説明

機械的フィルム強度が強められたセルロースハードカプセル

【課題】
機械的フィルム強度が強められたセルロースカプセルを提供すること。
【解決手段】
機械的フィルム強度が強められたセルロースカプセルを調製するためのプロセスであって、i)可溶化セルロースの水溶液を調製する工程;ii)スクロース脂肪酸エステル、ピロリン酸カリウムおよび氷酢酸を、該可溶化セルロースの水溶液に添加する工程;iii)イオタ−カラギーナンと寒天との混合溶液を、得られた混合物に添加する工程;ならびにiv)得られた生成物を静置して、該生成物の粘度を調節し、該生成物からカプセルを形成する工程、を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、特定の多糖ゲル化剤をセルロースベースの材料に添加することによって調製される、機械的フィルム強度が強められたセルロースハードカプセル、およびその調製方法に関する。より詳細には、本発明は、以下を包含する工程によって調製される、機械的フィルム強度が強められたセルロースハードカプセルに関する:i)スクロース脂肪酸エステル、ピロリン酸カリウムおよび氷酢酸を、セルロースベース材料溶液に添加する工程;ii)イオタ−カラギーナンと寒天との混合溶液をゲル化剤として、得られた混合物に添加する工程;ならびにiii)得られた生成物を静置して、その生成物の粘度を調節し、その生成物からカプセルを形成する工程。
【背景技術】
【0002】
カプセルを形成するための伝統的な材料は、ゼラチンである。なぜなら、ゼラチンは、正確かつ極めて理想的な特性を有するからである。それにもかかわらず、ゼラチンは、いくつかの欠点を有し、この欠点により、他のカプセル材料が利用可能である必要がある。好ましくない主な局面は、ゼラチンが動物起源であることである。他の欠点は、比較的高い水分含量(10〜16%)が不便なことおよび水分含量の低下に伴う粘度の喪失である。さらに、ゼラチンカプセルは、熱および湿度に対して感受性であり、このことは、製品の有用性に影響を与える。
【0003】
ゼラチンの代替物として、セルロースハードカプセルが開示されている。セルロースハードカプセルは、吸湿性材料を挿入するために適切である。なぜなら、セルロースハードカプセルの水分含量は、7%未満であり、これは、ゼラチンカプセルの水分含量よりも低いからである。さらに、ゼラチンにおいて生じるタンパク質変性の問題がない。なぜなら、セルロースは、植物起源であるからである。もちろん、セルロースは、ベジタリアンにも有用である。
【0004】
しかし、セルロースハードカプセルにはいくつかのハンディキャップが存在する。なぜなら、セルロース溶液のゲル化は十分ではなく、このことから、セルロースハードカプセルの低いフィルム強度および低い安定性がもたらされるからである。セルロース溶液のゲル化を改善するために、種々の多糖をセルロース溶液中に添加する方法が開示されている。
【0005】
米国特許第5,431,917号では、薬物用セルロースハードカプセルが開示された。この開示の実施例では、カッパ−カラギーナンを好ましいゲル化剤として開示し、そして塩化カリウムを好ましいゲル化補助剤として開示した。
【0006】
他方、米国特許第6,517,865号B2では、以下を含むカプセルフィルム組成物が開示された:i)90〜99.98重量%の少なくとも1つのセルロースエーテル、ii)0.01〜5重量%のジェランガム、およびiii)0.01〜8重量%の隔離剤(この隔離剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸ナトリウム、クエン酸またはそれらの組み合わせから選択される)。
【0007】
さらに、米国特許第6,410,050号B1では、本発明者自身がまた、以下を包含するプロセスによって調製されるセロルースハードカプセルを開示した:i)ペクチンとグリセリンとの混合溶液を調製する工程;ii)この混合溶液を、可溶化セルロース水溶液に添加する工程;iii)氷酢酸、グルコン酸カルシウムおよびスクロース脂肪酸エステルを、この混合物に添加する工程;ならびにiv)得られた生成物を静置して、その生成物の粘度を調節し、そしてカプセルを形成する工程。
【0008】
しかし、上記の開示された方法によって調製された全てのセルロースハードカプセルは、従来のゼラチンハードカプセルの機械的フィルム強度および酸素透過性と比較して、機械的フィルム強度が低く、酸素透過性が低いという欠点を有する。
【0009】
セルロースハードカプセルの機械的フィルム強度が低い理由は、セルロースの物理的特性によって引き起こされる。それゆえ、セルロースハードカプセルの調製時およびこのカプセル中に薬物または食品の充填時に次の問題が生じる。
【0010】
第1に、別々に形成されたフィルムのふたとフィルム本体とを接続ブロックにおいて接続する場合に、接続不良が生じる。なぜなら、セルロースフィルムの機械的フィルム強度が低いからである。
【0011】
第2に、カプセルをカプセル検査機、カプセル印刷機および/またはカプセル充填機中のドラム間に移した場合に、潰れ不良(mashed badness)が生じる。なぜなら、セルロースフィルムの機械的フィルム強度が低いからである。
【0012】
第3に、スピン印刷の間にインクをゴムロールからカプセル表面に転写するためにカプセルをゴムロールで押した場合に、潰れ不良が生じる。なぜなら、セルロースフィルムの機械的フィルム強度が低いからである。
【0013】
第4に、充填作業の間に、カプセル中に食品または薬物を充填した後にカプセルのふたと本体とを接続する場合に、かぶせ不良(telescope badness)が生じる。なぜなら、セルロースフィルムの機械的フィルム強度が低いからである。
【特許文献1】米国特許第5,431,917号明細書
【特許文献2】米国特許第6,517,865号B2明細書
【特許文献3】米国特許第6,410,050号B1明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それゆえ、フィルム強度を強めることが、セルロースハードカプセルの商業的使用のためには必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、特定の多糖ゲル化剤をセルロースベースの材料に添加することによって、セルロースハードカプセルのフィルム強度を強めることを達成した。さらに、本発明は、フィルム強度を強めたセルロースハードカプセルを開発し、これはまた、セルロースハードカプセルの調製の間の接続不良、潰れ不良および/またはかぶせ不良を低減する。
【0016】
(発明の要旨)
本発明の目的は、以下の工程を包含する、機械的フィルム強度を強めたセルロースカプセルを調製するためのプロセスを提供することである:i)可溶化セルロースの水溶液を調製する工程;ii)スクロース脂肪酸エステル、ピロリン酸カリウムおよび氷酢酸を、可溶化セルロースの水溶液に添加する工程;iii)イオタ−カラゲーナンと寒天との混合溶液を、得られた混合物に添加する工程;ならびにiv)得られた生成物を静置して、この生成物の粘度を調節し、そしてこの生成物からカプセルを形成する工程。
【0017】
さらに、本発明は、請求項1に記載の機械的フィルム強度が高められたセルロースカプセルを調製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、以下の工程を包含する:i)18〜21重量部の可溶化セルロースを含む100重量部の水溶液を調製する工程;ii)0.1〜0.5重量部のスクロース脂肪酸エステル、0.05〜0.3重量部のピロリン酸カリウムおよび0.01〜0.2重量部の氷酢酸を、可溶化セルロースの水溶液100重量部に添加する工程;iii)0.1〜1.0重量部のイオタ−カラギーナンと0.02〜0.5重量部の寒天との混合溶液を、得られた混合物に添加する工程;ならびにiv)得られた生成物を静置して、この生成物の粘度を調節し、この生成物からカプセルを形成する工程。
【0018】
イオタ−カラギーナンと寒天との重量比は、好ましくは3.5:1〜4.5:1であり、そしてこのセルロースは、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0019】
この氷酢酸は、可溶化セルロースのアルカリ溶液のpHを中和するために添加される。
【0020】
他方、本発明はまた、上記の調製方法によって調製されたセルロースハードカプセルを提供し、このセルロースハードカプセルは、以下を含む:100重量部のセルロース、0.5〜2.5重量部のスクロース脂肪酸エステル、0.2〜1.5重量部のピロリン酸カリウム、0.05〜0.3重量部の氷酢酸、1.0〜5.0重量部のイオタ−カラギーナンおよび0.1〜2.5重量部の寒天。
【0021】
上記に加えて、本発明は、以下を提供する:
(項目1)
機械的フィルム強度が強められたセルロースカプセルを調製するためのプロセスであって、以下:
i)可溶化セルロースの水溶液を調製する工程;
ii)スクロース脂肪酸エステル、ピロリン酸カリウムおよび氷酢酸を、該可溶化セルロースの水溶液に添加する工程;
iii)イオタ−カラギーナンと寒天との混合溶液を、得られた混合物に添加する工程;ならびに
iv)得られた生成物を静置して、該生成物の粘度を調節し、該生成物からカプセルを形成する工程、
を包含する、方法。
【0022】
(項目2)
項目1に記載の機械的フィルム強度が強められたセルロースカプセルを調製するためのプロセスであって、以下の工程:
i)18〜21重量部の可溶化セルロースを含む、水溶液100重量部を調製する工程;
ii)0.1〜0.5重量部のスクロース脂肪酸エステル、0.05〜0.3重量部のピロリン酸カリウムおよび0.01〜0.2重量部の氷酢酸を、該可溶化セルロースの水溶液100重量部に添加する工程;
iii)0.1〜1.0重量部のイオタ−カラギーナンと0.02〜0.5重量部の寒天との混合溶液を、得られた混合物に添加する工程;ならびに
iv)得られた生成物を静置して、該生成物の粘度を調節し、該生成物からカプセルを形成する工程、
を包含する、方法。
【0023】
(項目3)
項目1に記載の機械的フィルム強度が強められたセルロースカプセルを調製するためのプロセスであって、イオタ−カラギーナンと寒天との重量比は、3.5:1〜4.5:1である、プロセス。
【0024】
(項目4)
項目1に記載の機械的フィルム強度が強められたセルロースカプセルを調製するためのプロセスであって、前記セルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、プロセス。
【0025】
(項目5)
項目1に記載の機械的フィルム強度が強められたセルロースカプセルを調製するためのプロセスであって、前記氷酢酸を添加して、可溶化セルロースのアルカリ性溶液のpHを中和する、プロセス。
【0026】
(項目6)
項目1に記載の調製方法によって調製された、セルロースハードカプセル。
【0027】
(項目7)
項目6に記載のセルロースハードカプセルであって、該セルロースハードカプセルは、100重量部のセルロース、0.5〜2.5重量部のスクロース脂肪酸エステル、0.2〜1.5重量部のピロリン酸カリウム、0.05〜0.3重量部の氷酢酸、1.0〜5.0重量部のイオタ−カラギーナン、および0.1〜2.5重量部の寒天を含む、セルロースハードカプセル。
【発明の効果】
【0028】
本発明のセルロースハードカプセルを提供することによって、機械的フィルム強度が高められ、よって、セルロースハードカプセルへの印刷の際、食品または薬物を充填する際、またはカプセル本体にキャップをはめるときに従来生じていた潰れ不良またはかぶせ不良が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
セルロースハードカプセルを調製するために、物理的ゲル化法または化学的ゲル化法を、モールディングピンを可溶化セルロース溶液中に浸漬した後に用い得る。
【0030】
物理的ゲル化法は、可溶化セルロース溶液をゲル化するために、(67℃よりも高く)加熱したモールディングピンを用いる。他方、化学的ゲル化法は、可溶化セルロース溶液への多糖ゲル化剤の添加を必要とする。
【0031】
物理的ゲル化法によって調製されたセルロースフィルム強度が、化学的ゲル化法によるものより高いとはいえ、物理的ゲル化法によるセルロースフィルム強度は、ゼラチンフィルムの強度よりも依然として低い。表1は、ゼラチンフィルム強度と比較した、ゲル化方法によるセルロースフィルム強度のデータを示す。
【0032】
【表1】

機械的フィルム強度は、テクスチャー分析器(Texture Analyser;Model TA1000)によって測定される。測定ハンマーの落下速度は、0.5mm/秒であり、機械的フィルム強度の測定深度は、カプセルの表面から4mmである。試験カプセルは、テクスチャー分析器上に置かれ、そしてフィルム強度が、ハンマーを落下させることによって4mmの押し込み深度において測定される。
【0033】
表1に示すように、物理的ゲル化法によって調製されたセルロースハードカプセルの機械的フィルム強度は、化学的ゲル化法のセルロースハードカプセルの機械的フィルム強度よりも高い。それにもかかわらず、カプセル製造業者の大部分は、化学的ゲル化法を好む。なぜなら、物理的ゲル化法は、モールディングピンおよび他のカプセル製造機を再使用(reform)するためにさらなるコストを必要とするのに対して、化学的ゲル化法は、モールディングピンの再使用も、他のカプセル製造機の再使用も必要としないからである。
【0034】
しかし、化学的ゲル化法によって調製されるセルロースハードカプセルは、ゼラチンハードカプセルの機械的フィルム強度と比較して、機械的フィルム強度が低いので、いくつかの上記のハンディキャップを有する。
【0035】
カラギーナンは、3種類に分類され得る:カッパ−カラギーナン、イオタ−カラギーナンおよびラムダ−カラギーナン。これらのうち、カッパ−カラギーナンおよびイオタ−カラギーナンは、3次元で鎖を通して2分子を接続する二重らせん構造を有し、このことにより、カプセルを製造するために用いられるゲルの形成がもたらされる。しかし、ラムダ−カラギーナンは、二重らせん構造を有さず、これは、カプセルの製造には用いることができない。
【0036】
特に、カッパ−カラギーナンは、ゲル化剤として用いられている。なぜなら、塩化カリウムのようなカリウムイオンとの組み合わせで、強いゲルが形成されるからである。しかし、イオタ−カラギーナンは、適合性のゲル化補助剤と混合された場合、より良好なゲル化剤であり得る。なぜなら、イオタ−カラギーナンの二重らせん構造が、ゲルの形成に、より適合しているからである。
【0037】
ゲル化剤についてのイオタ−カラギーナンの適合性を検索するために、イオタ−カラギーナンおよび他の多糖の種々の混合溶液を、機械的フィルム強度を強めることについて試験するために、サンプルセルロースカプセルについてのゲル化剤として適合させる。
【0038】
この試験に用いられる他の多糖は、寒天ガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、キサンタンガム、ペクチン、デンプン、プルランおよび寒天から選択される1以上であり得る。イオタ−カラギーナンと寒天との混合溶液は、セルロースハードカプセルの機械的フィルム強度を強めることに関して、ゲル化剤として最良の組み合わせを示す。
【0039】
この試験を通して、本発明者らはまた、イオタ−カラギーナンと寒天との混合溶液の使用が、カッパ−カラギーナン単独または組み合わせの使用と比較して、セルロースハードカプセルの、より良好な機械的フィルム強度を示すことを見出した。
【0040】
本発明者らはまた、とりわけ、一塩基性リン酸カリウム、二塩基性リン酸カリウム、グルコン酸カリウム、クエン酸カリウム、炭酸カリウムおよびピロリン酸カリウムについて、イオタ−カラギーナンのゲル化補助性の選択を試験する。ピロリン酸カリウムは、イオタ−カラギーナンの最良のゲル化補助性を示す。
【0041】
さらに、氷酢酸は、ピロリン酸カリウムを添加することによるアルカリ性を回避して、セルロース水溶液のpHを調節するために、ゲルの形成に必要とされている。氷酢酸を添加することにより、セルロース水溶液のpHが、約pH6に調節される。
【0042】
他方、スクロース脂肪酸エステルもまた、優れたフィルム分散ならびにフィルム強度のための乳化剤として必要とされている。
【0043】
本発明は、以下の実施例によって、より具体的に説明される。しかし、実施例は、本発明を例示することを意図しており、本発明の範囲を決して限定しないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0044】
(調製実施例 1〜3:セルロースハードカプセルの調製)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を、精製水(約80℃)に添加する。次いで、その混合物を、攪拌し、分散させる。スクロース脂肪酸エステル、ピロリン酸カリウムおよび氷酢酸をまた、可溶化セルロース溶液に添加する。次いで、イオタ−カラギーナンと寒天との混合溶液を、得られた混合物に添加し、60rpmで2時間攪拌する。撹拌後、その混合セルロース溶液(約80℃)を、約45℃に冷却する。次いで、その混合セルロース溶液を、成形するために、再び58℃まで加熱する。最後に、セルロースハードカプセルを、カプセル製造機から形成する。
【0045】
上記の調製法に従って、セルロースハードカプセルを、表2に示されるように、以下の組成含有量で調製した。イオタ−カラギーナンおよび寒天の含有量および比率を、同じ含有量のセルロースベース材料に対して変化させた。一方、スクロース脂肪酸エステル、ピロリン酸カリウムおよび氷酢酸の含有量は、これらの調製実施例において全て同じであるように対応させた。
【0046】
【表2】

(実施例1:セルロースハードカプセルの機械的フィルム強度の測定)
調製実施例1〜3およびコントロールにおいて調製されたセルロースハードカプセルの機械的フィルム強度を、#0サイズカプセルを用いて測定した。コントロールに使用されるセルロースハードカプセルを、米国特許第5,431,917号の実施例1に開示される方法に従って調製した。機械的フィルム強度の結果を、表3に示す。
【0047】
【表3】

機械的フィルム強度を測定するための方法は、表1において使用される方法と同じである。
【0048】
表3において示されるように、調製実施例1および2において調製されたものの機械的フィルム強度は、物理的ゲル化法により調製されたものより良好な機械的フィルム強度を示す。これは、イオタ−カラギーナンと寒天との混合物中における寒天成分の増加に従って、機械的フィルム強度が増大することを意味する。さらに、調製実施例1〜3において調製されたものの機械的フィルム強度は、コントロールの機械的フィルム強度よりも良好な機械的フィルム強度を示す。これは、イオタ−カラギーナンおよび寒天が、カッパ−カラギーナン単独より良好なゼラチン化剤であることを意味する。
【0049】
(実施例2:セルロースハードカプセルのフィルム透明度の測定)
調製実施例1〜3およびコントロールにより調製されたセルロースハードカプセルのフィルム透明度を、UV−可視光線分光光度計を使用して570nmにて測定した。コントロールに使用したセルロースハードカプセルは、米国特許第6,410,050 B1号に開示される方法に従って調製した。試験サンプルを、セルロースカプセルの本体部分から長さ1cmおよび幅1cmで調製した。フィルム透明度の結果を、表4に示す。
【0050】
【表4】

表4において示されるように、調製実施例2〜3によって調製されたもののフィルム透明度は、コントロールの透明度より良好である。しかし、調製実施例3によって調製された、そのフィルム強度は、商業的に使用されるには十分でない。従って、調製実施例2によって調製されたセルロースハードカプセルは、よりよいフィルム強度およびフィルム透明度、両方を示す。
【0051】
(実施例3:本発明のセルロースハードカプセルの調製)
19.5Kgのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(濃度:19.5%)を、79.915Lの精製水(約80℃)に添加する。次いで、その混合物を攪拌し、分散させる。195gのスクロース脂肪酸エステル(濃度:0.195%)、97.5gのピロリン酸カリウム(濃度:0.0975%)および29.25gの氷酢酸(濃度:0.0292%)もまた、可溶化セルロース溶液に添加する。次いで、682.5gのイオタ−カラギーナン(濃度0.6825%)と75.855gの寒天(濃度:0.0758%)との混合溶液を、得られた混合物に添加し、60rpmにて2時間攪拌する。撹拌後、その混合セルロース溶液(約80℃)を、約45℃に冷却する。次いで、その混合セルロース溶液を、成形のために再び58℃まで加熱する。最後に、セルロースハードカプセルを、カプセル製造機から形成する。
【0052】
(実施例4:本発明のセルロースハードカプセルの充填特性)
実施例3に開示される方法に従って、#0サイズの透明ハードカプセルを調製した。コントロールとして、米国特許第6,410,050 B1号に開示される方法に従って調製したセルロースハードカプセルを使用した。セルロースハードカプセルおよびコントロールの充填特性を、表5に示す。
【0053】
【表5】

表5に示されるように、実施例3において調製されたセルロースハードカプセルは、充填手順において、かぶせおよび潰れ不良を低減することによって、より良好な充填特性を示す。このことは、本発明のカプセルのフィルム強度が、市販されているものより優れていることを意味する。
【0054】
(実施例5:本発明のセルロースハードカプセルの印刷特性)
実施例3において開示される方法に従って、#0サイズの透明ハードカプセルを調製した。コントロールとして、米国特許第6,410,050 B1号に開示される方法によって調製したセルロースハードカプセルを使用した。そのセルロースハードカプセルおよびコントロールの印刷特性を、表6に示す。
【0055】
【表6】

表6に示されるように、実施例3において調製されたセルロースハードカプセルは、印刷手順において、透明度および潰れ不良を低減することによって、より良好な印刷特性を示す。このことは、本発明セルロースハードカプセルのフィルム強度が、市販されているものより優れていることを示す。
【0056】
(実施例6:本発明のセルロースハードカプセルの丸み)
実施例3に開示される方法に従って、#0サイズの透明ハードカプセルを調製した。コントロールとして、米国特許第6,410,050 B1号に開示される方法によって調製したセルロースハードカプセルを使用した。丸みを、そのカプセルをキャップおよび本体に分けた後に、プロフィール投影機を使用して測定する。セルロースハードカプセルおよびコントロールの丸みを、表7に示す。
【0057】
【表7】

表7に示されるように、実施例3において調製されたそのセルロースハードカプセルは、より良好な丸みを示す。このことは、本発明のセルロースカプセルのフィルム強度が、市販されるものより優れていることを意味する。
【0058】
実施例において示されるように、本発明のセルロースハードカプセルの充填特性、印刷特性および丸みは、全て優れている。このことは、本発明のセルロースハードカプセルのフィルム強度は十分に増強されていることを意味する。当然のことながら、本発明のセルロースハードカプセルのフィルム強度は、米国特許第5,431,917号および同第6,410,050号 B1に開示される、以前より公知の何れのカプセルよりも良好である。
【0059】
まとめると、本発明は、機械的フィルム強度が強められたセルロースカプセルを調製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、i)イオタ−カラギーナンと寒天との混合溶液を調製する工程;ii)この混合溶液を可溶化セルロースの水溶液に添加する工程;iii)スクロース脂肪酸エステル、ピロリン酸カリウム、および氷酢酸を、得られた混合物に添加する工程;iv)得られた生成物を静置して、その粘度を調節し、該生成物からカプセルを形成する工程、を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明のセルロースハードカプセルの機械的フィルム強度を検出するためのプロセスおよび装置を示す模式図を示す。そのフィルム強度は、カプセルの表面から4mmの深さにおいてハンマーを落下させ、押しつけることにより測定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的フィルム強度が強められたセルロースカプセルを調製するためのプロセスであって、以下:
i)可溶化セルロースの水溶液を調製する工程;
ii)スクロース脂肪酸エステル、ピロリン酸カリウムおよび氷酢酸を、該可溶化セルロースの水溶液に添加する工程;
iii)イオタ−カラギーナンと寒天との混合溶液を、得られた混合物に添加する工程;ならびに
iv)得られた生成物を静置して、該生成物の粘度を調節し、該生成物からカプセルを形成する工程、
を包含する、プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載の機械的フィルム強度が強められたセルロースカプセルを調製するためのプロセスであって、以下の工程:
i)18〜21重量部の可溶化セルロースを含む、水溶液100重量部を調製する工程;
ii)0.1〜0.5重量部のスクロース脂肪酸エステル、0.05〜0.3重量部のピロリン酸カリウムおよび0.01〜0.2重量部の氷酢酸を、該可溶化セルロースの水溶液100重量部に添加する工程;
iii)0.1〜1.0重量部のイオタ−カラギーナンと0.02〜0.5重量部の寒天との混合溶液を、得られた混合物に添加する工程;ならびに
iv)得られた生成物を静置して、該生成物の粘度を調節し、該生成物からカプセルを形成する工程、
を包含する、プロセス。
【請求項3】
請求項1に記載の機械的フィルム強度が強められたセルロースカプセルを調製するためのプロセスであって、イオタ−カラギーナンと寒天との重量比は、3.5:1〜4.5:1である、プロセス。
【請求項4】
請求項1に記載の機械的フィルム強度が強められたセルロースカプセルを調製するためのプロセスであって、前記セルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、プロセス。
【請求項5】
請求項1に記載の機械的フィルム強度が強められたセルロースカプセルを調製するためのプロセスであって、前記氷酢酸を添加して、可溶化セルロースのアルカリ性溶液のpHを中和する、プロセス。
【請求項6】
請求項1に記載の調製方法によって調製された、セルロースハードカプセル。
【請求項7】
請求項6に記載のセルロースハードカプセルであって、該セルロースハードカプセルは、100重量部のセルロース、0.5〜2.5重量部のスクロース脂肪酸エステル、0.2〜1.5重量部のピロリン酸カリウム、0.05〜0.3重量部の氷酢酸、1.0〜5.0重量部のイオタ−カラギーナン、および0.1〜2.5重量部の寒天を含む、セルロースハードカプセル。

【図1】
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【公開番号】特開2006−231022(P2006−231022A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151689(P2005−151689)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(500216260)スウング カプセル シーオー.,エルティーディー. (3)
【Fターム(参考)】