説明

機械構成要素保持装置

【課題】ダブテール(14)を有する第1の機械構成要素(16)の、第2の機械構成要素(10)の相補形ダブテールスロット(12)内での軸方向移動を拘束するための軸方向保持システムを提供する。
【解決手段】本システムは、ダブテールスロットの底面内に形成された第1の曲線状グルーブ(30)と、ダブテールの底面内に形成された第2の曲線状グルーブ(32)とを含む。第1及び第2のグルーブは、ダブテールがダブテールスロット内に位置決めされた時に整列した状態になって、それにより外周閉鎖開口部を形成する。曲線状固定クリップ(28)が、外周閉鎖開口部内に受けられる。任意選択カバープレート40は、固定クリップの端部を例えばスエージングによって変形させた状態で該固定クリップの端部上に配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的にはターボ機械に関し、より具体的には、ブレード又はバケットのような構成要素の、圧縮機ロータブレードホイールのような別の構成要素に形成されたスロット内での保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来型のタービン圧縮機構成要素内では、ロータブレードは、ダブテール継手によって回転ブレードホイール内に保持される(すなわち、ブレード上のダブテールが、ホイールの相補形スロット内に受けられる。)。
【0003】
ブレードとホイール内のダブテールスロットとの間の嵌合は、組立及び公差を可能にするために緩くなっている。従って、ブレードが適正に保持されていない場合には、緩い嵌合により、ハードウェアがスロット内で移動することが可能であり、過度な摩耗を引き起こすおそれがある。この過度な摩耗は、最終的には部品を故障させて、補修を行うことができるまで装置を停止させることを必要とする。
【0004】
一般的に、各ブレードは、1以上のかしめによってホイールダブテールスロットに沿った移動を制限するようにホイール内に保持される。これは、ブレードダブテールの局所的な面取りによって形成された空所内にホイールスロットの端縁部における材料を塑性的に変形させかつ移動させる方法である。この方法は、場合によってはホイール内でのブレードの不適切な保持を生じるおそれがある手作業のかつ非常に変動の多い方法である。ロータ上に作用する振動力により、かしめに対する摩耗が生じ、これが、保持機構の最終的な損傷を招くおそれがある。かしめが摩耗すると、ブレードは次に、ダブテールスロット内で自由に滑動する可能性がある。非常に大きな振幅において、この動きは、ブレードダブテールの摩耗及び最終的な損傷をもたらす可能性がある。このことは次に、ブレード離脱及びそれに続くガスタービンに対する巻き添え損傷を引き起こす。ブレードをダブテールスロット内に逆に挿入することによってか又はブレードを誤った軸方向位置(段)に挿入することによってかのいずれかでロータブレードが不適切に据付けられた多くの文書化された事例が存在している。これらの誤組立ての幾つかが、その後に起こる機械装置の損傷の原因として確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4622821号明細書
【特許文献2】米国特許第4653279号明細書
【特許文献3】米国特許第4700544号明細書
【特許文献4】米国特許第4875339号明細書
【特許文献5】米国特許第6484505号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホイールのブレードを損傷させずに、ブレードを据付けし、取外しかつ再据付けするのを可能にする現場改造取付け可能なブレード保持機構に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例示的かつ非限定的な実施形態によると、ダブテールを有する機械構成要素の、相補形ダブテールスロット内での軸方向移動を拘束するための軸方向保持システムを提供し、本システムは、ダブテールスロットの底面内に形成された第1の曲線状グルーブと、ダブテールの底面内に形成された第2の曲線状グルーブとを含み、第1及び第2のグルーブは、ダブテールがダブテールスロット内に位置決めされた時に整列した状態になって、それにより外周閉鎖開口部を形成し、曲線状固定クリップが、外周閉鎖開口部内に挿入される。
【0008】
別の態様では、本発明は、ダブテールを有する機械構成要素の、相補形ダブテールスロット内での軸方向移動を拘束する軸方向保持システムに関し、本システムは、ダブテールスロットの底面内に形成された第1の曲線状グルーブと、第1の曲線状グルーブと整列した状態でダブテールの底面内に形成されてそれによりほぼC字形外周閉鎖端部開放スロットを形成した第2の曲線状グルーブと、外周閉鎖端部開放スロット内に受けられた曲線状固定クリップと、固定クリップのそれぞれの自由端部上に受けられる一対の孔が形成されたカバープレートとを含み、固定クリップの自由端部は、カバープレート、固定クリップ及び機械構成要素の離脱を防止するためにスエージングされる。
【0009】
添付した図面と関連させて、以下により詳細な説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】公知のロータホイール及びブレード組立体の部分斜視図。
【図2】本発明の例示的な実施形態によるロータホイール及びブレード組立体の部分斜視図。
【図3】図2と同様であるが、ブレードを取外した図。
【図4】図3から取外したブレードダブテールの部分底面斜視図。
【図5】ロータホイール/ブレードダブテールに対する固定構成要素の例示的な一連の組立を示す部分斜視図。
【図6】ロータホイール/ブレードダブテールに対する固定構成要素の例示的な一連の組立を示す部分斜視図。
【図7】ロータホイール/ブレードダブテールに対する固定構成要素の例示的な一連の組立を示す部分斜視図。
【図8】ロータホイール/ブレードダブテールに対する固定構成要素の例示的な一連の組立を示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、その周辺部の周りに円周方向に間隔を置いて配置された複数のダブテールスロット12が形成された圧縮機ロータホイール10を示す。各スロット12は、ブレード又はバケット16の根元の相補形ダブテール14を受けるように設計されている。
図2は、ダブテールスロット22を備えた同様なホイール20と相補形ダブテール26を備えたブレード24とを示す。しかしながら、この図では、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるC字形固定クリップ28が、ホイールスロット22内にブレード24を保持するために据付けられている。この実施例では、下記でより詳細に説明するように、任意選択カバープレートを用いている。
【0012】
図3に転じると、ホイール20内のダブテールスロット22は、ブレード24がない状態で示しており、従ってダブテールスロットの底面内に機械加工された第1のC字形グルーブ30を見ることが可能であり、該グルーブの両端部はダブテールスロットの端縁部において開放した状態になっている。グルーブ30は、その断面がほぼ半円形であり、従って下記でさらに説明するように、C字形固定クリップ28の外周をほぼ半分だけ収容する。
【0013】
図4は、ダブテールスロット内の第1のC字形グルーブ30と正確に整列するように設置された、ブレードダブテール26の下面表面34内に機械加工された第2のC字形グルーブ32を示す。第2のC字形グルーブは、同様な半円形断面を有しており、ブレードダブテールがダブテールスロット内に受けられた時に、整列したグルーブが、その両端部で開放した外周閉鎖(すなわち、その断面が円形の)C字形開口部を形成するようになる。しかしながら、例えば方形、長円形などの他の断面形状もまた、同様に好適なものとすることができることを理解されたい。
【0014】
C字形固定クリップ28は、一方の端部36から反対側の端部38まで約180°の円弧の形態で延びるほぼ円形断面の中実鋼合金(又は、他の好適な材料)で形成され、かつC字形開口部内に挿入されるようになっている。長形の任意選択カバープレート40には、その両端部に、C字形クリップ28の両端部を受ける孔42、44が形成される。
【0015】
次に図5〜図8を参照しながら、ここでは、C字形クリップ28の例示的であるが非限定的な組立シーケンスについて説明する。カバープレートがC字形固定クリップ28上に摺動可能に受けられまたクリップの一方の端部がスエージングされ、従ってカバープレート40がクリップのスエージング端部から摺動して外れるのが防止される。図5に示すように、カバープレート40が取付けられると、次に未変形端部が、図5に示すように外周閉鎖グルーブ30、32内に挿入され、図6に示す完全な挿入状態になる。図7に示すように、次にカバープレート40の第2の端部は、C字形固定クリップ28の第2の端部と整列した状態になるように回転させられて、該C字形固定クリップ28の端部36、38がカバープレートから突出するようになる。次にC字形固定クリップの残りの端部が、成形パンチでスエージングされて(又は、あらゆる適切な手段で変形又はかしめられて)、それによりC字形固定クリップ28を所定の位置に固定し、カバープレート40がスエージング端部とブレードダブテール/ホイール組立体との間に挟持された状態になる。この構成により、ブレード又はバケットがスロット内で軸方向に移動するのが防止される。スエージング作業は、C字形固定クリップの端部36、38を変形させるが、ブレードダブテール又はホイールスロットを変形させない、すなわち、カバープレートは、ダブテール及びダブテールスロットを保護して、固定組立プロセスがブレードダブテール又はホイールに対して長期の影響を持たないようにするという点で、カバープレート40の使用は有益であることに注目されたい。
【0016】
さらに、C字形固定クリップ28のスエージング端部36、38は、カバープレート40の外部側にあるので、C字形固定クリップ28のスエージング(拡大)端部は、この場合も同様にブレードダブテール又はホイールスロットに損傷を与えずに、機械加工により除去して、カバー40及びブレードを取外すのを可能にすることができる。破壊させたC字形固定クリップを取外した後に、新規な又は補修したブレードの再据付けは、新しいC字形固定クリップ又は構成要素を用いて達成することができる。上記のプロセスはまた、カバープレート及びクリップが使用に先だって互いに少なくとも一時的に固定されて、それにより構成要素部品の一方又は他方を喪失する可能性を減少させるという点で有益である。しかしながら、C字形固定クリップ28は、あらゆるスエージングに先立って、完全に挿入されかつ次にカバープレート40がクリップの両自由端部36、38上に押圧されることが分かるであろう。最終段階として、C字形固定クリップ28の両端部は次に、同時にか又は順次にかのいずれかでスエージングされる。
【0017】
現在最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるものに関して本発明を説明してきたが、本発明は、開示した実施形態に限定されるべきものではなく、逆に、特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲内に含まれる様々な修正及び均等な構成を保護しようとするものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0018】
10 圧縮機ロータホイール
12、22 ダブテールスロット
14、26 ダブテール
16、24 ブレード又はバケット
20 ホイール
28 C字形固定クリップ
30 第1のC字形グルーブ
32 第2のC字形グルーブ
34 下面表面
40 カバープレート
42、44 孔
36、38 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダブテール(14)を有する第1の機械構成要素(16)の、第2の機械構成要素(10)の相補形ダブテールスロット(12)内での軸方向移動を拘束するための軸方向保持システムであって、
前記ダブテールスロットの底面内に形成された第1の曲線状グルーブ(30)と、
前記ダブテールの底面内に形成された第2の曲線状グルーブ(32)と、を含み、
前記第1及び第2のグルーブが、前記ダブテールが前記ダブテールスロット内に位置決めされた時に整列した状態になって、それにより外周閉鎖開口部を形成し、
曲線状固定クリップ(28)が、前記外周閉鎖開口部内に挿入される、
システム。
【請求項2】
前記第1及び第2のグルーブ(30、32)並びに固定クリップ(28)が、その各々が一対の開放端部を備えたほぼC字形である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記第1及び第2のグルーブの各々が、その断面がほぼ半円形であり、従ってその断面がほぼ円形である外周閉鎖端部開放スロット(30、32)を形成する、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記固定クリップ(28)の自由端部(36、38)を受ける一対の孔(42、44)が形成されたカバープレート(40)を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記クリップ(28)の自由端部(36、38)が、前記カバープレート(40)に対してかしめられる、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記固定クリップ(28)の自由端部(36、38)を受ける一対の孔(42、44)が形成されたカバープレート(40)を含む、請求項3記載のシステム。
【請求項7】
前記クリップ(28)の自由端部(36、38)が、前記カバープレート(40)に対してかしめられる、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記機械構成要素(16)が、タービンブレードを含み、
前記ダブテールスロット(12)が、タービンロータホイール(10)内に形成される、
請求項1記載のシステム。
【請求項9】
ダブテール(14)を有する第1の機械構成要素(16)の、第2の機械構成要素(10)の相補形ダブテールスロット(12)内での軸方向移動を拘束する軸方向保持システムであって、
前記ダブテールスロットの底面内に形成された第1の曲線状グルーブ(30)と、
前記第1の曲線状グルーブと整列した状態で前記ダブテールの底面内に形成されてそれによりほぼC字形外周閉鎖端部開放スロットを形成した第2の曲線状グルーブ(32)と、
前記外周閉鎖端部開放スロット内に受けられた曲線状固定クリップ(28)と、
前記固定クリップのそれぞれの自由端部(36、38)上に受けられる一対の孔(42)が形成されたカバープレート(40)と、を含み、
前記固定クリップの自由端部が、前記カバープレート、固定クリップ及び機械構成要素の離脱を防止するためにスエージングされる、
システム。
【請求項10】
前記第1の機械構成要素(16)が、タービンブレードを含み、
前記第2の機械構成要素(10)が、タービンロータホイールを含む、
請求項9記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−168016(P2009−168016A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1218(P2009−1218)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】