説明

橋に用いられる車道発電装置

【課題】橋に設けられる発電装置において、十分な発電効率を得ることができ、発電装置の耐久性を向上させる。
【解決手段】橋に形成された車道の一部に設けられ、車両Vの通過により昇降運動する昇降路面部21と、前記昇降路面部21の昇降運動を回転運動に変換する運動変換機構22と、前記運動変換機構22により得られた回転運動を電気エネルギに変換するエネルギ変換機構24と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋の車道に設置される発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギや地球環境について、世界中で注目され、種々の取り組みが成されている。特に、地球環境として地球温暖化が、最も早急に解決すべき問題として取り上げられているところ、この地球温暖化は、二酸化炭素(CO)等の温室効果ガスが主な原因となって引き起こされていると考えられている。
【0003】
このようなことから、二酸化炭素(CO)の排出量の少なくしつつエネルギを得る(クリーンなエネルギを得る)ための発電装置が考えられており、例えば、太陽光発電装置、風力発電装置などを挙げることができる。
【0004】
そして、近時では、例えば特許文献1に示すように、人、車両又は列車を含む移動物体が通過する通路に設置された圧電素子を備え、圧電素子上を移動物体が通過することにより圧電素子で生じた電力を取り出す発電システムが考えられている。
【0005】
しかしながら、圧電素子は発電効率が極めて小さく、その圧電素子により充分な電力を得るためには、多数の圧電素子を用いる必要があり、設置工事に手間が掛かってしまうという問題がある。また、設置面積が大きくなってしまうという問題がある。さらに、圧電素子の耐久性の問題から、長期間の使用により、その発電効率が低下してしまい、実用的に用いるには難がある。
【特許文献1】特開2006−197704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、橋に設けられる車道発電装置を提供するとともに、その車道発電装置において十分な発電を行うことができ、さらに車道発電装置の耐久性を向上させることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る橋用車道発電装置は、橋に形成された車道の一部に設けられ、車両の通過により昇降運動する昇降路面部と、前記昇降路面部の昇降運動が伝達されて、回転運動に変換する運動変換機構と、前記運動変換機構による回転運動が伝達されて回転する回転駆動軸を有する発電機と、を具備することを特徴とする(請求項1)。ここで、「橋」とは、河川等の対岸同士を架け渡す車道橋、道路を跨ぐ跨道橋、鉄道線路を跨ぐ跨線橋、地上に連続して架けられた高架橋を含む概念である。「車両」とは、例えば自動二輪車、普通自動車、大型自動車などの自動車、原動機付自転車を含む概念である。また、「車道」とは、車両が通行する道路である。
【0008】
このようなものであれば、橋の大きさに関わらす、その橋の範囲内において、充分な電力を発電することができる。また、例えば橋の主桁に車道発電装置を取り付ける場合などにおいて、主桁が空間に浮いているので、橋用車道発電装置を組み込みやすい。さらに、橋上では車両はスピードを出しにくく、又は制限されることが多いため、車道発電装置を構成する部品の損傷を防ぐことができ、車道発電装置の耐久性を向上させることができる。
【0009】
運動変換機構の構成を簡単にするためには、前記運動変換機構が、前記昇降部の昇降に追従して昇降運動するラック部材と、前記ラック部材に噛み合い、前記ラック部材の昇降運動により回転するピニオン部材と、を含むことが望ましい(請求項2)。
【0010】
昇降路面部の1回の昇降移動により、大きな電力を発電するためには、エネルギ変換機構での発電量を一層大きくするためには、前記運動変換機構と前記エネルギ変換機構との間に介在して設けられ、前記運動変換機構により得られた回転運動を増幅して、前記エネルギ変換機構に伝達する回転増幅機構をさらに備えていることが望ましい(請求項3)。
【0011】
橋の車道において車両の減速を促すとともに、運転手が凹凸を感じることにより省エネを意識できるようにしつつ、さらに、減速によって装置の耐久性を向上させるためには、前記昇降路面部が、車両が乗った状態において、当該車両の重量により下降して、前記車道における昇降路面部以外の路面と略平坦になり、前記車両が乗っていない状態において、前記車道における昇降路面部以外の路面から隆起していることが望ましい(請求項4)。
【0012】
また、上記した橋用発電装置と、橋脚に設けられた風力発電装置と、前記橋脚に設けられた太陽光発電装置と、を具備する橋であれば、橋の構造を充分活用した発電システムを提供することができる(請求項5)。
【発明の効果】
【0013】
このように構成した本発明によれば、橋に設けられる車道発電装置を提供するとともに、その車道発電装置において十分な発電を行うことができ、さらに車道発電装置の耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図1は本実施形態に係る発電システムを備える橋1を示す模式的構成図であり、図2は車道発電装置の配置態様を示す図であり、図3は車道発電装置2の構成を模式的に示す図であり、図4は昇降路面部21の上昇位置P及び下降位置Qを示す図である。
【0015】
<装置構成>
【0016】
本実施形態に係る橋1は、河川等の対岸同士を架け渡す車道橋であり、図1に示すように、車道発電装置2と、風力発電装置3と、太陽光発電装置4と、水力発電装置と、を備えている。なお、図1において、水力発電装置は、図示しない。
【0017】
車道発電装置2は、自動車Vが橋1を通過することにより発電を行うものであり、図1及び図2に示すように、橋1の橋脚11間に跨る主桁12に埋設されている。そして、車道発電装置2は、図2に示すように、車線毎に設けられている。より具体的には、各車線において、自動車Vの左右前輪毎及び左右後輪毎に対応する一群の車道発電装置2が、等間隔に設けられている。なお、車道発電装置2の配置態様としては、これに限られず、例えば自動車Vが通過すると所定のリズムを刻むように設けても良い。
【0018】
車道発電装置2の具体的な構成は、図3に示すように、昇降路面部21と、運動変換機構22と、回転増幅機構23と、エネルギ変換機構24と、蓄電部25と、を備えている。
【0019】
昇降路面部21は、橋1の主桁12により形成された車道の一部に設けられ、自動車Vの通過により昇降運動するものである。具体的には、昇降路面部21は、図2に示すように、主桁12に設けられた収容凹部121に昇降移動可能に収容されるものであり、平面視において概略矩形形状、車両V(自動車)の走行方向から見て概略台形形状をなすものである。そして、昇降路面部21の上面21a及び主桁12の上面12aが車道の路面となる。
【0020】
また、昇降路面部21の底面21bには、昇降路面部21が下降した際に、上昇方向に付勢するスプリング等の弾性部材26の一端が接続されている。この弾性部材26の他端は、収容凹部121の底面に接続されている。そして、昇降路面部21は、図4に示すように、自動車Vが乗った状態において、当該自動車Vの重量により下降して、その昇降路面部21の頂面12a1が車道における昇降路面部21以外の路面(つまり、主桁12の上面12a)と略同一平面になる下降位置Qと、自動車Vが乗っていない状態において、車道における昇降路面部21以外の路面(つまり、主桁12の上面12a)から隆起する上昇位置Pとの間を往復移動する。
【0021】
昇降路面部21の材料としては、通常の路面の材料と同様にアスファルトを結合材として用いたアスファルト・コンクリートでも良いし、その他の材料、例えば鉄等の金属又は合成ゴム等のゴム材料であってもよい。
【0022】
本実施形態の収容凹部121は、昇降路面部21の外側周面よりも若干大きい概略矩形形状の開口を有する。そして、本実施形態では、昇降路面部21が、その姿勢を維持して、上昇位置Pと下降位置Qとの間での昇降移動をスムーズ且つ確実に行うための案内機構(図示しない)を備えている。この案内機構は、例えば、昇降路面部21の側面又は収容凹部121の内側周面の一方に設けられ、昇降路面部21の昇降移動方向(具体的には鉛直方向)に延びる凸条部と、昇降路面部21の側面又は収容凹部121の内側周面の他方に設けられ、前記突条部が嵌りスライドする凹溝と、からなる。
【0023】
運動変換機構22は、昇降路面部21の昇降移動を回転運動に変換するものであり、その具体的な構成は、前記昇降路面部21の昇降に追従して昇降運動するラック部材221と、前記ラック部材221に噛み合い、ラック部材221の昇降運動により回転するピニオン部材222と、を備えている。
【0024】
本実施形態のラック部材221は、昇降路面部21の底面21bに接続されており、略鉛直方向に設けられている。ピニオン部材222は、ラック部材221の歯車に噛み合うように収容凹部121内に設けられている。
【0025】
回転増幅機構23は、運動変換機構22とエネルギ変換機構24との間に介在して設けられ、運動変換機構22により得られた回転運動を増幅して、エネルギ変換機構24に伝達するものである。その具体的な構成としては、複数の歯車231より構成されている。これら歯車231の組み合わせによりギア比を調整することにより、運動変換機構22のみにより得られる回転数では十分な発電力を得ることができない場合であっても、その回転数を多くすることができるので、十分な発電力を得ることができるようになる。
【0026】
エネルギ変換機構24は、前記運動変換機構22により得られた回転運動を電気エネルギに変換して、当該電気エネルギを蓄電部25に出力するものであり、その具体的な構成は、前記エネルギ変換機構24が、前記運動変換機構22による回転運動が伝達されて回転する駆動軸241を有する発電機242である。発電機242としては、例えば交流発電機又は直流発電機を用いることができる。そして、発電機242によって発電された電力は、図示しない整流器を介して、又は発電機242から直接蓄電部25に供給される。また、発電機242として交流発電機を用いた場合には、発電機242と蓄電部25との間に、発電機242からの交流を直流に変換する直流変換回路(図示しない)を設ける。
【0027】
蓄電部25は、発電機242により発電された電力を貯めるものであり、例えば、二次電池又は電気二重層キャパシタ等を用いることができる。
【0028】
風力発電装置3は、橋脚11の上端近傍に設けられ、回転翼と当該回転翼に接続された回転軸と、当該回転軸の回転により発電する発電機と、当該発電機からの電力を貯える蓄電部と、を備えている。この蓄電部は、前記車道発電装置2の蓄電部25と共通としても良い。図1において、回転翼は、橋の延伸方向と直交する方向を向いて設けられているが、これに限られず、風向に追従して左右に回転可能に構成しても良い。また、風力発電装置3の数及び位置は、図1に限定されず、例えば複数の風力発電装置を設けても良いし、それら風力発電装置3の配置は、橋脚11毎に設けるようにしても良い。
【0029】
太陽光発電装置4は、前記風力発電装置と同様に、橋脚11の上端近傍に設けられ、太陽電池パネルと、当該太陽電池パネルからの電力を貯える蓄電部とを備えている。この蓄電部は、前記車道発電装置2の蓄電部25と共通としても良い。
【0030】
水力発電装置は、橋脚11における主桁12の下側に設けられ、河川などを流れる水により回転する水車と、当該水車に連結された発電機と、当該発電機からの電力を貯える蓄電部と、を備えている。この蓄電部は、前記車道発電装置2の蓄電部25と共通としても良い。
【0031】
<本実施形態の効果>
【0032】
このように構成した本実施形態に係る発電システムを有する橋1によれば、橋1の大きさに関わらす、その橋1の範囲内において、充分な電力を発電することができる。また、車道発電装置2が橋1の主桁12に設けられているので、主桁12が宙に浮いていることから、橋用車道発電装置2を組み込みやすい。さらに、橋1上では自動車Vはスピードを出しにくい、又は制限されることから、車道発電装置2を構成する部品の損傷を防ぐことができ、車道発電装置2の耐久性を向上させることができる。
【0033】
また、昇降路面部21により橋1の車道Vが凹凸を形成するので、橋1の車道において自動車Vの減速を促すとともに、運転手が凹凸を感じることにより省エネを意識できるようにしつつ、さらに、減速によって装置2の耐久性を一層向上させることができる。
【0034】
さらに、複数種類の発電装置2〜5を備えているので、各発電装置2〜5の短所を他の発電装置2〜5の長所によって補いつつ、全体として安定した電力を発電することができる。
【0035】
<その他の変形実施形態>
【0036】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0037】
例えば、昇降路面部の形状は、例えば、断面視において概略部分円形状を成すものであっても良いし、断面視において、概略三角形形状をなすものであっても良い。この場合、車両が昇降路面部を走行する際に、車両への衝撃を和らげる観点から、車両の進行方向に向かい合う面が、その他の車道(主桁の上面)と連なる傾斜面であることが望ましい。
【0038】
また、前記実施形態の車道発電装置2は、自動車Vの左右前輪毎及び左右後輪毎に対応して設けられているが、図5に示すように、前輪及び後輪毎に設けるようにしても良い。このとき、昇降路面部21は、一車線の幅方向ほぼ全域に亘る幅を有する。
【0039】
また、前記実施形態の橋は、車道発電装置の他に、風力発電装置、太陽発電装置及び水力発電装置を有するものであったが、それらのうち、少なくとも1つを有するものであっても良い。
【0040】
さらに、前記実施形態では、1つの昇降路面部に1つの運動変換機構2及びエネルギ変換機構を設けているが、これに限られず、1つの昇降路面部に2つ以上の運動変換機構22及びエネルギ変換機構を設けるようにしても良い。これにより、一層効率よく発電を行うことができる。
【0041】
前記実施形態の橋は、道路橋であったが、その他、跨道橋、跨線橋、高架橋等であっても良い。また、高速道路が形成された高架橋から分岐して地上の料金所に至る分岐橋に、車道発電装置を用いることにより、自動車の減速を好適に促すとともに、車道発電装置に損傷を防ぎ、長期間にわたり発電効率を保つことができる。
【0042】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る発電システムを有する橋の模式的斜視図。
【図2】車道発電装置の配置態様を示す図。
【図3】同実施形態における車道発電装置の構成を模式的に示す図。
【図4】昇降路面部の上昇位置及び下降位置を示す図。
【図5】車道発電装置のその他の配置態様を示す図。
【符号の説明】
【0044】
1・・・・・橋
V・・・・・車両(自動車)
21・・・・昇降路面部
22・・・・運動変換機構
221・・・ラック部材
222・・・ピニオン部材
23・・・・回転増幅機構
24・・・・エネルギ変換機構
241・・・駆動軸
242・・・発電機
3・・・・・風力発電装置
4・・・・・太陽光発電装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋に形成された車道の一部に設けられ、車両の通過により昇降運動する昇降路面部と、
前記昇降路面部の昇降運動が伝達されて、回転運動に変換する運動変換機構と、
前記運動変換機構による回転運動が伝達されて回転する回転駆動軸を有する発電機と、を具備する橋用車道発電装置。
【請求項2】
前記運動変換機構が、前記昇降部の昇降に追従して昇降運動するラック部材と、
前記ラック部材に噛み合い、前記ラック部材の昇降運動により回転するピニオン部材と、を含む請求項1記載の橋用車道発電装置。
【請求項3】
前記運動変換機構と前記回転駆動軸との間に介在して設けられ、前記運動変換機構により得られた回転運動を増幅して、前記回転駆動軸に伝達する回転増幅機構をさらに備えている請求項1又は2記載の橋用車道発電装置。
【請求項4】
前記昇降路面部が、車両が乗った状態において、当該車両の重量により下降して、前記車道における昇降路面部以外の路面と略平坦になり、前記車両が乗っていない状態において、前記車道における昇降路面部以外の路面から隆起している請求項1、2又は3記載の橋用車道発電装置。
【請求項5】
請求項1乃至4記載の橋用車道発電装置と、
橋脚に設けられた風力発電装置と、
前記橋脚に設けられた太陽光発電装置と、を具備する橋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−236001(P2009−236001A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83109(P2008−83109)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月28日〜29日 社団法人発明協会京都支部主催の「第31回京都府内小・中・高校創造性コンクール」に出品
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年2月12日 インターネットアドレス「http://www.jiii.or.jp/jusyou/2007/gakuseinyusho.html」「http://www.jiii.or.jp/jusyou/2007/66gakusei/onshi.html」に発表
【出願人】(508092875)
【Fターム(参考)】