説明

樹脂発泡成形品の製造方法、及び、樹脂発泡成形品の製造設備

【課題】品質に優れた樹脂発泡成形品を効率良く製造することができる樹脂発泡成形品の製造方法、及び、樹脂発泡成形品の製造設備を提供すること。
【解決手段】帯状の樹脂発泡シートの表面に樹脂フィルムを熱ラミネートして積層発泡シートを作製しつつ得られた積層発泡シートを熱成形装置で熱成形して樹脂発泡成形品を作製する樹脂発泡成形品の製造方法であって、樹脂フィルムが熱ラミネートされる樹脂発泡シートの前記表面を前記熱ラミネート前に加熱する予備加熱工程を実施することを特徴とする樹脂発泡成形品の製造方法などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡成形品の製造方法、及び、樹脂発泡成形品の製造設備に関し、より詳しくは、帯状の樹脂発泡シートの表面に樹脂フィルムを熱ラミネートして積層発泡シートを作製しつつ得られた積層発泡シートを熱成形装置で熱成形して樹脂発泡成形品を作製する樹脂発泡成形品の製造方法、及び、そのような製造方法に用いられる樹脂発泡成形品の製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂が用いられてなる樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ともいう)を熱成形した発泡トレーなどの樹脂発泡成形品が広く用いられており、この種の容器などを作製するのに際しては、例えば、数十cmから1mを超えるような広幅な帯状の発泡シートがロール状に巻き取られてなる原反ロールと呼ばれるシートロールを用いた連続的な製造方法が採用されている。
例えば、発泡トレーの製造方法においては、発泡シートに製品形状を形成させるための成形型などを備えた熱成形装置と、形成された製品形状の輪郭に沿って発泡シートを打抜き刃型で切断して発泡シートから製品を取り出すための打抜き装置などを備えた製造ラインに前記原反ロールから発泡シートを繰り出させて連続供給し、前記成形型で発泡シートの先端側から順に発泡トレー形状を形成させるとともに形成された発泡トレーを前記打抜き刃型で順に打抜いて発泡シートから取り出すような生産方法が採用されている。
【0003】
ところで、食品などを収容させるための発泡トレーでは、容器強度を向上させる目的や装飾性を付与することを目的として内面、外面、或いは、内外両面に樹脂フィルムを貼着させたものが広く用いられている。
このような容器を形成させる際には、樹脂フィルムを積層させた発泡シートを一旦作製して、この樹脂フィルムが積層された発泡シートを熱成形装置で成形加工する方法が採用されている。(以下、「発泡シート」との用語は、特段の断りがない限りにおいて樹脂フィルムの積層されていないもののみを意図して用い、上記のような樹脂フィルムの積層された発泡シートには「積層発泡シート」との用語を用いる。)
【0004】
なお、この積層発泡シートを作製する方法としては、発泡シートを押出機で押出して作製するのに際して同じダイから樹脂フィルムを共押出して積層させる方法や、予め作製しておいた発泡シートの上にTダイを用いて溶融樹脂をフィルム状に押出して該樹脂が冷え固まる前に発泡シートに接着させる方法などが知られている。
また他には、別々に作製した帯状の発泡シートと樹脂フィルムとを重ね合わせた状態にして所定温度に加熱された加熱ロールを樹脂フィルム側に当接させつつ回転させて樹脂フィルムとの当接位置を樹脂フィルムの長さ方向に移動させることにより樹脂フィルムを発泡シートに順に加熱圧着させる熱ラミネートと呼ばれる方法などが知られている(下記特許文献1参照)。
【0005】
この熱ラミネートを行う方法は、貼り合わせる樹脂フィルムの変更が容易で、多品種少量生産に適しており、例えば、色違いの容器を作製するような場合であれば、発泡シートからなる原反ロールと、貼り合わせる樹脂フィルムが巻き取られてなるフィルムロールとを用意し、熱成形装置の手前にラミネート装置を設けて原反ロールから繰り出した発泡シートにフィルムロールから繰り出した樹脂フィルムを熱ラミネートさせ、得られた積層発泡シートを熱成形装置に導入して所定数量の容器を作製した後で、前記原反ロールをそのままにしてフィルムロールだけ架け替えれば引き続き色違いの容器を作製させることができる。
【0006】
なお、このような場合のみならず積層発泡シートで樹脂発泡成形品を作製する場合においては製造作業効率を向上させることが求められていることから、上記のような熱ラミネートによって積層発泡シートを形成させつつ得られた積層発泡シートを引き続き熱成形する方法が好適であるといえる。
【0007】
しかし、近年、生産技術の向上によって熱成形装置での成形に要する時間(タクトタイム)が短縮されるようになってきており、積層発泡シートを作製するところから最終的に樹脂発泡成形品が積層発泡シートから取り出されるところまでの一連の流れの中で熱ラミネートの工程が全体の律速段階となるような状況になりつつある。
このような問題に対して、加熱ローラの回転数を増大させるなどして熱ラミネートの時間短縮を図ろうとすると樹脂フィルムが発泡シートに十分接着されずに熱成形時に樹脂フィルムにシワが形成されたりするおそれを有する。
また、一方で、加熱ロールの温度を上昇させて熱ラミネートに要する時間を短縮させることも考え得るが、その場合には、何等かのトラブルによってラインが停止した際には樹脂フィルムが加熱ロールに接触した状態で停止するため樹脂フィルムが溶断されるおそれを有する。
【0008】
このようなことから樹脂発泡シートと樹脂フィルムとを熱ラミネートして積層発泡シートを作製しつつ得られた積層発泡シートを熱成形装置に供給して樹脂発泡成形品を作製する樹脂発泡成形品の製造方法においては品質に優れた樹脂発泡成形品を効率良く製造することが難しくなってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−046951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、品質に優れた樹脂発泡成形品を効率良く製造することができる樹脂発泡成形品の製造方法、及び、樹脂発泡成形品の製造設備を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための樹脂発泡成形品の製造方法に係る本発明は、帯状の樹脂発泡シートの表面に樹脂フィルムを熱ラミネートして積層発泡シートを作製しつつ得られた積層発泡シートを熱成形装置で熱成形して樹脂発泡成形品を作製する樹脂発泡成形品の製造方法であって、樹脂フィルムが熱ラミネートされる樹脂発泡シートの前記表面を前記熱ラミネート前に加熱する予備加熱工程を実施することを特徴としている。
【0012】
また、樹脂発泡成形品の製造設備に係る本発明は、帯状の樹脂発泡シートの表面に樹脂フィルムを熱ラミネートして積層発泡シートを作製するラミネート装置と、前記積層発泡シートを熱成形する熱成形装置とが備えられており、前記ラミネート装置で前記積層発泡シートを作製しつつ該積層発泡シートを前記熱成形装置で熱成形して樹脂発泡成形品を作製し得るように前記ラミネート装置と前記熱成形装置とが配置されている樹脂発泡成形品の製造設備であって、樹脂フィルムが熱ラミネートされる樹脂発泡シートの前記表面を前記熱ラミネート前に加熱するための予備加熱装置がさらに備えられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、樹脂フィルムがラミネートされる発泡シートの表面を前記熱ラミネート前に加熱する予備加熱工程が実施される。
従って、加熱された発泡シートに樹脂フィルムが重ね合わされた時点で前記発泡シートの熱を樹脂フィルムが受け取ることになり熱ラミネート時における樹脂フィルムの温度上昇を発泡シートから受ける熱で促進させることができる。
すなわち、樹脂フィルムと発泡シートとの接着力不足を招くおそれを抑制しつつ熱ラミネートに要する時間を短縮させることができ、品質に優れた樹脂発泡成形品を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の樹脂発泡成形品の製造方法に使用する設備構成を示す図((a)平面図、(b)正面図)。
【図2】図1(b)において「X」で示されている領域の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の樹脂発泡成形品の製造方法について、容器内面が樹脂フィルムで構成された発泡トレーを製造する場合を例にして説明する。
図1は、発泡トレーの製造方法に使用する設備の構成を示す図で、正面視左側から右側に向けた方向が製造ラインの流れ方向となっている。
なお、図1(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
図2は、図1(b)において「X」で示されている領域を拡大した図であり、(a)は発泡トレーを製造する前の様子を示すもので、(b)は発泡トレー製造中の様子を示すものである。
【0016】
この図においては、符号1が長尺帯状の発泡シートが巻回されてなる原反ロールを表しており、符号2が長尺帯状の樹脂フィルムが巻回されてなるフィルムロールを表している。
また、符号3は、前記原反ロール1から繰り出される発泡シート11と、前記フィルムロール2から繰り出される樹脂フィルム21とを熱ラミネートさせるためのラミネート装置であり、符号4は、前記ラミネート装置3で作製された積層発泡シート12を熱成形するための熱成形装置である。
なお、本実施形態に係る発泡トレーの製造設備には、前記原反ロール1から繰り出された発泡シート11を加熱するための予備加熱装置5が、前記ラミネート装置3の上流側に備えられている。
さらに、本実施形態に係る発泡トレーの製造設備には、前記熱成形装置4で熱成形された積層発泡シート12を熱成形装置4での一回の熱成形分ごとに切断する切断装置6と、該切断装置6で切断された積層発泡シート12を打抜いて発泡トレー10を切り出す打抜き装置7と、該打抜き装置7で切り出された発泡トレー10を搬送するための搬送装置8と、前記発泡トレー10が切り出された後の端材(トリミングロス)を破砕する破砕装置9とが備えられている。
【0017】
これらの図にも示されているように本実施形態に係る発泡トレーの製造設備は、前記ラミネート装置3で帯状の発泡シート11の表面に樹脂フィルム21を熱ラミネートして積層発泡シート12を作製しつつ得られた積層発泡シート12を熱成形装置4で熱成形して樹脂発泡成形品である発泡トレー10を作製し得るように構成されている。
具体的には、本実施形態に係る発泡トレーの製造設備には、ライン流れ方向上流側から下流側にかけて、予備加熱装置5、ラミネート装置3、熱成形装置4、切断装置6、打抜き装置7、搬送装置8の順に配置されており、当該製造設備は、前記予備加熱装置5よりもさらに上流側に前記原反ロール1をセットし得るように構成されている。
【0018】
なお、本実施形態においては、前記原反ロール1は、巻き芯の中心軸方向を略水平に配し、且つ、ライン流れ方向に対して前記中心軸方向を直交させる形で配されており、前記中心軸周りに回転自在となる状態で配されている。
該原反ロール1は、後述するラミネート装置3によって発泡シート11が引取られることによって回転して発泡シート11が自動的に繰り出され得るようにセットされており、前記ラミネート装置3に向けて発泡シート11を略水平に送り出し得るように配置されている。
【0019】
前記フィルムロール2には、前記発泡シート11と略同幅の長尺帯状の樹脂フィルム21が巻回されて備えられており、該フィルムロール2は、巻き芯の中心軸方向を原反ロール1の中心軸方向と平行させて前記ラミネート装置3のライン流れ方向上流側、且つ、垂直方向上方に配されている。
【0020】
即ち、本実施形態における発泡トレーの製造設備は、前記発泡シート11の上方に樹脂フィルム21を積層させた状態でこれらをラミネート装置3に供給し得るように構成されている。
【0021】
前記ラミネート装置3は、発泡シート11と樹脂フィルム21との積層体を挟み込んで前記樹脂フィルム21を発泡シート11の表面(上面)に熱ラミネートさせるための2本のローラが上下方向において対をなす形で備えられている。
この2本のローラの内、上方のローラは、その表面温度を調整可能な金属ローラ31(以下「加熱ローラ31」ともいう)であり、下方のローラは、金属ローラの表面に薄い弾性体層を形成させたローラ32(以下「ニップローラ32」ともいう)である。
この加熱ローラ31とニップローラ32とは、いずれも前記発泡シート11の長さ方向に対してその中心軸を直交させて配されており、前記発泡シート11や樹脂フィルム21の幅よりも長さが長くこれらを全幅にわたって挟み込み得るように備えられている。
【0022】
前記加熱ローラ31と前記ニップローラ32とは上下方向に位置調整可能な状態でラミネート装置3に備えられており、互いに距離を隔てて発泡トレー10の製造開始前における発泡シート11や樹脂フィルム21をセットする作業を容易にさせ得るばかりでなく、ニップ幅や発泡シート11と樹脂フィルム21との積層体に加える圧力を調整し得るようにして備えられている。
【0023】
該ラミネート装置3には、前記フィルムロール2から繰り出された樹脂フィルム21が加熱ローラ31とニップローラ32との間に導入されるまでに巻き掛けられる2本のローラがさらに備えられており、その内の一つは、前記加熱ローラ31とニップローラ32とのニップ直前において樹脂フィルム21を発泡シート11の表面に当接させるための押さえローラ33であり、もう一つのローラは、熱ラミネート後の樹脂フィルムにシワ等が生じることを防止すべく前記フィルムロール2と前記押さえローラ33との間において樹脂フィルム21に幅方向のテンションを加えるエキスパンダーローラ34である。
前記押さえローラ33は、その下端部を、前記加熱ローラ31と前記ニップローラ32とによる発泡シート11のニップ位置よりも僅かに下方に位置させて、前記加熱ローラ31の上流側に配置されており、樹脂フィルム21を上方から発泡シート11に押し付け得るように備えられている。
【0024】
なお、ここでは詳述しないが、当該ラミネート装置3には、加熱ローラ31の表面温度を制御する機構や、各ローラを軸周りに回転させるための動力機構、及び、その周速を制御する機構等が備えられている。
【0025】
このラミネート装置3によって樹脂フィルム21が熱ラミネートされる発泡シート11を予め加熱するための前記予備加熱装置5は、前記原反ロール1が配されている位置と、前記ラミネート装置3が配されている位置との間に配置されており、該予備加熱装置5には、前記発泡シート11を輻射加熱するための矩形盤形状の輻射加熱ヒーター51が備えられている。
前記原反ロール1よりも下流側、且つ、前記ラミネート装置3よりも上流側には、樹脂フィルム21が熱ラミネートされる表面11aを上方に向けて前記発泡シート11が搬送される区間が設けられており、前記輻射加熱ヒーター51は、発泡シート11の前記表面11aと対面するように熱放射面51aを下面側に向けて前記発泡シート11の搬送位置よりも上方に配されている。
【0026】
本実施形態における予備加熱装置5には、前記輻射加熱ヒーター51の上流側において発泡シート11を上下から挟んで当該予備加熱装置5への発泡シート11の導入位置を垂直方向において規定するための一対のガイドローラ52が備えられている。
当該ガイドローラ52は、通常、前記加熱ローラ31とニップローラ32とによるニップ位置と略同じ高さ位置に設けられており、発泡シート11をラミネート装置3との間で略水平に保持し得るように配されている。
【0027】
なお、前記輻射加熱ヒーター51は、前記熱放射面51aを真下に向けた状態で配されているわけではなく、前記熱放射面51aを真下よりも僅かにライン流れ方向下流側に向けて配されている。
即ち、予備加熱装置5には、ライン流れ方向に向けて先上りするような傾斜を熱放射面51aに持たせて前記輻射加熱ヒーター51が配されている。
従って、輻射加熱ヒーター51は、ライン流れ方向下流側に移動するに従って前記熱放射面51aと発泡シート11の表面11aとの距離が広がるように配置されている。
【0028】
ただし、当該予備加熱装置5は、発泡シート11を下方から持ち上げる機構53(以下、「シート位置調整機構53」ともいう)を有しており、該シート位置調整機構53によって発泡シート11と輻射加熱ヒーター51の熱放射面51aとの距離を調整し得るように形成されている。
より具体的には、前記シート位置調整機構53は、前記ガイドローラ52とは対照的に輻射加熱ヒーター51の下流側に配されており、前記発泡シート11が通過する位置よりも下側に配されている。
そして、ガイドローラ52が予備加熱装置5への発泡シート11の導入位置を垂直方向において規定するものであったのに対して前記シート位置調整機構53は、予備加熱装置5からの発泡シート11の排出位置を垂直方向において規定するものである。
【0029】
前記シート位置調整機構53は、発泡シート11の下面側において発泡シート11の全幅にわたって接し、該発泡シート11を下方から持ち上げるための保持ローラ53aと該保持ローラ53aの両端を軸支する一対のアーム53bと、該アームを支持する基台53cとを備えている。
前記アーム53bは、垂直方向に延びる棒状体で構成されており、その上端部において前記保持ローラ53aを軸支しており、下端部が前記基台53cに固定されている。
しかも、前記シート位置調整機構53は、前記アーム53bの基台53cへの固定位置を上下させることによって前記保持ローラ53aを上下させ得るように構成されており、前記発泡シート11の表面11aと、前記輻射加熱ヒーター51の熱放射面51aとが略平行する状態まで発泡シート11を持ち上げ得るように構成されている。
【0030】
なお、前記シート位置調整機構53によって発泡シート11を持ち上げて輻射加熱ヒーター51の熱放射面51aと発泡シート11とが略平行とさせることで、前記ガイドローラ52から前記ラミネート装置3の押さえローラ33との間で発泡シート11が山形に屈曲されることになる。
そのため押さえローラ33では、シート位置調整機構53で発泡シート11が持ち上げられることによって該発泡シート11が巻き掛けられる区間が長くなり、前記輻射加熱ヒーター51から発泡シート11が受けた熱が樹脂フィルム21により伝達されやすくなる。
【0031】
この予備加熱装置5以外の前記熱成形装置4、前記切断装置6、前記打抜き装置7、前記搬送装置8、及び、前記破砕装置9については、従来、発泡トレーの製造において一般に用いられているようなものを採用することができる。
【0032】
例えば、熱成形装置4であれば、上流側から前記積層発泡シート12を熱成形可能な温度になるまで加熱する加熱ゾーン41a,41b,41cと、前記積層発泡シート12に製品(発泡トレー)形状を形成させるための成形型46を備えた成形ゾーン42とを有するものなどを採用することができる。
【0033】
また、前記切断装置6であれば、例えば、積層発泡シート12の幅方向に積層発泡シート12を切断するための直刃を有するものや、回転刃を有するものなどが挙げられ、前記打抜き装置7であれば、製品形状の形成された積層発泡シートから製品を打抜くための打抜き刃型71と該打抜き刃型71との間に積層発泡シートを挟み込むための支持板72とを備えたものなどを採用することができる。
【0034】
なお、このような熱成形装置4には、前記積層発泡シート12を引き入れて前記加熱ゾーン1から成形ゾーン42まで搬送させるための搬送機構(図示せず)が設けられており該搬送機構によって前記積層発泡シート12がいわゆる間欠送りされるように構成されている。
すなわち、本実施形態においては、積層発泡シート12が熱成形装置4でのワンショットの熱成形に必要な長さ熱成形装置4に引き込まれる動作と、熱成形装置4での熱成形の間(及び、積層発泡シートが打抜かれる間)積層発泡シート12が停止する動作とが交互に繰り返されて発泡トレー10が作製されるように構成された製造設備が用いられている。
【0035】
このような製造設備を利用した発泡トレーの製造方法について説明すると、まずは、前記原反ロール1から発泡シート11を繰り出して予備加熱装置5、並びに、ラミネート装置3を通過させてその先端部を熱成形装置4の入口箇所において搬送機構にセットするとともに前記フィルムロール2からも樹脂フィルム21を繰り出してラミネート装置3を通過させて熱成形装置4の搬送機構にセットする。
このときシート位置調整機構53の保持ローラ53aは下げた状態にしておいて、輻射加熱ヒーター51を発泡シート11から遠ざけておく。
また、ラミネート装置3の加熱ローラ31とニップローラ32との間もあけた状態にしておき、熱成形装置4の加熱ゾーンに設けられたヒーターの電源、並びに、加熱ローラ31と輻射加熱ヒーター51の電源を入れ、それぞれが所定の温度となるまで待機する。
【0036】
その後、熱成形装置4の加熱ゾーン、加熱ローラ31、並びに、輻射加熱ヒーター51が所定の温度に安定した時点でラミネート装置3をスタートさせ、加熱ローラ31とニップローラ32との間を所定の間隔に狭めてこれらの間で発泡シート11と樹脂フィルム21とが圧接される状態にし、且つ、加熱ローラ31とニップローラ32とを所定の周速で回転させる。
このことによって発泡シート11と樹脂フィルム21とを引取らせ一定のスピードで加熱ローラ31の下流側に積層発泡シート12を形成させることができる。
なお、スムーズな生産を行う上においては、ラミネート装置3で単位時間あたりに形成させる積層発泡シート12の長さを、熱成形装置4に間欠送りされる積層発泡シート12の平均スピードに基づいて調整する必要があり、通常、ラミネート装置3からの積層発泡シート12の排出スピードと間欠送りされる積層発泡シート12の平均スピードが同じスピードとなるように調整する必要がある。
【0037】
また、熱成形装置4への積層発泡シート12の間欠送りによる振動が熱ラミネートに悪影響を及ぼさないようにするためには、ラミネート装置3をスタートさせた時点では、熱成形装置4の搬送機構を動作させず、少なくとも、ラミネート装置3と熱成形装置4との間に、ワンショットの熱成形に要する長さ以上の積層発泡シート12が形成されるまで待ってから前記搬送機構を動作させることが好ましく、ラミネート装置3と熱成形装置4との間に常時ある程度の積層発泡シート12が蓄えられている状態を保って前記熱成形装置4での熱成形を実施させることが好ましい。
また、このとき前記シート位置調整機構53の保持ローラ53aを上昇させることにより、予備加熱装置内における発泡シート11の位置を輻射加熱ヒーター51の熱放射面51aに接近させ、前記予備加熱装置5によって樹脂フィルム21がラミネートされる発泡シート11の表面11aを熱ラミネート前に加熱する工程(以下「予備加熱工程」ともいう)を実施させることが熱ラミネートのスピードアップ、即ち、発泡トレー10の生産効率アップにとって重要となる。
【0038】
なお、予備加熱された発泡シート11は、前記ラミネート装置3における加熱ローラ31とニップローラ32との回転に伴って自動的にラミネート装置3に引取られ、前記押さえローラ33によって加熱された前記表面11aに樹脂フィルム21が重ね合わせられることになる。
その後、この樹脂フィルム21と発泡シート11とが重ね合わせられた積層体を加熱ローラ31とニップローラ32の間を通過させて熱ラミネートを実施し積層発泡シート12を形成させることができる。
得られた積層発泡シート12は、熱成形装置4に間欠送りされ、前記加熱ゾーンにおいて加熱、軟化され、前記成形ゾーン42でトレー形状が形成されることになる。
また、成形ゾーン42を通過した積層発泡シートは、続けて、熱成形装置4でのワンショット分の長さに切断装置6で切断された後、打抜き装置7においてトレー形状が形成された箇所が前記打抜き刃型71で打抜かれ、端材12wとなって前記破砕装置9で破砕処理される。
一方で、打抜かれた発泡トレー10は、搬送装置8で製品検査、梱包といった次段の工程が行われる箇所へと搬送される。
【0039】
上記のように帯状の発泡シート11の表面11aに樹脂フィルム21を熱ラミネートして積層発泡シート12を作製しつつ得られた積層発泡シート12を熱成形装置4で熱成形して発泡トレーを作製する上において、上記のような予備加熱工程を実施することによって樹脂フィルム21と発泡シート11との接着力不足が生じるおそれを抑制しつつラミネート装置3での積層発泡シート12の形成スピードを従来以上に向上させることができる。
【0040】
即ち、加熱された発泡シート11に前記押さえローラ33によって樹脂フィルム21が重ね合わされた時点で発泡シート11の熱を樹脂フィルム側に伝達させることができ、加熱ローラ31に至るまでの間において樹脂フィルム21が予熱されることになる。
従って、熱ラミネート時における樹脂フィルム21の温度上昇を発泡シート11から受ける熱で促進させることができ加熱ローラ31の表面温度を従来と同程度の設定温度にしつつもその周速を従来以上に増大させても熱ラミネートのコンディションを従来と同様のものとすることができる。
【0041】
また、発泡シート11の表面を予め加熱することで、この表面付近の気泡内の圧力を向上させ、発泡シート11の表面に張りを生じさせることができることから、加熱ローラ31による加熱圧着を良好にさせることができる。
即ち、加熱ローラ31とニップローラ32との間を通過する際の発泡シート11の反発力を増大させることができ、この反発力を熱ラミネートに有効に利用することができる。
【0042】
なお、このような効果は、押さえローラ33によって予め発泡シート11と樹脂フィルム21とを接触させる場合においてのみ生じるものではなく、加熱ローラ31によって熱ラミネートされる際に初めて樹脂フィルム21と発泡シート11とが接するような場合においても生じる効果である。
このような効果を生じさせるための予備加熱工程における発泡シートの加熱温度は、発泡シートや、該発泡シートにラミネートする樹脂フィルムの材料や厚み等によって適宜選択すればよい。
【0043】
以下に一例を挙げると、一般的な発泡トレーでは、その形成材料としてスチレン系樹脂が採用されており、例えば、スチレンホモポリマーである汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)や、耐熱ポリスチレン樹脂と呼ばれる樹脂が採用されている。
【0044】
前記発泡シート11がスチレンホモポリマーを主成分とするものであり、前記樹脂フィルム21がスチレン系樹脂フィルム、或いは、スチレン系樹脂フィルムと他の樹脂フィルムとの積層フィルムであるような場合であれば、樹脂フィルムに重ね合わせられる前において前記表面11aの温度が、65℃〜85℃となるように前記予備加熱工程を実施することが好ましい。
【0045】
また、前記発泡シート11が、スチレンホモポリマーとポリフェニレンエーテル樹脂との混合樹脂や、スチレン−不飽和カルボン酸共重合体樹脂(例えば、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、スチレン− マレイミド共重合樹脂など)の耐熱ポリスチレン樹脂でJIS K7206(B法、50℃/h)に基づくビカット軟化温度が110〜155℃の前記耐熱ポリスチレン樹脂を主成分とした耐熱ポリスチレン樹脂発泡シートであれば、前記表面11aの温度が、65℃〜85℃となるように前記予備加熱工程を実施することが好ましい。
【0046】
さらに、前記発泡シート11が、ポリプロピレン樹脂を主成分としたポリプロピレン樹脂発泡シートである場合には、前記表面11aの温度が、65℃〜95℃となるように前記予備加熱工程を実施することが好ましく、前記発泡シート11が、ポリエチレン樹脂を主成分としたポリエチレン樹脂発泡シートである場合には、前記表面11aの温度が、65℃〜85℃となるように前記予備加熱工程を実施することが好ましい。
【0047】
なお、いずれのような材質の発泡シートが用いられるような場合でも、樹脂フィルムを熱ラミネートする際のスピードアップを図り得ることから発泡トレーのような樹脂発泡成形品を作製する際に熱ラミネートの工程が律速となって全体の効率を低下させてしまうことを回避することができ、樹脂発泡成形品の生産スピードを向上させることができるといった効果が発揮される点においては変わりがない。
【0048】
本実施形態においては、予備加熱工程を行う形態を上記のような構成を有する予備加熱装置5を使用する場合を例示しているが、用いる予備加熱装置は上記例示のようなものである必要はない。
例えば、前記シート位置調整機構53が設けられていない予備加熱装置を採用することも可能である。
ただし、発泡トレー10を作製する準備を行う段階においては、通常、発泡シート11を静止させていることから、この段階で通電状態の輻射加熱ヒーター51を発泡シート11に接近させたのでは発泡シート11が過度に温度上昇してしまうおそれを有する。
一方で、発泡シート11の温度上昇を回避すべく、発泡トレー10の製造が開始され、発泡シート11が移動されるまで輻射加熱ヒーター51を通電させずにおくと、所定の温度に輻射加熱ヒーター51の温度が上昇するまでの間、良好な製品が得られないことになり発泡シートや樹脂フィルムなどの原材料を無駄に消費させることになる。
このような点においては本実施形態において示すように輻射加熱ヒーターとの距離を調整可能なシート位置調整機構53を設けた予備加熱装置を採用することが好ましい。
【0049】
なお、本実施形態においては、樹脂フィルム21を熱ラミネートする発泡シート11がその表面11aを上方に向けて搬送される区間を設け、この区間において前記表面11aに対面するように熱放射面51aを設けているが、例えば、発泡シートが垂直方向に搬送される区間を設けて、この区間内において発泡シートに対向するよう輻射加熱ヒーターを設けて予備加熱工程を実施させてもよい。
【0050】
また、本実施形態においては、前記熱放射面51aを下方に向けた状態で輻射加熱ヒーターを配置しているが、輻射加熱ヒーターを発泡シート11の下方に配し、該発泡シートの下面側の表面11bを加熱し、こちら側の表面11bに樹脂フィルム21を熱ラミネートさせるようにしてもよい。
発泡シートの表面を加熱するための輻射加熱ヒーターを発泡シート11の下面側に配するような態様は、輻射加熱ヒーターから発せられる輻射熱だけでなく、輻射加熱ヒーターが周囲の空気を加熱することによって生じる対流による熱伝動を発泡シートの予備加熱に有効活用させやすい点において優れているといえる。
ただし、対流による熱伝導は、周囲の気流などの影響を受けやすいために、本実施形態における態様のように発泡シートの上方から輻射加熱を実施した方が、発泡シートの表面温度がより精度良くコントロールされ得る。
【0051】
なお、対流の影響を受け難い点においては、先のように発泡シートを垂直方向に搬送させてその側方に輻射加熱ヒーターを配した場合も同じであるが、発泡シートの側方や下方に輻射加熱ヒーターを配した場合には、発泡シートの長さ方向に加わるテンションが緩んで発泡シートに“たるみ”が生じたりすると発泡シートと輻射加熱ヒーターとが接触して場合によっては火災の原因となるおそれを有することから本実施形態における態様のように発泡シートの上方から加熱することが望ましい。
【0052】
また、本実施形態においては、発泡シートを加熱するための機構として輻射加熱ヒーターを採用しているが、例えば、予備加熱用の加熱ローラを設けるなど他の加熱機構を予備加熱装置に備えさせることも可能である。
さらには、本実施形態においては、樹脂発泡成形品として発泡トレーを例示しているが、本発明においては、製造する樹脂発泡成形品を発泡トレーに限定するものでもない。
また、ここでは詳述しないが、樹脂発泡成形品の製造方法や製造設備に関して従来公知の事項については、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において、本発明の樹脂発泡成形品の製造方法や製造設備にも採用が可能なものである。
【符号の説明】
【0053】
1:原反ロール、2:フィルムロール、3:ラミネート装置、4:熱成形装置、5:予備加熱装置、発泡トレー、11:発泡シート(樹脂発泡シート)、11a:表面、12:積層発泡シート、21:樹脂フィルム、51:輻射加熱ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の樹脂発泡シートの表面に樹脂フィルムを熱ラミネートして積層発泡シートを作製しつつ得られた積層発泡シートを熱成形装置で熱成形して樹脂発泡成形品を作製する樹脂発泡成形品の製造方法であって、
樹脂フィルムが熱ラミネートされる樹脂発泡シートの前記表面を前記熱ラミネート前に加熱する予備加熱工程を実施することを特徴とする樹脂発泡成形品の製造方法。
【請求項2】
帯状の樹脂発泡シートの表面に樹脂フィルムを熱ラミネートして積層発泡シートを作製するラミネート装置と、前記積層発泡シートを熱成形する熱成形装置とが備えられており、前記ラミネート装置で前記積層発泡シートを作製しつつ該積層発泡シートを前記熱成形装置で熱成形して樹脂発泡成形品を作製し得るように前記ラミネート装置と前記熱成形装置とが配置されている樹脂発泡成形品の製造設備であって、
樹脂フィルムが熱ラミネートされる樹脂発泡シートの前記表面を前記熱ラミネート前に加熱するための予備加熱装置がさらに備えられていることを特徴とする樹脂発泡成形品の製造設備。
【請求項3】
前記ラミネート装置よりも上流側には前記樹脂発泡シートが前記表面を上方に向けて搬送される区間が設けられており、前記予備加熱装置には前記表面を加熱するための輻射加熱ヒーターが備えられ、該輻射加熱ヒーターは、前記区間において樹脂発泡シートの前記表面を加熱させ得るように該樹脂発泡シートよりも上方に配置されている請求項2記載の樹脂発泡成形品の製造設備。
【請求項4】
前記予備加熱装置には、加熱される樹脂発泡シートと前記輻射加熱ヒーターとの距離を調整可能なシート位置調整機構がさらに備えられている請求項3記載の樹脂発泡成形品の製造設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−148488(P2012−148488A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9115(P2011−9115)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000158943)株式会社積水技研 (35)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】