説明

樹脂封止型発光ダイオードの製造方法

【解決手段】発光ダイオード(LED)チップが搭載されたリードフレーム上に上記LEDチップを覆って透明の封止樹脂組成物を成形し、硬化して樹脂封止部を形成する透明樹脂封止型発光ダイオードの製造方法であって、封止樹脂100質量部に対して離形剤を0.05〜5質量部含有する封止樹脂組成物を射出成型機により上記LEDチップを覆って射出成型し、硬化して樹脂封止部を形成することを特徴とする樹脂封止型発光ダイオードの製造方法。
【効果】本発明によれば、封止樹脂に離型剤を特定の濃度で添加することにより、射出成形の際に金属金型に対して良好な離型性が得られ、連続射出成形によりLED発光装置が作製できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)を樹脂封止、特にレンズ部を有するシリコーン樹脂封止部にて封止された樹脂封止型発光ダイオードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDチップから発せられる放射光を、縮小するか又は側面放射パターンを作製するにはLEDチップ上にレンズ部を形成することは公知である。表面実装型LEDのための封止部及びレンズ部形成方法としては、特開2006−148147号公報(特許文献1)、特開2006−351970号公報(特許文献2)にて開示されているような射出成形、トランスファー成形、圧縮成形方式が知られているが、従来の射出成形では、金型からの離形不良により樹脂クラックが発生し、非常に歩留まりが悪く、離形性改善のためにスプレー式等の離形剤を金属金型に直接塗布することが検討されているが、生産性に劣る欠点があった。また、トラスファー成形や圧縮成形の場合、リール式のリードフレームの使用が不可能であり、成形毎にリードフレームをカートリッジから入れ替える作業が必要となり、リール方式により連続して成形できる射出成形に比べ生産性に劣る欠点があった。
【0003】
【特許文献1】特開2006−148147号公報
【特許文献2】特開2006−351970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、生産性良く表面実装型LEDを得ることができる樹脂封止型発光ダイオードの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、リードフレーム上に取り付けた状態のLEDチップ上に樹脂封止部、特にレンズ部を有する樹脂封止部を形成する手段として離形剤含有の封止樹脂組成物を用いて射出成形を行うことにより、上記の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
従って、本発明は下記樹脂封止型発光ダイオードの製造方法を提供する。
[I]発光ダイオード(LED)チップが搭載されたリードフレーム上に上記LEDチップを覆って透明の封止樹脂組成物を成形し、硬化して樹脂封止部を形成する透明樹脂封止型発光ダイオードの製造方法であって、封止樹脂100質量部に対して離形剤を0.05〜5質量部含有する封止樹脂組成物を射出成型機により上記LEDチップを覆って射出成型し、硬化して樹脂封止部を形成することを特徴とする樹脂封止型発光ダイオードの製造方法。
[II]金型のキャビティ内にリードフレームに搭載されたLEDチップを配置する段階と、上記キャビティ内に封止樹脂組成物を射出する段階と、該組成物を硬化して樹脂封止部を形成し、上記LEDチップを樹脂封止部にて封止する段階と、封止されたLEDチップを上記金型から脱型する段階とを含むことを特徴とする[I]記載の製造方法。
[III]封止樹脂組成物の射出成形前に金型キャビティの壁面に付着防止フィルムを剥離可能に配設した状態で封止樹脂組成物の射出成形を行い、LEDチップを金型から脱型した後、上記付着防止フィルムを除去するようにした[II]記載の製造方法。
[IV]樹脂封止部が、LEDチップを被覆する被覆部と、その上にLEDチップの上方に存して形成された半球状のレンズ部とからなる[I]〜[III]のいずれかに記載の製造方法。
[V]封止樹脂組成物が、シリコーン組成物である[I]〜[IV]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、封止樹脂に離型剤を特定の濃度で添加することにより、射出成形の際に金属金型に対して良好な離型性が得られ、連続射出成形によりLED発光装置が作製できる。
また、金属フレームには、従来通りの接着性が得られ、従来の耐熱性も保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の樹脂封止型発光ダイオードの製造方法において、被封止物は、例えば図1に示すような金属製リードフレーム1a上に搭載された発光ダイオード(LED)チップ2であり、このチップ2はワイヤ3を介して上記リードフレーム1aに隣接されて配置された金属製のリードフレーム1bと電気的に接続されているものである。
【0009】
本発明においては、このようなLEDチップを覆って透明の封止樹脂組成物を成形、硬化してLEDチップを封止した透明の樹脂封止部を形成するものであるが、このような樹脂封止型発光ダイオードの製造方法としては、射出成形法を採用する。
【0010】
この場合、射出成形法としては、図2に示すような下金型10aと上金型10bとからなる金型10を使用して行うことができる。この金型10は、下金型10aと上金型10bとを合わせ、閉じた際、金型10にリードフレーム1a,1bを介在、挟持する隙間11が形成されると共に、中央部の直方体状の空隙部12aの上壁の更に半球ドーム状空隙部12bが形成された状態のキャビティ12が形成されるようになっている。なお、図中13はランナー、14はゲートである。
【0011】
このような金型10を用いて、LEDチップ2の樹脂封止を行う場合は、下金型10aと上金型10bとを開き、LEDチップ2が上記キャビティ12内に位置するようにLEDチップ2が搭載されたリードフレーム1a,1bを下金型10a上に載置し、上金型10bを閉じ、次いで透明の封止形成物をランナー13を通り、ゲート14からキャビティ12内に射出成形する。封止樹脂組成物の硬化後、上金型10bを開けて封止されたチップ2を取り出す。
【0012】
これにより、図3に示すように、LEDチップ2を覆う直方体状の被覆部15aと、上記LEDチップ2の上方に存して上記被覆部15a上に形成された半球状のレンズ部15bとからなる透明の樹脂封止部15が形成され、LEDチップ2は、この樹脂封止部15によって封止、保護されるものである。
【0013】
この場合、必要によっては上記LEDチップ2を封止するため封止樹脂組成物を射出成形する前、上記キャビティ12の壁面に付着防止フィルムを剥離可能に当接した状態に配設し、この状態で封止樹脂組成物を射出成形し、封止されたLEDチップを金型から脱型した後、上記付着防止フィルムを剥離除去することができ、このように付着防止フィルムを配設することによって、金型のキャビティ12壁面と樹脂封止部15との付着を防止できる。なお、付着防止フィルムとしては、フッ素系樹脂フィルムが好適であり、例えば旭硝子社製のフッ素系樹脂フィルムであるアフレックスシリーズ等を用いることができる。
【0014】
なお、リードフレーム及び場合によっては付着防止フィルムの位置を移動させ、金型を閉じて次の成形を開始することを繰り返すことにより、連続的に樹脂封止部の成形を行うことができ、これにより図3に示すような連続成形体が得られる。これは、所用箇所で切断又は破断することによって、LEDチップを個片化することができる。
【0015】
ここで、上記樹脂封止部を形成するための封止樹脂組成物としては、シリコーン組成物、特に付加硬化型シリコーン樹脂組成物が挙げられる。
なお、本発明において、シリコーン樹脂組成物とは、硬化して高硬度の樹脂(レジン)状硬化物を与えるいわゆるシリコーン樹脂組成物に加えて、硬化してエラストマー状の弾性体を与えるシリコーンゴム組成物をも包含するものである。
【0016】
付加硬化型シリコーン樹脂組成物としては、例えば分子鎖両末端、分子鎖途中(分子鎖非末端)、あるいは分子鎖両末端及び分子鎖途中の珪素原子に結合したビニル基等のアルケニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを白金族系触媒の存在下で反応(ヒドロシリル化付加反応)させるものを挙げることができる。
【0017】
更に詳述すると、付加硬化型シリコーン樹脂組成物の具体例としては、
(a)1分子中に珪素原子と結合するアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサン、
(b)1分子中に2個以上の珪素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(a)成分中の珪素原子と結合するアルケニル基に対して珪素原子に結合した水素
原子がモル比で0.1〜5.0となる量
(c)白金族系触媒
を必須成分とする付加硬化型シリコーン組成物が挙げられる。
【0018】
付加硬化型シリコーン組成物に使用される(a)成分の1分子中に珪素原子と結合するアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサンは、付加硬化型シリコーンゴム組成物のベースポリマーとして使用されている公知のオルガノポリシロキサンであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が、通常、3,000〜300,000程度であり、常温(25℃)でBM型回転粘度計による測定で100〜1,000,000mPa・s、特に200〜100,000mPa・s程度の粘度を有するものが好ましく、下記平均組成式(1)で示されるものが用いられる。
1aSiO(4-a)/2 (1)
(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
【0019】
上記R1で示される珪素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0020】
この場合、R1のうち少なくとも2個はアルケニル基(特に炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6である)であることが必要である。なお、アルケニル基の含有量は、珪素原子に結合する全有機基中(即ち、前記平均組成式(1)におけるR1としての非置換又は置換の一価炭化水素基中)0.01〜20モル%、特に0.1〜10モル%とすることが好ましい。このアルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖途中の珪素原子に結合していても、両者に結合していてもよいが、組成物の硬化速度、硬化物の物性等の点から、本発明で用いるオルガノポリシロキサンは、少なくとも分子鎖末端の珪素原子に結合したアルケニル基を含んだものであることが好ましい。
【0021】
上記オルガノポリシロキサンの構造は、通常、主鎖がジオルガノシロキサン単位((R12SiO2/2単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基((R13SiO1/2単位)で封鎖された基本的には直鎖状構造を有するジオルガノポリシロキサンであるが、部分的にはR1SiO3/2単位やSiO4/2単位を含んだ分岐状の構造、環状構造などであってもよい。
【0022】
珪素原子の置換基は、基本的には上記のいずれであってもよいが、アルケニル基としては好ましくはビニル基、その他の置換基としてはメチル基、フェニル基が望ましい。
【0023】
(a)成分の例としては、下記一般式で示される化合物などが挙げられる。
【化1】

【0024】
なお、上記一般式中のRは、R1と同様であるが、アルケニル基は含まない。m、nはm≧1、n≧0の整数であり、m+nはこのオルガノポリシロキサンの分子量又は粘度を上記の値とする数である。
【0025】
(b)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に2個以上の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。ここで、(b)成分は、(a)成分と反応し、架橋剤として作用するものであり、その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている例えば線状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)等各種のものが使用可能であるが、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)を有する必要があり、好ましくは2〜200個、より好ましくは3〜100個有することが望ましい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示されるものが用いられる。
2bcSiO(4-b-c)/2 (2)
【0026】
上記式(2)中、R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、このR2としては、上記式(1)中のR1と同様の基を挙げることができるが、脂肪族不飽和結合を有さないものが好ましい。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cが0.8〜3.0を満足する正数であり、好ましくはbは1.0〜2.0、cは0.01〜1.0、b+cが1.5〜2.5である。
【0027】
1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上含有されるSiH基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、1分子中の珪素原子の数(又は重合度)は通常2〜300個、好ましくは4〜150個程度の室温(25℃)で液状のものが望ましい。
【0028】
式(2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、例えば1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0029】
この(b)成分の添加量は、(a)成分中の珪素原子と結合するアルケニル基1個に対して珪素原子に結合した水素原子が、モル比で0.1〜5.0当量となる量であり、好ましくは0.5〜3.0当量、より好ましくは0.8〜2.0当量の範囲とされる。0.1当量より少ない場合は、架橋密度が低くなりすぎ、硬化したシリコーンゴムの耐熱性に悪影響を与える。また、5.0当量より多い場合には脱水素反応による発泡の問題が生じ、更に耐熱性に悪影響を与える。
【0030】
(c)成分の白金族系触媒は、(a)成分と(b)成分との硬化付加反応(ハイドロサイレーション)を促進させるための触媒として使用されるものである。白金族系触媒は、公知のものを用いることができるが、白金もしくは白金化合物を用いることが好ましい。白金化合物には、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン又はアセチレンアルコール類等との錯体等が例示される。
なお、この白金族系触媒の配合量は、希望する硬化速度に応じて適宜増減すればよいが、通常は(a)成分に対して白金量で0.1〜1000ppm、好ましくは1〜200ppmの範囲とすればよい。
【0031】
次に、上記のようなシリコーン樹脂組成物等の封止樹脂組成物を金型内で加圧成形し、硬化させた後、金型から成形品を損傷無く取り出すために、離形剤を使用し、上記組成物に添加する。この離型剤に要求される特性としては、上記組成物に完全に相溶し、無色で透明な硬化物を与えるものでなければならない。また、青色や白色などのLEDの封止及びレンズとして使用する場合は、透明性はもとより短波長の光線による劣化や、高温下での変色などがあってはならない。
【0032】
このような要求を満足させる離型剤であればいかなるものでも使用可能であるが、なかでも、脂肪酸系(理研ビタミン製:リケマールAZ−01、リケマールB−100、リケマールHC−100、リケマールHC−200、リケマールS−95、リケマールS−200、リケマールTG−12、リケスターEW−100、リケスターEW−200、リケスターEW−250、リケスターEW−400、リケスターEW−440A、リケスターHT−10)、ポリエチレン系(クラリアント製:LICOWAX PED 136、LICOWAX PED 153、LICOWAX PED 371FP、hoechst製:HOE WAX PE 130 PDR、HOE WAX PED 191 PDR、HOE WAX PE 191 PDR、HOE WAX PE 191 Flakes、HOE WAX PE 520 Powder)、カルナバ系(東亜化成製:YTS−040625−03、カルナバキャンデリラ、リファイングラニューカルナバ)あるいはモンタン酸エステル系(クラリアント製:LICOLUBU WE40など)等が例示される。これらの中でも脂肪酸系離型材がシリコーン樹脂との相溶性、硬化後の透明性、更には高温で放置した後の耐変色性において優れたものである。
【0033】
この離型剤の添加量は、封止樹脂組成物の封止樹脂(シリコーン組成物の場合は(a)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンと(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの合計量)100質量部に対して0.05〜5質量部であり、好ましくは0.07〜5質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、更に好ましくは0.2〜3質量部であることが好ましく、上記量で配合することで、射出成形を用いて成形した樹脂封止部を容易に金型から取り出すことができる。
【0034】
配合量が0.05質量部未満では、金型からの離型が不十分で、連続して成形した場合50ショット以上から離型性が悪くなってくる。そのため、離型性を改善するために金型掃除が必要となり、生産性が低下してしまう。
【0035】
また、5質量部を超えると離型剤の量が多すぎて成形物表面に滲み出してくることから、透明樹脂としての特性が損なわれてしまう。
【0036】
なお、離型剤を配合する場合、離型剤は主剤と硬化剤を混合したもの、あるいはそれぞれに又は一方のみに入れてもよい。
【0037】
本発明の封止樹脂組成物は、上述した各成分を均一に混合することによって調製されるが、通常は、硬化が進行しないように2液に分けて保存され、使用時に2液を混合して硬化を行う。もちろん、アセチレンアルコール等の硬化抑制剤を少量添加して1液として用いることもできる。
【0038】
また、本組成物には、上述した成分の他に、必要に応じて、本発明の目的効果を損なわない限度において他の成分を配合することができる。例えば、接着を付与する公知成分、例えばアルコキシシラン、シランカップリング剤、無機質充填剤、付加反応制御剤等を配合することができる。
【実施例】
【0039】
次に実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、下記の例で部は質量部、Meはメチル基、Etはエチル基を示す。粘度はBM型回転粘度計により測定したものである。
【0040】
[実施例1]
下記式(i)
【化2】

(但し、L=450)
で示され、25℃での粘度が約5000mPa・sである両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100部に、下記式(ii)
【化3】

(但し、L=10、M=8)
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを上記ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(i)中のビニル基に対するSiH基のモル比が1.5となる量、及び、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(Pt含有量2質量%)を0.05部加え、よく撹拌してシリコーン樹脂組成物を調製した。この組成物100部に、脂肪酸系離型剤(理研ビタミン製リケスターEW−440A、ペンタエリスリトールテトラステアレート)を1.0部加え、よく攪拌混合し、離形剤入りシリコーン樹脂組成物を調製した。
【0041】
[実施例2〜5]
実施例1の離形剤の配合量のみを代えて、0.07部、0.2部、0.5部、3部で混合させたものをそれぞれ実施例2〜5として調製した。
【0042】
[比較例1〜3]
実施例1の離形剤の配合量のみを代えて、0部、0.03部、8部で混合させたものをそれぞれ比較例1〜3として調製した。
次に、発光素子として、InGaNからなる発光層を有し、主発光ピークが470nmのLEDチップをリード電極に固定し、発光素子とリード電極を金線にて接続させ金属フレームを作製した。
上記実施例、比較例で調製した組成物を用い、図2に示したように、上記金属フレーム上に、射出成型機を用いて外部離形剤を使用せず、直接被覆保護用に被覆部及びレンズ部を成形した。
【0043】
<連続成形性>
実施例、比較例のシリコーン樹脂組成物を用い、射出圧力3MPa、硬化温度150℃、硬化時間60秒で連続して成形した際の成形性を調べた。不良モードとしてはイジェクターピンに樹脂が入り込みイジェクターピンの作動不良、ワックスにじみによる金型汚染、離型性低下による成形物の欠けが発生した時点で不良とした。
<接着性>
樹脂封止部と金属フレームとの接着性を確認するため、低温側−40℃、高温側120℃の熱衝撃試験を1000サイクル行って金属フレームとの剥離の発生状況を観察した。
<波長400nmの光透過性>
実施例、比較例で調製したシリコーン樹脂組成物を用い、厚み1mmのテストピースを連続成形性を調査した条件で射出成形して作製した。その後、テストピースを150℃で4時間ポストキュアした後、200℃の乾燥機に所定時間保管し取り出して光の透過性を測定した。
<成形物表面へのワックス滲み>
連続成形100ショット及び500ショット時に製造した成形物の表面を観察し、離形剤のにじみの有無を調べた。
【0044】
これら実施例1〜5と比較例1〜3の評価結果を比較した結果を表1,2に示す。表1から、実施例1〜5では、1000回連続成形しても金属金型から良好に離形ができた。しかし、比較例1,2では、数10回成形後に成形物を金属金型から良好に離形することができず、LED発光装置を連続して作製することができなかった。
接着性試験の結果から、離形剤の含有量を多くした場合、一部パッケージにて成形物と金属フレームの界面での剥離が観察された。
光透過率の測定結果から、実施例1〜5及び比較例1,2では、大きな透過率の減衰は無く、透明性が維持できたが、離形剤の含有量の多い比較例3では、200℃,48時間後の光透過率が大きく減衰してしまった。
成形品の離形剤の滲みに関しても、離形剤の含有量の多い比較例3では滲みが観察された。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】LEDチップが搭載されたリードフレームの一例を示す概略の断面図である。
【図2】同リードフレームを射出成形した金型の概略断面図である。
【図3】連続射出成形により樹脂封止部が形成されたリードフレームの概略断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1a リードフレーム
1b リードフレーム
2 LEDチップ
3 ワイヤ
10 金型
10a 下金型
10b 上金型
11 隙間
12 キャビティ
12a 直方体状空隙部
12b 半球ドーム状空隙部
13 ランナー
14 ゲート
15 樹脂封止部
15a 被覆部
15b レンズ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオード(LED)チップが搭載されたリードフレーム上に上記LEDチップを覆って透明の封止樹脂組成物を成形し、硬化して樹脂封止部を形成する透明樹脂封止型発光ダイオードの製造方法であって、封止樹脂100質量部に対して離形剤を0.05〜5質量部含有する封止樹脂組成物を射出成型機により上記LEDチップを覆って射出成型し、硬化して樹脂封止部を形成することを特徴とする樹脂封止型発光ダイオードの製造方法。
【請求項2】
金型のキャビティ内にリードフレームに搭載されたLEDチップを配置する段階と、上記キャビティ内に封止樹脂組成物を射出する段階と、該組成物を硬化して樹脂封止部を形成し、上記LEDチップを樹脂封止部にて封止する段階と、封止されたLEDチップを上記金型から脱型する段階とを含むことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
封止樹脂組成物の射出成形前に金型キャビティの壁面に付着防止フィルムを剥離可能に配設した状態で封止樹脂組成物の射出成形を行い、LEDチップを金型から脱型した後、上記付着防止フィルムを除去するようにした請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
樹脂封止部が、LEDチップを被覆する被覆部と、その上にLEDチップの上方に存して形成された半球状のレンズ部とからなる請求項1乃至3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
封止樹脂組成物が、シリコーン組成物である請求項1乃至4のいずれか1項記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−252781(P2009−252781A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94979(P2008−94979)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】