説明

樹脂成形体の製造方法および製造装置

【課題】縁が稜角となった樹脂成形体を簡単に形成する。
【解決手段】製造装置20では、ガイド32,42とローラ36,46,52との間に連続して繰り出される一連のシート10を通すことで、シート進行方向に沿って折り目を付けつつ該折り目で折り曲げて上方に開口する角溝部を形成し、該角溝部の少なくとも一方の側壁片に折り目を付けて該角溝部の開口と反対側に折り曲げた蓋部を形成する。角溝部に樹脂原料を注入した後に、角溝部と蓋部との間の折り目で該蓋部を折り曲げて角溝部の開口を塞ぐことで、得るべき樹脂成形体の外形に合わせた角筒状の型枠を形成して、型枠で保持した状態で樹脂原料を硬化させることで、樹脂成形体を連続的に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂成形体の製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シーリング材等に用いられるウレタンフォームを連続的に製造する方法として、紙等のシートを型枠として使用することがなされている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示の製造方法では、先ず原紙ロールから連続的に繰り出されて走行する成形紙の上部平滑面にウレタン原料を原料注出ヘッドから連続的に供給する。次に、成形紙における長手方向の両端縁部を合掌状に当接させて、下流側に配設した筒状ガイド部材に成形紙の本体部分を通過させると共に、該ガイド部材の長手方向に開設した直線状のスリットに合掌状に当接している成形紙の両端縁部を通過させることで、成形紙を円筒状に成形する。そして、成形紙の円筒部分が筒状ガイド部材の内部を移動する過程で、成形紙に供給したウレタン原料を発泡・膨張させることによって、筒状ガイド部材の内壁面に密着する円筒部分の内側に長尺で棒状をなすウレタンフォーム材を連続的に成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−138342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した製造方法では、型枠となる成形紙にたるみが生じるのを防ぐため、筒状ガイド部材によって成形紙からなる型枠をウレタン原料が発泡・硬化するまで保持する必要があり、筒状ガイド部材が大型化する難点がある。例えば、板状体に設けた案内開口に成形紙を通して該成形紙を賦形することも考えられるが、板状体の案内開口に成形紙を単に通すだけでは成形紙が形状保持できないので、特に稜角のあるウレタンフォーム材を成形するのが難しい。
【0005】
すなわち本発明は、従来の技術に係る樹脂成形体の製造方法および製造装置に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、稜角のある樹脂成形体を簡単に得られる製造方法およびその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の樹脂成形体の製造方法は、
2つの賦形手段の間に連続して繰り出される一連のシートを通すことで、該シートのシート進行方向に沿って折り目を付けつつ該折り目で折り曲げて上方に開口する角溝部を形成し、該角溝部の少なくとも一方の側壁片に折り目を付けて該角溝部の開口と反対側に折り曲げた蓋部を形成する賦形工程と、
前記角溝部に前記開口を介して液状の樹脂原料を注入する注入工程と、
前記角溝部と前記蓋部との間の折り目で該蓋部を折り曲げて角溝部の開口を塞ぐことで、得るべき樹脂成形体の外形に合わせた角筒状の型枠を形成して、該型枠で保持した状態で前記樹脂原料を硬化させる成形工程とを有することを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、角筒状の型枠を形成することができるので、全ての縁部が稜角となる樹脂成形体を簡単に形成することができる。しかも、賦形工程では、シートに折り目を付けつつ該シートを折り曲げているので、該賦形工程を短くすることができる。
【0007】
請求項2に係る発明では、前記賦形工程は、2つの賦形手段からなる賦形組を複数組用いて、前記シートに折り目を付けて折り曲げる折曲段階を段階的に行い、
前記賦形工程は、最初の折曲段階で形成される折り目の少なくとも1つを該最初の折曲段階以降の折曲段階において賦形組で押さえて、他の折り目を付けつつ前記シートの折り曲げを行うことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、最初の折曲段階で形成された折り目を基準として位置決めした状態で最初の折曲段階以降の折曲段階を行うことで、シートがずれ難く、外形精度に優れた樹脂成形体を形成することができる。
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項3に係る発明の樹脂成形体の製造装置は、
供給源から連続して繰り出されるシートから形成された型枠で液状の樹脂原料を硬化させて樹脂発泡体を連続的に成形する製造装置において、
2つの賦形手段からなる賦形組を少なくとも1組有し、該賦形組を通過する前記シートに、シート進行方向に沿って付けた折り目で折り曲げて上方に開口する角溝部を形成すると共に、該角溝部の少なくとも一方の側壁片に折り目を付けて折り曲げて該角溝部の開口を塞ぐ蓋部を形成する成形手段を備えたことを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、成形手段によって角筒状の型枠を形成することができ、全ての縁部が稜角となる樹脂成形体を簡単に形成することができる。
【0009】
請求項4に係る発明では、前記成形手段は、一方の賦形手段に設けられた隅角と該隅角に噛み合うように他方の賦形手段に設けられた稜角との間を通過する前記シートに折り目を付けつつ折り曲げるよう構成された賦形組を複数有し、該複数の賦形組は、少なくとも1箇所の前記隅角とこの隅角に対応する前記稜角とが、前記シート進行方向に直線的に並ぶように配置されたことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、各賦形組においてシートに折り目を付けつつ折り曲げることができ、シートからなる角溝部を形成するラインを短くすることができる。しかも、複数の賦形組は、少なくとも1箇所の隅角とこの隅角に対応する稜角とが、シート進行方向に直線的に並ぶように配置されているので、シートがずれ難く、外形精度に優れた樹脂成形体を形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る樹脂成形体の製造方法および製造装置によれば、全ての縁部が稜角となる樹脂成形体を簡単に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好適な実施例に係る樹脂成形体の製造装置を示す側面図である。
【図2】実施例の製造装置を示す概略説明図であって、(a)は図1のA−A線断面に対応し、(b)は図1のB−B線断面に対応し、(c)は図1のC−C線断面に対応する。
【図3】実施例の製造装置を示す概略説明図であって、(a)は図1のD−D線断面に対応し、(b)は図1のE−E線断面に対応し、(c)は図1のF−F線断面に対応する。
【図4】実施例の樹脂成形体を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る樹脂成形体の製造方法および製造装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。図4に示すように、実施例では、短手方向中央部に長手方向に亘って凹溝72を厚み方向の一面に有する長尺な樹脂成形体70を製造する場合を説明する。以下の説明では、型枠18を構成するシート10のシート進行方向(シート10の長手方向)を基準として方向を指称し、シート進行方向に直交する水平方向(シート10の短手方向)を左右方向とし、製造装置20においてシート進行方向上流側から下流側を見た状態で左右を指し示す。
【実施例】
【0013】
図1に示すように、実施例の製造装置20は、シート10を連続的に繰り出すシート供給手段22と、この供給手段22で繰り出されたシート10を所定形状の型枠18に賦形する成形手段30と、この成形手段30で賦形されたシート10に樹脂原料64(図2参照)を供給する原料供給手段60とを備えている。また、製造装置20は、型枠18内で樹脂原料64を硬化させる手段として、ヒータ等の加熱手段66を備えている。原料供給手段60で型枠18に供給される樹脂原料64は、流動性がある液状であるものが用いられる。そして、樹脂成形体70(図4参照)としては、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリオレフィン発泡体、塩化ビニル発泡体、シリコン発泡体、ラテックスゴム発泡体、アクリル発泡体等の軟質または硬質の発泡体やソリッド体を製造可能である。なお、樹脂原料64を硬化させる手段は、自己反応型の合成樹脂であれば省略することも可能である。
【0014】
前記シート供給手段22は、シート10が巻き掛けられた供給ロール(供給源)24と、この供給ロール24から引き出したシート10を所要速度で引っ張る繰出ローラ26とを備えている(図1参照)。実施例の繰出手段は、加熱手段66のシート進行方向下流側に配置された一対の繰出ローラ26,26で構成され、成形手段30で合掌状に重ね合わされたシート10の重合部10aを間に挟んだ一対の繰出ローラ26,26を回転駆動することで、シート10を引っ張るようになっている。なお、シート供給手段22は、シート10の厚み方向を上下に沿わせた姿勢で供給ロール24からシート10を繰り出すよう構成されている。シート10としては、クラフト紙、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、繊維、織物、不織布等を単独または複合して用いてもよい。なお、シート10は、後述するように折り目14をつける必要からクラフト紙が好ましく、樹脂原料64を注入するときの液漏れを回避するために、クラフト紙にポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルム等の樹脂フィルムを積層して用いるのがより好ましい。また、得られた樹脂成形体70のシート10からの容易な離型を図るために、シート10は、シリコン樹脂、ポリメチレンペンテン樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、油や界面活性剤等で表面処理したものであってもよい。なお、供給ロール24と成形手段30との間に、シート10を誘導する誘導手段28を設けてもよい。
【0015】
図1または図2に示すように、成形手段30は、シート10を折り目14が付くように折り曲げて角筒状の型枠18を成形するものであって、ガイド(一方の賦形手段)32,42およびローラ(他方の賦形手段)36,46,52からなる賦形組31,41,51を複数備えている。実施例の成形手段30は、第1、第2および第3賦形組31,41,51の3組を備え、第1および第2賦形組31,41は、ガイド32,42に設けられた隅角と該隅角に整合するようにローラ36,46に設けられた稜角との間を通過するシート10に折り目14を付けると同時にシート10を折り曲げるよう構成されている。ここで、成形手段30は、第1および第2賦形組31,41にシート10が順次通過する過程で段階的に折り目14を付けつつ該シート10を折り曲げて、シート10からなる上方に開口する角溝部12を形成している。第3賦形組51は、ガイド42とローラ52との間を通過する角溝部12の少なくとも片方の側部(実施例では左壁片)に対して該ガイド42の稜角によって折り目14を付けて、該角溝部12の開口と反対側にシート10を折り曲げた蓋部16を形成するようになっている。
【0016】
図1に示すように、第1賦形組31は、供給ロール24のシート進行方向下流側に配設されている。第1賦形組31は、シート進行方向に連通すると共に上方に開口する溝形状の第1ガイド32と、この第1ガイド32の上方に配置され、第1ガイド32に噛み合う第1ローラ36とから構成され、第1ガイド32と第1ローラ36との間をシート10が通るようになっている(図2(a)参照)。第1ガイド32には、内底面から上方に突出する角形の第1凸条34がシート進行方向に延在するように設けられている。第1ガイド32は、内側面と内底面とがなす隅角、内底面と第1凸条34の側面とがなす隅角、第1凸条34の上面と側面とがなす稜角の夫々が、面が交差する所謂「ピン角」になっている。第1ローラ36は、シート進行方向に直交する水平軸周りに回転可能に支持されている。第1ローラ36には、外周面に凹状の第1凹条38が全周に亘って設けられ、この第1凹条38が第1ガイド32の第1凸条34に整合する角溝状に形成されている。第1ローラ36は、端面と外周面とがなす稜角、第1凹条38の底面と第1凹条38の側面とがなす隅角、第1凹条38の側面と外周面とがなす稜角の夫々が、第1ガイド32の対応する角に合わせて面が交差する所謂「ピン角」になっている。
【0017】
前記第1賦形組31は、第1ガイド32の右内側面および第1凸条34の右側面の間の幅と、第1ローラ36における右端面および第1凹条38の右側面の間の幅とが整合するように設定されており、第1ローラ36における第1凹条38より右側部分が第1ガイド32の第1凸条34および右内側面との間に嵌り込むようになっている(図2(a)参照)。第1賦形組31は、第1ガイド32の左内側面および第1凸条34の左側面の間の幅が、第1ローラ36における左端面および第1凹条38の左側面の間の幅より大きく設定されており、第1ガイド32の左内側面と第1ローラ36の左端面とが離間するようになっている。なお、賦形組31,41,51においてガイド32,42とローラ36,46,52とが整合するとは、シート10の通過を許容し得る僅かな間隔(少なくともシート10の厚み分)をあけて、ガイド32,42およびローラ36,46,52の互いの面が平行な関係で対向することをいう。
【0018】
図1に示すように、第2賦形組41は、第1賦形組31のシート進行方向下流側に配設されている。第2賦形組41は、シート進行方向に連通すると共に上方に開口する溝形状の第2ガイド42と、この第2ガイド42の上方に配置され、第2ガイド42に噛み合う第2ローラ46とから構成され、第2ガイド42と第2ローラ46との間をシート10が通るようになっている(図2(b)参照)。第2ガイド42には、内底面から上方に突出する角形の第2凸条44がシート進行方向に延在するように設けられている。第2ガイド42は、内側面と内底面とがなす隅角、内底面と第2凸条44の側面とがなす隅角、第2凸条44の上面と側面とがなす稜角の夫々が、面が交差する所謂「ピン角」になっている。第2ローラ46は、シート進行方向に直交する水平軸周りに回転可能に支持されている。第2ローラ46には、外周面に凹状の第2凹条48が全周に亘って設けられ、この第2凹条48が第2ガイド42の第2凸条44に整合する角溝状に形成されている。第2ローラ46は、端面と外周面とがなす稜角、第2凹条48の底面と第2凹条48の側面とがなす隅角、第2凸条48の側面と外周面とがなす稜角の夫々が、第2ガイド42の対応する角に合わせて面が交差する所謂「ピン角」になっている。第2賦形組41は、第2ガイド42の右内側面および第2凸条44の右側面の間の幅と、第2ローラ46の右端面および第2凹条48の右側面の間の幅とが整合するように設定されており、第2ローラ46における第2凹条48より右側部分が第2ガイド42の右内側面および第2凸条44の間に嵌り込むようになっている。第2賦形組41は、第2ガイド42の左内側面および第2凸条44の左側面の間の幅と、第2ローラ46の左端面および第2凹条48の左側面の間の幅とが整合するように設定されており、第2ローラ46における第2凹条48より左側部分が第2ガイド42の左内側面および第2凸条44の間に嵌り込むようになっている。
【0019】
図1に示すように、第3賦形組51は、第2賦形組41における第2ガイド42と第2ローラ46とによるシート10の挟み込み位置よりシート進行方向下流側でシート10を挟むように配設されている。実施例の第3賦形組51は、シート進行方向に直交する水平軸周りに回転可能に支持された第3ローラ52と、この第3ローラ52の下方に配置された第2賦形組41の第2ガイド42とから構成されている(図2(c)参照)。すなわち、実施例の成形手段30では、第2賦形組41と第3賦形組51との間で、一方のガイド(賦形手段)42を共用している。より具体的には、第3賦形組51は、第2ガイド42の左内側面を規定する左壁部42aの上面に対して、外周面を向かい合わせて第3ローラ52が配設されており、第2ローラ46の左側に位置する第3ローラ52と左壁部42aの上面との間をシート10が通過するようになっている。第3ローラ52は、第2賦形組41の第2ローラ46より径が小さく設定され、第2ローラ46の回転軸より第3ローラ52の回転軸がシート進行方向下流側に配置されている(図1参照)。
【0020】
第1賦形組31および第2賦形組41は、少なくとも1箇所の隅角とこの隅角に対応する稜角とが、シート進行方向に直線的に並ぶように配置されている(図2参照)。具体的には、成形手段30は、第1賦形組31における第1ガイド32の第1凸条34と第2賦形組41における第2ガイド42の第2凸条44とが、シート進行方向に直線的に並んでいる(図2(a)および(b)参照)。すなわち、第2賦形組41における第2ガイド42の第2凸条44および第2ローラ46の第2凹条48の噛み合い位置が、第1賦形組31における第1ガイド32の第1凸条34および第1ローラ36の第1凹条38の噛み合い位置に対して、シート進行方向に沿う直線ライン上に配置されている。実施例の成形手段30では、第1ガイド32の右内側面と第2ガイド42の右内側面とがシート進行方向に直線的に並ぶと共に、第1ローラ36の右端面と第2ローラ46の右端面とがシート進行方向に直線的に並んでいる。なお、実施例の成形手段30では、第1賦形組31の水平方向の整合面(第1ガイド32の内底面と第1ローラ36の外周面とが整合する位置)と、第2賦形組41の水平方向の整合面(第2ガイド42の内底面と第2ローラ46の外周面とが整合する位置)とが、同一水平面上に位置している。
【0021】
前記成形手段30は、第1〜第3賦形組31,41,51および原料供給手段60の注入ヘッド62のシート進行方向下流側に位置して、角溝部12と蓋部16との間の折り目14で蓋部16を折り曲げて角溝部12の開口を塞ぐ案内手段54を備えている(図1参照)。案内手段54は、板状体54aにシート進行方向に貫通形成された図示しない案内溝に賦形組31,41,51で賦形されたシート10を通すことで、シート10を案内して蓋部16を折り曲げたり、角溝部12の右側の側壁片と重合するように蓋部16の先端部を折り目14を付けて折り曲げるようになっている(図3(b),(c)参照)。
【0022】
前記製造装置20には、成形手段30の第3賦形組51のシート進行方向下流側に位置して、原料供給手段60の注入ヘッド62が設けられている(図1参照)。原料供給手段60は、第1〜第3賦形組31,41,51を通過して、上方に開口する器状に形成されたシート10の角溝部12に対して注入ヘッド62を介して上方から樹脂原料64を注入するようになっている(図3(a)参照)。製造装置20は、注入ヘッド62のシート進行方向下流側に配置された成形手段30の案内手段54のシート進行方向下流側に位置して加熱手段66が設けられ、シート10からなる型枠18に充填された樹脂原料64を硬化している。なお、製造装置20には、加熱手段66のシート進行方向下流側に位置する付加設備として、内部に樹脂成形体70が成形された型枠18を切断する切断手段や、切れ込み手段で切り込みをいれたシート10をはぎ取るはぎ取り手段等を設けてもよい(何れも図示せず)。
【0023】
次いで、樹脂成形体70の製造方法について説明する。実施例の製造方法では、賦形組31,41,51に連続して繰り出される一連のシート10を通すことで、シート進行方向に沿って折り目14を付けつつ該折り目14で折り曲げて上方に開口する角溝部12を形成し、該角溝部12の少なくとも片側の側壁片に折り目14を付けて該角溝部12の開口と反対側に折り曲げた蓋部16を形成する賦形工程が行われる。また実施例の製造方法は、角溝部12に該角溝部12の開口を介して樹脂原料64を注入する注入工程と、角溝部12と蓋部16との間の折り目14で蓋部16を折り曲げて角溝部12の開口を塞ぐことで、得るべき樹脂成形体70の外形に合わせた角筒状の型枠18を形成して、型枠18で保持した状態で樹脂原料64を硬化させる成形工程とが少なくとも行われる。
【0024】
前記賦形工程において、供給ロール24から繰り出されたシート10は、第1賦形組31の第1ガイド32と第1ローラ36との間を通ることで、第1凸条34および第1凹条38の噛み合いによって下方に開口する凹部10bが形成される(図2(a)参照)。凹部10bの形成と同時にシート10には、第1賦形組31において第1ガイド32の右隅角と第1ローラ36の右稜角との噛み合いによって右下角の折り目14が付けられると共に、第1ガイド32の右内側面および第1ローラ36の右端面に挟まれてシート10の右側部が上方に持ち上げられて右下角の折り目14で折り曲げられる。次いでシート10は、第2賦形組41の第2ガイド42と第2ローラ46との間を通され、第2ガイド42の左隅角と第2ローラ46の左稜角との噛み合いによって左下角の折り目14が付けられると共に、第2ガイド42の左内側面および第2ローラ46の左端面に挟まれてシート10の左側部が上方に持ち上げられて左下角の折り目14で折り曲げられる(図2(b)参照)。ここで、シート10は、第2賦形組41において第2凸条44および第2凹条48の噛み合いによって第1賦形組31によって形成された凹部10bが保持されると共に、第2ガイド42の右内側面および第2ローラ46の右端面に第1賦形組31で立ち上げられたシート10の右側部が保持されつつ、該シート10の左側部が左下角の折り目14で折り曲げられる。このように、賦形工程は、第1賦形組31で行われる最初の折曲段階で形成される折り目14の少なくとも1つ(実施例では凹部10bおよび左下角の折り目)を該最初の折曲段階以降に行われる第2賦形組41による折曲段階において、第2賦形組41で押さえて他の折り目14を付けつつシート10の折り曲げを行っている。
【0025】
前記賦形工程において、第2賦形組41による折曲段階を経たシート10は、第3賦形組51をなす第2ガイド42の左壁部42aと第3ローラ52との間を通される。第3賦形組51による折曲段階では、左壁部42aの上面と内側面とがなす稜角によって該シート10の左側部に左上角の折り目14が付けられると共に、左壁部42aの上面と第3ローラ52とに挟まれてシート10の左側部が左上角の折り目14で左方へ折り曲げられる(図2(c)参照)。このように、賦形工程は、賦形組31,41,51を3組用いて、シート10に折り目14を付けて折り曲げる折曲段階を段階的に行っている。そして、賦形工程において第1および第2賦形組31,41によってシート10を折り曲げることで、液状の樹脂原料64を受ける器部分となる角溝部12がシート進行方向に連続的に形成され、第3賦形組51によって最終的に角溝部12の開口を塞ぐ部分となる蓋部16を、角溝部12の開口から退避させた状態で形成している。
【0026】
前記製造装置20では、最終段の賦形組51から繰り出されたシート10の角溝部12に対して、樹脂原料64を注入ヘッドから連続または間欠的に供給する注入工程を経た後に(図3(a)参照)、案内手段54によって案内して蓋部16を左上角の折り目14で右方に折り曲げると共に蓋部16の先端部に折り目を付けることで(図3(b)参照)、角溝部12の開口を塞ぐように型閉すると共に蓋部16の先端部を角溝部12の右側壁片に重ね合わせ、シート進行方向に連通する角筒状の型枠18を形成する成形工程が行われる(図3(c)参照)。そして、成形工程では、樹脂原料64が充填された型枠18が加熱手段66で加熱されて発泡・硬化することで、角筒状の型枠18に合わせて樹脂成形体70が成形される。
【0027】
実施例によれば、成形手段30で折り目14を付けつつシート10を折り曲げて角筒状の型枠18を形成することができるので、全ての縁部が稜角となる樹脂成形体70を簡単に形成することができる。また、長尺な棒状の樹脂成形体を連続的に成形し得ると共に、樹脂成形体70の丸くなった縁を削る等の稜角とするための後加工を必要としないので、成形コストを大幅に削減し得る利点もある。しかも、賦形工程における各折曲段階では、各賦形組31,41,51においてシート10に折り目14を付けつつ該シート10を折り曲げているので、シート10に折り目14を付ける工程(手段)とシート10を折り曲げる工程(手段)とを分ける場合と比べて、シート10からなる角溝部12を形成するラインを短くすることができると共に、賦形工程を短縮することができる。更に、第1賦形組31においてシート10の凹部10bをなす隅角およびこの隅角に対応する稜角に対し、シート進行方向に直線的に並ぶように第2賦形組41において隅角およびこの隅角に対応する稜角が設けられ、最初の折曲段階で形成されたシート10の凹部10bをなす折り目14を基準として位置決めした状態で第2賦形組41において折曲段階を行っている。すなわち、第1賦形組31と第2賦形組41との間でシート10が位置ずれし難く、歪みの少ない型枠18を形成することができる。従って、外形精度に優れた樹脂成形体70を形成することができる。
【0028】
前記製造装置20は、賦形組31,41,51の一方の賦形手段として自由回転またはシート10に合わせて回転駆動するローラ36,46,52が採用されているので、ガイド32,42とローラ36,46,52との間を通るシート10の摺動負荷を軽減することができる。そして、シート10において型枠18の内面になる部位に当接する賦形手段としてローラ36,46,52を採用することで、シート10の賦形組31,41,51の通過により型枠18の内面を荒らすことなく、外周面が平滑な樹脂成形体70を成形することができる。また、成形手段30は、第3賦形組51のガイド42を第2賦形組41と共用しているので、設備を簡略化できると共にコンパクトにできる。
【0029】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、例えば以下のように変更することも可能である。
(1)シートの折り目は、直角に限定されず、鋭角であっても鈍角であっても任意に設定できる。すなわち、得られる樹脂成形体は、実施例の断面形状に限定されず、矩形状、台形状、菱形等の様々な形状に形成することができる。
(2)実施例では、賦形組を固定されたガイドと回転するローラとから構成したが、両方とも回転するローラで構成してもよい。
(3)賦形組の段数は、実施例の構成に限定されず、1段または2段であっても4段以上であってもよい。
(4)実施例では、第3賦形組の一方の賦形手段を第2賦形組と共用したが、各賦形組の賦形手段を夫々独立して設けてもよい。
(5)シートの折り目は、厚みの途中まで切れ込みをいれる所謂ハーフカットやミシン目状の切れ込みを予め行っていてもよい。
(6)実施例では、賦形組間の位置合わせを樹脂成形体の凹溝をなすシートの凹部で行ったが、これに限定されず、例えば最初の折曲段階で折り曲げられるシートの側部と底面とがなす角に設定してもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 シート,12 角溝部,16 蓋部,18 型枠,24 供給源(供給ロール),
30 成形手段,31 第1賦形組(賦形組),32 第1ガイド(賦形手段),
36 第1ローラ(賦形手段),41 第2賦形組(賦形組),
42 第2ガイド(賦形手段),46 第2ローラ(賦形手段),
51 第1賦形組(賦形組),52 第3ローラ(賦形手段),64 樹脂原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの賦形手段の間に連続して繰り出される一連のシートを通すことで、該シートのシート進行方向に沿って折り目を付けつつ該折り目で折り曲げて上方に開口する角溝部を形成し、該角溝部の少なくとも一方の側壁片に折り目を付けて該角溝部の開口と反対側に折り曲げた蓋部を形成する賦形工程と、
前記角溝部に前記開口を介して液状の樹脂原料を注入する注入工程と、
前記角溝部と前記蓋部との間の折り目で該蓋部を折り曲げて角溝部の開口を塞ぐことで、得るべき樹脂成形体の外形に合わせた角筒状の型枠を形成して、該型枠で保持した状態で前記樹脂原料を硬化させる成形工程とを有する
ことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
前記賦形工程は、2つの賦形手段からなる賦形組を複数組用いて、前記シートに折り目を付けて折り曲げる折曲段階を段階的に行い、
前記賦形工程は、最初の折曲段階で形成される折り目の少なくとも1つを該最初の折曲段階以降の折曲段階において賦形組で押さえて、他の折り目を付けつつ前記シートの折り曲げを行う請求項1記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
供給源から連続して繰り出されるシートから形成された型枠で液状の樹脂原料を硬化させて樹脂発泡体を連続的に成形する製造装置において、
2つの賦形手段からなる賦形組を少なくとも1組有し、該賦形組を通過する前記シートに、シート進行方向に沿って付けた折り目で折り曲げて上方に開口する角溝部を形成すると共に、該角溝部の少なくとも一方の側壁片に折り目を付けて折り曲げて該角溝部の開口を塞ぐ蓋部を形成する成形手段を備えた
ことを特徴とする樹脂成形体の製造装置。
【請求項4】
前記成形手段は、一方の賦形手段に設けられた隅角と該隅角に噛み合うように他方の賦形手段に設けられた稜角との間を通過する前記シートに折り目を付けつつ折り曲げるよう構成された賦形組を複数有し、該複数の賦形組は、少なくとも1箇所の前記隅角とこの隅角に対応する前記稜角とが、前記シート進行方向に直線的に並ぶように配置された請求項3記載の樹脂成形体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−250433(P2012−250433A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124580(P2011−124580)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】