説明

樹脂微粒子製造装置、樹脂微粒子の製造方法及びトナーの製造方法

【課題】円形度の高い樹脂粒子を効率よく製造する製造法および製造装置を提供し、さらに、樹脂微粒子の一種であるトナー粒子について、円形度の高いトナー粒子を製造可能とすることである。
【解決手段】樹脂もしくは樹脂混合物を溶融もしくは溶解後に、微細な押し出しノズル孔からこれを押し出し、高温ガス流と衝突させた後、引き続いて高温雰囲気化に置くことによって円形度の高い粒子を得る。特にトナー粒子の場合には、樹脂、ワックス、顔料、CCAのいずれかを含む材料の混練物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一な粒度分布の微粒子を製造する樹脂微粒子製造装置、樹脂微粒子の製造方法及びこれによって得られるトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子印刷分野および電子写真分野等において、近年、高解像度化に対する市場の要求がますます高まってきている。コピー機やプリンタ等の電子デバイスにより、紙面に印刷された画像や文字の解像度を向上させるためには、印刷に使用するトナーとして、微細で且つ粒子径分布の狭い樹脂微粒子を用いる必要がある。そのためには、トナーに使用する樹脂を均一に微粒子化する技術が必要不可欠である。従来、トナーに用いる樹脂微粒子を製造するための装置は、主に(1)樹脂に着色剤、顔料、帯電制御剤、離型剤、硬化剤、その他添加剤等を添加し、混練する手段;(2)混練した樹脂を粉砕する手段;(3)粉砕した樹脂を分級する手段を備えていた。しかし、上記のような混練−粉砕−分級の各手段を備えた装置では、市場が要求するような粒子径分布の狭い微細な樹脂微粒子を分級することなく得るの困難であった。実際に、従来の樹脂微粒子の平均粒子径はトナー用で約5〜8μmであるが、上記のような装置では、良好な歩留まりで粒子径分布の狭い樹脂微粒子を得ることは困難であった。粉砕時に樹脂が過粉砕されることがあり、さらに、所望の範囲の粒子径分布を得るには、分級時に所望のサイズから外れた多量の粒子群を取り除く必要があるからである。
【0003】
このような欠点を補う装置として、混練機から押し出されたトナー原料をローラで繊維状に引き伸ばし(延伸)、これをカッターで切断することにより、樹脂微粒子を製造する装置があった(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の装置は、トナー原料となる樹脂を混練機中で混練および加熱し、溶融状態となった樹脂を、ダイを介して押し出すことにより紐状にし、次いでこの紐状になった樹脂を、ローラを用いて繊維状に引き伸ばした後に凝固させ、最後に生成した繊維状樹脂の切断を行って、粒子径分布の狭い樹脂粉末を得ようとするものである。
しかしながら、特許文献1に記載される装置は、混練機から押し出された樹脂をローラで延伸して繊維状にしているので、仮に延伸工程の途中で何らかの原因により樹脂が破断すると、次の切断工程に繊維状樹脂を送ることができなくなり、このため樹脂微粒子の製造を中断せざるを得なくなってしまうか、中断せずとも繊維径におおきなばらつきをもたらす。これは、製造効率の悪化につながり、商業的規模で樹脂微粒子の製造を行う上では大きな問題となる。このような繊維を切断して樹脂微粒子を製造すると、その粒子径にばらつきが生じてしまう。さらに、このようなローラにより繊維を延伸する方法では、特殊な製法(例えば、非相溶性の二成分系ポリマーブレンドを利用した海島型複合繊維の製法や、易割線型繊維の製法等)を併用しない限り、一般に、直径が10μm以下の微細な繊維を商業ベースで安定して製造することは困難である。このように、特許文献1の方法では、一般の樹脂材料(繊維化するために最適化されていない樹脂材料)を用いて、微細な繊維を安定的に且つ効率的に製造することは、実質的に不可能であった。
【0004】
微細繊維状樹脂を効率よく製造する装置として、メルトブロー式の不織布用紡糸ダイがあった(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の紡糸ダイは、ノズルから溶融状態の樹脂を温風と合わせながら押し出し、次いでこの押し出された樹脂を冷風と合わせて紡出口に導入し、これにより樹脂を冷却して繊維化するような構成となっている。特許文献2に記載の方法であれば、延伸を紡糸ダイが原料樹脂が吐出した直後に行うため、仮に何らかの原因により樹脂が破断しても、ばらつきが生じ難い。この特許文献2に記載される紡糸ダイおよび装置を、特許文献3では、トナー原料を繊維状に加工する装置へ適用することを試みている。つまり、特許文献3は特許文献2の装置をトナーに適用した場合の運転条件および設置条件について請求している。すなわち、特許文献3では、特許文献2の装置を元に、冷却の機構や配置、運転条件として温度、延伸に用いる空気量などの最適条件が規定されている(たとえば、特許文献3の第0009節)。さらに、特許文献4では、特許文献3に記載される要件と類似の要件(第0020節および図2に記載)を有し、かつ静止型ミキサを混練工程の後段かつ微細化部の前段に有する製造方法および装置が規定されている。さらに、特許文献5では、トナー原料を繊維状に加工した後の粉砕工程やさらに後工程を利用した形状制御について提案ががなされている。
【0005】
特許文献1および3〜5のコンセプトは、あらかじめ原料を効率よく均一なサイズに予備分散してから切断もしくは粉砕することで最終製品であるトナー粒子の粒子径分布をシャープにするものであり、大変優れたアイディアである。しかし、いずれも繊維状にトナーを加工した後、繊維状のまま一旦これを回収した後、粉砕もしくは切断などの二次的な装置を用いて微粒子を得るものであり、結果として分級工程の変わりに紡糸工程が追加され、プロセス全体の短縮には寄与しない。特許文献6では、有機溶媒に溶解希釈したものを噴霧乾燥し、粉砕などをすることなくダイレクトにトナー粒子を得る手段の一例が述べられている。しかし、特許文献6のような有機溶媒を使用する手段は、有機溶媒の使用そのものが爆発などの危険を有し、また、人体への有害性が問題であり、さらにはVOCの発生源となるため環境にもやさしくない。
【0006】
特許文献7では、ガス状物質を樹脂に微分散したトナー材料を粉砕することにより、粉砕の効率を向上させ、かつ微粉の発生を抑制する技術について述べられている。これは優れたアイディアであるが、従来の粉砕分級法の範疇と捉えることの出来る技術であり、円形度の改善、すなわち球形化については解決策をもたらさない。特許文献8では、主にトナー材料を溶融した後にこれを高圧ガスに衝突させることで微分散する方法、すなわち溶融したトナー材料を噴霧することで微粒子を得る方法が噴霧するための諸条件と共に示されている。本法によれば、溶媒除去などの乾燥工程を必要とせず、さらにトナー材料を粉砕もしくは切断する必要もなく、また分級処理することなく、溶融した原料からダイレクトにトナー粒子が製造可能となることが得られることが優れた特徴である。しかしながら、本特許文献8では、最適な装置形態やスケールアップの手段が示されておらず、装置形態については多くの工夫の余地が残されている。
【0007】
たとえば、噴霧に適した高圧ガスの供給方法や供給する装置の形態についてはたとえば第0025項述べられているが、噴霧される溶融したトナー原料の供給方法や装置、すなわちノズルもしくは口金に関する要件についてはまったく議論されていない。また、スケールアップの手段についても同様に述べられていない。また、二次凝集を抑制する手段は第0032項に記載されているが、特に近年のトナー粒子への重要な要求事項の一つである、一次粒子の円形度向上に関する具体的な手段が示されておらず、工夫の余地があった。発明者らは、上記の多くの基本的な問題点の改良を試みた結果、粉砕分級することなく、スケールアップ可能であり、円形度の向上が可能な樹脂微粒子のよりすぐれた製造装置および製造法を考案した。さらに、これをトナー粒子の製造装置および製造方法へと展開するに至ったのである。
【0008】
【特許文献1】特開平6−138704(第1図)
【特許文献2】特開2002−371427(第2図)
【特許文献3】特開2004−332130(第3図)
【特許文献4】特願2004−290948(第2図)
【特許文献5】特開2006−106236
【特許文献6】特公昭63−053006
【特許文献7】特開2005−004182
【特許文献8】特開2005−258394
【特許文献9】特開2003−10666
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、円形度0.950以上の、重量平均粒径(D4)が10μm以下の樹脂粒子を効率よく製造する製造法および製造装置を提供することである。
さらに、樹脂微粒子の一種であるトナー粒子について、円形度の高いトナー粒子を製造可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、樹脂もしくは樹脂混合物を溶融もしくは溶解後に、微細な押し出しノズル孔からこれを押し出し、高温ガス流と衝突させた後、引き続いて高温雰囲気化に置くことによって円形度の高い粒子を得る。特にトナー粒子の場合には、樹脂、ワックス、顔料、CCAのいずれかを含む材料の混練物を用いる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子写真用トナー等の樹脂微粒子で、円形度の高い粒子を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0013】
図1は、微粒子前駆体繊維を製造する樹脂微粒子製造装置の全体の一例を示す概略図である。微細なノズル孔から流体化した樹脂原料を押し出すことで、高温ガス流と衝突した時の微粒化を促進できる。ノズル孔は、たとえば微細な穴(たとえば円形)、微細なスリットなどの形状が好ましい。また、ノズル孔から押し出し微粒化した後、一定期間高温雰囲気にさらすことでより円形度の高い樹脂微粒子を得ることが出来る。液体の微粒化の過程は、たとえば、せん断力などを加えられた液体が膜化した後、この膜が引き続いて加えられるせん断力と液体自身の表面張力により分裂して液柱化もしくは液糸化(繊維化)した後、さらにせん断力と表面張力で液滴に分裂など繰り返しや組み合わせによるものである。すなわち、液滴化したい流体にせん断力を加える前に、あらかじめ出来るだけ微細な形状、すなわち微細液柱や繊維、微細液膜などとすることで、せん断力を加えた後の微粒化を促進することが出来る。噴霧の手段としては、公知の二流体式スプレーノズルや、それに準じたもしくは派生した公知の方式を当然用いることが出来る。
【0014】
(高温雰囲気について)
円形度の高い、トナー等の樹脂微粒子を高温ガス流で微分散して製造する製法について規定している。 高温ガス流を樹脂のT1/2以上の温度とすることで、樹脂を冷却することなく、流体状(液状)に保持しながら樹脂に分散力を与えることが出来る。樹脂の劣化を考慮すると、高温ガス流の温度は、T1/2流出温度の2.5倍以下、より好ましくはT1/2流出温度の2倍以下の温度とすることが望ましい。
液滴の生成過程は先に述べたとおりであるが、特に冷却固化する樹脂原料の場合は、微粒化した後即座に冷却すると、分裂過程の液糸もしくは短繊維の形状を保持したまま固化してしまう。それゆえ、適切な温度で適切な時間高温で保持することで、短繊維状の形状から表面張力によって球形化することを促進できる。
すなわち、高温雰囲気の温度は、少なくとも対象樹脂のTg以上であり、好ましくは別途定義するT1/2流出温度以上であり、樹脂の劣化を考慮すると、T1/2流出温度の2.5倍以下、より好ましくはT1/2流出温度の2倍以下の温度とすることが望ましい。このようにすることで、変形過程での樹脂原料を軟化させ、より円形度の高い樹脂微粒子を得る事ができる。この高温雰囲気にさらされる時間は少なくとも0.1秒必要であり、好ましくは0.5秒以上である。しかし、必要以上長時間の間高温雰囲気にさらされていることは、樹脂の劣化を招き好ましくない。それゆえ、高温雰囲気にさらされる時間は、長くとも10秒以内とすべきである。最も好ましい。また、高温雰囲気とは、樹脂の形状が常温雰囲気に対してより容易に変形可能となる雰囲気温度を意味する。樹脂の変形のし易さが変化しないような低温雰囲気化では、微粒化した樹脂が即座に冷却固化し、円形度の高い粒子が得られない。たとえば、樹脂の変形が容易になる温度としては、ガラス転移点Tgなどがあげられ、また流動化する温度の目安としては、Tfbなどがあげられる。高温雰囲気の温度は一般的に、少なくとも対象樹脂のTg以上であり、好ましくは流出開始温度Tfb以上であり、かつTfbの2.5倍以下の温度とすることが望ましいことを実験的に確認した。流出開始温度Tfbは、フローテスター特性とも言われ、例えば、軟化温度(Ts)、流出開始温度(Tfb)、1/2法軟化点(T1/2)などとして評価される。これらの熱特性は、適宜選択した方法により測定することができ、例えば、高架式フローテスターCFT500型(島津製作所製)を用いて測定したフローカーブから求めることができる。
流出開始温度T1/2の測定方法は以下にある通りである。
(軟化点について)
このフローテスターのフローカーブは図2に示されるデータになり、そこから各々の温度を読み取ることができる。図2中、Tsは軟化温度、Tfbは流出開始温度であり、1/2法における溶融温度とあるのが、本発明の軟化点に該当する。
なお、測定条件は以下の通りである。
荷重:30kg/cm
昇温速度:3.0℃/min
ダイ口径:0.50mm
ダイ長さ:1.0mm
(ガラス転移点について)
また、本発明におけるガラス転移点(Tg)とは、具体的に次のような手順で決定される。測定装置として島津製作所製TA−60WS、及びDSC−60を用い、次に示す測定条件で測定した。 測定条件 サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(フタあり) サンプル量:5mg リファレンス:アルミニウム製サンプルパン(アルミナ10mg) 雰囲気:窒素(流量50ml/min) 温度条件 開始温度:20℃ 昇温速度:10℃/min 終了温度:150℃ 保持時間:なし 降温温度:10℃/min 終了温度:20℃ 保持時間:なし 昇温速度:10℃/min 終了温度:150℃ 測定した結果は前記島津製作所製データ解析ソフト(TA-60、バージョン1.52)を用いて解析を行った。解析方法は2度目の昇温のDSC微分曲線であるDrDSC曲線のもっとも低温側に最大ピークを示す点を中心として±5℃の範囲を指定し、解析ソフトのピーク解析機能を用いてピーク温度を求める。次にDSC曲線で前記ピーク温度+5℃、及び−5℃の範囲で解析ソフトのピーク解析機能をもちいてDSC曲線の最大吸熱温度を求める。ここで示された温度がトナーのTgに相当する。 本発明においては、原料樹脂が複数の樹脂種の混合物である場合には、複数の樹脂種のうち10%以上を占める樹脂のT1/2およびTgについて、T1/2は最大の値を、Tgは最小の値を採用する。 該樹脂微粒子が樹脂のTg以上T1/2以下の温度雰囲気下に保たれる時間は、冷却固化の手段もしくは所望の温度未満となる位置から、粒子生成部の最も遠い位置までの距離xを、移動する理論上の時間tである。ここで、移動速度vは、冷却固化の手段もしくは所望の保温温度未満となる位置から粒子生成部の最も遠い位置までの粒子を含む気流の単位時間あたりの移動容量V(体積、ノルマル換算)を、冷却固化の手段もしくは所望の温度未満となる位置から粒子生成部の最も遠い位置までの直線に垂直な平面上でかつ粒子が存在しうる平面の最大の面積sで除した値(v=V/s)である。すなわちt=x/vである。(粒子径について) 粒子径の評価は、コールターカウンター法によって計測した値を用いる。コールターカウンター法による粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)があげられる。以下に測定方法について述べる。 まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、粒子又は粒子の体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、粒子の重量平均粒径(D4)、個数平均粒径を求めることができる。 チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。(円形度について)
円形度の計測には、フロー式粒子像分析装置(「FPIA−2100」;シスメックス社製)を用いて計測し、解析ソフト(FPIA−2100 Data Processing Program for FPIA version00−10)を用いる。具体的には、ガラス製100mlビーカーに10wt%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩ネオゲンSC−A;第一工業製薬性)を0.1〜0.5ml添加し、微粒子0.1〜0.5g添加しミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mlを添加する。得られた分散液を超音波分散器(本多電子社製)で3分間分散処理し、前記分散液を、前記FPIA−2100を用いて濃度を5000〜15000個/μlが得られるまで微粒子の形状及び分布を測定する。
【0015】
(微細なノズル孔について)
ノズルを微細化することで、あらかじめ樹脂流体小さく分割し、後段の分散プロセスにおける分散を促進することが出来るため、より微細な樹脂粒子を得ることが出来る。樹脂流体のような一般に高粘性の材料を一段のプロセスで所望の粒子径に分散することは困難であるか、可能であったとしてもより多くの分散力を付与するユーティリティ(たとえばより多くの高温ガス)を必要とし、経済的ではない。最終の分散力を加えるまでにあらかじめ予備分散しておくことで、後段プロセスの微分散をアシストすることができる。微細なノズル孔とは、たとえば小径のホールであったり、クリアランスの狭いスリットである。
【0016】
樹脂原料をノズル孔へ導く前に、第二物質を混入させることで、微粒化を促進することができる。本樹脂微粒子製造装置は、第二物質を供給した後に適切な混合装置を有しているので、樹脂流体中に均一に気泡を形成可能であり、結果プロセス後段の分散後の粒子径がより均一になる。(第二物質について)第二物質としては、樹脂流体の粘性を低下させるもの(混合することで分散しやすくするもの)や、分離分散性を良くするもの望ましい。樹脂流体の粘性を低下させるものとしては、たとえば低融点・低粘度のワックスが好ましい。たとえば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックスなどの植物系ワックス、モンタンワックス、セレシンワックスなどの鉱物系ワックス、パラフィンワックス、ペトロラタムなどの石油系ワックス、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成炭化水素、硬化ひまし油や硬化ひまし油誘導体などの水素化ワックス、アルコール、エステル、アミド、イミド、ケトン、金属石鹸などの脂肪酸誘導体などを用いることが出来る。特に、カルナバワックス、ライスワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、モンタンワックスがより好適である。
【0017】
別な例では、ガス状物質がよい。たとえば、空気を樹脂流体に微細混合することで、微細な気泡を含んだ樹脂流体となる。つまり、流体内に多くの気泡を含むことで、あらかじめ樹脂が予備分散されている状態となることで後段の微粒化がより促進される。この予備分散とはすなわち、気泡の存在により樹脂があらかじめ微細なセグメントに分割されていることや、噴霧のプロセスである薄膜化がある程度進行した状態であることなどの状態を意味する。ガス状物質の内でも、特に二酸化炭素、窒素、ブタンガスがより好適である。ブタンガスは一般に樹脂への溶解分散が容易であることが知られており、後段の微粒化に有効な微細な気泡を発生させることに適している。また、二酸化炭素や窒素は、安価で安全で、樹脂に対して不活性であり悪影響を与えない。上記のガスが、超臨界状態で供給されることが、さらに好適である。とくに、二酸化炭素、窒素の超臨界流体がもっとも好適である。たとえば二酸化炭素の場合は、31.0℃以上、72.8気圧以上で超臨界状態となる。超臨界流体は、気体に比べて高密度の割に粘度が小さく、その上、拡散係数は液体の数百倍近いという性質を持っており、従来の気体を混練もしくは溶解した結果えられる気泡とは大きくその気泡の形成状態が違い、気泡径が均一であることが公知である(特許文献7)。また、このような超臨界流体利用した気泡の形成技術によると、気泡膜を2〜15μm程度に薄くすることが出来ることが公知である(特許文献7)。すなわち、超臨界流体を用いて発泡した樹脂流体は、既に2〜15μm程度までの薄膜化が完了しているので、本発明における微分散の予備分散として有効なのである。
【0018】
(第二物質の混合機構について)
特にスクリュー型の混合装置を備えた場合には、分散がより良好となるので、粒子径が均一になる。また、静止型ミキサを備えた場合にも分散が良好となり粒子径が均一になる。さらに、静止ミキサで超臨界液を混合する場合には、スクリュー型の混合装置に比べオペレーションが容易になり、装置コストも安くなる。装置構成を簡便安価にしたい場合には、スクリュー型の混合機の一種であって、一般的に樹脂の溶融や混練に用いられるエクストルーダーを持いることが好適である。エクストルーダの形態としては、1軸でも2軸でもよいし、混練分散それ以外の形態でも良い。品換えを容易にしたい場合や、樹脂に余分なせん断力を加えたくない場合などの場合には、ノズル孔へ続く樹脂流体の流路中に静止ミキサ(スタティックミキサ)を備えることが好ましい。分散後の粒子径をよりいっそう均一化したい場合には、スクリュー型の混合機構で混合した後に、さらに静止型ミキサを用い、よりいっそう混合精度を向上させて気泡を均一化すればよい。
【0019】
特に超臨界液を混合する場合には、静止ミキサを用いることがより好適である。たとえば、スクリュー型混練機を用いて超臨界液を混合する場合には、特許文献9の図3のように複雑な圧力制御が必要であり、樹脂微粒子製造装置のオペレーションが複雑になり、またスクリュー式混練機の内部の設計も特許文献9の第0013項に記載のように改造などを要する特殊仕様となるためコストが高くつく。静止ミキサを用いる場合には、静止ミキサの上流で合一する時点での第一物質の供給圧力をP1、同じく静止ミキサの上流で合一する時点での第二物質の供給圧力をP2とした時、単純にP1=P2と制御すればよい。ガスを超臨界状態でハンドリングするためには、高温高圧と出来る樹脂微粒子製造装置で無ければならない。これらは、公知の樹脂微粒子製造装置および手段を利用できる。たとえば高温とする手段としては、公知の加熱手段もしくは保温手段を有しておればよい。高圧とする手段についても、公知の手段でよい。もちろん、樹脂微粒子製造装置を構成する材質や設計は、高温高圧に耐える材質・設計でなければならないが、これも公知のものでよい。
【0020】
ギアポンプを押し出し量の調整手段に用いることで、より均一な粒子径の微粒子を得ることが出来る。押し出し量の調節手段としては他には、たとえばエクストルーダを用いる場合にはエクストルーダの回転数で調節する方法、エクストルーダへの原料の供給量を調整する方法があるが、これらに加えて、ギアポンプを押し出し量の調整手段に用いることが好ましい。押し出し量が均一となることで、常に高温ガス流と押し出し量の比率が一定となり、微粒化した粒子群の粒子径が分布が均一になる。
【0021】
ノズル孔を複数個備えることで、加成的に処理能力を向上させることが出来る。複数個のノズル孔毎に高温ガス流を供給するユニットを持つことで、樹脂微粒子製造装置構成が簡素化され、生産コストが低減得きる。直線状にノズル孔を配列することで、より簡易な構成で効率よく高温ガス流を共有することができる。より簡易な構成で効率よく高圧ガス流を共有する一形体である。環状にノズル孔を配列することで、より簡易な構成で効率よく高温ガス流を共有することができる。より簡易な構成で効率よく高温ガス流を共有する一形体である。樹脂を押し出すノズルの孔径を、円換算直径で500μm以下に微細化することで、あらかじめ樹脂流体小さく分割し、後段の分散プロセスにおける分散を促進することが出来る。ノズルの口径(円換算直径)は、100〜500μmがよく、より好ましくは150〜300μmである。押し出しノズルの孔径はより微細であることが好ましいが、微細になるほど押し出しにより大きな圧力が必要になるか、圧力が一定であれば押し出し量が減少する。それゆえ、いたずらに微細化することはかえって必要動力の上昇や処理能力の低下を招き好ましくない。各ノズル孔間のピッチ(距離)は、ノズル孔の中心もしくは重心間の距離dが少なくともノズル孔の円換算直径Dの二倍以上、より好ましくは3倍以上あることがのぞましい。更に具体的には、500μm以上であることが望ましい。500μmを下回るような加工は相応の困難さを伴い、コストがかかるものであるが、dを3D未満としても、あるノズル孔から分散して生成した液滴が、隣接するノズル孔から生成した液滴に衝突する確率が高まり、エネルギー効率の向上にはつながらない。また、dを2D未満とすることは、エネルギー効率の向上に寄与しないばかりか、余分な加工コストを要し、またノズル孔の集合体であるノズルユニットの強度を低下させるため無意味である。ノズルユニットの強度を低下させるとは、ノズル間のピッチが狭まることで、構造体としての強度が弱まることである。強度が弱まる結果、たとえば使用時に各々のノズル間のピッチ部分が破断したりクラックが入るなどの不良が発生する。
【0022】
ノズル孔を狭いクリアランスのスリット状とすることで、あらかじめ樹脂流体を薄膜化し、後段の分散プロセスにおける分散を促進することが出来る。また、スリット状とすることで、スリット幅の変更により容易にスケールアップ可能となる。スリットの幅は、50〜400μmがよく、より好ましくは80μmから350μmである。押し出しノズルのスリット幅は微細化の観点からはより微細であることが好ましいが、微細になるほど押し出しにより大きな圧力が必要になるか、圧力が一定であれば押し出し量が減少する。それゆえ、いたずらに微細化することはかえって必要動力の上昇や処理能力の低下を招き好ましくない。
【0023】
環状にスリットを配列することで、よりコンパクトな装置形態でスリット幅を長くすることが出来る。それゆえ、よりコンパクトな装置形態を維持しつつ処理能力を向上させることが出来る。高温ガス流を対角の双方から噴出させることで、より均一にせん断力を押し出される樹脂に加えることが出来る。簡易な装置構成で、容易に処理能力の向上が可能であり、かつ効率よく高温ガス流を押し出し物に供給できる最適形状をしめしている。簡易な装置構成で、容易に処理能力の向上が可能であり、かつ効率よく高温ガス流を押し出し物に供給できる最適形状をしめしている。
【0024】
円形度の高い樹脂微粒子(たとえばトナー)を高温ガス流で微分散して製造する製法について規定している。高温ガス流を樹脂のTfb以上の温度とし、かつ高温雰囲気を樹脂のTg以上とすることで、樹脂原料を軟化させ、円形度を向上させることが出来る。高温雰囲気の温度は、少なくとも対象樹脂のTg以上であり、好ましくは別途定義するTfb流出温度以上であり、かつTfb流出温度の2倍以下の温度とすることが望ましい。円形度の高い樹脂微粒子(たとえばトナー)を高温ガス流で微分散して製造する製法について、より好適な製法について規定している。
【0025】
樹脂微粒子を製造するための最良の実施形態を示す。図1のフローの樹脂微粒子製造装置は、少なくとも本発明を満足する仕様のフローである。たとえば、本発明を満足するには、図1のフローの樹脂微粒子製造装置から、主には主剤である樹脂混合物を溶融・溶解する機能を有する主剤供給機と、高温エアの供給部、微細孔ノズルを有する噴霧デバイスを最小限含んで構成される。主剤供給機には、いわゆるエクストルーダが好適であり、たとえば一軸のものや、二軸のものが用いられる。特に二軸のものがより好適である。また、主剤の供給量を調節する手段として、ギアポンプなどを備える場合がある。主剤供給機による溶融・溶解温度としては、樹脂のTgからTfbの2倍程度の温度範囲に設定できることが望ましい。たとえばトナーの場合には主剤供給機による溶融・溶解温度としては50〜250℃が好ましく、さらには70℃〜230℃であることがより好ましい。さらに、主剤供給機の前段・中段・後段で同一の温度設定である必要は無く、目的に応じて温度勾配をつけてもよい。主剤供給装置は、供給機の途中に第二物質を供給する機構を備えることが出来る。たとえば、供給機Aを備えることが出来る。第二物質は第二物質の形態に適した形態を有する供給源Aから供給される。供給源Aは、ワックスや常温常圧でガス状である物質を供給できるものである。特に、ガスを超臨界と出来るように供給するためには、耐圧性を有していることが望ましい。供給源Aは、タンクやボンベ、ホッパーなど、公知のものが利用できる。さらに供給源Aから所望の量を切り出せるポンプAを備えることが望ましい。ポンプは、スクリュー式、ギアポンプ、ダイヤフラム式など、公知のものが使用できる。ワックスは、常温常圧で固体であるので、ワックスを供給する場合には第二物質の供給機構にも適切な過熱機構が必要である。ワックスの溶融粘度は、加熱により1000mPa・s以下とすることが望ましいが、このためには50〜230℃程度の温度範囲に制御できることが望ましい。
【0026】
主剤供給機の後段には、静止ミキサを備えることが出来る。さらに静止ミキサには、第二物質を供給する機構である供給機Bを備えることが出来る。第二物質は第二物質の形態にあわせた供給源Bから供給されるが、さらに供給源Bから所望の量を切り出せるポンプBを備えることが望ましい。供給源Bの必要要件及び機能は供給源Aと同様である。高温エアの供給部は、主にはエアの供給源とエアを加熱するヒーター部を有する。また、図示はしないが空気量の調節手段を備えるのが望ましい。エアの供給源としては、ブロアーやコンプレッサのほか、公知の空気原が使用できる。ヒーターとしては、電気ヒーターやガスヒーターのほか、公知の熱源が利用可能であり、温度の調節手段を備えることが望ましい。高温エアの温度は、樹脂のTfbから3.5倍程度に設定されるのがよく、たとえばトナーの場合には100〜350℃が好ましく、より好ましくは150〜330℃の範囲が好ましい。噴霧デバイスは、微細なノズル孔を備えたノズルユニットと、原料をノズル孔へ供給する分配ユニット、高温エアを供給するエアユニット、で構成される。噴霧の手段としては、公知の二流体式スプレーノズルや、それに準じたもしくは派生した公知の方式を当然用いることが出来る。より好ましい形態としては、噴霧部であるノズルユニットとエアユニットに、たとえば図3、4、5のようなものを用いればよい。噴霧デバイスの温度は、樹脂のTfbから3倍程度に設定されるのがよく、たとえばトナーの場合には100〜300℃好ましく、より好ましくは150〜250℃の範囲が好ましい。
図6に、図1に示した、ノズルユニット〜保温チャンバの部位の一例を示す。保温チャンバおよびその前後機器類には、図1に示した以外に、図6に示すように、保温チャンバの温度を制御するための補助エア、保温チャンバ以降に冷却作用を与える冷却エアなどが供給される。
保温部から冷却部までの距離は、図6中に示すように、保温チャンバ内が所望の温度であることを計測するために、たとえば樹脂流体・ガス流が衝突する付近の温度や、保温チャンバの出口付近の温度を計測できる温度センサ等を備えることができ、温度センサ等で計測した樹脂のTg以上となる温度範囲によって、衝突部から冷却部までの距離を導き、微粒子がTg以上に保持される時間を導けばよい。
【0027】
図3は、樹脂微粒子製造装置の噴霧部の一例である。均等な間隔で直列に配置されたノズル孔と、ノズル孔を挟んで平行に位置するガスノズルで構成される。図4も、樹脂微粒子製造装置の噴霧部の一例である。均等な間隔で円環状に配置された楕円形もしくはおおよそ長方形もしくは長さの短いスリット状のノズル孔と、ノズル孔を挟んでノズル孔の円環と同一重心の円環状に設置されたガスノズルで構成される。 図5も、樹脂微粒子製造装置の噴霧部の一例である。一本のスリット状に形成された樹脂流路であるノズルと、ノズルを挟んで平行に位置するガスノズルで構成される。
ノズルおよびガスノズルの配列については図3〜5に制限されない。その他の類似の形態としては、たとえば図5に示したような一本のスリット状に形成された樹脂流路であるノズルが、図4のノズル孔を代替するものとして構成された噴霧部や、図4に示したような楕円形もしくはおおよそ長方形もしくは長さの短いスリット状のノズル孔を、図4のノズル孔を代替するものとして構成された噴霧部、なども構成可能である。また、図3〜5では、直線状、円環状の事例を示したが、当然それ以外の形態もとりうる。具体的には、ノズルユニットを二つの直線状ノズルユニットを組み合わせたL型とすることや、円環状ではなく、楕円形、もしくは方形とすることも可能である。しかし、各ノズル孔もしくはノズルスリットの各部がそれぞれの各部と同一の能力を発揮するためには、特に直線状や円環状が好ましい。噴霧デバイスには、特に超臨界流体を用いる場合にはノズル孔までの流路に対して樹脂圧力を調整する手段を備えるのが好ましく、たとえば図1のX部に圧力調整部を備えることが出来る。圧力の調整手段としては、メッシュ状、スリット状などの公知の抵抗体であって、樹脂が分配されるべき各ノズル孔に対して均等に作用するように設置する。
【0028】
図1の樹脂微粒子製造装置は、ガスがトナー材料と混合された後も超臨界状態を維持することが出来る。たとえば、エクストルーダとギアポンプの間、エクストルーダとX部の間、ギアポンプとX部の間などの圧力が調整できるので、任意の箇所で超臨界状態となる高圧に保つことが出来る。噴霧部の後段には、本発明の樹脂微粒子製造装置の高温雰囲気を保つための保温チャンバを備えることが出来る。保温チャンバは公知のものでよいが、特に滞留時間を任意にコントロールできるものが好ましい。滞留時間のコントロール手段は公知のものでよいが、たとえば滞留時間をコントロールする手段としては、たとえばチャンバ内の空気量すなわち風速を上下するなどの手段、気流を旋回流とし、その角度を変更するなどの手段がある。
【実施例】
【0029】
以下実施例、比較例により本発明の効果を説明する。これらは本発明の一様態に過ぎずこれらに本発明の技術範囲は制限されない。原料:ポリエステル樹脂
重量部 46.75 軟化点(T1/2)107℃ Tg64℃ ポリエステル樹脂 重量部 38.25 軟化点(T1/2)124℃
Tg64℃ポリエステル樹脂 重量部 10.00 軟化点(T1/2)112℃ Tg58℃マゼンタ顔料 大日本インキ化学工業 TOSHIKI RED 1022 6.00極性制御剤
オリエント科学工業株式会社 BONTRON E−304 0.50重量部以上をヘンシェル型ミキサでプレ混合し、原料Aを得た後、以下のような手順で図1のようなフローの微粒子製造装置で必要に応じて部品を交換して比較実験をおこなった。なお、第二物質としては、A剤:カルナバワックス、B剤:二酸化炭素ガスを使用した。
【0030】
(実施例1)
ノズル孔は、160μmの円形ノズルを用い、ノズルユニットとしては左記ノズル孔を750穴有するユニットを用いた。ノズル間のピッチはおおよそ0.6mmである。高温エア供給口とノズルユニットの配置関係は図32のようであり、直線状に配列されたノズル孔の列を挟むように高温エアのスリットが設置されている。供給機〜噴霧デバイスの直前までの温度(樹脂流路管壁の温度)は160℃、噴霧デバイスの温度(樹脂流路の管壁の温度)は200℃とした。高温エア温度は240℃とした。なお、図1の静止ミキサは、内部に意図的な抵抗体のない円筒状の流路に置き換えている。また、図1中のギアポンプ部は、抵抗体の無い単純な円筒状の流路に置き換えて構成した。樹脂微粒子製造装置の処理量は、前記の樹脂微粒子製造装置温度条件で、圧力計2の指示値が3MPaとなるノズル一穴あたりの処理量とした(このときのノズル一穴あたりの処理量を原料処理量の1単位とする)。高温エアの供給量は前記の樹脂微粒子製造装置およびエア条件の温度条件にて、回収された粒子群の400メッシュ篩の通過率が75%となる空気量を選定した(このときのノルマル換算の空気使用量を空気使用量の1単位とする)前記の状態で、保温チャンバ内温度は約200℃(190〜210℃の範囲)であった。また、保温チャンバ内の滞留時間は、理論上約2秒であった。保温チャンバを通過した後は、図示しないが、回収した粉体の温度を50℃以下(周辺雰囲気温度は40℃以下)に制御した状態で空気輸送し、集塵機で捕集した後、篩処理等を実施することとした。以上の条件を取りまとめたのが表1である。
本件の比較においては、400メッシュの篩の通過率が60%を超えるものが良質であり、さらに概篩通過後の重量平均径D4が10μm未満であり、さらには円形度が0.950以上となることが良否の基準である。
【表1】

【0031】
また、この条件で得た製品の評価結果が表2である。
【表2】

【0032】
比較例1〜3について、以下に説明する。ノズル孔は、160μmの円形ノズルを用い、ノズルユニットとしては左記ノズル孔を750穴有するユニットを用いた。ノズル間のピッチはおおよそ0.6mmである。高温エア供給口とノズルユニットの配置関係は図3のようであり、直線状に配列されたノズル孔の列を挟むように高温エアのスリットが設置されている。供給機〜噴霧デバイスの直前までの温度(樹脂流路管壁の温度)は160℃、噴霧デバイスの温度(樹脂流路の管壁の温度)は200℃とした。高温エア温度は、表1のとおりである。なお、図1の静止ミキサは、内部に意図的な抵抗体のない円筒状の流路に置き換えている。ノズル一穴あたりの原料処理量は、1単位とした。高温エアの供給量は、1単位とした。前記の状態で、保温チャンバを冷却チャンバとして転用して使用し、チャンバ内温度は60℃未満となるよう冷却した。保温チャンバを通過した後は、図示しないが、回収した粉体の温度を50℃以下(周辺雰囲気温度は40℃以下)に制御した状態で空気輸送し、集塵機で捕集した後、篩処理等を実施することとした。以上の条件を取りまとめたのが表1である。また、この条件で得た製品の評価結果が表2である。表2の結果から、本発明の樹脂微粒子製造装置でトナーを製造すると、より収率が高く、より優れたトナー粒子が得られることがわかる。
【0033】
実施例2〜8及び12について、以下に説明する。ノズル孔は、160μmの円形ノズルを用い、ノズルユニットとしては左記ノズル孔を750穴有するユニットを用いた。ノズル間のピッチはおおよそ0.6mmである。高温エア供給口とノズルユニットの配置関係は図3のようであり、直線状に配列されたノズル孔の列を挟むように高温エアのスリットが設置されている。供給機〜静止ミキサ〜噴霧デバイスの直前までの温度(樹脂流路管壁の温度)はすべて160℃、噴霧デバイスの温度(樹脂流路の管壁の温度)は200℃とした。高温エア温度は240℃とした。樹脂微粒子製造装置の原料処理量は、1単位とした。高温エアの供給量は、1単位とした。前記の状態で、保温チャンバ内温度は約200℃(190〜210℃の範囲)であった。また、保温チャンバ内の滞留時間は、本発明で定義した方法で約2秒であった。保温チャンバを通過した後は、図示しないが、回収した粉体の温度を50℃以下(周辺雰囲気温度は40℃以下)に制御した状態で空気輸送し、集塵機で捕集した後、篩処理等を実施することとした。以上の条件の下、本発明に示す諸条件を付与し改良を加えた製法について取りまとめたのが表3で、ギアポンプ、静止ミキサ、圧力調整手段、は必要に応じて取り付け/取り外して使用した。
【表3】

【0034】
また、この条件で得た製品の評価結果が表4である。
【表4】

【0035】
実施例2は、条件1に対して、樹脂の流量調整用にギアポンプを設置した例である。ギアポンプの回転数を一定にすることで、樹脂の流量を一定とすることが出来る。条件1に対して、篩の通過率が向上し、平均径がより小さくなり、またCV値が小さくなり、分散状態の改善が確認できた。円形度は変わらない。ギアポンプ等を設置し、樹脂の供給量を精密に制御することで、押し出し量が安定したと思われる。押し出し量が安定した結果、分散状態が安定し、粗大粒子・超微粒子の生成量が減少し、CV値が減少したものと思われる。実施例3は、実施例2に対して、供給機Aを用いてワックスであるA剤を10重量部添加したものである。実施例2に対して篩通過率が改善し、また平均径も小さくなった。これは、樹脂溶融液が実施例2のそれに比べノズル孔部にてワックス分を多く含み、エア分散時の樹脂溶融液の粘度を低下させたため、より分散しやすくなったためである。樹脂粘度が相対的に低下していることは、押し出し圧力の減少からも確認できる。実施例4では、実施例2に対してガス状物質であるB剤を1重量部添加したものである。実施例2に対して篩通過率が改善し、また平均径も小さくなった。これは、溶融樹脂がノズル孔部で細かな気泡を含んだ状態となり、エア分散が促進された結果である。実施例5では、実施例4の状態からさらにB剤を超臨界状態で添加し、超臨界状態で樹脂に混合している。実施例4に対してさらに篩後収率が向上し、平均径とCV値はやや減少し、製品が微細化しつつ粒子径分布はシャープ化していることがわかる。これは、超臨界状態でB剤をハンドリングしたことにより、B剤の樹脂に対する分散性が向上した結果より樹脂中に均一に分散し、発泡が微細化・均一化し、エア分散に対する各気泡の寄与がより均一化することにより導かれた結果である。実施例6においては、実施例5のように供給機AからB剤を供給する変わりに、供給機BからB剤を供給している。実施例6においては、静止ミキサでB剤が樹脂に対して混合されることになるが、製品は実施例5と比べて差異のない物が得られたが、エクストルーダの操作は容易でより扱いやすかった。実施例7は、実施例6に対して、原料Aと一緒にA剤を主剤供給機に投入した例である。実施例6に比べ、ワックス配合の効果でよりいっそう分散に対して有利になり、篩通過後の収率の向上と平均径の縮小およびCV値の減少効果が得られた。実施例8では、主剤供給機には原料Aを供給し、A剤5重量部を供給機Aから、同じくB剤1重量部を供給機Bから供給した。すなわち、各々の配合量は実施例7と同様である。得られた製品は実施例7と同様であった。実施例7もしくは実施例8の事例から、B剤のような超臨界液を用いる場合には、静止ミキサを用いれば、より簡易な操作で少なくとも同品質の製品が得られる事がわかった。実施例12は、実施例1の温度条件を変更した事例である。本発明の範囲内の温度条件に拠れば、所望の粒径範囲の製品が得られることが確認できる。
【0036】
実施例9について、以下に説明する。円管状に構成されたノズルを使用した事例を示す。実施例9として、実施例7の樹脂微粒子製造装置条件で、ノズルユニットのみ図4のような円管状に構成されたノズルユニットを使用し、実験を行った。ノズル孔は、160μmの円形ノズルを用い、ノズルユニットとしては左記ノズル孔を750穴有するユニットを用いた。高温空気が噴出するクリアランス部の幅は、実施例1と同様である。また、ノズル孔の配置のピッチも実施例7と同等であり、高温ガスが噴出するクリアランスとノズル孔の距離も実施例7と同様である。すなわち、実施例7のノズルをそのまま円管状に再構成したものである。実験の結果、実施例7と同様の製品が得られた。
【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

また、この条件で得た製品の評価結果が表6である。
【0039】
実施例10〜11について、以下に説明する。スリット状のノズルを使用した事例を示す。実施例10では、実施例1で用いた樹脂微粒子製造装置同様のものであって、ノズルユニットのみ図5のようなものを使用した。実施例1から9と異なり、樹脂のノズル孔がスリット状に構成されている。ノズル孔のスリット幅は、160μmとし、スリット長は120mmとした。高温ガスが噴出するクリアランスの幅は実施例1および2と同様としたが、スリットの長さは実施例1に対して4/15とした。主原料、第二物質は、実施例1と同様の条件とし、樹脂微粒子製造装置全体の原料処理量を750単位(実施例7の装置条件と同一処理量)として高温エアの使用量を調整したところ、実施例1と同程度の篩後製品収率を得るために要した高温エア使用量は、0.82単位となり、単位原料あたりの必要空気量が減少し、エネルギー効率は向上した。実施例11については、実施例10と同じノズルユニットを用い、原料処理量も同一、エアの使用量も同一として、主原料および大に物質の供給について実施例7と同様とし、処理した。得られた製品は条件9と同様であった。以上の装置条件等を取りまとめたのが表7である。
【0040】
【表7】

【0041】
また、この条件で得た製品の評価結果が表8である。
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】微粒子前駆体繊維を製造する装置の全体の一例を示す概略図である。
【図2】フローテスターのチャートの一例である。
【図3】樹脂微粒子製造装置の噴霧部の一例である。
【図4】樹脂微粒子製造装置の噴霧部の一例である。
【図5】樹脂微粒子製造装置の噴霧部の一例である。
【図6】ノズルユニット〜保温チャンバの部位の一例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂もしくは樹脂を成分とする樹脂混合物を、溶融もしくは溶解させた状態で押し出す微細なノズル孔を備え、
かつ、押し出し量を制御する手段と、微細なノズル孔から流出する樹脂混合物に樹脂のT1/2以上の温度の高温ガス流と衝突させる機構を有し、
さらに、ガス流の衝突により微粒化した樹脂微粒子を0.1秒以上10秒以内の時間、樹脂のTg以上の温度に保持する構造を備え、その後、樹脂微粒子を冷却する機構を有する
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂微粒子製造装置において、 ノズル孔の前段で第二物質を樹脂材に対して供給する機構を有する ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂微粒子製造装置において、
供給される第二物質が、ワックスもしくはガスとする
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂微粒子製造装置において、
第二物質を供給した後に樹脂材料と第二物質を混合する機構を有する
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂微粒子製造装置において、
混合機構が混練機構を有するスクリューである
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項6】
請求項4に記載の樹脂微粒子製造装置において、
混合機構が静止ミキサである
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれかに記載の樹脂微粒子製造装置において、
ガスが炭酸ガス、窒素、ブタンとする
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項8】
請求項3ないし7のいずれかに記載の樹脂微粒子製造装置において、
ガスを超臨界状態で供給する
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の樹脂微粒子製造装置において、
ガスが、少なくとも樹脂原料と混合された後に、超臨界状態とする
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の樹脂微粒子製造装置において、
押し出し量の調節手段がギアポンプである
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の樹脂微粒子製造装置において、
ノズル孔を複数個有する
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項12】
請求項11に記載の樹脂微粒子製造装置において、
複数個のノズル孔が、請求項1に記載する高温ガス流を共有する
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項13】
請求項12に記載の樹脂微粒子製造装置において、
ノズル孔が直線状に配列する
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項14】
請求項12に記載の樹脂微粒子製造装置において、
ノズル孔が環状に配列する
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の樹脂微粒子製造装置において、
ノズル孔の円換算直径が100〜500μmである
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項16】
請求項1ないし10のいずれかに記載の樹脂微粒子製造装置において、
ノズル孔が幅50〜400μmのスリット状である
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項17】
請求項16に記載の樹脂微粒子製造装置において、
スリットが環状である
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項18】
請求項1に記載の樹脂微粒子製造装置において、
ガス流の供給口がノズル孔を中心として対角の双方に設置されている
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項19】
請求項13又は14に記載の樹脂微粒子製造装置において、
ノズル孔の円換算直径が100〜500μmであって、ガス流の供給口がノズル孔を中心として対角の双方に設置されている
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項20】
請求項16又は17に記載の樹脂微粒子製造装置において、
ガス流の供給口がノズル孔を中心として対角の双方に設置されている
ことを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項21】
請求項1ないし20のいずれかに記載の樹脂微粒子製造装置で製造する
ことを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【請求項22】
請求項1の樹脂微粒子製造装置の高温ガス流が樹脂のTfb以上である
ことを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【請求項23】
請求項1の樹脂微粒子製造装置の高温雰囲気が樹脂のガラス転移点以上である
ことを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【請求項24】
請求項19の樹脂微粒子製造装置で製造する
高温ガス流が樹脂のTfb以上で、高温雰囲気が樹脂のガラス転移点以上である
ことを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【請求項25】
請求項20の樹脂微粒子製造装置で製造する
高温ガス流が樹脂のTfb以上で、高温雰囲気が樹脂のガラス転移点以上である
ことを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【請求項26】
電子写真用のトナーの製造方法において、
請求項19の樹脂微粒子製造装置の高温ガス流が樹脂のTfb以上で、高温雰囲気が樹脂のガラス転移点以上でトナーを製造する
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項27】
電子写真用のトナーの製造方法において、
樹脂微粒子製造装置の高温ガス流が樹脂のTfb以上で、高温雰囲気が樹脂のガラス転移点以上でトナーを製造する
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項28】
請求項20の樹脂微粒子製造装置で高温ガス流が樹脂のTfb以上で、高温雰囲気が樹脂のガラス転移点以上である
ことを特徴とするトナーの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−137377(P2008−137377A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266525(P2007−266525)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】