説明

樹脂ベルトの製造方法および製造装置

【課題】工程増を伴うことなく、経時変化によるセット跡の発生を防止することが可能なコスト性に優れた樹脂ベルトの製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】押出機から、環状ダイス11を介して押出した熱可塑性樹脂を含む組成物を、冷却固化させてチューブ状に成形する樹脂ベルトの製造方法である。環状ダイス11から押出されたチューブ状の組成物1を、第1マンドレル12の外周に担持させて冷却し、次いで、第1マンドレル12の直径以下の直径を有する第2マンドレル13に担持させた状態で、熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上融点以下の所定温度にて熱処理した後、連続的に引き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ベルトの製造方法および製造装置(以下、単に「ベルト」、「製造方法」および「製造装置」とも称する)に関し、詳しくは、複写機やプリンター等の電子写真装置や静電記録装置等において、中間転写ベルトや転写搬送ベルト等として用いられる樹脂ベルトの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンター等の画像形成装置における静電記録プロセスでは、まず、感光体(潜像保持体)の表面を一様に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して光の当たった部分の帯電を消去することによって静電潜像を形成し、次いで、この静電潜像にトナーを供給してトナーの静電的付着によりトナー像を形成し、これを紙、OHP、印画紙等の記録媒体へと転写することにより、プリントする方法が採られている。
【0003】
このような静電記録プロセスにおいて、トナー像を紙等の記録媒体へと転写する際には、トナー像を一旦自己の表面に保持して転写するため(中間転写方式)、または、記録媒体を感光体まで搬送してトナー像を直接転写させるために(転写搬送方式)、半導電性の樹脂フィルムまたは繊維補強体を有するゴムからなる転写ベルトが用いられている。このうち樹脂フィルムからなる樹脂フィルムベルトを製造する方法としては、従来、環状ダイスを用いた押出成形による手法が知られている。
【0004】
かかるベルトの押出成形に係る改良技術としては、例えば、特許文献1に、押出機に装着した環状ダイより押出された未硬化の樹脂製チューブの内側に、供給圧力と供給量を制御した気体を連続的に供給、排出させつつ、樹脂製チューブの内面を、冷却マンドレルの外周面に接触させることにより冷却して固化し、チューブ状態を維持したままで連続して引き取るフィルム製造方法が開示されている。また、特許文献2には、樹脂製チューブの内面に気体を供給せずに、環状ダイスより押出された樹脂製チューブを、冷却マンドレルの表面に接触させて冷却固化させた後、案内マンドレルの表面に接触させつつ、送り機構により引き取るベルトの製造方法が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、加熱収縮性を付与したエンドレスベルトを得る目的で、環状ダイより押出された樹脂製チューブを第1マンドレルで冷却固化した後に、チューブの外周面に高温の気体を吹付け、チューブをある程度軟化させた状態で、第1マンドレルより外径を大きくした第2マンドレルによりチューブを弱延伸させて連続して引き取るベルト材の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開平1−228823号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2001−138380号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開平9−29840号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、転写ベルトは、内側から複数本のローラにて張架された状態で使用されるが、この際、ベルト材の経時変化によりローラ状のセット跡が発生して、画像不良が起きるという問題があった。このベルト材の経時変化の主な原因は、ベルトを構成する材料中の高分子成分が動くことにあり、特に高温高湿環境下では、このようなセット跡の度合いは大きくなる。
【0007】
この点、特許文献1,2に開示された製造方法では、連続生産性には優れるものの、冷却速度が速いためにベルト内の分子の緩和が十分完了しない状態でベルトが得られることになり、結果として製造後における経時変化により分子の動く量が大きくなるため、セット跡が大きくつきやすいという問題がある。この問題の解決方法としては、ベルト使用前に熱処理を行って、分子を十分に緩和させた状態にすることが考えられるが、この場合、熱処理の工程が増えることになり、コストアップという別の問題が生ずる。
【0008】
また、特許文献3に開示された製造方法の場合、弱延伸により分子鎖が伸ばされることで、上記特許文献1,2の製造方法で得られるベルトよりも経時変化によって分子の動く量が大きくなり、セット跡がさらに悪化してしまう。したがって、従来の製造方法では、使用時における経時変化によるセット跡の発生を十分防止できるものではなく、工程増を伴うことなくかかるセット跡の問題を解消できるコスト性に優れたベルト製造技術の確立が望まれていた。
【0009】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、工程増を伴うことなく、経時変化によるセット跡の発生を防止することが可能なコスト性に優れた樹脂ベルトの製造方法および製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、チューブ状に押出されたベルト材を、第1マンドレルで冷却固化させた後、この第1マンドレル以下の直径を有する第2マンドレルにて熱処理してから連続的に引き取るものとすることで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の樹脂ベルトの製造方法は、押出機から、環状ダイスを介して押出した熱可塑性樹脂を含む組成物を、冷却固化させてチューブ状に成形する樹脂ベルトの製造方法であって、
前記環状ダイスから押出されたチューブ状の組成物を、第1マンドレルの外周に担持させて冷却し、次いで、該第1マンドレルの直径以下の直径を有する第2マンドレルに担持させた状態で、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上融点以下の所定温度にて熱処理した後、連続的に引き取ることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の製造方法においては、前記第2マンドレルの外周に恒温槽を配置して、該第2マンドレルの温度を前記所定温度に調整するか、前記第2マンドレル内部に熱媒体を循環させて、該第2マンドレルの温度を前記所定温度に調整するか、または、前記第2マンドレルに接触する直前または接触中に、前記チューブ状の組成物の外周面に対し、前記所定温度の気体を吹き付ける手法を好適に用いることができる。本発明の製造方法は、2層以上の積層ベルトの製造に好適に適用可能である。
【0013】
また、本発明の樹脂ベルトの製造装置は、押出機に装着された環状ダイスと、該環状ダイスと同軸上に順次配置された第1マンドレルおよび引き取り用ロールとを備え、該環状ダイスを介して押出された熱可塑性樹脂を含む組成物を、冷却固化させてチューブ状に成形する樹脂ベルトの製造装置であって、
前記第1マンドレルと引き取りロールとの間の同軸上に、該第1マンドレルの直径以下の直径を有する第2マンドレルが配置され、該第1マンドレルが、前記環状ダイスから押出されたチューブ状の組成物を外周に担持して冷却可能な温度に調整され、かつ、該第2マンドレルが、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上融点以下の温度に調整されていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の製造装置においては、前記第2マンドレルの外周に恒温槽が配置されているか、または、前記第2マンドレル内部に熱媒体が循環していることが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の樹脂ベルトの製造装置は、押出機に装着された環状ダイスと、該環状ダイスと同軸上に順次配置された第1マンドレルおよび引き取り用ロールとを備え、該環状ダイスを介して押出された熱可塑性樹脂を含む組成物を、冷却固化させてチューブ状に成形する樹脂ベルトの製造装置であって、
前記第1マンドレルと引き取りロールとの間の同軸上に、該第1マンドレルの直径以下の直径を有する第2マンドレルが配置され、該第1マンドレルが前記環状ダイスから押出されたチューブ状の組成物を外周に担持して冷却可能な温度に調整され、かつ、該第2マンドレルの近傍に、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上融点以下の温度の気体の吹き付けが可能な温度調節機構が配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記構成としたことにより、工程増を伴うことなく、経時変化によるセット跡の発生を防止することが可能なコスト性に優れた樹脂ベルトの製造方法および製造装置を実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の一好適例の樹脂ベルトの製造装置の概略説明図を示す。図示する樹脂ベルトの製造装置10は、図示しない押出機に装着された環状ダイス11と、それと同軸上に順次配置された第1マンドレル12および引き取り用ロール14とを備えており、押出機から環状ダイス11を介して押出された熱可塑性樹脂を含む組成物1を、冷却固化させてチューブ状に成形するものである。
【0018】
本発明の製造装置においては、第1マンドレル12と引き取りロール14との間の同軸上に、第1マンドレル12の直径以下の直径を有する第2マンドレル13が配置されており、環状ダイス11から押出されたチューブ状組成物1は、2本のマンドレル12,13を経由することになる。この2本のマンドレルのうち第1マンドレル12は、押出されたチューブ状組成物1を冷却固化させるために通常設けられるものであり、環状ダイス11から押出されたチューブ状の組成物1を外周に担持して冷却可能な温度に調整されている。
【0019】
これに対し、本発明において設ける第2マンドレル13は、いったん冷却固化したチューブ状組成物1を熱処理するための熱処理用マンドレルであり、かかるチューブ状組成物1を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)以上融点以下の温度に調整されている。本発明の製造装置においては、第1マンドレル12の後にかかる第2マンドレル13を設け、この第2マンドレル13により冷却固化したチューブ状組成物1の熱処理を行うことで、ベルト内の分子を緩和させることができ、これにより、その後の経時変化によるセット跡の発生を防止することが可能となったものである。また、本発明においては、図示するように、第1マンドレル12での冷却固化、第2マンドレル13での熱処理および熱処理されたチューブ状組成物1の引き取りロール14による引取りを、一装置内で連続的に行うことができるので、熱処理工程を別途行う場合のような工程増がなく、したがってコストアップの問題なしで、低コストでローラセット跡の小さいベルトを得ることが可能である。
【0020】
第2マンドレル13は、チューブ状組成物1を構成する熱可塑性樹脂のTg以上融点以下の温度に調整されているものであればよい。熱可塑性樹脂のうちでも非晶性樹脂の場合には、Tg以上の温度とする。この温度がチューブ状組成物1の熱可塑性樹脂のTg未満であると、低温すぎて、十分な分子の緩和効果が得られない。また、結晶性樹脂の場合、融点を超える温度では、高温すぎて、ベルトの表面性の悪化や、ベルト形状の変形などを生じてしまう。なお、チューブ状組成物1に2種以上の熱可塑性樹脂を用いる場合には、上記温度は、最も高いTg以上であって、最も低い融点以下の温度とする。また、第2マンドレル13を第1マンドレル12の直径以下の直径とするのは、分子を緩和させやすくするためである。第2マンドレル13の具体的な直径は、目的とする製品ベルトの寸法にもよるが、例えば、第1マンドレル12の直径の80〜100%とすることができる。なお、第2マンドレル13の材質については、従来一般的に使用される金属を用いることができ、熱伝導の良いものが好ましい。
【0021】
本発明において、第2マンドレル13の温度を上記特定範囲に調整するための方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、図示するように、第2マンドレル13の外周に、第2マンドレル13を覆うように恒温槽15を配置する方法が挙げられる。この場合、恒温槽15内に配置された赤外線ヒータ等の熱源16により、第2マンドレル13およびその外周上のチューブ状組成物1を全体的に均一に加熱することができ、効率的である。なお、図示はしないが、恒温槽15の内部にファンを配置して、内部雰囲気を循環させることもできる。また、図2に示す本発明の他の実施形態に係る製造装置20におけるように、恒温槽を設けず、第1マンドレル12と同様に第2マンドレル23の内部に熱媒体を循環させることで、第2マンドレル23の温度を調整することも可能である。
【0022】
さらに、本発明においては、図3に示す本発明のさらに他の実施形態に係る製造装置30におけるように、第2マンドレル33の近傍に、温調リング等の温度調節機構17を配置して、チューブ状組成物1に対し、それを構成する熱可塑性樹脂のTg以上融点以下の温度の気体の吹き付けを行ってもよい。この場合も、温度調節機構17により、チューブ状組成物1を第2マンドレル13上で熱処理することができ、図1,図2の製造装置の場合と同様の効果を得ることができる。この場合、温度調節機構17のみを設けて第2マンドレル13を設けないことも考えられるが、第2マンドレル13を設けないと、チューブ状組成物1の形状を十分に保持することができない。また、温度調節機構17の位置は、チューブ状組成物1の外周面に対し、第2マンドレル13の通過直前若しくは通過中、または、通過直前および通過中の双方において、気体を吹き付けることが可能であればよく、特に制限はない。なお、図1〜3中、符号18は支持棒を示す。ここで、図1、図3に示すように、第2マンドレルの外部から温度調整を行う場合には、第2マンドレル内部からの熱媒体の循環による温度調整については必ずしも行う必要はないが、特には、第2マンドレルの内部および外部からの温度調整を組合せて行うことが好ましい。
【0023】
本発明の樹脂ベルトの製造装置は、通常使用する第1マンドレルに加えて第2マンドレルを配置して、その外周上でチューブ状組成物を所定温度に加熱できるものであればよく、それ以外の構成については、従来公知の装置構造を適宜採用することができ、特に制限されるものではない。
【0024】
第1マンドレル12としては、チューブ状組成物1を外周に担持して冷却可能な温度に調整されているものであればよく、これにより、押出されたチューブ状組成物1は、第1マンドレル12の外周に接触することで、押出温度からある程度の低温まで冷却されて固化する。第1マンドレル12の材質としては、第2マンドレル13と同様に、従来一般的に使用される金属を用いることができる。また、第1マンドレル12の具体的な温度については特に制限はなく、チューブ状組成物1が固化する温度であればよいが、例えば、表面温度30〜120℃とすることができる。
【0025】
ここで、本発明の製造装置において、第1,第2マンドレルの配置箇所としては、押出温度等にもよるが、例えば、第1マンドレル12については、環状ダイス11の出口から30〜200mmの位置、第2マンドレル13については、第1マンドレル12の下端から500〜1500mmの位置とすることができる。なお、これら第1、第2マンドレルの間に、別途引き取りロール(図示せず)を設けてもよい。
【0026】
また、本発明の樹脂ベルトの製造方法は、押出機から環状ダイスを介して押出した熱可塑性樹脂を含む組成物を、冷却固化させてチューブ状に成形する製造方法であり、図1〜3に示すような本発明の製造装置を用いて実施することができる。本発明の製造方法においては、図示するように、環状ダイス11から押出されたチューブ状の組成物1を、第1マンドレル12の外周に担持させて冷却し、次いで、第1マンドレル12の直径以下の直径を有する第2マンドレル13に担持させた状態で、チューブ状組成物1を構成する熱可塑性樹脂のTg以上融点以下の所定温度にて熱処理する。その後、引き取りロール14で連続的に引き取ることで、経時変化によるセット跡の発生を抑制した樹脂ベルトを、一つの連続工程により、低コストで得られるものである。
【0027】
また、図示するような環状ダイスを用いた押出により無端ベルトを製造する場合、2層以上の積層ベルト、例えば、基層と表層とからなる2層の積層ベルトなどにおいては、各層を構成する樹脂組成物の収縮率の差に起因して、切断端部(ベルトの幅方向端部)に反りが発生する場合があるが、本発明においては、この切断面の反りを低減する効果も得ることができる。
【0028】
本発明の樹脂ベルトの製造方法においても、第2マンドレルを配置して、その外周上でチューブ状組成物1を所定温度に加熱するものであればよく、それ以外の点については、常法に従い適宜決定することができ、特に制限されるものではない。例えば、押出に用いる樹脂組成物は、ベルトの配合成分を、二軸混練機等を用いて適宜混合、混練して調製することができる。また、引き取りロールにより引き取られたチューブ状組成物は、その後、適宜長さ(幅)にて裁断されて、無端チューブ状の樹脂ベルトとなる。
【0029】
本発明は、ベルト材料として、熱可塑性樹脂を含む組成物を用いる場合に適用可能な技術であり、かかる条件を満足するものであれば、具体的なベルト配合については特に制限されるものではなく、ベルト材料として通常用いられているもののうちから、所望に応じ適宜選定することが可能である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
<実施例1>
東洋紡(株)製のポリエステルエラストマー(E−450B,Tg:−70℃,融点:222℃)と、ポリプラスチックス(株)製のポリブチレンテレフタレート(PBT)(ジュラネックス800FP,Tg:22℃,融点:223℃)と、電気化学工業(株)製のカーボンブラック(デンカブラック粒状)とを、60/40/18の配合比で、φ30mm二軸押出機にて250℃で混練して、ベルト製造用の樹脂組成物を得た。
【0031】
図2に示すような、押出機に装着された環状ダイス11、第1マンドレル12、第2マンドレル13および引き取り用ロール14を同軸上に備える製造装置を用いて、樹脂組成物をφ30mmの一軸押出機にて押出すことで、樹脂ベルトの製造を行った。押出機と環状ダイス11は260℃に設定し、環状ダイス11の押出孔はφ155mm、環状ダイス11の出口から第1マンドレル12までの距離は50mm、第1マンドレル12の下端と第2マンドレル13の上端との間の距離は1000mmとした。また、第1マンドレル12の外径はφ140mm、第2マンドレル13の外径はφ138mmとし、マンドレル温度はそれぞれ、内部に熱媒体を循環させることにより120℃および150℃に調整した。これにより、最終的に、厚み100μm、幅250mmの樹脂ベルトを得た。
【0032】
<実施例2>
熱媒体による第2マンドレル13の温度調整を行いつつ、図3に示すように、第2マンドレル13の近傍に温調リング17を配置して、チューブ状の組成物1に対し温調リング17より150℃の熱風を吹きつけた以外は実施例1と同じ条件で、樹脂ベルトを得た。
【0033】
<実施例3>
熱媒体による第2マンドレル13の温度調整を行いつつ、図1に示すように、第2マンドレル13の外周に恒温槽15を配置して、恒温層15内を150℃に設定することにより第2マンドレル13の温度調整を行った以外は実施例1と同じ条件で、樹脂ベルトを得た。
【0034】
<比較例1>
第2マンドレルを配置しない以外は実施例1と同じ条件で、樹脂ベルトを得た。
【0035】
<比較例2>
第1マンドレル12および第2マンドレル13の外形をそれぞれφ130mmおよびφ140mmとした以外は実施例2と同じ条件で、樹脂ベルトを得た。
【0036】
<評価方法>
φ16mmのアルミパイプ2本を用いて、荷重2.5kgfで各ベルトを張架し、下記表1に示す2つの条件で、ベルトを放置した。その後、さらに23℃50%RHで24h放置した後、各ベルトを中間転写ベルトとしてカラーレーザープリンターに組込み、画像評価を実施した。ローラセット跡による画像不良の度合いにつき、◎:著しく良好、○:良好、△:不良、×:著しく不良の4段階にて評価した。評価結果は、○以上であれば実用上問題ない。その結果を、下記の表1中に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
上記表1に示すように、第1マンドレルの後に第1マンドレルの直径より小さい直径を有する第2マンドレルを配置して、冷却固化後の熱処理を行った実施例では、熱処理を行わない比較例1、および、第1マンドレルの直径より大きい直径を有する第2マンドレルで熱処理を行った比較例2のいずれに比しても、セット跡の改善効果が得られていることが確かめられた。
【0039】
<実施例4>
帝人化成(株)製のポリブチレンナフタレート(PBN)(TQB−OT,Tg:78℃,融点:243℃)100重量部と、電気化学工業(株)製のカーボンブラック(デンカブラック粒状)12重量部とを、φ30mm二軸押出機にて260℃で混練した樹脂組成物を表層用とし、実施例1で使用した樹脂組成物を基層用として、2層の積層ベルトの製造を行った。
【0040】
表層用材料と基層用材料とをそれぞれφ25、30mm一軸押出機にて押出し、2種2層用環状ダイスを用いて、図2に示すマンドレル構成にて、2種2層からなる積層樹脂ベルトを製造した。押出機と環状ダイス11は260℃に設定し、環状ダイス11の押出孔はφ155mm、環状ダイス11の出口から第1マンドレル12までの距離は50mm、第1マンドレル12の下端と第2マンドレル13の上端との間の距離は1000mmとした。また、第1マンドレル12の外径はφ140mm、第2マンドレル13の外径はφ138mmとし、マンドレル温度はそれぞれ、内部に熱媒体を循環させることにより、120℃および150℃に調整した。これにより、最終的に、表層厚み15μm、基層厚み85μm(合計厚み100μm)、幅250mmの積層樹脂ベルトを得た。
【0041】
<実施例5>
熱媒体による第2マンドレル13の温度調整を行いつつ、図3に示すように、第2マンドレル13の近傍に温調リング17を配置して、チューブ状の組成物1に対し温調リング17より150℃の熱風を吹きつけた以外は実施例4と同じ条件で、積層樹脂ベルトを得た。
【0042】
<実施例6>
熱媒体による第2マンドレル13の温度調整を行いつつ、図1に示すように、第2マンドレル13の外周に恒温槽15を配置して、恒温層15内を150℃に設定することにより第2マンドレル13の温度調整を行った以外は実施例4と同じ条件で、積層樹脂ベルトを得た。
【0043】
<比較例3>
第2マンドレルを配置しない以外は実施例4と同じ条件で、積層樹脂ベルトを得た。
【0044】
<比較例4>
第1マンドレル12、第2マンドレル13の外形をそれぞれφ130mm、φ140mmとした以外は実施例4と同じ条件で、積層樹脂ベルトを得た。
【0045】
結果として、熱処理を行わない比較例3、および、第1マンドレルの直径より大きい直径を有する第2マンドレルで熱処理を行った比較例4ではベルト切断面が内側に反ってしまったのに対し、第1マンドレルの直径より小さい直径を有する第2マンドレルで熱処理を行った実施例4〜6では切断面に反りが発生しなかった。これにより、本発明が積層ベルトの製造にも有用であることが確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係る樹脂ベルトの製造装置を示す概略説明図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る樹脂ベルトの製造装置を示す概略説明図である。
【図3】本発明のさらに他の実施の形態に係る樹脂ベルトの製造装置を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 チューブ状組成物
10 樹脂ベルトの製造装置
11 環状ダイス
12 第1マンドレル
13,23,33 第2マンドレル
14 引き取り用ロール
15 恒温槽
16 熱源
17 温度調節機構
18 支持棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機から、環状ダイスを介して押出した熱可塑性樹脂を含む組成物を、冷却固化させてチューブ状に成形する樹脂ベルトの製造方法であって、
前記環状ダイスから押出されたチューブ状の組成物を、第1マンドレルの外周に担持させて冷却し、次いで、該第1マンドレルの直径以下の直径を有する第2マンドレルに担持させた状態で、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上融点以下の所定温度にて熱処理した後、連続的に引き取ることを特徴とする樹脂ベルトの製造方法。
【請求項2】
前記第2マンドレルの外周に恒温槽を配置して、該第2マンドレルの温度を前記所定温度に調整する請求項1記載の樹脂ベルトの製造方法。
【請求項3】
前記第2マンドレル内部に熱媒体を循環させて、該第2マンドレルの温度を前記所定温度に調整する請求項1記載の樹脂ベルトの製造方法。
【請求項4】
前記第2マンドレルに接触する直前または接触中に、前記チューブ状の組成物の外周面に対し、前記所定温度の気体を吹き付ける請求項1記載の樹脂ベルトの製造方法。
【請求項5】
2層以上の積層ベルトの製造に用いられる請求項1〜4のうちいずれか一項記載の樹脂ベルトの製造方法。
【請求項6】
押出機に装着された環状ダイスと、該環状ダイスと同軸上に順次配置された第1マンドレルおよび引き取り用ロールとを備え、該環状ダイスを介して押出された熱可塑性樹脂を含む組成物を、冷却固化させてチューブ状に成形する樹脂ベルトの製造装置であって、
前記第1マンドレルと引き取りロールとの間の同軸上に、該第1マンドレルの直径以下の直径を有する第2マンドレルが配置され、該第1マンドレルが、前記環状ダイスから押出されたチューブ状の組成物を外周に担持して冷却可能な温度に調整され、かつ、該第2マンドレルが、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上融点以下の温度に調整されていることを特徴とする樹脂ベルトの製造装置。
【請求項7】
前記第2マンドレルの外周に恒温槽が配置されている請求項6記載の樹脂ベルトの製造装置。
【請求項8】
前記第2マンドレル内部に熱媒体が循環している請求項6記載の樹脂ベルトの製造装置。
【請求項9】
押出機に装着された環状ダイスと、該環状ダイスと同軸上に順次配置された第1マンドレルおよび引き取り用ロールとを備え、該環状ダイスを介して押出された熱可塑性樹脂を含む組成物を、冷却固化させてチューブ状に成形する樹脂ベルトの製造装置であって、
前記第1マンドレルと引き取りロールとの間の同軸上に、該第1マンドレルの直径以下の直径を有する第2マンドレルが配置され、該第1マンドレルが前記環状ダイスから押出されたチューブ状の組成物を外周に担持して冷却可能な温度に調整され、かつ、該第2マンドレルの近傍に、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上融点以下の温度の気体の吹き付けが可能な温度調節機構が配置されていることを特徴とする樹脂ベルトの製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−72923(P2009−72923A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241285(P2007−241285)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】