説明

樹脂成形装置

【課題】粉砕機をトリミング工程に接近して配置しても不良品発生などの不具合が生じるのを防止し、樹脂成形装置の設置スペースを小さくする。
【解決手段】樹脂素材で成形された成形品を、トリミング工程で製品とスクラップとに切断し、このスクラップを粉砕機に払い出して粉砕する構成の樹脂成形装置であって、トリミング工程には、スクラップを載せて水平状態から傾斜状態に作動することにより、このスクラップを粉砕機30の投入口34に向けて払い出すスライダーレールが設けられている。粉砕機30には、スライダーレールの作動に連動して投入口を開閉するシャッター40が設けられている。シャッター40は、スライダーレールが水平状態から傾斜状態に作動してスクラップを払い出すときにのみ、粉砕機の投入口34を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の樹脂素材を真空成形機などによって所定の形状にプレス成形された成形品を製品とスクラップとに切断した後、スクラップを粉砕機で粉砕する形式の樹脂成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の成形装置は、例えば特許文献1に開示された技術が既に知られている。この技術では、シート状の樹脂素材をプレス成形工程において所定の形状の成形品を成形し、この成形品をトリミング工程で製品とスクラップとに切断している。そして、トリミング工程では、製品とは別にスクラップを粉砕機に向けて払い出し、この粉砕機内でスクラップを粉砕している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−219301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉砕機でスクラップを粉砕しているとき、その粉砕屑がトリミング工程やプレス工程にまで飛散して不良品発生の原因となる。この対策として、粉砕機をトリミング工程から離れて配置し、あるいは深いピット内に組み込んでいるが、その分、樹脂成形装置の設置スペースが増加する。このため、設備のコンパクト化を目的とした樹脂成形装置には対応できない。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、粉砕機をトリミング工程に接近して配置しても不良品発生などの不具合が生じるのを防止し、樹脂成形装置の設置スペースを小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
シート状の樹脂素材から所定の形状にプレス成形された成形品を、トリミング工程で製品とスクラップとに切断し、このスクラップを粉砕機に払い出して粉砕する構成の樹脂成形装置であって、トリミング工程には、製品から切り離されたスクラップを載せて水平状態から傾斜状態に作動することにより、このスクラップを粉砕機の投入口に向けて払い出すスライダーレールが設けられている。粉砕機には、スライダーレールの作動に連動して投入口を開閉するシャッターが設けられている。このシャッターは、スライダーレールが水平状態から傾斜状態に作動してスクラップを払い出すときにのみ、粉砕機の投入口を開放するように設定されている。
【0007】
この構成によれば、粉砕機においてスクラップが粉砕されている間は投入口がシャッターで閉鎖されており、粉砕中の粉砕屑がトリミング工程やプレス成形工程にまで飛散するのを防止できる。この結果、粉砕機をトリミング工程に接近して配置しても不良品発生などの不具合が生じるのを避けることができ、これまでのように粉砕機をトリミング工程から離れて配置したり、深いピット内に組み込んだりする必要がなく、その分、樹脂成形装置の設置スペースを小さくできる。
また、トリミング工程からスクラップを払い出すためにスライダーレールが傾斜状態に作動したときに、これに連動してシャッターを開放させていることから、シャッターを開閉させるための専用の駆動源が不要になるのはもちろんのこと、スクラップの払い出しとシャッターの開閉とのタイミング設定が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】樹脂成形装置の概要を表した正面図。
【図2】樹脂成形装置の一部を拡大して表した正面図。
【図3】粉砕機を表した断面図。
【図4】粉砕機を投入口側から表した斜視図。
【図5】粉砕機を投入口の背面側から表した斜視図。
【図6】シャッターを作動させる連動構成を表したスケルトン図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図1および図2に示されている樹脂成形装置では、紙面で奥側に位置する成形工程(図示省略)においてシート状の樹脂素材が所定の形状の成形品がプレス成形された後、図示のトリミング工程(トリミング機10)に送られてくる。トリミング機10は、成形装置の支柱12に沿って個々に昇降可能な上型14および下型16を備えている。
つまり、これらの上型14および下型16は、それぞれのシリンダ15,17の駆動によって型締め及び型開きが行われる。そして、上型14と下型16との間に成形品が送り込まれて型締めされると、その成形品が製品(図示省略)とスクラップ50(図2)とに切断される。
【0010】
トリミング機10の上型14と下型16とが型開き状態になったとき、製品は真空吸引によって上型14側に吸着されて上昇しており、スクラップ50は下型16側に残されている。そして、上型14側に吸着されている製品は、トリミング工程における製品払い出しユニットのシュータ(図示省略)上に落とされて成形装置の側方(図1の右方)へ払い出される。
一方、スクラップ50は図2で示すスライダーレール20により、成形装置の側方(図1及び図2の右方)に配置されている粉砕機30に向けて払い出される。
【0011】
スライダーレール20の両端部は、成形装置の両側において支柱12にそれぞれ固定された昇降用シリンダー22,24のロッドに連結されている。したがって、昇降用シリンダー22,24の制御によってスライダーレール20を昇降させることができる。また、図2の実線で示すように一方の昇降用シリンダー22のロッドを引き込み、他方の昇降用シリンダー24のロッドを押し出す制御により、スライダーレール20を傾斜させることができる。
スライダーレール20は、その最下降位置において下型16側に残されているスクラップ50を下側から受け、このスクラップ50を載せたまま、図2の仮想線で示す位置まで上昇する。この後、スライダーレール20を図2の実線で示すように傾斜させることにより、スクラップ50を粉砕機30に向けて払い出すことができる。
【0012】
粉砕機30のハウジング32は、図3及び図4で示すようにスクラップ50の投入口34を有する箱型をしており、その内部にはモーター等(図示省略)によって回転駆動する複数個の粉砕歯車36が設けられている。そして、ハウジング32は、その投入口34を開閉するための板状のシャッター40を備えている。このシャッター40は、ハウジング32における投入口34の近くの両側壁上部に回転自在に支持されたシャッター軸42に固定され、このシャッター軸42と共に回転することで投入口34を開閉できるようになっている。シャッター40の下端部には緩衝片40aがヒンジ40bによって取付けられている。この緩衝片40aは、図3で示すように投入口34を閉ざしたときのシャッター40が該投入口34の下縁等に干渉してもその衝撃を緩和するとともに、投入口34を確実に閉塞する機能を果たす。
なお、シャッター軸42には、主としてシャッター40の自重に基づいて図面の時計回り方向(投入口34を閉ざす方向)の回転力が作用している。
【0013】
図4及び図5で示すように、シャッター軸42の一端はハウジング32の側壁を貫通して外に突出している。この突出した部分のシャッター軸42に、シャッターレバー44が支持され、かつ、ナット46を締結することにより、シャッター軸42とシャッターレバー44とが固定されている。このシャッターレバー44の先端部には、ローラ48が回転自在に支持されている。このローラ48は、シャッター40に作用している前記の回転力により、図5に示す昇降ブロック26に常に接触している。
昇降ブロック26は、スライダーレール20を前述のように昇降制御する両昇降用シリンダー22,24のうち、図2の右側に位置する昇降用シリンダー24によるスライダーレール20の作動に連動して昇降するようになっている。すなわち、スライダーレール20が図2の仮想線で示す水平状態から実線で示す傾斜状態に作動すると昇降ブロック26は下降し、スライダーレール20が傾斜状態から水平状態に作動すると昇降ブロック26は上昇する。
【0014】
図6の仮想線で示すように昇降ブロック26が上昇しているときのシャッターレバー44は、シャッター40が粉砕機30の投入口34を閉ざした回転位置に保持されている。そこで、昇降ブロック26が図6の仮想線で示す位置から下降すると、シャッターレバー44がシャッター軸42と共に図6の実線で示す位置に回転してその位置に保持され、シャッター40は図3の仮想線で示すように投入口34を開放する。この結果、スライダーレール20が図2の仮想線で示す水平状態から実線で示す傾斜状態に作動してスクラップ50を払い出すときにのみ、シャッター40が粉砕機30の投入口34を開放し、それ以外のときの投入口34はシャッター40で閉ざされている。
なお、シャッターレバー44にはシャッター軸42を挿通させる複数個の調整用軸孔45が設けられている(図4及び図5)。これらの調整用軸孔45を選択してシャッター軸42を挿通させることにより、シャッターレバー44の回転支点であるシャッター軸42の軸心とローラ48との間の距離を調整することができる。
【0015】
以上のように構成された成形装置においては、トリミング機10において製品から分断されたスクラップ50が、図2の実線で示す傾斜状態に作動したスライダーレール20によって払い出されるときには粉砕機30の投入口34が開放され、この粉砕機30内にスクラップ50が投入される。そして、スライダーレール20が図2の仮想線で示す水平状態に作動することにより、図3の実線で示すように投入口34はシャッター40で閉ざされる。したがって、粉砕機30によってスクラップ50が粉砕されている間は、粉砕屑がトリミング工程のトリミング機10やプレス成形工程にまで飛散することが防止される。この結果、これまでのように粉砕機30をトリミング機10から離れて配置したり、深いピットを設けてその中に粉砕機30を組み込んだりすることが不要になり、樹脂成形装置のコンパクト化が可能になる。
既に説明したようにスライダーレール20が水平状態から傾斜状態に作動することに連動してシャッター40が粉砕機30の投入口34を開放し、スライダーレール20が水平状態に戻ればシャッター40の自重等によって投入口34を閉鎖するので、このシャッター40を開閉させるための専用の駆動源が不要になる。また、スライダーレール20の作動によるスクラップ50の払い出しと、シャッター40による投入口34の開閉とのタイミング設定も容易になる。
【符号の説明】
【0016】
10 トリミング機
20 スライダーレール
30 粉砕機
34 投入口
40 シャッター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の樹脂素材から所定の形状にプレス成形された成形品を、トリミング工程で製品とスクラップとに切断し、このスクラップを粉砕機に払い出して粉砕する構成の樹脂成形装置であって、
トリミング工程には、製品から切り離されたスクラップを載せて水平状態から傾斜状態に作動することにより、このスクラップを粉砕機の投入口に向けて払い出すスライダーレールが設けられ、粉砕機には、スライダーレールの作動に連動して投入口を開閉するシャッターが設けられ、このシャッターは、スライダーレールが水平状態から傾斜状態に作動してスクラップを払い出すときにのみ、粉砕機の投入口を開放するように設定されている樹脂成形装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−93271(P2011−93271A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251808(P2009−251808)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】