に位置し、前記押圧方向の左右に配設された一対の熱盤ガイドに沿って前記押圧方向へ移動可能に備えられた複数枚の両面加熱型の熱盤と、前記各熱盤に係合する適宜位置に配設されており、各熱盤同士の開放間隔を一定に規制する間隔規制部材と、前記各熱盤の下方に配設されており、各熱盤の間に挿入される被処理板材の下辺を支持する支持部材と、前記可動フレームに係合する適宜位置に配設されており、可動フレームを前記押圧方向へ前進・後退移動させるフレーム移動機構と、前記両フレームの内のいずれか片方のフレームに付設されており、前記加圧盤を前記押圧方向へ前進・後退移動させる油圧シリンダと、前記両フレームの内のいずれか片方のフレームの左右に夫々設けられた適数箇所の鉤掛け部位と、前記可動フレームが固定フレームに所定距離まで接近した際に、前記鉤掛け部位と係合し得る鉤部位を先端側に有し、而も前記鉤掛け部位を有するフレームとは反対側のフレームの左右に夫々基端側が枢着された適数本の鉤付アームと、該鉤付アームを揺動させる揺動機構とを備えたことを特徴とする横型ホットプレス。
【請求項2】
コロを介して、可動フレームとフレームガイドとを係合させて成る請求項1記載の横型ホットプレス。
【請求項3】
加圧盤ガイド兼用の熱盤ガイドを備えると共に、片面加熱型の熱盤を介して、加圧盤を前記加圧盤ガイド兼用の熱盤ガイドに係合させて成る請求項1又は請求項2記載の横型ホットプレス。
【請求項4】
コロを介して、熱盤と熱盤ガイドとを係合させて成る請求項1又は請求項2又は請求項3記載の横型ホットプレス。
【請求項5】
固定フレーム及び可動フレームの左右に夫々二箇所の鉤掛け部位と、二本の鉤付アームとを設けて成る請求項1〜請求項4のいずれか一つの項に記載の横型ホットプレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−253719(P2010−253719A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103970(P2009−103970)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000155182)株式会社名南製作所 (77)
【Fターム(参考)】