説明

横転抑制制御装置および横転抑制制御方法

【課題】横転抑制制御に係る制動力に起因するアンダステアの発生を抑制することにより、ロール抑制をしつつ旋回トレース性を確保する横転抑制制御装置および横転抑制制御方法を提供する。
【解決手段】横転抑制制御装置は、非アンダステア状態である旨を検出した場合には、制御閾値を第1制御閾値に設定するとともに、アンダステア状態である旨を検出した場合には制御閾値を第1制御閾値より大きい第2制御閾値に設定し(ステップ108,110,114)、検出された横転状態値が設定された制御閾値より大きい場合には、車両の車輪に制動力を付与することにより車両の横転を抑制する横転抑制制御を行う(ステップ118,120)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横転抑制制御装置および横転抑制制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
横転抑制制御装置の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図3に示されているように、横転抑制制御装置においては、横転防止制御時において、実横加速度の絶対値|Gy|が後輪側基準値Gyr以上前輪側基準値Gyf以下である段階では旋回方向内側の後輪にのみ実横加速度Gyの絶対値に応じた内側車輪用制動力を発生させ、車体における旋回方向内側の後側部に車高低減力を発生せしめるようになっている。加えて、実横加速度の絶対値|Gy|が前輪側基準値Gyf以上である段階になると、旋回方向内側の後輪に前記内側車輪用制動力を発生させ続けるとともに旋回方向外側の前輪にも実横加速度の絶対値|Gy|に応じた外側車輪用制動力を発生させ、車両に対して旋回方向と反対方向のヨーイングモーメントを強制的に発生せしめるようになっている。
【0003】
すなわち、例えば、車両の左旋回時に横転抑制制御が入ると、旋回外前輪に制動をかけ、横転抑制の横加速度を左向きに発生させ、旋回によるヨーイングモーメントとは反対方向のヨーイングモーメントが発生するようになっている。これにより、横転傾向の度合いを小さくすることとなり横転を抑制することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−35451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の横転抑制制御装置においては、横転抑制制御が入ると、旋回外前輪に制動をかけ、横転抑制の横加速度を左向きに発生させ、旋回によるヨーイングモーメントとは反対方向のヨーイングモーメントが発生するようになっている。これにより、横転傾向の度合いを小さくすることとなり横転を抑制することができるようになっている。
【0006】
一方、付与された制動力が車両のタイヤの摩擦限界に近い大きなものである場合には、旋回のための横力が減少するのでアンダステアが発生してしまう。すなわち、横転抑制制御に係る制動力の付与に起因して走行が所望範囲から逸脱するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、横転抑制制御に係る制動力に起因するアンダステアの発生を抑制することにより、ロール抑制をしつつ旋回トレース性を確保する横転抑制制御装置および横転抑制制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、車両が横転傾向にあることを示す横転状態値を検出する横転状態値検出手段と、検出された横転状態値を制御閾値と比較する比較手段と、検出された横転状態値が制御閾値より大きい場合には、車両の車輪に制動力を付与することにより車両の横転を抑制する横転抑制制御を行うことが可能である制動力付与手段と、車両の走行状態がアンダステア状態であるか非アンダステア状態であるかを検出するアンダステア状態検出手段と、非アンダステア状態である旨を検出した場合には、制御閾値を第1制御閾値に設定するとともに、アンダステア状態である旨を検出した場合には制御閾値を第1制御閾値より大きい第2制御閾値に設定する制御閾値設定手段と、を備えたことである。
【0009】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、第2制御閾値は、車両のアンダステア状態の度合いに応じて設定することである。
【0010】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または請求項2において、非アンダステア状態である旨を検出した場合には、制動力を第1制動量に設定するとともに、アンダステア状態である旨を検出した場合には制動力を第1制動量より小さい第2制動量に設定する制動量設定手段を、さらに備えたことである。
【0011】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、車両の走行状態がアンダステア状態であるか非アンダステア状態であるかを検出するアンダステア状態検出工程と、非アンダステア状態である旨を検出した場合には、制御閾値を第1制御閾値に設定するとともに、アンダステア状態である旨を検出した場合には制御閾値を第1制御閾値より大きい第2制御閾値に設定する制御閾値設定工程と、車両が横転傾向にあることを示す横転状態値を検出する横転状態値検出工程と、検出された横転状態値を制御閾値と比較する比較工程と、検出された横転状態値が制御閾値より大きい場合には、車両の車輪に制動力を付与することにより車両の横転を抑制する横転抑制制御を行うことが可能である制動力付与工程と、を有することである。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、アンダステア状態検出手段が、車両の走行状態がアンダステア状態であるか非アンダステア状態であるかを検出する。さらに、制御閾値設定手段が、非アンダステア状態である旨を検出した場合には、制御閾値を第1制御閾値に設定するとともに、アンダステア状態である旨を検出した場合には制御閾値を第1制御閾値より大きい第2制御閾値に設定する。そして、制動力付与手段が、検出された横転状態値が制御閾値より大きい場合には、車両の車輪に制動力を付与することにより車両の横転を抑制する横転抑制制御を行う。
【0013】
すなわち、車両がアンダステア状態である場合には、非アンダステア状態である場合に比べて、横転抑制制御を開始する制御閾値を大きい値に設定することで、横転抑制制御に係る制動力の付与の開始を遅らせることができ、ひいてはタイヤの摩擦限界に近づくのを遅らせることができる。これにより、横転抑制制御中において横力の減少を抑制することができ、ひいてはアンダステアの度合いが強くなるのを未然に抑制することができる。したがって、走行が所望範囲から逸脱するのを抑制することにより、ロール抑制をしつつ旋回トレース性を確保することができる。
【0014】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、請求項1において、第2制御閾値は、車両のアンダステア状態の度合いに応じて設定する。これにより、第2制御閾値をアンダステア状態の度合いに応じて適切に設定できるため、アンダステアの度合いが強くなるのを未然に抑制することをより適切に行うことができる。
【0015】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、制動量設定手段が、非アンダステア状態である旨を検出した場合には、制動力を第1制動量に設定するとともに、アンダステア状態である旨を検出した場合には制動力を第1制動量より小さい第2制動量に設定する。これにより、横転抑制制御が開始された場合であって、付与される制動力は比較的小さく抑制できるため、アンダステアが大きくなるのを抑制することができる。
【0016】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、車両がアンダステア状態である場合には、非アンダステア状態である場合に比べて、横転抑制制御を開始する制御閾値を大きい値に設定することで、横転抑制制御に係る制動力の付与の開始を遅らせることができ、ひいてはタイヤの摩擦限界に近づくのを遅らせることができる。これにより、横転抑制制御中において横力の減少を抑制することができ、ひいてはアンダステアの度合いが強くなるのを未然に抑制することができる。したがって、走行が所望範囲から逸脱するのを抑制することにより、ロール抑制をしつつ旋回トレース性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による横転抑制制御装置を適用した車両の一実施の形態を示す概要図である。
【図2】図1に示す液圧ブレーキ装置を示す概要図である。
【図3】図1に示すブレーキ制御ECUにて実行される制御プログラムのフローチャート例である。
【図4】ヨーレート偏差と第2制御閾値との関係を示すグラフである。
【図5】図1に示すブレーキ制御ECUにて実行される制御プログラムのブロック図例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る横転抑制制御装置を適用した車両の一実施形態を図面を参照して説明する。図1はその車両の構成を示す概要図であり、図2は液圧ブレーキ装置Aの構成を示す概要図である。この車両Mは、車体前部に搭載した駆動源であるエンジン11の駆動力が駆動輪である後輪に伝達される形式のものである。車両Mは、荷物、貨物などを積載可能な車両(例えば、トラック)である。なお、前輪は車両の進行方向を任意に変えるための操舵輪である。また、車両Mは後輪駆動車でなく、他の駆動方式の車両例えば前輪駆動車、四輪駆動車でもよい。
【0019】
車両Mは、エンジン11、変速機12、プロペラシャフト13、ディファレンシャルギヤ14、左右前輪Wfl,Wfrおよび左右後輪Wrl,Wrrを備えている。エンジン11の駆動力は、変速機12で変速され、プロペラシャフト13およびディファレンシャルギヤ14を介して左右後輪Wrl,Wrrにそれぞれ伝達されるようになっている。
【0020】
車両Mは、横転抑制制御装置20を備えている。横転抑制制御装置20は、液圧ブレーキ装置A、ステアリングセンサ37b、ヨーレートセンサ38および横加速度センサ39を含んで構成されている。
【0021】
車両Mは、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに液圧制動力を直接付与して車両を制動させる液圧ブレーキ装置Aを備えている。液圧ブレーキ装置Aは、図2に示すように、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrr、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル31、真空式制動倍力装置32、マスタシリンダ33、リザーバタンク34、液圧自動発生装置(制動力付与手段)であるブレーキアクチュエータ35、およびブレーキ制御ECU36を備えている。
【0022】
液圧ブレーキ装置Aを詳述する。各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrは、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの回転をそれぞれ規制するものであり、各キャリパCLfl,CLfr,CLrl,CLrrに設けられている。各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに基礎液圧および制御液圧の少なくともいずれかが供給されると、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrの各ピストン(図示省略)が摩擦部材である一対のブレーキパッド(図示省略)を押圧して各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrと一体回転する回転部材であるディスクロータDRfl,DRfr,DRrl,DRrrを両側から挟んでその回転を規制するようになっている。なお、本実施形態においては、ディスク式ブレーキを採用するようにしたが、ドラム式ブレーキを採用するようにしてもよい。
【0023】
真空式制動倍力装置32は、エンジン11の吸気負圧をダイヤフラムに作用させてブレーキペダル31の踏み込み操作により生じるブレーキ操作力を助勢して倍力(増大)する倍力装置である。
【0024】
マスタシリンダ33は、ドライバによるブレーキペダル31の操作力を変換して基礎液圧を形成し、その基礎液圧によって車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに摩擦制動力を発生させ得る装置である。本実施形態では、マスタシリンダ33は、真空式制動倍力装置32により倍力されたブレーキ操作力を基礎液圧に変換し、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに供給する。
【0025】
リザーバタンク34は、ブレーキ液を貯蔵してマスタシリンダ33にそのブレーキ液を補給するものである。
【0026】
ブレーキアクチュエータ35は、マスタシリンダ33と各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrとの間に設けられて、ブレーキペダル31の操作の有無に関係なく自動的に形成した制御液圧をホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに付与し、対応する車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに摩擦制動力を発生させ得る装置である。
【0027】
図2を参照してブレーキアクチュエータ35の構成を詳述する。ブレーキアクチュエータ35は、独立して作動する液圧回路である複数の系統から構成されている。具体的には、ブレーキアクチュエータ35は、前後配管である第1系統35aと第2系統35bを有している。第1系統35aは、マスタシリンダ33の第1液圧室33aと左後輪Wrl,右後輪WrrのホイールシリンダWCrl,WCrrとをそれぞれ連通して、左後輪Wrl,右後輪Wrrの制動力制御に係わる系統である。第2系統35bは、マスタシリンダ33の第2液圧室33bと左前輪Wfl,右前輪WfrのホイールシリンダWCfl,WCfrとをそれぞれ連通して、左前輪Wfl,右前輪Wfrの制動力制御に係わる系統である。
【0028】
第1系統35aは、差圧制御弁41、左後輪液圧制御部42、右後輪液圧制御部43、および第1減圧部44を含んで構成されている。
【0029】
差圧制御弁41は、マスタシリンダ33と、左後輪液圧制御部42の上流部および右後輪液圧制御部43の上流部との間に介装されている常開リニア電磁弁(常開リニアソレノイド弁)である。この差圧制御弁41は、ブレーキ制御ECU36により連通状態(非差圧状態)と差圧状態を切り替え制御されるものである。差圧制御弁41は非通電して通常連通状態とされているが、通電して差圧状態(閉じる側)にすることによりホイールシリンダWCrl,WCrr側の液圧をマスタシリンダ33側の液圧よりも所定の制御差圧分高い圧力に保持することができる。この制御差圧はブレーキ制御ECU36により制御電流に応じて調圧されるようになっている。これにより、ポンプ44aによる加圧を前提に制御差圧に相当する制御液圧が形成されるようになっている。
【0030】
左後輪液圧制御部42は、ホイールシリンダWCrlに供給する液圧を制御可能なものであり、2ポート2位置切換型の常開電磁開閉弁である増圧弁42aと2ポート2位置切換型の常閉電磁開閉弁である減圧弁42bとから構成されている。増圧弁42aは、差圧制御弁41とホイールシリンダWCrlとの間に介装されており、ブレーキ制御ECU36の指令にしたがって差圧制御弁41とホイールシリンダWCrlとを連通または遮断できるようになっている。減圧弁42bは、ホイールシリンダWCrlと調圧リザーバ44cとの間に介装されており、ブレーキ制御ECU36の指令にしたがってホイールシリンダWCrlと調圧リザーバ44cとを連通または遮断できるようになっている。これにより、ホイールシリンダWCrl内の液圧が増圧・保持・減圧され得るようになっている。
【0031】
右後輪液圧制御部43は、ホイールシリンダWCrrに供給する液圧を制御可能なものであり、左後輪液圧制御部42と同様に増圧弁43aと減圧弁43bとから構成されている。増圧弁43aおよび減圧弁43bがブレーキ制御ECU36の指令により制御されて、ホイールシリンダWCrr内の液圧が増圧・保持・減圧され得るようになっている。
【0032】
第1減圧部44は、ポンプ44a、ポンプ用モータ44b、調圧リザーバ44cを含んで構成されている。ポンプ44aは、調圧リザーバ44c内のブレーキ液を汲み上げて、そのブレーキ液を差圧制御弁41と増圧弁42a,43aとの間に供給するようになっている。このポンプ44aは、ブレーキ制御ECU36の指令にしたがって駆動するポンプ用モータ44bによって駆動されるようになっている。
【0033】
調圧リザーバ44cは、ホイールシリンダWCrl,WCrrから減圧弁42b、43bを介して抜いたブレーキ液を一旦溜めておく装置である。また、調圧リザーバ44cは、マスタシリンダ33と連通しており、調圧リザーバ44c内のブレーキ液が所定量以下である場合には、マスタシリンダ33からブレーキ液が供給される一方で、所定量より多い場合には、マスタシリンダ33からのブレーキ液の供給が停止されるようになっている。
【0034】
これにより、差圧制御弁41によって差圧状態が形成されるとともにポンプ44aが駆動されている場合(例えば、横転抑制制御、横滑り防止制御、トラクションコントロールなどの場合)、マスタシリンダ33から供給されているブレーキ液を調圧リザーバ44c経由で増圧弁42a,43aの上流に供給することができるようになっている。
【0035】
第2系統35bは、差圧制御弁51、左前輪液圧制御部52、右前輪液圧制御部53、および第2減圧部54を含んで構成されている。
【0036】
差圧制御弁51は、マスタシリンダ33と、左前輪液圧制御部52の上流部および右前輪液圧制御部53の上流部との間に介装されている常開リニア電磁弁である。この差圧制御弁51は、差圧制御弁41と同様に、ブレーキ制御ECU36によりホイールシリンダWCfl,WCfr側の液圧をマスタシリンダ33側の液圧に対してよりも所定の制御差圧分高い圧力に保持できるようになっている。
【0037】
左前輪液圧制御部52および右前輪液圧制御部53は、ホイールシリンダWCfl,WCfrに供給する液圧をそれぞれ制御可能なものであり、左後輪液圧制御部42と同様に、それぞれ増圧弁52aと減圧弁52b、増圧弁53aと減圧弁53bから構成されている。増圧弁52aと減圧弁52b、増圧弁53aと減圧弁53bがブレーキ制御ECU36の指令によりそれぞれ制御されて、ホイールシリンダWCfl内およびホイールシリンダWCfr内の液圧がそれぞれ増圧・保持・減圧され得るようになっている。
【0038】
第2減圧部54は、第1減圧部44と同様に、ポンプ54a、ポンプ用モータ44b(第1減圧部44と共用)、調圧リザーバ54cを含んで構成されている。ポンプ54aは、調圧リザーバ44cと同様な調圧リザーバ54c内のブレーキ液を汲み上げて、そのブレーキ液を差圧制御弁51と増圧弁52a,53aとの間に供給するようになっている。このポンプ54aは、ブレーキ制御ECU36の指令にしたがって駆動するポンプ用モータ44bによって駆動されるようになっている。
【0039】
このように構成されたブレーキアクチュエータ35は、通常ブレーキの際には全ての電磁弁が非励磁状態にされて、ブレーキペダル31の操作力に応じたブレーキ液圧、すなわち基礎液圧をホイールシリンダWC**にそれぞれ供給できるようになっている。なお、**は、各輪に対応する添え字であって、fl,fr,rl,rrのいずれかであり、左前、右前、左後、右後を示している。以下の説明及び図面において同じである。
【0040】
また、ポンプ用モータ44bすなわちポンプ44a,54aを駆動するとともに差圧制御弁41,51を励磁すると、マスタシリンダ33からの基礎液圧に制御液圧を加えたブレーキ液圧をホイールシリンダWC**にそれぞれ供給できるようになっている。
【0041】
さらに、ブレーキアクチュエータ35は、増圧弁42a,43a,52a,53a、および減圧弁42b,43b,52b,53bを制御することでホイールシリンダWC**の液圧を個別に調整できるようになっている。これにより、ブレーキ制御ECU36からの指示により、例えば、周知のアンチスキッド制御、前後制動力配分制御、ESC(Electronic Stability Control)である横滑り防止制御(具体的には、アンダステア抑制制御、オーバステア抑制制御)、トラクションコントロール、車間距離制御、横転抑制制御等を達成できるようになっている。
【0042】
また、液圧ブレーキ装置Aは、車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srrを備えている。車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srrは、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの付近にそれぞれ設けられており、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの回転に応じた周波数のパルス信号をブレーキ制御ECU36に出力している。
【0043】
なお、液圧ブレーキ装置Aは、ブレーキペダル31が踏まれるとオンされ、踏み込みが解除されるとオフされるストップスイッチ31aを備えている。このストップスイッチ31aのオン・オフ信号はブレーキ制御ECU36に入力されるようになっている。
【0044】
さらに、車両Mは、図1に示すように、ステアリング37aおよびステアリングセンサ37bを含んで構成されるステアリング装置37を備えている。ステアリング37aは、操舵輪(左右前輪)に連結されてドライバの操作によりその操舵輪の向きを任意に変えるものである。ステアリングセンサ37bは、ステアリング37aの操作量(回転角度)を検出するものである。ステアリング装置37のステアリングギヤ機構のトータルギヤ比は、予め決められた値に設定されており、ステアリング37aの回転角度(ハンドル角)/操舵輪の操舵角で示される値である。よって、このステアリングセンサ37bは操舵輪の操舵角を検出する舵角センサである。
【0045】
さらに、車両Mは、ヨーレートセンサ38、および横加速度センサ39を備えている。ヨーレートセンサ38は、車体の重心近傍位置に組み付けられており、車両に発生している実際のヨーレートを検出するものである。横加速度センサ39は、車体の重心近傍位置に組み付けられており、車両に発生している実際の横加速度を検出するものである。この横加速度センサ39は、車両が横転傾向にあることを示す横転状態値を検出する横転状態値検出手段である。横加速度は横転状態値の一つである。
【0046】
さらに、車両Mは、ブレーキ制御ECU36を備えている。ブレーキ制御ECU36は、車両の運動(車両の姿勢)を制御(例えば横転抑制制御、ABS制御、ESC(横滑り防止制御))するための制御装置であり、舵角センサ37b、ヨーレートセンサ38、横加速度センサ39からの各検出信号や、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの車輪速度をそれぞれ検出する各車輪速センサSfl,Sfr,Srl,Srrからの各検出信号を受け取り、各種物理量を算出するものである。ブレーキ制御ECU36は、舵角センサ37bが出力するドライバによるステアリング37aの操作量に応じた操舵角ξを算出したり、ヨーレートセンサ38が出力する車両に発生している実際のヨーレートに応じた検出信号に基づいて実ヨーレート(実際のヨーレート)を算出したり、横加速度センサ39が出力する車両に発生している実際の横加速度に応じた検出信号に基づいて実際の横加速度を算出したりする。また、車輪速センサSfl,Sfr,Srl,Srrからの検出信号に基づいて、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの車輪速度や車速(車体速度)も算出するようになっている。
【0047】
そして、ブレーキ制御ECU36は、マイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAMおよびROM(いずれも図示省略)を備えている。CPUは、図3のフローチャートに対応したプログラムを実行して、車両が横転しないように横転抑制制御を行う。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、ROMは前記プログラムを記憶するものである。
【0048】
次に、上記のように構成した横転抑制制御装置の作動を図3のフローチャートに沿って説明する。ブレーキ制御ECU36は、車両Mのイグニションスイッチ(図示省略)がオン状態にあるとき、所定の短時間毎に、上記フローチャートに対応したプログラムを繰り返し実行する。ブレーキ制御ECU36は、図3のステップ100にてプログラムの実行を開始する毎に、横加速度Gy、各車輪速度Vfl,Vfr,Vrl,Vrr、車体速度V、ハンドル角度θ、および実ヨーレート(実Yr)を取得する(ステップ102)。
【0049】
具体的には、ブレーキ制御ECU36は、横加速度センサ39からの横加速度の方向および大きさを表す信号を車両に発生する実際の横加速度Gyとして取得する(横転状態値取得手段;横転状態値検出工程)。なお、車両のロール傾向の検出方法は、横加速度Gyを検出する方法だけでなく、車両の重心回りのロール角速度をロール角速度センサによって検出しその値を積分することによって検出するようにしてもよい。また、車高センサ、上下方向加速度センサなどによって検出した車高、上下加速度などから検出することもできる。ロール角速度、ロール角速度の積分値、車高、上下加速度も、横転状態値である。
【0050】
ブレーキ制御ECU36は、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの車輪速度Vfl,Vfr,Vrl,Vrr、および車体速度Vを取得する(車輪速度取得手段、車体速度取得手段)。具体的には、車輪速センサSfl,Sfr,Srl,Srrからそれぞれ入力された各パルス列信号に基づいて同各パルス列信号の周期に反比例した値をそれぞれ各車輪速度Vfl,Vfr,Vrl,Vrrとして計算する。そして、これら各車輪速を平均した値を車体速度Vとして算出する。なお、左右前輪Wfl,Wfrまたは左右後輪Wrl,Wrrの各車輪速を平均した値を車体速度Vとして算出するようにしてもよい。また、変速機12の出力軸の回転をピックアップして同回転速度に反比例する周期を有するパルス列信号を出力する車速センサをブレーキ制御ECU36に接続して、ブレーキ制御ECU36は車速センサから入力されたパルス列信号に基づいて同パルス列信号の周期に反比例した値を車体速度Vとして算出するようにしてもよい。
【0051】
ブレーキ制御ECU36は、車両Mのハンドル角度θを算出する。すなわち、ハンドル角度θは、下記数1に示すようにステアリングセンサ37bから入力された2相パルス列信号に基づいて、両パルス列信号のレベルが変化する毎に操舵軸(ステアリング37a)の回動方向(2相のパルス列信号のレベルの変化の仕方によって検出される)に応じて前回のハンドル角度θを所定角度Δθずつ増減することにより算出される。
【0052】
(数1)
ハンドル角度θ=前回のハンドル角度θ+加算値×Δθ
上記数1の加算値は、ステアリング37aの回転方向を示すものであり、ステアリングセンサ37bから入力された2相パルス列信号の前回値および今回値の変化の仕方に基づいて決定される。例えば、前回値と今回値が(0,0)と同じであれば加算値は0であり、(0,0)の前回値が(0,1)となれば加算値は+1であり、(0,0)の前回値が(1,0)となれば加算値は−1である。
【0053】
イグニッションスイッチ(図示しない)を投入した直後に、このハンドル角度θの初期値は0にリセットされ、これに基づきその後のハンドル角度θの計算が実行される。また、ハンドル角度θは初期値からの相対的な角度を表すのみで、絶対的な角度を表していないので、ハンドル角度θの中立点を算出してこの算出した中立点に基づいて補正されてはじめて中立点からの絶対角度であるハンドル角度θが算出される。
【0054】
また、ブレーキ制御ECU36は、ハンドル角度θと予め設定されているトータルギヤ比nとを下記数2に代入して操舵輪の舵角ξ(操舵輪の切れ角)を算出している(舵角取得手段)。
【0055】
(数2)
操舵輪の切れ角ξ=ハンドル角度θ/n
なお、操舵輪の切れ角ξとは、車両Mが直進する方向に対する操舵輪の操舵方向の角度のことをいう。
【0056】
ブレーキ制御ECU36は、ヨーレートセンサ38からのヨーレートの方向及び大きさを表す信号を車両に発生する実際のヨーレートである実ヨーレート(実Yr)として取得する(実ヨーレート取得手段)。なお、実ヨーレートを左右前輪Wfl,Wfr(または左右後輪Wrl,Wrr)の車輪速度に基づいて算出するようにしてもよい。
【0057】
ブレーキ制御ECU36は、上述の各パラメータの取得が終了すると、ステップ104において、舵角ヨーレート(舵角Yr)を演算する(舵角ヨーレート演算手段)。具体的には、ブレーキ制御ECU36は、先に取得した車体速度Vおよび操舵輪の舵角ξを下記数3に代入して舵角Yrを演算する。
【0058】
【数3】

【0059】
ここで、Lは車両Mのホイールベースであり、Aはスタビリティファクタである。
【0060】
ブレーキ制御ECU36は、ステップ106において、先に取得した実ヨーレート(実Yr)と先に演算した舵角ヨーレート(舵角Yr)との偏差であるヨーレート偏差ΔYrを演算する(ヨーレート偏差演算手段)。
【0061】
そして、ブレーキ制御ECU36は、ステップ108において、車両の走行状態がアンダステア状態であるか非アンダステア状態であるかを検出する(アンダステア状態検出手段;アンダステア状態検出工程)。具体的には、ブレーキ制御ECU36は、予め設定された閾値Tusとステップ106にて算出されたヨーレート偏差ΔYrを比較し、ヨーレート偏差ΔYrが閾値Tusより大きい場合には、車両Mはアンダステア傾向(状態)にある旨を検出する。一方、ヨーレート偏差ΔYrが閾値Tusより小さい場合には、車両Mはアンダステア傾向(状態)にない非アンダステア傾向(状態)にある旨を検出する。
【0062】
なお、アンダステア状態検出手段は、ヨーレートを使用する代わりに、横加速度を使用するようにしてもよい。具体的には、実横加速度と舵角から算出した横加速度との偏差を算出し、その偏差が所定値より大きい場合に、アンダステア状態である旨を検出できる。
【0063】
また、アンダステア状態検出手段は、ヨーレートを使用する代わりに、旋回外前輪のスリップ率、車輪減速度を使用するようにしてもよい。具体的には、車体速度に対して旋回外前輪のスリップ率が所定値より大きい場合に、アンダステア状態である旨を検出できる。また、旋回外前輪の車輪減速度(車輪速を微分して求められる)が所定値より大きい場合に、アンダステア状態である旨を検出できる。
【0064】
ブレーキ制御ECU36は、非アンダステア状態である旨を検出した場合には、プログラムをステップ110に進めて、後述する横転抑制制御を開始するための制御閾値を第1制御閾値に設定する(ステップ110;制御閾値設定手段(制御閾値設定工程))とともに、後述する横転抑制制御にて付与される制動力を第1制動量に設定する(ステップ112;制動量設定手段)。
【0065】
一方、ブレーキ制御ECU36は、アンダステア状態である旨を検出した場合には、プログラムをステップ114に進めて、制御閾値を第1制御閾値より大きい第2制御閾値に設定する(ステップ114;制御閾値設定手段(制御閾値設定工程))とともに、後述する横転抑制制御にて付与される制動力を第1制動量より小さい第2制動量に設定する(ステップ116;制動量設定手段)。
【0066】
なお、第2制御閾値は、車両Mのアンダステア状態の度合いに応じて設定するようにしてもよい。例えば、図4に示す、ヨーレート偏差ΔYrと第2制御閾値との関係と、先に演算されたヨーレート偏差ΔYrとから、第2制御閾値を演算するようにすればよい。
【0067】
そして、ブレーキ制御ECU36は、ステップ118において、先にステップ102にて取得された横加速度(横転状態値)をステップ110またはステップ114にて設定された制御閾値と比較する(比較手段(比較工程))。ブレーキ制御ECU36は、先にステップ102にて取得された横加速度がステップ110またはステップ114にて設定された制御閾値以上である場合には、ステップ118にて「YES」と判定しプログラムをステップ120に進めて、車両Mの横転を抑制するように制御する横転抑制制御を行う。一方、ブレーキ制御ECU36は、先にステップ102にて取得された横加速度がステップ110またはステップ114にて設定された制御閾値未満である場合には、ステップ118にて「NO」と判定しプログラムをステップ122に進めて、車両Mの横転抑制制御の実行を行わないでプログラムをステップ100に戻す。
【0068】
ブレーキ制御ECU36は、ステップ120において、車両Mの車輪に制動力を付与することにより車両の横転を抑制する横転抑制制御を行う(制動力付与手段(制動力付与工程))。このとき、例えば、ステップ102で取得した実ヨーレートや舵角から、車両が右旋回中であるか左旋回中であるかが判定され、その旋回方向に応じた対象輪に対して制動力が発生させられるようにブレーキアクチュエータ35を制御する。横転抑制制御とは、少なくとも一輪以上の車輪に制動力を付与するように制御することである。例えば、外側の前後輪に制動力を付与するように制御する。また、ブレーキアクチュエータ35のポンプの能力が大きければ、四輪全てに制動力を付与するように制御する。
【0069】
よって、車両Mがアンダステア状態である場合には、非アンダステア状態である場合に比べて、横転抑制制御を開始する制御閾値を大きい値に設定することで、横転抑制制御に係る制動力の付与の開始を遅らせることができ、ひいてはタイヤの摩擦限界に近づくのを遅らせることができる。
【0070】
また、このとき付与される制動力の制動量は、先にステップ112またはステップ116にて設定された第1制動量または第1制動量より小さい第2制動量である。よって、車両Mが非アンダステア状態である場合には、比較的大きな第1制動量の制動力を付与することができる。一方、車両Mがアンダステア状態である場合には、比較的小さな第2制動量の制動力を付与することができる。
【0071】
なお、非アンダステア状態である場合にも、アンダステア状態である場合にも、同一制動量の制動力を付与するようにしてもよい。この場合、ステップ112、116を削除すればよい。
【0072】
さらに、図5に示すブロック図で説明する。横転状態値検出手段(横転状態値検出工程)61は、車両が横転傾向にあることを示す横転状態値(例えば横加速度)を検出する。比較手段62は、横転状態値検出手段61により検出された横加速度(横転状態値)を後述するように設定された制御閾値(76)と比較する。制動力発生手段(制動力付与手段(制動力付与工程))63は、車両Mの車輪(例えば旋回外輪)に制動力を付与することにより車両の横転を抑制する横転抑制制御を行う。これにより、制動力が旋回外輪に付与され(64,65)、横転状態値(横加速度)が減少する(66)。
【0073】
また、アンダステア状態検出手段(アンダステア状態検出工程)71は、実ヨーレートと舵角ヨーレートとから車両の走行状態がアンダステア状態であるか非アンダステア状態であるかを検出する。非アンダステア状態である旨が検出された場合(72)には、横転抑制制御を開始するための制御閾値が第1制御閾値に設定される(73)。一方、アンダステア状態である旨が検出された場合には(74)、制御閾値が第1制御閾値より大きい第2制御閾値に設定される(75)。72〜76に示すように、非アンダステア状態である旨が検出された場合には、横転抑制制御を開始するための制御閾値を第1制御閾値に設定するとともに、アンダステア状態である旨が検出された場合には(74)、制御閾値を第1制御閾値より大きい第2制御閾値に設定する工程が制御閾値設定工程である。
【0074】
上述した説明から明らかなように、本実施形態によれば、アンダステア状態検出手段(ステップ108、71)が、車両Mの走行状態がアンダステア状態であるか非アンダステア状態であるかを検出する。さらに、制御閾値設定手段(ステップ110,114、72,73、74,75)が、非アンダステア状態である旨を検出した場合には、制御閾値を第1制御閾値に設定するとともに、アンダステア状態である旨を検出した場合には制御閾値を第1制御閾値より大きい第2制御閾値に設定する。そして、制動力付与手段(ステップ120、63)が、検出された横転状態値が制御閾値より大きい場合には、車両の車輪に制動力を付与することにより車両の横転を抑制する横転抑制制御を行う。
【0075】
すなわち、車両Mがアンダステア状態である場合には、非アンダステア状態である場合に比べて、横転抑制制御を開始する制御閾値を大きい値(第2制御閾値)に設定することで、横転抑制制御に係る制動力の付与の開始を遅らせることができ、ひいてはタイヤの摩擦限界に近づくのを遅らせることができる。これにより、横転抑制制御中において横力の減少を抑制することができ、ひいてはアンダステアの度合いが強くなるのを未然に抑制することができる。したがって、走行が所望範囲から逸脱するのを抑制することにより、ロール抑制をしつつ旋回トレース性を確保することができる。
【0076】
なお、実横加速度が制御閾値を超えるまでの間は、ヨーレート偏差が大きい状態であるが、アンダステア状態で車体が横滑り状態であったとしても横転の可能性は低い。また、アンダステア抑制制御では、予め定められた所定の閾値を超えないようにヨーレートが制御される。
【0077】
また、第2制御閾値は、車両のアンダステア状態の度合いに応じて設定する。これにより、第2制御閾値をアンダステア状態の度合いに応じて適切に設定できるため、アンダステアの度合いが強くなるのを未然に抑制することをより適切に行うことができる。
【0078】
また、制動量設定手段(ステップ112,116)が、非アンダステア状態である旨を検出した場合には、制動力を第1制動量に設定するとともに、アンダステア状態である旨を検出した場合には制動力を第1制動量より小さい第2制動量に設定する。これにより、横転抑制制御が開始された場合であって、付与される制動力は比較的小さく抑制できるため、アンダステアが大きくなるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0079】
11…エンジン、20…横転抑制制御装置、31…ブレーキペダル、32…真空式制動倍力装置、33…マスタシリンダ、34…リザーバタンク、35…ブレーキアクチュエータ、36…ブレーキ制御ECU、37b…ステアリングセンサ、38…ヨーレートセンサ、39…横加速度センサ、41,51…差圧制御弁、42…左後輪液圧制御部、43…右後輪液圧制御部、44…第1減圧部、52…左前輪液圧制御部、53…右前輪液圧制御部、54…第2減圧部、Wfl,Wfr,Wrl,Wrr…車輪、Sfl,Sfr,Srl,Srr…車輪速センサ、WCfl,WCfr,WCrl,WCrr…ホイールシリンダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(M)が横転傾向にあることを示す横転状態値を検出する横転状態値検出手段(39、61、ステップ102)と、
検出された前記横転状態値を制御閾値と比較する比較手段(62、ステップ118)と、
検出された前記横転状態値が前記制御閾値より大きい場合には、前記車両の車輪に制動力を付与することにより前記車両の横転を抑制する横転抑制制御を行うことが可能である制動力付与手段(35、63、ステップ120)と、
前記車両の走行状態がアンダステア状態であるか非アンダステア状態であるかを検出するアンダステア状態検出手段(61、ステップ108)と、
前記非アンダステア状態である旨を検出した場合には、前記制御閾値を第1制御閾値に設定するとともに、前記アンダステア状態である旨を検出した場合には前記制御閾値を前記第1制御閾値より大きい第2制御閾値に設定する制御閾値設定手段(72〜76、ステップ110,114)と、
を備えたことを特徴とする横転抑制制御装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第2制御閾値は、前記車両のアンダステア状態の度合いに応じて設定することを特徴とする横転抑制制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記非アンダステア状態である旨を検出した場合には、前記制動力を第1制動量に設定するとともに、前記アンダステア状態である旨を検出した場合には前記制動力を前記第1制動量より小さい第2制動量に設定する制動量設定手段(ステップ112,116)を、さらに備えたことを特徴とする横転抑制制御装置。
【請求項4】
車両の走行状態がアンダステア状態であるか非アンダステア状態であるかを検出するアンダステア状態検出工程(71、ステップ108)と、
前記非アンダステア状態である旨を検出した場合には、制御閾値を第1制御閾値に設定するとともに、前記アンダステア状態である旨を検出した場合には前記制御閾値を前記第1制御閾値より大きい第2制御閾値に設定する制御閾値設定工程(72〜76、ステップ110,114)と、
前記車両が横転傾向にあることを示す横転状態値を検出する横転状態値検出工程(61、ステップ102)と、
検出された前記横転状態値を前記制御閾値と比較する比較工程(62、ステップ118)と、
検出された前記横転状態値が前記制御閾値より大きい場合には、前記車両の車輪に制動力を付与することにより前記車両の横転を抑制する横転抑制制御を行うことが可能である制動力付与工程(63、ステップ120)と、
を有することを特徴とする横転抑制制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−56457(P2012−56457A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201982(P2010−201982)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】