説明

樹脂組成物及びこれらを用いたフレキシブル配線板

【課題】高温高湿条件下における絶縁信頼性及びスクリーン印刷性に優れた、樹脂組成物、及びこれを用いたフレキシブル配線板を提供する。
【解決手段】(A)成分:ポリカーボネート骨格を含む樹脂と、(B)成分:金属水酸化物と、(C)成分:タルクと、(D)成分:溶剤と、(E)成分:イオン交換体とを含み、前記(B)成分の含有量が(A)成分100重量部に対して20〜100重量部であり、前記(C)成分の含有量が(A)成分100重量部に対して20〜100重量部である樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びこれらを用いたフレキシブル配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の分野においては、小型化、薄型化、高速化への対応から、耐熱性、電気特性及び耐湿性に優れる樹脂としてエポキシ樹脂に代わり、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂が使用されている。これらの樹脂は、樹脂構造が剛直であり薄膜基材に用いた場合、硬化後の基材が大きく反り、硬化膜は柔軟性に欠け、屈曲性に劣る間題がある。そこで、低反り性、柔軟性を改善するために、樹脂を可とう化及び低弾性率化した変性されたポリアミドイミド樹脂(例えば、特許文献1、2及び3参照)が提案されている。
【0003】
近年、電気・電子機器に使用されるプリント配線板には、火災を防止し、安全性を保つという観点から、難燃性が要求されている。フレキシブル配線板の難燃性を確保するために、一般にはハロゲン系難燃剤が用いられている(例えば、特許文献4及び5参照)。また、電気信頼性特性が要求されるので、イオン補足の目的でアンチモン化合物のイオン交換体が用いられている(例えば、特許文献6及び7参照)。しかし、世界的な環境規制の高まりとともにハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を用いない材料の使用が望まれている。
【特許文献1】特開昭62−106960号公報
【特許文献2】特開平08−012763号公報
【特許文献3】特開平07−196798号公報
【特許文献4】特開2002−249639号公報
【特許文献5】特開2003−213078号公報
【特許文献6】特開2000−53870号公報
【特許文献7】特開平09−249737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高温高湿条件下における絶縁信頼性及びスクリーン印刷性に優れ、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を含まないフレキシブル配線板用樹脂組成物、これを用いたフレキシブル配線板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)成分:ポリカーボネート骨格を含む樹脂と、(B)成分:金属水酸化物と、(C)成分:タルクと、(D)成分:溶剤と、(E)成分:イオン交換体とを含み、前記(B)成分の含有量が(A)成分100重量部に対して20〜100重量部であり、前記(C)成分の含有量が(A)成分100重量部に対して20〜100重量部であることを特徴とする樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、印刷性の特性の一つである滲み出しを良好にするために、前記(D)成分がモノテルペン系溶剤を含む樹脂組成物を提供する。
また、前記モノテルペン系溶剤の含有量は、全溶剤重量に対して5〜20重量%であることが好ましい。
また、本発明は、前記(A)成分が、下記一般式(1)
【0006】
【化1】

(式(1)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、複数個のXは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数を示す)で表される構成単位を含む樹脂組成物を提供する。
【0007】
また、本発明の樹脂組成物は、フレキシブル配線板被膜形成用途であることが好ましい。
また、本発明は、前記樹脂組成物の硬化膜を保護膜として有するフレキシブル配線板を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温高湿条件下における、ノンハロゲン系難燃性、スクリーン印刷性及び絶縁信頼性に優れる樹脂組成物及びそれを用いたフレキシブル配線板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
前述のように、本発明にかかる樹脂組成物は、(A)成分:ポリカーボネート骨格を含む樹脂と、(B)成分:金属水酸化物と、(C)成分:タルクと、(D)成分:溶剤とを含み、前記(B)成分の含有量が(A)成分100重量部に対して20〜100重量部であり、前記(C)成分の含有量が(A)成分100重量部に対して20〜100重量部であることを特徴とする。
【0010】
以下、上記樹脂組成物の各成分について詳しく説明する。
((A)成分:ポリカーボネート骨格を含む樹脂)
(A)成分としては、ポリカーボネート骨格を含む樹脂が使用できる。さらに、樹脂組成物から形成する硬化被膜の耐熱性、電気特性、耐湿性、耐溶剤性及び耐薬品性を向上させるためには、ポリカーボネート骨格の他に、樹脂の主鎖中に耐熱性を向上できる成分を導入することが挙げられ、例えば、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂もしくはポリアミド樹脂又はこれらの骨格を有する樹脂が好ましい。中でも、可撓化及び低弾性率化の観点から、ポリカーボネート骨格及びウレタン結合を有する樹脂がより好ましい。また、高耐熱性化の観点から、ポリカーボネート骨格及びイミド結合を含む樹脂が特に好ましい。
よって、本発明の樹脂組成物は、(A)成分が、下記一般式(1)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0011】
【化2】

(式(1)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、複数個のXは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数を示す)
【0012】
本発明において、(A)成分として使用することができる「ポリカーボネート骨格を含む樹脂」は、通常、1,6−ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオール等を、末端にカルボキシル基を有する化合物、酸無水物を有する化合物及び/又は末端にイソシアネート基を有する化合物と反応させることで得られる。
また、本発明において、(A)成分として使用することができる「ポリカーボネート骨格及びイミド結合を含む樹脂」は、通常、(a)成分:酸無水物基を有する三価のポリカルボン酸及びその誘導体、並びに酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸から選ばれる1種以上の化合物と、(b)成分:「ポリカーボネート骨格及びウレタン結合を有する化合物」であるイソシアネート化合物、又はアミン化合物とを反応させて得られる。
上記(a)成分として用いる「酸無水物基を有する三価のポリカルボン酸及びその誘導体」は、特に限定されないが、例えば、下記式(2)及び(3):
【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

(式(2)及び(3)中、R’は、水素、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、Yは、−CH−、−CO−、−SO−、又は−O−である)で示される化合物を使用することができる。
【0015】
上記(a)成分として用いられる「酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸」としては、耐熱性、コスト面等から、トリメリット酸無水物が、特に好ましい。
上記(a)成分として用いられる「酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸」も、特に限定されないが、例えば、下記式(4):
【0016】
【化5】

(式(4)中、Yは、下記式(5):
【0017】
【化6】

で示される複数の基から選ばれる一種である)で示されるテトラカルボン酸二無水物を使用することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
また、これらの他に必要に応じて、酸成分として、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸等)等を併用することができる。この場合、分子鎖中にアミド結合も形成される。
上記(b)成分として用いられるイソシアネート化合物は、例えば、下記式(6):
【0019】
【化7】

(式(6)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基であり、Xは、二価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数である)で示される「ポリカーボネート骨格及びウレタン結合を有する化合物」を用いることができる。
上記式(6)で示される「ポリカーボネート骨格及びウレタン結合を有する化合物」は、下記式(7):
【0020】
【化8】

(式(7)中、Rは、炭素数1〜18のアルキレン基であり、mは、1〜20の整数である)で示されるカーボネートジオール類と、下記式(8):
OCN−X−NCO (8)
(式中、Xは、二価の有機基である)で示されるジイソシアネート類とを反応させることにより得られる。
【0021】
上記式(8)中のXで示される二価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基、又は非置換若しくはメチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基で置換されているフェニレン基等のアリーレン基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、より好ましくは1〜18である。ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、水添ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイル基等の芳香族環を2つ有する基も好ましいものとして挙げられる。
【0022】
上記の式(7)で示されるカーボネートジオール類としては、例えば、α,ω−ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、α,ω−ポリ(3−メチル−ペンタメチレンカーボネート)ジオール等が挙げられ、市販されているものとしては、ダイセル化学株式会社製の商品名「PLACCEL CD−205,205PL,205HL,210,210PL,210HL,220,220PL,220HL」等が挙げられる。これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
また、上記式(8)で示されるジイソシアネート類としては、例えば、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジエチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメトキシジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート化合物及びこれらの水添物;ジフェニルエーテル−4、4’−ジイソシアネート;ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート;トリレン−2,6−ジイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート;p−キシリレンジイソシアネート;ナフタレン−2,6−ジイソシアネート;4,4’−〔2,2ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート類において、式(8)中のXが芳香族環を有する芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
また、上記式(8)で示されるジイソシアネート類としては、本発明の目的の範囲内で、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネート、あるいは三官能以上のポリイソシアネートを使用することができる。
【0025】
上記式(8)で示されるジイソシアネート類は、経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、アルコール、フェノール、オキシム等があるが、特に制限はない。
上記式(7)で示されるカーボネートジオール類と上記式(8)で示されるジイソシアネート類との配合割合は、水酸基数とイソシアネート基数の比率が、イソシアネート基/水酸基=1.01以上になるようにすることが好ましい。
【0026】
上記式(7)で示されるカーボネートジオール類と式(8)で示されるジイソシアネート類との反応は、無溶剤あるいは有機溶剤の存在下で行うことができる。反応温度は、60〜200℃とすることが好ましく、より好ましくは80〜180℃である。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件等により適宜選択することができる。例えば、1〜5L(リットル)のフラスコスケールで2〜5時間とすることができる。
【0027】
このようにして得られる、「ポリカーボネート骨格及びウレタン結合を有する化合物」である化合物(b−1)(イソシアネート化合物)の数平均分子量は、500〜10,000であることが好ましく、1,000〜9,500であることがより好ましく、1,500〜9,000であることが特に好ましい。数平均分子量が500未満であると、反り性が悪化する傾向があり、10,000を超えると、イソシアネート化合物の反応性が低下し、ポリイミド樹脂化することが困難となる傾向がある。
【0028】
なお、本発明において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値とする。また、本発明の数平均分子量及び分散度は、以下のように定義される。
a)数平均分子量(M
=Σ(N)/N=ΣX
(X=分子量Mの分子のモル分率=N/ΣN
b)重量平均分子量
=Σ(N)/ΣN=ΣW
(W=分子量Mの分子の重量分率=N/ΣN
c)分子量分布(分散度)
分散度=M/M
【0029】
上記(b)成分のイソシアネート化合物として、化合物(b−1)以外の化合物(以下、化合物(b−2)とする)を併用することもできる。化合物(b−2)としては、化合物(b−1)以外のイソシアネート化合物であれば、特に限定されず、例えば、ジイソシアネート類、三価以上のポリイソシアネート類等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。化合物(b−2)のイソシアネート化合物の数平均分子量の好ましい範囲は、上記の化合物(b−1)と同様である。特に耐熱性の点から、化合物(b−1)と化合物(b−2)とを併用することが好ましい。なお、単独で用いる場合は、フレキシブル配線板用の保護膜としての柔軟性、反り性の改善等の点から、化合物(b−1)を使用することが好ましい。
【0030】
化合物(b−2)としては、その総量の50〜100重量%が芳香族ポリイソシアネートであることが好ましく、耐熱性、溶解性、機械特性、コスト面等のバランスを考慮すれば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
化合物(b−1)と化合物(b−2)を併用する場合、化合物(b−1)/化合物(b−2)の当量比で0.1/0.9〜0.9/0.1とすることが好ましく、0.2/0.8〜0.8/0.2とすることがより好ましく、0.3/0.7〜0.7/0.3とすることが特に好ましい。当量比がこの範囲にあると、良好な低反り性、密着性と、良好な耐熱性等の膜特性をともに得ることができる。
【0031】
上記(b)成分のうちアミン化合物としては、上記(b)成分のイソシアネート化合物におけるイソシアナト基をアミノ基に転換した化合物が挙げられる。イソシアナト基のアミノ基への転換は、公知の方法により行うことができる。アミン化合物の数平均分子量の好ましい範囲は、上記の化合物(b−1)と同様である。
【0032】
また、(a)成分である「酸無水物基を有する三価のポリカルボン酸又はその誘導体及び/又は酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸」の配合割合は、(b)成分中のイソシアネート基の総数に対する(a)成分中のカルボキシル基と酸無水物基の総数の比が、0.6〜1.4となるようにすることが好ましく、0.7〜1.3となるようにすることがより好ましく、0.8〜1.2となるようにすることが特に好ましい。この比が0.6未満又は1.4を超えると、ポリイミド結合を含む樹脂の分子量を高くすることが困難となる傾向がある。
なお、(a)成分として前記式(2)で示される化合物、(b)成分として化合物(b−1)を用いた場合、次の式(9):
【0033】
【化9】

(式(9)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基であり、Xは二価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数である。)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂を得ることができる。
また、(a)成分として前記式(3)で示される化合物、(b)成分として化合物(b−1)を用いた場合、次の式(10):
【0034】
【化10】

(式(10)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基であり、Xは二価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数であり、Yは、−CH−、−CO−、−SO−、又は−O−である)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂を得ることができる。
また、(a)成分として前記式(4)で示される化合物、(b)成分として化合物(b−1)を用いた場合、次の式(11):
【0035】
【化11】

(式(11)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基であり、Xは二価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数であり、Yは、前記式(5)で示される複数の基から選ばれる基である)で示される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂を得ることができる。
【0036】
本発明において、(A)成分として使用される「ポリカーボネート骨格を含む樹脂」の製造方法における(a)成分:酸無水物基を有する三価のポリカルボン酸及びその誘導体、並びに酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸から選ばれる1種以上の化合物と、(b)成分:イソシアネート化合物又はアミン化合物との反応は、有機溶剤、好ましくは非含窒素系極性溶剤の存在下に、遊離発生してくる炭酸ガスを反応系より除去しながら加熱縮合させることにより行うことができる。
【0037】
上記非含窒素系極性溶剤としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどの含硫黄系溶剤;γ−ブチロラクトン、酢酸セロソルブなどのエステル系溶剤;シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
上記溶剤の内から生成する樹脂を溶解する溶剤を選択して使用するのが好ましい。合成後、そのままペーストの溶剤として好適なものを使用することが好ましい。高揮発性であって、低温硬化性を付与でき、かつ効率良く均一系で反応を行うためには、γ−ブチロラクトンが好ましい。また、溶剤の使用量は、生成する樹脂の0.8〜5.0倍(重量比)とすることが好ましい。0.8倍未満では、合成時の粘度が高すぎて、攪拌不能により合成が困難となる傾向があり、5.0倍を超えると、反応速度が低下する傾向がある。
【0039】
反応温度は、80〜210℃とすることが好ましく、100〜190℃とすることがより好ましく、120〜180℃とすることが特に好ましい。80℃未満では反応時間が長くなり過ぎ、210℃を超えると反応中に三次元化反応が生じてゲル化が起こり易い。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件により適宜選択することができる。
【0040】
また、必要に応じて、三級アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、スズ、亜鉛、チタニウム、コバルト等の金属又は半金属化合物等の触媒存在下に反応を行っても良い。また、合成終了後に、樹脂末端のイソシアネート基をアルコール類、ラクタム類、オキシム類、カルボン酸類、酸無水物類等のブロック剤でブロックすることもできる。なお、(A)成分としてはポリカーボネート骨格を含む熱硬化性樹脂を併用することが好ましい。
【0041】
このようにして得られた樹脂の数平均分子量は、15,000〜50,000であることが好ましく、20,000〜45,000であることがより好ましく、25,000〜40,000であることが特に好ましく、その時の分散度は1.5〜3.5が好ましく、2.0〜3.0がより好ましい。数平均分子量が15,000未満であると、スズメッキ後の膜特性が低下する傾向があり、数平均分子量が50,000を超えると、非含窒素系極性溶剤に溶解しにくくなり、合成中に不溶化しやすい。また、作業性に劣る傾向がある。
【0042】
本発明の樹脂組成物で用いる(A)成分の樹脂は、GPC法で測定した数平均分子量が上記の範囲内であれば、分子量が異なる樹脂を2以上混合しても良い。
また、異なる数平均分子量の樹脂のうち、最小分子量は、数平均分子量で15,000以上であることが好ましい。数平均分子量が15,000未満になると耐湿性や耐熱性が低下する傾向があり、好ましくない。一方、異なる数平均分子量の樹脂のうち、最大分子量は、数平均分子量で50,000以下であることが好ましい。数平均分子量が50,000を超えると樹脂の粘性が高くなり、無機フィラー及び/又は有機フィラーの混合性やスクリーン印刷等の作業性が低下する傾向があり、好ましくない。
本発明で用いられる数平均分子量が異なる樹脂を2以上混合する際の混合比は、GPC法で測定した数平均分子量が上記の範囲内であれば、特に制限なく混合できる。また、樹脂溶液の濃度も制限なく選択できる。
【0043】
((B)成分:金属水酸化物)
本発明の(B)成分である金属水酸化物としては、金属水酸化物であれば、市販品等、特に制限無く使用できる。さらに水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム及びハイドロタルサイト(堺化学株式会社製、商品名「ハイドロタルサイト」)等の金属水酸化物が好適に使用される。上記金属水酸化物は単独で使用してもよいが、場合によっては数種類を併用してもよく、添加量は(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して20〜100重量部であり、30〜90重量部が好ましく、40〜80重量部がより好ましい。20重量部未満であると、難燃効果が発現しにくく、100重量部を超えると、印刷性や作業性が低下する傾向がある。
【0044】
((C)成分:タルク)
本発明の樹脂組成物は、印刷性を向上できる観点から無機フィラーとして(C)成分であるタルクを含むものである。(C)成分であるタルクの含有量は、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、20〜100重量部であり、25〜100重量部が好ましく、30〜80重量部がより好ましく、40〜70重量部が特に好ましい。20重量部未満であると、印刷性が低下する傾向があり、100重量部を超えると、作業性が低下する傾向がある。
【0045】
本発明の樹脂組成物においては、各種特性を向上させる目的で、タルク(3MgO・4SiO・HO)以外の無機フィラーを併用することもできるし、有機フィラーを兼用しても良い。タルク以外の無機フィラーとしては、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、酸化タンタル(Ta)、ジルコニア(ZrO)、窒化珪素(Si)、チタン酸バリウム(BaO・TiO)、炭酸バリウム(BaCO)、チタン酸鉛(PbO・TiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、酸化ガリウム(Ga)、スピネル(MgO・Al)、ムライト(3Al・2SiO)、コーディエライト(2MgO・2Al/5SiO)、チタン酸アルミニウム(TiO−Al)、イットリア含有ジルコニア(Y−ZrO)、珪酸バリウム(BaO・8SiO)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO)、硫酸カルシウム(CaSO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO)、硫酸バリウム(BaSO)、有機ベントナイト、カーボン(C)等を使用することができ、これらの1種又は2種以上を使用することもできる。
【0046】
また、上記有機フィラーとしては、アミド結合、イミド結合、エステル結合又はエーテル結合を有する耐熱性樹脂の微粒子が望ましい。該当する耐熱性樹脂としては、耐熱性と機械特性の観点から、好ましくはポリイミド樹脂又はその前駆体、ポリアミドイミド樹脂又はその前駆体、もしくはポリアミド樹脂の微粒子が用いられる。樹脂溶液に前述のタルク、無機フィラー及び/又は有機フィラーを分散させる方法としては、通常、塗料分野で行われているロール練り、ミキサー混合などが適用され、十分な分散が行われる方法であればよい。
【0047】
タルク以外の無機フィラー及び/又は有機フィラーの含有量は、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、20〜100重量部が好ましく、30〜80重量部がより好ましく、40〜70重量部が特に好ましい。20重量部未満であると、印刷性が低下する傾向があり、100重量部を超えると、作業性が低下する傾向がある。
【0048】
((D)成分:溶剤)
本発明の樹脂組成物に用いられる(D)成分である溶剤としては、非含窒素系極性溶剤として、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどの含硫黄系溶剤;γ−ブチロラクトン、酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸セロソルブなどのエステル系溶剤;シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;リモネン、メントール、テルペネオール、ミルテノール、ミルテナール、β−ピネン、オシメンなどのモノテルペン系溶剤等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
上記溶剤の内、印刷性の観点からは、モノテルペン系溶剤を用いることが好ましい。モノテルペン系溶剤を含む場合、モノテルペン系溶剤の含有量は、全溶剤重量に対して5〜20重量%が好ましく、8〜15重量%がより好ましい。含有量が5重量%未満であると、滲み出し量が増加する傾向がある。含有量が20重量%を超えると、消泡性および作業性が低下する傾向がある。
【0050】
((E)成分:イオン交換体)
本発明の樹脂組成物に用いられる(E)成分であるイオン交換体としては、有機系イオン交換樹脂、無機イオン交換体;例えば、ゼオライト、リン酸ジルコニウム、水酸化ビスマス、ハイドロタルサイト等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。耐熱性、電気信頼特性の観点からは、無機陽イオン交換体を用いることが好ましい。市販品としては、陽イオン交換体IXE100(東亞合成株式会社製)、陰イオン交換体IXE700(東亞合成株式会社製)などが挙げられる。(E)成分であるイオン交換体の含有量は、(A)成分である樹脂固形分100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、5〜40重量部がより好ましく、10〜25重量部が特に好ましい。1重量部未満であると、信頼性が低下する傾向があり、50重量部を超えると、作業性が低下する傾向がある。
【0051】
(その他の樹脂成分)
本発明の樹脂組成物において、熱硬化性を向上させるために、任意に(F)成分として各種エポキシ樹脂を添加することもできるが、ハロゲンを含まないエポキシ樹脂が望ましい。硬化剤としてのエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「エピコート828」等)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製の商品名「YDF−170」等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「エピコート152,154」;日本化薬株式会社製の商品名「EPPN−201」;ダウケミカル社製の商品名「DEN−438」等)、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製の商品名「EOCN−125S,103S,104S」等)、多官能エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「Epon1031S」;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製の商品名「アラルダイト0163」;ナガセ化成株式会社製の商品名「デナコールEX−611,EX−614,EX−614B,EX−622,EX−512,EX−521,EX−421,EX−411,EX−321」等)、アミン型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「エピコート604」;東都化成株式会社製の商品名「YH434」;三菱ガス化学株式会社製の商品名「TETRAD−X」、「TERRAD−C」;日本化薬株式会社製の商品名「GAN」;住友化学株式会社製の商品名「ELM−120」等)、複素環含有エポキシ樹脂(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製の商品名「アラルダイトPT810」等)、脂環式エポキシ樹脂(UCC社製の「ERL4234,4299,4221,4206」等)等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上組合せて使用することができる。これらのエポキシ樹脂のうち、1分子中にエポキシ基を3個以上有するアミン型エポキシ樹脂は、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性の向上の点で特に好ましい。
【0052】
これらの(F)エポキシ樹脂の使用量は、(A)成分として用いる「ポリカーボネート骨格を含む樹脂」100重量部に対して好ましくは1〜50重量部、より好ましくは2〜45重量部、さらに好ましくは3〜40重量部とされる。エポキシ樹脂の配合量が1重量部未満では、硬化性、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性が低下する傾向にあり、50重量部を超えると、耐熱性及び粘度安定性が低下する傾向にある。
【0053】
さらに、これらの(F)エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を1個だけ有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。このようなエポキシ化合物は、(A)成分として用いるポリカーボネート骨格を含む樹脂100重量部に対して0〜20重量部の範囲で使用することが好ましい。このようなエポキシ化合物としては、n−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等がある。また、3,4−エポキシシクロヘキシル、メチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物を使用することができる。
【0054】
上記(F)エポキシ樹脂の添加方法としては、添加するエポキシ樹脂を(A)成分として用いる「ポリカーボネート骨格を含む樹脂」を溶解する有機溶剤と同一の有機溶剤に溶解してから添加してもよく、また、直接添加してもよい。
【0055】
また、本発明にかかる樹脂組成物においては、種々特性を向上させるために、上記成分の他に、消泡剤又はレベリング剤を用いられることができる。
かかる消泡剤またはレベリング剤の市販品としては、「KS−602A」、「KS−603」、「KS−608」、「FA600」(以上、信越化学工業株式会社製の商品名)、「BYK−A506」、「BYK−A525」、「BYK−A530」、「BYK−A500」、「BYK−A500」、「BYK−A501」、「BYK−A515」、「BYK−A555」、「Byketol−OK」(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製の商品名)、「ARUFON UP−1000」(東亜合成株式会社社製の商品名)等が好適に使用されるが、特に種類には制限はない。
【0056】
上記消泡剤又はレベリング剤は単独で使用してもよいが、場合によっては数種類を併用してもよく、添加量は樹脂組成物の樹脂固形分に対して1重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜18重量%がより好ましい。添加量が1重量%未満であると、脱泡性や成膜性が低下する傾向がある。添加量が25重量%を超えると、脱泡性は向上するが形状保持性が低下する傾向がある。
【0057】
本発明になる樹脂組成物は、各々、フレキシブル配線板の保護用樹脂組成物として好適に用いられる。この樹脂組成物には、塗工時の作業性及び被膜形成前後の膜特性を向上させるため、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、染料又は顔料などの着色剤類、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤等を添加することもできる。
【0058】
また、本発明のフレキシブル配線板は、上記本発明の樹脂組成物を、フレキシブル配線板の配線パターンにスクリーン印刷した後、熱硬化させて硬化膜を形成し、保護膜としたことを特徴とする。熱硬化の条件は、保護膜として好適な低反り性、柔軟性を得る観点から、好ましくは、80〜160℃が好ましく、120〜150℃がより好ましい。この範囲は特に制限はなく、上記の観点を除外すれば、例えば、50〜200℃、さらには50〜170℃の範囲で硬化させることもできる。また、加熱時間は、保護膜として好適な低反り性、柔軟性を得る観点から、60〜150分が好ましく80〜120分がより好ましい。この範囲は特に制限はなく、上記の観点を除外すれば、1〜1000分、好ましくは5〜300分、さらには10〜150分の範囲で硬化させることもできる。
【0059】
上述の構成を有する本発明の樹脂組成物は、各々、例えば、電子部品用オーバーコート材、液状封止材、エナメル線用ワニス、電気絶縁用含浸ワニス、注型ワニス、マイカ、ガラスクロス等の基材と組み合わせたシート用ワニス、MCL積層板用ワニス、摩擦材料用ワニス、プリント基板分野などにおける層間絶縁膜、表面保護膜、ソルダレジスト層等の電子部品にも使用でき、被膜形成材料として好適に用いられる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに制限するものではない。
実施例1
攪拌機、油水分離器付き冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた5リットルの四つ口フラスコに、PLACCEL CD−220(ダイセル化学株式会社製1,6−ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオールの商品名)1000.0g(0.50モル)及び4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート250.27g(1.00モル)と、γ−ブチロラクトン833.51gを仕込み、140℃まで昇温した。
140℃で5時間反応させ、ジイソシアネート化合物を得た。さらに、この反応液に無水トリメリット酸288.20g(1.50モル)、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート125.14g(0.50モル)及びγ−ブチロラクトン1361.14gを仕込み、160℃まで昇温した後、6時間反応させて、数平均分子量が18,000のポリカーボネート骨格を含む樹脂(A)を得た。得られた樹脂(A)を酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチルで希釈し、粘度260Pa・s、不揮発分54重量%の樹脂溶液を得た。
【0061】
得られた前記樹脂溶液の樹脂分100重量部に対して、(F)成分としてYH−434(東都化成株式会社製アミン型エポキシ樹脂の商品名、エポキシ当量約120、エポキシ基4個/分子)10重量部と、酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチルを加え、さらにモノテルペン系溶剤であるリモネンを加え、(C)成分であるタルク(日本タルク株式会社製、平均粒子径4.7μm)70重量部、(B)成分として水酸化マグネシウム(堺化学株式会社製、平均粒子径1.0μm以下)50重量部、(E)成分として陽イオン交換体IXE100(東亞合成株式会社製)13.5重量部を加え、さらに2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチルで希釈し、モノテルペン系溶剤であるリモネンが全溶剤量の12重量%になるように調製し、まず粗混練し、次いで高速3本ロールを用いて3回混練を繰り返して本混練を行い、均一にタルク、水酸化マグネシウム及び陽イオン交換体が分散した樹脂組成物R−1を得た。
【0062】
実施例2
実施例1において(B)水酸化マグネシウムを20重量部に変更した以外は、実施例と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−2を得た。
【0063】
実施例3
実施例1において(B)水酸化マグネシウムを100重量部に変更した以外は、実施例と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−3を得た。
【0064】
実施例4
実施例1において(B)水酸化マグネシウムを20重量部、(C)タルクを20重量部に変更した以外は、実施例と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−4を得た。
【0065】
実施例5
実施例1において(B)水酸化マグネシウムを50重量部、(C)タルクを20重量部に変更した以外は、実施例と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−5を得た。
【0066】
実施例6
実施例1において(B)水酸化マグネシウムを100重量部、(C)タルクを20重量部に変更した以外は、実施例と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−6を得た。
【0067】
実施例7
実施例1において(B)水酸化マグネシウムを20重量部、(C)タルクを100重量部に変更した以外は、実施例と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−7を得た。
【0068】
実施例8
実施例1において(B)水酸化マグネシウムを50重量部、(C)タルクを100重量部に変更した以外は、実施例と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−8を得た。
【0069】
実施例9
実施例1において(B)水酸化マグネシウムを100重量部、(C)タルクを100重量部に変更した以外は、実施例と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−9を得た。
【0070】
実施例10
実施例1において(D)モノテルペン系溶剤(リモネン)を全溶剤量の8重量%になるように調製した以外は、実施例1と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−10を得た。
【0071】
実施例11
実施例1において(D)モノテルペン系溶剤(リモネン)を全溶剤量の20重量%になるように調製した以外は、実施例1と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−11を得た。
【0072】
実施例12
実施例1において(D)モノテルペン系溶剤を全溶剤量の0重量%になるように変更した以外は、実施例1と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−12を得た。
【0073】
実施例13
実施例1において(D)モノテルペン系溶剤(リモネン)を全溶剤量の25重量%になるように調製した以外は、実施例1と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−13を得た。
【0074】
実施例14
実施例1において(D)モノテルペン系溶剤(リモネン)を全溶剤量の5重量%になるように調製した以外は、実施例1と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−14を得た。
【0075】
実施例15
実施例1において(D)モノテルペン系溶剤を、リモネンからβ−ピネンに変更した以外は、実施例1と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−15を得た。
【0076】
比較例1
実施例1において(B)水酸化マグネシウムを110重量部に変更した以外は、実施例1と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−16を得た。
【0077】
比較例2
実施例1において(B)水酸化マグネシウムを10重量部に変更した以外は、実施例1と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−17を得た。
【0078】
比較例3
実施例1において(C)タルクを10重量部に変更した以外は、実施例1と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−18を得た。
【0079】
比較例4
実施例1において(C)タルクを110重量部に変更した以外は、実施例1と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−19を得た。
【0080】
比較例5
実施例1において(E)無機陽イオン交換体を0重量部に変更した以外は、実施例1と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て樹脂組成物R−20を得た。
【0081】
次に、上記の実施例1〜15及び比較例1〜5で得られた樹脂組成物の特性を下記の方法で測定し、その結果を表1〜表3に示した。
(1)消泡性
60μmピッチ(L/S=30μm/30μm)の櫛型配線を有するすずめっき済み(フラッシュめっき)TAB基材に得られた樹脂組成物を印刷機(ニューロング株式会社製、商品名:LZ−045)とメッシュ版(株式会社ムラカミ製、150メッシュ)で印刷速度100mm/secで25mm角を印刷し、空気雰囲気中90℃で3.5分乾燥後、空気雰囲気中150℃で90分加熱硬化して得られた樹脂被膜について万能投影機(ニコン株式会社製、倍率50倍)で樹脂被膜表面状態を、○:表面にピンホールなし、×:表面にピンホールあり、として評価した。サンプル数は3つである。
(2)滲み出し
60μmピッチ(L/S=30μm/30μm)の櫛型配線を有するすずめっき済み(フラッシュめっき)TAB基材に得られた樹脂組成物を印刷機(ニューロング株式会社製、商品名:LZ−045)とメッシュ版(株式会社ムラカミ製、150メッシュ)で印刷速度100mm/secで25mm角を印刷し、空気雰囲気中90℃で3.5分乾燥後、空気雰囲気中150℃で90分加熱硬化して、樹脂組成物の硬化物を得た。前記硬化物を、万能投影機(ニコン株式会社製、倍率100倍)を使用し、観察した結果、樹脂組成物の印刷直後からの移動距離(平均値)を滲み出し量とした。サンプル数は3つである。
【0082】
(3)信頼性(絶縁信頼性)試験
60μmピッチ(L/S=30μm/30μm)の櫛型配線を有するすずめっき済み(フラッシュめっき)TAB基材上に得られた樹脂組成物を硬化後の膜厚が20μmになるように印刷し、150℃、90minの硬化を行う。得られた樹脂被膜を温度130℃、湿度85%の環境下に設置しDC100Vの電圧を連続して印加する。100時間後の絶縁抵抗(10Ω以上)の保持率を求めた。サンプル数は3つである。
(4)難燃性
燃焼試験用に3層TAB基材の銅箔をエッチングした2層TAB基材[ポリイミド厚75μm、接着剤厚22μm)]に試料を印刷し、150℃/90min硬化後、長さ127mm、幅12.7mmに裁断した試験片(サンプル)を5枚作製した。燃焼試験はUL94垂直試験の規格に準じて行った。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
表1から表3に示すように、実施例1〜15は、難燃性と、さらに温度130℃、湿度85%の環境下に設置しDC100Vの電圧を100時間連続して印加し続けても絶縁抵抗は維持されるなど絶縁信頼性は良好であることがわかった。また、実施例1〜11、14,15は、印刷性も良好であった。なお、モノテルペン系溶剤の含有量が0重量%の実施例12は、滲み出し量がやや大きいこと、モノテルペン系溶剤の含有量が25重量%の実施例13は、消泡性が劣ることがわかった。それに対し、比較例1〜5は絶縁抵抗が低下してしまうなど絶縁信頼性、あるいは難燃性に大きな問題があることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:ポリカーボネート骨格を含む樹脂と、(B)成分:金属水酸化物と、(C)成分:タルクと、(D)成分:溶剤と、(E)成分:イオン交換体とを含み、前記(B)成分の含有量が(A)成分100重量部に対して20〜100重量部であり、前記(C)成分の含有量が(A)成分100重量部に対して20〜100重量部であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
(D)成分がモノテルペン系溶剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
モノテルペン系溶剤の含有量が、全溶剤重量に対して5〜20重量%であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分が、下記一般式(1)
【化1】

(式(1)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、複数個のXは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数を示す)で表される構成単位を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
フレキシブル配線板被膜形成用樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化膜を保護膜として有することを特徴とするフレキシブル配線板。

【公開番号】特開2009−185200(P2009−185200A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27595(P2008−27595)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】