説明

樹脂プーリ付き軸受、オートテンショナ、及び樹脂プーリ

【課題】プーリのV溝に、VリブドベルトのVリブが強く食い込むのを防止し、この食い込みに伴う摩擦抵抗に起因してトルク損失が発生するのを抑制する。
【解決手段】プーリ2のリブ4のテーパ面4aの所定位置に、プーリ軸周りに回転対称な第一円筒部6を形成し、この第一円筒部6によって、隣り合うリブ4、4の間に形成される溝の溝底を埋めた状態とする。このプーリ2にVリブドベルト3を設けると、そのベルト張力によって、Vリブドベルト3のV溝5にリブ4が食い込むが、第一円筒部6とVリブドベルト3とが当接することによって、その食い込み量が制限される。このため、この食い込みに伴って、リブ4のテーパ面4aと、V溝5のテーパ面5aとの間に生じる面圧が軽減され、面圧に起因するトルク損失の抑制を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リブ付きのプーリを用いた樹脂プーリ付き軸受であって、特に、アイドラプーリやテンションプーリ等のように、トルク伝達の機能を必要としないプーリを用いたものに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂プーリ付き軸受は、転がり軸受の外輪に射出成形法等によって樹脂からなるプーリ2をこの外輪に一体成形したものである。この樹脂プーリ付き軸受は、例えば、自動車のエンジン周りの動力伝達系に用いられている。この動力伝達系では、図10に示すようにベルト3によって、クランクシャフト12、オルタネータ13、エアコン14、パワーステアリングポンプ15等の補機に動力が伝達されるとともに、アイドラプーリ16によってベルト3のレイアウトが決められ、さらに、オートテンショナ17によってこのベルト3のベルト張力が調節されている。
【0003】
上述したクランクシャフト12等は、トルク伝達を目的としており、このクランクシャフト12等のプーリとベルト3との間にベルト駆動方向への滑りが生じると伝達能力不足が生じる。そこで、前記動力伝達系には、プーリ面にリブを形成したプーリ、及びV溝を形成したVリブドベルトが一般的に用いられる。そして、ベルト張力によって、前記リブをV溝に食い込ませることによって、このV溝とリブのそれぞれのテーパ面同士を強く当接させ、その面圧(当接圧力)で摩擦抵抗を生じさせ、前記滑りを防止している。
【0004】
このVリブドベルトのプーリへの食い込みの様子を図11及び12に示す。このVリブドベルト3は、プーリ2の軸周りの回転に伴って互いに接近し(図12(a)を参照)、リブ4のテーパ面4aと、V溝5のテーパ面5aが互いに当接する(図12(b)を参照)。さらに、ベルト張力によって両テーパ面4a、5aに沿うように、プーリ2の径方向に相対的にスライドし、リブ4がV溝5へ食い込んでテーパ面4a、5a間の面圧が上昇する(図12(c)中の矢印を参照)。この食い込み深さは、両テーパ面4a、5aの形状、前記ベルト張力、Vリブドベルト3の材質等、種々の要因によって決まる。このプーリ2のリブ4と、それに対応するVリブドベルト3のV溝5の形状は規格(JASO E−111−93)で決められ、この規格に沿って両者の適切な組み合わせが選択される。
【0005】
この動力伝達系に用いられるプーリ2のリブ4間は溝状になっており、この溝の底部で応力集中が生じやすい。また、この溝の深さ分だけ、プーリ本体の実質的な肉厚が小さくなる。そこで、例えば下記特許文献1では、前記溝の深さに対応してリブ底の厚さを増すことによって、前記応力集中及びプーリ本体の実質的な薄肉化に伴う強度低下を防止し、安定したプーリの駆動がなされるようにしている(同文献の図1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4300825号公報
【0007】
この一方で、アイドラプーリ16やオートテンショナ17に用いられるプーリ2は、クランクシャフト12等と異なり、トルク伝達を目的としないため、前記摩擦抵抗を生じさせる必要はないが、便宜上、このクランクシャフト12等に用いられるプーリ2と同じものが用いられることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に示す構成では、リブ底の厚さを増すことによりプーリの強度を確保しているため、このプーリの重量が増加する。また、リブをV溝に食い込ませるタイプの上記プーリにおいては、この食い込みの際に、テーパ面同士の面圧に起因する摩擦によって発熱が生じる。この重量増加及び発熱は、動力伝達系におけるトルク損失の原因となる。このトルク損失は、クランクシャフトのようにトルク伝達を目的とする構成要素においては、このクランクシャフト等によるトルク伝達量と比較して相対的にわずかであり、ほとんど無視し得る。その一方で、アイドラプーリのようにトルク伝達を目的としない構成要素においては、自ら能動的な作用(例えば、オルタネータによる発電作用)を有しないにも関わらず、損失のみを生じるという点で問題である。この問題は、アイドラプーリ等がトルク伝達作用を必要としないにも関わらず、前記食い込みによって高い面圧を生じさせる必要がある、クランクシャフト等に用いるプーリと同様の構成を採用していることに起因している。
【0009】
そこで、この発明は、プーリのリブが、VリブドベルトのV溝に強く食い込んでテーパ面同士の面圧が増大するのを防止し、この面圧に起因して摩擦抵抗が生じトルク損失が発生するのを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明は、転がり軸受と、この転がり軸受の外輪に一体成形された樹脂製のプーリとからなり、このプーリは、Vリブドベルトに作用するベルト張力によって、前記プーリのプーリ面に形成したリブがVリブドベルトのV溝に、前記リブのテーパ面と前記V溝のテーパ面とが面圧による摩擦を生じつつ食い込んで、トルク伝達がなされる樹脂プーリ付き軸受において、前記リブの前記テーパ面の所定位置に、前記リブが、前記Vリブドベルトの前記V溝に、前記所定位置を越えて食い込むのを防止する食い込み制限手段を設ける構成を採用した。
【0011】
このリブが、V溝に深く食い込むほど、両者の間の摩擦力が増大し、その摩擦による発熱がトルク損失につながる。そこで、このリブの食い込み量を制限する食い込み制限手段を設けることにより、前記摩擦力が過大とならないようにすることができ、前記トルク損失を最小限に抑制できる。前記「所定位置」は、前記リブの根元過ぎると、このリブが前記ベルト張力によってV溝に食い込んだ際に、このVリブドベルトと食い込み制限手段が当接せず、所定の食い込み制限作用を発揮できない。このため、少なくとも、この食い込みの際にVリブドベルトと当接する位置にする必要がある。
【0012】
また、前記食い込み制限手段を設けることにより、リブ高さが実質的に低くなり、隣り合うリブ間の溝の深さが小さくなる。このため、この溝の深さに対応して、強度確保を目的としてリブ底の厚みを増す必要がなく、このプーリの軽量化を図ることができる。
【0013】
このリブ高さは、プーリに使用するVリブドベルトのV溝の深さを考慮して適宜決定すべきものである。最近用いられている一般的なVリブドベルトのV溝深さは2mm程度であって、前記リブの根元側には丸め加工が施されていることを考慮すると、前記リブ高さは3mm以下とするのが好ましい。
【0014】
また、前記構成においては、前記食い込み制限手段を、前記所定位置を含み、プーリ軸周りに回転対称な第一円筒部とするのが好ましい。
【0015】
この第一円筒部に前記Vリブドベルトが当接すると、それ以上このVリブドベルトが食い込むのを制限できるため、面圧に起因するトルク損失を最小限に抑制できる。
【0016】
また、前記構成においては、前記第一円筒部を形成する代わりに、前記食い込み制限手段を、前記所定位置に始点を有し、前記リブの根元に向うほどこのリブから離れる円弧を、プーリ軸周りに回転させて形成された第一丸め部とするのも好ましい。
【0017】
このように第一丸め部を形成することによって、前記第一円筒部と同様に前記リブの前記V溝への食い込みを制限できる。また、このリブのテーパ面とこの第一丸め部とを、円弧によって滑らかに連続させることによって、このリブの特定箇所に応力集中が生じるのを防止できるという効果もある。
【0018】
また、前記各構成においては、前記リブの前記所定位置よりも先端側の先端位置に、前記Vリブドベルトと、前記プーリとが当接しないようにする当接回避手段を設けるのがより好ましい。
【0019】
このように当接回避手段を設けることにより、このリブ先端部とVリブドベルトの当接によって面圧が生じる領域を狭めることができ、この面圧に起因するトルク損失を最小限に抑制することができる。
【0020】
また、前記当接制限手段を設ける構成においては、この当接制限手段を、前記先端位置に始点を有し、前記リブの先端部に向かって、前記V溝の溝底に形成された円弧よりも大きい曲率半径を有する円弧を、プーリ軸周りに回転させて形成された第二丸め部とするのが好ましい。
【0021】
このように第二丸め部の曲率半径を大きくすると、この第二丸め部と前記Vリブドベルトの当接が回避され、その分だけ面圧が生じる領域を狭めることができる。
【0022】
前記プーリのリブ先端部に丸め加工を施す構成においては、この第二丸め部の曲率半径を0.5mm以上とするのがより好ましい。
【0023】
一般的なVリブドベルトのV溝の溝底の丸め加工部の曲率半径は0.5mmよりも小さく、この第二丸め部の曲率半径を上記範囲(0.5mm以上)とすることにより、このリブ先端におけるプーリと、Vリブドベルトとの接触を確実に回避することができるためである。
【0024】
また、前記当接制限手段を前記第二丸め部とする代わりに、この当接制限手段が、前記先端位置を含み、プーリ軸周りに回転対称な第二円筒部とするのも好ましい。
【0025】
このように第二円筒部を形成することで、前記第二丸め部と同様に、面圧が生じる領域を狭めることができ、トルク損失の抑制を図ることができる。
【0026】
また、前記各構成においては、前記プーリに形成した前記リブの本数が、前記Vリブドベルトに形成した前記V溝の本数よりも少なくするのが好ましい。
このようにすると、前記V溝の一部へのリブの食い込みが生じないため、その分だけ面圧を軽減でき、トルク損失の抑制を図ることができる。
【0027】
特に前記構成では、前記プーリの前記リブの数を1又は2本とするのがより好ましい。
少なくとも1又は2本のリブがあれば、プーリのプーリ面からVリブドベルトが外れるトラブルを防止しつつ、トルク損失の抑制効果をさらに高めることができる。
【0028】
さらに、前記各構成においては、前記プーリの軸方向両端に、前記Vリブドベルトの幅方向両端部とこのプーリとの接触を防ぐ隙間部を形成するのがより好ましい。
この隙間部は、プーリの両鍔部をこのプーリの幅方向に離間させて、前記接触を防ぐようにしてもよいし、この両鍔部を省略して、この両鍔部があるべき箇所を隙間部としてもよい。
【0029】
また、前記各構成において示した樹脂プーリ付き軸受は、オートテンショナに用いるのが特に好ましい。
このオートテンショナは、上述したようにベルト張力の調節のためのものであって、回転トルクの伝達を目的としない。このため、上記樹脂プーリ付き軸受を用いることによって、発熱の抑制等のメリットを享受できる。
【0030】
また、この樹脂プーリ付き軸受に用いられるプーリは、それ自体でもトルク損失の低減を図ることができ、必ずしも軸受の外輪に設けた状態で使用されるとは限らない。
【発明の効果】
【0031】
この発明によると、プーリとVリブドベルト間の摩擦を低減し、発熱に伴うプーリのクリープ等のトラブルを抑制し得るとともに、リブ底の薄肉化による軽量化によりトルク損失を低減し得る。このため、プーリ付き軸受の信頼性向上と、動力伝達系の高効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明に係る樹脂プーリ付き軸受の第一の実施形態を示す側面断面図
【図2】第一の実施形態において、プーリへのVリブドベルトの食い込みを示す側面断面図であって、(a)は両者の当接前、(b)は両者がちょうど当接した状態、(c)はVリブドベルトがプーリに食い込んで円筒部に当接した状態
【図3】この発明に係る樹脂プーリ付き軸受の第二の実施形態を示す側面断面図であって、(a)はプーリ単体、(b)はプーリにVリブドベルトが食い込んだ状態
【図4】この発明に係る樹脂プーリ付き軸受の第三の実施形態を示す側面断面図であって、(a)はプーリ単体、(b)はプーリにVリブドベルトが食い込んだ状態
【図5】この発明に係る樹脂プーリ付き軸受の第四の実施形態を示す側面断面図であって、(a)はプーリ単体、(b)はプーリにVリブドベルトが食い込んだ状態
【図6】この発明に係る樹脂プーリ付き軸受の第五の実施形態を示す側面断面図であって、(a)はプーリ単体、(b)はプーリにVリブドベルトが食い込んだ状態
【図7】この発明に係る樹脂プーリ付き軸受の第六の実施形態を示す側面断面図であって、(a)はプーリ単体、(b)はプーリにVリブドベルトが食い込んだ状態
【図8】この発明に係る樹脂プーリ付き軸受の第七の実施形態を示す側面断面図であって、(a)は第一円筒部を形成したもの、(b)は第一円筒部及び第二円筒部を形成したもの、(c)は第一円筒部及び第二丸め部を形成したもの
【図9】図8に示すプーリ付き軸受において両鍔部を省略したものであって、(a)は第一円筒部を形成したもの、(b)は第一円筒部及び第二円筒部を形成したもの、(c)は第一円筒部及び第二丸め部を形成したもの
【図10】プーリを用いた一般的なエンジン動力伝達系を示す正面図
【図11】従来技術に係る樹脂プーリ付き軸受の実施形態を示す側面断面図
【図12】従来技術に係る実施形態において、(a)は両者の当接前、(b)は両者がちょうど当接した状態、(c)はVリブドベルトがプーリに食い込んだ状態
【発明を実施するための形態】
【0033】
この発明に係る樹脂プーリ付き軸受の第一の実施形態を図1に示す。この樹脂プーリ付き軸受は、転がり軸受と、この転がり軸受の外輪1に一体成形された樹脂製のプーリ2とからなり、このプーリ2は、Vリブドベルト3に作用するベルト張力によって、このプーリ2のプーリ面に形成したリブ4がVリブドベルト3のV溝5に、リブ4のテーパ面4aと、V溝5のテーパ面5aとが面圧による摩擦を生じつつ食い込んで、トルク伝達がなされるようにしたものである。このリブ4のテーパ面4aの所定位置には、プーリ軸周りに回転対称な第一円筒部6が形成されており、この第一円筒部6によって、隣り合うリブ4、4の間に形成される溝の溝底が埋まった状態となっている。また、このプーリ2の軸方向両端には鍔部7が形成され、この両鍔部7、7とVリブドベルト3の幅方向両端部がそれぞれ当接している。なお、同図においては、転動体、内輪等の記載は省略している。
【0034】
前記「所定位置」は、あまりにリブの根元側すぎると、Vリブドベルト3の食い込み過程の途中において、このVリブドベルト3と第一円筒部6が当接せず、食い込み制限機能を発揮できない。このため、少なくとも前記当接が生じ得るように、前記所定位置を設定する必要がある。
【0035】
この第一の実施形態におけるVリブドベルト3のプーリ2への食い込みの様子を図2に示す。このVリブドベルト3は、プーリ2の軸周りの回転に伴って互いに接近し(同図(a)を参照)、リブ4のテーパ面4aと、V溝5のテーパ面5aが互いに当接する(同図(b)を参照)。さらに、ベルト張力によって、両テーパ面4a、5aが当接しつつ相対的にスライド(接近)してリブ4のV溝5への食い込みが生じる。このとき、Vリブドベルト3が、第一円筒部6に当接して、所定位置を越える食い込みが制限される。このため、面圧の大きさが、この第一円筒部6を設けない場合と比較して抑制される(同図(c)中の斜め向きの矢印と、図12(c)中の斜め向きの矢印のそれぞれの長さを比較)。
【0036】
このように食い込み量を制限することで、前記スライドに伴うテーパ面4a、5a間の面圧に起因する摩擦を低減でき、発熱に伴うトルク損失を抑制することができる。なお、この構成においては、テーパ面4a、5a同士の当接に加え、Vリブドベルト3の先端と第一円筒部6との当接も生じる(図2(c)の下向きの矢印を参照)。この当接においては、単に第一円筒部6へのVリブドベルト3の押し付け圧が作用するだけであって、相対的にスライドが生じないため発熱せず、トルク損失を生じない。
【0037】
また、この第一円筒部6によって隣り合うリブ4、4間の溝の溝底が埋まった状態となり、その分だけ溝深さが減少する。このため、この溝の深さに対応してリブ底の厚さtを増す必要がなく、このプーリ2のリブ底を薄肉化して(図1中の二点鎖線部を参照)、その軽量化を図ることができる。このように、プーリ2を軽量化するとその回転に伴うトルク損失を抑制できる。
【0038】
この発明に係る樹脂プーリ付き軸受の第二の実施形態を図3(a)及び(b)に示す。なお、以下の実施形態では、外輪1を省略して、プーリ2及びVリブドベルト3のみ図示して説明する。
【0039】
この構成では、プーリ2のリブ4の所定位置に始点を有し、このリブ4の根元に向かうほどこのリブ4から離れる円弧を、プーリ軸周りに回転させた第一丸め部8が形成されている(図3(a)を参照)。前記食い込みの過程において、Vリブドベルト3がこの第一丸め部8の内面(円弧)に当接すると、このVリブドベルト3の所定位置を越える食い込みが制限される。この構成によると、第一の実施形態に係る構成と同様に食い込みに伴う面圧を低減できる(図3(b)中の矢印を参照)。このため、この面圧に起因して摩擦が生じて発熱し、トルク損失が生じるのを抑制することができる。
【0040】
上述した第一円筒部6及び第一丸め部8は、食い込み制限手段の一例であって、同様の制限機能を発揮するのであれば、他の形状とすることもできる。
【0041】
この発明に係る樹脂プーリ付き軸受の第三の実施形態を図4(a)及び(b)に示す。この構成は、第二の実施形態の構成において、リブ4の先端部に、リブ4の前記所定位置よりも先端側の先端位置を含み、プーリ軸周りに回転対称な第二円筒部9を形成したものである。このように第二円筒部9を形成すると、同図(b)中に破線矢印で示すように、リブ4とVリブドベルト3との接触面積(面圧が生じる領域)を狭めることができ、その分だけトルク損失の抑制を図ることができる。
【0042】
この発明に係る樹脂プーリ付き軸受の第四の実施形態を図5(a)及び(b)に示す。この構成は、第三の実施形態の構成において、第一丸め部8を、第一円筒部6としたものであって、第三の実施形態の構成と同様に、第一円筒部6によるVリブドベルト3の食い込み防止作用と、第二円筒部9によるリブ4とVリブドベルト3との当接回避作用が発揮される。
【0043】
この発明に係る樹脂プーリ付き軸受の第五の実施形態を図6(a)及び(b)に示す。この構成は、第三の実施形態の構成において、第二円筒部9を、第二丸め部10としたものであって、第三の実施形態の構成と同様に、第一丸め部8によるVリブドベルト3の食い込み防止作用と、第二丸め部10によるリブ4とVリブドベルト3との当接回避作用が発揮される。
【0044】
この発明に係る樹脂プーリ付き軸受の第六の実施形態を図7(a)及び(b)に示す。この構成は、第四の実施形態の構成において、第二円筒部9を、第二丸め部10としたものであって、第四の実施形態と同様に、第一円筒部6によるVリブドベルト3の食い込み防止作用と、第二丸め部10によるリブ4とVリブドベルト3との当接回避作用が発揮される。
【0045】
この発明に係る樹脂プーリ付き軸受の第七の実施形態を図8に示す。この実施形態に係る構成においては、プーリ2の2本のリブ4によってVリブドベルト3への食い込みがなされる。このようにリブ4の本数を、上記の第一乃至第六の実施形態と比較して減らすことによって、Vリブドベルト3のV溝5の一部へのプーリ2のリブ4の食い込みを回避できる。このため、面圧を軽減でき、トルク損失の抑制を図ることができる。
【0046】
この第七の実施形態においては、図9に示すように、プーリ2の鍔部7を省略して隙間部11を設ける構成とすることもできる。このようにすると、プーリ2とVリブドベルト3の幅方向両端部との接触を防止することができ、この接触に起因する面圧発生を防止することができる。このため、トルク損失を一層低減することができる。この隙間部11の形成には、必ずしも鍔部7を省略する必要はなく、プーリ2の幅方向両端部に形成した鍔部7を前記幅方向に離間させて、前記接触を防ぐようにしてもよい。
【0047】
上記各実施形態に示した樹脂プーリ付き軸受は、面圧の低減によってトルク損失が小さいため、テンションプーリやアイドラプーリのように、トルク伝達を目的としない用途への適用に優れている。
【符号の説明】
【0048】
1 外輪
2 プーリ
3 Vリブドベルト
4 (プーリの)リブ
4a (リブの)テーパ面
5 V溝
5a (V溝の)テーパ面
6 第一円筒部(食い込み制限手段)
7 鍔部
8 第一丸め部(食い込み制限手段)
9 第二円筒部(当接回避手段)
10 第二丸め部(当接回避手段)
11 隙間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受と、この転がり軸受の外輪(1)に一体成形された樹脂製のプーリ(2)とからなり、このプーリ(2)は、Vリブドベルト(3)に作用するベルト張力によって、前記プーリ(2)のプーリ面に形成したリブ(4)がVリブドベルト(3)のV溝(5)に、前記リブ(4)のテーパ面(4a)と前記V溝(5)のテーパ面(5a)とが面圧による摩擦を生じつつ食い込んで、トルク伝達がなされる樹脂プーリ付き軸受において、
前記リブ(4)の前記テーパ面(4a)の所定位置に、前記リブ(4)が、前記Vリブドベルト(3)の前記V溝(5)に、前記所定位置を越えて食い込むのを防止する食い込み制限手段(6、8)を設けたことを特徴とする樹脂プーリ付き軸受。
【請求項2】
前記食い込み制限手段(6、8)が、前記所定位置を含み、プーリ軸周りに回転対称な第一円筒部(6)であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂プーリ付き軸受。
【請求項3】
前記食い込み制限手段(6、8)が、前記所定位置に始点を有し、前記リブ(4)の根元に向うほどこのリブ(4)から離れる円弧を、プーリ軸周りに回転させて形成された第一丸め部(8)であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂プーリ付き軸受。
【請求項4】
前記リブ(4)の前記所定位置よりも先端側の先端位置に、前記Vリブドベルト(3)と、前記プーリ(2)とが当接しないようにする当接回避手段(9、10)を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の樹脂プーリ付き軸受。
【請求項5】
前記当接制限手段(9、10)が、前記先端位置に始点を有し、前記リブ(4)の先端部に向かって、前記V溝(5)の溝底に形成された円弧よりも大きい曲率半径を有する円弧を、プーリ軸周りに回転させて形成された第二丸め部(10)であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂プーリ付き軸受。
【請求項6】
前記第二丸め部(10)の曲率半径が0.5mm以上であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂プーリ付き軸受。
【請求項7】
前記当接制限手段(9、10)が、前記先端位置を含み、プーリ軸周りに回転対称な第二円筒部(9)であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂プーリ付き軸受。
【請求項8】
前記プーリ(2)に形成した前記リブ(4)の本数が、前記Vリブドベルト(3)に形成した前記V溝(5)の本数よりも少ないことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載の樹脂プーリ付き軸受。
【請求項9】
前記樹脂プーリ(2)の前記リブ(4)の数を1又は2本としたことを特徴とする請求項8に記載の樹脂プーリ付き軸受。
【請求項10】
前記プーリ(2)の軸方向両端に、前記Vリブドベルト(3)の幅方向両端部とこのプーリ(2)との接触を防ぐ隙間部(11)を形成したことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一つに記載の樹脂プーリ付き軸受。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一つに記載の樹脂プーリ付き軸受を用いたオートテンショナ。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一つに記載の樹脂プーリ付き軸受に用いる樹脂プーリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−252548(P2011−252548A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127039(P2010−127039)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】