説明

樹脂組成物、フィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、及び半導体装置

【課題】多層プリント配線板の絶縁樹脂組成物に用いた場合に高い絶縁信頼性を有すると共に、難燃性を有し、高密度、高多層成形が可能な絶縁樹脂組成物と、これを用いたフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、及び半導体装置を提供するものである。
【解決手段】多層プリント配線板のビルドアップ材用絶縁樹脂層を形成するために用いる絶縁樹脂組成物であって、前記絶縁樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、25℃において6ppm/℃以上50ppm/℃以下であり、
(a)金属水酸化物、
(b)ノボラック型エポキシ樹脂を含み、かつ、実質的にハロゲン化されていないエポキシ樹脂
を含有し、且つ前記(a)金属水酸化物に含まれる金属イオン性不純物が、500ppm以下であることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、フィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂などに代表される絶縁樹脂組成物の硬化物は、機械的特性、電気的特性、化学的特性等に優れており、電気・電子機器部品等の広い用途に使用されている。これらの熱硬化性樹脂組成物には、火災に対する安全性を確保するため難燃性が付与されている場合が多い。
【0003】
絶縁樹脂組成物を難燃化する手法のひとつとして、臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン含有化合物を用いる方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、ハロゲン含有化合物は高度な難燃性を付与できるものの、例えば、臭素化芳香族化合物は、熱分解で腐食性を有する臭素、臭化水素を生ずるだけでなく、酸素の存在下で分解した場合には毒性の高いポリブロモジベンゾフラン、ポリブロモジベンゾオキシンを生成する可能性がある。そして、臭素を含有する老朽廃材の処分は極めて困難である。このような理由から、ハロゲン含有化合物に代わる難燃剤が検討されている。
【0004】
ハロゲン含有化合物を用いない難燃化技術としては、ホスフィンオキサイド化合物などのリン含有化合物を用いる方法や(例えば、特許文献2〜4参照。)、水酸化アルミニウムを用いる方法がある(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
また近年、電子機器の高機能化の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、高密度実装化が進んでおり、これらに使用される高密度実装対応の多層プリント配線板等は、従来にも増して、小型化や高密度化での用途も広がっている。これらの用途でも利用可能とするためには、多層プリント配線板の低熱膨張化や接続信頼性が重要となってくる(例えば、特許文献6参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−212249号公報
【特許文献2】特開2001−254001号公報
【特許文献3】特開2004−067968号公報
【特許文献4】特開平11−124489号公報
【特許文献5】特開2005−20692号公報
【特許文献6】特開2005−7783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電子機器に用いられる多層プリント配線板の絶縁樹脂組成物に用いた場合、レーザービア加工性が優れ、冷熱サイクル試験等の熱衝撃試験おいて、ビア接続箇所や導体回路層の剥離または、絶縁樹脂層にクラックが発生することなく、高温、多湿の環境下においても高い絶縁信頼性を有すると共に、難燃性を有し、高密度、高多層成形が可能な多層プリント配線板を作製可能な絶縁樹脂組成物と、これを用いたフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、及び半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(19)に記載の本発明により達成される。
(1)多層プリント配線板の絶縁樹脂層を形成するために用いる絶縁樹脂組成物であって 、前記絶縁樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、25℃において6ppm/℃以上5 0ppm/℃以下であり、
(a)金属水酸化物、
(b)ノボラック型エポキシ樹脂を含み、かつ、実質的にハロゲン化されていないエ ポキシ樹脂
を含有し、且つ前記(a)金属水酸化物に含まれる金属イオン性不純物が、500p pm以下であることを特徴とする絶縁樹脂組成物。
(2)前記絶縁樹脂組成物は、さらに(c)紫外線吸収剤を含有する(1)記載の絶縁樹 脂組成物。
(3)前記絶縁樹脂組成物は、(d)金属水酸化物以外の無機充填材を含有する(1)ま たは(2)に記載の絶縁樹脂組成物。
(4)前記(c)紫外線吸収剤は、光電分光光度計測定において200nm以上300n m以下の波長領域に少なくとも一つ以上の吸収ピークを有するものである(1)ない し(3)のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
(5)前記絶縁樹脂組成物の300℃における重量減少率が、15%以下である(1)な いし(4)のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
(6)前記(a)金属水酸化物の平均粒径は、0.1μm以上5μm以下である(1)な いし(5)のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
(7)前記(a)金属水酸化物の300℃における重量減少率は、20重量%以上40重 量%以下である(1)ないし(6)のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
(8)前記(a)金属水酸化物の含有量が、前記絶縁樹脂組成物の1重量%以上50重量 %以下である(1)ないし(7)のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
(9)前記(a)金属水酸化物中に含まれる金属イオン性不純物は、リチウムイオン、ナ トリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、フランシウ ムイオン、ベリリウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウム イオン、亜鉛イオン、スズイオン、及び鉛イオンよりなる群から選ばれる少なくとも 1種類以上である(1)ないし(8)のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
(10)前記(a)金属水酸化物は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化 ガリウム、及び水酸化ジルコニルよりなる群から選ばれる(1)ないし(9)のいず れかに記載の絶縁樹脂組成物。
(11)前記(d)金属水酸化物以外の無機充填材は、金属酸化物である(3)ないし( 10)のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
(12)前記金属酸化物は、溶融シリカである(11)に記載の絶縁樹脂組成物。
(13)前記(c)紫外線吸収剤は、クマリン構造を有する化合物である(2)ないし( 12)のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
(14)(1)ないし(13)のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物からなる絶縁樹脂層を 、フィルムまたは金属箔に形成してなるフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シ ート。
(15)前記絶縁樹脂層は、繊維基材を含有する(14)に記載のフィルム付きまたは金 属箔付き絶縁樹脂シート。
(16)前記繊維基材は、ガラス繊維である(15)に記載のフィルム付きまたは金属箔 付き絶縁樹脂シート。
(17)前記繊維基材は、有機繊維である(15)に記載のフィルム付きまたは金属箔付 き絶縁樹脂シート。
(18)(14)ないし(17)のいずれかに記載のフィルム付きまたは金属箔付き絶縁 樹脂シートの絶縁樹脂層を内層回路板の内層回路パターンが形成された面に重ね合 わせて加熱加圧成形してなる多層プリント配線板。
(19)(18)に記載の多層プリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の絶縁樹脂組成物、フィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートは、ハロゲン含有化合物、リン含有化合物を用いることなく難燃性を達成することができるとともに、従来のものと比較して、優れたレーザービア加工性、熱衝撃性、絶縁信頼性を発現できる多層プリント配線板、及び半導体装置を得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の絶縁樹脂組成物、フィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、及び半導体装置について詳細に説明する。
【0011】
本発明の絶縁樹脂組成物の硬化物(以下、単に「硬化物」ということがある)の線膨張係数は、25℃において6ppm/℃以上50ppm/℃以下である。これにより、硬化物を多層プリント配線板や半導体装置用いた際、冷熱サイクル試験等の熱衝撃試験において導体回路層の剥離または、絶縁樹脂層のクラックの発生を抑制できる。またプレス成形時や半田リフロー時の基板の反りを抑制することもできる。前記線膨張係数は、特に限定はされないが、8ppm/℃以上40ppm/℃以下が好ましく、さらに10ppm/℃以上30ppm/℃以下が好ましく、さらには12ppm/℃以上20ppm/℃以下が好ましい。これにより前記作用を効果的に発現させることができる。
【0012】
線膨張係数が前記下限値未満であると、基板の厚みによっては導体回路との線膨張のミスマッチにより、プレス成形時や半田リフロー時の基板の反りを抑制することができなくなることがある。また、前記上限値を超えると、こちらも導体回路との線膨張のミスマッチにより、プレス成形時や半田リフロー時の基板の反りが生じる恐れがあり、また冷熱サイクル試験等の熱衝撃試験におけるビア接続箇所や導体回路層の剥離または、絶縁樹脂層のクラックの発生を抑制することができなくなる恐れがある。
【0013】
なお、硬化物の線膨張係数は、樹脂の種類、樹脂の含有量、充填材の種類、充填材の量に依存する。本発明は、樹脂の選択、選択した樹脂の含有量と(a)金属水酸化物、或いは選択した無機充填材を含有量とを調整することで任意に線膨張係数を設定することができる。
【0014】
本発明の硬化物は、特に限定されないが、300℃における重量減少率が15%以下である。これにより、硬化物を多層プリント配線板や半導体装置に用いた際、吸湿後の半田耐熱性を改良することができる。また前記重量減少率は10%以下が好ましい。これにより前記作用を効果的に発現させることができる。
なお、重量減少率は、TG−DTA(示差熱熱重量同時測定)により、試料を30℃から500℃まで10℃/分の条件で昇温させ、試料の重量変化を追跡し、((30℃の試料重量)−(300℃の試料重量))/(30℃の試料重量)×100で求まる値とした。
【0015】
本発明の絶縁樹脂組成物に用いる(a)金属水酸化物は、(a)金属水酸化物中に含有する金属イオン性不純物の濃度が500ppm以下である。これにより、硬化物を多層プリント配線板や半導体装置に用いた際、HAST試験やPCT試験などの高温、多湿下で処理しても高い絶縁信頼性を保持することができる。また、特に限定はされないが、前記金属イオン性不純物の濃度は、400ppm以下が好ましく、さらに300ppm以下が好ましく、さらには200ppm以下が好ましい。これにより前記作用を効果的に発現させることができる。
前記上限値を超えると絶縁信頼性が損なわれる恐れがある。
金属イオン性不純物の濃度は、(a)金属水酸化物を純水中で80℃、24h処理し、純水中に金属イオンを抽出した後、ICP−MS(誘導結合プラズマイオン源質量分析装置)を用い測定した。
【0016】
本発明の絶縁樹脂組成物に用いる(a)金属水酸化物に含まれる金属イオン性不純物は、チウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、フランシウムイオン、ベリリウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、スズイオン、及び鉛イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種類以上であることが好ましい。これらの中でも特にナトリウムイオン、カリウムイオンであることが好ましい。これらの濃度が前記範囲内であれば、硬化物を多層プリント配線板や半導体装置に用いた際、HAST試験やPCT試験などの高温、多湿下で処理しても高い絶縁信頼性を保持することができる。
【0017】
本発明の絶縁樹脂組成物に用いる(a)金属水酸化物の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。これにより、絶縁樹脂組成物からなるワニスの粘度及び絶縁樹脂組成物をBステージ化した際の最低溶融粘度の調整が容易となり、また加熱加圧時の成形性や内層回路基板の埋め込み性も良好となる。さらに、Bステージ化あるいは硬化後の絶縁樹脂組成物の表面を化学的及び/あるいは物理的な処理によって粗化した際の樹脂表面粗さを調整することができる。平均粒径は、例えば粒度分布計(HORIBA製、LA−500)により測定することができる。
【0018】
前記(a)金属水酸化物の平均粒径は、さらに0.1μm以上8μm以下が好ましく、さらに0.1μm以上5μm以下が好ましく、特に0.1μm以上3μm以下が好ましい。これにより前記作用を効果的に発現させることができる。
(a)金属水酸化物の平均粒径が前記下限値未満では、絶縁樹脂組成物からなるワニスの粘度が高くなるため、フィルムへのワニス塗工が難しくなり、フィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートの作製が困難となる。さらに絶縁樹脂組成物をBステージ化した際の最低溶融粘度が高くなるため、加熱加圧時の成形性や内層回路基板の埋め込み性が低下する。また、前記上限値を超えると、Bステージ化あるいは硬化状態の絶縁樹脂組成物よりなる絶縁樹脂層の表面を化学的及び/あるいは物理的な処理によって粗化した際の樹脂表面粗さが大きくなったり、絶縁信頼性が低下したりする。
【0019】
前記(a)金属水酸化物は、特に限定されないが、平均粒径が単分散の(a)金属水酸化物を用いることもできるし、平均粒径が多分散の(a)金属水酸化物を用いることができる。さらに平均粒径が単分散及び/または、多分散の水酸化物を1種類または2種類以上とを併用することもできる。
【0020】
前記絶縁樹脂組成物よりなる絶縁樹脂層の表面を粗化した際の表面粗さは特に限定はされないが、算術平均粗さ(Ra)が、1μm以下であることが好ましい。これにより、高周波回路基板の用途で用いた際、導体回路の信号伝搬速度へ与える影響を軽減することができる。
【0021】
前記(a)金属水酸化物の300℃における重量減少率は、20重量%以上40重量%以下であることが好ましい。これにより、耐熱性を損なわずに難燃性を付与することができる。前記重量減少率が前記下限値未満では、十分に難燃性を発揮することが難しく、前記上限値を超えると、耐熱性が悪化する恐れがある。
なお、重量減少率は、TG−DTA(示差熱熱重量同時測定)により、試料を30℃から500℃まで10℃/分の条件で昇温させ、試料の重量変化を追跡し、((30℃の試料重量)−(300℃の試料重量))/(30℃の試料重量)×100)で求まる値とした。
【0022】
前記(a)金属水酸化物の含有量は、特に限定はされないが絶縁樹脂組成物全体に対して、1重量%以上50重量%以下であることが好ましい。これにより、耐熱性を損なわずに難燃性を付与することができる。含有量さらに2重量%以上45重量%以下が好ましく、さらに5重量%以上40重量%以下が好ましく、特に10重量%以上30重量%以下が好ましい。これにより、前記作用を効果的に発現させることができる。含有量が前記下限値未満では、難燃性の効果を十分に得られない恐れがあり、前記上限値を超えると、耐熱性が低下する恐れがある。
【0023】
前記(a)金属水酸化物は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化ガリウム、及び水酸化ジルコニルよりなる群から選ばれる少なくとも1種類以上であることが好ましい。これにより、難燃性を付与することができる。これらの中でも特に水酸化アルミニウムが好ましい。これにより、耐熱性を損なわずに難燃性を付与することができる。
【0024】
本発明の絶縁樹脂組成物で用いられる(b)エポキシ樹脂は、ノボラック型エポキシ樹脂を含む。これにより、この絶縁樹脂組成物の硬化物の架橋密度を増加させ、高い難燃性と耐熱性とを付与することができる。
ノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらの中でもクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、前記効果に加えて、硬化物の吸水率を低下させ、高湿環境下での耐湿性を向上させることができる。
【0025】
前記ノボラック型エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂全体の60〜90重量%であることが好ましい。さらに好ましくは65〜75重量%である。これにより、前記作用を効果的に発現させることができる。
ノボラック型エポキシ樹脂の含有量は、前記下限値未満であると、耐熱性を向上させる効果が充分でないことがある。また、前記上限値を超えると、Bステージ化した際の硬化物が硬くなり、Bステージ化したフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートのハンドリング性の低下や、裁断した際の樹脂の粉落ち、支管に巻き取った際の樹脂割れが発生する怖れがある。
【0026】
本発明の絶縁樹脂組成物は、前記(b)ノボラック型エポキシ樹脂の他にエポキシ樹脂を併用することができる。併用するエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などが挙げられる。
ここで、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を併用すると、繊維基材への含浸性を向上させることができる。また、固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を併用すると、銅箔への密着性を向上させることができる。
【0027】
本発明の絶縁樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂は、ハロゲン化されていないものである。
これにより、実質的にハロゲン化合物を用いることなく、難燃性を付与することができるとともに、硬化物の熱分解時に、ハロゲンに起因する腐食性、毒性を有する成分の発生をなくすことができる。
【0028】
本発明の絶縁樹脂組成物に用いる(c)紫外線吸収剤は、特に限定されないが、光電分光光度計測定において、200nm以上300nm以下の波長領域に少なくとも一つ以上の吸収ピークを有することが好ましい。これにより、UVレーザーでビア加工する際の生産性、ビア接続信頼性が向上し、またビア底のデラミネーションの発生を抑制することができる。尚、吸収ピークは、例えばメタノール溶媒100ml中に紫外線吸収剤を5mg含む溶液を試料光路長が1cmのセルに入れたサンプルを光電分光光度計にて紫外領域吸収を測定することができる。
【0029】
前記紫外線吸収剤は、例えば4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(5−(クロロ−2’−ヒドロキシ−3’tert−ブチル−5’メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、1,1’,2,2’−テトラキス(4−グリシジルフェニル)エタン、2,2ジメトキシ−1,2ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド等を挙げることができる。
これらの中でも4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(5−(クロロ−2’−ヒドロキシ−3’tert−ブチル−5’メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、クマリン、4―ヒドロキシクマリン、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、1,1’,2,2’−テトラキス(4−グリシジルフェニル)エタンから選ばれる少なくとも1種以上のものが好ましく、特にクマリン構造を有するクマリン、4―ヒドロキシクマリン、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリンが好ましい。これにより、前記絶縁樹脂組成物を用いたフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートのUVレーザーによるビア加工性を特に向上し、接合信頼性に影響を及ぼさない形状のビアを形成することできる。
【0030】
前記紫外線吸収剤の含有量は、特に限定されないが、絶縁樹脂組成物全体の0.01重量%以上2.00重量%以下が好ましく、特に0.05重量%以上1.50重量%以下が好ましい。紫外線吸収剤の含有量が前記下限値未満であると、UVレーザー加工性を向上する効果や接続信頼性が低下する場合がある。またビア底にデラミネーションが発生する場合もある。前記上限値を超えると吸湿半田耐熱が低下する場合がある。
【0031】
本発明の絶縁樹脂組成物は、製膜性を有する樹脂を含有することが好ましい。これにより、フィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートを製造する際の製膜性やハンドリング性をさらに向上し、フィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートを裁断した際の樹脂の粉落ち、支管に巻き取った際の樹脂割れを防ぐことができる。
【0032】
前記製膜性を有する樹脂は、例えば、フェノキシ系樹脂、ビスフェノールF系樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
これらの中でも、フェノキシ系樹脂が好ましい。これにより、耐熱性および難燃性を向上させることができる。
【0033】
前記フェノキシ樹脂は、特に限定はされないが、例えば、ビスフェノールA骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールM(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール)骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールP(4,4'-(1,4)-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール)骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールZ(4,4'-シクロヘキシィジエンビスフェノール)骨格を有するフェノキシ樹脂等ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ノボラック骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノキシ樹脂、ノルボルネン骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。これら中の骨格を複数種類有した構造を用いることもできるし、それぞれの骨格の比率が異なるフェノキシ樹脂を用いることができる。さらに異なる骨格のフェノキシ樹脂を複数種類用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有するフェノキシ樹脂を複数種類用いたり、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0034】
これらの中でも、ビフェニル骨格と、ビスフェノールS骨格とを有するフェノキシ樹脂を用いることができる。これにより、ビフェニル骨格が有する剛直性によりガラス転移温度を高くすることができるとともに、ビスフェノールS骨格により、多層プリント配線板を製造する際のメッキ金属の付着性を向上させることができる。
また、ビスフェノールA骨格とビスフェノールF骨格とを有するフェノキシ樹脂を用いることができる。これにより、多層プリント配線板の製造時に内層回路基板への密着性を向上させることができる。さらに、前記ビフェニル骨格とビスフェノールS骨格とを有するフェノキシ樹脂と、ビスフェノールA骨格とビスフェノールF骨格とを有するフェノキシ樹脂とを併用してもよい。
【0035】
前記製膜性を有する樹脂の分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量が1.0×103〜1.0×105であることが好ましい。さらに好ましくは1.0×104〜6.0×104である。
製膜性を有する樹脂の重量平均分子量が、前記下限値未満であると、製膜性を向上させる効果が充分でない場合がある。一方、前記上限値を超えると、製膜性を有する樹脂の溶解性が低下する場合がある。製膜性を有する樹脂の重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
【0036】
製膜性を有する樹脂の含有量は、特に限定されないが、絶縁樹脂組成物全体の1〜20重量%であることが好ましい。さらに好ましくは2〜10重量%である。
製膜性樹脂の含有量が前記下限値未満であると、製膜性を向上させる効果が充分でないことがある。一方、前記上限値を超えると、線膨張係数が増加し、低熱膨張性が低下することがある。製膜性を有する樹脂の含有量を前記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
【0037】
本発明の絶縁樹脂組成物で用いられる製膜性を有する樹脂は、ハロゲン化されていないものである。
これにより、実質的にハロゲン化合物を用いることなく、難燃性を付与することができるとともに、硬化物の熱分解時に、ハロゲンに起因する腐食性、毒性を有する成分の発生をなくすことができる。
【0038】
本発明の絶縁樹脂組成物は、(d)金属水酸化物以外の無機充填材(以下、単に「(d)無機充填材」ということがある)を含むことが好ましい。これにより、低熱膨張性や難燃性を付与することができる。前記無機充填材の含有量は、特に限定はされないが、絶縁樹脂組成物全体に対して5重量%以上70重量%以下であることが好ましい。さらに10重量%以上60重量%以下が好ましく、さらに15重量%以上50重量%以下が好ましい。これにより、前記作用を効果的に発現させることができる。含有量が前記下限値未満では、低熱膨張性や難燃性の効果を十分に得られない恐れがあり、前記上限値を超えると、加熱加圧時の成形性が低下する恐れがある。
前記(d)無機充填材は、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用したりすることもできる。
【0039】
本発明の(d)無機充填材は、特に金属酸化物であることが好ましい。これにより、耐熱性を損なわずに低熱膨張性や難燃性を付与することができる。さらに、前記金属酸化物はシリカが好ましく、溶融シリカが低熱膨張性に優れる点で好ましい。これにより前記作用を効果的に発現させることができる。その形状は破砕状、球状があるが、例えば繊維基材への含浸性を確保するために絶縁樹脂組成物の溶融粘度を下げる目的に球状シリカを使う等、その目的にあわせた使用方法が採用される。
【0040】
前記(d)無機充填材の平均粒子径は、特に限定されないが、5.0μm以下が好ましく、特に0.1〜2.0μmが好ましい。(d)無機充填材の粒径が、前記下限値未満であるとワニスの粘度が高くなるため、フィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シート作製時の作業性に影響を与える場合がある。また、前記上限値を超えると、ワニス中で無機充填剤の沈降等の現象が起こる場合がある。
この平均粒子径は、例えば粒度分布計(HORIBA製、LA−500)により測定することができる。
【0041】
また前記(d)無機充填材は、特に限定されないが、平均粒子径が単分散の(d)無機充填材を用いることもできるし、平均粒子径が多分散の(d)無機充填材を用いることができる。さらに平均粒子径が単分散及び/または、多分散の(d)無機充填材を1種類または2種類以上とを併用したりすることもできる。
【0042】
前記絶縁樹脂組成物は、特に限定されないが、カップリング剤を用いることが好ましい。前記カップリング剤は、前記絶縁樹脂組成物中の絶縁樹脂層と、前記(a)金属水酸化物及び前記(d)無機充填材との界面の濡れ性を向上させることにより、繊維基材に対して絶縁樹脂等や(a)金属水酸化物及び(d)無機充填材を均一に定着させ、耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を改良することができる。
前記カップリング剤は、通常用いられるものなら特に限定なく使用できる。具体的にはエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、モリブデン酸系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられ、これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用することもできる。これにより、(a)金属水酸化物及び無機充填材の界面との濡れ性を高くすることができ、それによって耐熱性をより向上させることできる。
【0043】
前記カップリング剤の添加量は、前記(a)金属水酸化物及び無機充填材の比表面積に依存するので特に限定されないが、(a)金属水酸化物と無機充填材を合わせた100重量部に対して0.05〜3.00重量%が好ましく、特に0.10〜2.00重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると(a)金属水酸化物及び無機充填材を十分に被覆できないため耐熱性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると反応に影響を与え、曲げ強度等が低下する場合がある。
【0044】
前記絶縁樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を用いても良い。前記硬化促進剤は、公知の物を用いることが出来る。例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸等、またはこの混合物が挙げられる。これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用することもできる。
【0045】
前記硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、前記絶縁樹脂組成物全体の0.05〜5.00重量%が好ましく、特に0.20〜2.00重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると硬化を促進する効果が現れない場合があり、前記上限値を超えるとフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートの保存性が低下する場合がある。
【0046】
前記絶縁樹脂組成物は、必要に応じて、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体等のポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマ−、ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエン、アクリル変性ポリブタジエン、メタクリル変性ポリブタジエン等のジエン系エラストマーを併用しても良い。
また、前記絶縁樹脂組成物は、必要に応じて、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤等の前記成分以外の添加物を添加しても良い。
【0047】
次に、フィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートについて説明する。
本発明のフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートは、前記絶縁樹脂組成物で構成される絶縁樹脂層をフィルムまたは金属箔上に形成してなるものである。
【0048】
ここで、絶縁樹脂組成物をフィルムまたは金属箔上に形成させる方法は、特に限定されないが、例えば、絶縁樹脂組成物を溶剤などに溶解・分散させて樹脂ワニスを調製して、各種塗工装置を用いて樹脂ワニスをフィルムまたは金属箔上に塗工した後、乾燥する方法、または、樹脂ワニスをスプレー装置にてフィルムまたは金属箔に噴霧塗工した後、乾燥する方法などが挙げられる。
これらの中でも、コンマコーター、ダイコーターなどの各種コーター装置を用いて、樹脂ワニスを基材に塗工した後、乾燥する方法が好ましい。これにより、ボイドがなく、均一な絶縁樹脂層の厚みを有するフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートを効率よく作製することができる。
【0049】
また、塗工する際に、フィルムまたは金属箔上に繊維基材を張り合わせることで、繊維基材を含むフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートを作製することができる。
【0050】
前記樹脂ワニスに用いられる溶媒は、前記絶縁樹脂組成物中の樹脂成分に対して良好な溶解性を示すことが好ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒は、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系等が挙げられる。
上記樹脂ワニス中の固形分含有量は、特に限定されないが、30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。
【0051】
本発明のフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートにおいて、絶縁樹脂組成物から構成される絶縁樹脂層の厚さは、特に限定されないが、5〜100μmであることが好ましい。さらに好ましくは10〜80μmである。これにより、このフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートを用いて多層プリント配線板を製造する際に、内層回路の凹凸を充填して成形することができるとともに、好適な絶縁樹脂層厚みを確保することができ、またフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートの裁断時に、絶縁樹脂層の割れ発生を抑え、絶縁樹脂層の粉落ちを少なくすることができる。
【0052】
本発明のフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートは、絶縁樹脂層中に繊維基材を含有することができる。これにより、硬化後の絶縁樹脂層の強度が上がり、線膨張係数を小さくすることができる。
本発明で用いる繊維基材は、ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、フッ素樹脂繊維等を主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙基材等の有機繊維基材等が挙げられる。これらの中でもガラス繊維基材が好ましい。これにより、フィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートの強度が上がり、また低吸水化することができる。また、フィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートの線膨張係数を小さくすることができる。
【0053】
本発明のフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートに用いるフィルムは、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂フィルムを用いることができ、また金属箔は、例えば、銅及び/又は銅系合金、アルミ及び/又はアルミ系合金、鉄及び/又は鉄系合金、銀及び/又は銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金等の金属箔などを用いることができる。
前記フィルムまたは金属箔の厚みは、特に限定されないが、10〜100μmのものを用いると、フィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートを製造する際の取り扱い性が良好であり好ましい。
なお、本発明のフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートを製造するにあたっては、絶縁樹脂層と接合される側の絶縁フィルム表面の凹凸は極力小さいものであることが好ましい。これにより、本発明の作用を効果的に発現させることができる。
【0054】
次に、本発明のフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートを用いた多層プリント配線板について説明する。
上記多層プリント配線板は、前記フィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートを内層回路板の内層回路パターンが形成された面に重ね合わせて加熱加圧成形してなるものである。
具体的には、上記本発明の絶縁樹脂層側と内層回路板の内層回路パターンが形成された面とを合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形し、その後、熱風乾燥装置等で加熱硬化させることにより得ることができる。
ここで加熱加圧成形する条件は、特に限定されないが、一例を挙げると、温度60〜160℃、圧力0.2〜3.0MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することができる。
あるいは、上記本発明のフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートの絶縁樹脂を内層回路板の内層回路パターンが形成された面に重ね合わせ、平板プレス装置などを用いて加熱加圧成形することにより得ることができる。ここで加熱加圧成形する条件は、特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、圧力1〜4MPaで実施することができる。
なお、上記多層プリント配線板を得る際に用いられる内層回路基板は、例えば、銅張積層板の両面に、エッチング等により所定の導体回路を形成し、導体回路部分を黒化処理等の粗化処理したものを好適に用いることができる。
【0055】
フィルム付き絶縁樹脂シートを用いた場合、前記で得られた多層プリント配線板は、さらに、フィルムを除去後、絶縁樹脂層表面を過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤などにより粗化処理した後、金属メッキにより新たな導電配線回路を形成することができる。本発明の絶縁樹脂組成物から形成された絶縁樹脂層は、上記粗化処理工程において、微細な凹凸形状を高い均一性で多数形成することができ、また、絶縁樹脂層表面の平滑性が高いため、微細な配線回路を精度よく形成することができるものである。
【0056】
金属箔付き絶縁樹脂シートを用いた場合、前記で得られた多層プリント配線板は、エッチングにより導電配線回路を形成することができる。
【0057】
次に半導体装置について説明する。
前記多層プリント配線板に通常行われる導体回路等を形成し、半導体素子を実装して所定の加工をすることにより、半導体装置を作製した。
【0058】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。尚、配合は予め予測した線膨張係数が得られることを狙い配合した。
【0059】
(実施例1)
(1)樹脂ワニスの調整
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(「エピクロンN-690」、エポキシ当量210、大日本インキ化学工業株式会社製)34.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)(「エピクロン850」、エポキシ当量190、大日本インキ化学工業株式会社製)8.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)(「エピクロン7050」、エポキシ当量1900、大日本インキ化学工業株式会社製)4.00重量部、フェノキシ樹脂(「YX−8100」、重量平均分子量30000、ジャパンエポキシレジン株式会社製)2.00重量部、紫外線吸収剤(「7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン」、シグマアルドリッチジャパン株式会社製)0.05重量部、硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)1.00重量部、およびエポキシシラン型カップリング剤(A−187、GE東芝シリコーン株式会社製)0.95重量部をメチルエチルケトンに常温で溶解し、洗浄した金属水酸化物(1)(水酸化アルミニウム、HP−360、平均粒径2.7μm、金属イオン性不純物(ナトリウムイオン)濃度10ppm、300℃の重量減少率25%、昭和電工株式会社製)10.00重量部、無機充填材(球状溶融シリカ、SO−25R、平均粒径0.5μm、株式会社アドマテックス社製)40.00重量部を添加し、高速撹拌機を用いて10分撹拌して、樹脂ワニスを得た。金属イオン性不純物の濃度は、(a)金属水酸化物を純水中で80℃、24h処理し、純水中に金属イオンを抽出した後、ICP−MSにてナトリウムイオンを測定した。以下特に断りがない場合は同様に測定した。
【0060】
(2)フィルム付き絶縁樹脂シートの作製
前記で得られた樹脂ワニスを、厚さ25μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの片面に、コンマコーター装置を用いて乾燥後の絶縁樹脂層の厚さが60μmとなるように塗工し、これを160℃の乾燥装置で10分間乾燥して、フィルム付き絶縁樹脂シートを作製した。
【0061】
(3)絶縁樹脂組成物の硬化物の線膨張係数確認
前記で得られたフィルム付き絶縁樹脂シートを2枚準備し、フィルム付き絶縁樹脂シートの絶縁樹脂層面を内側にして重ね合わせ、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させ、その後、熱風乾燥装置にて170℃で60分間加熱硬化行い、フィルムを除去して絶縁樹脂層の厚さが120μmの絶縁樹脂層を得た。得られた絶縁樹脂層から、4mm×40mmのテストピースを切り出し、TMAを用いて5℃/分の引っ張り条件で、25℃での線膨張係数を測定した。結果、25℃における硬化物の線膨張係数は、26ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0062】
(4)金属箔付き絶縁樹脂シートの作製
前記で得られた樹脂ワニスを、厚さ12μmの銅箔(「F2WS−12」、厚さ12μm、古河サーキットフォイル株式会社製)の片面に、コンマコーター装置を用いて乾燥後の絶縁樹脂層の厚さが60μmとなるように塗工し、これを160℃の乾燥装置で10分間乾燥して、銅箔付き絶縁樹脂シートを作製した。
【0063】
(5)多層プリント配線板の作製
所定の内層回路パターンが両面に形成された内層回路基板の表裏に、上記で得られたフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シートの絶縁樹脂層面を内側にして重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させ、その後、熱風乾燥装置にて170℃で60分間加熱硬化行い、多層プリント配線板を得た。
なお、内層回路基板としては、下記のものを使用した。
・絶縁層:ハロゲンフリー FR−4材、厚さ0.4mm
・導体層:銅箔厚み18μm、L/S=120/180μm、クリアランスホール1mmφ、3mmφ、スリット2mm
【0064】
(6)半導体装置の製造
前記銅箔付き絶縁樹脂シートよりなる多層プリント配線板を用い、エッチングすることにより導体回路を形成し、太陽インキ製造(株)製、PSR−4000 AUS703を印刷し、半導体素子搭載パッド等が露出するように、50mm×50mmサイズの半導体装置が得られるように作製された所定のマスクを用いて、露光、現像、熱硬化を行い、回路上のソルダーレジスト層厚さが12μmとなるように形成した。
次に、ソルダーレジスト層から露出した回路層上へ、無電解ニッケルめっき層3μmと、さらにその上へ、無電解金めっき層0.1μmとからなるめっき層を形成した。
得られた多層プリント配線板を50mm×50mmサイズに切断し、15mm×15mmサイズの半導体素子をフリップチップボンダー、リフロー炉にて接合し、アンダーフィルを充填することによって、半導体装置を作製した。
【0065】
(実施例2)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を30.00重量部、フェノキシ樹脂を1.00重量部、洗浄した金属水酸化物(1)を5.00重量部、無機充填材を50.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、20ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0066】
(実施例3)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を25.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を6.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を3.00重量部、洗浄した金属水酸化物(1)を2.00重量部、無機充填材を60.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、17ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0067】
(実施例4)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を19.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を5.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を2.00重量部、フェノキシ樹脂を1.00重量部、洗浄した金属水酸化物(1)を1.00重量部、無機充填材を70.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、10ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0068】
(実施例5)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を17.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を3.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を2.00重量部、フェノキシ樹脂を1.00重量部、洗浄した金属水酸化物(1)を5.00重量部、無機充填材を70.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、8ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0069】
(実施例6)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を12.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を3.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を2.00重量部、フェノキシ樹脂を1.00重量部、紫外線吸収剤を0.01重量部、カップリング剤を0.99重量部、無機充填材を70.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、6ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0070】
(実施例7)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を36.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を9.50重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を5.00重量部、フェノキシ樹脂を1.00重量部、紫外線吸収剤を2.00重量部、カップリング剤を0.50重量部、洗浄した金属水酸化物(1)を30.00重量部、無機充填材を15.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、30ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0071】
(実施例8)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を36.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を0.50重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を5.00重量部、フェノキシ樹脂を10.00重量部、紫外線吸収剤を2.00重量部、カップリング剤を0.50重量部、洗浄した金属水酸化物(1)を30.00重量部、無機充填材を15.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、37ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0072】
(実施例9)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を31.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)は0.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を0.50重量部、フェノキシ樹脂を20.00重量部、紫外線吸収剤を2.00重量部、カップリング剤を0.50重量部、洗浄した金属水酸化物(1)を30.00重量部、無機充填材を15.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、44ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0073】
(実施例10)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を36.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を5.50重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を5.00重量部、フェノキシ樹脂を5.00重量部、紫外線吸収剤を2.00重量部、カップリング剤を0.50重量部、洗浄した金属水酸化物(1)を30.00重量部、無機充填材を15.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、33ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0074】
(実施例11)
フェノキシ樹脂を1.00重量部、紫外線吸収剤を1.50重量部、カップリング剤を0.50重量部、洗浄した金属水酸化物(1)を40.00重量部、無機充填材を10.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、35ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0075】
(実施例12)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を28.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を5.00重量部、洗浄した金属水酸化物(1)を45.00重量部、無機充填材を10.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、40ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0076】
(実施例13)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を28.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を9.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を5.00重量部、フェノキシ樹脂を1.00重量部、洗浄した金属水酸化物(1)を50.00重量部、無機充填材を5.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、50ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0077】
(実施例14)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を36.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を7.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を3.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、26ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0078】
(実施例15)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を29.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を11.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を6.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、30ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0079】
(実施例16)
洗浄した金属水酸化物(1)の代わりに洗浄した金属水酸化物(2)(水酸化アルミニウム、HP−32、平均粒径8.0μm、金属イオン性不純物(ナトリウムイオン)濃度200ppm、300℃の重量減少率30%、昭和電工株式会社製)を10.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、26ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0080】
(実施例17)
洗浄した金属水酸化物(1)の代わりに洗浄した金属水酸化物(3)(水酸化アルミニウム、HP−42M、平均粒径1.0μm、金属イオン性不純物(ナトリウムイオン)濃度400ppm、300℃の重量減少率30%、昭和電工株式会社製)を10.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、26ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0081】
(実施例18)
洗浄した金属水酸化物(1)の代わりに洗浄した金属水酸化物(4)(水酸化アルミニウム、HP−43M、平均粒径0.6μm、金属イオン性不純物(ナトリウムイオン)濃度500ppm、300℃の重量減少率30%、昭和電工株式会社製)を10.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、26ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0082】
(実施例19)
洗浄した金属水酸化物(1)の代わりに洗浄した金属水酸化物(5)(水酸化アルミニウム、HS−320、平均粒径10.0μm、金属イオン性不純物(ナトリウムイオン)濃度20ppm、300℃の重量減少率25%、昭和電工株式会社製)を10.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、26ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0083】
(実施例20)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の代わりにフェノールノボラック型エポキシ樹脂(「エピクロンN-770」、エポキシ当量190、大日本インキ化学工業株式会社製)を34.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、29ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0084】
(比較例1)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を44.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を18.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を14.00重量部、洗浄した金属水酸化物(1)を20.00重量部とし、無機充填材を配合しなかった以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、59ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下の範囲外であることを確認した。
【0085】
(比較例2)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を44重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を0.00重量部、フェノキシ樹脂を30重量部、紫外線吸収剤を0.00重量部、カップリング剤を1.00重量部、洗浄した金属水酸化物(1)を20重量部とし、無機充填材を配合しなかった以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、65ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下の範囲外であることを確認した。
【0086】
(比較例3)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を44.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を19.50重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を10.00重量部、フェノキシ樹脂を0.00重量部、紫外線吸収剤を5.00重量部、カップリング剤を0.50重量部、洗浄した金属水酸化物(1)を20.00重量部とし、無機充填材を配合しなかった以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、54ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下の範囲外であることを確認した。
【0087】
(比較例4)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を36重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を10重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を5重量部、洗浄した金属水酸化物(1)の代わりに未洗浄の金属水酸化物(6)(水酸化アルミニウム、HP−42I、平均粒径1.0μm、金属イオン性不純物(ナトリウムイオン)濃度2800ppm、300℃の重量減少率25%、昭和電工株式会社製)を30.00重量部、無機充填材を15.00重量部とした以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、33ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0088】
(比較例5)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を57重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)を16.00重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2)を7.00重量部、硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)を2.00重量部、無機充填材を15.00重量部とし、洗浄した金属水酸化物(1)を配合しなかった以外は、実施例1と同様にフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置を作製した。尚、絶縁樹脂組成物からなる硬化物の線膨張係数は、48ppmであり、6ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを確認した。
【0089】
実施例および比較例で得られた樹脂組成物、フィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置について、特性の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
評価方法は、以下の通りである。
【0093】
1.熱衝撃試験
前記実施例で作製した半導体装置をフロリナート中で−55℃10分、125℃10分、−55℃10分を1サイクルとして、1000サイクル処理し、テストピースにクラックが発生していないか確認した。
○:クラック発生なし
×:クラック発生
【0094】
2.基板の反り
前記実施例で作製した半導体装置を用い、基板の反りを測定した。
【0095】
3.絶縁信頼性試験
前記実施例で作製したフィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シートよりなる多層プリント配線板を作製し、85℃、85%RH、印加電圧50Vの条件下で1000h処理し、100Vにおける多層プリント配線板の絶縁樹脂層間の絶縁抵抗を測定した。
○:1.0×1010Ω以上
×:1.0×1010Ω以下
【0096】
4.プレス成形性
内層回路銅の厚さが35μm、20mm径のアンクラッドが配列されたパターンのテスト基板上下に、上述のフィルム付き絶縁樹脂シートを各1枚、18μmの銅箔を重ねて、圧力4MPa、温度200℃で2時間加熱加圧成形後、銅箔を全面エッチングしてプレス成形ボイドがないか確認した。
○:成形ボイドなし
×:成形ボイドあり
【0097】
5.算術表面粗さ:Ra
前記実施例で作製した多層プリント配線板を用い、膨潤:80℃、5分、粗化:80℃、10分、中和:40℃、5分の条件でデスミアを行い、基板のRaを測定した。
【0098】
6.ガラス転移温度
線膨張係数の測定で作製した厚さの120μm絶縁樹脂層から10mm×60mmのテストピースを切り出し、動的粘弾性測定装置(DMA983、TAインスツルメント社製)を用いて3℃/分で昇温し、tanδのピーク位置をガラス転移温度とした。
【0099】
7.重量減少率
線膨張係数の測定で作製した厚さの120μm絶縁樹脂層から、絶縁樹脂組成物の硬化物を削り取り、TG−DTAを用い30℃から500℃まで10℃/分の条件で昇温し、((30℃の硬化物重量)−(300℃の硬化物重量))/(30℃の硬化物重量)×100)から重量減少率(%)を算出した。
【0100】
8.難燃性試験
UL−94規格に従い、1mm厚のテストピースを垂直法により測定した。
【0101】
9.吸水率
線膨張係数の測定で作製した厚さの120μm絶縁樹脂層から50mm×50mmのテストピースを切り出し、JIS C 6481に従い測定した。
【0102】
10.ピール強度
前記実施例で作製した多層プリント配線板を用い、JIS C 6481に準拠して測定した。
【0103】
11.吸湿半田耐熱
前記実施例で作製した多層プリント配線板から50mm×50mmに切り出し、JIS C 6481に従い半面エッチングを行ってテストピースを作成した。121℃のプレッシャークッカーで2時間処理した後、260℃のはんだ槽に銅箔面を下にして浮かべ、120秒後の外観異常の有無を調べた。
○:異常なし
×:フクレあり
【0104】
12.粉落ち
厚さ80μmのフィルム付き絶縁樹脂シートを25℃の室温内で押し切りカッターを用いて裁断し、絶縁樹脂の粉落ちの有無を確認した。
○:樹脂の粉落ちが少なく、実用上問題なし
×:樹脂の粉落ちが多く、実用上問題あり
【0105】
13.ビアのメッキ加工性
前記実施例で作製した多層プリント配線板を用いて、波長266nmのUVレーザーによるビア穴開け加工を行い、その後メッキ加工後、走査型電子顕微鏡にてビアの断面を観察した。
○:ビアのメッキ付き性良好
×:ビアのメッキ付き性悪く、接続不良発生
【0106】
14.デラミネーション
厚さ0.6mmの両面銅張多層プリント配線板を用いて、波長266nmのUVレーザーによるビア穴開け加工を行い、走査型電子顕微鏡にてビア底を観察した。
○:デラミネーション発生なし
×:デラミネーション発生
【0107】
表1、表2からも明らかなように、硬化物の線膨張係数を25℃において6ppm/℃以上50ppm/℃以下に制御し、(a)金属水酸化物の金属イオン性不純物が少ない実施例1〜20は、いずれも、絶縁信頼性、難燃性、吸湿耐熱性、ビアのメッキ加工性、デラミネーションにおいて良好な結果であった。
これに対し、硬化物の線膨張係数が59ppmと大きい比較例1は、熱衝撃試験や吸湿半田耐熱試験でクラックやフクレが発生し、難燃性も低下した。
硬化物の線膨張係数が65ppmと大きい比較例2は、熱衝撃性でクラックが発生し、難燃性が低下し、吸湿耐半田耐熱も低下した。また紫外線吸収剤を含有しないため、ビアのメッキ加工性の低下やデラミネーションの発生が生じ、UVレーザー加工時の作業効率が低下した。
硬化物の線膨張係数が54ppmと大きい比較例3は、熱衝撃性でクラックが発生し、難燃性が低下し、吸湿耐半田耐熱も低下した。また絶縁樹脂の粉落ちが発生し、フィルム付き絶縁樹脂シートのハンドリング性が低下した。
比較例4は、金属水酸化物中の金属イオン性不純物の濃度が高く、絶縁信頼性試験で絶縁抵抗が低下し、また吸湿半田耐熱おいては外観異常が発生した。また、比較例5は、(a)金属水酸化物を含有せず、無機充填材の含有量が少ないため、難燃性が著しく低下した。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の絶縁樹脂組成物は、フィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シート、該フィルム付きまたは銅箔付き絶縁樹脂シートを用いた多層プリント配線板、該多層プリント配線板よりなる半導体装置に好適に用いることができるが、その他、難燃性、耐半田性、絶縁信頼性、熱衝撃性等の信頼性にも優れることから、車載用の電子部品装置、例えば、燃料電池自動車およびハイブリッド自動車等のパワーエレクトロニクス機器等やハイブッド車に用いられるモーター駆動用電子部品のチップの保護などに用いる樹脂部分に用いることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層プリント配線板の絶縁樹脂層を形成するために用いる絶縁樹脂組成物であって、前記絶縁樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、25℃において6ppm/℃以上50ppm/℃以下であり、
(a)金属水酸化物、
(b)ノボラック型エポキシ樹脂を含み、かつ、実質的にハロゲン化されていないエポキシ樹脂
を含有し、且つ前記(a)金属水酸化物に含まれる金属イオン性不純物が、500ppm以下であることを特徴とする絶縁樹脂組成物。
【請求項2】
前記絶縁樹脂組成物は、さらに(c)紫外線吸収剤を含有する請求項1記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項3】
前記絶縁樹脂組成物は、(d)金属水酸化物以外の無機充填材を含有する請求項1または2に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項4】
前記(c)紫外線吸収剤は、光電分光光度計測定において200nm以上300nm以下の波長領域に少なくとも一つ以上の吸収ピークを有するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項5】
前記絶縁樹脂組成物の300℃における重量減少率が、15%以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項6】
前記(a)金属水酸化物の平均粒径は、0.1μm以上5μm以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項7】
前記(a)金属水酸化物の300℃における重量減少率は、20重量%以上40重量%以下である請求項1ないし6のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項8】
前記(a)金属水酸化物の含有量が、前記絶縁樹脂組成物の1重量%以上50重量%以下である請求項1ないし7のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項9】
前記(a)金属水酸化物中に含まれる金属イオン性不純物は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、フランシウムイオン、ベリリウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、スズイオン、及び鉛イオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種類以上である請求項1ないし7のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項10】
前記(a)金属水酸化物は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化ガリウム、及び水酸化ジルコニルよりなる群から選ばれる請求項1ないし9のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項11】
前記(d)金属水酸化物以外の無機充填材は、金属酸化物である請求項3ないし10のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項12】
前記金属酸化物は、溶融シリカである請求項11に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項13】
前記(c)紫外線吸収剤は、クマリン構造を有する化合物である請求項2ないし12のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物からなる絶縁樹脂層を、フィルムまたは金属箔に形成してなるフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シート。
【請求項15】
前記絶縁樹脂層は、繊維基材を含有する請求項14に記載のフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シート。
【請求項16】
前記繊維基材は、ガラス繊維である請求項15に記載のフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シート。
【請求項17】
前記繊維基材は、有機繊維である請求項15に記載のフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シート。
【請求項18】
請求項14ないし17のいずれかに記載のフィルム付きまたは金属箔付き絶縁樹脂シートの絶縁樹脂層を内層回路板の内層回路パターンが形成された面に重ね合わせて加熱加圧成形してなる多層プリント配線板。
【請求項19】
請求項18に記載の多層プリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。

【公開番号】特開2008−174662(P2008−174662A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10516(P2007−10516)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】