説明

樹脂製キャップ

【課題】成形加工時に発生する外観不良を低減した、光輝性を有する樹脂製キャップを提供する。
【解決手段】本発明は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、光輝剤0.1〜5質量部と、該光輝剤とは異なる着色剤0.01〜1質量部とを配合した熱可塑性着色樹脂組成物を成形してなる樹脂製キャップであって、該樹脂製キャップ表面の表色値が、CIE1976(L***)表色系による2度及び/又は10度視野等色関数である明度指数(L*)において、外観不良部最大値をL*1、外観良好部平均値をL*2とするとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする樹脂製キャップである。
0.01≦ΔL*=|(L*1)−(L*2)|≦5 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形加工時に発生する外観不良を低減した、光輝性を有する樹脂製キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
光輝剤は、パール調やメタリック調のように、外観への高い意匠感を与え、高品質が求められる家電製品や自動車車体等、多くの分野で利用され、中でも樹脂成形物への光輝性付与を目的とした様々な提案がなされている。
従来より、成形加工品に光輝性等の意匠性を与える方法として、成形加工品に光輝性材料を塗装する方法(特許文献1)がある。かかる方法は、塗装する複雑な工程から、手間と時間がかかり、更に環境対応等による負荷が高い。また、傷つきによって塗装が剥がれ意匠性を損ない易い。
他方、樹脂と光輝性材料を混合し、成形加工品を得る方法(特許文献2)が開示され、特許文献2には、特許文献1における前記課題に関するデメリットの少ない技術である。しかしながら、樹脂の成形加工時に発生する外観不良における対策がなされていない。一般に外観不良の発生を伴う成形加工に関し、例えば、射出成形においては、特に樹脂注入口ゲートが複数ある場合に発生し、熱可塑性樹脂の流動体が接触する部分に発生する着色剤由来の外観不良が大きな課題となる。また、ゲートが単数であれば、外観不良は発生しにくいが、単数であっても、樹脂中の流路が分岐する部分の存在によって、かかる外観不良が発生する。更に、ゲート位置やゲート個数、或いは流路等の金型設計技術での試みは効果的であるが、かかる制限を加えた金型設計を行うと、成形物形状等への制限も加えられ、複雑な形状の成形物や意匠性の優れたデザインの成形物作成が困難となる。即ち、着色樹脂成分から外観不良への対応策を検討する方法は、例えば、成形物の金型設計等には制限を与えない。
【0003】
また、熱可塑性樹脂、光屈折率1.8以上のウェルド消去剤、着色剤、光輝剤からなる樹脂組成物が、ウェルドラインを目立たなく、且つ光輝性を持つとされた樹脂組成物(特許文献3)が開示されている。
しかしながら、ウェルド消去剤の光屈折率1.8以上である条件は、実施例上不明確であり、且つ樹脂組成物となる着色剤の顔料又は染料における添加量に制限が無く、実験的事実によりかかる方法が普遍的ではないことを示唆している。また、ウェルドライン限定の外観と、光輝性に関する外観評価を顕微鏡と裸眼にて実施するため、明確な比較が困難である。例えば、シルバー調のパール顔料に、ウェルド消去剤の粒径0.3μmの酸化チタンを添加し、射出成形物を得る場合、酸化チタンのもつ着色力が高いために成形物のシルバー調が損なわれ、光輝性の低い白色調の成形物となってしまう。又、酸化チタンの添加量を極微量とした場合は、色調に対する影響が低減されるも、かかる外観不良が発生してしまう。さらに、ゴールド調パール顔料に酸化チタンを添加する場合も同様に、かかる外観不良を低減するには至らない。
以上の他、優れた顔料分散性を有し、色ムラ、色分かれの無い、外観良好な着色樹脂成形品(特許文献4)が開示されている。しかしながら、特許文献4では、物品表面の外観不良を改善するも、該表面評価、判断の方法を目視だけによる方法のため、比較が難しく低精度であり、不明確である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−314813号公報
【特許文献2】特開2007−84721号公報
【特許文献3】特開平8−239505号公報
【特許文献4】特開2006−316178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ウェルド消去剤等を使用せず、成形加工時に発生する外観不良を低減した、光輝性を有する樹脂製キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、樹脂製キャップ表面の表色値を測定し、その結果を基に、樹脂製キャップを形成する熱可塑性樹脂に配合する、光輝剤及び/又は該光輝剤とは異なる着色剤の量を決定することにより、前記の目的を達成することを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、光輝剤0.1〜5質量部と、該光輝剤とは異なる着色剤0.01〜1質量部とを配合した熱可塑性着色樹脂組成物を成形してなる樹脂製キャップであって、該樹脂製キャップ表面の表色値が、CIE1976(L***)表色系による2度及び/又は10度視野等色関数である明度指数(L*)において、外観不良部最大値をL*1、外観良好部平均値をL*2とするとき、下記式(1)
0.01≦ΔL*=|(L*1)−(L*2)|≦5 (1)
を満たすことを特徴とする樹脂製キャップ、を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成形加工時に発生する外観不良を低減した、光輝性を有する樹脂製キャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の樹脂製キャップを示す外観図、上面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の樹脂製キャップは、該樹脂製キャップ表面の表色値が、CIE1976(L***)表色系による2度及び/又は10度視野等色関数である明度指数(L*)において、外観不良部最大値をL*1、外観良好部平均値をL*2とするとき、下記式(1)
0.01≦ΔL*=|(L*1)−(L*2)|≦5 (1)
を満たすように、熱可塑性樹脂100質量部に対し、光輝剤0.1〜5質量部と、該光輝剤とは異なる着色剤0.01〜1質量部とを配合したものである。
上記範囲ΔL*は、例えば、あるゲート位置のヒンジキャップであれば、上蓋ツバ部、上蓋側面部等の分光反射率測定により算出されるL*により調節される。測定数は特に限定されず、精度等に応じて選択され、例えば5点測定から得られた外観良好部平均値をL*2とし、L*2に基づき平均値から大きく外れた部位、即ち外観不良部最大値をL*1とするとき、着色剤添加量により、前記範囲内に調節される。
上記ΔL*の範囲とすることにより、樹脂製キャップ表面の良好な外観への調整が可能となり、同時に必要な光輝性を損なうことなく発現される。また、一般にコスト面を考慮すれば、ΔL*は、0.1以上、2以下であるとより好ましい。
なお、本発明において、外観不良部とは、例えば、色ムラ、色分かれ、ウェルドライン、フローマーク等が目視で確認できる状態を言い、外観良好部とは、そのような不良部が目視で確認できない状態を言う。
【0010】
上記式において、ΔL*値が0に近づく程、高品質な外観良好性を得られるが、0.01未満では表面の凹凸による誤差や機器誤差から生じるブレ幅の影響を受け、非効率である。また、ΔL*値が5を超えると、成形物の外観不良が肉眼ではっきり確認できる状態であるので好ましくない。
なお、CIE1976L***表色系とは、CIE(国際照明委員会:Commission International de l' Eclairage)が1976年に推奨した色空間で、L*が明度を、a*、b*が色度となる色相、彩度を表し、現在、多くの分野で利用されている。
【0011】
前記表色値が、分光計による連続した測定により検出した測定値又はそれより算出した分光反射率より得られる値であると好ましい。
また、本発明においては、樹脂製キャップ表面のL*の測定に関し、例えば、変角分光測色計を用いて、CIE1976L***表色系規定の色彩評価を行い、高精度な光輝性に関する品質評価が特徴である。
そして、上記ΔL*値の範囲を満たすことに加え光輝性を有する成形品の表色値の測定において、CIE1976(L***)表色系による2度及び/又は10度視野等色関数である明度指数(L*)として、入射角45°正反射方向0°から入射光側へ15°戻る角度により測定される値をL*15、入射角45°正反射方向0°から入射光側へ45°戻る角度により測定される値をL*45、入射角45°正反射方向0°から入射光側へ110°戻る角度により測定される値をL*110とするとき、下記式(2)及び(3)
FI値={(L*15)−(L*110)}/(L*45)>1.5 (2)
(L*15)>90 (3)
の関係を満たすことが好ましい。
式(2)において、1.5を超えていれば、樹脂製キャップ表面に、十分な金属光沢感が得られ、式(3)において、90を超えていれば、明度が高く、十分な反射性が得られる。
詳しくは、フロップインデックス値(FI値)とは、X−Rite社による測色値指標であり、着色表面に、標準光源(D66)下、15゜、45゜、110゜の角度で測色したJIS規定の反射光強度である。
【0012】
このように、例えば、色ムラ、色分かれ、ウェルドライン、フローマーク等による外観不良部とその周辺部の良好部におけるL*の測定を行い、同時に、分光計による、成形物表面の一定範囲における連続測定から測色値データを算出し、外観状態の位置特定と高精度な比較評価を可能とすることで、熱可塑性樹脂に対し、光輝剤、該光輝剤とは異なる着色剤、その他の添加剤の配合量として、最適な条件を導き出すことができる。そして、調製した熱可塑性着色樹脂組成物を成形加工して得られた樹脂製キャップは、高精度に外観不良部が低減されている。
【0013】
前述の通り、本発明の樹脂製キャップの成形に用いる熱可塑性着色樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、光輝剤0.1〜5質量部と、該光輝剤とは異なる着色剤0.01〜1質量部とを配合したものであり、さらに、コスト面を考慮し、光輝剤は0.1〜3質量部であると好ましく、同時に該光輝剤とは異なる着色剤は0.01〜0.5質量部であると好ましい。
上記配合量に関し、光輝剤が0.1質量部未満の場合、目的とする光輝性が得られず、5質量部を超える場合は、均一な分散が困難なため、外観不良の原因となり、コスト面でも課題がある。また、該光輝剤とは異なる着色剤の配合は、目的色を高精度に作り出す微調整のためであり、0.01質量部以上であれば、必要な効果が得られ、1質量部を超える場合は、光輝性を損なう原因となり、前記同様、コスト的な課題がある。また、必要に応じ、熱可塑性着色樹脂組成物に分散剤を配合しても良く、極微量で効果が得られるが、分散効果を得るため0.001質量部以上であると好ましく、樹脂製キャップの耐熱性を下げたり、臭気性に影響を与えることが無いように1質量部以下であると好ましい。
【0014】
本発明にて使用される熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル/エチレン・ジエン・プロピレン/スチレン樹脂(AES)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ABS・PCアロイ、プロピレン−エチレン共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、アクリロニトリルースチレンーアクリレートゴム共重合体樹脂(ASA)、アクリル樹脂,ゴム変性アクリル樹脂,塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリアセタール樹脂(POM)等を使用することができる。さらに、これらのブレンド品やポリマーアロイ品などが挙げられる。
本発明の顔料(光輝剤)の特性、すなわち、ウェルドラインが目立たない優れたパール感を特に強調するには、これらの熱可塑性樹脂の中でも、透明性に優れたものを用いるのが好ましい。具体的には、ポリスチレン樹脂,AS樹脂,透明ABS樹脂,アクリル樹脂,ゴム変性アクリル樹脂,PC樹脂などに本発明のパール調顔料を添加して用いるのが効果的であるが、キャップ成型性や強度特性を踏まえてポリエチレン、ポリプロピレン樹脂等ポリオレフィン系樹脂が使用されることもある。使用される熱可塑性樹脂は、単独でも2種以上使用しても良い。さらに、成型時の加工性、着色材の加工性等を踏まえて、熱可塑性樹脂は、MFR(メルトフローレート)が0.1〜100g/10minのものが好ましい。
【0015】
本発明にて使用される光輝剤は、熱可塑性着色樹脂組成物の原料であり、樹脂製キャップ表面に再帰反射特性や光散乱性を与え、見る角度で色調が変化する材料として有効な、光輝性材料である。好ましくは、パールマイカ顔料である、天然雲母(マイカ)や合成マイカに、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化すず、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、及び酸化コバルト等の金属酸化物の群から複数又は単一を選んで被覆してなるものが使用できる。
特に、マイカに酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化アルミニウムを被覆したシルバー調パール顔料(平均粒径1〜100μm)、及びマイカに酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化銅を被覆したゴールド調パール顔料(平均粒径1〜100μm)を使用するのが好ましい。また色調やメタリック感を与えるために異種光輝性材料を併用することも好ましい形態のひとつである。
【0016】
本発明にて使用される、該光輝剤とは異なる着色剤としては特に限定されず、従来公知のものが使用でき、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。
前記有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系、ベンズイミダゾロン系、アゾ系、アゾメチンアゾ系、アゾメチン系、アンスラキノン系、ぺリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリン系、イソインドリノン系顔料等やカーボンブラック顔料等が挙げられ、前記無機顔料としては、例えば、体質顔料 、酸化チタン系顔料 、酸化鉄系顔料 、スピンネル顔料等が挙げられる。更に詳細には、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系、チオインジゴ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等の従来公知の顔料が使用できる。
【0017】
前記染料としては、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、カチオン染料、媒染染料、酸性媒染染料、硫化染料、ナフトール染料、分散染料、反応染料等の従来公知の染料が使用できる。
【0018】
上記顔料又は染料は、顔料分散液(着色剤)の用途に応じて、種類、粒子径、処理方法を選んで使用することが好ましく、用途として隠蔽力を必要とする場合や、着色物に透明性を望む場合等、種類や粒子径等を適宜選択すればよく、以上の光輝性材料以外に、着色のために通常用いられる有彩色顔料を含むのも好ましい。
【0019】
本発明で用いる熱可塑性着色樹脂組成物には、前記光輝剤、該光輝剤とは異なる着色剤に加え、その他の添加剤としての配合も好ましく、例えば、酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等を使用することもできる。また、成形物の滑性向上のため、脂肪酸アマイド、脂肪酸エステル、その他の脂肪酸化合物、低分子量樹脂ワックス類、シリコン化合物、フッソ化合物等を使用することもできる。さらに、成形品の帯電防止性能を得るために、脂肪酸アミン、脂肪酸アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、スルホン酸化合物等を使用することもできる。
さらに、光輝剤や該光輝剤とは異なる着色剤の配合による分散性を考慮し、例えば脂肪酸金属塩、低分子量ワックスを添加することも好ましい様態である。
【0020】
本発明の熱可塑性着色樹脂組成物は、一般にバンバリーミキサー,ナウターミキサー,混練ロール,又は一軸、二軸押し出し機などにより、溶融混合、分散処理されて着色樹脂組成物を得ることが出来る。また混練前に分散均一化する目的で、タンブラーミキサー、ブレンダー、高速混合機といった予備分散を行う。
得られた熱可塑性着色樹脂組成物の成形方法としては、限定されないが、射出成形、射出圧縮成形、圧空成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、押し出し成形等の公知の方法で、所定の形状に成形され、射出成形が好ましい。このとき、目的に応じて熱安定剤,耐候安定剤,滑剤,顔料分散剤,静電気防止剤などの添加剤を添加することができる。また、また、意匠性に応じて、前記光輝剤以外の顔料や染料を添加することができる。
【0021】
本発明の樹脂製キャップの形状は特に限定されないが、例えば、天面壁と該天面壁の周縁から垂下する外側壁とからなるキャップ本体と、該キャップ本体の外側壁上端にヒンジ連結された上蓋とからなるヒンジキャップにおいて特に有効である。
ヒンジキャップは、天面壁の内面には、外側壁とは間隔を置いて下方に延びているインナーリングが形成され、このインナーリングとスカート部との間の空間に容器口部が嵌め込まれることにより、キャップ本体は、容器口部に装着され、外側壁の下部内周面に形成されている係止部が容器口部外周面と係止されるようになっている。
また、天面壁には、注出用開口を形成するためのスコアが形成されており、天面壁の上面側には、スコア破断用のプルリングが支柱を介して設けられ、このプルリングを引っ張
ることにより、スコアが破断されて、内容物を注ぎ出すための開口が天面壁に形成されるようになっている。
【0022】
さらに、天面壁の上面側には、スコアを取り囲むようにして、注出液案内用の注出筒部が形成されており、注出用開口を介して注ぎ出された内容液は、この注出筒部によって案内される。この注出筒部の上端は、ラッパ状に広がって液の排出をスムーズに行い得るようになっており、また、後述するヒンジ連結部側において、注出筒部の背が低く形成され、上蓋を閉じるときに上蓋の旋回を妨害しないように構成されている。また、注出筒部の外側には、上蓋を保持するための係止突起が形成されている。
【0023】
上蓋は、頂面壁と、頂面壁の周縁から延びている外側壁とから形成されている。頂面壁の内面には、シール用の周状突起が形成され、上蓋を旋回して閉じたとき、シール用の周状突起が注出液案内用の注出筒部の内面に密着し、この密着により、スコアを破断しての注出用開口形成後のシール性が確保される。
また、上蓋の外側壁の内面下方部分には、内方突部が形成されており、前述したキャップ本体の係止突起の上端の外方突部が、この内方突部と係合することにより、閉じられた上蓋が安定に保持されるようになっている。更に、上蓋の外側壁の外面には、前述したヒンジ連結部とは反対側部分に、開封用鍔が設けられている。この開封用鍔を指で引っ掛けて上蓋を上方に持ち上げることにより上蓋の開封を容易に行うことができる。
【0024】
このヒンジキャップを成形する場合には、通常キャップ本体の天面壁の上面中心位置から射出することにより成形されることとなる。この場合、従来はキャップ本体スカート部と上蓋の外側壁のヒンジ連結された部分の反対側の位置にウェルドラインができ、外観不慮が発生していたが、本発明に係るヒンジキャップにおいては、このような外観不良が低減されている。
【実施例】
【0025】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
リニア低分子用ポリエチレン(日本ユニカ社製 G5391)100質量部に対してゴールド調パール顔料(メルク・ジャパン社製 イリオジン(IRIOZIN)302)を0.1質量部、分散剤(日本油脂社製 マグネシウムステアレート)0.01質量部と低分子量ポリエチレン(ハネウェル社製 ACポリエチレン6)0.015質量部と顔料(大日精化工業社製 イエロー♯9151)0.015質量部を配合し、混合機(日水化工社製 TM50)にて30rpm、3分間混合した。混合物を単軸押出機(マース精機社製 40mm押出機)に投入し混練造粒を行った。加工条件は、シリンダー温度C1〜H=160℃、スクリュー回転速度50rpmであった。このように熱可塑性着色樹脂組成物を得た。
【0026】
次に、以下のようにして、評価用成形品を作製し、その表面のウェルド評価、ΔL*値、FI値、L*15値の測定を行った結果を表1に示す。
(評価用成形品の作製)
得られた着色樹脂組成物を射出成形機(JSW社製 J100ED)に投入して評価用成形品を作成した。成形条件は、シリンダー温度=230℃、金型温度=40℃、射出圧力=145kg/cm2、背圧15kg/cm2、射出速度=36mm/秒、金型冷却時間20秒であった。
評価用成形品の形状は、テスト用成形物(成形物A:長さ205mm×幅10mm×厚さ8mmの試験片)である。更に図1のように、キャップ本体(a)とヒンジ部(b)連結の着脱自在な上部キャップ(c)から構成され、容器本体口筒部に装着するキャップとなる代表的用途として、ヒンジキャップ(成形物B:本体直径40mm×高さ30mm)とし、表面の評価を前記テスト用成形物と同様な方法にて行った。
(ΔL*値の測定)
評価用成形品は、スキャン式分光光度計による連続測定を行い、良好部から外観不良部までを直線的に走査させて移動方向のL***値を得た。これをグラフ化し、外観不良部の最大値をL*1と、良好部のL*値の平均値をL*2とした。これよりΔL*=|(L*1)−(L*2)|を算出し、得られた値を表色値とし外観不良の評価を行った。
(FI値及びL*15の測定)
次に変角測色計を用いて、フリップフロップ値を算出した。
測定には表面が平滑で汚れ付着のない色調評価用成形品を使用した。変角分光測色計(X−Rite社製 MA68型、D65光源、10度視野)にて測色した。測色角は、15度、25度、45度、75度、110度の角度で受光させた。測定結果よりFI値を求めた。
なお、FI値とは、光輝性を有する成形品の表色値の測定において、CIE1976(L***)表色系による2度及び/又は10度視野等色関数である明度指数(L*)として、入射角45°正反射方向0°から入射光側へ15°戻る角度により測定される値をL*15、入射角45°正反射方向0°から入射光側へ45°戻る角度により測定される値をL*45、入射角45°正反射方向0°から入射光側へ110°戻る角度により測定される値をL*110とするとき、
FI値={(L*15)−(L*110)}/(L*45)>1.5
の関係を満たす表色値をFI値という。
FI値と、入射角45°正反射方向0°から入射光側へ15°戻る角度により測定される値(L*15)を表1に示す。
(キャップ表面状態の評価)
(ウェルド状態の確認)
評価用成形品の表面のウェルド状態を目視にて確認した。ウェルドラインとしてほとんど認識出来ないものを○、はっきりと認識出来るものを×と判定した。
(光沢感の確認)
評価用成形品の表面の光沢感の有無を目視にて確認した。十分な金属光沢感があるものを○、ないものを×と判定した。
【0027】
実施例2〜5
熱可塑性着色樹脂組成物の組成を表1に記載の添加量に代えた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性着色樹脂組成物を得た。その後、実施例1と同様にして、評価用成形品を作製し、その表面のウェルド状態、光沢感の確認、ΔL*値、FI値、L*15値の測定を行った結果を表1に示す。
【0028】
実施例6
熱可塑性着色樹脂組成物の組成を表1に記載の添加量及び光輝剤とは異なる着色剤を代えた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性着色樹脂組成物を得た。該着色剤は、酸化チタン(デュポン社製 タイピュアR103)及びカーボンブラック(旭カーボン社製 サンブラック710)を使用した。その後、実施例1と同様に、評価用成形品を作製し、その表面のウェルド状態、光沢感の確認、ΔL*値、FI値、L*15値の測定を行った結果を表1に示す。
【0029】
比較例1
リニア低分子用ポリエチレン(日本ユニカ社製 G5391)100質量部に対してゴールド調パール顔料(メルク・ジャパン社製 イリオジン(IRIOZIN)302)を0.8質量部、分散剤(日本油脂社製 マグネシウムステアレート)0.08質量部を配合し、混合機(日水化工社製 TM50)にて30rpm、3分間混合した。混合物を単軸押出機(マース精機社製 40mm押出機)に投入し混練造粒を行った。加工条件は、シリンダー温度C1〜H=160℃、スクリュー回転速度50rpmであった。このように熱可塑性着色樹脂組成物を得た。その後、実施例1と同様に、評価用成形品を作製し、その表面のウェルド状態、光沢感の確認、ΔL*値の測定を行った結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、成形加工時に発生する外観不良を低減した、光輝性を有する樹脂製キャップを提供することができる。
また、ヒンジキャップのように射出ゲートがキャップの中心に設けられないような成形物において、特に効果的に大きな外観不良を低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
a:キャップ本体
b:ヒンジ部
c:上蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂100質量部に対し、光輝剤0.1〜5質量部と、該光輝剤とは異なる着色剤0.01〜1質量部とを配合した熱可塑性着色樹脂組成物を成形してなる樹脂製キャップであって、
該樹脂製キャップ表面の表色値が、CIE1976(L***)表色系による2度及び/又は10度視野等色関数である明度指数(L*)において、外観不良部最大値をL*1、外観良好部平均値をL*2とするとき、下記式(1)
0.01≦ΔL*=|(L*1)−(L*2)|≦5 (1)
を満たすことを特徴とする樹脂製キャップ。
【請求項2】
前記表色値が、分光計による連続した測定により検出した測定値又はそれより算出した分光反射率より得られる値である請求項1記載の樹脂製キャップ。
【請求項3】
前記光輝剤が、天然マイカ及び/又は合成マイカのパールマイカ顔料に、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化すず、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、及び酸化コバルトの金属酸化物から選ばれた少なくとも1種を被覆してなるものである請求項1又は2に記載の樹脂製キャップ。
【請求項4】
前記光輝剤とは異なる着色剤が、有機顔料、無機顔料及び染料から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂製キャップ。
【請求項5】
前記熱可塑性着色樹脂組成物を、射出成形にて成形してなる請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂製キャップ。
【請求項6】
前記樹脂製キャップ表面における表色値の測定において、CIE1976(L***)表色系による2度及び/又は10度視野等色関数である明度指数(L*)として、入射角45°正反射方向0°から入射光側へ15°戻る角度により測定される値をL*15、入射角45°正反射方向0°から入射光側へ45°戻る角度により測定される値をL*45、入射角45°正反射方向0°から入射光側へ110°戻る角度により測定される値をL*110とするとき、下記式(2)及び(3)
{(L*15)−(L*110)}/(L*45)>1.5 (2)
(L*15)>90 (3)
の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂製キャップ。
【請求項7】
前記樹脂製キャップが、天面壁と該天面壁の周縁から垂下する外側壁とからなるキャップ本体と、該キャップ本体の外側壁上端にヒンジ連結された上蓋とからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂製キャップ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−202850(P2010−202850A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53225(P2009−53225)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】