説明

機具の固定構造

【課題】取付台の取り付け面を大きくすることなく、所定の機具を効果的に固定することの出来る構造であり、また、機具を固定せしめた状態において、加工くず等を容易に除供することの出来る機具の固定構造を提供すること。
【解決手段】四面イケール10のポスト12の側面に、マシンバイス14を固定するために、ポスト12の側面にクランプ用クサビ40を突出して設け、このクサビ40を、マシンバイス40の底面に設けた嵌入穴26に嵌入させて、クランプボルト30を螺入せしめることによって、クサビ40のV字溝42に係合させて、固定せしめるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機具の固定構造に係り、特に、バイスの如き機具をイケール等の所定の取付台の取付面に固定せしめるための、改良された構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークに切削、研磨、穴開け等の所定の加工を施すために、かかるワークをマシンバイス等と称されるバイスに挟持させて、これをイケール (ツーリングブロック)やテーブル等に固定せしめ、そしてその状態において、所定の加工が施されるようになってきている。特に、マシニングセンターにおいては、近年、工程の集約による加工時間の短縮や加工精度の向上が要請され、そのために、一段取りや多面加工が採用される場面が増えてきており、また、横型マシニングセンターの使用の場面においては、多品種、少量生産が増加し、それに対応するために、最も汎用性のある治具として、マシンバイスが用いられているのであるが、そのようなマシンバイスの如き機具は、一般に、イケール(ツーリングブロック)等の取付台の取付面に対して、複数個の取付クランプを用いて取り付けられ、固定されるようになっている(非特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、図11の(a)及び(b)に示されるように、取付台となる四面イケール110における、所定高さの矩形ブロック状のポスト112の取付面である四つの側面に対して、それぞれ、マシンバイス114が取り付けられ、そして、それぞれのマシンバイス114において加工されるべきワークWが挟持・固定せしめられて、目的とする加工が施されるようになっているのである。なお、このようなマシンバイス114が取り付けられた四面イケール110は、その下部に設けられたフランジ部において、所定の作業テーブルに固定されるようになっている。
【0004】
ところで、かかるマシンバイス114の四面イケール110に対する取付けは、図11(a)に示される如く、一般に、L字型の押さえ金具116と固定ボルト118とを用いて、マシンバイス114の両側面を、それぞれ二箇所、従って一つのマシンバイス114につき四箇所において、四面イケール110のポスト112の側面(取付面)に固定せしめられるようになっている。なお、そのような取付けに際しては、L字型の押さえ金具116の先端が、マシンバイス114の側面に設けられた凹所114a内に入り込んだ形態において係合、セットされ、そして固定ボルト118にて固定せしめられるようになっているのである。
【0005】
このように、イケール110に対する従来のマシンバイス114の取付け構造においては、図11(a)に示される如く、マシンバイス114の両側に、押さえ金具116と固定ボルト118とが、それぞれ配置されて、それらによるマシンバイス114の固定を行う必要があるところから、それら押さえ金具116や固定ボルト118の配置スペース:Oを、マシンバイス114の両側にとる必要があり、そのために、ポスト112の側面にて構成される取付面の幅:Z1 を大きくする必要があったのである。しかしながら、イケール110に固定されたマシンバイス114に挟持されるワークWに対して、所定の加工を施すに際して、かかるワークWが周りの加工機械に干渉することなく、加工され得る回転範囲である取付有効範囲:Dは、周りに配置された加工機械のサイズ等によって、一義的に決定されるものであるところから、取付面の幅:Z1 が大きくなると、必然的に、加工可能なワークWの大きさ(X1 ×Y1 )に影響をもたらし、ワークWの取付可能サイズにおいて、X1 やY1 の値が小さくなり、大きなサイズのワークWの加工が困難となる問題を内在している。
【0006】
また、かかるマシンバイス114を固定する押さえ金具116や固定ボルト118が、マシンバイス114の側面から突出した形態において、ポスト112の取付面である側面に配置されているところから、ワークWの加工によって、生じた加工くずが、それら押さえ金具116や固定ボルト118に付着したり、引っかかる等して、マシンバイス114の周りの環境を汚す問題に加えて、そのような加工くずを除去する作業に手間がかかり、面倒である等の問題も内在しており、特に、一つの取付面に複数のマシンバイス114が設置される場合にあっては、取付面の有効利用の観点から、隣り合うマシンバイス114の対応する側面に配置される押さえ金具116と固定ボルト118からなる固定手段が、交互に配置されることとなるところから、加工くずの引っかかりも多くなり、また、その除去作業も更に面倒となる等、それらの問題は深刻となっている。
【0007】
【非特許文献1】株式会社ナベヤ発行の総合カタログ「Friends」、No.206、第1006〜1007頁及び第1016〜1017頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、取付台の取付面を大きくすることなく、所定の機具を効果的に固定することの出来る構造を提供することにあり、また、機具を固定せしめた状態において、加工くず等を容易に除去することの出来る構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明にあっては、上記した課題又は明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて認識されるものであることが、理解されるべきである。
【0010】
(1)取付台の取付面に機具を固定せしめるための構造にして、(a)該取付台の取付面の複数位置において該取付面からそれぞれ突出するように取り付けられた複数のクランプ用クサビであって、各クサビの側面に、軸直角方向に延びる係合溝が設けられ、且つ該係合溝のクサビ先端側の側面が傾斜面とされているものと、(b)該取付面における複数のクサビ取付位置にそれぞれ対応した前記機具の底面の複数位置に設けられた、前記クサビが嵌入せしめられ得る複数の嵌入穴と、(c)該複数の嵌入穴に対して直交して突入し得るように前記機具に対してそれぞれ螺入せしめられる、先端部が円錐形状とされたクランプボルトとを有し、該クランプボルトの螺入によって、該クランプボルトの先端部が前記クサビの係合溝の傾斜面に当接して係合し、その螺入の進行に伴なって、該クサビが前記機具内に引き込まれるようにして、該機具を前記取付台に固定せしめることを特徴とする機具の固定装置。
【0011】
(2)前記各クサビの側面に設けられた係合溝が、V字溝である上記態様(1)に記載の機具の固定装置。
【0012】
(3)前記取付台が、前記取付面として一つ又は複数の面を有するイケールである上記態様(1)又は(2)に記載の機具の固定装置。
【0013】
(4)前記機具が、バイスである上記態様(1)乃至(3)の何れか一つに記載の機具の固定装置。
【0014】
(5)前記係合溝が前記機具の外側面に向かって開口して位置するように、前記クサビが前記取付台の取付面から突出して配設されている上記態様(1)乃至(4)の何れか一つに記載の機具の固定装置。
【0015】
(6)前記クサビと前記取付台の何れか一方にピンが立設されると共に、それらの何れか他方に挿入穴が設けられ、該ピンが該挿入穴に挿入されることによって、該取付台に対する前記クサビの立設形態が規定されている上記態様(5)に記載の機具の固定装置。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明に従う機具の固定構造にあっては、取付台の取付面から突出するように取り付けられたクランプ用クサビを、固定せしめられる機具の底面に設けられた嵌入穴に嵌入せしめる一方、かかる嵌入穴に対して直交するように、機具内に螺入せしめられるクランプボルトの円錐形状の先端部分を、かかるクサビの側面に設けられた係合溝のクサビ先端側の側面となる傾斜面に当接して係合せしめ、クランプボルトの螺入の進行に伴なって、クサビが機具内に引き込まれるようにすることによって、かかる機具を取付台に固定せしめるようにしたものであるところから、クランプ用クサビは、取り付けられる機具の底面の領域内に位置せしめられ、またクランプボルトも、機具に対して螺入せしめられるものであるために、取付台の取付面上には、機具のみが配置されることとなるのであり、そのために、取付面におけるクランプ設置スペースが有利に省略され得て、かかる取付面の有効利用を効果的に図り得、以て、機具に対応した大きさの取付面を有する取付台を用いることが出来ることとなったのである。
【0017】
従って、そのような取付台に固定せしめた機具にてワーク等を保持させて、それに加工を施すに際しては、取付台の取付面を可及的に小さくすることが出来るところから、周囲の加工機械のサイズによって決定される取付有効範囲内において、かかる機具によるワークの取付可能サイズを可及的に大きくすることが出来る特徴を発揮する。
【0018】
また、本発明に従う機具の固定構造によれば、取付台の取付面上には、それに固定せしめられる機具のみが存在し、それら機具と取付台とを連結するクランプ用クサビは、かかる機具の底面の領域内に配置されており、外部に突出せしめられたり、露呈されるものではないところから、取付台の取付面には、加工くず等が付着したり、引っかかったりする部位がなく、そのために、そのような取付台の取付面から加工くず等を除去せしめる作業も、極めて容易に且つ簡単に行い得ることとなったのであり、特に、一つの取付面に複数の機具が固定・配置せしめられた場合においても、加工くず等の除去が著しく困難となるような問題も、全く生じることがないのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、図面を参照しつつ、本発明の代表的な実施形態について、詳細に説明することとする。
【0020】
先ず、図1には、横型マシニングセンターにおいて、本発明に従う機具の固定構造を採用したものの一例が、概略的に示されている。そこにおいて、(a)は、かかる固定構造の平面形態を示しており、また(b)は、その正面形態を示している。
【0021】
そして、それら図1の(a)及び(b)に示される如く、取付台である四面イケール(
ツーリングブロック)10のポスト12に対して、その取付面を構成する四つの側面のそれぞれに、機具としてのマシンバイス14が、本発明に従う固定構造において、固定せしめられているのである。なお、ここで用いられるマシンバイス14には、図11と同様な大きさのものが採用されているが、四面イケール10のポスト12は、マシンバイス14を支持するに十分な、可及的に小さな大きさの側面を有するものとされていることによって、図11において用いられているものよりも、小さなサイズとなっている。また、この四面イケール10も、その下部に設けられたフランジ部16において、所定の作業テーブル(図示せず)に取り付けられ得るようになっている。
【0022】
ところで、かかる図1において用いられているマシンバイス14は、図2(a)〜(c)に示されるように、バイス本体18の一方の端部に一体的に設けられた固定ジョー20に対して、可動ジョー22がスピンドル24の回動によって、前進又は後退移動せしめられ、それら固定ジョー20と可動ジョー22との間に、所定のワーク(W)が挟持・保持されるようにした、従来と同様な構造のものである。そして、そのようなマシンバイス14のバイス本体18の幅方向両側の下部には、図2(c)より明らかな如く、その長手方向に所定の間隔を隔てて、それぞれ二つの嵌入穴26,26が、バイス本体18の底面(下面)開口した形態において、所定深さで上方に延びるように形成されているのである。また、それら嵌入穴26に対して直交して、バイス本体18内に側方から進入するように、それら嵌入穴26に達するネジ穴28が、図2(b)に示されるように設けられており、このネジ穴28に対して、図3に示される如く、クランプボルト30が螺入せしめられ得るようになっている。なお、図2(c)に示されるように、マシンバイス14のバイス本体18の底面には、それぞれの辺のほぼ中央部に位置して、対応する辺の方向に延びるキー溝29が、所定深さの凹所として形成されており、そしてこのキー溝29に対して、良く知られているように、キーブロックが嵌入され、更にそれが、後述する四面イケール10のポスト12における取付面(側面)に取り付けられたキー溝に嵌合せしめられて、位置決めされるようになっている。
【0023】
また、そのようなマシンバイス14のバイス本体18に設けられたネジ孔28に螺入せしめられるクランプボルト30は、図4(a)及び(b)に示される如く、外周面にネジ山が形成されていると共に、その先端部は、そのようなネジ山の設けられていない、円錐形状の先端部30aとされている。一方、基部側となる他方の端部側には、その端面から所定深さ内部に突入した六角形状のレンチ穴30bが設けられている。このクランプボルト30におけるレンチ穴30b内に、所定の六角レンチを嵌合して、回転させることにより、クランプボルト30が、バイス本体18の側面から、ネジ穴28内に螺入せしめられ、更に嵌入穴26内に、その先端部30aが突出せしめられ得るようになっているのである。
【0024】
一方、四面イケール10は、図5(a)〜(c)に示される如く、板状のフランジ16上に、矩形ブロック状のポスト12が所定高さにおいて一体的に設けられてなる形状を呈しており、その四つの側面が、それぞれ、マシンバイス14が取り付けられて、固定せしめられる取付面とされている。なお、このポスト12の四つの側面には、マシンバイス14のバイス本体18の底面に設けられたキー溝29に対応して、二つのキー溝19,19が設けられ、それらキー溝19内に、キーブロックが嵌合せしめられて、ポスト12に対するマシンバイス14の位置決めが行われ得るようになっている。
【0025】
また、この四面イケール10のポスト12における四つの側面には、前記したマシンバイス14のバイス本体18の底面に設けられた四つの嵌入穴26に対応して位置するように、クランプ用クサビ40が、かかるポスト12の側面から側方に突出するように、それぞれ、取り付けられているのである。
【0026】
さらに、かかる四面イケール10におけるポスト12の側面に対して、それから突出するように取り付けられるクランプ用クサビ40は、図6(a)〜(e)に示される如く、円柱状を呈し、その側面にV字状に開口するV字溝42が、軸直角方向に延びるように、所定深さに切り込まれて形成されている。そして、このV字溝42は、そのクサビ先端側の側面が所定角度の傾斜面42aを与えるように、形成されているのである。また、クサビ40を軸方向に貫通するボルト穴44が設けられていると共に、ポスト12当接側の端面には、位置決めピン挿入用穴46が設けられている。
【0027】
そして、かかる図6に示される如き構造のクランプ用クサビ40は、図7に示される如く、ポスト12の所定位置に設けられた嵌合穴48と、更に、その嵌合穴48の底部に設けられた固定ネジ穴50及び位置決め穴52を用いて、取付ボルト54及び位置決めピン56にて、位置固定に取り付けられるようになっているのである。すなわち、嵌合穴48に対して、クサビ40を、その基部において、所定深さ嵌合せしめつつ、位置決めピン56をクサビ40の位置決めピン挿入用穴46に挿入せしめ、更にポスト12側の位置決め穴52に挿入せしめることにより、クサビ40の位置決めを行いつつ、取付ボルト54をクサビ40に挿通せしめ、更に固定ネジ穴50に螺合させることによって、クサビ40が、ポスト12に対して効果的に固定せしめられ得るのである。そして、そのようなクサビ40のポスト12に対する取付けに際して、位置決めピン56によって、クサビ40が位置決めされることにより、かかるクサビ40に設けられているV字溝42の開口方向が規定されるようになっているのである。なお、このようにしてポスト12の各取付面(側面)にクランプ用クサビ40が取り付けられてなる状態が、図5に示されているのであるが、そこでは、各クサビ40のV字溝42が、図5(a)や(c)に示される如く、それぞれ、外方に向かって開口せしめられ、これによって、マシンバイス14の外側面に向かって、開口して位置して、配設されるようになっている。
【0028】
かくして、かくの如く、四面イケール10のポスト12の各側面に、それぞれ、クサビ40の四つをセットして、それに、マシンバイス14を固定せしめるには、例えば図8に示される如くして、行われることとなるのである。即ち、先ず、図8の(a)に示される如く、マシンバイス14に設けた四つの嵌入穴26において、それぞれの嵌入穴26に貫通するネジ穴28にクランプボルト30を螺入せしめてなる状態において、マシンバイス14の嵌入穴26とポスト12に取り付けたクランプ用クサビ40とを対応位置せしめた後、(b)に示される如く、それぞれの嵌入穴26内に、クサビ40が、それぞれ嵌入せしめられることとなる。更にその後、(c)に示される如く、クランプボルト30が螺入され、その先端部30aが、嵌入穴26内に突入(侵入)せしめられることにより、クランプボルト30の先端部30aの円錐形状面が、クサビ40のV字溝42におけるクサビ先端側の傾斜面42aに当接せしめられるようになるのである。さらにその後、クランプボルト30の螺入が進行せしめられることによって、クサビ40は、嵌入穴26内に引き込まれる方向の押圧力を受け、これにより、クサビ40が嵌入穴26内にしっかりと保持され得るこことなるのであり、以て、マシンバイス14のポスト12の側面に対する固定が実現され得るのである。図9には、そのようなクランプボルト30にて、クサビ40が嵌入穴26内に確実に固定されている状態が、拡大して示されている。なお、そのような嵌入穴26に対するクサビ40の固定を解除するには、クランプボルト30をねじ戻して、ネジ穴28内を後退させることにより、クランプボルト30と、クサビ40における傾斜面42a、更にはV字溝42との係合を解消することにより、容易に実現され、これによって、ポスト12からマシンバイス14を取り外すことが可能となる。
【0029】
かくして、図1に示される如く、四面イケール10におけるポスト12の四つの側面(取付面)に対して、それぞれ、マシンバイス14が効果的に固定せしめられ得ることとなるのであるが、そこでは、従来の固定構造とは異なり、マシンバイス14の底面とポスト12の側面との間において、嵌入穴26とクランプ用クサビ40とクランプボルト30とによって、確実な連結・固定が行われ得るのであって、マシンバイス14の側面を利用して、クランプするものではないところから、ポスト12の取付面となる側面を、バイス14の取り付けに必要な、可及的に小さな取付面とすることが可能となるのであり、これによって、図11に示される如き取付スペース:Oを設ける必要がないために、ポスト12の幅:Z2を小さくすることが可能となるのである。
【0030】
そして、このように、ポスト12の幅:Z2 を小さくすることが出来ることによって、マシンバイス14に挟持され得るワークWのサイズ、すなわち (X2 ×Y2 )が、周りの 加工機械のサイズによって決定される取付有効範囲:Dのもとにおいて、効果的に大きくすることが可能となるのである。因みに、図1に開示の如き取付構造における取付可能なワークサイズと、従来の取付機構におけるそれとを比較すると、ワークWの幅寸法Yを同寸法とした場合に、X寸法は、イケール12のポスト面X/2分だけ大きくとることが出来ることとなる。
【0031】
また、図1に示される如きマシンバイス14の固定構造においては、図11の従来機構の如く、押さえ金具116や固定ボルト118が何等存在するものではないところから、ワークWの加工くず等が、そこに付着、滞留し、その除去が困難となる問題も有利に解消され得るのである。特に、複数のマシンバイス14が所定の取付面に配列固定せしめられる場合においても、図10に示される如く、取付面60に配列位置せしめられるマシンバイス14の配設間隙には、従来の如き押さえ金具や固定ボルトを配置せしめる必要がないところから,それらマシンバイス14の周りの加工くず等の除去が、極めて容易となることとなるのである。
【0032】
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも、例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0033】
例えば、上述した実施形態においては、取付台として、四面イケールに、その四つの側の面に対して、マシンバイスをそれぞれ固定せしめてなる形態が示されているが、良く知られているように、二面イケールや一面イケールの場合にあっても、本発明は、同様に適用可能であり、更にイケールの他にも、取付台としては、公知の各種のものが採用され、例えば単なる平坦な取付テーブル等であっても、何等差し支えない。そして、それらの取付台には、一つ又は複数の取付面が設けられているのである。
【0034】
また、そのような取付台の取付面に固定される機具にあっても、例示のマシンバイスの他、各種のバイス類やクランプ類、更には公知の各種の工具、器具、道具、機械等を対象とすることが、可能である。
【0035】
さらに、クランプ用クサビ40には、本発明に従う係合溝として、V字溝42が設けられているが、そのような係合溝における、クサビ40の先端側の側面が傾斜面(42a)となっている限りにおいて、V字形状以外の、他の形状の係合溝を採用することも可能である。
【0036】
更にまた、上述の実施形態においては、マシンバイス14のポスト12の側面に対する固定のために、マシンバイス14の両側部位において、それぞれ、嵌入穴26、クランプ用クサビ40及びクランプボルト30を用いた固定機構が、二箇所(全体で四箇所)に配設されているが、その配設個数は、マシンバイス等の固定されるべき機具の大きさや、サイズ等によって、適宜に選定されるところであり、例えば、全体として二箇所に設けられたり、また、三箇所或いは五箇所以上設けたりすることも、可能である。
【0037】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に従うマシンバイスのイケールに対する固定構造の一例を示す説明図であって、(a)は、その平面の形態(一部切り欠き)を示しており、(b)は、その正面の形態を示している。
【図2】図1に用いられているマシンバイスを説明するものであって、(a)は、その平面図、(b)は、その正面図、(c)は、その底面図である。
【図3】図2(b)におけるA−A断面説明図である。
【図4】図3において用いられるクランプボルトの拡大説明図であって、(a)は、その正面図、(b)は、その縦断面説明図である。
【図5】図1において用いられているイケールを説明するものであって、(a)は、その平面図、(b)は、その正面図、(c)は、(b)におけるB−B断面説明図である。
【図6】図5において用いられているクランプ用クサビを説明するものであって、(a)は平面説明図、(b)は、その正面説明図、(c)は、その左側面説明図、(d)は、その右側面説明図、(e)は、(c)におけるC−C断面説明図である。
【図7】図6に示されるクランプ用クサビを図5に示されるイケールのポストに対して、取り付ける構造を示す断面説明図である。
【図8】図5に示されるイケールに対して、図2及び図3に示されるマシンバイスを取り付けて、図1に示される固定状態を実現する工程を説明する半截説明図(一部切り欠き)であって、(a)はポストに対してマシンバイスを対向せしめた状態を示し、(b)は、ポストに配設したクランプ用クサビをマシンバイスの嵌入穴内に嵌入せしめた状態を示し、(c)はクランプボルトを螺入せしめて、マシンバイスをポストに固定せしめた状態を示している。
【図9】図8(c)におけるクランプ用クサビとクランプボルトとの係合状態を拡大して示す、断面部分説明図である。
【図10】一つの取付面に対して、複数のマシンバイスを、配列・固定せしめた状態を示す平面説明図である。
【図11】イケールに対するマシンバイスの従来の固定構造の一例を示す説明図であって、(a)は、その平面形態を示しており、(b)は、その正面形態を概略的に示している。
【符号の説明】
【0039】
10 四面イケール 12 ポスト 14 マシンバイス 16 フランジ 18 バイス本体 19 キー溝 20 固定ジョー 22 可動ジョー 24 スピンドル 26 嵌入穴 28 ネジ穴 29 キー溝 30 クランプボルト 30a 先端部 30b レンチ穴 40 クランプ用クサビ 42 V字溝 42a 傾斜面 44 ボルト穴 46 ピン挿入用穴 48 嵌合穴 50 固定ネジ穴 52 位置決め穴 54 取付ボルト 56 位置決めピン 60 取付面 110 四面イケール 112 ポスト 114 マシンバイス 116 押さえ金具 118 固定ボルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付台の取付面に機具を固定せしめるための構造にして、
該取付台の取付面の複数位置において該取付面からそれぞれ突出するように取り付けられた複数のクランプ用クサビであって、各クサビの側面に、軸直角方向に延びる係合溝が設けられ、且つ該係合溝のクサビ先端側の側面が傾斜面とされているものと、
該取付面における複数のクサビ取付位置にそれぞれ対応した前記機具の底面の複数位置に設けられた、前記クサビが嵌入せしめられ得る複数の嵌入穴と、
該複数の嵌入穴に対して直交して突入し得るように前記機具に対してそれぞれ螺入せしめられる、先端部が円錐形状とされたクランプボルトと
を有し、該クランプボルトの螺入によって、該クランプボルトの先端部が前記クサビの係合溝の傾斜面に当接して係合し、その螺入の進行に伴なって、該クサビが前記機具内に引き込まれるようにして、該機具を前記取付台に固定せしめることを特徴とする機具の固定装置。
【請求項2】
前記各クサビの側面に設けられた係合溝が、V字溝である請求項1に記載の機具の固定装置。
【請求項3】
前記取付台が、前記取付面として一つ又は複数の面を有するイケールである請求項1又は請求項2に記載の機具の固定装置。
【請求項4】
前記機具が、バイスである請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の機具の固定装置。
【請求項5】
前記係合溝が前記機具の外側面に向かって開口して位置するように、前記クサビが前記取付台の取付面から突出して配設されている請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の機具の固定装置。
【請求項6】
前記クサビと前記取付台の何れか一方にピンが立設されると共に、それらの何れか他方に挿入穴が設けられ、該ピンが該挿入穴に挿入されることによって、該取付面に対する前記クサビの立設形態が規定されている請求項5に記載の機具の固定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−106937(P2010−106937A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278768(P2008−278768)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(592063401)株式会社ナベヤ (28)
【Fターム(参考)】