説明

樹脂製建具

【課題】火炎に晒されても貫通しにくい樹脂製建具を提供する。
【解決手段】室内外を連通する開口を閉塞可能であり、枠組みされた樹脂製の框体内にガラスを備えた樹脂製建具であって、前記ガラスと前記框体との間に設けられ前記ガラスの室内外方向と直交する面内方向の移動を規制するためのセッティングブロックと、前記ガラスと前記框体との間に設けられ、加熱されて膨張する熱膨張性部材と、を備え、前記セッティングブロックは、室内外方向において前記ガラスの厚みより薄く形成されており、
前記セッティングブロックが設けられている部位では、当該セッティングブロックと前記熱膨張性部材とが室内外方向に並べて設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスを備えた樹脂製建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスを備えた樹脂製建具としては、例えば、合成樹脂製のサッシ枠と合成樹脂製の押縁とにガラスパネルが保持された樹脂サッシが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような樹脂サッシは、ガラスの下側に配置されるサッシ枠上に設けられた支持部材にガラスパネルが載置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−82292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂製建具において防火性能が問われる場合には、所定の防火試験において建具の一方側が火炎に晒された状態にて所定時間内に、他方側に炎の噴出がないこと、また、他方側から一方側の炎が見えないこと(貫通しないこと)等が要求される。上記従来の樹脂サッシは、ガラスパネルを保持するサッシ枠及び押縁がいずれも合成樹脂製なので、樹脂サッシが火炎に晒されると、サッシ枠及び押縁が溶融されて変形したり燃焼することにより、火炎が容易に貫通してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、火炎に晒されても貫通しにくい樹脂製建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の樹脂製建具は、室内外を連通する開口を閉塞可能であり、枠組みされた樹脂製の框体内にガラスを備えた樹脂製建具であって、前記ガラスと前記框体との間に設けられ前記ガラスの室内外方向と直交する面内方向の移動を規制するためのセッティングブロックと、前記ガラスと前記框体との間に設けられ、加熱されて膨張する熱膨張性部材と、を備え、前記セッティングブロックは、室内外方向において前記ガラスの厚みより薄く形成されており、前記セッティングブロックが設けられている部位では、当該セッティングブロックと前記熱膨張性部材とが室内外方向に並べて設けられていることを特徴とする樹脂製建具である。
【0007】
このような樹脂製建具によれば、ガラスと框体との間に熱膨張性部材が設けられているので、火炎等に晒された場合には火炎の熱により熱膨張性部材が膨張することによりガラスと框体との間が貫通することを抑えることが可能である。また、少なくともガラスの厚みより薄く形成されたセッティングブロックが設けられている部位では、当該セッティングブロックと熱膨張性部材とが室内外方向に並べて設けられているので、セッティングブロックが設けられている部位においてもガラスと框体との間が貫通することを抑えることが可能である。
【0008】
かかる樹脂製建具であって、前記熱膨張性部材は、前記框体の全周に亘って設けられていることが望ましい。
このような樹脂製建具によれば、ガラスと框体との間に全周に亘って熱膨張性部材が設けられるので、火炎による熱にて熱膨張性部材が膨張されることによりガラスと框体との間が全周に亘って膨張した熱膨張性部材にて塞がれることになる。このため火炎が噴出しにくく、また、貫通し難い樹脂製建具を提供することが可能である。ここで、全周に亘って設けられている熱膨張性部材は、必ずしも繋がっている必要はなく、膨張した際に全周に亘ってほぼ隙間ができないように設けられていても構わない。
【0009】
かかる樹脂製建具であって、前記ガラスは、室内外方向に対面して互いに間隔を隔てた2枚のガラス板の周端部にシール部材を介して一体に形成された複層ガラスであり、前記セッティングブロックは、前記2枚のガラス板の一方が当接され、前記熱膨張性部材は、前記シール部材と対向していることが望ましい。
このような樹脂製建具によれば、セッティングブロックが2枚のガラス板の一方に当接されており、熱膨張性部材は2枚のガラスの間に設けられたシール部材と対向しているので、2枚のガラス板が一体となった複層ガラスの位置を規制しつつ、熱膨張性部材が膨張した際には複層ガラスのシール部材が露出している部位を膨張した熱膨張性部材にて覆うことが可能である。このため、火炎がシール部材に到達しないのでシール部材が加熱されにくく、シール部材からの可燃ガスの発生を抑えることが可能である。
【0010】
かかる樹脂製建具であって、前記セッティングブロックは樹脂製であり、前記セッティングブロックと前記2枚のガラス板の端部と互いに間隔を隔てて対向する金属製のブロック部材とが、室内外方向と直交する見付け方向に並べて設けられていることが望ましい。
このような樹脂製建具によれば、金属製のブロック部材は、セッティングブロックと見付け方向に並べて配置されているので、ガラスがセッティングブロックに支持された通常の状態ではブロック部材はガラス板に当接されない。このため、通常の状態では、セッティングブロックにてガラスの位置を規制して適切な位置にガラスを配置することが可能である。
また、セッティングブロックは樹脂製なので、火炎の熱により変形したり消失する虞があるが、金属製のブロック部材が見付け方向に並べて設けられているので、セッティングブロックが消失し、ガラスが面内方向へ移動したとしてもブロック部材に当接される。このため、セッティングブロックが消失した場合のガラスの移動量がブロック部材が設けられていない場合より小さくなる。このため、セッティングブロックの消失等によりガラスが移動しても、隙間が生じたり、ガラスが外れることを防止することが可能である。
【0011】
かかる樹脂製建具であって、前記ブロック部材と前記ガラスとの間に前記熱膨張性部材が設けられていることが望ましい。
このような樹脂製建具によれば、ブロック部材とガラスとの間に設けられた熱膨張性部材が火炎の熱により膨張することにより、セッティングブロックの状態に拘わらずブロック部材とガラスとの間を膨張した熱膨張性部材にて塞ぐことが可能である。
【0012】
かかる樹脂製建具であって、前記ガラスの室内または室外に臨む一方の面と対面する第1対面部を有し前記框体に固定される金属製の固定金具と、前記ガラスの室内または室外に臨む他方の面と対面する第2対面部を有し前記固定金具に係止される金属製の係止金具と、を有することが望ましい。
このような樹脂製建具によれば、框体に固定された固定金具の第1対面部と、固定金具に係止される係止金具の第2対面部とにガラスが挟まれるので、火炎に晒されたとしてもガラスが脱落しにくい樹脂製建具を提供することが可能である。
【0013】
かかる樹脂製建具であって、前記ガラスの端部と前記ブロック部材との間隔は、前記第1対面部または前記第2対面部と前記ガラスとが対面している部位における前記ガラス端部からの幅より小さいことが望ましい。
このような樹脂製建具によれば、ブロック部材が設けられているので、セッティングブロックが火炎にて消失した際には、ガラスの端部とブロック部材との間隔に相当する距離だけガラスが移動する。セッティングブロックが火炎にて消失してガラスが移動する距離は、第1対面部及び第2対面部とガラスとが対面している部位におけるガラスの端部からの幅より小さいので、セッティングブロックが火炎にて消失したとしても、ガラスは第1対面部または第2対面部の対面している部位にて保持される。このため、樹脂製建具が火炎に晒されたとしても、ガラスが脱落することを防止することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、火炎に晒されても貫通しにくい樹脂製建具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る樹脂製建具を室内側から見た外観図である。
【図2】本実施形態に係る樹脂製建具の縦断面図である。
【図3】本実施形態に係る樹脂製建具の縦断面図である。
【図4】障子上部の構成を説明するための縦断面図である。
【図5】セッティングブロック、移動防止ブロック、ガラス保持金具、熱膨張性黒鉛が設けられている様子を示す斜視図である。
【図6】図1におけるA−A断面図である。
【図7】図1におけるB−B断面図である。
【図8】図1におけるC−C断面図である。
【図9】ガラス保持金具を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る樹脂製建具について図面を参照して説明する。
本実施形態の樹脂製建具1は、図1に示すような開き窓用の樹脂製建具1であって、建物等にて室内外を連通する開口を形成する枠体10と、枠体10に支持されて開口を閉塞可能な障子20とを有しており、障子20は見付け方向における一端側にて回動自在に枠体10に支持され、他端側に開閉操作用のハンドル5を有している。本実施形態においては、室内側から見て左側にて上下の框が回動自在に支持されており、障子の右側の框にハンドル5が設けられている。
【0017】
以下の説明においては、樹脂製建具1を室内側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向または見付け方向、室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。また、枠体10を構成する枠部材12及び障子20の框体21を構成する框部材22については、矩形状に枠組みされた枠体10及び框体21の状態にて、枠体10及び框体21に囲まれた内周側を内側、枠体10及び框体21の外周側を外側として示す。例えば、上側の枠部材12及び框部材22であれば、上面側を外側、下面側を内側として示す。
【0018】
枠体10は、上下に配置される横枠10a、10bと左右に配置される縦枠10c、10dとが枠組みされて形成されている。上下の横枠10a、10b及び左右の縦枠10c、10dは、樹脂製の押出成形部材であり、同一の枠部材12が所定の長さに切断されて形成されている。このため、横枠10a、10b及び縦枠10c、10dの断面形状は同一であり、横枠10a、10b及び縦枠10c、10dの端部が45度に切断され、横枠10a、10bの端部と縦枠10c、10dの端部とが突き合わされて接合されることにより枠体10を構成している。
【0019】
枠部材12は、図2〜図3に示すように、長手方向に連通する中空部材であり、内部に金属製の補強部材7が設けられた枠本体部13と、枠組みされた枠体10の状態にて、枠本体部13の室内側の部位から障子20側、すなわち枠体10の内側に突出された枠内側突出部14と、枠本体部13から室外側に向かって突出された室外側突出部15と、を有している。
枠内側突出部14の室外に臨む面14aの先端側には、樹脂製のシール材8が設けられている。
【0020】
障子20は、上下に配置される横框21a、21bと左右に配置される縦框21c、21dとが枠組みされた框体21と、框体21にて囲まれた領域内に取り付けられるガラス50と、框体21とともにガラス50の周端部を保持する押縁6と、を有している。
ガラス50は、2枚のガラス板としての2枚の耐熱強化ガラス51を対面させるとともに互いに間隔を隔てて一体に形成した複層ガラスである。複層ガラスの周端部には、2枚の耐熱強化ガラス51の間隔を保持するためのスペーサー54が介在され、スペーサー54の外周部分にシール部材としてのシール剤52が充填されている。
【0021】
框体21の上下の横框21a、21b及び左右の縦框21c、21dは、樹脂製の押出成形部材であり、同一の框部材22が所定の長さに切断されて形成されている。このため、横框21a、21b及び縦框21c、21dの断面形状は同一であり、横框21a、21b及び縦框21c、21dの端部が45度に切断され、横框21a、21bの端部と縦框21c、21dの端部とが突き合わされて接合されることにより框体21を構成している。
【0022】
框部材22は、長手方向に連通する中空部材であり、図4に示すように、大小2つの中空部を有し、大きな中空部23bの内部に金属製の補強部材7が設けられた框本体部23と、枠組みされた框体21の状態にて、框本体部23の室外側の部位からガラス50側、すなわち框体21の内側に突出された框内側突出部24と、框本体部23の室外側の部位から枠体10側、すなわち框体21の外側に突出された框外側突出部25と、框本体部23から室内側に向かって突出された室内側突出部26と、を有している。
框外側突出部25の室内に臨む部位25aの先端側には、樹脂製のシール材8が設けられている。
【0023】
補強部材7は、框部材22の長手方向に沿って設けられる棒状の部材であり、断面が「コ」字状をなしている。「コ」字状をなす補強部材7の対面する2つの壁部7aと、2つの壁部7aを繋ぐ底部7bは、框本体部23の中空部23bにおける外周側面のほぼ半分の領域23c、内周側面23d、及び屋外側面23eと僅かに間隔を隔てて対向するとともに外周側面のほぼ半分の領域23c、内周側面23d、及び屋外側面23eとの間に、シート状の熱膨張性部材としての熱膨張性黒鉛9が介在されており、外周側面の残りほぼ半分の領域23fは壁部7aに当接され、対面する2つの壁部7aと外周側面の当接されたほぼ半分の領域23f及び内周側面23dがビス止めされている。ここで、熱膨張性黒鉛9は、加熱されると膨張するが、膨張した後の熱膨張性黒鉛9は他の部材を支持するような剛性及び強度を有していない部材である。
【0024】
框内側突出部24は、ガラス50の周端部と対向し、押縁6とともにガラス50の周端部を狭持する部位であり、框内側突出部24の室内側に臨む面24a、すなわちガラス50と対向する部位にビード53が設けられている。室内側突出部26の内周側の部位には、押縁6が嵌合される押縁嵌合部26aが設けられている。このため、框本体部23、框内側突出部24、及び、押縁6にて形成される凹部が、ガラス50の周端部が収容される収容部20aとなる。
【0025】
障子20の収容部20aには、図5に示すように、ガラス50の面内方向の移動を規制するためのセッティングブロック30、セッティングブロック30が消失したときにガラス50の移動を抑えるためのブロック部材としての移動防止ブロック32と、ガラス50が外れることを防止するためのガラス保持金具55と、框内側突出部24の室内側に臨む面24a及び框本体部23の内側に臨む内側面23aに貼り付けられた熱膨張性黒鉛9とが設けられている。
【0026】
セッティングブロック30は、直方体状をなす樹脂製の部材であり、樹脂製建具1を室内側から見たときに、図1に示すように、右上のコーナー部と左下のコーナー部とに接着されている。具体的には、上側の横框(上框)21aの右端側と右側の縦框(右框)21dの上端側、及び、下側の横框(下框)21bの左端側と左側の縦框(左框)21cの下端側にそれぞれ、框本体部23の内側面23aとガラス50の端部との間に介在されている。
【0027】
下框21bとガラス50との間に設けられたセッティングブロック30は、見込み方向の幅がガラス50の厚みより広く形成されており、図6に示すように、ガラス50が有する2枚の耐熱強化ガラス51がいずれも載置されている。上框21a、左框21c、右框21dとガラス50との間に設けられたセッティングブロック30は、見込み方向の幅がガラス50の厚みより狭く形成されており、図7に示すように、ガラス50が有する2枚の耐熱強化ガラス51のうちの1枚の端部と当接している。
【0028】
移動防止ブロック32は、直方体状をなす金属製の部材であり、下框21bに設けられたセッティングブロック30と見付け方向に並べて、セッティングブロック30より下框21bの端部側に、また、右框21dに設けられたセッティングブロック30と上下方向に並べて、セッティングブロック30より下側に配置され、框本体部23に収容された補強部材7にビス止めされている。
【0029】
移動防止ブロック32は、図6に示すように、見込み方向の幅が下框21b側に設けられたセッティングブロック30の幅とほぼ同じ幅に形成されており、下框21b側に設けられた移動防止ブロック32は、ガラス50が降下した際にはガラス50が有する2枚の耐熱強化ガラス51がいずれも載置可能に形成されている。
【0030】
また、移動防止ブロック32の厚み、すなわち、ガラス50と対向する面32aと框本体部23の内側面23aとの距離は、セッティングブロック30厚み、すなわち、ガラス50端面50aと框本体部23の内側面23aとの距離より短く形成され、移動防止ブロック32の上面には熱膨張性黒鉛9が設けられている。そして、セッティングブロック30が火炎等にて溶融したり消失しない状態では、移動防止ブロック32上に設けられた熱膨張性黒鉛9の上面がセッティングブロック30の上面より框本体部23側に位置しており、移動防止ブロック32上の熱膨張性黒鉛9とガラス50の端面50aとが接触しないように構成されている。
【0031】
ガラス保持金具55は、図8、図9に示すように、框部材に固定される固定金具56と、固定金具56に設けられた係止部56aに係止される係止金具58とが対をなして構成され、上框21a及び下框21bとガラス50との間にそれぞれ2つずつ、左框21c及び右框21dとガラス50との間にそれぞれ5つずつ設けられている。
【0032】
上框21a及び下框21bとガラス50との間には、見付け方向の中央から割り振られて左右に1つずつ配置され、左框21c及び右框21dとガラス50との間には、上下方向におけるほぼ中央に1つと上下に2つずつほぼ均等な間隔にて配置されている。以下、ガラス保持金具55の説明は、ガラス保持金具55が下框21bに取り付けられた状態にて、上下となる方向を上下方向とし、室内外方向となる方向を見込み方向として説明する。このため、例えば、以下のガラス保持金具55の説明において上方は框体21の内側方向に相当し、下方は框体21の外側方向に相当する。
【0033】
下框21bに固定された固定金具56は、框部材22の長手方向に間隔を隔てて配置され框部材22における框本体部23の内側面23aに当接される2つの座板部56bと、2つの座板部56bにおける見込み方向の室外側の縁同士を繋ぎ座板部56bとほぼ直角をなす第1対面部としての側壁部56cと、2つの座板部56bの間に設けられ側壁部56cから見込み方向において室内側に突出された平板部56dと、を有している。また、側壁部56cの室内側の面には、熱膨張性黒鉛9が貼り付けられている。
【0034】
座板部56bには、固定金具56を框部材22に固定するためのビスが貫通される固定孔56eが形成されている。平板部56dは、座板部56bとほぼ平行に形成され、固定金具56が框部材22に固定された際に、座板部56bより上方、すなわち内側面23aから上方に離れた側に位置するように形成されている。座板部56bと平板部56dとは上下方向において重ならないように形成されるとともに、座板部56bの上面と平板部56dの下面との間には、係止金具58が挿入可能な間隔を有している。また、平板部56dには、矩形状の貫通孔でなり係止金具58を係止するための係止部56aが設けられている。
【0035】
係止金具58は、座板部56bと平板部56dとの間に挿入される挿入板部58aと、係止金具58が固定金具56に係止された際に側壁部56cとほぼ平行な状態にてガラス50と対向する第2対面部としての対向板部58bと、対向板部58bの下縁と挿入板部58aの室内側の縁とを連結し、対向板部58b及び挿入板部58aとのなす角度がほぼ45度をなす連結部58cと、挿入板部58aのほぼ中央に設けられ固定金具56の係止部56aに係止される係止片58dと、を有している。
【0036】
係止片58dは、室外側から室内側に向かって挿入板部58aから離れる方向に傾斜するように、挿入板部58aから切り起こされて形成されている。また、係止金具58の上面には、挿入板部58aの係止片58dより室内側の部位に熱膨張性黒鉛9が設けられている。
【0037】
そして、框部材22に固定金具56が固定された状態にてガラス50がセッティングブロック30に載置された後に、係止金具58の挿入板部58aが座板部56bと平板部56dとの間に挿入されて係止金具58が係止される。このとき挿入板部58aが挿入されて係止片58dが平板部56dと接触し、さらに係止金具58を固定金具56側に押圧することにより係止片58dが下方に押されて弾性変形しつつ挿入板部58aが座板部56bと平板部56dとの間に進入していく。
【0038】
その後、係止片58dが係止部56aの下に至ると、押し曲げられていた係止片58dが弾性により復帰して係止部56aに係止される。このように係止金具58が固定金具56に、係止された状態にて、固定金具56の側壁部56cがガラス50の室外側の面と対面し、係止金具58の対向板部58bがガラス50の室内側の面と対面して、ガラス50が保持される。
【0039】
ガラス50がガラス保持金具55に保持された状態では、側壁部56cがガラス50の室外側の面と対面している掛かり代L2、または、係止金具58の対向板部58bがガラス50の室内側の面と対面している掛かり代L3のいずれか小さい方が、セッティングブロック30に載置されたガラス50の端面と移動防止ブロック32のガラス50との対向面との間隔L1より大きくなるように構成されている。ここで、掛かり代とは、ガラス50の端面50aとガラス50と対面している側壁部56cまたは対向板部58bのガラス50の中央側の縁56f、58eとの距離を示している。
【0040】
熱膨張性黒鉛9は、例えば、幅が約25mmの帯状の部材であり、図5〜図8に示すように、框本体部23の内側面23aにおける室外側の約3/4の領域及び框内側突出部24の室内側に臨む部位においてビード53が設けられていない部位に敷き詰めるように貼り付けられている。下框21bに設けられたセッティングブロック30は、ガラス50を支持するために見込み方向の幅が広く形成されているが、上框21a、左框21c、右框21dに設けられたセッティングブロック30は見込み方向の幅が狭いため、熱膨張性黒鉛9が下框21b側より幅広く設けられている。このとき、上框21a、左框21c、右框21dに設けられたセッティングブロック30には、ガラス50が有する2枚の耐熱強化ガラス51のうちの一方のみが当接されており、セッティングブロック30と見込み方向に隣接して設けられている熱膨張性黒鉛9は、2枚の耐熱強化ガラス51の間に充填されたシール剤52と対面するように設けられている。
【0041】
このように、内側面23aにおける室外側の約3/4の領域及び框内側突出部24の室内側に臨む部位に熱膨張性黒鉛9を設けることにより、移動防止ブロック32や係止金具58に設けられた熱膨張性黒鉛9とともに、框体21の繋がった収容部20a内に全周に亘って熱膨張性黒鉛9が設けられている。
【0042】
上記枠部材12が枠組みされた枠体10に、上記框部材22が枠組みされた框体21が支持されて、障子20が閉じられると、枠体10の枠内側突出部14に設けられたシール材8に、框体21における框本体部23の室内側の面23gが全周に亘って当接され、框体21の框外側突出部25に設けられたシール材8に、枠体10における枠本体部13の室外側の面13aが全周に亘って当接されて、枠体10にて形成されている開口が閉塞される。
【0043】
本実施形態の樹脂製建具1によれば、框体21とガラス50との間には全周に亘って熱膨張性黒鉛9が設けられているので、障子20がガラス50の室内側または室外側が火炎に晒されて火炎の熱により障子20の樹脂製の部位が変形または消失したとしても、熱膨張性黒鉛9が火炎の熱により框体21とガラス50との間にて全周に亘って膨張するのでガラス50の室内側または室外側とガラス50の反対側とが貫通することを防止することが可能である。
【0044】
また、上框21a、左框21c、右框21dに設けられたセッティングブロック30は2枚の耐熱性強化ガラス51の一方に当接されており、熱膨張性黒鉛9は2枚の耐熱性強化ガラス51の間に設けられたシール剤52と対向している。このため、2枚の耐熱性強化ガラス51が一体となった複層ガラスの位置を規制しつつ、熱膨張性黒鉛9が膨張した際には、少なくとも上框21a、左框21c、右框21dの収容部20aに収容されたガラス50のシール剤52が露出している部位を、膨張した熱膨張性黒鉛9にて覆うことが可能である。このため、火炎がシール剤52に到達しないのでシール剤52が加熱されにくく、シール剤52からの可燃ガスの発生を防止し、燃焼が促進されることを抑えることが可能である。
【0045】
また、上框21a、左框21c、右框21dに設けられたセッティングブロック30は、下枠21bに設けられたセッティングブロック30より見込み方向の幅が狭く形成され、また、熱膨張性黒鉛9が見込み方向に並べて設けられている。このため、下框21bに設けられたセッティングブロック30のようにガラス50の重さを支持する必要がない部位では、熱膨張性黒鉛9が幅広く設けられているので、熱膨張性黒鉛9が膨張することにより、火炎に晒されても框体21とガラス50との間がより貫通し難い樹脂製建具1を提供することが可能である。
【0046】
また、セッティングブロック30と見付け方向に並べて配置されている金属製の移動防止ブロック32は、ガラス50がセッティングブロック30に支持された状態で、2枚の耐熱性強化ガラス51の端部と互いに間隔を隔てて対向しているので、通常では移動防止ブロック32は耐熱性強化ガラス51に当接されない。このため、通常の状態では、セッティングブロック30にてガラス50の位置を規制して適切な位置にガラス50を配置することが可能である。
【0047】
また、セッティングブロック30は樹脂製なので、火炎の熱により変形したり消失する虞があるが、金属製の移動防止ブロック32がセッティングブロック30と見付け方向に並べて設けられているので、セッティングブロック30が消失したとしてもガラス50は移動防止ブロック32に当接されるため、移動防止ブロック32が設けられていない場合よりガラス50の移動量が小さくなる。このため、セッティングブロック30が火炎の熱により変形したり消失した場合であっても、ガラス50が移動して隙間が生じたり、框体21から外れることを防止することが可能である。
【0048】
また、移動防止ブロック32とガラス50との間には熱膨張性黒鉛9が設けられているので、移動防止ブロック32とガラス50との間に設けられた熱膨張性黒鉛9が火炎の熱により膨張することにより、セッティングブロック30の状態に拘わらず移動防止ブロック32とガラス50との間を膨張した熱膨張性黒鉛9にて塞ぐことが可能である。
【0049】
また、ガラス50は框体21に固定された固定金具56の側壁部56cと、固定金具56に係止される係止金具58の対向板部58bとに挟まれているので、火炎に晒されたとしてもガラス50が脱落しにくい樹脂製建具1を提供することが可能である。
【0050】
また、移動防止ブロック32が設けられているので、例えば下框21bに設けたセッティングブロック30が熱にて消失した際に、ガラス50が移動する距離はガラス50の端面と移動防止ブロック32との間隔に相当するが、ガラス50が移動する距離L1は、ガラス50の端面50aとガラス50と対面している側壁部56cまたは対向板部58bのガラス50の中央側の縁56f、58eとの幅の短い方L2より短いので、セッティングブロック30が火炎にて消失したとしても、ガラス50上端部が上框21aに設けられたガラス保持金具55から外れて脱落することを防止することが可能である。
【0051】
上記実施形態のいては、熱膨張性部材を帯状の熱膨張性黒鉛9としたが、熱により膨張し、難燃性または不燃性の部材であれば構わず、また、形状も帯状に限るものではない。
【0052】
上記実施形形態においては、セッティングブロック30及び移動防止ブロック32を、室内側から障子20を見て右上のコーナー部と左下のコーナー部とに設けた例について説明したが、これに限るものではなく、例えば、左上のコーナー部と右下のコーナー部とに設けても構わない。
【0053】
上記実施形態においては、開き窓用の樹脂製建具1を例に挙げて説明したが、これに限らず、引き違い窓や片引き窓および上げ下げ窓などのスライド形式の窓や、嵌殺し窓などの枠体が形成する開口を閉塞可能な障子を備えた樹脂製建具1であれば構わない。
【0054】
上記実施形態においては、ガラスとして複層ガラスを用いた例について説明したが、単板状のガラスや合わせガラスなどであっても構わない。
【0055】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1 樹脂製建具、9 熱膨張性黒鉛、10 枠体、20 障子、21 框体、
21a 上框(横框)、21b 下框、21c 左框(縦框)、21d 右框、
30 セッティングブロック、32 移動防止ブロック、50 ガラス、
51 耐熱強化ガラス、52 シール剤、55 ガラス保持金具、56 固定金具、
56a 係止部、56c 側壁部、58 係止金具、58b 対向板部、
58d 係止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内外を連通する開口を閉塞可能であり、枠組みされた樹脂製の框体内にガラスを備えた樹脂製建具であって、
前記ガラスと前記框体との間に設けられ前記ガラスの室内外方向と直交する面内方向の移動を規制するためのセッティングブロックと、
前記ガラスと前記框体との間に設けられ、加熱されて膨張する熱膨張性部材と、を備え、
前記セッティングブロックは、室内外方向において前記ガラスの厚みより薄く形成されており、
前記セッティングブロックが設けられている部位では、当該セッティングブロックと前記熱膨張性部材とが室内外方向に並べて設けられていることを特徴とする樹脂製建具。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂製建具であって、
前記熱膨張性部材は、前記框体の全周に亘って設けられていることを特徴とする樹脂製建具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の樹脂製建具であって、
前記ガラスは、室内外方向に対面して互いに間隔を隔てた2枚のガラス板の周端部にシール部材を介して一体に形成された複層ガラスであり、
前記セッティングブロックは、前記2枚のガラス板の一方が当接され、
前記熱膨張性部材は、前記シール部材と対向していることを特徴とする樹脂製建具。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂製建具であって、
前記セッティングブロックは樹脂製であり、
前記セッティングブロックと前記2枚のガラス板の端部と互いに間隔を隔てて対向する金属製のブロック部材とが、室内外方向と直交する見付け方向に並べて設けられていることを特徴とする樹脂製建具。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂製建具であって、
前記ブロック部材と前記ガラスとの間に前記熱膨張性部材が設けられていることを特徴とする樹脂製建具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の樹脂製建具であって、
前記ガラスの室内または室外に臨む一方の面と対面する第1対面部を有し前記框体に固定される金属製の固定金具と、
前記ガラスの室内または室外に臨む他方の面と対面する第2対面部を有し前記固定金具に係止される金属製の係止金具と、
を有することを特徴とする樹脂製建具。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂製建具であって、
前記ガラスの端部と前記ブロック部材との間隔は、前記第1対面部及び前記第2対面部と前記ガラスとが対面している部位における前記ガラス端部からの幅より小さいことを特徴とする樹脂製建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−248836(P2010−248836A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101432(P2009−101432)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】