説明

樹脂フィルム

【課題】波長分散性に優れ、薄膜化を可能にする位相差発現性を十分に有し、さらに低吸湿性に優れた樹脂フィルム、特に位相差フィルムに好適な樹脂フィルムを提供することにある。
【解決手段】波長650nmにおける位相差R(650)と波長550nmにおける位相差R(550)と波長450nmにおける位相差R(450)とが、次式(A)、(B)を満たし、かつ吸水率が1%以下である樹脂フィルム。
ΔR = {R(650)(nm)/R(550)(nm)−650/550}+{R(450)(nm)/R(550)(nm)−450/550}<0.0075 ・・・(A)
ΔN = R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 2.75×10−3 ・・・(B)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位相差フィルム用途に好適な樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、液晶セル、偏光板および位相差フィルムなどで構成されている。位相差フィルムは視野角補償用、外光の反射防止用、色補償用、直線偏光の円偏光への変換用などに用いられており、特に反射型および半透過型液晶ディスプレイでは偏光板と位相差フィルムを組み合わせた円偏光板として用いられている。円偏光板は、入射した無偏光の光を、偏光板で直線偏光成分のみを取り出し、さらに位相差フィルムで円偏光に変換する。現在、円偏光板に用いられる位相差フィルムとしては、ポリカーボネートまたは環状ポリオレフィン等の樹脂や液晶性高分子からなるフィルムが用いられている。
しかし、これらの樹脂からなる、例えば550nmの光での位相差が1/4波長である1枚の位相差フィルム(以下、「1/4波長位相差フィルム」と示す)と偏光板と組み合わせた円偏光板は、波長550nmの光では円偏光が得られるものの、短波長域および長波長域の光では楕円偏光が得られ、反射型および半透過型液晶ディスプレイに組み込んだ際に、黒表示が青みを帯びたりコントラスト低下や色相変化が生じるという問題があった。
そこで、2枚以上の位相差フィルムと偏光板とを位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が特定の角度となるように積層することで短波長域から長波長域の広い範囲の領域で、円偏光を得る方法が提案されている。しかし、このような方法は構成部材コストおよび貼合コストが大きく、またディスプレイの薄膜化、軽量化には限界があるという問題があった(特許文献1〜4)。
また、ポリカーボネートに9,9−ビスフェノールフルオレンを共重合することにより、広範囲の可視光波長域での位相差がそれぞれの波長1/4波長となる位相差フィルムが提案されている。しかし、この位相差フィルムの高波長域の光での位相差は、その波長の1/4ではない。そのため、この位相差フィルムを用いた円偏光板は長波長域の光を通すと楕円偏光が得られるために、光漏れが生じコントラストが十分ではなかった(特許文献5〜7)。
また、セルロース誘導体および液晶性化合物を含有する液晶性配合組成物を基板上にラビング処理し、配向させることにより、広範囲の可視光波長域で位相差がそれぞれの波長の1/4となる位相差フィルムが提案されている。この位相差フィルム1枚と偏光板とからなる円偏光板は反射型および微反射型液晶ディスプレイに組み込んだ場合は、コントラストは良好ではあるが、セルロース誘導体が水酸基を含む構造であるために吸水率が高く、使用環境の湿熱条件によるフィルムの寸法変化や位相差変化が生じやすく、結果として光の額縁漏れや色むらが生じるために実用化には適さないという問題があった(特許文献8)。
また、光学材料用樹脂として、9,9−ビスフェノールフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂が提案されている。しかし、これらの樹脂は位相差発現性が悪く位相差フィルムとして適さなかった(特許文献9)。
【特許文献1】特開2004−082714号公報
【特許文献2】特開平4−362130号公報
【特許文献3】特開平5−2108号公報
【特許文献4】特開平7−287122号公報
【特許文献5】特開2002−48919号公報
【特許文献6】特開2002−162519号公報
【特許文献7】特開2002−221622号公報
【特許文献8】特開2004−163452号公報
【特許文献9】特開平11−060706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
すなわち、本発明の目的は、波長分散性に優れ、薄膜化を可能にする位相差発現性を十分に有し、さらに低吸湿性に優れた樹脂フィルム、特に位相差フィルムに好適な樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】

本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0005】
すなわち、波長650nmにおける位相差R(650)と波長550nmにおける位相差R(550)と波長450nmにおける位相差R(450)とが、次式(A)、(B)を満たし、かつ吸水率が1%以下であることを特徴とする樹脂フィルムである。
ΔR = {R(650)(nm)/R(550)(nm)−(650/550)}+{R(450)(nm)/R(550)(nm)−(450/550)}<0.0075 ・・・(A)
ΔN = R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 2.75×10−3 ・・・(B)
【発明の効果】
【0006】
本発明により、波長分散性に優れ、薄膜化を可能にする位相差発現性を十分に有し、低吸湿性に優れたフィルムを提供することができる。また、本発明の位相差フィルムを用いた円偏光板においては、広範囲の可視光波長域で光を円偏光に変換することができるので、反射型または半透過型液晶ディスプレイに組み込んだ際に、光が漏れたり、黒表示が青みを帯びることによるコントラスト低下や色相変化を少なくすることができる。また、十分な位相差発現性を有するため、薄膜化が可能であり、2枚以上積層したフィルムと比較して構成部材のコスト、貼合コストを小さくすることができる。さらに、低吸湿性とすることで、使用環境の湿熱条件によるフィルムの寸法変化や位相差変化を小さくすることができ、光の額縁漏れや色ムラをなくすことができる。このように、1/4波長位相差フィルムとして好適なフィルムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の樹脂フィルムは、波長650nmにおける位相差R(650)と波長550nmにおける位相差R(550)と波長450nmにおける位相差R(450)とが、次式(A)、(B)を満たし、かつ吸水率が1%以下である樹脂フィルムである。
ΔR = {R(650)(nm)/R(550)(nm)−650/550}+{R(450)(nm)/R(550)(nm)−450/550}<0.0075 ・・・(A)
ΔN = R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 2.75×10−3 ・・・(B)
ΔRは、波長650nmの赤色の光、波長550nmの緑色の光、波長450nmの青色の光における本発明の樹脂フィルムの位相差と理想の位相差との差を、最小二乗法で表した値である。ΔRが0以上、0.0075未満の場合、本発明の樹脂フィルムの各波長における位相差が理想的な値に近い為、本発明の樹脂フィルムを用いた円偏光板は液晶ディスプレイに組み込んだ際に光漏れがなく、コントラストが良好であり、色相が良い。ΔRが0.0075以上の場合、各波長における位相差が、理想的な値から大きく異なり、液晶ディスプレイに組み込んだ際に光が漏れたり、黒表示が青みを帯びることによるコントラスト低下や色相変化が生じることを意味する。
本発明のΔRは、次の方法で算出した値をいう。王子計測機器製の自動複屈折計(KOBRA−21ADH/DSP)を用いて、波長480.4nm、548.3nm、628.2nm、752.7nmの光が、本発明のフィルムに入射した場合の位相差を測定し、その測定値をR(λ)=a+b/λ+c/λ+d/λ(コーシーの式)に代入してa〜dを算出する。a〜dを代入した式を用いて、波長450nmの位相差R(450)(nm)、波長550nmの位相差R(550)(nm)、波長650nmの位相差R(650)(nm)の値を求め、上式(A)からΔRを算出する。
好ましくは、ΔRが0.005以下であり、最も好ましくは0以上、0.004以下である。樹脂が下記化学式(1)〜(4)で表される構造単位を含み、そのモル分率をa〜dとしたとき、化学式(1)〜(4)の組み合わせとしては、化学式(1)、(3)、(4)が各々次の化学式(5)、(8)、(9)であり、化学式(2)が次の化学式(6)または(7)であり、そのモル分率a〜dが次式(C)〜(F)をみたすとき、式(A)を達成することができ、次式(E)〜(H)を満たすとき、ΔRが0.005以下となり、次式(E)、(F)、(I)、(J)を満たすとき、ΔRが0以上、0.004以下となる。
5 ≦ a ≦ 45 ・・・(C)
20 ≦ c ≦ 45 ・・・(D)
45 ≦ a+b ≦ 55 ・・・(E)
45 ≦ c+d ≦ 55 ・・・(F)
10 ≦ a ≦ 45 ・・・(G)
35 ≦ c ≦ 45 ・・・(H)
15 ≦ a ≦ 40 ・・・(I)
35 ≦ c ≦ 45 ・・・(J)
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
【化3】

【0011】
【化4】

【0012】
【化5】

【0013】
上式(A)を満たすフィルムは、1枚のフィルムで反射型または半透過型ディスプレイなどに偏光板と組み合わせて円偏光板として用いた際に、全ての可視光波長域において、位相差がそれぞれの波長の1/4に近いため、本フィルムを使用した円偏光板を組み込んだディスプレイは光漏れによるコントラスト低下や色相変化が少なく、さらに構成部材のコストおよび貼合コストが少ないため好ましい。
本発明の樹脂フィルムは次式(B)を満たすことが必要である。
ΔN = R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 2.75×10−3 ・・・(B)
R(550)(nm)は、王子計測機器製の自動複屈折計(KOBRA−21ADH/DSP)を用いて、波長480.4nm、548.3nm、628.2nm、752.7nmの光が、本発明のフィルムに入射した場合の位相差を測定し、その測定値をR(λ)=a+b/λ+c/λ+d/λ(コーシーの式)に代入してa〜dを算出する。a〜dを代入した式を用いて、R(550)(nm)を求めた。フィルムの厚みは位相差の測定をおこなった同じ箇所を測定した。
上式(B)は好ましくは、上記ΔNが3.4×10−3以上であり、最も好ましくは4×10−3以上、100以下である。樹脂が上記化学式(1)〜(4)で表される構造単位を含み、そのモル分率をa〜dとしたとき、上式(C)〜(F)をみたすとき、式(B)を達成することができ、上式(C)、(D)、(G)、(H)を満たすとき、ΔNが3.4×10−3以上となり、上式(C)、(D)、(I)、(J)を満たすとき、100以下、4×10−3以上となる。上記化学式(1)〜(4)の組み合わせとしては、化学式(1)、(3)、(4)が各々次の化学式(5)、(8)、(9)を、化学式(2)が次の化学式(6)または(7)であることが好ましい。このとき、上記樹脂からなる無配向フィルムを(Tg−40)℃から(Tg+40)℃の温度で、延伸倍率1.5倍以上で延伸してフィルムを得ることが肝要である。これら式(B)を満たす樹脂フィルムは、波長550nmの光で137.5nmである位相差を厚み50μm以下で得ることができ、上記ΔNが3.4×10−3以上である場合は厚み40μm以下で得ることができ、上記ΔNが100以下、4×10−3以上である場合は厚み35μm以下で得ることができ、位相差フィルムを用いた液晶ディスプレイの薄型化、軽量化が可能になるので好ましい。
ΔNが100より大きい場合は、位相差の制御が困難であるため位相差フィルムとして好ましくない。ΔNが2.75×10−3未満の場合は、目標とする位相差、例えば波長550nmの光の位相差が137.5nmを得るためには、フィルムが厚くなり、位相差フィルムを用いた液晶ディスプレイの薄型化、軽量化の観点で好ましくない。
本発明の樹脂フィルムは、樹脂が化学式(1)〜(4)で表される構造単位を含むことが好ましい。好ましくはp=0であることが好ましい。Rがアルキル基、シクロアルキル基、アリール基の場合は、原料コストが高くなるために好ましくない。Rは好ましくはアリール基、シクロアルキル基であり、より好ましくはベンゼンやシクロヘキサンであり、もっとも好ましくはベンゼンやシクロヘキサンにカルボニル基がパラ位で結合していることである。耐熱性向上が目的の場合には剛直な分子骨格をもつアリール基を用いるとTgが向上するので好ましく、光弾性係数低減が目的の場合にはπ電子が含まれていないシクロヘキシル基を用いると光弾性係数を低減できるので好ましい。R3は同一でエチル基であることが好ましく、m=1であることが好ましい。アルキル基の炭素数が大きい場合はTgが下がることがあるので好ましくなく、m=0の場合は重合の反応性が悪くなることがあるので好ましくない。好ましくは、n=0であることが好ましく、Rがアルキル基、シクロアルキル基、アリール基の場合は、重合の反応性が悪いことがあるので好ましくない。Rはエチル基であることが好ましい。炭素数が大きいアルキル基の場合は、Tgが下がることがあるので好ましくない。
【0014】
【化6】

【0015】
1は同一、または異なる炭素数1〜30のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示し、pは0〜4の整数を示す。
【0016】
【化7】

【0017】
2は炭素数1〜50のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示す。
【0018】
【化8】

【0019】
3は同一、または異なる炭素数1〜4のアルキル基であり、mは0〜3の整数を示す。
【0020】
4は同一、または異なる炭素数1〜30のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示し、nは0〜4の整数を示す。
【0021】
【化9】

【0022】
5は炭素数1〜50のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示す。
5 ≦ a ≦ 45 ・・・(C)
20 ≦ c ≦ 45 ・・・(D)
45 ≦ a+b ≦ 55 ・・・(E)
45 ≦ c+d ≦ 55 ・・・(F)
10 ≦ a ≦ 45 ・・・(G)
15 ≦ a ≦ 40 ・・・(I)
本発明の樹脂フィルムは、上記化学式(1)〜(4)のモル分率をそれぞれa〜dとしたとき、上式(C)〜(F)を満たしている樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂の構造単位中に、上記の化学式(1)で表される構造単位を含み、そのモル分率aが上式(C)を満たすことにより、本発明の目的を達成することができるため好ましい。さらに好ましくは上式(G)を満たすことであり、より好ましくは上式(I)を満たすことである。上式(C)を満たすことにより、波長550nmのとき位相差が1/4波長となる位相差フィルムを偏光板と組み合わせて円偏光板として用いた場合、550nmより高波長域においても位相差が1/4波長に極めて近く、上式(A)を満足する値となり、高波長域においても波長分散性が優れた位相差フィルムとなり、光漏れによるコントラスト低下や色相変化が少ないディスプレイとすることができ、さらに構成部材のコストおよび貼合コストを下げることができるため好ましい。
上記化学式(1)で表される構造単位の誘導体としては、例えばcis−1,2、3,6−テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸およびこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。エステル形成性誘導体としては、テトラヒドロ無水フタル酸などの酸無水物、ジカルボン酸に対応する酸クロライドのような酸ハライド、cis−1,2、3,6−テトラヒドロフタル酸ジメチルなどの低級アルキルエステルなどなどがあげられ、cis−1,2、3,6−テトラヒドロフタル酸を用いると、シクロヘキセンの面に対して同じ側にカルボニル基が位置することとなり、結果として主鎖に対して直交方向に電荷の偏りが生じると考えられ、このことにより波長550nmの光の位相差が137.5nmとなる位相差フィルムにおいて550nmより高波長域においても位相差が1/4波長に極めて近くなり、偏光板と組み合わせると優れた円偏光板となるため好ましい。
上記化学式(2)で表される構造単位の誘導体としては、例えばジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸、鎖状脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。エステル形成性誘導体としては、テレフタル酸無水物のような酸無水物、ジカルボン酸に対応する酸クロライドのような酸ハライド、テレフタル酸ジメチルのような低級アルキルエステルなどを使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸などが挙げられる。鎖状脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、3−メチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸などが挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、2,3−ノルボルナンジカルボン酸、ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−3,4−ジカルボン酸、などの飽和脂環式ジカルボン酸や、上記化学式(1)とは異なるcis−5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸などの不飽和脂環式ジカルボン酸を用いることができる。耐熱性の観点から好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸であり、光弾性係数低減の観点から好ましくは1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸であり、より好ましくはテレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。本発明の目的を損なわない範囲で、単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができ、例えばテレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を併用することで耐熱性、光学特性、柔軟性、機械特性を調節することができる。
樹脂の構造単位中に、上記の化学式(3)で表される構造単位を含み、そのモル分率cが上式(D)を満たすことにより、本発明の目的を達成することができるため好ましい。上記化学式(3)は主鎖とフルオレン骨格が互いに直交して配位することで、フルオレン骨格が負の複屈折を生じる。このことにより、可視光波長域において低波長側に近づくほど位相差が打ち消され、結果として、上記ΔRが0.0075未満となる。すなわち偏光板と組み合わせた場合に楕円率の優れた円偏光板となる。cが20未満の場合はフルオレン骨格の割合が樹脂全体量に対して少なくなるので、ΔRが0.0075以上となり、すなわち可視光波長域において、波長650nmの光における位相差と波長450nmの光における位相差が、それぞれ162.5nm、112.5nmより大きく異なり、反射型または半透過型ディスプレイなどに偏光板と組み合わせて円偏光板として用いた際に、楕円率が悪く光漏れによるコントラスト低下や色相変化が生じることがあるので好ましくない。
cが45より大きい場合は、共役したπ電子からなる芳香環の割合が樹脂全体量に対して大きくなり、結果として光弾性係数が大きくなることがあるので、フィルムを液晶セルに偏光板とともに貼り合わせたときの貼りムラや、バックライトや外部環境からの熱を受けることによる構成材料間の熱膨張差、偏光フィルムの収縮などにより発生する応力により、位相差ムラが発生し、コントラストの低減や色相変化を起こすことがあり好ましくない。
上記化学式(3)で表される構造単位の誘導体としては、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−エチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジエチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−プロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジ−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ビス(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジフェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−ベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン9,9−ビス[4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられ、これらの中でも、光弾性係数、耐熱性、重合性の観点から9,9−ビス(4−(2―ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが好ましい。
上記化学式(4)で表される構造単位の誘導体としては、例えばジオール成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、3,9−ビス(2−ヒドロキシー1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどの脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、3−メチル−1,2−シクロペンタンジオール、4−シクロペンテン−1,3−ジオールなどの脂環式ジオールが挙げられる。光弾性係数低減の観点から、好ましくはエチレングリコール、3,9−ビス(2−ヒドロキシー1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−プロピレングリコールであり、より好ましくはエチレングリコール、3,9−ビス(2−ヒドロキシー1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンである。本発明の目的を損なわない範囲で、単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができ、例えばエチレングリコール、3,9−ビス(2−ヒドロキシー1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンを併用することで耐熱性、光学特性、柔軟性、機械特性を調節することができる。
【0023】
本発明の樹脂フィルムは吸水率が1%以下であることが必要である。本発明でいう吸水率とは次の手順で測定して求めた値をいう。
(i)110℃のオーブンを用いてサンプルを2時間乾燥後、窒素雰囲気中でフィルムを25℃で15分冷却し、質量(M)を量る。
(ii)飽和塩化ナトリウム水溶液で、25℃、75%Rhの湿度に保たれたデシケータに(i)のサンプルを入れ48時間放置し、質量(M)を量る。
(iii){(M−M)/M}×100の式で求められる値を吸水率(%)とする。
吸水率が1%より大きい場合は使用環境の湿熱条件によりフィルムの寸法変化が生じ、位相差が変化するため、液晶ディスプレイに組み込んだ際に光の額縁漏れが起きることがあり好ましくない。吸水率を1%以下にする方法としては、共重合した際に水酸基、アミノ基などの極性基を有していない構造単位となる上述したような誘導体を用いることが好ましい。
本発明の樹脂フィルムは、光弾性係数Cσが40×10−12 Pa−1以下であることが好ましい。Cσが40×10−12 Pa−1より大きい場合は、フィルムを液晶セルに偏光板とともに貼り合わせたときの貼りムラや、バックライトや外部環境からの熱を受けることによる構成材料間の熱膨張差、偏光フィルムの収縮などにより発生する応力により、位相差ムラが発生し、コントラストの低減や色相変化を起こすことがあり好ましくない。Cσを40×10−12 Pa−1以下にする方法としては、上記化学式(3)で表される構造単位を含み、そのモル分率cが20以上であることにより達成することができ、好ましくは、上記化学式(3)が化学式(8)で表される構造単位である。上記化学式(2)の構造単位の誘導体として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体を用いることが好ましく、上記化学式(4)の構造単位の誘導体として3,9−ビス(2−ヒドロキシー1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンを用いることが好ましい。
本発明の樹脂フィルムはガラス転移温度(Tg)が100℃以上であることが好ましい。位相差フィルムは、Tgを越える温度では位相差が変化することがある。液晶ディスプレイを屋外、あるいは車内で使用する場合、温度は90℃近くまで上昇することがある。この温度での位相差変化を抑制する目的でTgは100℃以上であることが好ましい。より好ましくは120℃以上であり、さらに好ましくは140℃以上である。一方、一般的にフィルムの延伸はTg付近で行うので、Tgが高すぎるとフィルムの延伸に必要な温度が高くなる。そのため、コストが高くなり生産性が低下することがあるので上限は特にないが一般的には300℃以下であればよい。Tgを100℃以上とする方法としては、上記化学式(3)で表される構造単位を含み、そのモル分率cが20以上であることにより達成することができ、好ましくは、上記化学式(3)が化学式(8)で表される構造単位である。上記化学式(2)の誘導体としてテレフタル酸またはこれらのエステル形成性誘導体を用いることが好ましく、上記化学式(4)の誘導体として3,9−ビス(2−ヒドロキシー1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンを用いることが好ましい。
本発明の樹脂の重合方法に限定はなく、公知の重合法、例えば、ジカルボン酸とグリコールを誘導体とするエステル化法、ジカルボン酸ジエステルとグリコールを用いるエステル交換法などを用いることができる。
エステル交換法の場合、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、9,9−ビス(4−(2―ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、エチレングリコール、cis−1,2、3,6−テトラヒドロフタル酸を用いる場合、テレフタル酸ジメチル、9,9−ビス(4−(2―ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、エチレングリコールを所定のポリマー組成となるように反応容器へ仕込む。この際、エチレングリコールを全ジカルボン酸成分に対して1.7〜2.3モル倍添加することにより反応性が良好になる。これらを150℃程度で溶融後、触媒として酢酸マンガンを添加し撹拌する。150℃で、これらのモノマー成分は均一な溶融液体となる。ついで235℃まで徐々に昇温しながらメタノールを留出させる。その後200℃まで反応容器内の温度を下げ、cis−1,2、3,6−テトラヒドロフタル酸を加える。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルのようにジカルボン酸のエステル形成性誘導体ではなく、ジカルボン酸を用いる場合は、このように途中で加えることにより反応性を良好にすることができる。その後、再び235℃まで昇温することでエステル交換反応を実施する。
エステル反応終了後、トリメチルリン酸を加え、撹拌後に水を蒸発させる。さらに、二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液を添加後、反応物を重合装置へ仕込み、装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、装置内圧力を常圧から133Pa以下まで減圧し、エチレングリコールを留出させる。重合反応の進行に従って反応物の粘度が上昇する。所定の撹拌トルクとなった時点で反応を終了し、重合装置から樹脂を水槽へ吐出する。吐出された樹脂は水槽で急冷し、カッターでチップとする。得られた樹脂は95℃の温水が満たされた水槽に投入して5時間水処理を行う。水処理後、脱水機を用いて樹脂から水分を除去する。
このようにして本発明の樹脂を得ることができるが、上記方法に限定されるわけではない。樹脂の各構造単位のモル分率は、例えば熱分解ガスクロマトグラフ−質量分析(GC−MS)法や、樹脂を加水分解し、生成物をシリル化など誘導体化した後に、GC−MS法、及びNMRなどの方法を用いて測定することができる。
本発明の樹脂フィルムの製膜方法については、公知の製膜方法を用いて製膜することができる。すなわち、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルション法、ホットプレス法などの製造方法が使用できるが、厚みムラ減少、異物削減の観点からT−ダイ法、流延法、ホットプレス法が好ましく使用できる。インフレーション法やT−ダイ法による製造法の場合、単軸あるいはニ軸押出しスクリューのついたエクストルーダ溶融押出し装置が使用できる。好ましくはL/D=25以上120以下のニ軸混練押出機が着色を防ぐため好ましい。また、溶融押出装置を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し減圧下での溶融混練あるいは窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。特に本発明のポリエステル樹脂フィルムは非晶性であるため乾燥が難しいので、ベント式押出機は乾燥しなくても溶融押出しできるために好ましく用いられる。押出温度としては融点Tm〜(Tm+50)℃の範囲のいずれかの温度で行うことができる。キャスト方法は溶融した樹脂をギア―ポンプで軽量した後にTダイ口金から吐出させ、冷却されたドラム状に、密着手段である静電印加法、エアーチャンバー法、エアーナイフ法、プレスロール法などでドラムなどの冷却媒体に密着冷却固化させて室温まで急冷し、未延伸フィルムを得ることが好ましい。特に本発明のポリエステル樹脂フィルムでは良好な平面性や均一な厚み、光学特性が要求されるため、静電印加法が特に好ましく用いられる。
上記に記載の製膜方法により製造した未延伸フィルムを、(Tg−40)℃〜(Tg+40)℃の範囲のいずれかの温度で一軸延伸、ニ軸延伸などの方法で延伸することにより、上式(A)、(B)を満たすフィルムを得ることができる。二軸延伸の延伸方式は特に限定はなく、逐次二軸延伸、同時二軸延伸などの方法を用いることができる。延伸温度は好ましくは(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃の範囲であり、より好ましくは(Tg−10)℃〜(Tg+20)℃の範囲である。延伸温度が高すぎると十分な位相差が得られないことがあり、低すぎるとフィルム破れが生じやすくなるため好ましくない。延伸倍率は、目的とした位相差に応じて決めることができる。例えば、波長550nmの光において、厚さ50μm以下および位相差137.5nm以上の樹脂フィルムを得るためには、1.5倍以上の延伸倍率であることが肝要である。延伸速度には特に限定はないが50〜10000%/分が好ましい。延伸速度が遅すぎると、十分な位相差が得られないことや生産性が低くなり、早過ぎるとフィルム破れが生じることがあるので好ましくない。
本発明の樹脂フィルムを延伸した後のフィルム厚みは5〜300μmであることが好ましい。より好ましくは7〜150μmであり、さらに好ましくは10〜80μmである。5μm未満の場合はフィルムのハンドリングが困難になることがあり、300μmを超える場合は光線透過率が低くなることがあり、また本発明の位相差フィルムを用いた液晶ディスプレイの薄型化、軽量化の観点で好ましくない。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
(1)ΔR、ΔN
ΔR、ΔNの値を求めるために、下記測定器を用いて測定した。
装置:自動複屈折計 KOBRA−21ADH/DSP (王子計測機器製)
サンプルホルダー:ADH−05−5
測定径:φ5mm
入射角:0°
測定波長:400〜800nm(具体的には次に示すコーシーの式に480.4nm、548.3nm、628.2nm、752.7nmの測定値を用いて位相差を算出する。)
サンプルの厚み:フィルムの厚みは5点測定し、その平均値を有効数字3桁で算出した。
波長x(nm)の時の位相差をR(x)(nm)と記載した。
また、R(450)(nm)、R(550)(nm)、R(650)(nm)の値は、次式のコーシーの式を用いて算出した。式のa〜dの算出に用いた波長は480.4nm、548.3nm、628.2nm、752.7nmの4つである。
R(λ)=a+b/λ+c/λ+d/λ
各サンプル5回測定を行い、その平均値を有効数字3桁で算出し、ΔR,ΔNは式(A)、(B)を用いて求めた。
ΔR = {R(650)(nm)/R(550)(nm)−650/550}+{R(450)(nm)/R(550)(nm)−450/550} ・・・(A)
ΔN = R(550)(nm)/厚み(nm) ・・・(B)。
(2)吸水率
下記方法で測定した。吸水率が1%以下である場合を低吸湿性とした。
(i)110℃のオーブンを用いてサンプルを2時間乾燥後、窒素雰囲気中でフィルムを25℃で15分冷却し、質量(M)を量った。
(ii)飽和塩化ナトリウム水溶液で、25℃、75%Rhの湿度に保たれたデシケータに(i)のサンプルを入れ48時間放置し、質量(M)を量った。
(iii)以下の式を用いて吸水率を求めた。
吸水率(%)={(M−M)/M}×100。
(3)光弾性係数(Cσ)
下記測定器を用いて測定した。
装置:セルギャップ検査装置 RETS−1200(大塚電子株式会社製)
サンプルサイズ:20mm×50mm
測定スポット径:φ5mm
光源:589nm
サンプルの厚み:フィルムの厚みは5点測定し、その平均値を有効数字3桁で算出し、d(nm)とした。
測定方法:長手方向の両端を挟み、長手方向に9.8×10Paの応力σ(Pa−1)をかけた。この状態で、位相差R(nm)を測定した。張力をかける前の位相差をR、かけた後の位相差をRとし、下の式を用いて光弾性係数Cσ(Pa−1)を計算した。
Cσ=(R―R)/(σ×d)。
5枚のフィルムを測定し、その平均値を有効数字2桁で算出した。
(4)ガラス転移温度(Tg)
下記測定器を用いて測定した。
装置:示差走査熱量計 DSC−7型(Perkin Elmer社製)
測定条件:窒素雰囲気下
測定範囲:25〜300℃
昇温速度:20℃/分
サンプル量:5mg
測定結果:JIS−K7121の9.3項の中間点ガラス転移温度の求め方に従い、測定チャーとの各ベースラインの延長した直線から縦軸補講に等距離にある直線と、ガラス単位の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度とした。測定は5回行い、その平均値を有効数字3桁で算出した。
(5)円偏光板の評価
下記方法でフィルムの円偏光板としての評価を行った。
ホットプレス法もしくはキャスト法にて、無配向フィルムを作製する。フィルムを長方形に切り、長手方向の両端を保持し、(Tg+10)℃のオーブン中で一軸延伸を行った。一軸延伸は、王子計測機器(株)製のオンライン位相差計KOBRA−WIを用いて位相差をモニターしながら行い、波長550nmの光で、位相差が137.5nmになるまで延伸した。
このフィルムを4.5cm×3.5cmのサイズに切り出した。このフィルムの光軸と偏光板の吸収軸のなす角が45°となるように配置した。鏡の上にフィルム、偏光板の順番で重ね、波長分散性の評価を目視で行った。正面から見て重ねた部分が均一な黒であり光漏れがなく斜めから見ても黒である場合を○、正面から見て重ねた部分が均一な黒であり光漏れがないが、斜めから見ると黒紫色である場合を△、正面および斜めから見ても黒が青みを帯びたり、光漏れがある場合を×とした。
【0025】
(6)位相差発現性の評価
下記方法でフィルムの円偏光板としての評価を行った。
ホットプレス法もしくはキャスト法にて、無配向フィルムを作製する。フィルムを長方形に切り、長手方向の両端を保持し、(Tg+10)℃のオーブン中で一軸延伸を行った。一軸延伸は、王子計測機器(株)製のオンライン位相差計KOBRA−WIを用いて位相差をモニターしながら行い、波長550nmの光で、位相差が137.5nmになるまで延伸し、フィルム厚みを測定した。フィルム厚みが50μm以下かつ45μmを越える場合を△、45μm以下かつ40μmを越える場合を○、40μm以下を◎とし、50μmを超える場合を×とした。
【0026】
(7)耐久性の評価
下記方法でフィルムの耐久性を評価した。
波長550nmにおける位相差R(550)=137.5nmとなるようなフィルムを延伸により製造し、長手方向がフィルムの配向軸となるように4.5cm×3.5cmのサイズに切り出した。また偏光板を長手方向と吸収軸のなす角が45°になるように4.5cm×3.5cmのサイズに切り出した。その後、偏光板、フィルム、ガラス板(10cm×10cm)の順に積層した。ここで、フィルムの光軸と偏光板の吸収軸のなす角が45°となるように配置し、各層の間は粘着シート(綜研化学社製 SK-2478)を用いて接着した。これを60℃、90%Rhの条件で100時間保管後、鏡の上に偏光板が一番上になるようにおいた。60℃、90%Rhの条件で100時間保管する前と後の、光漏れの変化を調べることで耐久性の評価を目視で行った。重ねた部分の保管前後の光漏れの変化がない場合を○、保管前後と光漏れの量が異なり、保管後に黒が青みを帯びたり、部分的な光漏れ生じた場合を×とした。
下記、実施例1〜5と比較例1〜6の構造単位とそのモル%は表1に示した。
【0027】
(実施例1)
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル80質量部、エチレングリコール62質量部、9,9−ビス(4−(2ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン176質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガンを0.15質量部添加し撹拌した。30分かけて200℃まで昇温し、さらに60分かけて235℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。その後、60分かけて200℃まで反応容器内の温度を下げ、cis−1,2,3,6―テトラヒドロフタル酸を17質量部の割合で加えた。再び60分かけて235℃まで昇温し、触媒の失活剤としてトリメチルリン酸を0.04質量部加え、水を蒸発させた。
二酸化ゲルマニウムを0.04質量部添加後、反応物を重合装置へ仕込み、装置内温度を90分かけて235℃から290℃まで昇温しながら、装置内圧力を常圧から真空へ減圧しエチレングリコールを留出させる。重合反応の進行にしたがって反応物の粘度が上昇し、所定の撹拌トルクとなった時点で反応を終了し、重合装置からポリエステルを水槽へ吐出した。吐出されたポリエステル樹脂は水槽で急冷後、カッターでチップとした。
得られたポリエステル樹脂のチップを減圧乾燥した後、次のようなホットプレス法を用いて製膜した。金属板の上にポリイミドフィルムを重ね、そのポリイミドフィルム上に内側の枠が8cm四方である金属の枠を重ねた。金属の枠内の中央部にチップ3.5gを乗せた。さらにポリイミドフィルムと金属板を重ね、270℃で2分間予熱の後、10kgf/cmの圧力で10秒間プレスした。
プレス終了後、フィルムを挟んだ金属板を水につけてフィルムを冷却固化し、金属枠からフィルムを切り出した。吸水率の測定サンプルとしてこのフィルムを用いた。
さらに切り出したフィルムを長方形に切り、長手方向の両端を保持して、130℃のオーブン中で、1.6倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、厚み50μmで、R(550)= 137.5 nmのフィルムを得た。
ポリエステル樹脂のTg、フィルムの吸水率、光弾性係数、一軸延伸後のフィルムの位相差、波長分散性の測定、円偏光板、位相差発現性、耐久性の評価を行い、表2に示した。
【0028】
(実施例2)
テレフタル酸ジメチル19質量部、エチレングリコール62質量部、9,9−ビス(4−(2ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン176質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガンを0.15質量部添加し撹拌した。30分かけて200℃まで昇温し、さらに60分かけて235℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。その後、60分かけて200℃まで反応容器内の温度を下げ、cis−1,2,3,6―テトラヒドロフタル酸を68質量部の割合で加えた。再び60分かけて235℃まで昇温し、触媒の失活剤としてトリメチルリン酸を0.04質量部加え、水を蒸発させた。
二酸化ゲルマニウムを0.04質量部添加後、反応物を重合装置へ仕込み、装置内温度を90分かけて235℃から290℃まで昇温しながら、装置内圧力を常圧から真空へ減圧しエチレングリコールを留出させる。重合反応の進行にしたがって反応物の粘度が上昇し、所定の撹拌トルクとなった時点で反応を終了し、重合装置からポリエステルを水槽へ吐出した。吐出されたポリエステル樹脂は水槽で急冷後、カッターでチップとした。 得られたポリエステル樹脂のチップを実施例1と同様にして製膜した。吸水率の測定サンプルとしてこのフィルムを用いた。
さらに金枠から切り出したフィルムを長方形に切り、長手方向の両端を保持して、130℃のオーブン中で、2.6倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、厚み31μmでR(550)= 137.5 nmのフィルムを得た。
【0029】
ポリエステル樹脂のTg、吸水率、光弾性係数、一軸延伸後のフィルムの位相差、波長分散性の測定、円偏光板、位相差発現性、耐久性の評価を行い、表2に示した。
【0030】
(実施例3)
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル70質量部、エチレングリコール62質量部、9,9−ビス(4−(2ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン153質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガンを0.15質量部添加し撹拌した。30分かけて200℃まで昇温し、さらに60分かけて235℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。その後、60分かけて200℃まで反応容器内の温度を下げ、cis−1,2,3,6―テトラヒドロフタル酸を26質量部の割合で加えた。再び60分かけて235℃まで昇温し、触媒の失活剤としてトリメチルリン酸を0.04質量部加え、水を蒸発させた。
二酸化ゲルマニウムを0.04質量部添加後、反応物を重合装置へ仕込み、装置内温度を90分かけて235℃から290℃まで昇温しながら、装置内圧力を常圧から真空へ減圧しエチレングリコールを留出させる。重合反応の進行にしたがって反応物の粘度が上昇し、所定の撹拌トルクとなった時点で反応を終了し、重合装置からポリエステルを水槽へ吐出した。吐出されたポリエステル樹脂は水槽で急冷後、カッターでチップとした。
得られたポリエステル樹脂のチップを減圧乾燥した後、次のようなホットプレス法を用いて製膜した。金属板の上にポリイミドフィルムを重ね、そのポリイミドフィルム上に内側の枠が8cm四方である金属の枠を重ねた。金属の枠内の中央部にチップ3.5gを乗せた。さらにポリイミドフィルムと金属板を重ね、270℃で2分間予熱の後、10kgf/cmの圧力で10秒間プレスした。
プレス終了後、フィルムを挟んだ金属板を水につけてフィルムを冷却固化し、金属枠からフィルムを切り出した。吸水率の測定サンプルとしてこのフィルムを用いた。
さらに切り出したフィルムを長方形に切り、長手方向の両端を保持して、115℃のオーブン中で、2.8倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、厚み44μmで、R(550)= 137.5 nmのフィルムを得た。
ポリエステル樹脂のTg、フィルムの吸水率、光弾性係数、一軸延伸後のフィルムの位相差、波長分散性の測定、円偏光板、位相差発現性、耐久性の評価を行い、表2に示した。
【0031】
(実施例4)
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル90質量部、エチレングリコール62質量部、9,9−ビス(4−(2ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン132質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガンを0.15質量部添加し撹拌した。30分かけて200℃まで昇温し、さらに60分かけて235℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。その後、60分かけて200℃まで反応容器内の温度を下げ、cis−1,2,3,6―テトラヒドロフタル酸を9質量部の割合で加えた。再び60分かけて235℃まで昇温し、触媒の失活剤としてトリメチルリン酸を0.04質量部加え、水を蒸発させた。
二酸化ゲルマニウムを0.04質量部添加後、反応物を重合装置へ仕込み、装置内温度を90分かけて235℃から290℃まで昇温しながら、装置内圧力を常圧から真空へ減圧しエチレングリコールを留出させる。重合反応の進行にしたがって反応物の粘度が上昇し、所定の撹拌トルクとなった時点で反応を終了し、重合装置からポリエステルを水槽へ吐出した。吐出されたポリエステル樹脂は水槽で急冷後、カッターでチップとした。
得られたポリエステル樹脂のチップを減圧乾燥した後、次のようなホットプレス法を用いて製膜した。金属板の上にポリイミドフィルムを重ね、そのポリイミドフィルム上に内側の枠が8cm四方である金属の枠を重ねた。金属の枠内の中央部にチップ3.5gを乗せた。さらにポリイミドフィルムと金属板を重ね、270℃で2分間予熱の後、10kgf/cmの圧力で10秒間プレスした。
プレス終了後、フィルムを挟んだ金属板を水につけてフィルムを冷却固化し、金属枠からフィルムを切り出した。吸水率の測定サンプルとしてこのフィルムを用いた。
さらに切り出したフィルムを長方形に切り、長手方向の両端を保持して、110℃のオーブン中で、3倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、厚み50μmで、R(550)= 137.5 nmのフィルムを得た。
ポリエステル樹脂のTg、フィルムの吸水率、光弾性係数、一軸延伸後のフィルムの位相差、波長分散性の測定、円偏光板、位相差発現性、耐久性の評価を行い、表2に示した。
(実施例5)
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル60質量部、エチレングリコール62質量部、9,9−ビス(4−(2ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン132質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガンを0.15質量部添加し撹拌した。30分かけて200℃まで昇温し、さらに60分かけて235℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。その後、60分かけて200℃まで反応容器内の温度を下げ、cis−1,2,3,6―テトラヒドロフタル酸を34質量部の割合で加えた。再び60分かけて235℃まで昇温し、触媒の失活剤としてトリメチルリン酸を0.04質量部加え、水を蒸発させた。
二酸化ゲルマニウムを0.04質量部添加後、反応物を重合装置へ仕込み、装置内温度を90分かけて235℃から290℃まで昇温しながら、装置内圧力を常圧から真空へ減圧しエチレングリコールを留出させる。重合反応の進行にしたがって反応物の粘度が上昇し、所定の撹拌トルクとなった時点で反応を終了し、重合装置からポリエステルを水槽へ吐出した。吐出されたポリエステル樹脂は水槽で急冷後、カッターでチップとした。
得られたポリエステル樹脂のチップを減圧乾燥した後、次のようなホットプレス法を用いて製膜した。金属板の上にポリイミドフィルムを重ね、そのポリイミドフィルム上に内側の枠が8cm四方である金属の枠を重ねた。金属の枠内の中央部にチップ3.5gを乗せた。さらにポリイミドフィルムと金属板を重ね、270℃で2分間予熱の後、10kgf/cmの圧力で10秒間プレスした。
プレス終了後、フィルムを挟んだ金属板を水につけてフィルムを冷却固化し、金属枠からフィルムを切り出した。吸水率の測定サンプルとしてこのフィルムを用いた。
さらに切り出したフィルムを長方形に切り、長手方向の両端を保持して、105℃のオーブン中で、3.1倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、厚み46μmで、R(550)= 137.5 nmのフィルムを得た。
ポリエステル樹脂のTg、フィルムの吸水率、光弾性係数、一軸延伸後のフィルムの位相差、波長分散性の測定、円偏光板、位相差発現性、耐久性の評価を行い、表2に示した。
【0032】
(比較例1)
テレフタル酸ジメチル97質量部、エチレングリコール31質量部、9,9−ビス(4−(2ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン176質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガンを0.15質量部添加し撹拌した。30分かけて200℃まで昇温して溶解、さらに60分かけて235℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。触媒の失活剤としてトリメチルリン酸を0.04質量部加え、水を蒸発させた。
その後は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂のチップとフィルムを得た。吸水率の測定サンプルとしてこのフィルムを用いた。
さらに金枠から切り出したフィルムを長方形に切り、長手方向の両端を保持して、135℃のオーブン中で、3.0倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、厚み196μmでR(550)= 137.5 nmのフィルムを得た。
【0033】
ポリエステル樹脂のTg、吸水率、光弾性係数、一軸延伸後のフィルムの位相差、波長分散性の測定、円偏光板、位相差発現性、耐久性の評価を行い、表2に示した。
上式(1)、(2)を満たさず、全ての可視光域での波長分散性が悪く、かつ位相差発現性に劣る。円偏光板の評価において光が漏れるので、位相差フィルムとしての利用には不適であった。
【0034】
(比較例2)
テレフタル酸ジメチル97質量部、エチレングリコール31質量部、9,9−ビス(4−(2ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン219質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガンを0.15質量部添加し撹拌した。30分かけて200℃まで昇温して溶解、さらに60分かけて235℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。触媒の失活剤としてトリメチルリン酸を0.04質量部加え、水を蒸発させた。
その後は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂のチップとフィルムを得た。吸水率の測定サンプルとしてこのフィルムを用いた。
さらに金枠から切り出したフィルムを長方形に切り、長手方向の両端を保持して、165℃のオーブン中で、2.5倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、厚み14μmでR(550)= 137.5 nmのフィルムを得た。
【0035】
ポリエステル樹脂のTg、吸水率、光弾性係数、一軸延伸後のフィルムの位相差、波長分散性の測定、円偏光板、位相差発現性、耐久性の評価を行い、表2に示した。
【0036】
上式(2)は満たすが、次式(1)を満たさないため、高波長域での波長分散性が悪く、また光弾性係数も大きいことから、円偏光板の評価および耐久性の評価において光漏れが生じ、位相差フィルムとしての利用には不適であった。
【0037】
(比較例3)
撹拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に水酸化ナトリウム水溶液及びイオン交換水を仕込み、これにビスフェノールAと9,9−ビス(4−(3―メチルフェニル))フルオレンを50:50(モル%)の比率で溶解させ、少量のハイドロサルファイトを加えた。次に塩化メチレンを加え、20℃でホスゲンを約60分かけて吹き込んだ。さらに、p−tert−ブチルフェノールを加えて乳化させた後、トリエチルアミンを加えて30℃で約3時間撹拌して反応を終了させた。反応終了後有機相を分取し、塩化メチレンを蒸発させてポリカーボネート共重合体を得た。
この共重合体とメルク社製のシアノビフェニル系混合液晶「BL007」をそれぞれ、96:4(質量部)の比率でメチレンクロライドに溶解させ、溶液を作製した。この溶液からキャストフィルムを作製した。吸水率の測定サンプルとしてこのフィルムを用いた。さらにフィルムを長方形に切り、長手方向の両端を保持して、220℃のオーブン中で、1.9倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、厚み98μmでR(550)= 137.5 nmのフィルムを得た。
【0038】
ポリエステル樹脂のTg、吸水率、光弾性係数、一軸延伸後のフィルムの位相差、波長分散性の測定、円偏光板、位相差発現性、耐久性の評価を行い、表2に示した。上式(1)、(2)を満たさず、全ての可視光域での波長分散性が悪く、かつ位相差発現性に劣った。円偏光板の評価において光漏れが生じ、位相差フィルムとしての利用には不適であった。
【0039】
(比較例4)
和光純薬工業(株)製の極限粘度[η]=1.335、アセチル化度2.917のセルローストリアセテート100質量部を塩化メチレン50質量部に溶解させた。これに96%酢酸水溶液1000質量部を加え、減圧により塩化メチレンを除去しながら、70℃で100分間、酢酸と水による酢酸セルロースの加水分解を行った。反応物を過剰の水により、沈殿、洗浄し、乾燥することにより、アセチル化度2.661のセルロースアセテートを得た。このポリマー100質量部及び可塑剤であるフタル酸ジブチル3質量部を塩化メチレン/メタノール(質量比9/1)混合溶液700質量部に溶解させた。この溶液からキャストフィルムを製膜し、未延伸フィルムとした。さらに未延伸フィルムを長方形に切り、長手方向の両端を保持して、145℃のオーブ中で、1.5倍の延伸倍率で一軸延伸を行い厚み153μmでR(550)= 137.5 nmのフィルムを得た。
吸水率の測定サンプルとしてこのフィルムを用いた。ポリエステル樹脂のTg、吸水率、光弾性係数、一軸延伸後のフィルムの位相差、波長分散性の測定、円偏光板、位相差発現性、耐久性の評価を行い、表2に示した。上式(1)を満たさず、高波長域での波長分散性が悪く、また吸水率が高かった。また、円偏光板の評価および耐久性の評価において光漏れが生じ、位相差フィルムとしての利用には不適であった。
【0040】
(比較例5)
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル80質量部、エチレングリコール62質量部、9,9−ビス(4−(2ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン66質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガンを0.15質量部添加し撹拌した。30分かけて200℃まで昇温し、さらに60分かけて235℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。その後、60分かけて200℃まで反応容器内の温度を下げ、cis−1,2,3,6―テトラヒドロフタル酸を17質量部の割合で加えた。再び60分かけて235℃まで昇温し、触媒の失活剤としてトリメチルリン酸を0.04質量部加え、水を蒸発させた。
二酸化ゲルマニウムを0.04質量部添加後、反応物を重合装置へ仕込み、装置内温度を90分かけて235℃から290℃まで昇温しながら、装置内圧力を常圧から真空へ減圧しエチレングリコールを留出させる。重合反応の進行にしたがって反応物の粘度が上昇し、所定の撹拌トルクとなった時点で反応を終了し、重合装置からポリエステルを水槽へ吐出した。吐出されたポリエステル樹脂は水槽で急冷後、カッターでチップとした。
得られたポリエステル樹脂のチップを減圧乾燥した後、次のようなホットプレス法を用いて製膜した。金属板の上にポリイミドフィルムを重ね、そのポリイミドフィルム上に内側の枠が8cm四方である金属の枠を重ねた。金属の枠内の中央部にチップ3.5gを乗せた。さらにポリイミドフィルムと金属板を重ね、270℃で2分間予熱の後、10kgf/cmの圧力で10秒間プレスした。
プレス終了後、フィルムを挟んだ金属板を水につけてフィルムを冷却固化し、金属枠からフィルムを切り出した。吸水率の測定サンプルとしてこのフィルムを用いた。
さらに切り出したフィルムを長方形に切り、長手方向の両端を保持し80℃のオーブン中で、2.3倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、厚み22μmで、R(550)= 137.5 nmのフィルムを得た。
ポリエステル樹脂のTg、フィルムの吸水率、光弾性係数、一軸延伸後のフィルムの位相差、波長分散性の測定、円偏光板、位相差発現性、耐久性の評価を行い、表2に示した。
【0041】
(比較例6)
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル20質量部、エチレングリコール62質量部、9,9−ビス(4−(2ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン66質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガンを0.15質量部添加し撹拌した。30分かけて200℃まで昇温し、さらに60分かけて235℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。その後、60分かけて200℃まで反応容器内の温度を下げ、cis−1,2,3,6―テトラヒドロフタル酸を68質量部の割合で加えた。再び60分かけて235℃まで昇温し、触媒の失活剤としてトリメチルリン酸を0.04質量部加え、水を蒸発させた。
二酸化ゲルマニウムを0.04質量部添加後、反応物を重合装置へ仕込み、装置内温度を90分かけて235℃から290℃まで昇温しながら、装置内圧力を常圧から真空へ減圧しエチレングリコールを留出させる。重合反応の進行にしたがって反応物の粘度が上昇し、所定の撹拌トルクとなった時点で反応を終了し、重合装置からポリエステルを水槽へ吐出した。吐出されたポリエステル樹脂は水槽で急冷後、カッターでチップとした。
得られたポリエステル樹脂のチップを減圧乾燥した後、次のようなホットプレス法を用いて製膜した。金属板の上にポリイミドフィルムを重ね、そのポリイミドフィルム上に内側の枠が8cm四方である金属の枠を重ねた。金属の枠内の中央部にチップ3.5gを乗せた。さらにポリイミドフィルムと金属板を重ね、270℃で2分間予熱の後、10kgf/cmの圧力で10秒間プレスした。
プレス終了後、フィルムを挟んだ金属板を水につけてフィルムを冷却固化し、金属枠からフィルムを切り出した。吸水率の測定サンプルとしてこのフィルムを用いた。
さらに切り出したフィルムを長方形に切り、長手方向の両端を保持して、70℃のオーブン中で、2.2倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、厚み23μmで、R(550)= 137.5 nmのフィルムを得た。
ポリエステル樹脂のTg、フィルムの吸水率、光弾性係数、一軸延伸後のフィルムの位相差、波長分散性の測定、円偏光板、位相差発現性、耐久性の評価を行い、表2に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長650nmにおける位相差R(650)と波長550nmにおける位相差R(550)と波長450nmにおける位相差R(450)とが、次式(A)、(B)を満たし、かつ吸水率が1%以下であることを特徴とする樹脂フィルム。
ΔR = {R(650)(nm)/R(550)(nm)−650/550}+{R(450)(nm)/R(550)(nm)−450/550}<0.0075 ・・・(A)
ΔN = R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 2.75×10−3 ・・・(B)
【請求項2】
フィルムを構成する樹脂が化学式(1)〜(4)で表される構造単位を含み、化学式(1)〜(4)のモル分率をそれぞれa〜dとしたとき、次式(C)〜(F)を満たしていることを特徴とする請求項1記載の樹脂フィルム。
【化1】

1は同一、または異なる炭素数1〜30のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示し、pは0〜4の整数を示す。
【化2】

2は炭素数1〜50のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示す。
【化3】

3は同一、または異なる炭素数1〜4のアルキル基であり、mは0〜3の整数を示す。
4は同一、または異なる炭素数1〜30のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示し、nは0〜4の整数を示す。
【化4】

5は炭素数1〜50のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示す。
5 ≦ a ≦ 45 ・・・(C)
20 ≦ c ≦ 45 ・・・(D)
45 ≦ a+b ≦ 55 ・・・(E)
45 ≦ c+d ≦ 55 ・・・(F)
【請求項3】
光弾性係数Cσが40×10−12 Pa−1以下である請求項1または2記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
ガラス転移温度(Tg)が100℃以上である請求項1〜3のいずれか記載の樹脂フィルム。

【公開番号】特開2007−112980(P2007−112980A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243955(P2006−243955)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】