説明

止血剤組成物およびその使用

本発明は広くは止血の分野に関し、本発明には方法、組成物、およびデバイスが包含され、これらを用いることにより、止血をより速い速度で達成することができる。より具体的には、本発明は、該組成物の適用部位からは少し距離を置いたところで止血効果を発揮する止血組成物、および、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置することに伴なって起る局在性血管性合併症を効果的に減少させまた止血達成時間を減少させるための、そのような組成物の投薬方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは止血の分野に関するもので、本発明には、方法、組成物、およびデバイスが含まれ、これらを用いることで、止血を速い速度でまたは短い時間で達成することができる。より詳細には、本発明は、組成物を付けた部位から少し距離をおいたところで止血効果を発揮する止血剤組成物、および、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴の処置に伴なって起る限局性血管性合併症を効果的に減らすそのような組成物の適用方法に関する。本止血剤組成物は、1種または複数種の血管収縮物質、または、1種または複数種の血液凝固物質、または、1種または複数種の血管収縮物質と1種または複数種の血液凝固物質の組み合せを含むことができる。本止血剤組成物はまた、血管収縮作用と血液凝固作用の両方をもつ化合物を含むことができる。本止血剤組成物をバリア形成材とともに付けることで、止血をより効果的に達成することができ、また、限局性血管性合併症の発生を減らすこともできる。
【背景技術】
【0002】
静脈もしくは動脈のカテーテル術で起る限局性血管性合併症は、多くの医術でよく見られる副作用である。そのような合併症としては、血管壁の出血、止血時間の遅れ、血腫、偽動脈瘤、動静脈(AV)フィステルの生成などが挙げられ、これらは命にかかわるものである。心臓カテーテル術は依然として冠状動脈疾患を診断する主要な手法であるので、また、それを用いて心臓冠状動静脈の解剖学的構造を調べるのに役立っているので、得られる情報は、そのリスクにもかかわらず、多くの場合医用上不可欠なものである。伝統的には、破れ目または穿刺穴がある静脈もしくは動脈に圧迫を加えるのが合併症を減らす好ましい方法であったが、心臓カテーテル術の後の静脈もしくは動脈の圧迫は、患者にとって大変苦痛なものでもある。ウエイト(加重)のある圧迫包帯を止血の後4〜8時間用いることもできるが、患者は最大24時間固定されることにもなる。患者は多くの場合、限局性血管性合併症に加えて、背痛や尿閉を発症する。
【0003】
最近になって限局性血管性合併症を減らすのに2つの手法が用いられたが、それらは経皮的閉鎖/封鎖用デバイスと止血パッチである。
【0004】
皮膚や内臓表面の表面創傷を治療するための多数の止血用パッチが発明されている。これらのパッチは、パッチが皮膚に接触しているところ、または、内臓表面に接触しているところで効果がある。このパッチを心臓カテーテル術の処置に用いると、下のほうにある動脈もしくは静脈の穿刺穴が、パッチの作用性成分の直接的な作用を受けないという問題がある。つまり、動脈もしくは静脈の穿刺穴は、皮膚の穿刺穴が封鎖された後も出血し続ける可能性があり、血腫形成やその他の限局性血管性合併症の可能性が存在する。米国特許第6,056,970号には生体適合性の止血剤組成物と適用方法が開示されているが、この場合、該組成物は、好ましくは軽い圧迫をかけられて、血液凝固が組成物と創傷との間の界面で起る時間、皮膚表面の創傷と接触して局部的に維持される。関連する組成物が米国特許第6,361,551号に開示されているが、ここでは、創傷に接触する織物により、創傷表面とこの止血性織物との間の界面における血餅形成が加速される。この止血性織物はコラーゲン繊維からできており、大方の止血薬を含むことができる。また米国特許第5,564,849号には、皮膚または器官の創傷表面とこの止血パッチとの間の界面における血餅形成を加速する同様のパッチが開示されている。このパッチには、有効量のトロンビンおよびεアミノカプロン酸(EACA)が含まれている。
【0005】
止血薬として作用することができ、典型的にコラーゲンまたはフィブリンを含んでいるいくつかの組成物が知られている(Falstromet al., 1997, Catheterization and Cardiovascular Diagnosis 41: 79-84; Hoekstra etal., 1998, Biomaterials, 19: 1467-1471; Prior et al., 2000, Journal of Biomedical Materials Research, 53(3): 252-257)。このような組成物の主な欠点は、少し距離をおいたところにある静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置するのに使用するには、限界があることである。そのような組成物で、皮膚表面の下の少し距離をおいたところにある静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置するには、組成物を侵襲的な方法で付け、組成物が静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴と接触状態となるようにする必要がある。そのような組成物は接触している部位のところで効果があるので、皮膚表面からいくらかの距離をおいたところにある静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴のところにおける局部的な処置は可能でない。米国特許第4,394,373号には、血液凝固物質として作用する組成物が開示されており、この組成物を創傷と接触させて配置することで創傷の血液凝固を促進するのに使用することができるが、この組成物には、液体または粉末のキトサンが含まれている。米国特許第5,510,102号には、血液凝固物質として作用する組成物が開示されており、この組成物を創傷と接触させて配置することで創傷の血液凝固を促進するのに使用することができるが、この組成物には、富血小板血漿と、止血剤であるアルギン酸塩のような生体適合性ポリマーとが含まれている。米国特許第4,394,373号と同5,510,102号の組成物は、表面創傷の処置の場合、直接その創傷の表面に付けられ、カテーテル術で残された動脈穿刺穴の場合は、組成物が穿刺部位と接触状態となるよう、組成物は典型的には動脈の穿刺部位を取り囲む軟組織の中に注射される。これらの組成物の注射は侵襲的手法であり、腫脹などの合併症を生じることがあり、血管壁や組織へのさらなる損傷となり、感染のリスクも大きくなる。
【0006】
止血パッチは創傷とパッチの界面において効果がある。つまり、カテーテルにより生じた静脈もしくは動脈の穿刺穴の場合、皮膚表面の創傷の部位ではパッチにより血液凝固が起るが、もっと深いところの静脈もしくは動脈の体内穿刺穴では出血が依然として続き、血腫やその他の血管性合併症が起こる可能性が高くなる。止血パッチは、少し距離のあるところで、カテーテルで生じた穿刺穴を処置するのに有効であるとはまだ実証されていないが、止血パッチまたは織物を、医療手技の間露出される器官の創傷表面に直接用いることができる場合は、止血パッチには数多くの外科用用途がある。
【0007】
カテーテル術に伴なう局部的な血管性合併症を減らすもう一つのやり方として開発されているのが、止血組成物が穿刺部位に接触して投薬されるように、止血組成物を経皮的に適用するのを助けるデバイスである。Kipshidze et al.(U. S. 5,437,292)とVan Tassel et al.(U. S. 6,193,670Bl)は、血管のカテーテル穿刺部位を封鎖するためのデバイスをそれぞれ発明した。そのようなデバイスでは、典型的には、静脈もしくは動脈の穿刺部位からカテーテルシーストラック(路)を通って皮膚表面に延びる、コラーゲンまたはフィブリンからできたプラグ(栓)が施術される。そのようなデバイスの数多くの変形がこれまでに開発されており、穿刺部位を縫合糸で密閉するもの(Wood et al. U. S. 5,746,755)、あるいは血管壁の穿刺穴を血管管腔内から密閉するもの(Redmond et al. U. S. 2002/0006429 Al)がある。Gwechenberger、Silber、Camenzind、Sanbornそれぞれは、圧迫をかけて用いる密封デバイスの比較を、用手圧迫単独の場合と比較してつくった(Camenzind et al., 1994, Journal of the American College of Cardiology, 24(3): 655-662; Gwechenberger et al., 1997、Angiology, 48(2): 121-126; Sanborn et al., 1993, Journal of the American College of Cardiology, 22(5): 1273-1279; Silber et al., 1998, Catheterization and Cardiovascular Diagnosis 43: 421-427)。ほとんど全ての市販されているデバイスおよびパッチは、圧迫をかけて用いるよう指示されている。このようなデバイスの主な欠点は、組成物または縫合糸が施術されるその侵襲的なやり方である。
【0008】
いくつかの止血用デバイスが市販されているが、この閉鎖用デバイスによる合併症発生率は、通常の用手圧迫の場合と同じようなものである(Olade et al., 2002, Emedicine Journal, 3(3): 1-13)。カテーテル動脈穿刺穴を縫合せず、カテーテルトラックをコラーゲンで皮膚表面から動脈穿刺部位までプラグするデバイスおよび方法もまた、用手圧迫単独の場合よりも効果が劣ることが示されている(Camenzind et al., 1994, Journal of the American College of Cardiology, 24(3): 655-662)。動脈穿刺穴閉鎖用のデバイスまたは止血パッチが静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置するのに使用されようとなかろうと、カテーテル術やその他の医療手技に伴なう命にかかわる合併症の発生率を減らすニーズが依然としてあり、これはずっと続いてきた医学の課題であり、新しい処置法の必要性を示すものである。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、血腫およびその他の限局性血管性合併症の発生を減らすと考えられる、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置する方法および組成物を提供するものである。理論に縛られるものではないが、本発明者は、本発明の組成物および方法は、先行技術のデバイスおよびパッチに比較して、皮膚表面の創傷と接触している部位を越えた組織において効果があると考えている。つまり、本発明の組成物および方法は、先行技術の利点と、限局性血管性合併症発生率の低下を提供する。既存の止血パッチおよび止血デバイスを越えての本発明の方法および組成物の主な特徴は、本組成物が作用することができる、また本組成物を適用することができるその非侵襲的なやり方である。
【0010】
つまり、本発明は、a)患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している創傷の皮膚に、血管収縮物質の有効量が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合該血管収縮物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととするステップ;および同時に、b)前記破られたまたは穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップ;を含んでなる、患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置する方法を提供するものであり、この場合、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血液の流出の停止または低下が、圧迫を血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに加える場合よりも早い速度で、または、短い時間で達成されることを特徴としている。関連の実施形態では、組成物はさらに血液凝固物質を含んでいる。
【0011】
本発明の他の実施形態では、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴の封鎖または血流の停止、および、該破れ目または穿刺穴に近接している皮膚表面創傷の封鎖または血流の停止を達成する方法は:a)患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している創傷の皮膚に、血管収縮物質または血液凝固物質が含まれている組成物を付けるステップであって、この場合該血管収縮物質または血液凝固物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととするステップ;b)同時に該破られたまたは穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップ;および、c)該創傷および該穿刺穴からの血流の量を記録するステップ;を含んで成り、この場合該血管収縮物質または血液凝固物質の量は、圧迫を血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに加える場合に比較して、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴の封鎖を増やすかまたはそこからの血流の停止を増やすこと、および、皮膚表面創傷の封鎖を増やすかまたはそこからの血流の停止を増やすことに有効な量であることを特徴としている。
【0012】
本発明の他の実施形態では、患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置する方法は:a)患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している創傷の皮膚に、血液凝固物質の有効量が含まれている組成物を付けるステップであって、この場合該血液凝固物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととするステップ;および同時に、b)該破れたまたは穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップ;を含んでなり、この場合該静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血液の流出の停止または低下が、圧迫を血液凝固物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに加える場合よりも早い速度でまたは短い時間で達成されることを特徴としている。
【0013】
関連の実施形態では、本発明の組成物はさらに、抗真菌剤、抗菌剤、および/またはコラーゲンを含んでいる。なおさらなる他の関連の実施形態では、組成物はさらに医薬担体を含んでいる。いくつかの実施形態では、組成物は、ジェル、ソリッド(固体)、リキッド(液体)、スポンジ、フォーム、スプレー、エマルション(乳液)、サスペンション(懸濁液)、またはソリューション(溶液)として製剤化される。なおさらなる他の関連の実施形態では、組成物はさらに、中性のリキッド、中性のジェル、または中性のソリッドを含んでいる。好ましい実施形態では、組成物はさらに中性のソリッドを含んでおり、その中性のソリッドはガーゼである。他の好ましい実施形態では、組成物は、中性のソリッド上のコーティングの形態にある。なおさらなる他の好ましい実施形態では、バリア形成材はガーゼである。
【0014】
本発明は、本明細書に記載される本発明の組成物、方法、およびキットによる血液凝固物質の使用を提供するが、この場合この血液凝固物質は、アルファ-2-抗プラスミン、アルファ-1-抗トリプシン、アルファ-2-マクログロブリン、アミノヘキサン酸、アプロチニン、カルシウムイオン源、アルギン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム-ナトリウム、カゼインキナーゼII、キチン、キトサン、コラーゲン、シアノアクリレート、イプシロン-アミノカプロン酸、ファクターXIII、フィブリン、フィブリングルー、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、生体血小板、メタアクリレート、プラスミノーゲンアクチベーター阻害物質-1(PAI-1)、プラスミノーゲンアクチベーター阻害物質-2(PAI-2)、プラスミンアクチベーター阻害物質、プラスミノーゲン、血小板アゴニスト、硫酸プロタミン、プロトロンビン、RGDペプチド、スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、トロンビン、トロンボプラスチン、およびトラネキサム酸からなる群から選択される。本発明の他の実施形態では、本明細書に記載されている本発明のどの方法においても使用することができる血液凝固物質が提供される。
【0015】
本発明は、本明細書に記載される本発明の組成物、方法、およびキットによる血管収縮物質の使用を提供するが、この場合この血液凝固物質は、エンドセリン、エンドセリン-1、エピネフリン、アドレナリン、酒石酸水素メタラミノール(例えば、Araminem[商標]として製造されている)、ドーパミンHCl(例えば、Intropine[商標]として製造されている)、イソプロテレノールHCl(例えば、Isuprel[商標]として製造されている)、ノルエピネフリン(例えば、Levophed[商標]として製造されている)、フェニレフリン、セロトニン[商標]、トロンボキサン、ノルエピネフリン、プロスタグランジン、メテルギン[methergine]、オキシトシン、イソプレランドU-46619、パパベリン、ヨヒンビン、ビスナジン、ケリン[khellin]、べべリン、およびニコチネート誘導体からなる群から選択される。別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されている本発明の方法とともに使用することができる血管収縮物質を提供するが、この場合この血管収縮物質はエピネフリンではない。
【0016】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、患者はヒトである。
【0017】
本発明の組成物、方法、およびキットのいくつかの実施形態では、フィルムまたはメンブレンが血管収縮物質および/または血液凝固物質とともに使用される。これらの実施形態のいくつかの態様では、このフィルムまたはメンブレンはバリア形成材を含んでいる。なおさらなる他の実施形態では、組成物は、マット、ストリング(ひも)、マイクロビーズ、マイクロスフェアー(微小球)、および/またはマイクロフィブリル(微小線維)として製剤化される。
【0018】
本発明の方法および組成物は、血管収縮物質および/または血液凝固物質ならびにさらに生分解性材料を含んでいる組成物を提供する。いくつかの実施形態では、この生分解性材料は、ポリアニオン性ポリサッカリド、アルギン酸、コラーゲン、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、デキストランおよびそのコポリマー、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリエステルカーボネート、ポリヒドロキシアルコネート、ポリカプロラクトン、およびこれらのコポリマーからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、これら生分解性材料の1種または複数種でコーティングされている。他の実施形態では、本発明の組成物は、これらの生分解性材料の1種または複数種とともに同時に製剤化される(co formulated)。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、患者に抗血液凝固物質を投与し、そのあと、患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している創傷の皮膚に、血管収縮物質の有効量が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合この血管収縮物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととするステップを含んでなり、同時に、この破れたまたは穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップが実施される。関連の好ましい実施形態では、患者に投与される抗血液凝固物質は、クマジン、ヘパリン、ナドロパリン、アスピリン、および血栓溶解剤からなる群から選択される。他の関連の実施形態では、組成物にはさらに硫酸プロタミンが、ヘパリンを中和するのに有効な量で含まれている。他の好ましい実施形態では、患者には、アスピリンと、クマジン、ヘパリン、ナドロパリン、および血栓溶解剤からなる群から選択されるもう1つの薬剤とが一緒に含まれている抗血液凝固物質が投与される。なおさらなる他の好ましい実施形態では、抗血液凝固物質には、クマジン、ヘパリン、ナドロパリン、アスピリン、または血栓溶解剤の1種または複数種が含まれている。
【0020】
本明細書に記載される方法を用いることで、限定するものではないが、大腿動脈、橈骨動脈、気管支動脈、腋窩動脈や大腿静脈、内頸静脈、鎖骨下静脈の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置することができる。そのような血管の位置についての解説および図解は、限定するものではないが、Leonard、C. H. 1983、The concise Gray's Anatomy、Chartwell books、Secaucus、NJなどの解剖学参考書に見ることができる。
【0021】
本発明の方法のいくつかの好ましい実施形態では、加えられる圧迫は用手圧迫である。本発明の他の実施形態では、圧迫は機械圧迫である。関連の実施形態では、圧迫は、穿刺穴または破れ目の近傍にある静脈もしくは動脈に加えられる。他の関連の実施形態では、圧迫は、組成物が適用される部位において加えられる。
【0022】
なおさらなる他の実施形態では、圧迫は、圧迫包帯で加えられる。本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法はさらに、破れたまたは穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫が加えられるステップを繰り返すことを含んでなる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、血管収縮物質の局部的使用を伴なう本発明方法により達成される静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血液の流出の停止または低下速度(rate)は、血管収縮物質が含まれていない場合よりも、少なくとも10%速い。本発明の他の実施形態では、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血液の流出の停止または低下速度は、圧迫を血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに加える場合よりも、20%、30%、40%、または50%速い。本発明の好ましい実施形態では、静脈もしくは動脈はカテーテルにより破られるまたは穿刺される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血液の流出の停止または低下を達成する時間は、圧迫を血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに加える場合よりも、10%短い。本発明の他の実施形態では、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下を達成する時間は、圧迫を血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに加える場合よりも、20%、30%、40%、または50%短い。本発明の好ましい実施形態では、静脈もしくは動脈は、カテーテルにより破られるまたは穿刺される。
【0025】
本発明の方法を用いることで、本発明の組成物を、患者の血管の破れ目または穿刺穴に近接している皮膚の部分に付けることにより患者の血管の破れ目または穿刺穴を処置することができる。皮膚の部分は、本発明の組成物が創傷の治癒過程に対して効果を発揮することができる限りにおいて破れ目または穿刺穴からどのような距離にあってもよい。いくつかの実施形態では、静脈もしくは動脈の穿刺穴からの距離は、約10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1cmである。好ましい実施形態では、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴は、近接の皮膚創傷部位から約8、9、または10cmである。もう1つの好ましい実施形態では、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴は、近接の皮膚創傷部位から約4、3、2、または1cmである。なおさらなるもう1つの好ましい実施形態では、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴は、近接の皮膚創傷部位から約7、6、または5cmである。
【0026】
本発明により、患者における限局性血管性合併症の発生を減らす方法が提供される。そのような方法の1つは、以下のステップ、すなわち、a)患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している創傷の皮膚に、血管収縮物質または血液凝固物質が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合該血管収縮物質または血液凝固物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととするステップ;b)同時にこの破れたまたは穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップ;および、c)限局性血管性合併症の発生を記録するステップ;を含んでなるが、この場合、該血管収縮物質または血液凝固物質の量を、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴の封鎖を引き起こすのに有効な量とすることにより、限局性血管性合併症の発生率が、圧迫を血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに加える場合と比較して、減らされることを特徴としている。いくつかの好ましい実施形態では、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下速度は、圧迫を血管収縮物質が含まれていない局部用バリアとともに加える場合よりも、少なくとも50%速い。他の好ましい実施形態では、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下速度は、圧迫を血管収縮物質が含まれていない局部用バリアとともに加える場合よりも、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%速い。いくつかの好ましい実施形態では、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下が達成される時間は、圧迫を血管収縮物質が含まれていない局部用バリアとともに加える場合よりも、少なくとも50%短い。他の好ましい実施形態では、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下が達成される時間は、圧迫を血管収縮物質が含まれていない局部用バリアとともに加える場合よりも、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%短い。
【0027】
本発明はさらに静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を局部的に処置するための医薬組成物を提供するものであるが、この場合該医薬組成物は:a)血管収縮物質の有効量(この場合該血管収縮物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていない);および、b)医薬的に許容される担体;を含んでなる。いくつかの好ましい実施形態では、医薬組成物はさらに血液凝固物質を含んでいる。他の好ましい実施形態では、医薬組成物はさらに中性のリキッド、中性のジェル、および/または中性のソリッドを含んでいる。本発明の全ての実施形態に関連して本明細書中で用いられる場合、中性のリキッド、中性のジェル、および/または中性のソリッドは、活性をもっていない、または止血が関与する過程に対して不活性である物質を意味する。医薬組成物はさらにガーゼを含むこともできる。
【0028】
本発明はさらに、1つまたは複数の容器に、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置するのに有用な組成物を含んでいる、本発明方法を実施するのに有用なキットを提供するものであるが、このキットは:a)血管収縮物質の有効量、この場合該血管収縮物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていない;および、b)医薬的に許容される担体;ならびに、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を局部的に処置することについてのインストラクション(指示)を含んでいる。組成物はさらに、血液凝固物質、中性のリキッド、中性のジェル、および/または中性のソリッドを含むこともできる。好ましい実施形態では組成物はさらにガーゼを含んでなる。もう1つの好ましい実施形態では組成物はさらにゼラチンを含んでいる。
【0029】
本発明はなおさらに静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を局部的に処置するための医薬組成物を提供するが、この場合該医薬組成物は:a)血管収縮物質の有効量、この場合該血管収縮物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていない;および、b)この場合該血管収縮物質は、バリア、メンブレン、またはフィルムに製剤化されている;を含んでなる。本医薬組成物はさらに血液凝固物質を含むこともできる。本医薬組成物はさらに、中性のリキッド、中性のジェル、および/または中性のソリッドを含むこともできる。好ましい実施形態では、組成物にはさらにゼラチンが含まれている。
【0030】
本発明はなおさらに、本発明方法を実施するのに有用なキットを提供するものであるが、このキットには、1つまたは複数の容器に、a)血管収縮物質の有効量、この場合該血管収縮物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていない;および、b)この場合該血管収縮物質は、バリア、メンブレン、またはフィルムに製剤化されている;を含んでなる組成物、および、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を局部的に処置することについてのインストラクションが入っている。組成物はさらに、血液凝固物質、中性のリキッド、中性のジェル、および/または中性のソリッドを含むこともできる。好ましい実施形態では組成物はさらにガーゼを含んでいる。もう1つの好ましい実施形態では組成物はさらにゼラチンを含んでいる。
【0031】
好ましい実施形態では、本明細書に記載される本発明の組成物および方法は、カテーテルにより生じた静脈もしくは動脈の穿刺穴を処置するのに用いることができる。該処置には、止血に要する時間を短くすること、血管のカテーテル穿刺穴からの血液の流出を減らすこと、および、限局性血管性合併症の発生を減らすことが含まれ得る。
【0032】
特に、本明細書に記載される本発明の方法は、心臓カテーテル導入による創傷を処置するのに有用である。そのような創傷は一般に、心臓血管造影術や心臓血管形成術などの診断的または治療的心臓介入医療手技で生じる。1つの実施形態では、患者における心臓カテーテル術で生じた静脈もしくは動脈の穿刺穴を処置する方法は、a)患者のカテーテル出口部の皮膚に血管収縮物質および/または血液凝固物質の有効量が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合該血管収縮物質および/または血液凝固物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととし、且つ、該カテーテル出口部が静脈もしくは動脈のカテーテル穿刺穴に約1〜10cmで近接していることとするステップ;および同時に、b)穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップを含んでなり、この場合静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下が、圧迫を血管収縮物質および/または血液凝固物質が含まれていない局部用バリア-形成材とともに加える場合よりも、30%〜50%速い速度で達成されることを特徴としている。
【0033】
もう1つの実施形態では、患者における心臓カテーテル術で生じた静脈もしくは動脈の穿刺穴を処置する方法は、a)患者のカテーテル出口部の皮膚に血管収縮物質および/または血液凝固物質の有効量が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合該血管収縮物質および/または血液凝固物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととし、且つ、該カテーテル出口部が静脈もしくは動脈のカテーテル穿刺穴に約1〜10cmで近接していることとするステップ;および同時に、b)穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップを含んでなり、この場合静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下が、圧迫を血管収縮物質および/または血液凝固物質が含まれていない局部用バリア-形成材とともに加える場合よりも、30%〜50%短い測定時間で達成されることを特徴としている。
【0034】
本発明の方法は、患者における心臓カテーテル術で生じる血腫の数や大きさを減らすのにも有用である。本発明の方法はまた、患者における心臓カテーテル術で生じる血腫の形成を阻止するのにも有用である。本発明に関連して本明細書で使用される場合、「血腫の形成を阻止」は、血腫が形成される確率を減らすこと、または大きなサイズ例えば3cmより大きな血腫が形成される確率を減らすことを意味する。1つの実施形態では、心臓カテーテル術後の血腫の発生を減らす方法は:a)静脈もしくは動脈のカテーテル穿刺穴に1〜10cmで近接している患者のカテーテル出口部の皮膚に血管収縮物質および/または血液凝固物質の有効量が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合該血管収縮物質および/または血液凝固物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととするステップ;b)同時に、穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えることで心臓カテーテル術後の血腫発生を減らすステップ;を含んでなる。いくつかの実施形態では、血腫発生の減少は、評価患者集団における形成された血腫の数を、圧迫が血管収縮物質および/または血液凝固物質なしの局部用バリア形成材とともに患者に加えられる評価患者集団に比較して記録することで測定される。
【0035】
用語の定義
「限局性血管性合併症」−限局性血管性合併症には、血腫、偽動脈瘤、およびAVフィステルの形成、ならびに静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴が関連する医学症状が含まれる。
【0036】
「血腫」−血腫は、通常は血管内部に局在化している血液組織が他の組織を浸潤することにより形成され、浸潤された組織およびその浸潤された組織を取り囲む組織の膨潤に至る。
【0037】
「バリア形成材」−バリア形成材は、創傷の皮膚表面に配置されることができ、その創傷からの血流を妨げるまたは減らすことができる物質である。
【0038】
「同時に」−本発明の組成物および圧迫を患者に適用することに関連して本明細書で使用される「同時に」は、圧迫および本発明の組成物を局部的に患者の創傷部位に同時に適用すること、または、組成物を局部的に患者の創傷部位に適用し、その後直ちに(すなわち、1分より短い、あるいは2分より短い時間に)患者の創傷部位に圧迫を加えることを意味する。例えば、本発明の組成物がバリア形成材として製剤化されている場合は、組成物および圧迫は同時に適用することができる。組成物が例えばジェルである場合は、ジェルを創傷部位に付け、その後直ちに圧迫を加えることができるか、あるいは、ジェルをガーゼなどのバリア形成材に適用することが考えられるが、この処置されたガーゼをこの後圧迫と同時に付けることもできる。全ての実施例において、組成物および圧迫の適用は、同時と定められている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を少し距離をおいたところから、該破れ目または穿刺穴に近接している皮膚表面の創傷を介して処置するというコンセプトに基づいている。本発明の方法には、皮膚表面の創傷に、血管収縮および/または血液凝固特性をもつ組成物を、静脈もしくは動脈の部位または近傍部位に圧迫を加えるのと同時に局部的に適用して血流を減らすことが包含される。本明細書に記載された方法は、破れ目または穿刺穴を、既存の非侵襲的な処置、すなわち止血パッチ、圧迫に比較して、より速い速度またはより短い時間で封鎖または治療する。本発明はまた、本発明の方法において使用することができる組成物の1種または複数種、および、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置するのに使用される、本発明の組成物の1種または複数種を含んでいるキットを包含する。
【0040】
つまり、本発明は、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴の処置に伴なって起る血腫、偽動脈瘤、およびAVフィステルの形成などの局在性血管合併症の問題に1つの解決策を提供するものである。特に、本明細書に記載されている本発明の方法は、限定するものではないが心臓カテーテル術などの医療手技で生じる創傷を処置する際に使用される止血パッチや動脈閉鎖デバイスの改良版である。既存の止血パッチは、創傷と接触する部位に直接作用し、静脈もしくは動脈のカテーテル穿刺穴には間接的に作用して血流を減らすものであるが、理論に縛られるものでもないが、本発明者は、本発明の組成物および方法は、静脈もしくは動脈のカテーテル穿刺穴に少し距離を置いたところから作用し、内部にある穿刺穴部位からの血流を、現時点で知られているデバイスに比べてより速い速度またはより短い時間で停止または低下させ、その結果血腫形成の可能性を下げていると考えている。例えば溶解性の血管収縮物質は、血管に存在する受容体に作用することができ、その結果血管の収縮がもたらされる。本発明の方法は、心臓カテーテル術の後使用される侵襲的動脈閉鎖デバイスの改良版である。得られる利点としては、縫合マシンや適用デバイスを皮下的に適用する必要がないので方法の各ステップを簡単に行えること、および血腫形成の可能性の低下が挙げられる。本発明の非侵襲法はまた、既存の動脈閉鎖用デバイスなどの異物が患者の皮膚層を通して挿入されるときに起こり得る感染のリスクを小さくする。
【0041】
1)本方法および組成物による処置に適した創傷
本発明は、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴の処置方法を提供するものである。この破れ目または穿刺穴はどのような起源または理由の創傷であってもよい。本発明の1実施形態では、この静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴は、弾、ナイフ、手術器具などの物体により引き起こされたものである。好ましい実施形態では、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を引き起こす物体はカテーテルである。なおさらなるもう1つの好ましい実施形態では、この穿刺穴は、心臓カテーテル術の結果生じたものである。破れ目または穿刺穴を本方法および組成物により処置することができる動脈としては、限定するものではないが、大腿動脈、橈骨動脈、気管支動脈、および腋窩動脈が挙げられる。破れ目または穿刺穴を本方法および組成物により処置することができる静脈としては、限定するものではないが、大腿静脈、内頸静脈、および鎖骨下静脈が挙げられる。
【0042】
一般に、本方法および組成物により処置される静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴が心臓カテーテル術の結果である場合、静脈もしくは動脈は、小直径カテーテルにより引き起こされる破れ目または穿刺穴になると思われる。小直径カテーテルの例としては、サイズが4F〜6Fのカテーテルが挙げられる(F = French Unitで、この場合1Fは0.33mmに等しい)。本発明のもう1つの実施形態では、破れ目または穿刺穴は、サイズが7F〜11.5Fの大直径カテーテルでも引き起こされる(Sanborn et al., 1993, Journal of the American College of Cardiology, 22(5): 1273-1279)。好ましくは、動脈はサイズが6F〜8Fで、カテーテルより大きいものとする。破れ目または穿刺穴がカテーテル術の結果生じたものであるような実施形態では、本発明の方法および組成物は、各種のタイプのカテーテル、例えば限定するものではないがSwan-Ganzカテーテル、Sonesカテーテル、およびピッグテイル・カテーテルにより引き起こされた破れ目または穿刺穴を処置するのに使用することができる(Olade etal., 2002, Emedicine Journal, 3(3): 1-13)。
【0043】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、皮膚表面に対して直角に挿入される。他の実施形態では、1本のカテーテルが、皮膚に対して20〜40度の角度で挿入される。
【0044】
本方法は、限定するものではないが、ヒト、イヌ、ウマ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、ブタ、ウシ、サル、ヒツジなどの哺乳動物における静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置するのに用いることができる。好ましくは患者はヒトである。
【0045】
2)本止血組成物の使用方法
本発明の方法には、患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している創傷部位の皮膚表面に、血管収縮物質または血液凝固物質を含んでいる組成物を局部的に投薬することが包含される。血管収縮物質および/または血液凝固物質を含んでいる本発明の組成物は以下の5)節にさらに述べられているが、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している創傷の皮膚表面に適用されるバリア形成要素を含み得る。
【0046】
2.1)止血組成物の投薬部位
本血管創傷処置方法は、患者の静脈もしくは動脈のような血管構造体における破れ目または穿刺穴に近接している皮膚表面創傷の部位に、圧および/またはバリア形成材と、血管収縮物質または血液凝固物質を含んでいる本発明の組成物とを適用することを必要とし得る。本発明の好ましい実施形態では、本発明組成物の、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している皮膚表面への適用部位は、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴部位から10cm以内である。もう1つの実施形態では、適用部位は、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴から約9cm、8cm、7cm、6cm、5cm、4cm、3cm、2cm、または1cm以内である。なおさらなるもう1つの実施形態では、局部的適用部位は、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴から10cm〜2cmである。好ましい実施形態では、局部的適用部位は、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴から約1〜10cmである。
【0047】
2.2)圧迫の印加
圧迫は、いくつかのやり方で破れたまたは穿刺された静脈もしくは動脈に間接的に印加できる。本血管創傷処置方法は、患者の静脈もしくは動脈のような血管構造体における破れ目または穿刺穴に近接している皮膚表面創傷の部位に、圧および/またはバリア形成材と、血管収縮物質または血液凝固物質を含んでいる本発明の組成物とを適用することを必要とし得る。破れ目または穿刺穴がある静脈もしくは動脈が圧迫に付されると、静脈もしくは動脈の血流および圧が下がり、穿刺穴が封鎖または凝固されて、血腫形成の可能性が下がる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、この圧迫は用手圧迫である。用手圧迫は、静脈もしくは動脈の在るところの上の位置において、その皮膚表面を指の先で押さえることで加えることができ、その結果静脈もしくは動脈が圧迫され、目標とする静脈もしくは動脈の血流が大きく低下または停止される。このタイプの圧迫は、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴の近傍部位に加えることができる。典型的には、近傍部位は、破れ目または穿刺穴から1〜10cmの近傍である。正しい位置において患者の皮膚を用手的に押さえて血流および血圧を下げる手技は当技術分野では広く知れ渡っており、ヒトならびに他の哺乳動物において有効である(Camenzind et al., 1994, Journal of the American College of Cardiology, 24(3): 655-662; Kipshidze et al., 1998, Journal of Invasive Cardiology, 10(3): 133-141; Merino et al., 1992, Catheterization and Cardiovascular Diagnosis 26: 319-322; Sanborn et al., 1993, Journal of the American College of Cardiology, 22(5): 1273-1279)。用手圧迫は、場合によっては、血管収縮物質または血液凝固物質を含んでいる「本発明の組成物」を含んでいる組成物の適用と組み合せて加えることができる。そのような実施形態では、本発明の組成物を適用することと同時に用手的に圧迫して動脈もしくは静脈を圧迫に付すことが必要とされる。別のやり方としては、本発明の組成物を適用する直前、または本発明の組成物を適用した直後に用手圧迫を加えることもできる。
【0049】
本発明の方法の一部として用手圧迫手技が包含される本発明の1実施形態では、この手技は、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している皮膚部位に直接ヒトの指またはヒトの手のひらで圧を加える手技であることができる(Sanborn et al., 1993, Journal of the American College of Cardiology, 22(5): 1273-1279)。創傷がカテーテルによって引き起こされるいくつかの実施形態では、圧迫は、カテーテルが挿入されたのと同じ角度で直接創傷部位に加えることができる。本発明の1つの実施形態では、用手圧迫は、本組成物の適用と同時に加えることができる。本発明の組成物がバリア形成材として製剤化されている場合は、組成物および圧迫は同時に加えることができる。組成物が例えばジェルである場合は、ジェルを創傷部位に付けてその直後に圧迫を加えることができ、あるいはジェルをガーゼのようなバリア形成材に付けて、この処置されたガーゼを次に圧迫と同時に付けることもできる。
【0050】
用手圧迫手技を加える場合、加える圧の大きさおよびその圧力の一定性は一般に時間とともに、また圧を加える個人間においても変化する。この理由のため、圧迫を破れたまたは穿刺された静脈もしくは動脈に用手的ではなく機械的に加えて、加えられる圧の大きさの一定性を確実なものとするのが好ましい場合がある。圧迫を加えるためのいくつかのデバイスが開発されており、広く使用されているが、例えば、力が変わるまたは力の調節が可能なC字クランプや、所望のウエイトが付いた圧迫用包帯/ドレッシングが挙げられる。そのような圧迫用デバイスは、本発明の方法および組成物とともに用いることができ、所望圧迫強さを一定して加えることができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、圧迫を、創傷部位近傍部位に最初に加えて破れ目または穿刺穴のある静脈もしくは動脈の血流を減らすか、または圧迫を最初に近傍部位と創傷部位の両方に同時に加えるが、どちらの場合も近傍部位に加えられる圧迫は後に解除または低下され、創傷部位の圧迫は維持される。圧迫の適用と、近傍部位における圧の解除との間の時間は約15秒、30秒、1分、1.5分、2分、2.5分、3分、3.5分、4分、4.5分、または5分であり得る。他の実施形態では、圧迫は、近傍部位と創傷部位の両方に加えられ、維持される。
【0052】
組成物に接着性バリア形成材が包含されているもう1つの実施形態では、本組成物を局部的に接着させて、圧を加えて静脈もしくは動脈を圧迫することなく、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している皮膚表面創傷を覆うことができる。
【0053】
2.3)圧迫時間
本発明の方法の利点のひとつは、圧迫と本発明の組成物との組み合せが、圧迫単独の場合に比較して、破れ目または穿刺穴からの血流を停止または減速させるのに必要な圧迫時間の低減をもたらすことである。止血、すなわち静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下を達成するために圧迫が維持される時間長さは、創傷の大きさ、皮膚表面からの距離、および血管を圧迫するのに加えられる圧の強さに左右される。本発明に関して本明細書で使用される場合、止血とは、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止を意味する。本発明の方法を行う場合の圧迫を維持する時間長さは、比較可能な状況下で測定した場合、圧迫単独または本発明の組成物なしの圧迫に比較して短い。
【0054】
一般に、用手圧迫手技を適用する場合、充分にだがゆっくりと低下していく圧を10分〜30分間かけ、その後部位の検査を行い、必要に応じ圧を10分〜20分間隔で再び加えるのが好ましい(Camenzind et al., 1994, Journal of the American College of Cardiology, 24(3): 655-662; Kipshidze et al., 1998, Journal of Invasive Cardiology, 10(3): 133-141; Sanborn et al., 1993, Journal of the American College of Cardiology, 22(5): 1273-1279)。一部の例では、圧迫が加えられる時間は30分より長いことがある。本発明の方法において非用手圧迫が用いられる場合は、一定した圧を10分〜30分以上の間かけてもよく、これは特に圧迫のみを加える場合そうである。上述した圧迫の段階的低下に対応する手技は、例えばC字クランプあるいは圧迫包帯/ドレッシングを使用する場合採用することができ、この場合圧は必要に応じ経時的に少しずつ低くしていくことができる。プレッシャートランスデューサー(圧変換器)に接続された液体充填バルーンを用いてかけられた圧の大きさを測定することもできる。圧迫強さの大きさは、各患者および処置されている血管(すなわち静脈もしくは動脈)のタイプおよび位置によって変るものである。他の標準的な圧迫手技と同様、本明細書に記載した圧迫手技のどれを用いても本発明の方法を行うことができる。
【0055】
対照的に、本発明の組成物とともに圧迫(用手またはそれ以外)が加えられる時間は短くなり、この時間はある間隔に分けることができ、その間隔において圧を1〜10秒間解除または部分解除し、観察結果を記録して破れ目または穿刺穴からの血液の停止速度または停止時間を計算し、および/または、穿刺穴または破れ目を封鎖するための時間を計算する。この時間間隔は、長さが5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60秒であることができる。あるいは、この時間間隔は、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5または10分の長さであってもよい(Silber et al., 1998, Catheterization and Cardiovascular Diagnosis 43: 421-427)。
【0056】
関連の実施形態では、圧迫のみの処置を受けている患者、および、本発明の組成物とともに圧迫の処置を受けている患者に、同じ長さの時間間隔圧迫が加えられる。
【0057】
1実施形態では、本発明の方法を用いた場合の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下を達成するのに必要とされる時間長さにおける、圧迫単独を用いた場合に比較しての低下がパーセントとして定量化される。
【0058】
2.4)節に述べるように、本発明の方法を行うにおいては、圧迫時間や圧迫強さを測定する各種の方法を用いることができる。
【0059】
圧迫は、破りまたは穿刺の後間もなく(または、医療手技で生じた破れ目または穿刺穴の後直ちに)、あるいは偶発的な穿刺または破れの場合はできるだけ早く所望の静脈もしくは動脈に加えられるべきである。例えば、1つの実施形態では、手術により引き起こされた場合、カテーテルおよびカテーテルシースを取り除いた後直ちに圧迫が加えられる。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、本明細書に記載されている本発明に包含される方法の1つ以上が、動脈もしくは静脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下を、3、4、5、6、7、8、9、または10分で達成するのに有効である。
【0061】
本明細書の3)節で述べる本発明の組成物は好ましくは圧迫を最初に加えるのと同時に適用する。他の実施形態では、組成物は圧迫時間間隔において再度適用することができる。他の実施形態では、本発明の組成物およびさらなる圧迫が適用される前に圧迫が短い時間加えられる。
【0062】
2.4)出血停止または破れ目もしくは穿刺穴封鎖の時間または速度の測定
1つの実施形態では、本発明の方法を用いることにより達成される、破れたまたは穿刺された血管からの血流の停止または低下の速度または時間は、当業者に知られている方法により測定することができる。いくつかの実施形態では、例えば本発明の組成物の効果を調べる場合、停止または低下の速度または時間が、本発明の組成物の不存在下、または、存在下で測定され、比較される。好ましくは、本発明の組成物の存在下または不存在下の停止または低下の速度または時間を測定する場合も、この同じ手法を用いる。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法の効果は、ヒトにおいて用いられる心臓カテーテル術を、イヌでシミュレーションすることにより測定することができる。イヌの大腿動脈はこのようなシミュレーションにとって特に望ましいものであるが、その理由は、イヌの大腿動脈は、皮膚表面の下の遠くないところに位置しているので容易に到達することが可能であることと、この領域においては血腫を目で容易に見ることができることからである。イヌにおける心臓カテーテルのシミュレーション、および、そのようなイヌにおける出血の停止速度または時間の測定の例は、実施例1に提供されている。静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している皮膚の創傷からの血流が停止に至るまでの速度または時間の測定は、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の間接的な測定により行う。静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止を観察するためには、本明細書に記載された本発明の方法で使用することができる、より直接的なさらなる手法が、後の節で教示される。
【0064】
静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下を達成する速度または時間は、単純にこの効果を達成するのに必要とされる時間間隔数の合計として計算することができる。但しこの場合、この時間間隔は、各処置すなわち圧迫単独および本発明の組成物とともに圧迫に対して同じであるとする。例えば、第1の処置を受けている患者の全てに対して必要とされる時間間隔数の合計が8であり、第2の処置を受けている患者の全てに対して必要とされる時間間隔数の合計が10である場合は、そのパーセント差は25%となるであろう。別のやり方として、血流停止を達成する平均時間を各処置群について計算し、次いで比較を行ってパーセント差を決定することもできる。
【0065】
もう1つの実施形態では、血流停止を達成する時間は、時間間隔ではなく分および/または秒で測定される。測定された時間間のパーセント差は、時間間隔法に対して上記で説明した方法の内の1つにより計算することができる。
【0066】
静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止を達成する時間を分および/または秒で測定する場合、圧迫が加えられる時間間隔数は、停止に至る時間を計算する上において必ずしも因数であるとは限らない。2つの処置グループについて、処置の適用から破れたまたは穿刺された静脈もしくは動脈からの血流の停止または低下に至るまでの合計時間を比較することができる。本発明のこの実施形態では、血流停止を達成する時間の値が圧迫単独については当技術分野で知られているので、圧迫単独を、本発明の組成物とともに圧迫を加える場合よりも長い時間、最初に加えることができる。静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止を達成する時間またはその速度は、圧迫のみが加えられる場合についても測定することができる。これらの測定は、限定するものではないが超音波撮像やシンチグラフィ撮像を含めて、本明細書に記載されている方法のどれによっても行うことができる。例えば、圧迫単独を患者に10分間加えてその後観察を記録することができるが、本発明の組成物とともに圧迫を受けている患者の場合は、圧迫を部分的且つ短時間の間解除して血流の観察を行い、その結果血流停止を達成する時間を計算するためのデータを得る必要があると考えられる。
【0067】
指定数の圧迫時間間隔が適用される場合、パーセント差は、それぞれの処置グループにおける患者の数に基づいて計算することができる。例えば、圧迫が2つの時間間隔加えられ、圧迫単独からなる第1の治療を受けている100人の患者の内60人が、2つの圧迫間隔の後、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴の封鎖、またはそこからの出血の停止を達成し、圧迫プラス本発明の組成物からなる第2の処置を受けている100人の患者の内80人が、同じ2つの時間間隔の後、破れ目または穿刺穴の停止または封鎖を達成する場合、止血達成時間のパーセント差は20%となる。
【0068】
血腫発生の速度は、臨床観察により計算することができる。血腫形成の1つの指標は、穿刺されたまたは破られた静脈もしくは動脈局部の周りの皮膚の腫脹である。別のやり方として、血腫または限局性血管合併症ならびに破れ目または穿刺穴の封鎖および破れ目または穿刺穴からの血流の停止を達成する速度または時間の診断は、各種の撮像手法によっても行うことができる。
【0069】
統計的手法を用いて、観察された差が統計的に意味があるかどうかを決定することができる。特に、本発明の方法を用いた場合の血流停止速度または血流停止達成時間または血管性合併症の発生率と、圧迫単独または少し距離を置いたところでは作用しない血管収縮物質および/または血液凝固物質を用いた圧迫の場合の停止速度または時間または合併症発生率との間で観察される差は、標準的な統計手法により解析することができる。統計的有意差は、標準的な統計計算(例えば、片側t-統計、両側t-統計、χ二乗統計、F-統計など)により決定することができる。本発明で用いるのに適した標準的な統計手法としては、医学解析や臨床試験で広く使われている手法が挙げられる。手法の例は、限定するものではないが、Vogt W., 1998, Dictionary of Statistics and Methodology, 2nd ed., SAGE Publications; Spiegel、D. , J. Myles, and K. R., 2002, Abrams Bayesian Approaches to Clinical Trials and Health Care: Statistics in Practice, Wiley, John & Sons, Incorporated; Cleophas, T. J., A. H. Zwinderman, and T. F. Cleophas, 2002, Statistics Applied to Clinical Trials, 2nd ed., Gehan, E. A. A. and N. A.Lemak, 1994、Kluwer Academic Publishers; Statistics in Medical Research: Developments in Clinical Trials, lst ed., Kluwer Academic Publishersなどの参考文献に見ることができる。
【0070】
本発明の好ましい1実施形態では、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下を達成する時間または血流の停止または低下速度は、血管収縮物質または血液凝固物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも速い速度または短い時間で達成され、血腫も形成されない。もう1つの実施形態では、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下の時間または速度は、血管収縮物質または血液凝固物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも速い速度または短い時間で達成され、血腫形成速度は低下する。
【0071】
例えば、穿刺部位の流動二重超音波カラー造影術を用いて偽動脈瘤やAVフィステルを調べることができる(Gwechenberger et al., 1997, Angiology, 48(2): 121-126)。シンチグラフ画像解析を用いて、破れ目または穿刺穴部位における出血および/または血腫形成を調べ、破れ目または穿刺穴が有効に封鎖されたかどうかを判定することもできる(Ismail et al., 1995, Catheterization and Cardiovascular Diagnosis, 34(1): 88-95)。血管造影技術を用いて破れ目または穿刺穴部位の封鎖を調べることもできる(Hoekstra et al., 1998, Biomaterials, 19: 1467-1471)。上記で、また実施例の部分で記載する画像解析により、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下の時間または速度、またはその速度または時間におけるパーセント差は、観察をするために圧迫を解除することなく、計算することができる。
【0072】
大腿動脈が穿刺される実施形態では、遠位パルス計測を用いて、穿刺穴の有効な封鎖が達成されたかどうかを判定することができる。似た手法を、他の動脈または静脈にも用いることができる。
【0073】
本発明の1つの態様では、本発明の方法および組成物を用いるときの静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下の速度は、血管収縮物質または血液凝固物質が含まれていない局部的なバリアまたはガーゼとともに圧迫を加える場合よりも、10%大きい。本発明の関連の態様では、本発明の方法および組成物を用いるときの静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下の速度は、有効量よりも少ない血管収縮物質が含まれている局部的なバリアまたはガーゼとともに圧迫を加える場合よりも、10%大きい。他の態様では、上記した速度は、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%以上大きい。
【0074】
本発明の1つの態様では、本発明の方法および組成物を用いるときの静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下を達成する時間は、血管収縮物質または血液凝固物質が含まれていない局部的なバリアまたはガーゼとともに圧迫を加える場合よりも、10%短い。本発明の関連の態様では、本発明の方法および組成物を用いるときの静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下を達成する時間は、有効量よりも少ない血管収縮物質が含まれている局部的なバリアまたはガーゼとともに圧迫を加える場合よりも、10%短い。他の態様では、上記した時間は、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%以上短い。
【0075】
好ましい実施形態では、本発明の方法および組成物により、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴、および、皮膚表面における創傷部位双方からの血流の停止が有効に引き起こされる。
【0076】
もう1つの好ましい実施形態では、本発明の方法および組成物により、破れ目部位または穿刺穴部位からの血流の停止が有効に引き起こされ、皮膚表面における創傷部位からの血流の停止が引き起こされ、血腫形成などの局在性血管性合併症の発症可能性が低くなる。
【0077】
2.5)シンチグラフ画像解析
シンチグラフ画像解析を用いて、特に動物モデル系で、破れ目または穿刺穴部位における出血および/または血腫形成を調べることができ、また破れ目または穿刺穴が有効に封鎖されたかどうかを判定することができる(Ismail et al., 1995, Catheterization and Cardiovascular Diagnosis, 34(1): 88-95)。例えば本発明をイヌの大腿動脈について調べる場合、万能型低エネルギーコリメーターが装着されたカメラを、穿刺穴または破れ目部位の上のところにある位置に配置することができる。適切な容器に入った点放射線源(≒50μCi 99mTc)を用いて、後続の画像の位置調整を行うために、イヌの脚の正確な位置を記録することができる。イヌに、頸静脈外部カニューレを通して、標識効率が事前に調べてあるテクネチウム標識自己赤血球(平均=16.65±3.51mCi)を注入する。標識血球を5分間循環させた後、画像を撮る。画像は規則的な時間間隔で最大24時間撮ることができる。初めのほうの画像は、破れ目または穿刺穴の封鎖、および、その破れ目または穿刺穴からの血流の停止を確かめるのに用いることができ、後のほうの画像は血腫を高い効率で識別するのに用いることができる。
【0078】
2.6)血管造影法
血管造影は、色素またはコントラストを患者に投与し、X線撮像により血管内部を見て、血管に関わる損傷を診断または処置する検査である。血管造影術は、大腿動脈を穿刺する心臓カテーテル術において、大腿動脈を通してカテーテルを誘導するのに広く用いられている。血管造影は、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止、またはそのような破れ目または穿刺穴の封鎖を非侵襲的に調べるのにも用いることができる(Hoekstra et al., 1998, Biomaterials, 19: 1467-1471)。破れ目または穿刺穴部位の封鎖、および、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血液の停止を調べるのにはCTまたはMRIを用いることもできる。
【0079】
2.7)超音波撮像法
本発明の方法および組成物とともに各種の音波撮像法や超音波撮像法を用いて、破れ目または穿刺穴部位における出血および/または血腫形成を調べ、破れ目または穿刺穴が有効に封鎖されたかどうかを判定することができる。図1は、ヒトの皮膚表面とその下にある静脈もしくは動脈との間の距離を測定する、超音波撮像法のもう1つの用途を例示するものである。二重超音波撮像法は、損傷位置決定および異常血流定量化についての抹消動脈検査が有用な臨床用途であることが実証されている。例えば、穿刺部位の流動二重カラー超音波撮像により、血腫、偽動脈瘤、およびAVフィステルの形成を検査することができる(Gwechenberger et al., 1997, Angiology, 48(2): 121-126)。
【0080】
2.8)血栓弾性記録法
血栓弾性記録法は、全血を使って血液凝固の全過程を調べる方法である。血栓弾性記録法は、本発明に関しては、破れたまたは穿刺された静脈もしくは動脈からの血流の停止または低下に至る時間を決定するのに有用である。血栓弾性記録法では、凝固強さと時間の測定が行われる。測定結果は典型的には、凝固形成の開始からフィブリン(線維素)溶解までを示すグラフで表わされる。グラフには、凝固が形成されるのに必要な時間、および、凝固血液の引張強さが表わされる。凝固血液には粘性特性と弾性特性があるが、血栓弾性記録法では、凝固血液の弾性特性のみが測定される。典型的にはx軸に凝固時間がプロットされ、y軸に凝固血液の硬さまたは弾性率がプロットされる。凝固時間は、凝固因子欠陥、凝固阻害物質、抗血液凝固物質、低濃度血小板などの各種の要因により影響を受けることがある。測定値をグラフ化すると、典型的には卵形になる。卵形の垂直中央線と、凝固開始時間までとの間のα角を測定する。α角および凝固形成時間は、どれだけ速く血液凝固構造が形成されるかを表わし、これは、凝固因子欠陥症、血小板異常症、血小板減少症、線維素原減少症により影響を受けることがある。最大凝固硬さは、曲線が最も広くなっている点における幅と定義される。最大凝固硬さは、低血小板または低線維素原により影響されることがある。線維素原溶解は、最大値からの幅の低下幅として測定される。典型的には15%以上の低下は、線維素原溶解が起っているというあらわれである。特許請求している本発明とともに用いることができる血栓弾性記録図法の例としては、限定するものではないが、ROTEG[商標]やTEG(Tromboelastography Coagulation Analizer, Haemascope corporation, Niles, IL)が挙げられる。本発明の血管収縮物質および/または血液凝固物質は、血栓弾性記録法により凝固を形成する時間、および、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を封鎖している凝固血液の強さを測定することにより検査することができる。血液凝固の速度および強さは、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴が有効に封鎖されたかどうかを判定するのに使うことができる。
【0081】
2.9)抗血液凝固物質の投与
本発明の一部の実施形態では、本発明の方法および組成物は、血液凝固を防ぐのに有効な量の抗血液凝固物質が投与された患者に実施される。本発明とともに使用することができる抗血液凝固物質の例としては、クマジン[商標]、Dicumarol[商標]、ヘパリン、ナドロパリン、アスピリン、抗血小板薬、または血栓溶解剤が挙げられる。典型的には手術の前12時間超ヘパリンを全部投与しておくのが普通である。他のプロトコルでは、一定した活性凝固時間が維持されるのを確実なものとするため、繰り返し間隔でヘパリンが投与される(Falstrom et al., 1997, Catheterization and Cardiovascular Diagnosis, 41: 79-84)。静脈もしくは動脈に穿刺穴または破れ目をつくる前に抗血液凝固物質が投与されている患者に対しては、本発明の組成物はさらに、投与された抗血液凝固物質の影響を局部的に中和する薬剤の1種または複数種を含んでいてもよい。ヘパリンが投与されている患者においては、本組成物はさらに、ヘパリンを局部的に中和するのに有効な量で、硫酸プロタミンを含むことができる。
【0082】
3)医薬組成物
本発明は、本発明方法の実施において使用することができる医薬組成物を提供するものである。本発明に包含される医薬組成物は、血管収縮物質の1種または複数種、および/または、血液凝固物質の1種または複数種の有効量を含んでいる。本発明の方法で使用することができる血管収縮物質および/または血液凝固物質は、ある距離を置いたところで作用する血管収縮物質および/または血液凝固物質ならどのようなものでもよい。本発明の組成物は、各種の形状、サイズ、質量に製剤化することができる。本組成物はさらに、血管収縮特性または血液凝固特性が知られていない成分を含むことができる。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置するのに、ある距離を置いたところに局部的に適用されることができ、血管収縮物質および/または血液凝固物質として作用することができる、血管収縮物質および/または血液凝固物質が含まれている組成物の量を意味する。この量の効果は、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流が停止するまたは遅れる速度、またはそれを達成する時間を、圧迫単独の場合と比較することで測定することができる。
【0084】
本発明の一部の実施形態では、本発明の組成物は、本発明の方法において、薬剤の組み合せを含むことができる。1つの実施形態では、この組み合せは血管収縮物質および血液凝固物質を含むことができる。他の実施形態では、本組成物は、血液凝固物質よりも多い量の血管収縮物質、血管収縮物質よりも多い量の血液凝固物質を含むことができる。なおさらなる他の実施形態では、本組成物は、血管収縮物質としても血液凝固物質としても作用する薬剤を含んでいる。ここで使用される用語「有効量」はまた、本発明の方法で適用される本発明の組成物の総量を意味する。
【0085】
静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を局部的に処置するのに使用される本組成物のサイズ、形状、および質量は、その特定の用途に応じて変るものである。医薬組成物は、そうでないと書かれていない限り、ポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていない血管収縮物質の有効量を含有することができる。本発明の医薬組成物はまた、医薬的に許容される担体を含有することができる。
【0086】
本明細書において、ポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーの誘導体としては以下のものが挙げられる:ポリ-β-1→4-アセチルグルコサミンポリマーの半結晶形;β-1→4立体配座に共有結合されたN-アセチルグルコサミンモノサッカリド約50〜約150,000個を含んでいるポリ-β-1→4-アセチルグルコサミンポリマーであって、分子量が約10,000ダルトン〜約3千万ダルトンである該ポリマー;β-1→4立体配座に共有結合されたN-アセチルグルコサミンモノサッカリド約50〜約50,000個を含んでいるポリ-β-1→4-アセチルグルコサミンポリマーであって、分子量が約10,000ダルトン〜約1千万ダルトンである該ポリマー;β-1→4立体配座に共有結合されたN-アセチルグルコサミンモノサッカリド約50〜約10,000個を含んでいるポリ-β-1→4-アセチルグルコサミンポリマーであって、分子量が約10,000ダルトン〜約2百万ダルトンである該ポリマー;β-1→4立体配座に共有結合されたN-アセチルグルコサミンモノサッカリド約50〜約4,000個を含んでいるポリ-β-1→4-アセチルグルコサミンポリマーであって、分子量が約10,000ダルトン〜約800,000ダルトンである該ポリマー;および、脱アセチル化されたN-アセチルグルコサミンモノサッカリド少なくとも1個を含んでいる半結晶性ポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーであって、そのN-アセチルグルコサミンモノサッカリドの少なくとも40%がアセチル化された該ポリマー。
【0087】
ポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーの誘導体には、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、またはそれ以下がポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンである組成物も含まれる。つまり、本発明には、種々の純度の血管収縮物質および/または血液凝固物質が包含される。
【0088】
一部の実施形態において本発明の組成物には含まれていないという以下の複数の条件の内の1つ以上の下で、一部の実施形態において本発明の組成物は血管収縮物質および/または血液凝固物質を含んでいる。
【0089】
1. 本発明の組成物にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていない。該組成物にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体も、血管収縮物質および/または血液凝固物質として作用する薬剤も含まれていない。
【0090】
2. 本発明の組成物にはポリ-α-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていない。該組成物にはポリ-α-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体も、血管収縮物質および/または血液凝固物質として作用する薬剤も含まれていない。
【0091】
3. 本発明の組成物にはポリ-α-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体も、ポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体も含まれていない。該組成物にはポリ-α-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体も、ポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体も、血管収縮物質および/または血液凝固物質として作用する薬剤も含まれていない。
【0092】
4. 本発明の組成物には、キトサン、キトサン誘導体、あるいは、キトサンまたはキトサン誘導体を10%〜100%含んでいる天然または合成の組成物が含まれていない。本発明の組成物にはクラスタセアン(甲殻類動物)から誘導されるキトサンまたはキトサン誘導体が含まれていない。本発明の組成物には、甲殻類から誘導される、精製または変性されたキトサンまたはキトサン誘導体が含まれていない。
【0093】
5. 本組成物には、80%以上脱アセチル化されたキトサンまたはキトサン誘導体が含まれていない。本組成物には、70%〜100%脱アセチル化されたキトサンまたはキトサン誘導体が含まれていない。
【0094】
6. 本組成物には、菌類、真菌類、および甲殻類のキトサンまたはキトサン誘導体が含まれていないキトサンまたはキトサン誘導体が含まれていない。
【0095】
7. 本発明の組成物には、キチン、キチン誘導体、あるいは、キチンまたはキチン誘導体を10%〜100%含んでいる天然または合成の組成物が含まれていない。本発明の組成物には甲殻類動物から誘導されるキチンまたはキチン誘導体が含まれていない。本発明の組成物には、甲殻類から誘導される、精製または変性されたキチンまたはキチン誘導体が含まれていない。
【0096】
8. 本組成物には、80%以上脱アセチル化されたキチンまたはキチン誘導体が含まれていない。本組成物には、70%〜100%脱アセチル化されたキチンまたはキチン誘導体が含まれていない。
【0097】
9. 本組成物には、菌類、真菌類、および甲殻類のキチンまたはキチン誘導体が含まれていないキチンまたはキチン誘導体が含まれていない。
【0098】
10. 本組成物には、例えば以下の血液凝固物質の1種または複数種が含まれていない:アルファ-2-抗プラスミン、アルファ-1-抗トリプシン、アルファ-2-マクログロブリン、アミノヘキサン酸、アプロチニン、カルシウムイオン源、アルギン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム-ナトリウム、カゼインキナーゼII、キチン、キトサン、コラーゲン、シアノアクリレート、イプシロン-アミノカプロン酸、ファクターXIII、フィブリン、フィブリングルー、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、生体血小板、メタアクリレート、PAI-1、PAI-2、プラスミンアクチベーター阻害物質、プラスミノーゲン、血小板アゴニスト、硫酸プロタミン、プロトロンビン、RGDペプチド、スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、トロンビン、トロンボプラスチン、および/またはトラネキサム酸。
【0099】
11. 本組成物にはエピネフリンが含まれていない。
【0100】
一部の実施形態における上記した複数の条件の内の1つ以上の下で、本発明の一部の実施形態において本発明の組成物は血管収縮物質および/または血液凝固物質を含んでいる。
【0101】
1つの実施形態では、本発明の組成物には、およそ100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、または20%の純度と考えられる精製血管収縮物質および/または血液凝固物質が含まれている。関連の実施形態では、本発明の組成物には、純度が100%〜20%である精製血管収縮物質および/または血液凝固物質が含まれている。好ましい実施形態では、血管収縮物質および/または血液凝固物質は、90〜100%精製されている。もう1つの実施形態では、本組成物は、血管収縮物質または血液凝固物質およそ100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、またはそれ以下からなる。関連の実施形態では、本組成物は、血管収縮物質または血液凝固物質100%〜10%またはそれ以下からなることができる。つまり、本発明には、各種の純度の血管収縮物質および/または血液凝固物質の使用が包含される。
【0102】
所望の距離のところで作用する血管収縮物質および/または血液凝固物質は、ここに記載する方法を用いて識別することができる。例えば、実施例のところの実施例1に記載されているイヌにおける心臓カテーテル術シミュレーションにより、種々の距離における候補血管収縮物質および/または血液凝固物質の効果を測定することができる。実際にシミュレーションを行う必要がある手術の唯一の部分はカテーテルによる静脈もしくは動脈の穿刺であり、心臓と関連する血管構造を観察するための機器による観察または操作は必要ない。種々の距離で作用する血管収縮物質および/または血液凝固物質の識別は、カテーテル穿刺する皮膚表面下の、特定の距離のところにある静脈もしくは動脈を選択することで達成することができる。そのような静脈もしくは動脈の距離は、2.)で開示した撮像手法によって決定することができる。
【0103】
本組成物は、ジェル、ソリッド、リキッド、スポンジ、フォーム、スプレー、エマルジョン、サスペンジョン、ソリューション、ストリング、マイクロビーズ、マイクロスフェア、またはマイクロフィブリルとして製剤化することができる。本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される担体、中性のソリューション、中性のジェル、または中性のソリッドを含むことができる。本組成物がバリア、メンブレン、またはフィルムとして製剤化されている一部の好ましい実施形態、あるいは本組成物がバリア、メンブレン、またはフィルムに加えられている一部の好ましい実施形態では、上記中性のソリッドまたはソリッド組成物は、バリア、メンブレン、またはフィルムとして提供することができる。バリア、メンブレン、またはフィルムは色々な標準サイズで入手することができ、これらはさらにカットすることができ、処置されている部分の大きさにすることができる。バリア、メンブレン、またはフィルムは、通常の包帯またはガーゼであることができ、患者に適用する前に、本発明の組成物がこれに加えられるかコートされる。別のやり方として、本組成物は、ストリング、マイクロビーズ、マイクロスフェア、またはマイクロフィブリルからバリア、メンブレン、またはフィルムとして製剤化することができ、あるいは、本組成物は、バリア形成マットとして製剤化することができる。
【0104】
本発明の医薬組成物は、バッキング(裏当て)を含むことができる。例えば、本組成物がパッチとして製剤化される場合、パッチにバッキングを接着することができる。皮膚に接触するバッキングの部分が、バッキングおよび付着している本発明の組成物を患者の皮膚表面にくっ付かせるよう、バッキングを接着性化合物でコートまたは包埋することもできる。使用する接着剤のタイプは、医学的に許容される接着剤ならどのようなものでもよい。そのようなバッキングは、天然のポリマーまたは合成の物質からつくることができる。バッキングをつくることができる天然ポリマーとしては、限定するものではないが、セルロースやキシランを挙げることができる。バッキングをつくることができる合成物質としては、限定するものではないが、ポリウレタン、テフロン、ダクロン、ステンレススチールメッシュスクリーン、およびポリエステル織布が挙げられる。好ましくはバッキングおよび接着剤は、酸素の拡散を可能とするため、皮膚に接触する部分は多孔質とする。バッキングはまた、用手圧迫を加えることができる表面として役立つことができる。
【0105】
本組成物は、血液に対してバリア(障壁)を形成するバリア形成材として製剤化することもできる。本組成物は、血液に対してバリアを形成するバリア形成材にコートすることができ、またその中に加えることもでき、あるいはその中に組み込むこともできる。1つの実施形態では、本医薬組成物は、血液凝固剤および/または血管収縮剤の1つまたは複数が包埋されたバリア形成材からつくられたパッチを含んでいる。1つの実施形態では、本医薬組成物は、血液凝固剤および/または血管収縮剤の1種または複数種が包埋されたガーゼを含んでいる。一部の実施形態では、本医薬組成物は、血液凝固剤および/または血管収縮剤の1つまたは複数が包埋されているかまたは組み合わされているバリア形成材であって、患者の皮膚表面にくっ付くことができるよう接着剤を含んでいるバリア形成材を含んでいる。別のやり方として、本組成物は、バリア形成材なしでもよい。
【0106】
本組成物が、パッチとして製剤化されている、またはパッチで適用される、またはパッチに組み込まれている本発明の1つの態様によれば、パッチのサイズはいろいろ変り得る。例えば、パッチの面積は約2cm2〜約30cm2であることができる。一部の実施形態では、パッチは、円形、正方形、または長方形である。好ましい実施形態では、パッチの大きさは、2cm x 2cm、3cm x 3cm、4cm x 4cm、5cm x 5cm、または6cm x 6cmである。他の好ましい実施形態では、パッチは、必要に応じ、カットしてサイズを小さくすることができるか、あるいは二次元形状をつくることができる。好ましい実施形態では、上記したパッチは、体重が約60、70、80、または90kgの成人患者用に、本発明の方法、組成物、およびキットで使用するために製造することができる。
【0107】
関連の実施形態では、本発明の組成物は、無菌担体として機能することができるコラーゲンを含むことができる。
【0108】
好ましい実施形態では、本組成物は血液凝固物質の1種または複数種を含むことができる。血液凝固物質は、例えば、以下に記載するものの1つまたは複数であることができる:アルファ-2-抗プラスミン、アルファ-1-抗トリプシン、アルファ-2-マクログロブリン、アミノヘキサン酸、アプロチニン、カルシウムイオン源、アルギン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム-ナトリウム、カゼインキナーゼII、キチン、キトサン、コラーゲン、シアノアクリレート、イプシロン-アミノカプロン酸、ファクターXIII、フィブリン、フィブリングルー、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、生体血小板、メタアクリレート、PAI-1、PAI-2、プラスミンアクチベーター阻害物質、プラスミノーゲン、血小板アゴニスト、硫酸プロタミン、プロトロンビン、RGDペプチド、スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、トロンビン、トロンボプラスチン、およびトラネキサム酸。
【0109】
関連の実施形態では、本発明の組成物は、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を取り囲む創傷の感染を防ぐために、抗真菌剤または抗菌剤を含むことができる。
【0110】
好ましい実施形態では、本組成物は、血管収縮物質の1種または複数種を含むことができる。血管収縮物質は、例えば、以下に記載するものの1つまたは複数であることができる:エンドセリン、エンドセリン-1、エピネフリン、アドレナリン、酒石酸水素メタラミノール(例えば、Aramine[商標]として製造されている)、ドーパミンHCl(例えば、Intropine[商標]として製造されている)、イソプロテレノールHCl(例えば、Isuprel[商標]として製造されている)、ノルエピネフリン(例えば、Levophed[商標]として製造されている)、フェニレフリン、セロトニン、トロンボキサン、ノルエピネフリン、プロスタグランジン、メテルギン、オキシトシン、イソプレランドU-46619、パパベリン、ヨヒンビン、ビスナジン、ケリン、べべリン、およびニコチネート誘導体。
【0111】
一部の実施形態では、本組成物は、本発明の組成物と、止血に関与する内因性の作用物質との間の化学反応の速度を加速する触媒性の表面とを含んでいる。この触媒性表面は止血に至る時間を短くし、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下を達成する時間を短くする。この触媒性表面は血液の構成成分に結合してプラグを形成する。この触媒性表面は、本発明との絡みで本明細書に記載した「少し距離を置いたところ」で(at a distance)活性である触媒を含んでいる。この触媒は、血管収縮物質の迅速な放出を引き起こすことによって、および/または、血管収縮物質の濃度を高くすることによって、止血時間を短くすることができる。他の実施形態では、本組成物は、フィブリノーゲン(線維素原)のフィブリン(線維素)への変換のような、止血に関与する内因性の作用物質同士間の化学反応の速度を加速する触媒性表面を含んでいる。なおさらなる他の実施形態では、本組成物は、止血に関与する内因性の過程、例えば血小板によるセロトニンの放出や損傷組織によるプロトロンビンまたは化学物質信号の放出を加速または阻害する触媒性表面を含んでいる。この化学反応または細胞過程には、血小板栓形成のような、通常血管の損傷の後に起る血管収縮が関係し得る。すなわち、露出した基底膜および結合組織への血小板の付着、血小板の円板形状からの形状変化、ADPの分泌、セロトニンの分泌、ホスホリピッドの分泌、血小板因子の合成、ホスホリパーゼCの活性化、カルシウムイオンの放出、ホスホリパーゼA2の活性化、アラキドン酸の放出、血漿凝固因子の分泌である。本発明の組成物は、血餅の核形成および生成、および/または、血餅生成の間における液体から固体への血液構成成分の相転換を増やすことができる。
【0112】
1つの実施形態では、この触媒性表面は、不溶解性で、マットに編まれたファイバー(繊維)を含んでいる。
【0113】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、該組成物中に均一に分散された、または、例えばある範囲の所望濃度の血管収縮物質および/または血液凝固物質を含んでいる繊維性パルプを組み合せて多層状の組成物につくられた勾配をもったものとして供給される血管収縮物質および/または血液凝固物質を含んでいる。
【0114】
本発明の組成物は生分解性材料を含むことができる。本発明の組成物において使用することができる生分解性材料の例としては、ポリアニオン性ポリサッカリド、アルギン酸、コラーゲン、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、デキストランおよびそのコポリマー、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリエステルカーボネート、ポリヒドロキシアルコネート、ポリカプロラクトン、およびそのコポリマーが挙げられる。このような生分解性材料は、本組成物のバリア形成部分を形成することができるか、あるいは担体として機能することができる。
【0115】
本発明の医薬組成物は、創傷治療剤および/または痛み軽減剤を含むこともできる。そのような薬剤としては、限定するものではないが、血管の破れ目または穿刺穴部位への白血球の遊走を阻害する薬剤のような、ステロイド系および非ステロイド系の抗炎症剤(すなわち、スルファジアジネムアセチルサルチル酸銀、インドメタシン、およびNafazatrom)、抗ヒスタミン剤(すなわち、ピリラミン、クロロフェニラミン、テトライドラゾリン、アンタゾリン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ベータ-メタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、インドメタシン、ならびにスリンダク、その塩、およびその対応するスルフィド);遊離ラジカル形成を阻害する薬剤(すなわち、スーパーオキシド・ジムスターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオン・ペルオキシダーゼ、β-カロテン、アスコルビン酸、トランスフェリン、フェリチン、セルロプラスミン、およびデスフェリオキサミン・アルファ-トコフェノール);および、静菌剤または殺菌剤(すなわち、セフォキシチン、n-ホルムアミドイル・チエナミシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、グラミシジン、バシトラシン、スルホンアミド、ゲンタマイシン、カナマイシン、アミカシン、シソミシン、トブラマイシン、ノルフロキシカン、ニトロフラゾン、およびフルオロアラニン/ペンチジドンの組み合せ)が挙げられる。
【0116】
4)有効用量
本発明の方法、組成物、およびキットで使用される血管収縮物質および/または血液凝固物質の治療的に有効な量は患者の年齢、健康状態、および性別、ならびにその患者における病態の状況および程度により変るものであり、これらは全て当業者なら判断することができる。例えば、幼児に必要とされる有効量は、年齢の若さに伴なう血管の弾性低下により、高年齢患者のとは違うと考えられる。有効量はまた、血管の破れ目または穿刺穴が治療を受けている皮膚表面からの深さにも依存するものである。本発明の血管収縮剤および/または血液凝固剤の投薬量は、治療を受けている特定の患者および病態に合わせるために調整することができる。
【0117】
一部の実施形態では、血管収縮物質および/または血液凝固物質の有効量は、創傷治癒に関与する細胞、例えば限定するものではないが多形核白血球、大食細胞、および線維芽細胞の機能を直接増大または縮小しない。
【0118】
本発明の血管収縮物質および/または血液凝固物質の毒性および薬効は、例えばED50(母集団の50%で治療的に有効な投薬量)を決定する、標準的な細胞培養または実験動物による薬学的な手法により測定することができる。大きい治療効果を呈する血管収縮物質および/または血液凝固物質が好ましい。本発明では、有害な副作用を呈する血管収縮物質および/または血液凝固物質を、本発明の方法を実施するうえにおいて用いることもできる。影響を受けていない細胞への損傷の可能性は最小限となる。なぜなら血管収縮物質および/または血液凝固物質は、影響を受けている組織部位に適用されるので、副作用のリスクが減らされるからである。
【0119】
細胞培養アッセイおよび動物実験で得られたデータを用いて、ヒトに使用する投薬量の範囲を策定することができる。そのような血管収縮物質および/または血液凝固物質の投薬量は、好ましくはED50が包含される濃度範囲内にあるようにする。投薬量はこの範囲内で、本組成物の剤形、すなわちジェル、フォーム、パッチ他に応じて変り得る。本発明の方法で用いられる血管収縮物質については、その治療的に有効な用量は、組織アッセイまたは組織培養アッセイから初めに推定することができる。
【0120】
ラットから摘出された大動脈環を用いて1つの標準的な組織アッセイを行う。この大動脈をこの後、118 NaCl、4.75 KC1、2.54 CaCl2・2H20、1.19 KH2PO4、1.19 MgS04・7H20、12.5NaHC03、および10.0 グルコースからなる温Krebs-Henseleit(KH)緩衝液中に迅速に懸濁させる。分離した血管から注意深く結合組織を取り除くことができ、長さが2〜3mmの環にカットすることができる。環を次にステンレススチール製フックに取り付け、10-mLの組織用バス中に懸濁させ、FT-03強さ変位変換器(Grass Instrument, Quincy, MA)に接続して強さの変化をGrass製型式7のオッシログラフ記録機に記録する。バスをKH緩衝液で満たし、37℃において、95% 02 + 5% CO2で曝気する。静止時の強さ0.5gをこのSMA環にかけ、その後この環を90分間平衡化させる。この間、組織用バス中の緩衝液を15〜20分毎に交換し、血管環の静止時強さを、0.5gの予加重が維持されるよう調整する。平衡化の90〜120分後、環を100nMのU-46619(9,11-ジデオキシ-9α-11α-メタンエポキシ-プロスタグランジンF、Biomol Research Laboratories, Plymouth Meeting, PA)、すなわちトロンボキサンA2ミメチックに曝露して、発生強さ1.0gを発生させる。一定した濃度が得られたなら、代表的な内皮依存性血管拡張物質であるアセチルコリンをバスに0.1、1、10、および100nMの累積濃度で加えて内皮の完全性を評価する。累積応答が安定した後、環を洗い、もう一度ベースラインに平衡化させる。
【0121】
この手法を、U-46619以外の血管収縮物質に用いて、血管収縮物質の血管収縮維持効果を測定することができる。この手法を、血管収縮物質の濃度を変えて繰り返すことで有効用量を決定することができる。
【0122】
血液凝固物質の作用は標準的なアッセイにより検査することができる。そのようなアッセイでは、抗血液凝固物質が含まれていない正常ヒト血液を採血し、数個の試験管に入れる。この本発明の組成物が含まれていない正常血液を凝固させる(通常10分以内)。正常血液の他のサンプルを採血し、1ミリリットルのアリコートを、血液凝固特性を調べたいとする本発明の方法、組成物、およびキットで使用されるある特定の血液凝固物質の漸減アリコート量が入った試験管に入れる。このようなアッセイにより、血液凝固剤1ミリリットルの10分の1のいくつが、血液凝固物質が含まれていない血液よりも速い速度で、または、短い時間で血液凝固を引き起こすのに効果的であるかを容易に決定することができる。血液採取の前に患者の血流中に既に血液凝固物質が導入されている場合は、この標準的なアッセイの変形で行うことができる。この結果から、止血、すなわち静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血液の流れの停止を加速することができる、本発明の方法、組成物、およびキットで使用するための血液凝固物質を識別することができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、本発明の方法、組成物、およびキットで使用される血管収縮物質および/または血液凝固物質の投薬量は、有効投薬量、例えば破れ目または穿刺穴からある距離を置いたところに適用された場合静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置するのに有効であると決定された投薬量の0.5倍、0.75倍,1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、12倍、15倍、20倍、50倍、または100倍の量である。
【0124】
血管収縮物質および/または血液凝固物質は、局部的用途用にソリッド型、リキッド型、またはジェル型剤形に製剤化することができる。ソリッド型、リキッド型、および/またはジェル型剤形中の血管収縮物質および/または血液凝固物質の濃度は、その投薬量と、適用する剤形の容積または表面積から外挿により決めることができる。そのような組成物は、例えば、成人例えば体重が50、60、70、80、または90kgの成人用に、局部的投薬面積が約1〜2、2〜4、4〜8、8〜12、12〜15、15〜20、20〜25、または25〜30cm2の例えばパッチ用、または、局部的投薬容量が約0.25〜0.5、0.5〜1、1〜1.25、1.25〜1.5、1.5〜1.75、1.75〜2、2〜2.5、または2.5〜3mLの例えばリキッドまたはジェル用に、一般用途向けとして製造することができる。例示的な濃度計算は、後の4.1)に提供されている。
【0125】
本発明の組成物が製剤化されてパッチに包埋または塗布されている実施形態では、血管収縮物質および/または血液凝固物質100mgが、創傷と接触しているパッチ表面1cm2に存在することができる。他の実施形態では、パッチ1cm2に存在する本発明の方法、組成物、およびキットで使用される血管収縮物質および/または血液凝固物質の有効量は、約0.05mg、0.10mg、0.25mg、0.50mg、0.75mg、1mg、2mg、5mg、8mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、1000mg、または2000mgであることができる。好ましい実施形態では、パッチ1cm2中に存在する本発明の血管収縮物質および/または血液凝固物質の有効量は、その血管収縮物質および/または血液凝固物質0.05mg〜30mgである。
【0126】
本発明の血管収縮物質および/または血液凝固物質が製剤化されてパッチに包埋または塗布されている他の実施形態では、血管収縮物質および/または血液凝固物質100μgが、創傷と接触しているパッチ表面1cm2に存在することができる。他の実施形態では、パッチ1cm2に存在する本発明の血管収縮物質および/または血液凝固物質の有効量は、約1mM〜70mMの濃度で約5μg、10μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、または160μgであることができる。そのような量で効果がある血液凝固物質の例はトロンビンである。そのような量で効果的であり得る血管収縮物質の例はエンドセリン-1である。
【0127】
本発明の方法および組成物の好ましい実施形態では、例えばパッチ表面における血管収縮物質および/または血液凝固物質の投薬量は、その分子量に関係なく、約1mM〜約70mMである。いくつかの例示的な実施形態では、この投薬量は、約1mM〜約10mM、約lOmM〜約30mM、約30mM〜約50mM、または約50mM〜約70mMである。
【0128】
なおさらなる他の実施形態では、本発明の血管収縮物質および/または血液凝固物質の有効量は約1〜1000IU/cm2であり、この場合この血管収縮物質および/または血液凝固物質は製剤化されてパッチに包埋または塗布される。
【0129】
1つの実施形態では、本血管収縮物質および/または血液凝固物質は、その適用部位から静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴にかけて低下していく濃度勾配を形成する。例えば、心臓カテーテル術トラックの場合、本血管収縮物質および/または血液凝固物質はトラックをとおして濃度勾配を形成することがあり、トラック全体に亘って血餅の形成を促進して、止血を達成するのに必要な時間の短縮をもたらす。
【0130】
いくつかの実施形態では、本発明の血管収縮物質および/または血液凝固物質の有効量は、血液凝固物質または抗血液凝固物質の存在下において止血を活性化する量である。
【0131】
いくつかの実施形態では、有効投薬量は、圧迫ありまたはなしで血液凝固を開始させるのに必要な投薬量である。他の実施形態では、有効投薬量は、圧迫ありまたはなしでもそのまま残ると思われる堅固な血餅の形成を引き起こすのに必要な投薬量である。なおさらなる他の実施形態では、有効投薬量は、血餅の強さ、すなわち圧迫ありまたはなしでも血餅が保たれる時間長さにより決めることができる。
【0132】
一旦ある特定の血管収縮物質および/または血液凝固物質の濃度および量を変えることがインビトロでどのように作用するかが決定されると、効果のある血管収縮物質および/または血液凝固物質は、節5.)で述べる方法により、それらが作用する距離について、動物モデルでさらに試験することができる。ある与えられた距離のところで作用する血管収縮物質および/または血液凝固物質の有効量は、血栓弾性記録法により、血餅を形成する時間、および、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を封鎖している血餅の強さを測定することで決定することができる。血管収縮物質および/または血液凝固物質の濃度または量を変えて一連の測定を行うことで、有効量を決定することができる。皮膚表面からの静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴の距離を変えて、最大または最適有効距離を決めることもできる。そのような一連の測定値を用いることで、特定の血管収縮物質および/または血液凝固物質が特定の距離のところにおいてどのように作用するかを予測することができ、また所望の距離に対して効果のある量を決定することもできる。皮膚表面の下にある動物の静脈もしくは動脈の距離は、節4.)で開示した撮像手法により測定することができる。血管収縮物質および/または血液凝固物質の特定の濃度または量が、インビボにおいて効果がある距離を用いて、ある特定の患者に必要とされる所望距離に対する有効な量、および、ある特定の血管収縮物質および/または血液凝固物質が効果をもっている距離の限界を外挿により決めることができる。このような情報を用いて、ヒトにおける有用な投薬量をより正確に決定することができる。
【0133】
動物モデルの結果を外挿することで、ヒト被験者に対する有効な投薬量を決定することができる。1つまたは複数の動物モデルでの血管収縮物質および/または血液凝固物質の濃度を種々変えたものを比較することにより投薬量応答曲線の作成が可能となり、これを用いると、各被験者の個々の状況すなわち創傷の距離、創傷のサイズ、血流中における血液凝固物質または抗血液凝固物質の有無などが与えられ場合、ヒトにおける有効量を推定することができる。
【0134】
ヒト患者を使って、血管収縮物質および/または血液凝固物質が有効である距離を決定することもできる。例えば、超音波を使って、皮膚表面から静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴がどれ位の距離にあるかを視覚化することができ、破れ目または穿刺穴からの血流が減ったかまたはなくなったかを判定することができる。超音波プローブを使うことで、プローブを所望の静脈もしくは動脈と位置合わせすることにより、破れたまたは穿刺された静脈もしくは動脈の場所を突き止めること、または、特定の部分を撮像することができる。破れ目または穿刺穴部位の超音波撮像はドップラー流動解析法と組み合せることができる。ドップラー流動解析法により、静脈もしくは動脈を通る血流の停止または低下を判定することができる。静脈もしくは動脈を通る血流が阻止されると、損傷を引き起こし得る。つまり、ドップラー流動と超音波を組み合せることにより、血管収縮物質および/または血液凝固物質の有効量の最大上限を決めることが可能になると考えられる。例えば、血液凝固物質の効果が血管の中に及び、血管内で血小板の凝固および血液の停止が引き起こされる場合、その影響は損傷をもたらすと考えられる。いま1つの実施形態では、この血管収縮物質および/または血液凝固物質の有効量の最大上限値は、心臓拍出量の増加を引き起こす本発明の方法、組成物、およびキットで使用される血管収縮物質および/または血液凝固物質の量として測定することができる。
【0135】
4.1)血管収縮物質の投薬量
一部の好ましい実施形態では、本発明の方法、組成物、およびキットの組成物で使用される血管収縮物質の有効量は、患者の年齢、健康状態、および性別、ならびにその患者における病態の内容および程度とともに変るものであり、これら全ては当業者なら測定することができるものである。例えば、患者の体重を使って、血管収縮物質の有効量を決めることができる。
【0136】
1つの実施形態では、本発明の方法において患者に局部的に投薬される組成物は、血管収縮物質の有効量を、約0.000001mg/患者体重kg〜約11mg/患者体重kgの濃度で含んでいる。成人に対しては、好ましいアドレナリン[商標]の濃度範囲は、約0.00001mg/kg〜約0.5mg/kgである。関連の実施形態では、アドレナリン[商標]の有効量は、患者の体重につき約0.00001mg/kg、0.00005mg/kg、0.0001mg/kg、0.0005mg/kg、0.001mg/kg、0.005mg/kg、0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、5.0mg/kg、5.5mg/kg、6.0mg/kg、6.5mg/kg、7.0mg/kg、7.5mg/kg、8.0mg/kg、8.5mg/kg、9.0mg/kg、9.5mg/kg、10.0mg/kg、10.5mg/kg、または11.0mg/kgである。関連の実施形態では、アドレナリン[商標]の有効量は、患者の体重につき約0.00001mg/kg〜0.0001mg/kg、0.001mg/kg〜0.01mg/kg、0.1mg/kg〜1.0mg/kg、2.0mg/kg〜3.0mg/kg、4.0mg/kg〜5.0mg/kg、6.0mg/kg〜7.0mg/kg、8.0mg/kg〜9.0mg/kg、または10.0mg/kg〜11.0mg/kgである。関連の実施形態では、アドレナリン[商標]の有効量は、患者の体重につき約0.00005mg/kg〜0.0005mg/kg、0.005mg/kg〜0.05mg/kg、0.5mg/kg〜1.5mg/kg、2.5mg/kg〜3.5mg/kg、4.5mg/kg〜5.5mg/kg、6.5mg/kg〜7.5mg/kg、8.5mg/kg〜9.5mg/kg、または10.5mg/kg〜11.5mg/kgである。
【0137】
もう1つの実施形態では、本発明の方法において患者に局部的に投薬される組成物は、血管収縮物質酒石酸水素メタラミノールの有効量を、約0.00001mg/患者体重kg〜約1500mg/患者体重kgの濃度で含んでいる。成人に対しては、好ましい酒石酸水素メタラミノールの濃度範囲は、約0.0005mg/kg〜約4.5mg/kgである。関連の実施形態では、酒石酸水素メタラミノールの有効量は、患者の体重につき約0.0005mg/kg、0.001mg/kg、0.005mg/kg、0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、10mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、150mg/kg、200mg/kg、300mg/kg、400mg/kg、500mg/kg、600mg/kg、700mg/kg、800mg/kg、900mg/kg、1000mg/kg、1100mg/kg、1200mg/kg、1300mg/kg、1400mg/kg、または1500mg/kgである。関連の実施形態では、酒石酸水素メタラミノールの有効量は、患者の体重につき約0.0005mg/kg〜0.005mg/kg、0.05mg/kg〜0.5mg/kg、50mg/kg〜150mg/kg、300mg/kg〜500mg/kg、700mg/kg〜900mg/kg、1100mg/kg〜1300mg/kg、または1300mg/kg〜1500mg/kgである。関連の実施形態では、酒石酸水素メタラミノールの有効量は、患者の体重につき約0.001mg/kg〜0.01mg/kg、0.1mg/kg〜1.0mg/kg、10mg/kg〜100mg/kg、200mg/kg〜400mg/kg、600mg/kg〜800mg/kg、1000mg/kg〜1200mg/kg、または1200mg/kg〜1400mg/kgである。
【0138】
1つの実施形態では、本発明の方法において患者に局部的に投薬される組成物は、血管収縮物質ドーパミンHClの有効量を、約0.00001mg/患者体重kg〜約150mg/患者体重kgの濃度で含んでいる。成人に対しては、好ましいドーパミンHClの濃度範囲は、約0.0005mg/kg〜約10mg/kgである。関連の実施形態では、ドーパミンHClの有効量は、患者の体重につき約0.0005mg/kg、0.001mg/kg、0.005mg/kg、0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、110mg/kg、120mg/kg、130mg/kg、140mg/kg、または150mg/kgである。関連の実施形態では、ドーパミンHClの有効量は、患者の体重につき約0.0005mg/kg〜0.005mg/kg、0.05mg/kg〜0.5mg/kg、10mg/kg〜30mg/kg,50mg/kg〜70mg/kg、90mg/kg〜110mg/kg、または130mg/kg〜150mg/kgである。関連の実施形態では、ドーパミンHClの有効量は、患者の体重につき約0.001mg/kg〜0.01mg/kg、0.1mg/kg〜1.0mg/kg、10mg/kg〜20mg/kg、40mg/kg〜60mg/kg、80mg/kg〜100mg/kg、または120mg/kg〜140mg/kgである。
【0139】
1つの実施形態では、本発明の方法において患者に局部的に投薬される組成物は、血管収縮物質イソプロテレノールHClの有効量を、約0.00001mg/患者体重kg〜約150mg/患者体重kgの濃度で含んでいる。成人に対しては、好ましいイソプロテレノールHClの濃度範囲は、約0.0005mg/kg〜約5mg/kgである。関連の実施形態では、イソプロテレノールHClの有効量は、患者の体重につき約0.0001mg/kg、0.0005mg/kg、0.001mg/kg、0.005mg/kg、0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、110mg/kg、120mg/kg、130mg/kg、140mg/kg、または150mg/kgである。関連の実施形態では、イソプロテレノールHClの有効量は、患者の体重につき約0.0001mg/kg〜0.001mg/kg、0.01mg/kg〜0.1mg/kg、1.0mg/kg〜20mg/kg、40mg/kg〜60mg/kg、80mg/kg〜100mg/kg、または120mg/kg〜140mg/kgである。関連の実施形態では、イソプロテレノールHClの有効量は、患者の体重につき約0.0005mg/kg〜0.005mg/kg、0.05mg/kg〜0.1mg/kg、0.5mg/kg〜10mg/kg、30mg/kg〜50mg/kg、70mg/kg〜90mg/kg、110mg/kg〜130mg/kg、または130mg/kg〜150mg/kgである。
【0140】
1つの実施形態では、本発明の方法において患者に局部的に投薬される組成物は、血管収縮物質ノルエピネフリンの有効量を、約0.00001mg/患者体重kg〜約2mg/患者体重kgの濃度で含んでいる。成人に対しては、好ましいノルエピネフリンの濃度範囲は、約0.0001mg/kg〜約0.01mg/kgである。関連の実施形態では、ノルエピネフリンの有効量は、患者の体重につき約0.0001mg/kg、0.0005mg/kg、0.001mg/kg、0.005mg/kg、0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、または2mg/kgである。関連の実施形態では、ノルエピネフリンの有効量は、患者の体重につき約0.0001mg/kg〜0.001mg/kg、0.01mg/kg〜0.1mg/kg、または1.0mg/kg〜2mg/kgである。関連の実施形態では、ノルエピネフリンの有効量は、患者の体重につき約0.0005mg/kg〜0.005mg/kg、0.05mg/kg〜0.5mg/kg、または1.5mg/kg〜2mg/kgである。
【0141】
1つの実施形態では、本発明の方法において患者に局部的に投薬される組成物は、血管収縮物質セロトニン[商標]の有効量を、約0.00001mg/患者体重kg〜約750mg/患者体重kgの濃度で含んでいる。成人に対しては、好ましいセロトニン[商標]の濃度範囲は、約0.001mg/kg〜約0.6mg/kgである。関連の実施形態では、セロトニン[商標]の有効量は、患者の体重につき約0.001mg/kg、0.005mg/kg、0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、110mg/kg、120mg/kg、130mg/kg、140mg/kg、150mg/kg、160mg/kg、170mg/kg、180mg/kg、190mg/kg、200mg/kg、210mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kg、550mg/kg、600mg/kg、650mg/kg、700mg/kg、または750mg/kgである。関連の実施形態では、セロトニン[商標]の有効量は、患者の体重につき約0.001mg/kg〜0.01mg/kg、0.1mg/kg〜1.0mg/kg、20mg/kg〜40mg/kg、60mg/kg〜80mg/kg、100mg/kg〜120mg/kg、140mg/kg〜160mg/kg、180mg/kg〜200mg/kg、210mg/kg〜300mg/kg、400mg/kg〜500mg/kg、または600mg/kg〜700mg/kgである。関連の実施形態では、セロトニン[商標]の有効量は、患者の体重につき約0.005mg/kg〜0.05mg/kg、0.5mg/kg〜10mg/kg、30mg/kg〜50mg/kg、70mg/kg〜90mg/kg、110mg/kg〜130mg/kg、150mg/kg〜170mg/kg、190mg/kg〜210mg/kg、250mg/kg〜350mg/kg、450mg/kg〜550mg/kg、または650mg/kg〜750mg/kgである。
【0142】
1つの実施形態では、本発明の方法において患者に局部的に投薬される組成物は、血管収縮物質エンドセリンの有効量を、約4.5x10-8mg/患者体重kg〜約5.0xl0-6mg/患者体重kgの濃度で含んでいる。関連の実施形態では、エンドセリンの有効量は、患者の体重につき約4.5x10-8mg/kg、5.0x10-8mg/kg、5.5x10-8mg/kg、6.0x10-8mg/kg、6.5x10-8mg/kg、7.0x10-8mg/kg、7.5xl0-8mg/kg、8.0xl0-8mg/kg、8.5x10-8mg/kg、9.0x10-8mg/kg、9.5x10-8mg/kg、1.0x10-7mg/kg、1.5x10-7mg/kg、2.0x10-7mg/kg、2.5x10-7mg/kg、3.0x10-7mg/kg、3.5x10-7mg/kg、4.0xl0-7mg/kg、4.5x10-7mg/kg、5.0x10-7mg/kg、5.5x10-7mg/kg、6.0x10-7mg/kg、6.5x10-7mg/kg、7.0x10-7mg/kg、7.5x10-7mg/kg、8.0x10-7mg/kg、8.5x10-7mg/kg、9.0x10-7mg/kg、1.0x10-6mg/kg、1.5x10-6mg/kg、2.0x10-6mg/kg、2.5x10-6mg/kg、3.0x10-6mg/kg、3.5x10-6mg/kg、4.0x10-6mg/kg、4.5x10-6mg/kg、または5.0x10-6mg/kgである。関連の実施形態では、エンドセリンの有効量は、患者の体重につき約5.0x10-8mg/kg〜6.0x10-8mg/kg、7.0x10-8mg/kg〜8.0x10-8mg/kg、9.0x10-8mg/kg〜1.0x10-7mg/kg、2.0x10-7mg/kg〜3.0x10-7mg/kg、4.0x10-7mg/kg〜5.0x10-7mg/kg、6.0x10-7mg/kg〜7.0x10-7mg/kg、8.0x10-7mg/kg〜9.0x10-7mg/kg、1.0x10-6mg/kg〜2.0x10-6mg/kg、3.0x10-6mg/kg〜4.0x10-6mg/kg、または4.0x10-6mg/kg〜5.0x10-6mg/kgである。関連の実施形態では、エンドセリンの有効量は、患者の
体重につき約4.5x10-8mg/kg〜5.5x10-8mg/kg、6.5x10-8mg/kg〜7.5x10-8mg/kg、8.5x10-8mg/kg〜9.5x10-8mg/kg、1.5x10-7mg/kg〜2.5x10-7mg/kg、3.5x10-7mg/kg〜4.5x10-7mg/kg、5.5x10-7mg/kg〜6.5x10-7mg/kg、7.5x10-7mg/kg〜8.5x10-7mg/kg、1.5x10-6mg/kg〜2.5x10-6mg/kg、または3.5x10-6mg/kg〜4.5x10-6mg/kgである。
【0143】
その他の血管収縮物質、例えば限定するものではないが、エンドセリン-1、エピネフリン、フェニレフリン、トロンボキサン、プロスタグランジン、メテルギン、オキシトシン、イソプレランドU-46619、パパベリン、ヨヒンビン、ビスナジン、ケリン、べべリン、およびニコチネート誘導体については、当業者なら、節2.)と4.)で述べた方法を用いて、適切な有効量を決定すると思われる。関連する実施形態では、血管収縮物質の有効量は、患者の体重につき約4.5x10-8mg/kg、5.0x10-8mg/kg、6.0x10-8mg/kg、7.0x10-8mg/kg、8.0x10-8mg/kg、9.0xlO-8mg/kg、1.Ox10-7mg/kg、2.0x10-7mg/kg、3.0x10-7mg/kg、4.0xl0-7mg/kg、5.0xl0-7mg/kg、6.0x10-7mg/kg、7.0xl0-7mg/kg、8.0xl0-7mg/kg、9.0x10-7mg/kg、1.Ox10-6mg/kg、2.0x10-6mg/kg、3.0x10-6mg/kg、4.0xl0-6mg/kg、5.0xl0-6mg/kg、6.0x10-6mg/kg、7.0xl0-6mg/kg、8.0xl0-6mg/kg、9.0x10-6mg/kg、1.Ox10-5mg/kg、2.0x10-5mg/kg、3.0x10-5mg/kg、4.0xl0-5mg/kg、5.0xl0-5mg/kg、6.0x10-5mg/kg、7.0xl0-5mg/kg、8.0xl0-5mg/kg、9.0x10-5mg/kg、1.Ox10-4mg/kg、2.0x10-4mg/kg、3.0x10-4mg/kg、4.0xl0-4mg/kg、5.0xl0-4mg/kg、6.0x10-4mg/kg、7.0xl0-4mg/kg、8.0xl0-4mg/kg、9.0x10-4mg/kg、1.Ox10-3mg/kg、2.0x10-3mg/kg、3.0x10-3mg/kg、4.0xl0-3mg/kg、5.0xl0-3mg/kg、6.0x10-3mg/kg、7.0xl0-3mg/kg、8.0xl0-3mg/kg、9.0x10-3mg/kg、1.Ox10-2mg/kg、2.0x10-2mg/kg、3.0x10-2mg/kg、4.0xl0-2mg/kg、5.0xl0-2mg/kg、
6.0x10-2mg/kg、7.0xl0-2mg/kg、8.0xl0-2mg/kg、9.0x10-2mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、110mg/kg、120mg/kg、130mg/kg、140mg/kg、150mg/kg、160mg/kg、170mg/kg、180mg/kg、190mg/kg、200mg/kg、210mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kg、550mg/kg、600mg/kg、650mg/kg、700mg/kg、750mg/kg、800mg/kg、850mg/kg、900mg/kg、950mg/kg、1000mg/kg、1100mg/kg、1200mg/kg、1300mg/kg、1400mg/kg、または1500mg/kgである。
【0144】
一部の実施形態では、血管収縮物質の有効量は、患者の体重につき約6.0x10-8mg/kg〜1.0x10-7mg/kg、1.0x10-7mg/kg〜4.0x10-7mg/kg、4.0x10-7mg/kg〜8.0x10-7mg/kg、8.0x10-7mg/kg〜2.0x10-6mg/kg、2.0x10-6mg/kg〜6.0x10-6mg/kg、6.0x10-6mg/kg〜1.0x10-5mg/kg、1.0x10-5mg/kg〜4.0x10-5mg/kg、4.0x10-5mg/kg〜8.0x10-5mg/kg、8.0x10-5mg/kg〜2.0x10-4mg/kg、2.0x10-4mg/kg〜6.0x10-4mg/kg、6.0x10-4mg/kg〜1.0x10-3mg/kg、1.0x10-3mg/kg〜4.0x10-3mg/kg、4.0x10-3mg/kg〜8.0x10-3mg/kg、8.0x10-3mg/kg〜2.0x10-2mg/kg、2.0x10-2mg/kg〜6.0x10-2mg/kg、6.0x10-2mg/kg〜0.1mg/kg、0.1mg/kg〜0.4mg/kg、0.4mg/kg〜0.8mg/kg、0.8mg/kg〜2.0mg/kg、2.0mg/kg〜6.0mg/kg、6.0mg/kg〜10mg/kg、10mg/kg〜40mg/kg、40mg/kg〜80mg/kg、80mg/kg〜120mg/kg、120mg/kg〜160mg/kg、160mg/kg〜200mg/kg、200mg/kg〜240mg/kg、280mg/kg〜320mg/kg、320mg/kg〜360mg/kg、360mg/kg〜400mg/kg、400mg/kg〜440mg/kg、440mg/kg〜480mg/kg、480mg/kg〜520mg/kg、520mg/kg〜560mg/kg、560mg/kg〜600mg/kg、600mg/kg〜640mg/kg、640mg/kg〜680mg/kg、680mg/kg〜720mg/kg、720mg/kg〜760mg/kg、760mg/kg〜800mg/kg、800mg/kg〜840mg/kg、840mg/kg〜880mg/kg、880mg/kg〜920mg/kg、920mg/kg〜960mg/kg、960mg/kg〜1000mg/kg、1000mg/kg〜1040mg/kg、1040mg/kg〜1080mg/kg、1080mg/kg〜1120mg/kg、1120mg/kg〜1160mg/kg、1160mg/kg〜1200mg/kg、1200mg/kg〜1240mg/kg、1240mg/kg〜1280mg/kg、1280mg/kg〜1320mg/kg、1320mg/kg〜1360mg/kg、1360mg/kg〜1400mg/kg、1400mg/kg〜1440mg/kg、1440mg/kg〜1480mg/kg、または1480mg/kg〜1520mg/kgである。
【0145】
一部の実施形態では、血管収縮物質の有効量は、患者の体重につき約4.5x10-8mg/kg〜8.0x10-8mg/kg、8.0x10-8mg/kg〜2.0x10-7mg/kg、2.0x10-7mg/kg〜6.0xl0-7mg/kg、6.0x10-7mg/kg〜1.0x10-6mg/kg、1.0x10-6mg/kg〜4.0x10-6mg/kg、4.0x10-6mg/kg〜8.0x10-6mg/kg、8.0x10-6mg/kg〜2.0x10-5mg/kg、2.0x10-5mg/kg〜6.0x10-5mg/kg、6.0x10-5mg/kg〜1.0x10-4mg/kg、1.0x10-4mg/kg〜4.0x10-4mg/kg、4.0x10-4mg/kg〜8.0x10-4mg/kg、8.0x10-4mg/kg〜2.0x10-3mg/kg、2.0x10-3mg/kg〜6.0x10-3mg/kg、6.0x10-3mg/kg〜1.0x10-2mg/kg、1.0x10-2mg/kg〜4.0x10-2mg/kg、4.0x10-2mg/kg〜8.0x10-2mg/kg、8.0x10-2mg/kg〜0.2mg/kg、0.2mg/kg〜0.6mg/kg、0.6mg/kg〜1.0mg/kg、1.0mg/kg〜4.0mg/kg、4.0mg/kg〜8.0mg/kg、8.0mg/kg〜12mg/kg、12mg/kg〜16mg/kg、16mg/kg〜20mg/kg、20mg/kg〜60mg/kg、60mg/kg〜100mg/kg、100mg/kg〜140mg/kg、140mg/kg〜180mg/kg、180mg/kg〜220mg/kg、220mg/kg〜260mg/kg、260mg/kg〜300mg/kg、300mg/kg〜340mg/kg、340mg/kg〜380mg/kg、380mg/kg〜420mg/kg、420mg/kg〜460mg/kg、460mg/kg〜500mg/kg、500mg/kg〜540mg/kg、540mg/kg〜580mg/kg、580mg/kg〜620mg/kg、620mg/kg〜660mg/kg、660mg/kg〜700mg/kg、700mg/kg〜740mg/kg、740mg/kg〜780mg/kg、780mg/kg〜820mg/kg、820mg/kg〜860mg/kg、860mg/kg〜900mg/kg、900mg/kg〜940mg/kg、940mg/kg〜980mg/kg、980mg/kg〜1020mg/kg、1020mg/kg〜1060mg/kg、1060mg/kg〜1100mg/kg、1100mg/kg〜1140mg/kg、1140mg/kg〜1180mg/kg、1180mg/kg〜1220mg/kg、1220mg/kg〜1260mg/kg、1260mg/kg〜1300mg/kg、1300mg/kg〜1340mg/kg、1340mg/kg〜1380mg/kg、1380mg/kg〜1420mg/kg、1420mg/kg〜1460mg/kg、または1460mg/kg〜1500mg/kgである。
【0146】
一般に、本発明の方法、組成物、およびキットの組成物で使用される血管収縮物質の効果のある投薬量は、経静脈的に投与した場合全身性血管収縮を引き起こすと思われる量よりも低く、皮膚表面に付けた場合静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に影響を及ぼすというよりむしろ単に局部的に効くと思われる量よりも高い濃度とする。
【0147】
血管収縮物質の有効量は、本発明の方法、組成物、およびキットで使用される組成物の特定の剤形との絡みで表わすこともできる。例えば、本組成物が、心臓カテーテル手術の後の投薬用にパッチとして製剤化されているかまたはパッチに付けられている場合、アドレナリンが本組成物で使用される血管収縮物質であるとし、患者が体重約70kgの成人であるとすると、パッチはアドレナリンを約0.00075mg/kg〜約37.5mg/kgの濃度で含んでいるべきである。このような手術で使用されるパッチは典型的には約4cm2〜25cm2であるので、使用するカテーテルのFサイズに応じて、当業者なら、パッチ1cm2当たりのアドレナリンmgの単位での濃度、例えば約0.00020mg/cm2〜約1.5mg/cm2を容易に決定することができると思われる。同様に、例えば、本組成物が、心臓カテーテル手術の後の投薬用にジェルまたはリキッドとして製剤化されている場合、アドレナリンが本組成物で使用される血管収縮物質であるとし、患者が体重約70kgの成人であるとすると、ジェルはアドレナリンを約0.00075mg/kg〜約37.5mg/kgの濃度で含んでいるべきである。このような手術で使用されるジェルは典型的には約1〜2mLであるので、当業者なら、ジェル1mL当たりのアドレナリンmgの単位での濃度、例えば約0.00075mg/mL〜約18.75mg/mLを容易に決定することができると思われる。
【0148】
上記の例示的な変換計算を行うことにより、ここまでに記載した血管収縮物質および/または血液凝固物質、または、本発明の方法、組成物、およびキットで使用するのに適した血管収縮物質および/または血液凝固物質の投薬量範囲の、局部的適用に適した濃度範囲を外挿により計算することができる。本組成物がパッチ、ジェル、またはリキッドとして製剤化される好ましい実施形態では、そのような組成物は一般用途向けとして、体重が例えば約50、60、70、80、または90kgの成人用に、局部投薬面積が約1〜2、2〜4、4〜8、8〜12、12〜15、15〜20、20〜25、または25〜30cm2の例えばパッチとして、または、局部投薬容量が約0.25〜0.5、0.5〜1、1〜1.25、1.25〜1.5、1.5〜1.75、1.75〜2、2〜2.5、または2.5〜3mLの例えばリキッドまたはジェルとして製造することができる。
【0149】
5.)キット
本発明により、上記した実施形態のどれかを含んでいるキットも提供される。キットにおいては、本組成物を汚染することなく取り出すことを容易にする密封、防水、無菌パッケージの中に、本組成物を入れておくことができる。容器をつくることができる材料としては、アルミニウムホイル、プラスチック、あるいは容易に滅菌できるその他の慣用されている材料が挙げられる。キットには、単一の組成物、または複数の組成物を入れておくことができ、好ましくはこの場合それぞれの組成物は別々の防水無菌パッケージに入れておく。
【0150】
もう1つの実施形態では、2つのコンパートメントをもつ容器が設けられている。第1のコンパートメントには本組成物が入っており、第2のコンパートメントには本発明に従う局部的なバリア、メンブレン、またはフィルムが入っている。実際の使用においては、このバリア、メンブレン、またはフィルムは容易に開封される第1のコンパートメントの中に浸すことができ、そしてそのあと創傷に適用することができる。本組成物は、パッケージングして滅菌する前に局部的なバリア、メンブレン、またはフィルムに付けるまたは加えることができるし、あるいは、本組成物は、バリア、メンブレン、またはフィルムとして製剤化することもできる。もう1つの実施形態では、本キットは、本組成物が上記のように製剤化されない場合は、バリア、メンブレン、またはフィルムを含んでいることはない。
【0151】
本発明の1つの態様によれば、種々の特化されたキットを提供することができる。このキットには、本発明の組成物の複数種を入れることができ、この場合それぞれの組成物は別々の密封無菌パッケージまたは容器に入れておく。本キットにおいては、1つまたは複数の容器に血管収縮物質の有効量を入れておくことができ、この場合該血管収縮物質はポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体を含んでおらず、一方もう1つの別の容器には医薬的に許容される担体をパッケージングしておくことができる。本キットにおいては、別の容器に中性のリキッド、中性のジェル、または中性のソリッドを入れておくことができる。本キットには、本明細書に記載した、本発明の組成物に従う血液凝固物質を入れておくこともできる。
【0152】
本キットは、血液に対してバリアを形成するバリア形成材として製剤化することができる組成物を含むことができる。本キット中に含まれている組成物は、血液に対してバリアを形成するバリア形成材にコートすること、またはそれに加えること、またはその中に組み込むことができる。1つの実施形態では、キットには、血液凝固物質および/または血管収縮物質の1つまたは複数が包埋されたバリア形成材からできたパッチを含んでいる医薬組成物が含まれている。1つの実施形態では、キットには、血液凝固物質および/または血管収縮物質の1つまたは複数が包埋されたガーゼを含んでいる医薬組成物が含まれている。一部の実施形態では、キットには、血管収縮剤および/または血液凝固剤の1つまたは複数が包埋されているまたは組み合せされているバリア形成材を含んでいる医薬組成物が含まれており、この場合このバリア形成材には接着剤が入っており、その結果バリア形成材を患者の皮膚表面に接着することができる。別の形態として、キットにはバリア形成材が含まれていない。
【0153】
キットには、FDA認可、および/または、少し距離をおいたところでおよび/または圧迫と組み合せて使用するためのインストラクションに関する説明書を入れておくことができる。
【0154】
例えば、抗血液凝固治療を必要としている患者に、軽傷からでも起こり得る深刻な出血のリスクを回避するため、キットを処方することもできる。キットは、例えばカテーテル術で生じた静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置するためにも使用することができる。1つの実施形態では、キットには、血管収縮物質、血液凝固物質、または、血管収縮物質または血液凝固物質として作用する物質が包埋されたまたはコートされたパッチが含まれている。もう1つの実施形態では、キットには、本発明の方法で使用することができるジェルが含まれており、この場合このジェルには、血管収縮物質、血液凝固物質、または、血管収縮物質または血液凝固物質として作用する物質が含まれている。
【0155】
さらには、救急用途用または軍事用途用につくられたキットには、使い捨て殺菌済み器具、例えばハサミ、メス、クランプ、圧迫帯、弾性または無弾性バンドなどを入れておくこともできる。好ましい実施形態では、キットにはガーゼが入っている。
【実施例】
【0156】
実施例1:血流停止速度または血流停止達成時間の測定
このブラインドで、ランダム(無作為)で、プラセボをコントロールとする試験は、心臓カテーテル術のシミュレーションを行うことが意図されているイヌにおけるある大腿動脈の動脈穿刺穴を調べるよう、設計されている。この方法では、出血時間における差、および、加えられる圧迫の量における差が検討される。
【0157】
1)材料および方法
イヌを無作為に2つに割り振り、1つには血管収縮物質または血液凝固物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を行い、もう1つには本発明の組成物がコートされたまたは本発明の組成物から製剤化された局部用バリア形成材とともに圧迫を行う。
【0158】
好ましい実施形態では、同じ1つの動物モデルがコントロールともなる。例えば、イヌにおいては、各後肢の大腿動脈を同一のやり方で穿刺して比較可能な穿刺穴をつくることができ、試験されている処置を1つの穿刺穴に適用し、もう一方の穿刺穴は処置しないままにしておくかまたは圧迫のみを加えることができる。
【0159】
バリア形成材には機械的加圧クランプが適用される。5分間隔で、クランプを緩めて、創傷部位からの血流をチェックするが、バリア形成材は乱さない。創傷から血液が流れ続けている場合は、チェックを5分毎に行って、出血が完全に停止するまでクランプを繰り返し適用する。プレッシャー・トランスデューサーに接続された、流体で満たされているバルーン(風船)を用いて、かかっている圧の強さを測定する。手術前の出血時間についても実施する。
【0160】
手術前のヘマトクリット(%)や出血時間(分)などの手術前の出血に関する変数を比較することで、各群に対して、出血に関しての差は、特定の動物を選ぶことにより解消することができるか、あるいは、基礎となる数値データから出血停止速度または出血停止達成時間を計算することで補正することができる。
【0161】
大腿動脈穿刺部位にかかっているクランプ圧は各イヌに対して注意深く調節し、記録する。そうすることで、プラセボ群、および、本発明の組成物の適用を受けている群のいずれに対しても平均クランプ圧(mmHg)を計算することができる。
【0162】
イヌの大腿動脈の表面的な現象から、血腫形成の直接的で連続する視覚化が可能である。視覚化は、超音波影像やシンチグラフィ撮像などの本明細書に記載した方法のいずれによってもよい。斑状出血(直径2.5cm以上の青色または紫色の皮膚変色)、腫脹(直径2.5cm以上、高さ0.5cm以上)などの外的な徴候も血腫形成を暗示するものである。本発明の方法を適用した後、カニューレをイヌから取り出して、血腫またはその他の血管合併症の程度を測定することもできる。
【0163】
手術前ヘマトクリット(%)、手術前出血時間(分)、穿刺部位からの出血停止時間(分)、血腫の平均数、および平均クランプ圧(mmHg)を含めた数種の変数に対して、各処置群の平均値間におけるパーセント差を計算する。各変数の平均値間における差の統計的な意味(P値)は、通常の統計的な手法により計算する。
【0164】
本発明は、範囲が、ここに述べた特定の実施形態に限定されるべきでない。実際、ここまでの記述および添付の図面から、記述したものに加えて本発明を種々改変することは、当業者にとっては明らかなことであると思われる。そのような改変は、添付の特許請求の範囲に入るものである。
【0165】
色々な文献を本明細書中で引用したが、これらの開示内容は、参照によりその全体がそこに組み込まれる。
【0166】
本発明は、以下の付番されたパラグラフ(項)中に列挙されている実施形態により説明することができる。
【0167】
1. 患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置する方法であって、
a)患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している創傷の皮膚に、血管収縮物質の有効量が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合該血管収縮物質にはホ゜リ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととするステップ;および同時に、
b)該破れたまたは穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップ;
を含んでなる方法において、
該静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血液の流出の停止または低下が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも速い速度または短い時間で達成されることを特徴とする方法。
【0168】
2. 以下:
a)患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している創傷の皮膚に、血管収縮物質または血液凝固物質が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合該血管収縮物質または血液凝固物質にはホ゜リ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととするステップ;
b)同時に該破れたまたは穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップ;および
c)該創傷および穿刺穴からの血流の量を記録するステップ;
を含んでなる、静脈もしくは動脈の血流の停止または静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴の封鎖、および、該破れ目または穿刺穴に近接しているところの血流の停止または皮膚表面創傷の封鎖を達成する方法において、
該血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合と比較した場合、該血管収縮物質または血液凝固物質の量が、該静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の封鎖を増加させるのにまたはそこからの血流を減少させるのに、および、皮膚表面創傷からの血流の封鎖を増加させるのにまたはそこからの血流を減少させるのに効果があることを特徴とする方法。
【0169】
3. 患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置する方法であって、
a)患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している創傷の皮膚に、血液凝固物質の有効量が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合該血液凝固物質にはホ゜リ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととするステップ;および同時に、
b)該破れたまたは穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップ;
を含んでなる方法において、
該静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下が、血液凝固物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも速い速度または短い時間で達成されることを特徴とする方法。
【0170】
4. 患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を処置する方法であって、
a)患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している創傷の皮膚に、血管収縮物質および血液凝固物質の有効量が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合該血管収縮物質および血液凝固物質にはホ゜リ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととするステップ;および同時に、
b)該破れたまたは穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップ;
を含んでなる方法において、
該静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血流の停止または低下が、血管収縮物質および血液凝固物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも速い速度または短い時間で達成されることを特徴としている方法。
【0171】
5. 前記組成物がさらに抗真菌剤または抗菌剤を含んでいることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0172】
6. 前記組成物がさらにコラーゲンを含んでいることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0173】
7. 前記組成物がさらに医薬担体を含んでいることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0174】
8. 前記組成物が、ジェル、ソリッド、リキッド、スポンジ、フォーム、スプレー、エマルション、サスペンジョン、またはリキッドとして製剤化されていることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0175】
9. 前記組成物がさらに中性のリキッド、中性のジェル、または中性のソリッドを含んでいることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0176】
10. 前記組成物がさらに中性のソリッドを含んでおり、該中性のソリッドがガーゼであることを特徴とする、項9の方法。
【0177】
11. 前記組成物が中性のソリッド上のコーティングの形態にあることを特徴とする、項8の方法。
【0178】
12. 前記中性のソリッドがガーゼであることを特徴とする、項11の方法。
【0179】
13. 前記バリア形成材がガーゼであることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0180】
14. 前記血液凝固物質が、アルファ-2-抗プラスミン、アルファ-1-抗トリプシン、アルファ-2- マクログロブリン、アミノヘキサン酸、アプロチニン、カルシウムイオン源、アルギン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム-ナトリウム、カゼインキナーゼII、キチン、キトサン、コラーゲン、シアノアクリレート、イプシロン-アミノカプロン酸、ファクターXIII、フィブリン、フィブリングルー、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、生体血小板、メタアクリレート、PAI-1、PAI-2、プラスミンアクチベーター阻害物質、プラスミノーゲン、血小板アゴニスト、硫酸プロタミン、プロトロンビン、RGDペプチド、スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、トロンビン、トロンボプラスチン、およびトラネキサム酸からなる群から選択されることを特徴とする、項2〜4のいずれか1つの方法。
【0181】
15. 前記血管収縮物質が、アドレナリン、エンドセリン-1、エピネフリン、フェニレフリン、セロトニン、トロンボキサン、およびU-46619からなる群から選択されることを特徴とする、項1または4のどちらか1つの方法。
【0182】
16. 前記患者がヒトであることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0183】
17. 適用される組成物がフィルムまたはメンブレンであることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0184】
18. 前記フィルムまたはメンブレンがバリア形成材を含んでいることを特徴とする、項17の方法。
【0185】
19. 組成物が、マット、ストリング、マイクロビーズ、マイクロスフェアー、またはマイクロフィブリルとして製剤化されていることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0186】
20. 前記組成物がさらに生分解性材料を含んでいることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0187】
21. 前記生分解性材料が、ポリアニオン性ポリサッカリド、アルギン酸、コラーゲン、ポリペプチド、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、デキストランおよびデキストランのコポリマー、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリエステルカーボネート、ポリヒドロキシアルコネート、ならびにポリカプロラクトンおよびそのコポリマーからなる群から選択されることを特徴とする、項20の方法。
【0188】
22. ステップ(a)の前に、患者に抗血液凝固物質を投薬するステップをさらに含んでいる、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0189】
23. 前記抗血液凝固物質が、クマジン、ヘパリン、ナドロパリン、アスパリン、および血栓溶解剤からなる群から選択されることを特徴とする、項22の方法。
【0190】
24. 前記組成物がさらに硫酸プロタミンを、ヘパリンを中和するのに有効な量で含んでいることを特徴とする、項23の方法。
【0191】
25. 前記動脈が、大腿動脈、橈骨動脈、上腕動脈、または腋窩動脈であることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0192】
26. 前記静脈が、大腿静脈、内頸静脈、または鎖骨下静脈であることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0193】
27. 前記圧迫が、用手圧迫であることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0194】
28. 前記圧迫が、機械圧迫であることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0195】
29. 前記圧迫が、穿刺穴または破れ目の近位の静脈もしくは動脈に加えられることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0196】
30. 前記圧迫が、組成物が適用される部位のところで加えられることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0197】
31. 前記圧迫が、圧迫包帯で加えられることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0198】
32. さらに、ステップ(b)を繰り返すことを含んでなる、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0199】
33. 前記速度が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも少なくとも10%速いことを特徴とする、項32の方法。
【0200】
34. 前記速度が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも少なくとも20%速いことを特徴とする、項32の方法。
【0201】
35. 前記速度が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも少なくとも30%速いことを特徴とする、項32の方法。
【0202】
36. 前記速度が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも少なくとも40%速いことを特徴とする、項32の方法。
【0203】
37. 前記速度が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも少なくとも50%速いことを特徴とする、項32の方法。
【0204】
38. 前記静脈もしくは動脈がカテーテルにより破られるまたは穿刺されることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0205】
39. 前記静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している皮膚創傷が、静脈もしくは動脈の穿刺穴から10、9、8、7、6、5、または4cmであることを特徴とする、項1〜4のいずれか1つの方法。
【0206】
40. 以下:
a)患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している創傷の皮膚に、血管収縮物質または血液凝固物質が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合該血管収縮物質または血液凝固物質にはホ゜リ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととするステップ;
b)同時に該破れたまたは穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップ;および
c)局在性血管性合併症の発生を記録するステップ;
を含んでなる、局在性血管性合併症の発生を減らす方法において、
該血管収縮物質または血液凝固物質の量が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合と比較した場合、該静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴の封鎖を引き起こし、局在性血管性合併症の発生率を減らすのに効果があることを特徴とする方法。
【0207】
41. 前記発生率が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリアとともに圧迫を加える場合よりも50%低いことを特徴とする、項40の方法。
【0208】
42. 前記静脈もしくは動脈がカテーテルにより破られるまたは穿刺されることを特徴とする、項40の方法。
【0209】
43. 以下:
a)血管収縮物質の有効量であって、この場合該血管収縮物質にはホ゜リ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこと;および、
b)医薬的に許容される担体;
を含んでなる、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を局部的に処置するための医薬組成物。
【0210】
44. 前記組成物がさらに血液凝固物質を含んでいることを特徴とする、項43の医薬組成物。
【0211】
45. さらに中性のリキッド、中性のジェル、または中性のソリッドを含んでいる、項43または44の医薬組成物。
【0212】
46. 前記組成物がさらに中性のソリッドを含んでおり、該中性のソリッドがガーゼであることを特徴とする、項45の医薬組成物。
【0213】
47. 1つまたは複数の容器に、
a)血管収縮物質の有効量であって、この場合該血管収縮物質にはホ゜リ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこと;および、
b)医薬的に許容される担体;
を含んでなる組成物、および、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を局部的に処置することについてのインストラクションを含んでいるキット。
【0214】
48. 前記組成物がさらに血液凝固物質を含んでいることを特徴とする、項47のキット。
【0215】
49. さらに中性のリキッド、中性のジェル、または中性のソリッドを含んでいる、項47のキット。
【0216】
50. 前記組成物がさらに中性のソリッドを含んでおり、該中性のソリッドがガーゼであることを特徴とする、項49のキット。
【0217】
51. 前記組成物がさらに中性のジェルを含んでおり、該中性のジェルがゼラチンであることを特徴とする、項49のキット。
【0218】
52. 以下:
a)血管収縮物質の有効量であって、この場合該血管収縮物質にはホ゜リ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこと;および
b)この場合該血管収縮物質がバリア、メンブレン、またはフィルムに製剤化されていること;
を含んでなる、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を局部的に処置するための医薬組成物。
【0219】
53. 前記組成物がさらに血液凝固物質を含んでいることを特徴とする、項52の医薬組成物。
【0220】
54. さらに中性のリキッド、中性のジェル、または中性のソリッドを含んでいる、項52または53の医薬組成物。
【0221】
55. 前記組成物がさらに中性のソリッドを含んでおり、この場合該中性のソリッドがガーゼであることを特徴とする、項52の医薬組成物。
【0222】
56. 1つまたは複数の容器に、
a)血管収縮物質の有効量であって、この場合該血管収縮物質にはホ゜リ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこと;および、
b)この場合該血管収縮物質はバリア、メンブレン、またはフィルムに製剤化されていること;
を含んでなる組成物、および、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴を局部的に処置することについてのインストラクションが含まれているキット。
【0223】
57. 前記組成物がさらに血液凝固物質を含んでいることを特徴とする、項56のキット。
【0224】
58. 前記組成物がさらに中性のリキッド、中性のジェル、または中性のソリッドを含んでいることを特徴とする、項56のキット。
【0225】
59. 前記組成物がさらに中性のソリッドを含んでおり、この場合該中性のソリッドがガーゼであることを特徴とする、項56のキット。
【0226】
60. 前記血管収縮物質がアドレナリン[商標]であり、該組成物が患者体重につき約0.00001mg/kg〜約0.5mg/kgのアドレナリン[商標]を含んでいることを特徴とする、項56のキット。
【0227】
61. 前記血管収縮物質が酒石酸水素メタラミノールであり、該組成物が患者体重につき約0.0005mg/kg〜約4.5mg/kgの酒石酸水素メタラミノールを含んでいることを特徴とする、項56のキット。
【0228】
62. 前記血管収縮物質がドーパミンHClであり、該組成物が患者体重につき約0.0005mg/kg〜約10mg/kgのドーパミンHClを含んでいることを特徴とする、項56のキット。
【0229】
63. 前記血管収縮物質がイソプロテレノールHClであり、該組成物が患者体重につき約0.0005mg/kg〜約5mg/kgのイソプロテレノールHClを含んでいることを特徴とする、項56のキット。
【0230】
64. 前記血管収縮物質がノルエピネフリンであり、該組成物が患者体重につき約0.0001mg/kg〜約0.01mg/kgのノルエピネフリンを含んでいることを特徴とする、項56のキット。
【0231】
65. 前記血管収縮物質がセロトニン[商標]であり、該組成物が患者体重につき約0.001mg/kg〜約0.6mg/kgのセロトニン[商標]を含んでいることを特徴とする、項56のキット。
【0232】
66. 前記血管収縮物質がエンドセリンであり、該組成物が患者体重につき約4.5x10-8mg/kg〜約5.0x10-6mg/kgのエンドセリンを含んでいることを特徴とする、項56のキット。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】ヒトの大腿動脈の超音波撮像図である。画像の最上部は患者の皮膚表面に相当し、十字線マークは、皮膚表面の下2.67cmのところにある血管の中心を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における心臓カテーテル術から生じた静脈もしくは動脈の穿刺穴を処置する方法であって、
a)患者のカテーテル出口部の皮膚に、血管収縮物質の有効量が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合該血管収縮物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととし、且つ、該カテーテル出口部が静脈もしくは動脈のカテーテル穿刺穴に1〜10cmで近接していることとするステップ;および同時に、
b)該穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップ;
を含んでなり、
該静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴からの血液の流出の停止または低下が、該血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも、30%〜50%短い時間で達成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
患者における心臓カテーテル術から生じた大腿動脈の穿刺穴を処置する方法であって、
a)患者のカテーテル出口部の皮膚に、血管収縮物質の有効量が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合該血管収縮物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととし、且つ、該カテーテル出口部が大腿動脈のカテーテル穿刺穴に1〜10cmで近接していることとするステップ;および同時に、
b)該穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップ;
を含んでなり、
該大腿動脈の破れ目または穿刺穴からの血液の流出の停止または低下が、該血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも、30%〜50%短い時間で達成されることを特徴とする方法。
【請求項3】
患者における心臓カテーテル術から生じる血腫の形成を阻止する方法であって、
a)患者の静脈もしくは動脈のカテーテル穿刺穴に1〜10cmで近接しているカテーテル出口部の皮膚に、血管収縮物質の有効量が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合該血管収縮物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととするステップ;
b)同時に該穿刺された静脈もしくは動脈に圧迫を加えるステップ;および、
c)形成された血腫の数を記録するステップ;
を含んでなり、
該血腫の形成が、該血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合に比較して阻止されていることを特徴とする方法。
【請求項4】
前記血管収縮物質が、エンドセリン、エンドセリン-1、エピネフリン、アドレナリン、酒石酸水素メタラミノール、ドーパミンHCl、イソプロテレノールHCl、ノルエピネフリン、フェニレフリン、セロトニン、トロンボキサン、ノルエピネフリン、プロスタグランジン、メテルギン、オキシトシン、イソプレランドU-46619、パパベリン、ヨヒンビン、ビスナジン、ケリン、べべリン、またはニコチネート誘導体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物がさらに抗真菌薬または抗菌薬を含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物がさらにコラーゲンを含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物がさらに医薬担体を含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、ジェル、ソリッド、リキッド、スポンジ、フォーム、スプレー、エマルション、サスペンション、またはソリューションとして製剤化されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物がさらに中性のリキッド、中性のジェル、または中性のソリッドを含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物がさらに中性のソリッドを含んでおり、且つ、その中性のソリッドがガーゼである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、中性のソリッド上のコーティングの形態にある、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記中性のソリッドがガーゼである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バリア形成材がガーゼである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物がさらに、アルファ-2-抗プラスミン、アルファ-1-抗トリプシン、アルファ-2-マクログロブリン、アミノヘキサン酸、アプロチニン、カルシウムイオン源、アルギン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム-ナトリウム、カゼインキナーゼII、キチン、キトサン、コラーゲン、シアノアクリレート、イプシロン-アミノカプロン酸、ファクターXIII、フィブリン、フィブリングルー、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、生体血小板、メタアクリレート、PAI-1、PAI-2、プラスミンアクチベーター阻害物質、プラスミノーゲン、血小板アゴニスト、硫酸プロタミン、プロトロンビン、RGDペプチド、スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、トロンビン、トロンボプラスチン、およびトラネキサム酸からなる群から選択される血液凝固物質を含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記患者がヒトである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
付けられる組成物がフィルムまたはメンブレンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記フィルムまたはメンブレンがバリア形成材を含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、マット、ストリング、マイクロビーズ、マイクロスフェアー、またはマイクロフィブリルとして製剤化されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物がさらに生分解性材料を含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記生分解性材料が、ポリアニオン性ポリサッカリド、アルギン酸、コラーゲン、ポリペプチド、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、デキストランおよびデキストランコポリマー、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリエステルカーボネート、ポリヒドロキシアルコネート、ならびにポリカプロラクトンおよびそのコポリマーからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
さらに、ステップ(a)の前に、患者に抗血液凝固物質を投与するステップを含んでなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗血液凝固物質が、クマジン、ヘパリン、ナドロパリン、アスパリン、および血栓溶解剤からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物がさらに硫酸プロタミンを、ヘパリンを中和するのに有効な量で含んでいる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記動脈が、大腿動脈、橈骨動脈、気管支動脈、または腋窩動脈である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記静脈が、大腿静脈、内頸静脈、または鎖骨下静脈である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記圧迫が、用手圧迫である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記圧迫が、機械圧迫である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記圧迫が、穿刺穴または破れ目の近くの静脈もしくは動脈に加えられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記圧迫が、組成物の適用部位に加えられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記圧迫が、圧迫包帯で加えられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
さらに、ステップ(b)を繰り返すことを含んでなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
その速度が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも、少なくとも10%速い、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
その速度が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも、少なくとも20%速い、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
その速度が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも、少なくとも30%速い、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
その速度が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも、少なくとも40%速い、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
その速度が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合よりも、少なくとも50%速い、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記静脈もしくは動脈が、カテーテルにより破られるまたは穿刺される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している皮膚の創傷が、該静脈もしくは動脈の穿刺穴から10、9、8、7、6、5、または4cmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
以下:
a)患者の静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴に近接している創傷の皮膚に、血管収縮物質が含まれている組成物を局部的に付けるステップであって、この場合該血管収縮物質にはポリ-β-1→4N-アセチルグルコサミンポリマーまたはその誘導体が含まれていないこととするステップ;
b)同時に該破られたまたは穿刺された静脈または動脈に圧迫を加えるステップ;および、
c)限局性血管性合併症の発生を記録するステップ;
を含んでなる限局性血管性合併症の発生を減らす方法において、
該血管収縮物質の量が、静脈もしくは動脈の破れ目または穿刺穴の封鎖を引き起こすのに有効な量であり、限局性血管性合併症の発生率が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリア形成材とともに圧迫を加える場合と比較して減少していることを特徴とする方法。
【請求項40】
前記発生率が、血管収縮物質が含まれていない局部用バリアとともに圧迫を加える場合よりも、50%少ない、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記静脈もしくは動脈が、カテーテルにより破かれるまたは穿刺される、請求項39に記載の方法。


【図1】
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【公表番号】特表2006−515309(P2006−515309A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564930(P2004−564930)
【出願日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/041762
【国際公開番号】WO2004/060172
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(501250337)マリン ポリマー テクノロジーズ,インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】