説明

樹脂部品成型装置、樹脂部品の成型方法

【課題】本発明は、アンダーカット状態となる樹脂部品を、簡素な構造で成型することができる樹脂部品成型装置を提供する。
【解決手段】樹脂部品成型装置40は、フロントフェンダ20を成型するキャビティ空間50を形成する第1の型43とスライドブロック44と第2の型45と、スライドブロックを移動する移動機構60と、を備える。第1の型43は、フロントフェンダ20の合せ部21をアンダーカット状態に収容する。スライドブロック44は、合せ部21を成型する第1のキャビティ空間51を第1の型43との間に形成するとともに、第1の型43から相対的に離れる方向に移動可能である。移動機構60は、フロントフェンダ20がスライドブロック44に追随して収縮することによって第1の型43に対する合せ部21のアンダーカット状態が解除される第2の位置P2まで、スライドブロック44を移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のフェンダパネルなどの樹脂部品を成形する樹脂部品成形装置と、例えば自動車のフェンダパネルなどの樹脂部品を成形する樹脂部品の成形方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のフロントフェンダパネルは、フロントフェンダパネルにおけるエンジンフードとの合せ部からエンジンフードの下方に折れ曲がっている。そして、フロントフェンダパネルは、エンジンフードの下に位置するフランジ部を有している。フランジ部は、上記のように、フロントフェンダパネルにおいてエンジンフードの下方に折れ曲がった部位に設けられている。フロントフェンダパネルにおいて合せ部から先の部位は、エンジンフードの下方に位置するので、車外からは見えにくくなる。
【0003】
フロントフェンダパネルは、樹脂で成型されることがある。この種のフロントフェンダパネルは、一対の型によって成型される。具体的には、フロントフェンダパネルは、第1の型と、該第1の型に対して離間する方向および近づく方向に可動可能な、第2の型と、によって成型される。
【0004】
第1の型と第2の型との間には、成型されるべきフロントフェンダパネルの形状に対応するキャビティ空間が形成されている。この空間内に、溶融された樹脂が充填される。充填された樹脂は、該樹脂部品が固まった後、離型される。
【0005】
このような場合、樹脂部品がスムースに離型されるように、フロントフェンダパネルにおいて第1の型の第2の型との相対移動方向と交差する方向に突出する部位が、第1の型と第2の型とのパーテーションライン上に位置するように、キャビティ空間は、形成されている。
【0006】
つまり、第1の型および第2の型からフロントフェンダパネルを離型する際に、フロンドフェンダパネルが、第1の型および第2の型に引っかからないようになっている。
【0007】
一方、フロントフェンダパネルにおけるエンジンフードとの合せ部は、上記されたような突出する部位となる。
【0008】
それゆえ、キャビティ空間は、合せ部がパーテンションライン上に位置するように、形成される。
【0009】
しかし、樹脂成型部品においてパーテーションラインに対応する部位は、段差が発生しやすく、また塗装しにくくなる傾向にある。それゆえ、合せ部がパーテーションライン上に位置するように成型されたフロントフェンダパネルでは、合せ部に段差が生じたり、塗装が乗らないので、見た目が悪くなる。特に合せ部は、車外からも見ることができ、車体外観上好ましくない。
【0010】
上記のような不具合を解消するために、キャビティ空間は、合せ部からずれた箇所、具体的には、エンジンフードによって隠れる箇所がパーテンションライン上に位置するように、形成されている。
【0011】
しかし、このように形成される第1の型および第2の型では、合せ部は、第1の型および第2の型内に収容されることになるので、フロントフェンダパネルを離型する際に、合せ部が型に引っかかることが考えられる。すなわち、アンダーカット状態となる。
【0012】
それゆえ、端部離型手段を備える射出成型装置が提案されている。端部離型手段は、合せ部などの樹脂部品の端部を、該樹脂部品が離型できるように変形させる。このことによって、フロントフェンダパネルは、離型される(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001―225367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1に開示された射出装置は、端部離型手段を備えるので、構造が複雑になる。
【0014】
したがって、本発明の目的は、アンダーカット状態となる樹脂部品を、簡素な構造で成型することができる樹脂部品成型装置と、アンダーカット状態となる樹脂部品を成型する際に、複雑な構造の装置を用いる必要がない樹脂部品の成型方法と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の樹脂部品成型装置は、突部を有する樹脂部品を成型するキャビティ空間を形成する複数の型を備える。前記樹脂部品成型装置は、前記突部をアンダーカット状態に収容する第1の型と、前記キャビティ空間のうち前記突部の先端を成型する突部成型キャビティ空間を前記第1の型との間に形成するとともに、前記第1の型から相対的に離れる方向に移動可能なスライドブロックと、前記第1の型と重なることによって前記キャビティ空間のうち前記突部成型キャビティ空間以外のキャビティ空間を形成するとともに、前記第1の型から相対的に離れる方向に移動可能な第2の型と、前記スライドブロックを移動する移動機構と、を備える。前記移動機構は、前記樹脂部品が前記スライドブロックに追随して収縮することによって前記第1の型に対する前記突部のアンダーカット状態が解除される位置まで、前記スライドブロックを移動する。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記樹脂部品が、前記スライドブロックに対してアンダーカット状態となるアンダーカット部を有する場合、前記移動機構は、前記樹脂部品が前記スライドブロックに追随して収縮することによって前記第1の型に対する前記突部のアンダーカット状態が解除される位置まで前記スライドブロックを移動し、かつ前記樹脂部品の収縮が停止した後、前記スライドブロックに対する前記樹脂部品のアンダーカット状態が解除される位置まで、前記スライドブロックを移動する。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記樹脂部品が収縮する際の基点部を前記樹脂部品に形成する基点部形成部が、前記第1の型または前記第2の型の少なくともいずれか一方に設けられている。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記樹脂部品は、車幅灯が貫通する貫通孔を有するフロントフェンダであって、前記基点部は、前記貫通孔である。
【0019】
本発明の樹脂部品の成型方法は、突部を有して、複数の型によって形成されるキャビティ空間内で成型されるとともに、前記複数の型のうちいずれかの型に対して前記突部がアンダーカット状態となる樹脂部品を成型する。前記樹脂部品の成型方法は、前記突部をアンダーカット状態に収容する第1の型と、前記キャビティ空間のうち前記突部の先端を成型する突部成型キャビティ空間を前記第1の型との間に形成するとともに前記第1の型から相対的に離れる方向に移動可能なスライドブロックと、前記第1の型と重なることによって前記キャビティ空間のうち前記突部成型キャビティ空間以外のキャビティ空間を形成するとともに前記第1の型から相対的に離れる方向に移動可能な第2の型と、によって形成される前記キャビティ空間内に加熱された材料を充填し、前記樹脂部品が温度低下に伴う収縮可能な状態のときに前記スライドブロックを移動し、温度低下に伴う前記樹脂部品の収縮によって前記第1の型に対する前記突部のアンダーカット状態を解除する。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記樹脂部品が、前記スライドブロックに対してアンダーカット状態となるアンダーカット部を有する場合、前記第1の型に対する前記樹脂部品のアンダーカット状態が解除されかつ前記樹脂部品の収縮が停止した後、前記スライドブロックに対する前記アンダーカット部のアンダーカット状態が解除されるように、前記樹脂部品に対して前記スライドブロックを移動する。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記樹脂部品には、該樹脂部品が収縮する際の基点部が形成される。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記樹脂部品は、車幅灯が貫通する貫通孔を有する自動車のフェンダーであって、前記基点部は、前記貫通孔である。
【発明の効果】
【0023】
本発明による樹脂部品成型装置では、アンダーカット状態となる樹脂部品を、簡素な構造で成型することができる。
【0024】
また、本発明による樹脂部品の成型方法では、アンダーカット状態となる樹脂部品を成型する際に、複雑な構造の装置を用いる必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の一実施例に係る樹脂部品成型装置40を、図1から図12を用いて説明する。本実施形態の樹脂部品成型装置40は、樹脂部品の一例として、自動車10のフロントフェンダ20を成型する。
【0026】
図1は、樹脂部品成型装置40によって成型されるフロントフェンダ20を備える自動車10を示している。図1に示すように、自動車10は、エンジンフード12と、フロントフェンダ20と、などを備えている。エンジンフード12は、自動車10の車体11のエンジンルーム(図示せず)を、上方から覆っている。フロントフェンダ20は、エンジンフード12を挟んで車幅方向両側に1つずつ設けられている。
【0027】
図2は、図1に示されたF2−F2線に沿う断面図である。図2は、車幅方向左側に設けられるフロントフェンダ20における、エンジンフード12との合せ部21の近傍の断面を示している。図3は、車体左側に設けられるフロントフェンダ20の側面図である。
【0028】
なお、図2は、車体左側に設けられるフロントフェンダ20におけるエンジンフード12との合せ部21の近傍を示している。車体右側に設けられるフロントフェンダ20は、車体左側に設けられるフロントフェンダ20と車幅方向に対称な形状であってよい。それゆえ、車体左側に設けられるフロントフェンダ20を代表して説明する。
【0029】
図2に示すように、フロントフェンダ20は、合せ部21と、外部から見える第1の部分22と、エンジンフード12に覆われることによって外部からは見えなくなる第2の部分23と、を有している。
【0030】
合せ部21は、上記したように、エンジンフード12が閉められたときに、エンジンフード12の縁13と隣り合う部位である。第1の部分22は、合せ部21を境に、車体外側へ露出する。第2の部分23は、合せ部21を境に、車体11の内側へ入り込んでいる。合せ部21は、面取りされている。
【0031】
第2の部分23は、合せ部21から車体11の内側に延びている。例えば第2の部分23の先端には、フランジ部24が形成されている。フランジ部24は、例えば車幅方向内側に延びている。フランジ部24は、エンジンフード12と対向するように、車幅方向内側に延びている。
【0032】
フロントフェンダ20は、上記のように形成されるので、合せ部21が突出するような形状になっている。
【0033】
また、合せ部21の近傍では、フロントフェンダ20の厚みは、略一定である。それゆえ、合せ部21の内側には、合せ部21に対応して凹む凹み部25が形成されている。つまり、合せ部21は、折り返えされたように突出している。
【0034】
言い換えると、フロントフェンダ20は、合せ部21を基点に折り返えしたような形状である。それゆえ、フロントフェンダ20において、合せ部21は、本発明で言う突部となる。
【0035】
図1に示すように、車体11の側部には、車幅灯14が設けられている。車幅灯14は、フロントフェンダ20から外部に出ている。図3は、フロントフェンダ20を示している。図3に示すように、フロントフェンダ20の第1の部分22には、車幅灯14が通る貫通孔26が形成されている。
【0036】
フロントフェンダ20は、樹脂部品成型装置40によって成型される。図4は、樹脂部品成型装置40を示す断面図である。図4に示すように、樹脂部品成型装置40は、土台41と、ガイドレール42と、第1の型43と、スライドブロック44と、第2の型45と、移動機構60と、を備えている。
【0037】
第1の型43と、スライドブロック44と、第2の型45と、によって、フロントフェンダ20を成型するキャビティ空間50が形成される。
【0038】
図5は、第1の型43とスライドブロック44と第2の型45とによって形成されるキャビティ空間50を拡大して示す断面図である。
【0039】
図5に示すように、第1の型43は、図中上方に位置している。第2の型45は、第1の型43の下方に位置している。第1の型43と第2の型45とは、図中上下方向に重ねられる。
【0040】
図4に示すように、土台41には、ガイドレール42が設けられている。ガイドレール42は、図中上下方向に延びている。ガイドレール42は、第1の型43と第2の型45とを通っている。第2の型45は、図示しない固定手段によって、ガイドレール42に対する位置が固定されている。つまり、第2の型45は、動かない。
【0041】
図6は、第1の型43と第2の型45とスライドブロック44が、互いに離れた状態を示している。図6に示すように、第1の型43は、ガイドレール42によって、第2の型45に対する図中上下方向に沿う相対移動がガイドされる。
【0042】
図5に示すように、スライドブロック44は、第1の型43と第2の型45との間に収容される。キャビティ空間50は、第1の型43とスライドブロック44と第2の型45とが互いに組み合わさった状態において、それぞれの間に規定される空間である。
【0043】
キャビティ空間50は、第1のキャビティ空間51と、第2のキャビティ空間52と、第3のキャビティ空間53と、を有している。
【0044】
第1のキャビティ空間51は、フロントフェンダ20の合せ部21の近傍を成型する空間である。第1のキャビティ空間51は、本発明で言う、突部成型キャビティ空間である。第1のキャビティ空間51は、第1の型43とスライドブロック44との間に形成される。
【0045】
第1のキャビティ空間51について、詳細に説明する。第1のキャビティ空間51は、合せ部21と、第1の部分22において合せ部21と隣り合う範囲と、第2の部分23において合せ部21と隣り合う範囲と、を成型する。つまり、第1のキャビティ空間51は、第1の部分22の一部と、第2の部分23の一部とも成型する。
【0046】
上記したように、合せ部21は、なだらかに面取りされている。それゆえ、第1の型43において、合せ部21の先端27を成型する部位には、先端27に対応して凹む凹み部54が形成されている。凹み部54は、折り返すように断面略U字状に形成されている。
【0047】
スライドブロック44は、フロントフェンダ20の内側の凹み部25を形成する突部46を有している。
【0048】
上記のように、フロントフェンダ20の合せ部21の先端27が第1の型43内に収容されることによって、先端27は、第1の型43に引っかかる。つまり、フロントフェンダ20は、第1の型43に対してアンダーカット状態となる。
【0049】
さらに、スライドブロック44が突部46を有するので、フロントフェンダ20は、スライドブロック44に対して引っかかる。つまり、フロントフェンダ20は、スライドブロック44に対してアンダーカット状態となる。スライドブロック44の突部46には、該突部46によって形成される凹み部25が引っかかる。それゆえ、凹み部25は、本発明で言う、アンダーカット部となる。
【0050】
第2のキャビティ空間52は、第1の部分22の他の部分を成型する。第2のキャビティ空間52は、第1の型43と第2の型45との間に形成される。第2の型45には、貫通孔26を形成する突部47が形成されている。突部47は、第2のキャビティ空間52内に位置している。
【0051】
第3のキャビティ空間53は、第2の部分23の他の部分とフランジ部24とを成型する空間である。第3のキャビティ空間53は、第2の型45とスライドブロック44との間に形成される。
【0052】
図4に示すように、移動機構60は、ロッド61と、ガイド部62と、押し上げ機構63と、を備えている。
【0053】
ロッド61は、スライドブロックに接続されている。ガイド部62は、第2の型45に形成されている。ガイド部62は、第2の型45を貫通するガイド孔62aを有している。ガイド孔62a内には、ロッド61が移動可能に収容される。ガイド部62は、ガイド孔62aと、該ガイド孔62aの縁部62bと、を含む概念である。
【0054】
押し上げ機構63は、押し上げ材64と、支持材65と、連結材66と、を備えている。押し上げ材64は、ガイドレール42に沿って図中上下方向に移動可能に設けられている。押し上げ材64は、第2の型45の下方に配置されている。押し上げ材64には、ロッド61の下端が通る貫通孔67が形成されている。ロッド61は、貫通孔67を貫通している。
【0055】
支持材65は、ロッド61の下端を支持している。支持材65は、該支持材65に対してロッド61が傾斜可能になるように、ロッド61を支持している。支持材65は、押し上げ材64に対して移動可能になるように、押し上げ材64の下面に取り付けられている。
【0056】
連結材66は、第1の型43と押し上げ材64とに連結されている。それゆえ、第1の型43がガイドレール42に沿って移動すると、該第1の型43の移動に伴って、押し上げ材64もガイドレール42に沿って移動する。
【0057】
つまり、図中上方向に第1の型43が移動すると、押し上げ材64も上方に移動する。第1の型43が下方に移動すると、押し上げ材64も下方に移動する。押し上げ材64が上下方向に移動することによって、支持材65に連結されたロッド61も、ガイド孔62a内を移動する。つまり、スライドブロック44も移動する。
【0058】
ここで、ガイド孔62aについて、詳細に説明する。ガイド孔62aは、第2の型45に対する第1の型43の移動方向(本実施形態では、図中上下方向)に対して、傾斜している。
【0059】
ガイド孔62aは、スライドブロック44が上方に移動することによって、第1の型43とスライドブロック44との間に、第1のキャビティ空間51よりも大きい空間が形成されるように、傾斜している。つまり、ガイド孔62aは、スライドブロック44が第1の型43に形成された凹み部54から離れるように、傾斜している。
【0060】
具体的には、ロッド61は、スライドブロック44が第1の位置P1から第2の位置P2を経由して第3の位置P3まで移動できるように、傾斜している。
【0061】
図4と図5とに示すように、第1の位置P1は、第1の型43との間で第1のキャビティ空間51を形成する位置である。図9は、スライドブロック44が第2の位置P2にある状態を示す断面図である。図9に示すように、第2の位置P2は、第1の位置P1から、第1の型43の移動方向に垂直な方向であってかつスライドブロック44の突部46の先端48が第1の型43の凹み部54から離れる方向、つまり図中右方向に第1の距離L1移動した位置である。
【0062】
第1の距離L1は、第1の型43の凹み部54の最も凹んだ位置P4(フロントフェンダ20の合せ部21の先端27に対応する位置)から、凹み部54の下端縁P5までの図中左右方向に沿う長さ以上の長さである。つまり、位置P4から下端縁P5までの図中左右方向に沿う長さは、フロントフェンダ20において第1の型43に対してアンダーカット状態となっている部分の、図中左右方向に沿う長さである。なお、図中左右方向とは、第1の型43と第2の型45との相対移動方向と垂直な方向である。
【0063】
押し上げ材64に形成される貫通孔67は、ロッド61の上下方向の移動を妨げないように、支持材65の移動方向に沿ってロッド61の移動を許容する大きさを有している。
【0064】
つぎに、樹脂部品成型装置40によるフロントフェンダ20の製造方法を説明する。
【0065】
まず、図4に示すように、第1の型43と第2の型45とスライドブロック44とを互いに型閉め状態にして、キャビティ空間50を形成する。
【0066】
ついで、図示しない射出手段によって、キャビティ空間50内に加熱された材料を充填する。図7は、キャビティ空間50内に材料が充填された状態における合せ部21近傍を拡大して示している。
【0067】
材料が温暖状態であるうちに、第1の型43を上方に移動する。なお、温暖状態とは、温度低下に伴って収縮する余地が残っている状態である。
【0068】
図8は、スライドブロック44が第2の位置P2に達するまで、第1の型43が移動した状態を示している。図9は、スライドブロック44が第2の位置P2に達した瞬間を示している。
【0069】
第1の型43は、スライドブロック44が第2の位置P2に達すると、少なくとも所定時間移動を止める。所定時間は、温度低下に伴って材料(フロントフェンダ20)の収縮が止まるまでの時間である。
【0070】
図10は、スライドブロック44が第2の位置P2に達してから所定時間が過ぎた状態における合せ部21の近傍を示す断面図である。図10に示すように、材料(フロントフェンダ20)は、第2の位置P2に移動したスライドブロック44に密着するように、収縮する。このとき、材料(フロントフェンダ20)は、貫通孔26を基点として収縮する。貫通孔26は、本発明で言う、基点部として機能する。突部47は、本発明で言う、基点部形成部として機能する。
【0071】
材料(フロントフェンダ20)が、第2の位置P2にあるスライドブロック44に密着するように収縮すると、フロントフェンダ20の合せ部21の先端27も図中右方向に第1の距離L1移動する。
【0072】
それゆえ、先端27は、上下方向に第1の型43の凹み部54の下端縁P5と重ならなくなる。つまり、先端27が第1の型43に引っかからなくなるので、第1の型43に対するフロントフェンダ20のアンダーカット状態は、解除される。
【0073】
所定時間が経過すると、図11に示すように、第1の型43をさらに上方に移動する。このとき、材料(フロントフェンダ20)は、充分冷えているので、これ以上収縮することは、ない。第1の型43が上方に移動することによって、スライドブロック44は、第2の位置P2からさらに図中右方向に移動する。
【0074】
スライドブロック44が第2の位置P2から図中さらに右方向に移動すると、スライドブロック44の突部46は、フロントフェンダ20の内側の凹み部25内から離れていく。
【0075】
図12は、スライドブロック44が第3の位置P3に達した状態における、合せ部21の近傍の断面図である。第3の位置P3は、スライドブロック44の移動に伴って、突部46がフロントフェンダ20の内側の凹み部25内から完全に出る位置である。突部46が凹み部25内から完全に出ることによって、スライドブロック44に対するフロントフェンダ20のアンダーカット状態は、解除される。
【0076】
上記のように、第1の型43とスライドブロック44に対するフロントフェンダ20のアンダーカット状態が解除されると、フロントフェンダ20は、離型される。
【0077】
なお、キャビティ空間50は、材料(フロントフェンダ20)の収縮を考慮して形成されている。
【0078】
このように構成される樹脂部品成型装置40では、材料(フロントフェンダ20)が収縮可能な状態のときに、スライドブロック44を第2の位置P2まで移動してフロントフェンダ20を収縮させている。それゆえ、第1の型43に対するフロントフェンダ20のアンダーカット状態が解除される。
【0079】
つまり、第1の型43に対するフロントフェンダ20のアンダーカット状態を、スライドブロック44のスライド距離をコントロールすることによって解除するので、型構造を複雑にする必要がなく、樹脂部品成型装置40の構造が簡素になる。さらに、型の製作費が低減されるので、樹脂部品成型装置40のコストも削減される。
【0080】
また、スライドブロック44に対するフロントフェンダ20のアンダーカット状態は、フロントフェンダ20の形状が定まった後(フロントフェンダ20の収縮が停止した後)に、スライドブロック44が第3の位置P3まで移動されることによって、解除される。
【0081】
つまり、スライドブロック44のスライド距離およびスライドするタイミングをコントロールすることによって、スライドブロック44に対するフロントフェンダ20のアンダーカット状態を解除するので、型構造を複雑にする必要がなく樹脂部品成型装置40の構造が簡素になる。さらに、型の製作費が低減されるので、樹脂部品成型装置40のコストも削減される。
【0082】
また、貫通孔26をフロントフェンダ20の収縮の基点とすることによって、フロントフェンダ20を効率よく均等に収縮させることができる。
【0083】
また、樹脂部品としてフロントフェンダ20を成型する場合、第1の型43と第2の型45とのパーテーションラインを、第2の部分23に位置させることができる。
【0084】
一般に、樹脂部品において、型のパーテーションラインに対応する位置は、段差が生じやすく、また塗装されにくくなる傾向にある。このため、本実施形態のように、第1の型43と第2の型45とのパーテーションラインが第2の部分23に位置することによって、たとえフロントフェンダ20においてパーテーションラインに対応する位置に段差が生じたり、塗装がされなかったとしても、該箇所は車体外部からは見えない場所に位置するので、自動車10の外観が損なわれることがなくなる。
【0085】
さらに、車幅灯14が通る貫通孔26を、フロントフェンダ20の収縮の基点として利用することができるので、型構造がより一層簡素になる。
【0086】
なお、本実施形態では、第2の型45に突部47が形成されているが、これに限定されない。例えば、突部47は、第1の型43に形成されてもよい。または、突部47は、第1,2の型43,45に分割されて形成されてもよい。図13は、突部47が、第1の型43に形成されている状態を示す断面図である。図14は、突部47が第1,2の型43,45に分割されて形成されている状態を示す断面図である。図13,14において、突部47の以外の構造は、突部47が第2の型45に形成されているものと同じでよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態に係る樹脂部品成型装置によって成型されるフロントフェンダを備える自動車の斜視図。
【図2】図1に示されたF2−F2線に沿う断面図。
【図3】図1に示された自動車の車体左側に設けられるフロントフェンダの側面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る樹脂部品成型装置の断面図。
【図5】図4に示されたキャビティ空間を拡大して示す断面図。
【図6】図5に示された第1の型と第2の型とスライドブロックとが、互いに離れた状態を示す断面図。
【図7】図5に示されたキャビティ空間内に材料が充填された状態の合せ部近傍を拡大して示す断面図。
【図8】図4に示されたスライドブロックが第2の位置に達するまで、第1の型が移動した状態を示す断面図。
【図9】図4に示されたスライドブロックが第2の位置に達した瞬間における、合せ部近傍を示す断面図。
【図10】スライドブロックが第2の位置に達してから所定時間が過ぎた状態における合せ部の近傍を示す断面図。
【図11】スライドブロックが第2の位置に達した後、第1の型がさらに移動した状態を示す断面図。
【図12】スライドブロックが第3の位置に達した状態における、合せ部の近傍の断面図。
【図13】突部が第1の型に形成された状態を示す断面図。
【図14】突部が第1,2の型に分割された状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0088】
14…車幅灯、20…フロントフェンダ(樹脂部品)、21…合せ部(突部)、25…凹み部(アンダーカット部)、26…貫通孔(基点部)、27…先端、40…樹脂部品成型装置、43…第1の型、44…スライドブロック、45…第2の型、47…突部(基点部形成部)、50…キャビティ空間、51…第1のキャビティ空間(突部成型キャビティ空間)、60…移動機構、P2…第2の位置(第1の型に対する突部のアンダーカット状態が解除される位置)、P3…第3の位置(スライドブロックに対する樹脂部品のアンダーカット状態が解除される位置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突部を有する樹脂部品を成型するキャビティ空間を形成する複数の型を備える樹脂部品成型装置であって、
前記突部をアンダーカット状態に収容する第1の型と、
前記キャビティ空間のうち前記突部の先端を成型する突部成型キャビティ空間を前記第1の型との間に形成するとともに、前記第1の型から相対的に離れる方向に移動可能なスライドブロックと、
前記第1の型と重なることによって前記キャビティ空間のうち前記突部成型キャビティ空間以外のキャビティ空間を形成するとともに、前記第1の型から相対的に離れる方向に移動可能な第2の型と、
前記スライドブロックを移動する移動機構と、
を具備し、
前記移動機構は、前記樹脂部品が前記スライドブロックに追随して収縮することによって前記第1の型に対する前記突部のアンダーカット状態が解除される位置まで、前記スライドブロックを移動することを特徴とする樹脂部品成型装置。
【請求項2】
前記樹脂部品が、前記スライドブロックに対してアンダーカット状態となるアンダーカット部を有する場合、
前記移動機構は、前記樹脂部品が前記スライドブロックに追随して収縮することによって前記第1の型に対する前記突部のアンダーカット状態が解除される位置まで前記スライドブロックを移動し、かつ前記樹脂部品の収縮が停止した後、前記スライドブロックに対する前記樹脂部品のアンダーカット状態が解除される位置まで、前記スライドブロックを移動することを特徴とする請求項1に記載の樹脂部品成型装置。
【請求項3】
前記樹脂部品が収縮する際の基点部を前記樹脂部品に形成する基点部形成部が、前記第1の型または前記第2の型の少なくともいずれか一方に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂部品成型装置。
【請求項4】
前記樹脂部品は、車幅灯が貫通する貫通孔を有するフロントフェンダであって、
前記基点部は、前記貫通孔であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂部品成型装置。
【請求項5】
突部を有して、複数の型によって形成されるキャビティ空間内で成型されるとともに、前記複数の型のうちいずれかの型に対して前記突部がアンダーカット状態となる樹脂部品を成型する樹脂部品成型方法であって、
前記突部をアンダーカット状態に収容する第1の型と、前記キャビティ空間のうち前記突部の先端を成型する突部成型キャビティ空間を前記第1の型との間に形成するとともに前記第1の型から相対的に離れる方向に移動可能なスライドブロックと、前記第1の型と重なることによって前記キャビティ空間のうち前記突部成型キャビティ空間以外のキャビティ空間を形成するとともに前記第1の型から相対的に離れる方向に移動可能な第2の型と、によって形成される前記キャビティ空間内に加熱された材料を充填し、
前記樹脂部品が温度低下に伴う収縮可能な状態のときに前記スライドブロックを移動し、温度低下に伴う前記樹脂部品の収縮によって前記第1の型に対する前記突部のアンダーカット状態を解除する樹脂部品成型方法。
【請求項6】
前記樹脂部品が、前記スライドブロックに対してアンダーカット状態となるアンダーカット部を有する場合、
前記第1の型に対する前記樹脂部品のアンダーカット状態が解除されかつ前記樹脂部品の収縮が停止した後、前記スライドブロックに対する前記アンダーカット部のアンダーカット状態が解除されるように、前記樹脂部品に対して前記スライドブロックを移動することを特徴とする請求項5に記載の樹脂部品の成型方法。
【請求項7】
前記樹脂部品には、該樹脂部品が収縮する際の基点部が形成されることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の樹脂部品成型方法。
【請求項8】
前記樹脂部品は、車幅灯が貫通する貫通孔を有する自動車のフェンダーであって、
前記基点部は、前記貫通孔であることを特徴とする請求項7に記載の樹脂部品の成型方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−160787(P2007−160787A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362131(P2005−362131)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000105925)サカエ理研工業株式会社 (110)
【Fターム(参考)】