説明

樹脂、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法

【課題】優れたラインエッジラフネスを有するレジストパターンを得ることができるレジスト組成物及び該レジスト組成物に含有される樹脂を提供する。
【解決手段】式(I)で表される構造単位を有する樹脂[式(I)中、Rは、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。Aは、単結合、−A−O−、−A−CO−O−、−A−CO−O−A−CO−O−又は−A−O−CO−A−O−を表す。*は−O−との結合手を表す。A及びAは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキレン基を表す。]、当該樹脂を含有するレジスト組成物の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ技術を用いた半導体の微細加工に用いられるレジスト組成物は、樹脂と酸発生剤と溶剤とを含有する。
【0003】
例えば、特許文献1には、レジスト組成物用の樹脂として、式(u−A)で表される構造単位、式(u−B)で表される構造単位及び式(u−C)で表される構造単位からなる樹脂が記載されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−240625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の樹脂を含有するレジスト組成物は、得られるレジストパターンのラインエッジラフネス(LER)が必ずしも十分に満足できない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 式(I)で表される構造単位を有する樹脂。

[式(I)中、
は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
は、単結合、−A−O−、−A−CO−O−、−A−CO−O−A−CO−O−又は−A−O−CO−A−O−を表す。
*は−O−との結合手を表す。
は、炭素数1〜6のアルカンジイル基を表す。]
【0007】
[2] アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る[1]記載の樹脂。
【0008】
[3] [1]又は[2]記載の樹脂と、酸発生剤と、溶剤とを含有するレジスト組成物。
【0009】
[4] さらに、塩基性化合物を含有する[3]記載のレジスト組成物。
【0010】
[5] (1)[3]又は[4]記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物から溶剤を除去して組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程
を含むレジストパターンの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂によれば、優れたラインエッジラフネス(LER)を有するレジストパターンを製造し得るレジスト組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<樹脂>
本発明の樹脂は、式(I)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位(I)」という。)を有する。
【0013】
<構造単位(I)>
構造単位(I)は式(I)で表される。繰り返しになるが、式(I)を以下に示す。

[式(I)中、
は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
は、単結合、−A−O−、−A−CO−O−、−A−CO−O−A−CO−O−又は−A−O−CO−A−O−を表す。
*は−O−との結合手を表す。
は、炭素数1〜6のアルカンジイル基を表す。]
【0014】
のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基及びn−ヘキシル基などが挙げられ、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは、メチル基及びエチル基である。
【0015】
のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
のハロゲン原子を有するアルキル基としては、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルクロロメチル基、ペルブロモメチル基及びペルヨードメチル基などが挙げられる。
以上の具体例の中でも、Rは、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0016】
は、単結合、−A−O−、−A−CO−O−、−A−CO−O−A−CO−O−又は−A−O−CO−A−O−を表し、Aは、炭素数1〜6のアルカンジイル基である。該アルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基及びヘキサン−1,6−ジイル基などの直鎖状アルカンジイル基や、直鎖状アルカンジイル基に、アルキル基(特に、炭素数1〜4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基など)の側鎖を有したもの、例えば、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基及び2−メチルブタン−1,4−ジイル基などの分岐状アルカンジイル基が挙げられる。
以上の具体例の中でも、Aは、単結合又は−A−CO−O−であることが好ましく、単結合、−CH−CO−O−又は−C4−CO−O−であることがより好ましい。
【0017】
構造単位(I)の具体例を以下に示す。

【0018】
式(aa−1)〜式(aa−6)でそれぞれ表される構造単位について、Rに相当するメチル基が水素原子で置き換わった構造単位も、構造単位(I)の具体例として挙げることができる。
【0019】
構造単位(I)は、式(I’)で表される化合物(以下、場合により「化合物(I’)」という。)から誘導される。

[式(I’)中、R及びAは上記と同じ意味を表す。]
【0020】
化合物(I’)は、以下のようにして製造することができる。
ここでは、Aが単結合である化合物(I’)[式(I’−1)で表される化合物]を例にとり、その製造方法を説明する。
式(I’−1)で表される化合物は、式(I’−1−a)で表される化合物と式(I’−1−b)で表される化合物とを、塩基触媒の存在下、溶剤中で反応させることにより得ることができる。ここで用いる塩基触媒としては、ピリジンが好ましく、溶剤としては、テトラヒドロフランが好ましい。

式(I’−1−a)で表される化合物としては、メタクリル酸クロリドなどが挙げられる。このメタクリル酸クロリドは市場から容易に入手できる。
【0021】
化合物(I’)の具体例を以下に示す。

【0022】
式(aa’−1)〜式(aa’−6)で表される化合物について、Rに相当するメチル基が水素原子で置き換わった構造単位も、化合物(I’)の具体例として挙げることができる。
【0023】
上述のとおり、本発明の樹脂は構造単位(I)を有するものである。該樹脂中の構造単位(I)の含有割合は、本樹脂の全構造単位(100モル%)に対して、1〜100モル%の範囲であり、2〜70モル%の範囲が好ましく、3〜65モル%の範囲がより好ましく、5〜60モル%の範囲がさらに好ましい。
【0024】
レジスト組成物(特に、化学増幅型レジスト組成物)には、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る特性(以下、場合により「酸作用特性」という。)を有する樹脂を含有することが必要である。後述する本発明のレジスト組成物(以下、場合により「本レジスト組成物」という。)は、構造単位(I)を有する樹脂と、酸作用特性を有する樹脂とを含有していてもよいが、本発明の樹脂自体が酸作用特性を有するものであると好ましい。本発明の樹脂のうち、酸作用特性を有するものを、以下、場合により「樹脂(A)」という。酸作用特性を有する樹脂(A)は、その分子内に酸に不安定な基(以下、場合により「酸不安定基」という。)を有する。このような樹脂(A)は、化合物(I’)とともに、酸不安定基を有するモノマー(以下、場合により「モノマー(a1)」という。)を重合することによって製造できる。なお、「酸の作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る」とは、「酸との接触前ではアルカリ水溶液に不溶又は難溶であるが、酸との接触後にはアルカリ水溶液に可溶となる」ことを意味する。樹脂(A)製造用のモノマー(a1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
<モノマー(a1)>
「酸不安定基」とは、酸と接触すると脱離基が脱離して、親水性基(例えば、ヒドロキシ基及びカルボキシ基など)を形成する基を意味する。このような酸不安定基としては、例えば、式(1)で表される基(以下、場合により「酸不安定基(1)」という。)、及び式(2)で表される基(以下、場合により「酸不安定基(2)」という。)などが挙げられる。
【0026】

[式(1)中、
a1、Ra2及びRa3(Ra1〜Ra3)は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、Ra1及びRa2は互いに結合して、それらが結合している炭素原子とともに、炭素数3〜20の環を形成する。*は結合手を表す。]

[式(2)中、
a1’及びRa2’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Ra3’は、炭素数1〜20の炭化水素基を表すか、Ra2’及びRa3’は互いに結合して、それらが結合する炭素原子及び酸素原子とともに、炭素数3〜20の環を形成する。該炭化水素基及び該環に含まれるメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わってもよい。]
【0027】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、単環式又は多環式のいずれでもよく、単環式の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。多環式の飽和炭化水素基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、メチルノルボルニル基及び下記のような基などが挙げられる。酸不安定基(1)では、脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは炭素数3〜16の範囲である。

【0028】
a1及びRa2が互いに結合して環を形成する場合、−C(Ra1)(Ra2)(Ra3)基としては、下記の基が挙げられる。該環の炭素数は、好ましくは3〜12の範囲である。

【0029】
酸不安定基(1)としては、例えば、1,1−ジアルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1〜Ra3がアルキル基である基、好ましくはtert−ブトキシカルボニル基)、2−アルキルアダマンタン−2−イルオキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2が結合して、アダマンチル環を形成し、Ra3がアルキル基である基)及び1−(アダマンタン−1−イル)−1−アルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2がアルキル基であり、Ra3がアダマンチル基である基)などが挙げられる。
【0030】
酸不安定基(2)において、Ra1’〜Ra3’の炭化水素基は、例えば、アルキル基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれでもよい。ここで、アルキル基及び脂環式炭化水素基の具体例は、例えば、式(1)のRa1などにおいて例示したアルキル基及び脂環式炭化水素基とそれぞれ同じものを挙げることができる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、p−メチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−アダマンチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、2,6−ジエチルフェニル基及び2−メチル−6−エチルフェニルなどのアリール基などが挙げられる。
以上、Ra1’〜Ra3’の炭化水素基について説明したが、Ra1’及びRa2’のうち少なくとも1つが水素原子であることが好ましい。
【0031】
酸不安定基(2)の具体例としては、以下の基が挙げられる。

【0032】
モノマー(a1)は、好ましくは、酸不安定基と炭素−炭素二重結合とを有するモノマーであり、より好ましくは酸不安定基を有する(メタ)アクリル系モノマーである。
【0033】
酸不安定基を有する(メタ)アクリル系モノマーのうち、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基を有するものが好ましい。脂環式炭化水素基のような嵩高い構造を有するモノマー(a1)を重合して得られる樹脂(A)を使用すれば、本レジスト組成物の解像度を向上させることができる。
【0034】
酸不安定基と脂環式炭化水素基とを有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、好ましくは、それぞれ式(a1−1)及び式(a1−2)で表されるモノマー(a1)[以下、場合により、これらを式番号に応じて、「モノマー(a1−1)」及び「モノマー(a1−2)」という。]が挙げられる。樹脂(A)を製造するに当たり、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。

[式(a1−1)及び式(a1−2)中、
a1及びLa2は、それぞれ独立に、−O−又は−O−(CH2k1−CO−O−を表し、k1は1〜7の整数を表し、*は−CO−との結合手を表す。
a4及びRa5は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
a6及びRa7は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表す。
n1は0〜10の整数を表す。
n2は0又は1の整数を表す。]
【0035】
a1及びLa2は、好ましくは、−O−又は−O−(CH2k1−CO−O−であり、より好ましくは−O−である。k1は、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1である。
a4及びRa5は、好ましくはメチル基である。
a6及びRa7のアルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基などが挙げられる。Ra6及びRa7のアルキル基は、好ましくは炭素数6以下である。脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数8以下、より好ましくは6以下である。
a6及びRa7の脂環式炭化水素基としては、単環式又は多環式のいずれでもよく、単環式の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。多環式の飽和炭化水素基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、メチルノルボルニル基及び下記のような基等が挙げられる。

m1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0036】
モノマー(a1−1)としては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。中でも、下式(a1−1−1)〜(a1−1−6)でそれぞれ表されるモノマー(a1−1)が好ましく、下式(a1−1−1)〜(a1−1−3)でそれぞれ表されるモノマー(a1−1)がより好ましい。

【0037】
モノマー(a1−2)としては、例えば、1−エチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキサン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘプタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート及び1−イソプロピルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。下式(a1−2−1)〜(a1−2−6)でそれぞれ表されるモノマー(a1−2)が好ましく、下式(a1−2−3)〜(a1−2−4)でそれぞれ表されるモノマー(a1−2)がより好ましく、下式(a1−2−3)で表されるモノマー(a1−2)がさらに好ましい。

【0038】
樹脂(A)におけるモノマー(a1−1)及び/又はモノマー(a1−2)に由来する構造単位の含有割合は、樹脂(A)の全構造単位に対して、通常10〜95モル%の範囲であり、好ましくは15〜90モル%の範囲であり、より好ましくは20〜85モル%の範囲である。
【0039】
樹脂(A)は、好ましくは、化合物(I’)と、モノマー(a1)とを重合させて得ることができるが、化合物(I’)及びモノマー(a1)に加えて、酸不安定基を有さないモノマー(以下、場合により「酸安定モノマー」という。)を重合させた共重合体であるとさらに好ましい。酸安定モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
樹脂(A)が、化合物(I’)と酸に不安定な基を有するモノマー(a1)と酸安定モノマーとの共重合体である場合、構造単位(I)は、全構造単位100モル%に対して、好ましくは5〜60モル%の範囲であり、より好ましくは10〜50モル%の範囲である。モノマー(a1)に由来する構造単位は、全構造単位に対して、好ましくは10〜80モル%の範囲であり、より好ましくは20〜60モル%の範囲である。また、アダマンチル基を有するモノマー(特に、モノマー(a1−1))に由来する構造単位の含有率は、好ましくは、モノマー(a1)に由来する構造単位の総量に対して15モル%以上である。アダマンチル基を有するモノマー(a1)に由来する構造単位の含有割合が増えると、当該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物から得られるレジストパターンのドライエッチング耐性が向上する。
【0041】
酸安定モノマーとしては、好ましくは、ヒドロキシ基又はラクトン環を有するモノマーが挙げられる。ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(以下、場合により「酸安定モノマー(a2)」という。)又はラクトン環を含有する酸安定モノマー(以下、場合により「酸安定モノマー(a3)」という。)に由来する構造単位を有する樹脂(A)を含有する本レジスト組成物は、より解像度に優れ、後述するレジストパターンの製造において、基板上に形成される組成物層などが、基板との間に優れた密着性を発現する傾向がある。
【0042】
<酸安定モノマー(a2)>
樹脂(A)製造に酸安定モノマー(a2)を用いる場合、当該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物からレジストパターンを製造する際の露光源の種類によって、各々、好適な酸安定モノマー(a2)を選択することができる。すなわち、本レジスト組成物を、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)を露光源とする露光、電子線あるいはEUV光などの高エネルギー線を露光源とする露光に用いる場合には、酸安定モノマー(a2)として、フェノール性水酸基を有する、後述の式(a2−0)で表される酸安定モノマーを樹脂(A)製造に使用することが好ましい。短波長のArFエキシマレーザ(波長:193nm)を露光源とする露光を用いる場合は、酸安定モノマー(a2)として、後述の式(a2−1)で表される酸安定モノマー(a2)を樹脂(A)製造に使用することが好ましい。このように、樹脂(A)製造に使用する酸安定モノマー(a2)は各々、レジストパターンを製造する際の露光源によって好ましいものを選ぶことができる。なお、樹脂(A)製造に酸安定モノマー(a2)を使用するときは、該酸安定モノマー(a2)は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
フェノール性ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(a2)として、式(a2−0)で表されるp−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系モノマー(以下、場合により「酸安定モノマー(a2−0)」という。)が挙げられる。

[式(a2−0)中、
a30は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
a31は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表す。
maは0〜4の整数を表す。maが2以上の整数である場合、複数のRa31は同一であっても異なってもよい。]
【0044】
a30におけるハロゲン原子を有していてもよいアルキル基の具体例は、式(I)のRのハロゲン原子を有していてもよいアルキル基として例示したものと同じである。Ra30は好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは、メチル基及びエチル基であり、特に好ましくは、メチル基である。
a31のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
また、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基及びn−ヘキトキシ基などが挙げられ、好ましくは、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、より好ましくは、メトキシ基及びエトキシ基であり、特に好ましくは、メトキシ基である。
maは、好ましくは、0〜2であり、より好ましくは、0又は1であり、特に好ましくは、0である。
【0045】
このような酸安定モノマー(a2−0)に由来する構造単位を有する樹脂(A)を得る場合は、該酸安定モノマー(a2−0)に含まれるフェノール性水酸基を適当な保護基で保護したモノマー(保護化酸安定モノマー(a2−0))を用いてもよい。該保護化酸安定モノマー(a2−0)に由来する構造単位を有する樹脂に対し、該保護基の種類に応じて適切な脱保護を行えば、酸安定モノマー(a2−0)に由来する構造単位を有する樹脂を得ることができる。
【0046】
酸安定モノマー(a2−0)としては、例えば、特開2010−204634号公報に記載されたモノマーが挙げられる。下式(a2−0−1)及び(a2−0−2)でそれぞれ表されるモノマーが好ましい。樹脂(A)を製造する際には、上述のとおり、フェノール性ヒドロキシ基が適当な保護基で保護したものを用いることもできる。

【0047】
樹脂(A)が、酸安定モノマー(a2−0)に由来する構造単位を有する場合、その含有割合は、当該樹脂(A)の全構造単位に対して、通常5〜90モル%の範囲であり、好ましくは10〜85モル%の範囲であり、より好ましくは15〜80モル%の範囲である。
【0048】
ヒドロキシアダマンチル基を有する酸安定モノマーとして、式(a2−1)で表されるモノマー(以下、場合により「酸安定モノマー(a2−1)」という。)が挙げられる。

式(a2−1)中、
a3は、−O−又は−O−(CH2k2−CO−O−を表し、
k2は1〜7の整数を表す。*は−CO−との結合手を表す。
a14は、水素原子又はメチル基を表す。
a15及びRa16は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基を表す。
o1は、0〜10の整数を表す。
【0049】
式(a2−1)では、La3は、好ましくは、−O−、k2が1〜4である−O−(CH2k2−CO−O−であり、より好ましくは−O−である。
a14は、好ましくはメチル基である。
a15は、好ましくは水素原子である。
a16は、好ましくは水素原子又はヒドロキシ基である。
o1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0050】
酸安定モノマー(a2−1)としては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。中でも、下式(a2−1−1)〜(a2−1−6)でそれぞれ表されるモノマーが好ましく、下式(a2−1−1)〜(a2−1−4)でそれぞれ表されるモノマーがより好ましく、下式(a2−1−1)及び(a2−1−3)でそれぞれ表されるモノマーがさらに好ましい。

【0051】
樹脂(A)が、酸安定モノマー(a2−1)に由来する構造単位を有する場合、その含有割合は、当該樹脂(A)の全構造単位に対して、通常3〜45モル%の範囲であり、好ましくは5〜40モル%の範囲であり、より好ましくは5〜35モル%の範囲である。
【0052】
<酸安定モノマー(a3)>
酸安定モノマー(a3)が有するラクトン環は、例えば、β−プロピオラクトン環、γ−ブチロラクトン環、δ−バレロラクトン環のような単環でもよく、単環式のラクトン環と他の環との縮合環でもよい。これらラクトン環の中で、好ましくは、γ−ブチロラクトン環、又は、γ−ブチロラクトン環と他の環との縮合環が挙げられる。
【0053】
酸安定モノマー(a3)は、好ましくは、式(a3−1)、式(a3−2)又は式(a3−3)で表される。これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。

式(a3−1)〜式(a3−3)中、
a4〜La6は、それぞれ独立に、−O−又は−O−(CH2k3−CO−O−を表す。
k3は1〜7の整数を表す。*は−CO−との結合手を表す。
a18〜Ra20は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
a21は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
p1は0〜5の整数を表す。
a22及びRa23は、それぞれ独立に、カルボキシ基、シアノ基又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
q1及びr1は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。p1が2以上のとき、複数のRa21は互いに同一でも異なってもよく、q1が2以上のとき、複数Ra22は互いに同一でも異なってもよく、r1が2以上のとき、複数のRa23は互いに同一でも異なってもよい。
【0054】
式(a3−1)〜式(a3−3)では、La4〜La6としては、La3で説明したものが挙げられる。
a4〜La6は、それぞれ独立に、−O−又は、k3が1〜4の整数である−O−(CH2k3−CO−O−であることが好ましく、より好ましくは−O−CH2−CO−O−及び−O−であり、さらに好ましくは、−O−である。
a18〜Ra21は、好ましくはメチル基である。
a22及びRa23は、それぞれ独立に、好ましくはカルボキシ基、シアノ基又はメチル基である。
p1〜r1は、それぞれ独立に、好ましくは0〜2、より好ましくは0又は1である。
【0055】
酸安定モノマー(a3)としては、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。下式(a3−1−1)〜(a3−1−4)、(a3−2−1)〜(a3−2−4)、(a3−3−1)〜(a3−3−4)で表される酸安定モノマー(a3)が好ましく、下式(a3−1−1)〜(a3−1−2)、(a3−2−3)〜(a3−2−4)で表される酸安定モノマー(a3)がより好ましく、下式(a3−1−1)又は(a3−2−3)で表される酸安定モノマー(a3)がさらに好ましい。

【0056】
樹脂(A)が、酸安定モノマー(a3)に由来する構造単位を有する場合、その含有割合は、当該樹脂(A)の全構造単位に対して、通常5〜70モル%の範囲であり、好ましくは10〜65モル%の範囲であり、より好ましくは10〜60モル%の範囲である。
【0057】
<その他のモノマー>
本発明の樹脂、特に樹脂(A)は、すでに説明した化合物(I’)、モノマー(a1)及び酸安定モノマー以外のその他のモノマーに由来する構造単位を有していてもよい。かかるその他のモノマーとしては、レジスト組成物用樹脂の製造用として公知のものを挙げることができる。
【0058】
好ましくは、樹脂(A)は、少なくとも、化合物(I’)と、モノマー(a1)とから製造されるものであり、好ましくは、化合物(I’)と、モノマー(a1)と、酸安定モノマーとから製造されるものである。なお、酸安定モノマーとしてはすでに説明した、酸安定モノマー(a2)及び/又は酸安定モノマー(a3)が好ましい。該樹脂(A)において、モノマー(a1)は、より好ましくはモノマー(a1−1)及びモノマー(a1−2)の少なくとも1種(さらに好ましくはモノマー(a1−1))であり、酸安定モノマー(a2)は、好ましくは酸安定モノマー(a2−1)であり、酸安定モノマー(a3)は、より好ましくはγ−ブチロラクトン環を有する、式(a3−1)で表される酸安定モノマー及びγ−ブチロラクトン環とノルボルナン環との縮合環を有する、式(a3−2)で表される酸安定モノマーの少なくとも1種である。樹脂(A)は、これらのモノマーを、公知の重合法(例えばラジカル重合法)に供することにより製造できる。
【0059】
樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは、2,500以上(より好ましくは3,000以上)、50,000以下(より好ましくは30,000以下)である。かかる重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算値として求められるものであり、その分析条件の詳細などは本願の実施例に記載する。
【0060】
後述する本発明のレジスト組成物(以下、場合により「本レジスト組成物」という。)において、樹脂(A)の含有割合は、好ましくは、本レジスト組成物の固形分中80質量%以上である。
なお、本明細書において「組成物中の固形分」とは、後述する溶剤(D)を除いたレジスト組成物成分の合計を意味する。組成物中の固形分及びこれに対する樹脂(A)の含有割合は、例えば、液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段で測定することができる。
【0061】
樹脂(A)の具体例を、構造単位の組み合わせで示すと以下のとおりである。

【0062】

【0063】
<本レジスト組成物>
本レジスト組成物は、本発明の樹脂(構造単位(I)を有する樹脂)、好ましくは樹脂(A)(構造単位(I)を有する樹脂(A))を含有することにより、ラインエッジラフネス(LER)に優れたレジストパターンを製造し得る。本レジスト組成物は、本発明の樹脂以外に、酸発生剤(以下、場合により「酸発生剤(B)」という。)を含有し、さらに溶剤(以下、場合により「溶剤(D)」という。)、塩基性化合物(以下、場合により「塩基性化合物(C)」という。)などの添加剤を含有することもある。以下、本レジスト組成物に含有される構成成分に関して説明する。
【0064】
<酸発生剤(B)>
レジスト分野に用いられる酸発生剤は、非イオン系とイオン系とに分類される。本レジスト組成物に含有される酸発生剤(B)は、非イオン系酸発生剤であっても、イオン系酸発生剤であっても、これらの組み合わせでもよい。非イオン系酸発生剤には、有機ハロゲン化物、スルホネートエステル類(例えば、2−ニトロベンジルエステル、芳香族スルホネート、オキシムスルホネート、N−スルホニルオキシイミド、N−スルホニルオキシイミド、スルホニルオキシケトン、ジアゾナフトキノン 4−スルホネート)、スルホン類(例えば、ジスルホン、ケトスルホン、スルホニルジアゾメタン)等が含まれる。イオン系酸発生剤は、オニウムカチオンを含むオニウム塩(例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩)が代表的である。オニウム塩のアニオンとしては、スルホン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、スルホニルメチドアニオンなどがある。
【0065】
酸発生剤(B)としては、例えば、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号や、米国特許第3,779,778号、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、欧州特許第126,712号などに記載の放射線によって酸を発生する化合物を使用することもできる。
【0066】
酸発生剤(B)は、好ましくはフッ素含有酸発生剤であり、より好ましくは式(B1)で表されるスルホン酸塩(以下、場合により「酸発生剤(B1)」という。)である。

[式(B1)中、
1及びQ2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
b1は、単結合又は炭素数1〜17の2価の飽和炭化水素基を表し、前記2価の飽和炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
Yは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表し、前記アルキル基及び前記脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
+は、有機カチオンを表す。]
以下の説明において、酸発生剤(B1)から、有機カチオン(Z+)を取り除いたものを、「スルホン酸アニオン」ということがある。
【0067】
ペルフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基などが挙げられる。
式(B1)では、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、好ましくはトリフルオロメチル基又はフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。
【0068】
2価の飽和炭化水素基としては、直鎖状アルカンジイル基、分岐状アルカンジイル基、単環式又は多環式の2価の脂環式炭化水素基が挙げられ、これらの基のうち2種以上を組み合わせたものでもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基などの直鎖状アルカンジイル基;
直鎖状アルカンジイル基に、アルキル基(特に、炭素数1〜4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基など)の側鎖を有したもの、例えば、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、2−メチルブタン−1,4−ジイル基などの分岐状アルカンジイル基;
シクロブタン−1,3−ジイル基、1,3−シクロペンタン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基シレン基、シクロオクタン−1,5−ジイル基などのシクロアルカンジイル基などのシクロアルカンジイル基である単環式の2価の脂環式炭化水素基;
ノルボルナン−2,3−ジイル基、ノルボルナン−1,4−ジイル基、ノルボルナン−2,5−ジイル基、アダマンタン−1,2−ジイル基、アダマンタン−1,5−ジイル基、アダマンタン−2,6−ジイル基などの多環式の2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0069】
b1における前記飽和炭化水素基に含まれるメチレン基が、酸素原子又はカルボニル基に置き換わった基としては、例えば、式(b1−1)〜式(b1−6)でそれぞれ表される2価の基が挙げられる。Lb1は、好ましくは式(b1−1)〜式(b1−4)でそれぞれ表される2価の基であり、さらに好ましくは式(b1−1)又は式(b1−2)で表される2価の基が挙げられる。なお、式(b1−1)〜式(b1−6)は、その左右を式(B1)に合わせて記載しており、左側で−C(Q1)(Q2)−の炭素原子と結合し、右側で−Yと結合する。以下の式(b1−1)〜式(b1−6)の具体例も同様である。

式(b1−1)〜式(b1−6)中、
b2は、単結合又は炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。
b3は、単結合又は炭素数1〜12の2価の飽和炭化水素基を表す。
b4は、炭素数1〜13の2価の飽和炭化水素基を表す。但しLb3及びLb4の炭素数上限は13である。
b5は、炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。
b6及びLb7は、それぞれ独立に、炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。但しLb6及びLb7の炭素数上限は16である。
b8は、炭素数1〜14の2価の飽和炭化水素基を表す。
b9及びLb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜11の2価の飽和炭化水素基を表す。但しLb9及びLb10の炭素数上限は12である。
中でも、Lb1は式(b1−1)で表される2価の基であると好ましく、Lb2は単結合又はメチレン基であると好ましい。
【0070】
式(b1−1)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0071】
式(b1−2)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0072】
式(b1−3)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0073】
式(b1−4)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0074】
式(b1−5)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0075】
式(b1−6)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0076】
Yのアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
アルキル基及び脂環式炭化水素基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、ヒドロキシ基含有炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜16の脂環式炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数7〜21のアラルキル基、炭素数2〜4のアシル基、グリシジルオキシ基又は−(CH2j2−O−CO−Rb1基(式中、Rb1は、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数3〜16の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。j2は、0〜4の整数を表す。)などが挙げられる。Yの置換基であるアルキル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びアラルキル基などは、さらに置換基を有していてもよい。ここでの置換基は、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、オキソ基などが挙げられる。
ヒドロキシ基含有アルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
Yのアルキル基及び脂環式炭化水素基におけるメチレン基が、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わった基としては、例えば、環状エーテル基(メチレン基が、酸素原子に置き換わった基)、オキソ基を有する脂環式炭化水素基(メチレン基が、カルボニル基に置き換わった基)、スルトン環基(隣り合う2つのメチレン基が、それぞれ、酸素原子及びスルホニル基で置き換わった基)又はラクトン環基(隣り合う2つのメチレン基が、それぞれ、酸素原子及びカルボニル基に置き換わった基)などが挙げられる。
【0077】
Yの脂環式炭化水素基の具体例を挙げると、以下の式(Y1)〜式(Y26)でそれぞれ表される基が挙げられる。

【0078】
中でも、好ましくは式(Y1)〜式(Y19)でそれぞれ表される基であり、より好ましくは式(Y11)、式(Y14)、式(Y15)又は式(Y19)で表される基であり、さらに好ましくは式(Y11)又は式(Y14)で表される基である。
【0079】
置換基を有する脂環式炭化水素基であるYとしては、例えば以下のものが挙げられる。

【0080】

【0081】

【0082】

【0083】
Yは、好ましくは置換基を有していてもよいアダマンチル基であり、より好ましくはアダマンチル基又はオキソアダマンチル基である。
【0084】
酸発生剤(B1)を構成するスルホン酸アニオンとしては、好ましくは、式(b1−1−1)〜式(b1−1−1−9)でそれぞれ表されるアニオンが挙げられる。以下の式においては、置換基の定義は上記と同じ意味であり、置換基Rb2及びRb3は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基(好ましくは、メチル基)を表す。
酸発生剤(B1)を構成するスルホン酸アニオンとしては、具体的には、特開2010−204646号公報に記載されたアニオンが挙げられる。
【0085】

以下、ここに示すスルホン酸アニオンをその式番号に応じて、「アニオン(b1−1−1)」〜「アニオン(b1−1−9)」という。
【0086】
酸発生剤(B1)を構成する有機カチオンは、有機オニウムカチオン、例えば、有機スルホニウムカチオン、有機ヨードニウムカチオン、有機アンモニウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン、有機ホスホニウムカチオンなどが挙げられ、好ましくは、有機スルホニウムカチオン又は有機ヨードニウムカチオンであり、より好ましくは、アリールスルホニウムカチオンである。
【0087】
有機カチオン(Z+)は、好ましくは式(b2−1)〜式(b2−4)のいずれかで表される。

以下、ここに示す有機カチオンをその式番号に応じて、「カチオン(b2−1)」〜「カチオン(b2−4)」という。
【0088】
これらの式(b2−1)〜式(b2−4)において、
b4〜Rb6は、それぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。該アルキル基は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0089】
b7及びRb8は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
m2及びn2は、それぞれ独立に0〜5の整数を表す。
【0090】
b9及びRb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表す。
b11は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。
b9〜Rb11のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜12であり、脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数3〜18、より好ましくは炭素数4〜12である。
b12は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。前記芳香族炭化水素基は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基で置換されていてもよい。
b9とRb10と、及びRb11とRb12とは、それぞれ独立に、互いに結合して3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)を形成していてもよく、これらの環に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
【0091】
b13〜Rb18は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
b11は、硫黄原子又は酸素原子を表す。
o2、p2、s2、及びt2は、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
q2及びr2は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
u2は0又は1を表す。
o2〜t2のいずれかが2であるとき、それぞれ、複数のRb13〜Rb18のいずれかは互いに同一でも異なってもよい。
【0092】
アルキルカルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基及び2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基などが挙げられる。
【0093】
アルキル基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、好ましくは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基、2−アルキルアダマンタン−2−イル基、1−(アダマンタン−1−イル)アルカン−1−イル基、及びイソボルニル基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、好ましくは、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロへキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基が挙げられる。
置換基が芳香族炭化水素基であるアルキル基(アラルキル基)としては、ベンジル基などが挙げられる。
b9及びRb10が形成する環としては、例えば、チオラン−1−イウム環(テトラヒドロチオフェニウム環)、チアン−1−イウム環、1,4−オキサチアン−4−イウム環などが挙げられる。
b11及びRb12が形成する環としては、例えば、オキソシクロヘプタン環、オキソシクロヘキサン環、オキソノルボルナン環、オキソアダマンタン環などが挙げられる。
【0094】
カチオン(b2−1)〜カチオン(b2−4)の中でも、好ましくは、カチオン(b2−1)であり、より好ましくは、式(b2−1−1)で表されるカチオンであり、特に好ましくは、トリフェニルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=0)である。
【0095】

式(b2−1−1)中、
b19〜Rb21は、それぞれ独立に、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
アルキル基は、好ましくは炭素数1〜12であり、脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数4〜18である。
該アルキル基は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。
該脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基で置換されていてもよい。
v2、w2及びx2(v2〜x2)は、それぞれ独立に0〜5の整数(好ましくは0又は1)を表す。v2〜x2のいずれかが2以上のとき、それぞれ、複数のRb19〜Rb21のいずれかは、互いに同一でも異なってもよい。
なかでも、Rb19〜Rb21は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0096】
有機カチオン(Z)としては、具体的には、特開2010−204646号公報に記載されたカチオンが挙げられる。
【0097】
酸発生剤(B1)は、上述のスルホン酸アニオン及び有機カチオンの組合せである。上述のアニオンとカチオンとは任意に組み合わせることができ、好ましくは、アニオン(b1−1−1)〜アニオン(b1−1−9)のいずれかとカチオン(b2−1−1)との組合せ、並びにアニオン(b1−1−3)〜(b1−1−5)のいずれかとカチオン(b2−3)との組合せが挙げられる。
【0098】
酸発生剤(B1)としては、好ましくは、式(B1−1)〜式(B1−17)でそれぞれ表される塩が挙げられ、より好ましくは、トリフェニルスルホニウムカチオン又はトリトリルスルホニウムカチオンを含む酸発生剤である、式(B1−1)、式(B1−2)、式(B1−3)、式(B1−6)、式(B1−7)、式(B1−11)、式(B1−12)、式(B1−13)及び式(B1−14)でそれぞれ表される塩が挙げられる。
【0099】

【0100】

【0101】

【0102】

【0103】
本レジスト組成物における酸発生剤(B)の含有割合は、樹脂(A)の含有質量に対する含有割合で表して、好ましくは1質量%以上(より好ましくは3質量%以上)、好ましくは30質量%以下(より好ましくは25質量%以下)である。
【0104】
<塩基性化合物(C)>
本レジスト組成物は、塩基性化合物(C)を含むことが好ましい。塩基性化合物(C)はクエンチャーとして作用する。
【0105】
塩基性化合物(C)は、好ましくは塩基性の含窒素有機化合物であり、例えばアミン及びアンモニウム塩が挙げられる。アミンとしては、脂肪族アミン及び芳香族アミンが挙げられる。脂肪族アミンとしては、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンが挙げられる。塩基性化合物(C)として、好ましくは、式(C1)で表される化合物〜式(C8)で表される化合物が挙げられ、より好ましくは式(C1−1)で表される化合物が挙げられる。
【0106】

[式(C1)中、
c1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]
【0107】

[式(C1−1)中、
c2及びRc3は、上記と同じ意味を表す。
c4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
m3は0〜3の整数を表し、m3が2以上のとき、複数のRc4は、互いに同一でも異なってもよい。]
【0108】

[式(C2)、式(C3)及び式(C4)中、
c5、Rc6、Rc7及びRc8は、それぞれ独立に、Rc1と同じ意味を表す。
c9は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基又は炭素数2〜6のアルカノイル基を表す。
n3は0〜8の整数を表し、n3が2以上のとき、複数のRc9は、互いに同一でも異なってもよい。]
【0109】

[式(C5)及び式(C6)中、
c10、Rc11、Rc12、Rc13及びRc16は、それぞれ独立に、Rc1と同じ意味を表す。
c14、Rc15及びRc17は、それぞれ独立に、Rc4と同じ意味を表す。
o3及びp3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、o3又はp3が2以上であるとき、それぞれ、複数のRc14及びRc15は互いに同一でも異なってもよい。
c1は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0110】

[式(C7)及び式(C8)中、Rc18、Rc19及びRc20は、それぞれ独立に、Rc4と同じ意味を表す。
q3、r3及びs3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、q3、r3及びs3が2以上であるとき、それぞれ、複数のRc18、Rc19及びRc20は互いに同一でも異なってもよい。
c2は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0111】
式(C1)で表される化合物としては、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、アニリン、ジイソプロピルアニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミンエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタンなどが挙げられ、好ましくはジイソプロピルアニリンが挙げられ、特に好ましくは2,6−ジイソプロピルアニリンが挙げられる。
【0112】
式(C2)で表される化合物としては、ピペラジンなどが挙げられる。
式(C3)で表される化合物としては、モルホリンなどが挙げられる。
式(C4)で表される化合物としては、ピペリジン及び特開平11−52575号公報に記載されているピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物などが挙げられる。
式(C5)で表される化合物としては、2,2’−メチレンビスアニリンなどが挙げられる。
式(C6)で表される化合物としては、イミダゾール、4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
式(C7)で表される化合物としては、ピリジン、4−メチルピリジンなどが挙げられる。
式(C8)で表される化合物としては、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(2−ピリジル)エテン、1,2−ジ(4−ピリジル)エテン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ジ(4−ピリジルオキシ)エタン、ジ(2−ピリジル)ケトン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルアミン、2,2’−ジピコリルアミン、ビピリジンなどが挙げられる。
【0113】
アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムサリチラート及びコリンなどが挙げられる。
【0114】
本レジスト組成物における塩基性化合物(C)の含有割合は、本レジスト組成物の固形分を基準に、好ましくは、0.01〜5質量%程度であり、より好ましく0.01〜3質量%程度であり、特に好ましく0.01〜1質量%程度である。
【0115】
<溶剤(D)>
後述するレジストパターンの製造に用いるうえで、本レジスト組成物は、溶剤(D)を含有していると好ましい。溶剤(D)の含有割合は、例えば本レジスト組成物の総質量に対して、90質量%以上、好ましくは92質量%以上、より好ましくは94質量%以上であり、例えば99.9質量%以下、好ましくは99質量%以下である。
溶剤(D)の含有割合は、例えば液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィー等の公知の分析手段で測定できる。
【0116】
溶剤(D)としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類;乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類;γ−ブチロラクトンのような環状エステル類などを挙げることができる。溶剤(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0117】
<その他の成分(以下、場合により「その他の成分(F)」という。)>
本レジスト組成物は、必要に応じて、その他の成分(F)を含有していてもよい。成分(F)に特に限定はなく、レジスト分野で公知の添加剤、例えば、増感剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤、染料などを利用できる。
【0118】
<本レジスト組成物の調製方法>
本レジスト組成物は、本発明の樹脂(好ましくは、樹脂(A))、酸発生剤(B)及び溶剤(D)を混合することで、又は、
本発明の樹脂(好ましくは、樹脂(A))、酸発生剤(B)、塩基性化合物(C)及び溶剤(D)を混合することで調製することができる。また、本発明の樹脂が酸作用特性を有さないものである場合、本発明の樹脂以外に酸作用特性を有する樹脂を混合することもある。かかる混合において、その混合順は任意であり、特に限定されるものではない。混合する際の温度は、10〜40℃の範囲から、本発明の樹脂などの種類や当該樹脂などの溶剤(D)に対する溶解度などに応じて適切な温度範囲を選ぶことができる。混合時間は、混合温度に応じて選べばよいが、0.5〜24時間が好ましい。なお、混合手段は特に限定されず、攪拌混合などを用いることができる。
【0119】
このように、本発明の樹脂、酸発生剤(B)及び溶剤(D)、並びに必要に応じて用いられる塩基性化合物(C)又は成分(F)の各々を好ましい含有量で混合した後は、孔径0.01〜0.2μm程度のフィルターを用いてろ過などすることにより、本レジスト組成物は調製できる。
【0120】
<レジストパターンの製造方法>
本レジスト組成物によるレジストパターンの製造方法は、
(1)本レジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程を含む。以下、ここに示す工程の各々を、「工程(1)」〜「工程(5)」のようにいう。
【0121】
工程(1)における本レジスト組成物の基板上への塗布は、スピンコーターなど、半導体の微細加工のレジスト材料塗布用として広く用いられている塗布装置によって行うことができる。かくして基板上にレジスト組成物からなる塗布膜が形成される。当該塗布装置の条件(塗布条件)を種々調節することで、該塗布膜の膜厚は調整可能であり、適切な予備実験等を行うことにより、所望の膜厚の塗布膜になるように塗布条件を選ぶことができる。本レジスト組成物を塗布する前の基板は、微細加工を実施しようとする種々のものを選ぶことができる。なお、本レジスト組成物を塗布する前に、基板を洗浄したり、反射防止膜を形成したりしておいてもよい。この反射防止膜の形成には例えば、市販の有機反射防止膜用組成物を用いることができる。
【0122】
工程(2)においては、基板上に塗布された本レジスト組成物、すなわち塗布膜を乾燥させて、該塗布膜から溶剤〔溶剤(D)〕を除去する。このような溶剤除去は、例えば、ホットプレートなどの加熱装置を用いた加熱手段(いわゆるプリベーク)、又は減圧装置を用いた減圧手段により、或いはこれらの手段を組み合わせて、該塗布膜から溶剤を蒸発させることにより行われる。加熱手段や減圧手段の条件は、本レジスト組成物に含まれる溶剤(D)の種類等に応じて選択でき、例えばホットプレートの場合、該ホットプレートの表面温度を50〜200℃程度の範囲にすることが好ましい。また、減圧手段では、適当な減圧機の中に、塗布膜が形成された基板を封入した後、該減圧機の内部圧力を1〜1.0×10Pa程度にすればよい。かくして塗布膜から溶剤を除去することにより、該基板上には組成物層が形成される。
【0123】
工程(3)は該組成物層を露光する工程であり、好ましくは、露光機を用いて該組成物層を露光するものである。この際には、微細加工を実施しようとする所望のパターンが形成されたマスク(フォトマスク)を介して露光が行われる。露光機の露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2エキシマレーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、種々のものを用いることができる。また、該露光機は液浸露光機であってもよい。また、露光機は、電子線、超紫外光(EUV)を照射するものであってもよい。液浸露光においては、液浸媒体として例えば、超純水などが用いられる。
上述のとおり、マスクを介して露光することにより、該組成物層には露光された部分(露光部)及び露光されていない部分(未露光部)が生じる。露光部の組成物層では該組成物層に含まれる酸発生剤(B)、好ましくは酸発生剤(B1)が露光エネルギーを受けて酸を発生し、さらに発生した酸との作用により、酸作用特性を有する樹脂(好ましくは、酸作用特性を有する樹脂(A))にある酸不安定基が脱保護反応により親水性基を生じ、結果として露光部の組成物層にある上記樹脂はアルカリ水溶液に可溶なものとなる。一方、未露光部では露光エネルギーを受けていないため、上記樹脂はアルカリ水溶液に対して不溶又は難溶のままとなる。かくして、露光部にある組成物層と未露光部にある組成物層とは、アルカリ水溶液に対する溶解性が著しく相違するため、アルカリ水溶液による現像によりレジストパターンを形成することができる。
【0124】
工程(4)においては、露光部で生じうる脱保護基反応を、さらにその進行を促進するための加熱処理(いわゆるポストエキスポジャーベーク)が行われる。かかる加熱処理は前記工程(2)で示したホットプレートを用いる加熱手段などが好ましい。なお、工程(4)におけるホットプレート加熱を行う場合、該ホットプレートの表面温度は50〜200℃程度が好ましく、70〜150℃程度がより好ましい。加熱処理により、上記脱保護反応が促進される。
【0125】
工程(5)は、加熱後の組成物層を現像する工程であり、好ましくは、加熱後の組成物層を現像装置により現像するものである。ここでいう現像とは、加熱後の組成物層をアルカリ水溶液と接触させることにより、露光部の組成物層を該アルカリ水溶液に溶解させて除去することである。未露光部は、上述のとおりアルカリ水溶液に対して不溶又は難溶であるため、基板に残り、当該基板上にレジストパターンが製造される。
前記アルカリ水溶液としては、「アルカリ現像液」と称される本技術分野で公知のものを用いることができる。該アルカリ水溶液としては例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液や(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液などが挙げられる。
【0126】
現像後、好ましくは超純水などでリンス処理を行い、さらに基板及びレジストパターン上に残存している水分を除去することが好ましい。
【0127】
<用途>
本レジスト組成物は、KrFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、ArFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、電子線(EB)照射用のレジスト組成物又はEUV露光機用のレジスト組成物として好適である。
【実施例】
【0128】
実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。例中、含有量ないし使用量を表す「%」及び「部」は、特記しないかぎり質量基準である。樹脂(A)の組成比(樹脂(A)製造に用いた各モノマーに由来する構造単位の、樹脂(A)に対する共重合比)は、重合終了後の反応液における未反応モノマー量を、液体クロマトグラフィーを用いて測定し、得られた結果から重合に用いられたモノマー量を求めることにより算出した。また重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーにより求めた値である。なお、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーの分析条件は下記のとおりである。
カラム:TSKgel Multipore HXL-M x 3+guardcolumn(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μl
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0129】
樹脂(A)の合成
樹脂(A)の合成において使用した化合物(モノマー)を下記に示す。


以下、これらのモノマーを、その符号に応じて、「モノマー(M−A)」〜「モノマー(M−J)」という。
【0130】
実施例1〔樹脂A1の合成〕
モノマーとして、モノマー(M−G)、モノマー(M−E)、モノマー(M−B)、モノマー(M−H)及びモノマー(M−I)を用い、そのモル比(モノマー(M−G):モノマー(M−E):モノマー(M−B):モノマー(M−H):モノマー(M−I))が32:7:8:43:10となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。当該溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。かくして得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量7.2×10の樹脂A1(共重合体)を収率78%で得た。この樹脂A1は、以下の構造単位を有するものである。各構造単位のモル比は、(u−G):(u−E):(u−B):(u−H):(u−I)[モノマー(M−A)に由来する構造単位を、「A」の符号に合わせて。「(u−A)」と表す。その他のモノマーに由来する構造単位も、モノマーの符号に合わせて示す。]=26.8:7.0:8.6:47.2:10.4であった。

【0131】
実施例2〔樹脂A2の合成〕
モノマーとして、モノマー(M−F)、モノマー(M−E)、モノマー(M−B)、モノマー(M−H)及びモノマー(M−I)を用い、そのモル比(モノマー(M−F):モノマー(M−E):モノマー(M−B):モノマー(M−H):モノマー(M−I))が35:10:6:37:12となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。当該溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。かくして得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量6.9×10の樹脂A2(共重合体)を収率65%で得た。この樹脂A2は、以下の構造単位を有するものである。各構造単位のモル比は、(u−F):(u−E):(u−B):(u−H):(u−I)=26.9:10.3:7.3:42.9:12.6であった。

【0132】
実施例3〔樹脂A3の合成〕
モノマーとして、モノマー(M−G)、モノマー(M−E)、モノマー(M−B)、モノマー(M−D)、モノマー(M−H)及びモノマー(M−I)を用い、そのモル比(モノマー(M−G):モノマー(M−E):モノマー(M−B):モノマー(M−D):モノマー(M−H):モノマー(M−I))が32:7:8:10:33:10となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。当該溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。かくして得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量7.3×10の樹脂A3(共重合体)を収率77%で得た。この樹脂A3は、以下の構造単位を有するものである。各構造単位のモル比は、(u−G):(u−E):(u−B):(u−D):(u−H):(u−I)=26.8:7.0:8.6:11.2:36.1:10.3であった。

【0133】
実施例4〔樹脂A4の合成〕
モノマーとして、モノマー(M−A)、モノマー(M−B)及びモノマー(M−I)を用い、そのモル比(モノマー(M−A):モノマー(M−B):モノマー(M−I))が40:20:40となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。当該溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを78℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。かくして得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量6.6×10の樹脂A4(共重合体)を収率82%で得た。この樹脂A4は、以下の構造単位を有するものである。各構造単位のモル比は、(u−A):(u−B):(u−I)=43.8:20.3:39.9であった。

【0134】
実施例5〔樹脂A5の合成〕
モノマーとして、モノマー(M−G)、モノマー(M−E)、モノマー(M−B)、モノマー(M−D)、モノマー(M−H)及びモノマー(M−J)を用い、そのモル比(モノマー(M−G):モノマー(M−E):モノマー(M−B):モノマー(M−D):モノマー(M−H):モノマー(M−J))が32:7:8:10:33:10となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。当該溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。かくして得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量7.8×10の樹脂A5(共重合体)を収率77%で得た。この樹脂A5は、以下の構造単位を有するものである。各構造単位のモル比は、(u−G):(u−E):(u−B):(u−D):(u−H):(u−J)=26.8:7.0:8.5:11.2:36.0:10.5であった。

【0135】
合成例1〔樹脂H1の合成〕
モノマーとして、モノマー(M−A)、モノマー(M−B)及びモノマー(M−I)を用い、そのモル比(モノマー(M−A):モノマー(M−B):モノマー(M−I))が40:20:40となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。当該溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを78℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。かくして得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量6.5×10の樹脂H1(共重合体)を収率85%で得た。この樹脂H1は、以下の構造単位を有するものである。各構造単位のモル比は、(u−A):(u−B):(u−I)=43.9:20.5:39.6であった。

【0136】
実施例6〜10及び比較例1
<レジスト組成物の調製>
実施例1〜5及び合成例1で得られた樹脂A1〜樹脂A5及び樹脂H1;
以下に示す酸発生剤B1;
以下に示す塩基性化合物C1;
の各々を表2に示す質量部で、以下に示す溶剤に溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト組成物を調製した。
【0137】
【表1】

【0138】
<樹脂>
A1〜A5、H1:樹脂A1〜樹脂A5、樹脂H1
<酸発生剤>
B1:

【0139】
<塩基性化合物:クエンチャー>
C1:2,6−ジイソプロピルアニリン
<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 265.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0部
2−ヘプタノン 20.0部
γ−ブチロラクトン 3.5部
【0140】
<レジストパターンの製造及びその評価>
実施例6〜10のレジスト組成物及び比較例1のレジスト組成物は以下のようにして液浸露光によるラインエッジラフネス(LER)評価を行った。以下、レジスト組成物及び比較例1のレジスト組成物を総称して、「レジスト組成物」ということがある。
【0141】
<レジスト組成物の液浸露光評価>
以下のようにして、レジスト組成物の液浸露光を行い、ラインエッジラフネス(LER)評価を実施した。
12インチのシリコン製ウェハー上に、有機反射防止膜用組成物[ARC−29;日産化学(株)製]を塗布して、205℃、60秒の条件でベークすることによって、厚さ780Åの有機反射防止膜を形成させた。次いで、前記の有機反射防止膜の上に、上記のレジスト組成物を乾燥(プリベーク)後の膜厚が85nmとなるようにスピンコートした。
レジスト組成物塗布後、得られたシリコンウェハをダイレクトホットプレート上にて、表2の「PB」欄に記載された温度で60秒間プリベーク(PB)した。こうしてレジスト組成物膜を形成したウェハーに、液浸露光用ArFエキシマステッパー[XT:1900Gi;ASML社製、NA=1.35、3/4Annular X−Y偏光]を用いて、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを液浸露光した。なお、液浸媒体としては超純水を使用した。
露光後、ホットプレート上にて、表2の「PEB」欄に記載された温度で60秒間ポストエキスポジャーベーク(PEB)を行い、さらに2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。
【0142】
各レジスト膜において、50nmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量となる露光量を実効感度とした。
【0143】
<ラインエッジラフネス(LER)評価>
リソグラフィプロセス後のレジストパターンの壁面を走査型電子顕微鏡で観察し、レジストパターンの側壁の凹凸の振れ幅が、
3.5nm以下であるものを◎◎、
3.5nmを超え4nm以下であるものを◎
4nmを超え、4.5nm以下であるものを○、
4.5nmを超えるものを×とした。
その結果を表3に示す。
【0144】
【表2】

【0145】
レジスト組成物(実施例6〜実施例10)は、優れたラインエッジラフネスのレジストパターンを製造できた。一方、比較例1のレジスト組成物では、得られるレジストパターンのラインエッジラフネスが不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明の樹脂を含有する本レジスト組成物は、優れたラインエッジラフネス(LER)を有するレジストパターンを製造することができる。そのため、本レジスト組成物は、半導体の微細加工に極めて有用であり、かかる本レジスト組成物を実現できる、本発明の樹脂は産業上の価値が極めて高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される構造単位を有する樹脂。

[式(I)中、
は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
は、単結合、−A−O−、−A−CO−O−、−A−CO−O−A−CO−O−又は−A−O−CO−A−O−を表す。
*は−O−との結合手を表す。
は、炭素数1〜6のアルカンジイル基を表す。]
【請求項2】
アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る請求項1記載の樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2記載の樹脂と、酸発生剤と、溶剤とを含有するレジスト組成物。
【請求項4】
さらに、塩基性化合物を含有する請求項3記載のレジスト組成物。
【請求項5】
(1)請求項3又は4記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物から溶剤を除去して組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、
(5)加熱後の組成物層を現像する工程
を含むレジストパターンの製造方法。

【公開番号】特開2012−180499(P2012−180499A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210284(P2011−210284)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】