説明

樹脂シートの製造装置及び樹脂シートの製造方法

【課題】樹脂シートの片面に、微細な複数の突条と複数の溝とを精度よく形成できる樹脂シートの製造装置を得る。
【解決手段】樹脂シートの製造装置1は、温度調節ロール4と、樹脂シート3の片面に形成される突条3aと溝3bとの形状に対応した溝6aと突条6bとを外周面に有する無端金属帯状体6と、温度調節ロール4の外周面及び無端金属帯状体6の内周面の少なくとも一方に設けられた低比透磁率層5と、樹脂シート3の片面に突条3aと溝3bとの形状を付与するための形状付与装置と、無端金属帯状体6を加熱するための電磁誘導加熱装置8とを備える。無端金属帯状体6の搬送方向に溝6aと突条6bとの長さ方向が延びるように、無端金属帯状体6が外周面に溝6aと突条6bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の突条と該突条間の溝とを片面に有する樹脂シートの製造装置に関し、より詳細には、高周波誘導加熱により加熱された無端金属帯状体の外周面の溝と突条との形状を樹脂シートの片面に転写することにより上記樹脂シートを得る樹脂シートの製造装置及び樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池用封止フィルム、液晶表示装置用光学フィルム及び合わせガラス用インナーフィルムなどに、表面に凹凸を有する合成樹脂フィルムが広く用いられている。このような合成樹脂フィルムを製造する際には、溶融押出法により押し出された溶融樹脂を凹凸を外周面に有する型ロールと圧着ロールとで挟圧する方法、並びに凹凸を外表面に有する転写材を、合成樹脂フィルムの表面に加熱プレスする方法等が用いられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、図10に略図的に示す熱可塑性樹脂のシート加工装置が開示されている。
【0004】
図10に示すシート加工装置101では、供給ロール102に巻かれた熱可塑性樹脂シート103が繰り出される。熱可塑性樹脂シート103は、型ロール104と圧着ロール105との間に導かれる。型ロール104は金属により形成されている。型ロール104は外表面に凹凸を有する。型ロール104の外表面に熱可塑性樹脂シート103が供給される部分よりも型ロール104の回転方向上流側に、加熱装置106が設けられている。加熱装置106により型ロール104を加熱する。加熱された型ロール104と圧着ロール105との間で熱可塑性樹脂シート103を挟圧することにより、型ロール104の外表面の凹凸形状を、熱可塑性樹脂シート103に転写することができる。
【0005】
シート加工装置101では、圧着ロール105とロール107,108とに、エンドレスベルト109がかけ渡されている。エンドレスベルト109は、型ロール104の外表面上の熱可塑性樹脂シート103に密着される。エンドレスベルト109により、凹凸形状が付与された熱可塑性樹脂シート103が冷却され、型ロール104から熱可塑性樹脂シート103が比較的容易に剥離する。
【0006】
下記の特許文献2には、型ロールにより熱可塑性樹脂シートに凹凸形状を転写する際に、型ロールを加熱する装置として、高周波誘導加熱を用いる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−291251号公報
【特許文献2】特許第4232608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のシート加工装置101では、凹凸を表面に有する熱可塑樹脂シートを得ることができる。しかしながら、シート加工装置101では、加熱装置106として、輻射熱を与える加熱装置が用いられている。このため、エネルギー効率が低いという問題がある。
【0009】
さらに、シート加工装置101では、熱可塑性樹脂シートの表面に微細な凹凸を精度よく形成することは困難である。
【0010】
また、特許文献1では、熱可塑性樹脂の中でも粘度が比較的低い軟質ポリ塩化ビニルに、可塑剤を添加した熱可塑性樹脂組成物を用いることにより、凹凸の転写性が高くなることが記載されている。しかしながら、粘度が比較的高い熱可塑性樹脂を用いた場合には特に、シート加工装置101により、熱可塑性樹脂シートの表面に微細な凹凸を精度よく形成することは極めて困難である。また、粘度を低くするために、粘度を低下させる添加剤等を配合しなければならず、使用可能な熱可塑性樹脂の種類、及び熱可塑性樹脂組成物の組成に制限がある。
【0011】
特許文献2に記載の方法は、高周波誘導加熱を用いて型ロールを加熱するため、熱効率が高い。しかしながら、金属型ロール内において熱が拡散しやすい。このため、型ロールの表面温度を、凹凸形状の転写に適切な比較的高い温度に維持するためには、相当量の電力を供給しなければならない。さらに、特許文献2に記載の製造方法を用いたとしても、樹脂シートの表面に微細な凹凸を精度よく形成することは困難である。例えば、凹凸の凸部断面において、高さの幅に対する比に相当するアスペクト比が0.5を超える凹凸を精度よく形成することが極めて困難であり、アスペクト比が2を超える凹凸を精度よく形成することはより一層困難であるという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、樹脂シートの片面に、微細な複数の突条と複数の溝とを精度よく形成できる樹脂シートの製造装置及び樹脂シート製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広い局面によれば、複数の突条と該突条間の溝とを片面に有する樹脂シートを製造するための装置であって、金属ロール本体を有する温度調節ロールと、樹脂シートの片面に形成される上記突条と上記溝との形状に対応した溝と突条とを外周面に有する無端金属帯状体と、上記温度調節ロールの外周面及び上記無端金属帯状体の内周面の少なくとも一方に設けられており、上記無端金属帯状体よりも比透磁率が低い低比透磁率層と、上記低比透磁率層を介して上記無端金属帯状体が上記温度調節ロールに接触した状態で上記温度調節ロールが回転している間に、上記無端金属帯状体の外周面に樹脂シートを接触させて、樹脂シートの片面に上記突条と上記溝との形状を付与するための形状付与装置と、上記無端金属帯状体の外周面に樹脂シートが接触される位置よりも上流側において上記無端金属帯状体を加熱するための電磁誘導加熱装置とを備え、上記無端金属帯状体の搬送方向に上記溝と上記突条との長さ方向が延びるように、上記無端金属帯状体が外周面に上記溝と上記突条とを有する、樹脂シートの製造装置が提供される。
【0014】
本発明に係る樹脂シートの製造装置のある特定の局面では、上記温度調節ロールの上記金属ロール本体の外周面に、上記低比透磁率層が一体的に設けられている。この場合には、製造装置の小型化を図ることができる。更に、比透磁率の低い素材により、無端金属帯状体に渦電流を発生させるための磁界を、無端金属帯状体内に閉じこめておくことができる。
【0015】
本発明に係る樹脂シートの製造装置の他の特定の局面では、上記温度調節ロールの上記金属ロール本体の外周面に、上記低比透磁率層が一体的に設けられており、かつ上記低比透磁率層の外周面に上記無端金属帯状体が一体的に設けられている。この場合には、製造装置の小型化を図ることができる。更に、使用する部材の低減及び製造装置のコストの低減を図ることができる。
【0016】
本発明に係る樹脂シートの製造装置のさらに別の特定の局面では、上記無端金属帯状体が無端金属ベルトであり、上記温度調節ロールが複数の温度調節ロールを有し、上記無端金属ベルトが、複数の温度調節ロールにかけ渡されている。この場合には、無端金属帯状体の温度をより高精度に制御することができる。
【0017】
本発明に係る樹脂シートの製造装置の他の特定の局面では、上記形状付与装置が、上記無端金属帯状体の外周面に樹脂シートを圧着するための圧着ロールであり、上記圧着ロールが、上記温度調節ロールとの間に隙間を有するように配置されており、該隙間において、上記圧着ロールにより、上記無端金属帯状体の外周面に樹脂シートが圧着される。
【0018】
本発明に係る樹脂シートの製造装置において、上記形状付与装置は、圧着ロールに限らず、エッジピニング装置であってもよく、更にエアナイフであってもよい。
【0019】
本発明に係る樹脂シートの製造装置のさらに他の特定の局面では、溶融された樹脂をシート状に押し出すための溶融押出装置をさらに備え、該溶融押出装置により押し出された樹脂シートの片面に、上記突条と上記溝との形状が付与される。すなわち、樹脂シートの片面に、上記無端金属帯状体の上記溝と上記突条との形状を反転した形状が付与される。この場合には、溶融押出しされることによって、当初から比較的高い温度にある樹脂シートを用いるため、樹脂シートの片面に突条と溝との形状をより一層容易にかつ高精度に付与することができる。
【0020】
本発明に係る樹脂シートの製造装置のさらに他の特定の局面では、上記温度調節ロールが、金属ロール本体の内部に中空部を有し、かつ該中空部に冷媒を供給するための冷媒供給装置を有する。この場合には、冷媒により金属ロール本体を冷却することができ、突条と溝との形状が付与された樹脂シートを、無端金属帯状体の外周面から容易に剥離することができる。
【0021】
上記無端金属帯状体の外周面の上記溝において、上記無端金属帯状体の搬送方向と直交する方向における該溝の幅方向の断面のアスペクト比が0.5以上であることが好ましく、2以上であることが好ましい。これによって、樹脂シートの片面の突条において、樹脂シートを得る際の樹脂シートの搬送方向と直交する方向において、突条の幅方向の断面のアスペクト比が0.5以上又は2以上である樹脂シートを提供することができる。
【0022】
本発明に係る樹脂シートの製造方法は、本発明に係る樹脂シートの製造装置を用いた製造方法であり、上記温度調節ロールを回転させて、上記無端金属帯状体を搬送させる工程と、上記無端金属帯状体を上記電磁誘導加熱装置により加熱する工程と、搬送されている上記無端金属帯状体の上記電磁誘導加熱装置により加熱される位置よりも上記無端金属帯状体の搬送方向の下流側において、上記無端金属帯状体の搬送方向の少なくとも一部の領域において、上記低比透磁率層を介して上記無端金属帯状体を上記温度調節ロールに接触させつつ、上記無端金属帯状体の搬送方向の少なくとも一部の上記領域において、無端金属帯状体の外周面に樹脂シートを接触させて、樹脂シートの片面に上記突条と上記溝との形状を付与する工程と、上記突条と上記溝との形状が付与された樹脂シートを、上記無端金属帯状体の外周面から剥離する工程とを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る樹脂シートの製造装置及び樹脂シート製造方法によれば、無端金属帯状体が熱効率に優れた電磁誘導加熱装置により加熱され、加熱された無端金属帯状体が比透磁率の低い素材を介して温度調節ロールに接触した状態で温度調節ロールが回転している間に、無端金属帯状体の外周面に樹脂シートを接触させるので、無端金属帯状体の外周面の溝と突条との形状を、樹脂シートの片面に高精度に転写することができる。
【0024】
また、熱効率に優れた電磁誘導加熱装置を用いているので少ない電力量で、溝と突条との形状を高精度に転写可能な充分な温度に、無端金属帯状体が加熱される。しかも、該無端金属帯状体が比透磁率の低い素材を介して金属ロール本体と接触しているため、磁界を無端金属帯状体内に集中させることができる。このため、渦電流をより効率的に発生させることができる。
【0025】
しかも、上記無端金属帯状体の搬送方向に上記溝と上記突条との長さ方向が延びるように、上記無端金属帯状体が外周面に上記溝と上記突条とを有するので、樹脂シートの片面に、微細な複数の突条と複数の溝とを精度よく形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1(a)は本発明の一実施形態に係る樹脂シートの製造装置の概略構成図であり、図1(b)はその要部を示す拡大断面図であり、図1(c)は第1の実施形態で得られる樹脂シートを示す部分切欠正面断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態で用いられる温度調節ロールと低比透磁率層と無端金属帯状体との構成を示す部分拡大断面図である。
【図3】図3(a)は、無端金属帯状体の搬送方向と直交する方向における断面図であり、図3(b)は、無端金属帯状体の搬送方向における断面図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態で得られる樹脂シートの応用例を示す部分切欠断面図である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施形態で得られる樹脂シートの変形例を示す部分切欠断面図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施形態に係る樹脂シートの製造装置の概略構成図である。
【図7】図7は、本発明の第3の実施形態に係る樹脂シートの製造装置の概略構成図である。
【図8】図8は、図1に示す樹脂シートの製造装置の変形例を説明するための模式図である。
【図9】図9は、比較例3〜4及び参考例1〜2で作製を試みた樹脂シートの断面図である。
【図10】図10は、従来の熱可塑性樹脂のシート加工装置を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0028】
(第1の実施形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る樹脂シートの製造装置を示す概略構成図である。図1(b)は、第1の実施形態に係る樹脂シートの製造装置の要部を示す部分拡大断面図である。図1(c)は第1の実施形態で得られる樹脂シートを示す部分切欠正面断面図である。
【0029】
図2は、本発明の第1の実施形態で用いられる温度調節ロールと低比透磁率層と無端金属帯状体との構成を示す部分拡大断面図である。図2では、無端金属帯状体の突条がない溝部分における断面が示されている。
【0030】
図1(a)に示すように、樹脂シートの製造装置1は、溶融された樹脂をシート状に押し出すための溶融押出装置2を備える。溶融押出装置2は、例えば、樹脂を溶融させ、樹脂シート3として押し出す。なお、本実施形態では、溶融押出装置2を用いているが、本発明においては、溶融押出装置を用いなくてもよく、予め成型された樹脂シートを用いてもよい。
【0031】
溶融押出装置2から押し出された直後の樹脂シート3は比較的高温の状態にあるので、転写による微細な形状の付与が容易である。従って、溶融押出装置2を用いることが好ましい。予め成型された樹脂シートを用いる場合には、後の工程で微細な形状を転写するために必要な温度に、樹脂シート3を充分に加熱する必要がある。上記形状は、樹脂シートに形成される複数の突条と該突条間の溝との形状である。
【0032】
上記樹脂としては特に限定されないが、本実施形態では、熱可塑性樹脂であるポリメチルメタクリレートが用いられる。上記樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましく、樹脂シートは、熱可塑性樹脂シートであることが好ましい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、エチレンビニルアルコール樹脂、シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマー等が挙げられる。
【0033】
溶融押出装置2により押し出された樹脂シート3は、ロール11と圧着ロール7との間に供給される。ロール11は、金属ロール本体4aを有する温度調節ロール4を含む。ロール11は、金属ロール本体4aの外周面に設けられた低比透磁率層5と、低比透磁率層5の外周面に設けられた無端金属帯状体6とをさらに含む。圧着ロール7は、樹脂シート3の片面に突条3aと溝3bとの形状を付与するための形状付与装置である。
【0034】
図1(b)に示すように、温度調節ロール4は、金属ロール本体4aを有する。金属ロール本体4aは、金属により形成されている。該金属は特に限定されない。該金属として、アルミニウム、ステンレス又は鉄などの強度の高い適宜の金属が用いられる。金属ロール本体4aは円筒状である。金属ロール本体4aは内部に中空部4bを有する。温度調節ロール4は、金属ロール本体4aの中空部4bに冷媒を供給するための図示しない冷媒供給装置を有することが好ましい。上記冷媒としては、空気等が挙げられる。但し、冷媒供給装置は必須ではない。
【0035】
金属ロール本体4aの外周面には、低比透磁率層5が設けられている。低比透磁率層5は、比透磁率が低い低比透磁率素材により形成されている。低比透磁率層5は、金属ロール本体4aの外周面を覆うように設けられている。低比透磁率層5は金属ロール本体4aと一体化されている。すなわち、本実施形態は、温度調節ロール4の金属ロール本体4aの外周面に、低比透磁率層5は一体的に設けられている。
【0036】
上記低比透磁率素材として、無端金属帯状体よりも比透磁率が低い適宜の材料を用いられる。このような材料としては、例えば、Cr、Al及びジルコニア・酸化カルシウム混合物などの無機化合物、並びにポリイミドに代表される耐熱性有機化合物等が挙げられる。本実施形態では、低比透磁率層5は、Crにより形成されている。
【0037】
低比透磁率層5の厚みは特に限定されない。比透磁率が低い素材の熱伝導性は低いことが多い。熱伝導性が低くなりすぎると、図1(a)に示す位置Xから位置Zの間で、適度な冷却が行い難くなる。従って、低比透磁率層5の厚みは、5mm以下であることが好ましい。また、薄すぎると耐久性が低下するので、低比透磁率層5の厚みは、0.001mm以上であることが好ましい。但し、低比透磁率層5の厚みは、低比透磁率層5の素材によって適宜調整され、特に限定されない。
【0038】
低比透磁率層5の外周面に、無端金属帯状体6が設けられている。無端金属帯状体6は、低比透磁率層5と一体化されている。すなわち、本実施形態は、低比透磁率層5の外周面に、無端金属帯状体6は一体的に設けられている。
【0039】
低比透磁率層は、温度調節ロールの外周面及び無端金属帯状体の内周面の内の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0040】
無端金属帯状体6は電磁誘導加熱により加熱される。このため、無端金属帯状体6は、ニッケル、ニッケル合金又は炭素鋼等の比透磁率の高い金属材料により形成されていることが好ましい。より具体的には、無端金属帯状体6は、比透磁率が2以上である金属材料により形成されていることが好ましい。また、金属により形成されているため、無端金属帯状体6は熱伝導性に優れており、無端金属帯状体6の温度制御も容易である。本実施形態では、無端金属帯状体6はNiにより形成されている。
【0041】
図3(a)に、無端金属帯状体6の搬送方向と直交する方向における断面図を示し、図3(b)に、無端金属帯状体6の搬送方向における断面図を示す。無端金属帯状体6の搬送方向は、無端金属帯状体6の回転方向であり、周方向である。
【0042】
図3(a)に示すように、無端金属帯状体6は外周面に、複数の溝6aと複数の突条6bとを有する。溝6aは2つの突条6b間に配置されており、複数の溝6aと複数の突条6bとは交互に並んでいる。溝6aと突条6bとは、無端金属帯状体6の搬送方向と直交する方向に沿って規則的に設けられている。溝6aと突条6bとの形状は、最終的に得られる樹脂シート3の片面に形成される突条3aと溝3bとを反転した形状に相当する。溝6aと突条6bとの形状は、最終的に得られる樹脂シート3の片面に形成される突条3aと溝3bとの形状に対応している。溝6aと突条6bとの形状を樹脂シート3に転写することにより、溝6aに対応して突条3aが形成され、突条6bに対応して溝3bが形成される。
【0043】
無端金属帯状体6の搬送方向に溝6aと突条6bとの長さ方向が延びるように、無端金属帯状体6は外周面に溝6aと突条6bとを有する。言い換えれば、無端金属帯状体6の回転方向又は周方向に溝6aと突条6bとの長さ方向が延びるように、無端金属帯状体6は外周面に溝6aと突条6bとを有する。また、無端金属帯状体6の搬送方向と直交する方向が溝6aと突条6bとの幅方向であるように、無端金属帯状体6は外周面に溝6aと突条6bとを有する。言い換えれば、無端金属帯状体6の搬送方向と、溝6aと突条6bとの長さ方向とは略平行である。無端金属帯状体6の搬送方向と直交する方向と溝6aと突条6bとの幅方向とが略平行である。
【0044】
無端金属帯状体6は、低比透磁率層5が外周面上に設けられた金属ロール本体4aに外挿されてもよい。低比透磁率層5の外周面に平坦な無端金属帯状体を成膜し、平坦な無端金属帯状体の外周面に溝と突条との形状を付与してもよい。
【0045】
無端金属帯状体6の外周面すなわち溝6aと突条6bとが設けられている側の表面には、易剥離性材料層が形成されていてもよい。易剥離性材料層の形成により、樹脂シート3の剥離性を高めることができる。上記易剥離性材料層を構成する易剥離性材料として、フッ素含有単分子膜等の有機系材料、及びダイヤモンドライクカーボン等の無機材料が適宜用いられる。
【0046】
図1(a)に示すように、温度調節ロール4は、モータなどの駆動装置Mにより、図示の矢印A方向に回転する。駆動装置Mは、温度調節ロール4を回転駆動するための駆動装置である。圧着ロール7は、回転自在に設けられている。圧着ロール7は、温度調節ロール4との間に隙間を有するように配置されている。該隙間において、圧着ロール7により、無端金属帯状体6の外周面に樹脂シート3が圧着される。すなわち、樹脂シート3は、温度調節ロール4の外周面上に位置する無端金属帯状体6と圧着ロール7との間で挟圧される。
【0047】
圧着ロール7は、適宜の金属により形成することができる。該金属としては特に限定されず、ステンレス及び鉄等が挙げられる。圧着性を高めるために、圧着ロール7は、圧着ロール本体の外周面がゴム等柔軟性物質によりコーティングされている圧着ロールであってもよい。
【0048】
圧着ロール7は、矢印A方向と反対方向に、駆動装置(図示せず)により回転駆動されてもよい。
【0049】
温度調節ロール4の外周面上に位置する無端金属帯状体6と圧着ロール7とで樹脂シート3が挟圧され、後述の転写が行われる部分を位置Xとする。位置Xよりも温度調節ロール4の回転方向上流側の位置、すなわち無端金属帯状体6の搬送方向上流側の位置Yにおいて、無端金属帯状体6を電磁誘導加熱するために、電磁誘導加熱装置8が配置されている。電磁誘導加熱装置8は、無端金属帯状体6の外周面に樹脂シート3が接触される位置よりも上流側に配置されている。電磁誘導加熱装置8は、高周波電流が通電されるコイルを有する。該コイルに高周波電流が通電された際の磁界により、金属により形成された無端金属帯状体6が電磁誘導加熱され、発熱する。樹脂シート3に突条3aと溝3bとの形状を付与するために、適宜な温度に無端金属帯状体6が加熱されるように電磁誘導加熱装置8が用いられる。
【0050】
位置Yは、位置Xよりも、無端金属帯状体6の搬送方向すなわち温度調節ロール4の回転方向において上流側であれば、特に限定されない。好ましくは、位置Yで加熱された無端金属帯状体6の溝6aと突条6bとの形状を、位置Xで樹脂シート3に転写するために十分な温度に保持できる位置に、電磁誘導加熱装置8を配置することが望ましい。
【0051】
圧着ロール7と温度調節ロール4との内の少なくとも一方は、軸方向における端部の直径よりも軸方向中央における直径が大きくてもよく、樽型のクラウンロールにより形成されていてもよい。圧着ロール7と温度調節ロール4との内の少なくとも一方がクラウンロールであることにより、ロールの軸方向中央部におけるへこみを抑制できる。従って、ロールの軸方向中央においても樹脂シートの形状の精度を高めることができる。
【0052】
温度調節ロール4と隔てられて、ロール9が配置されている。樹脂シート3は、上記位置Xで突条3aと溝3bとの形状が付与された後、無端金属帯状体6の外周面に接触したまま温度調節ロール4とともに移動し、位置Zにおいて無端金属帯状体6から剥離される。ロール9は、この位置Zを調節するために設けられている。すなわち、ロール9に、突条3aと溝3bとの形状が付与された樹脂シート3がかけ渡されており、位置Zが適切な位置となるようにロール9が用いられている。
【0053】
本実施形態の樹脂シートの製造装置1を用いた製造方法を説明する。
【0054】
本実施形態では、図1(c)に示す樹脂シート3が最終的に得られる。樹脂シート3は片面に、複数の突条3aと複数の溝3bとを有する。図1(c)では、樹脂シート3を得る際のシート搬送方向と直交する方向における樹脂シート3の断面形状が示されている。溶融押出法では、長尺状の樹脂シート3が得られる。従って、図1(c)では、長尺状の樹脂シート3の幅方向における樹脂シート3の断面形状が示されている。
【0055】
溝3bは2つの突条3a間に配置されており、複数の突条3aと複数の溝3bとは交互に並んでいる。樹脂シート3を得る際のシート搬送方向すなわち長尺状の樹脂シート3の長さ方向に、突条3aと溝3bとの長さ方向が延びるように、樹脂シート3は片面に突条3aと溝3bとを有する。樹脂シート3を得る際のシート搬送方向と、突条3aと溝3bとの長さ方向とは略平行である。樹脂シート3の長さ方向と、突条3aと溝3bとの長さ方向とは略平行である。突条3aと溝3bとは、樹脂シート3を得る際のシート搬送方向と直交する方向に沿って規則的に設けられている。突条3aと溝3bとは、樹脂シート3の幅方向に沿って規則的に設けられている。この複数の突条3aと複数の溝3bにより、樹脂シート3は片面に凹凸形状を有する。ここでは、突条3aの幅方向の断面及び溝3bの幅方向の断面は矩形である。突条3aの幅方向の断面における寸法(幅方向寸法)をW1、複数の突条3a,3aの中心間距離をW2とする。また、突条3aの高さをh、樹脂シート3の突条3aを除いた樹脂シート本体部分の厚みをtとする。厚みtは、溝3b部分における樹脂シート3の厚みである。樹脂シート3は片面に、高さh及び幅W1の複数の突条3aを有する。
【0056】
図3(a),(b)に示すように、樹脂シート3を転写法により得るため、無端金属帯状体6は外周面に、複数の突条3aに対応する複数の溝6aと、複数の溝3bに対応する複数の突条6bとを有する。上記W1は、無端金属帯状体6における溝6aの幅方向の断面における寸法(幅方向寸法)に相当する。上記W2は、無端金属帯状体6における複数の溝6a,6aの中心間距離に相当する。上記hは、溝6aの深さに相当する。
【0057】
樹脂シート3を製造する際には、溶融押出装置2から溶融状態にある樹脂シート3を押し出し、温度調節ロール4を有するロール11と圧着ロール7との間に樹脂シート3を導く。具体的には、温度調節ロール4の外周面上に位置する無端金属帯状体6と圧着ロール7との間に樹脂シート3を導く。駆動装置Mで温度調節ロール4を駆動させ、回転させつつ、無端金属帯状体6を回転させ、搬送させる。また、無端金属帯状体6を電磁誘導加熱装置8により加熱する。それによって、良好な転写を行うのに必要な温度以上に無端金属帯状体6を加熱する。この温度は、樹脂シート3の材料、またロール11と圧着ロール7との間に供給される樹脂シート3の直前の温度によっても異なる。位置Xにおいて、転写を良好に行い得る温度となるように加熱を行えばよい。
【0058】
加熱された無端金属帯状体6は、温度調節ロール4の回転に伴って、位置Xまで移動する。位置Xにおいて、圧着ロール7により、樹脂シート3が無端金属帯状体6に圧着される。この結果、樹脂シート3が、無端金属帯状体6の外周面に押し付けられる。そして、無端金属帯状体6の外周面の溝6aと突条6bとの形状が、樹脂シート3の片面に転写され、突条3aと溝3bとの形状が樹脂シート3に付与される。すなわち、上記のように、搬送されている無端金属帯状体6の電磁誘導加熱装置8により加熱される位置よりも無端金属帯状体6の搬送方向の下流側において、無端金属帯状体6の搬送方向の少なくとも一部の領域において、低比透磁率層5を介して無端金属帯状体6を温度調節ロール4に接触させる。これとともに、無端金属帯状体6の搬送方向の少なくとも一部の領域において、無端金属帯状体6の外周面に樹脂シート3を接触させ、樹脂シート3の片面に突条3aと溝3bとの形状を付与する。
【0059】
その後、温度調節ロール4の外周面上に位置する状態で、より具体的には、無端金属帯状体6の外周面に樹脂シート3が接触した状態で、位置Xから位置Zまで移動する。この場合、温度調節ロール4の金属ロール本体4aの内部に水又は油などの冷媒が供給されていると、温度調節ロール4の金属ロール本体4aは、位置Xから位置Zに至る段階で温度が低下する。さらに、低比透磁率層5及び無端金属帯状体6も冷却され、位置Xから位置Zに至る段階で温度が低下する。このため、位置Zにおいて、樹脂シート3を無端金属帯状体6の外周面から無理なく剥離することができる。また、無端金属帯状体6から剥離された樹脂シート3は、ロール9を経由して引き取られる。
【0060】
本実施形態の樹脂シートの製造装置1及び該樹脂シートの製造装置1を用いた樹脂シートの製造方法によれば、電磁誘導加熱装置8を用いて、電磁誘導加熱により無端金属帯状体6を加熱するため、微細な溝と突条との形状の転写に必要な温度以上に無端金属帯状体6を速やかにかつ効率的に加熱することができる。更に、低比透磁率層5が無端金属帯状体6の内側に位置しているため、渦電流をより効率的に発生させることができる。更に、低比透磁率層5を構成する比透磁率が低い素材は熱伝導性が低いので、無端金属帯状体6の熱が、冷媒が供給されている金属ロール本体4a側に伝わり難い。従って、位置Xから位置Yに至るまで、無端金属帯状体6は、転写に適切な温度に保持される。よって、位置Xにおいて、樹脂シート3に微細な溝と突条との形状を高精度に転写することができる。
【0061】
しかも、無端金属帯状体6の搬送方向に溝6aと突条6bとの長さ方向が延びるように、無端金属帯状体6が外周面に溝6aと突条6bとを有するので、微細な溝と突条との形状を精度よく転写することができる。また、無端金属帯状体6の外周面からの剥離時に、樹脂シート3に付与された突条3aに加わる応力を低減することができる。従って、位置Xにおいて転写された突条と溝との形状が崩れることなく、位置Zにおいて樹脂シート3を無端金属帯状体6の外周面から無理なく剥離することができる。無端金属帯状体6の搬送方向に溝6aと突条6bとの長さ方向が延びるように、無端金属帯状体6が外周面に溝6aと突条6bとを有することは、電磁誘導加熱装置8及び低比透磁率層5を設けたことによる上記効果と相乗して、微細な突条と溝とを精度よく形成することに大きく寄与する。
【0062】
また、位置Xから位置Zの間の領域において、冷媒により温度調節ロール4が冷却されている場合には、無端金属帯状体6の温度が適度にかつ効率的に低下するので、位置Zにおいて、微細な突条3aと溝3bとを片面に有する樹脂シート3を、無端金属帯状体6の外周面からより一層無理なく剥離することができる。
【0063】
前述した図10に示した従来のシート加工装置101では、予備加熱により予め樹脂シートの温度を高めることが試みられている。しかしながら、予備加熱で与えられた熱が転写前に放散して、転写時の温度が必ずしも適切な温度にならないことがある。従って、図10に示すシート加工装置101では、微細な凹凸形状を高精度に転写することができないことがある。これに対して、本実施形態によれば、上記のとおり、微細な溝と突条との形状を樹脂シート3に高精度に転写することができる。特に、アスペクト比h/W1が高い突条3aを形成する場合でも、本実施形態によれば高精度に形状を転写することができる。具体的には、前述した従来のシート加工装置では、アスペクト比が0.5以上の突条を転写法により形成することは極めて困難であるのに対し、本実施形態によれば、上記アスペクト比h/W1が0.5以上である突条3aを片面に有する樹脂シート3を得ることができる。しかも、本実施形態によれば、上記アスペクト比h/W1が2以上である突条3aを片面に有する樹脂シート3を得ることも容易である。
【0064】
上記のようなアスペクト比の大きい突条3aが片面に形成された場合、樹脂シート3を無端金属帯状体6から剥離するために、ある程度低い温度まで冷却することが好ましい。これによって、アスペクト比の大きい突条3aが、樹脂シート3が無端金属帯状体6の外周面から剥離する際に変形したり、樹脂シート3に歪み等が生じたりすることを効果的に抑制できる。本実施形態において、位置Xから位置Zに至る間に、無端金属帯状体6が適度に冷却されると、アスペクト比の大きい突条3aを形成した場合であっても、樹脂シート3を無端金属帯状体6からより一層無理なく剥離することができる。
【0065】
従って、得られた樹脂シート3の均一性を高めることができ、歪み量を小さくすることができる。よって、例えば光学用フィルムもしくはシートとして、樹脂シート3を好適に用いることができる。
【0066】
図4は、光学シートの一例として、ルーバーシート3Aを示す部分切欠断面図である。ルーバーシート3Aでは、樹脂シート3の突条3a間の溝3bに遮光性材料層3cが充填されている。樹脂シート3自体は透光性であり、遮光性材料層3cが遮光性であるため、図4に矢印Bで示すように、樹脂シート3の面方向と直交する方向においては、透光性を有する。一方で、図4に矢印Cで示すように、樹脂シート3の表面に対して傾斜した角度においては、遮光性材料層3cにより光が通過しない。従って、視野角制御シートとして、ルーバーシート3Aを用いることができる。
【0067】
なお、ルーバーシート3A、図5に示すプリズムシート15の他、本発明により得られる樹脂シートは、様々な突条と溝とを片面に有する光学シートに好適に用いることができる。このような光学シートとしては、レンチキュラーレンズシート、フレネルレンズシート及びマイクロレンズアレイシート等が挙げられる。また、光学シートに限らず、無秩序で微細な突条と溝とが片面に設けられているエンボスシートなどの樹脂シートを本発明により提供することができる。
【0068】
なお、第1の実施形態では、図1(c)に示した断面形状において、矩形である複数の突条3aと溝3bとの形状が付与されていたが、本発明により樹脂シートの片面に形成される突条と溝との形状は特に限定されない。例えば、図5に示すプリズムシート15のように、樹脂シートの搬送方向に直交する方向における断面において、幅W及び高さhの三角形状の突条15aと該突条15a,15a間に溝15bとが連続する形状であってもよい。ここで、厚みtは、突条15aが無い部分すなわち溝15bの最深部における樹脂シートのシート本体部の厚みである。この場合のアスペクト比は、上記と同様に、h/Wで定義される。
【0069】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る樹脂シートの製造装置を示す概略構成図である。
【0070】
図6に示す樹脂シートの製造装置21では、溶融押出装置2から押し出された樹脂シート3が、温度調節ロール22と圧着ロール7との間に供給される。溶融押出装置2及び圧着ロール7は第1の実施形態と同様に構成されている。温度調節ロール22の外周面には、低比透磁率層25が設けられている。温度調節ロール22は金属ロール本体22aを有する。金属ロール本体22aは、金属ロール本体4aと同様に構成されている。低比透磁率層25は、低比透磁率層5と同様に構成されている。
【0071】
温度調節ロール22と隔てられて、第2の温度調節ロール23が設けられている。第2の温度調節ロール23と温度調節ロール22とに、無端金属帯状体である無端金属ベルト24がかけ渡されている。無端金属ベルト24は、第1の実施形態で用いた無端金属帯状体6と同様の材料により形成されている。無端金属ベルト24は、温度調節ロール22及び低比透磁率層25と別体で構成されている。無端金属ベルト24は、樹脂シート3の片面に形成される突条3aと溝3bとの形状に対応した溝と突条とを外周面に有する。無端金属ベルト24の搬送方向に溝と突条との長さ方向が延びるように、無端金属ベルト24は外周面に溝と突条とを有する。なお、図6では、無端金属ベルト24の外周面の溝と突条との形状の図示は省略した。
【0072】
第2の温度調節ロール23を回転駆動することにより、第2の温度調節ロール23は、図示の矢印D方向に回転する。そして、位置Xすなわち樹脂シート3に転写が行われる位置よりも無端金属ベルト24の搬送方向上流側に電磁誘導加熱装置8が配置されている。このように、無端金属帯状体は、温度調節ロール及び低比透磁率層とは別体の無端金属ベルトであってもよい。また、樹脂シートの製造装置21にように、複数の温度調節ロール22,23が用いられてもよい。
【0073】
第2の実施形態においても、温度調節ロール22と隔てられて、第1の実施形態と同様にロール9が配置されている。ロール9に樹脂シート3がかけ渡されており、位置Zが適切な位置となるようにロール9が用いられている。
【0074】
樹脂シートの製造装置21を用いた製造方法においても、位置Xに至るまでに、すなわち電磁誘導加熱装置8により無端金属ベルト24が位置Yにおいて加熱され、無端金属ベルト24が転写に充分な温度以上に加熱される。従って、位置Xにおいて、溝と突条との形状が樹脂シート3に確実に転写される。転写後は、第1の実施形態と同様に、温度調節ロール22の外周面に沿って移動する際に、樹脂シート3が適度な温度に冷却される。従って、位置Zにおいて、微細な突条と溝との形状が付与された樹脂シート3を無理なく剥離することができる。
【0075】
なお、第2の実施形態では、温度調節ロール22の金属ロール本体22aの外周面に低比透磁率層25が一体化されている。温度調節ロール22の外周面に、低比透磁率層25は一体的に設けられている。低比透磁率層25は、無端金属ベルト24の内面に低比透磁率素材をコーティングすることにより形成されていてもよい。また、無端金属ベルト24の内周面及び温度調節ロール22の外周面の双方に低比透磁率層が設けられていてもよい。この場合、異なる低比透磁率素材を用いてもよく、同じ低比透磁率素材を用いてもよい。
【0076】
さらに、無端金属ベルト24は、温度調節ロール22及び低比透磁率層25と別体である。このため、摩擦による無端金属ベルト24の内周面の磨耗、無端金属ベルト24の位置擦れもしくは切断等を抑制するために、このような効果を果たす無機材料層を形成してもよい。無機材料層の形成により、樹脂シートへの異物の混入を防ぐことも可能である。
【0077】
電磁誘導加熱に用いる高周波電流の周波数は特に限定されないが、10kHz〜1MHzの範囲内であることが好ましい。上記周波数が上記上限以下であると、無端金属帯状体の比透磁率が低くなりすぎず、より一層効率的に加熱することできる。上記周波数が上記下限以上であると、無端金属帯状体内における電磁場の乱れが生じ難くなり、外部に磁界が漏洩し難くなり、より一層効率的な加熱を行うことが可能である。
【0078】
図6では、第2の温度調節ロール23と温度調節ロール22との間に無端金属ベルト24がかけ渡されている。このように、無端金属ベルト24の内側に複数の温度調節ロールを配置することにより、無端金属ベルト24の温度をより一層細やかに調節することができる。例えば、ポリプロピレンなどの結晶性の熱可塑性樹脂をシート化する場合、複数の温度調節ロールを用いることにより、結晶化速度を容易に制御可能である。従って、より品質の優れた樹脂シートを提供することができる。
【0079】
第2の温度調節ロール23の制御温度は、温度調節ロール22と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第2の温度調節ロール23の構成は、温度調節ロール22と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0080】
第2の温度調節ロール23にかえて、温度調節ロール22と同様の構造を有するロールを用いてもよい。第2の温度調節ロール23と温度調節ロール22とが同一である場合、成型条件の調整、例えば温度調整を精度よくかつ速やかに行うことができる。また、製造装置の準備、及びメンテナンスも容易である。
【0081】
また、温度調節ロール22,23に加えて、さらに電磁誘導加熱装置8の下流側であって、位置Xよりも上流側に温度調節ロールを設けてもよい。それによって、上流側の温度調節ロールの温度を相対的に高くすることにより、転写性をより一層高めることができる。
【0082】
温度調節ロール22,23を用いた場合、第2の温度調節ロール23の位置を制御することにより、無端金属ベルト24の張力を調整することができる。それによって、無端金属ベルト24の蛇行を防止したり、温度調節ロール22,23間の熱伝達の程度を調整したりすることも可能である。
【0083】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態に係る樹脂シートの製造装置を示す概略構成図である。
【0084】
図7に示す樹脂シートの製造装置31では、第1の実施形態と同様に構成された温度調節ロール4を有するロール11が用いられる。第1の実施形態と異なるところは、溶融押出装置2から押し出された樹脂シート3が温度調節ロール4の外周面に設けられた無端金属帯状体6の外周面に接触される部分において、エッジピニング装置32により樹脂シート3が無端金属帯状体6の外周面に密着されることである。エッジピニング装置32として、公知のエッジピニング装置が用いられ得る。エッジピニング装置32の使用により、残留位相差が小さく、フレアが小さく、さらに厚み精度に優れた樹脂シートを得ることができる。
【0085】
第3の実施形態においても、無端金属帯状体6が電磁誘導加熱装置8により転写に適切な温度に予め加熱されているため、形状付与装置であるエッジピニング装置32により樹脂シート3を無端金属帯状体6に密着させた際に、微細な溝と突条との形状を高精度に転写することができる。エッジピニング装置32を用いた場合、第1の実施形態における圧着ロール7を省略することができる。
【0086】
また、エッジピニング装置にかえて、樹脂シート3の片面に突条と溝との形状を付与するための形状付与装置として、ダイリップから押し出された樹脂シートを直接に無端金属帯状体に押しつけるダイロール法又はエアナイフを使用するエアナイフ法を用いてもよい。ダイロール法又はエアナイフ法を用いた装置として、公知の装置を適宜用いることができる。
【0087】
また、第1の実施形態の変形例として、図8に示すように、無端金属帯状体6が、温度調節ロール4及び低比透磁率層5とは別体の無端金属ベルト24Aで形成されていてもよい。すなわち、本発明において、無端金属帯状体は、温度調節ロール及び低比透磁率層と一体化されている必要は必ずしもない。
【0088】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果を明らかにする。
【0089】
(実施例1)
第1の実施形態の樹脂シートの製造装置1を用いた。無端金属帯状体6の搬送方向(回転方向、周方向)に溝6aと突条6bとの長さ方向が延びるように、溝6aと突条6bとを外周面に有する無端金属帯状体6を用いた。
【0090】
図1(c)に示した長尺状の樹脂シート3を得た。図1(c)では、樹脂シート3を得る際のシート搬送方向と直交する方向かつ樹脂シート3の幅方向における樹脂シート3の断面が示されている。図1(c)に示す樹脂シート3のW1,W2,h及びtは、それぞれ、W1=10μm、W2=60μm、h=110μm、t=200μmとした。
【0091】
樹脂シート3を構成するための熱可塑性樹脂として、旭化成社製、アクリル樹脂、商品名:デルペットを用いた。なお、位置Xにおいて無端金属帯状体の表面温度が170℃であるように条件を設定した。
【0092】
(実施例2)
無端金属帯状体6の溝6aと突条6bとの形状をかえて、樹脂シート3の突条3aと溝3bとの形状を変更したことを除いては実施例1と同様にして樹脂シート3を得た。溝6aのアスペクト比h/W1は2.2であった。
【0093】
図1(c)に示す樹脂シート3のW1,W2,h及びtは、それぞれ、W1=50μm、W2=100μm、h=110μm、t=200μmとした。
【0094】
(実施例3)
無端金属帯状体6の溝6aと突条6bとの形状をかえて、樹脂シート3の突条3aと溝3bとの形状を変更したことを除いては実施例1と同様にして樹脂シート3を得た。溝6aのアスペクト比h/W1は2.5であった。
【0095】
図1(c)に示す樹脂シート3のW1,W2,h及びtは、それぞれ、W1=20μm、W2=70μm、h=125μm、t=300μmとした。
【0096】
(比較例1)
図10に示した従来のシート加工装置101を用い、実施例1と同様の樹脂シートを作製しようと試みた。転写が行われる位置の温度が高くなるに従って、樹脂シートのロールからの剥離不良が生じたので、転写位置のロール温度は、成型可能な温度である130℃とした。
【0097】
(比較例2)
図10に示した従来のシート加工装置101を用い、実施例2と同様の樹脂シートを作製しようと試みた。転写が行われる位置の温度が高くなるに従って、樹脂シートのロールからの剥離不良が生じたので、転写位置のロール温度は、成型可能な温度である130℃とした。
【0098】
(参考例1)
無端金属帯状体の突条及び溝の形成方向を異ならせて、無端金属帯状体のみを変更したこと以外は実施例1と同様にして、図9に示す樹脂シート111を得ようと試みた。無端金属帯状体の搬送方向と直交する方向に溝と突条との長さ方向が延びるように、外周面に溝と突条とを外周面に有する無端金属帯状体を用いた。無端金属帯状体の溝のアスペクト比h/W1は2.2であった。
【0099】
図9では、樹脂シート111を得る際のシート搬送方向かつ樹脂シート111の長さ方向における樹脂シート111の断面が示されている。図9に示す樹脂シート111のW1,W2,h及びtは、それぞれ、W1=10μm、W2=60μm、h=110μm、t=200μmとした。
【0100】
(参考例2)
無端金属帯状体の突条及び溝の形成方向を異ならせて、無端金属帯状体のみを変更したこと以外は実施例2と同様にして、図9に示す樹脂シート111を得ようと試みた。無端金属帯状体の搬送方向と直交する方向に溝と突条との長さ方向が延びるように、外周面に溝と突条とを外周面に有する無端金属帯状体を用いた。無端金属帯状体の溝のアスペクト比h/W1は2.2であった。
【0101】
図9に示す樹脂シート111のW1,W2,h及びtは、それぞれ、W1=50μm、W2=100μm、h=110μm、t=200μmとした。
【0102】
(評価)
実施例1〜3、比較例1〜2及び参考例1〜2で得られた各樹脂シート(熱可塑性樹脂シート)における溝と突条との転写性を評価した。
【0103】
樹脂シートの突条と溝の形成部分をシート面方向と直交する方向に切断し、マイクロスコープにより撮影し、転写率を求めた。
【0104】
また、突条にちぎれがあるか否か、突条に縦筋が見られるか否か、並びに突条高さの伸長があるか否かを評価した。突条にちぎれ、縦筋及び高さの伸長がない場合を「○」、突条にちぎれ、縦筋及び高さの伸長の内のいずれかがわずかにある場合を「△」、突条にちぎれ、縦筋及び高さの伸長の内のいずれかが顕著にある場合を「×」として、突条の形状を判定した。結果を下記の表1に示す。
【0105】
表1における転写率とは、無端金属帯状体に形成された溝及び突条と、熱可塑性樹脂シートに転写された突条及び溝との高さの比を意味する。すなわち、無端金属帯状体の突条の高さと、図1(c)又は図9に示した高さhとの比を100分率で表した値である。
【0106】
【表1】

【0107】
実施例1〜3では、無端金属帯状体の溝と突条との形状が、樹脂シート3の片面に完全に転写されていた。これに対して、比較例1〜2では突条の形状が悪く、比較例2では転写率が15%と低かった。
【符号の説明】
【0108】
1…樹脂シートの製造装置
2…溶融押出装置
3…樹脂シート
3A…ルーバーシート
3a…突条
3b…溝
3c…遮光性材料層
4…温度調節ロール
4a…金属ロール本体
4b…中空部
5…低比透磁率層
6…無端金属帯状体
6a…溝
6b…突条
7…圧着ロール
8…電磁誘導加熱装置
9…ロール
11…ロール
15…プリズムシート
15a…突条
15b…溝
21…樹脂シートの製造装置
22…温度調節ロール
22a…金属ロール本体
23…第2の温度調節ロール
24…無端金属ベルト
24A…無端金属ベルト
25…低比透磁率層
31…樹脂シートの製造装置
32…エッジピニング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の突条と該突条間の溝とを片面に有する樹脂シートを製造するための装置であって、
金属ロール本体を有する温度調節ロールと、
樹脂シートの片面に形成される前記突条と前記溝との形状に対応した溝と突条とを外周面に有する無端金属帯状体と、
前記温度調節ロールの外周面及び前記無端金属帯状体の内周面の少なくとも一方に設けられており、前記無端金属帯状体よりも比透磁率が低い低比透磁率層と、
前記低比透磁率層を介して前記無端金属帯状体が前記温度調節ロールに接触した状態で前記温度調節ロールが回転している間に、前記無端金属帯状体の外周面に樹脂シートを接触させて、樹脂シートの片面に前記突条と前記溝との形状を付与するための形状付与装置と、
前記無端金属帯状体の外周面に樹脂シートが接触される位置よりも上流側において前記無端金属帯状体を加熱するための電磁誘導加熱装置とを備え、
前記無端金属帯状体の搬送方向に前記溝と前記突条との長さ方向が延びるように、前記無端金属帯状体が外周面に前記溝と前記突条とを有する、樹脂シートの製造装置。
【請求項2】
前記温度調節ロールの前記金属ロール本体の外周面に、前記低比透磁率層が一体的に設けられている、請求項1に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項3】
前記温度調節ロールの前記金属ロール本体の外周面に、前記低比透磁率層が一体的に設けられており、かつ前記低比透磁率層の外周面に前記無端金属帯状体が一体的に設けられている、請求項2に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項4】
前記無端金属帯状体が無端金属ベルトであり、
前記温度調節ロールが複数の温度調節ロールを有し、
前記無端金属ベルトが、複数の温度調節ロールにかけ渡されている、請求項1に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項5】
前記形状付与装置が、前記無端金属帯状体の外周面に樹脂シートを圧着するための圧着ロールであり、
前記圧着ロールが、前記温度調節ロールとの間に隙間を有するように配置されており、該隙間において、前記圧着ロールにより、前記無端金属帯状体の外周面に樹脂シートが圧着される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項6】
前記形状付与装置がエッジピニング装置である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項7】
前記形状付与装置がエアナイフである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項8】
溶融された樹脂をシート状に押し出すための溶融押出装置をさらに備え、
該溶融押出装置により押し出された樹脂シートの片面に、前記突条と前記溝との形状を付与する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項9】
前記温度調節ロールが、金属ロール本体の内部に中空部を有し、かつ該中空部に冷媒を供給するための冷媒供給装置を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項10】
前記無端金属帯状体の外周面の前記溝において、前記無端金属帯状体の搬送方向と直交する方向における該溝の幅方向の断面のアスペクト比が0.5以上である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項11】
前記無端金属帯状体の外周面の前記溝において、前記無端金属帯状体の搬送方向と直交する方向における該溝の幅方向の断面のアスペクト比が2以上である、請求項10に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造装置を用いて、複数の突条と該突条間の溝とを片面に有する樹脂シートを製造する方法であって、
前記温度調節ロールを回転させて、前記無端金属帯状体を搬送させる工程と、
前記無端金属帯状体を前記電磁誘導加熱装置により加熱する工程と、
搬送されている前記無端金属帯状体の前記電磁誘導加熱装置により加熱される位置よりも前記無端金属帯状体の搬送方向の下流側において、前記無端金属帯状体の搬送方向の少なくとも一部の領域において、前記低比透磁率層を介して前記無端金属帯状体を前記温度調節ロールに接触させつつ、前記無端金属帯状体の搬送方向の少なくとも一部の前記領域において、無端金属帯状体の外周面に樹脂シートを接触させて、樹脂シートの片面に前記突条と前記溝との形状を付与する工程と、
前記突条と前記溝との形状が付与された樹脂シートを、前記無端金属帯状体の外周面から剥離する工程とを備える、樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−101503(P2012−101503A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253621(P2010−253621)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】