説明

歩行者検知システム

【課題】車両と携帯通信装置を含み、車両進行方向の歩行者の存在を通知する歩行者検知システムにおいて、携帯通信装置が実際に歩行者によって携帯されているかを判断するための技術を提供する。
【解決手段】自機の位置と自機に働く加速度を取得する携帯通信装置と、自車の位置と進行方向と速さを取得する車載通信装置と、前記携帯通信装置が歩行者によって実際に携帯されているか、および、車両の進行方向に歩行者が存在するかを判断し、判断結果に応じて歩行者の存在情報を前記車載通信装置に送信する判断手段とを有し、前記判断手段は、前記加速度が所定値以上である場合に、前記携帯通信装置が歩行者によって実際に携帯されていると判断するような歩行者検知システムを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者の存在を検知し、車両に通知する歩行者検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両に対して、進行方向に存在する歩行者の情報を通知して、運転者への注意喚起や自律的な車両制御を行わせて、衝突事故を防止しようとする歩行者検知システムがある。例えば、特開2005−352577号公報(特許文献1)では、GPS等を用いて携帯電話の位置を検出して移動速度を算出することで、携帯電話の使用者が歩行状態か自動車等による高速移動状態かを判断し、歩行状態であれば車両に歩行者の存在を通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−352577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されている歩行者の検知方法は、携帯電話の移動速度のみに基づいて、使用者が歩行状態かどうかを判断するものであるため、携帯電話が実際に歩行者によって所持されているかどうかは分からなかった。そのため、例えば交通を妨害するという悪意のある者が携帯電話を路上に放置したり、あるいは歩行者が携帯電話を路上に落としたりした場合、実際には車両の進行方向に歩行者がいないにもかかわらず、歩行者が存在するという情報が通知されてしまっていた。このような誤った通報を受けた車両が衝突回避のために速度を落としたり停止したりすると、交通渋滞を招く恐れがある。また、急な制動を行った場合、周囲の状況によってはかえって危険ですらある。そこで、かかる歩行者検知システムにおいて、携帯電話を歩行者が実際に保持しているかどうかを検出することが求められている。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、車両に歩行者の存在を通知する歩行者検知システムにおいて、携帯電話等の携帯通信装置が、歩行者によって実際に携帯されているかどうかを検知するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の歩行者検知システムでは、以下の構成を採用する。すなわち、
自機の位置と、自機に働く加速度とを取得する携帯通信装置と、
車両に搭載され、前記車両の位置と、前記車両の進行方向および速さとを取得する車載通信装置と、
前記携帯通信装置の位置と加速度、および、前記車両の位置と進行方向と速さに基づいて、前記携帯通信装置が歩行者によって実際に携帯されているかどうか、および、車両の進行方向に歩行者が存在するかどうかを判断し、存在すると判断した場合、前記車載通信装置に歩行者の存在情報を通知する判断手段と、
を有する歩行者検知システムであって、
前記判断手段は、前記携帯通信装置に所定の値以上の加速度が働いている場合に、前記携帯通信装置が歩行者によって実際に携帯されていると判断する
ことを特徴とする歩行者検知システムである。
【0007】
上記のように、歩行者検知システムに含まれる携帯通信装置(例えば携帯電話)は、例えばGPSを用いた測定により、自機の位置を取得する。取得した位置情報は、判断手段が車両の進行方向に歩行者が存在するかどうかの判断を行う際に、歩行者の位置を把握するために用いることができる。携帯通信装置は、また、加速度センサによって自らに働く加速度を測定する。そして、取得した加速度は、判断手段が、携帯通信装置が歩行者によって実際に携帯されているかどうかの判断を行う際に用いることができる。
【0008】
歩行者検知システムに含まれる、車両に搭載された通信装置(以降、車載通信装置とも記す)は、例えばGPSを用いた測定により、自車の位置を取得する。車載通信装置は、また、例えばハンドルの操作状況を検知することにより、自車の進行方向を取得する。車載通信装置は、また、例えば車両が通常備える速度計での測定により、自車の速さを取得する。判断手段は、これら取得した車両の位置、進行方向および速さを用いて、先に求めた歩行者の位置と比較することにより、車両の進行方向に歩行者が存在するかどうかの判断を適切に行うことができる。車載通信装置は、また、判断手段から歩行者の存在情報を受信することもできる。こうして歩行者の存在情報を受信すれば、受信した情報に基づいて衝突回避のための適切な動作を車両に取らせることができる。
【0009】
歩行者検知システムに含まれる判断手段は、携帯通信装置の加速度に基づいて、携帯通信装置が実際に歩行者に携帯されているかを判断する。このような判断は、携帯通信装置が歩行者によって携帯されている場合の加速度パターンを、実際の測定結果と比較することによって実現できる。あるいはもっと単純に、測定された加速度の値が所定の値を超えた場合に、歩行者に携帯されていると判断することもできる。実際に携帯されていると判断した場合、さらに携帯通信装置の位置と、車載通信装置から受信した車両の位置、進行方向および速さに基づき、車両の進行方向に歩行者が存在するかどうかを判断する。進行方向に歩行者ありと判断した場合、その判断結果を車両に通知する。判断手段の設置場所としては、例えば、所定の範囲内の携帯通信装置および車載通信装置との間で情報の送受信可能な基地局サーバが好適に利用できる。
【0010】
歩行者検知システムがこのような構成を取ることにより、判断手段は、携帯通信装置が実際に歩行者に携帯されているかどうかを判断した上で、実際に携帯されている場合のみ歩行者存在情報を車両に通知することになる。そのため、歩行者がいないのに歩行者情報を車両に通知する誤検知がなくなるので、車両の運転者に無駄に警告を発したり、車両を制動したりすることのない、スムーズな交通制御を実現できる。
【0011】
本発明の歩行者検知システムでは、前記携帯通信装置は、自機に何らかの操作が行われているかどうかを示す操作情報をさらに取得し、前記判断手段は、前記携帯通信装置に働く加速度が前記所定の値より小さい場合であっても、前記操作情報が何らかの操作が行われていることを示すものであれば、前記携帯通信装置が歩行者によって実際に携帯されていると判断する構成を取ることができる。何らかの操作とは、通話やボタン押しなど、歩行者が実際に装置を携帯していないとできない行動を指す。このような構成により、歩行者の検知が容易になる。
【0012】
本発明の歩行者検知システムでは、前記判断手段は、車両の進行方向に歩行者が存在すると判断した場合、前記携帯通信装置に車両が接近している情報を通知する構成を取ることができる。このように、携帯通信装置の側にも車両の接近情報が通知される構成を取ることにより、携帯通信装置が適切な処理(例えば音声や振動によるアラート)を行って歩行者に注意を促すことができるようになる。
【0013】
本発明の歩行者検知システムでは、前記携帯通信装置は、前記加速度の取得を定期的に
行い、前記判断手段は、所定の時間以内に行った判断結果を記憶しており、現在から所定の時間以内に前記携帯通信装置が歩行者によって実際に携帯されていると判断したことがある場合は、最新の情報に基づく判断結果にかかわらず、歩行者の存在情報を前記車載通信装置に送信する構成を取ることができる。
【0014】
最新の加速度に基づく判断によれば、携帯通信装置が歩行者に実際には携帯されていないと思われる場合であっても、それが一時的な状態であるケースもあり得る。例えば、歩行者が一時的に停止しているような場合である。歩行者検知システムが上記のような構成を取ることにより、判断手段は、携帯通信装置に加速度が働いていない状態が所定の時間以上持続して初めて、携帯通信装置が実際には携帯されていないと判断するようになる。これにより、判断手段が誤った判断をする確率を下げることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両に歩行者の存在を通知する歩行者検知システムにおいて、携帯電話等の携帯通信装置が、歩行者によって実際に携帯されているかどうかを検知することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】歩行者検知システム全体の構成を示す図。
【図2】携帯電話、基地局サーバおよび車両のブロック図。
【図3】携帯電話の処理を示すフローチャート。
【図4】車両の処理を示すフローチャート。
【図5】基地局サーバの処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。図1は、以下の実施形態で述べる歩行者検知システム全体の構成を示す図である。ここに示したように、基地局サーバと通信が成立する範囲内の携帯通信装置(携帯電話)および車載通信装置が、基地局サーバによる判断の対象となる。
【0018】
<実施形態1>
まず、本実施形態の歩行者検知システムの各要素の構成と機能を説明する。
図2の左下の部分は、携帯電話2のブロック図であり、本発明の携帯通信装置に当たる。制御部21は、他の各ブロックに指示を与え、情報の流れを制御する。制御部21は例えばCPU上で稼働するプログラムとして構成できる。受信部22は、アンテナを経由してGPS衛星1からの電波を受信し、携帯電話の現在の位置情報を取得する。送信部23は、アンテナを経由して、受信部22が取得した位置情報、および、後述する歩行センサ24が取得した情報を基地局サーバ3に送信する。歩行センサ24は加速度センサであり、自機に働く加速度を測定する。なお、ここでは、送信部23は定期的に情報送信を行っているものとする。
【0019】
図2の上側の部分は、基地局サーバ3のブロック図である。本発明の判断手段は、基地局サーバ3が備える制御部31、受信部32、送信部33、歩行判断部34、加速度パターンDB35、衝突判断部36に相当する。制御部31は、各ブロックに指示を与え、また、携帯電話や車両から受信した情報を各判断部に渡して判断を要請し、判断結果を受け取る。受信部32は、アンテナを経由して、携帯電話や車両の車載通信装置から送信された情報を受信する。携帯電話からは位置および加速度が、車載通信装置からは位置、進行方向および速さが得られる。送信部33は、アンテナを経由して、制御部の判断結果を車載通信装置に送信する。歩行判断部34は、携帯電話の加速度と、加速度パターンDB35に格納されたデータと照合して、実際に歩行者によって携帯されているかどうかを判断
する。加速度パターンDB35には様々な歩行状態に対応して加速度センサが示す値が格納されている。衝突判断部36は、携帯電話(歩行者が携帯していると判断されたもの)の位置、車両の位置、進行方向および速さから、車両の進行方向に歩行者が存在するかを判断する。そして、進行方向に歩行者がいれば、衝突の危険性ありと判断する。制御部31、歩行判断部34、衝突判断部36は例えばCPU上で稼働するプログラムとして構成できる。また、基地局サーバ3は単一の装置として構成されても良いし、地理的、物理的に離れた複数の装置によって構成されても良い。また、加速度パターンDBを設ける際には、歩行判断部と物理的に分けられたメモリ装置等にデータを格納するようにしても良いし、プログラムの一部としてリテラル定数的に保持しても良い。
【0020】
図2の右下の部分は、車載通信装置4のブロック図であり、車両に搭載されている。制御部41は、各ブロックに指示を与え、情報の流れを制御する。また、制御部41は、基地局サーバから進行方向に歩行者ありという情報を受け取った場合、不図示の表示装置に情報を出力して運転者に注意を促す、不図示の制動装置に指示を出して車両の停止や進路変更動作をする等の後続処理を行う。受信部42は、アンテナを経由してGPS衛星1からの電波を受信し、車両の位置を取得する。受信部42はまた、アンテナを経由して、基地局サーバが送信する歩行者の存在情報を受信する。送信部43は、アンテナを経由して、受信部42が受信した車両の位置、および、後述する走行センサ44が取得した進行方向および速さを基地局サーバ3に送信する。走行センサ44は、ハンドルの操作状況を検知し、従来の進行方向からの変化を算出した上で、車両の進行方向とする。走行センサ44は、また、車両が通常備える速度計が測定した結果に基づいて車両の速さを取得する。なお、ここでは、送信部43は定期的に情報送信を行っているものとする。
【0021】
次に、図3〜図5のフローチャートを参照しつつ、本実施形態での一般的な処理の流れを説明する。
【0022】
携帯電話は、図3のフローチャートに示した動作を行っている。すなわち、ステップS101で、受信部は、GPS衛星からの電波を受信して現在の位置を取得する。
ステップS102で、歩行センサは、自機に働く加速度を取得する。
ステップS103で、送信部は、自機の位置と、自機に働く加速度をサーバに送信する。携帯電話は、電源の入っている間、以上の一連の動作を定期的に繰り返している(例えば、200msecに1回)。
【0023】
車載通信装置は、図4のフローチャートに示した動作を行っている。すなわち、ステップS201で、受信部は、GPS衛星からの電波を受信して位置情報を取得する。
ステップS202で、走行センサは、車両の進行方向と速さを取得する。
ステップS203で、送信部は、車両の位置、進行方向、速さを基地局サーバに送信する。
ステップS204で、受信部は、基地局サーバから、自車の進行方向に歩行者が存在するかどうかに関する情報の受信を試みる。
ステップS205で、制御部は、進行方向に歩行者がいるかどうかを判断する。前ステップで歩行者の存在情報を受信できていれば、進行方向に歩行者がいると判断し(S205=Y)、S206に進む。一方、歩行者の存在情報を受信できていなければ、進行方向に歩行者がいないと判断し(S205=N)、処理を終了する。
ステップS206では、制御部は、歩行者との距離、自車の速度などに応じて最適な後続処理を行うように車両を制御する。車両は、以上の一連の動作を定期的に繰り返している(例えば、200msecに1回)。車両の制御部が情報受信後に行う後続処理としては、例えば、車両と歩行車の距離が比較的開いている場合は、車両の運転者に対して音声メッセージを発して歩行者がいる旨を知らせる。また、距離が接近している、車両の移動速度が速いなどの場合は、緊急にブレーキをかけることもできる。
【0024】
基地局サーバは、図5のフローチャートに示した動作を行っている。すなわち、ステップS301で、受信部は、携帯電話から送信された位置と加速度を受信する。
ステップS302で、制御部は、前ステップで受信した加速度を歩行判断部に渡し、携帯電話が実際に歩行者によって携帯されているかどうかの判断を要求する。これを受けた歩行判断部は、加速度パターンDBに格納されたデータと比較して判断を行い、制御部に判断結果を返す。実際に携帯されていると判断すればS303に進み、携帯されていないと判断すればS304に直接進む。
ステップS303で、制御部は、携帯電話の位置に歩行者がいるものとして、その位置を地図上にマッピングする。
ステップS304で、受信部は、車両の車載通信装置から送信された情報を受信する。
ステップS305で、制御部は、車両の位置を地図上にマッピングする。
【0025】
ステップS306で、制御部は、車両ごとに、進行方向に歩行者が存在するかどうかの判断を開始する。
ステップS307で、制御部は、衝突判断部に対し、車両の進行方向に歩行者がいるかどうかの判断を要求する。これを受けた衝突判断部は、歩行者の位置、判断対象となる車両の位置、進行方向および速さに基づいて判断を行い、結果を制御部に返す。結果がYESであればS308に進み、NOであれば直接S309に進む。
ステップS308で、送信部は、車両に歩行者の存在情報を送信する。サーバは、マッピングされた全ての車両についてこの処理を繰り返す。全ての車両について判断が終了すれば(S309=Y)処理を終了し、未判断の車両が残っていれば(S309=N)次の車両を選んで処理を続行する。
【0026】
次に、図1の全体図を参照しつつ、歩行者検知システムが行う処理の実例を説明する。図中の下側の車線で、携帯電話Aは、持ち主の歩行者が横断歩道を渡るのに伴って路上を移動している。このとき、図3のフローのS101では、携帯電話の位置として、下側の車線の横断歩道上の座標を取得できる。そして、S102では、持ち主が歩行するのに伴って携帯電話に働く加速度を取得できる。S103で位置と加速度がサーバに送信される。
【0027】
一方、車両Aは、図中の下側の車線を右から左へ走行している。このとき、図4のフローにおいて、車両の位置(下側の車線の座標)、進行方向(右から左)、速さ(30km/h)を取得する(S201、S202)。S203でこれらの情報がサーバに送信される。そしてS204で歩行者の存在情報の受信を試みると、この例では、後述するように基地局サーバから「車両Aの進行方向に歩行者が存在する」という情報が送信されている(図5のS308)ので、そのような判断結果を受信できる。したがって、S205の結果はYESとなり、S206に進み、後続処理が行われる。ここでの後続処理としては、車両Aが比較的低速であり、歩行者との距離も開いていることから、運転者に対し音声メッセージを発して注意を促すことにとどめる。
【0028】
このときの基地局サーバは、図5のフローのS301で歩行者の情報を受信し、S302での判断に移る。携帯電話Aの場合、持ち主が歩行中であることから、放置されている状態では生じ得ない大きさの加速度が働いている。この加速度の値を、加速度パターンDBに格納されている所定の値(閾値)と比較し、閾値以上であることから「歩行者によって実際に携帯されている」と判断することができる。続いて、S302=Yなので、携帯電話Aの位置を歩行者の位置として、マッピングする(S303)。また、S304で車両の情報を受信し、S305で位置等をマッピングする。マッピングの結果は図1の下側の車線のようになる。そして、S306〜S309で車両Aについての判断を行う。この例では進行方向に歩行者がいるので、通知が必要と判断し(S307=Y)、歩行者の位
置を車両Aに送信する(S308)。
【0029】
続いて、図1の上側の車線を例に挙げて説明する。携帯電話Bは、歩行者が落としたために、上側の車線の路上に放置されている。このとき、図3のフローのS101では、携帯電話の位置として、上側の車線の車道上の座標を取得できる。そして、S102では、携帯電話Bは放置されているため、加速度はほとんど働いていない。S103で位置と加速度がサーバに送信される。
【0030】
一方、車両Bは、上側の車線を左から右へ走行しており、図4のフローチャートに従って処理を行う。すなわち、自車の位置として上側の車線に相当する位置情報を取得し(S201)、走行センサにより進行方向(左から右)と速さ(50km/h)を得る(S202)。そしてこれらの情報を基地局サーバに送信する(S203)。次に基地局サーバから歩行者の存在情報の取得を試みるが(S204)、この例では歩行者は存在しないと判断されているので情報は送信されておらず、S205はNOとなり、処理を終了する。
【0031】
基地局サーバは、図5のフローチャートに従って処理を行う。すなわち、携帯電話Bから情報を受信する(S301)。そして実際に携帯されているかの判断を行うが、上述したように携帯電話Bには微小な加速度しか働いていない。そのため歩行判断部は加速度が閾値以下であることから、実際には携帯されていないと判断する。そのため地図上への携帯電話Bのマッピングは行われない。続いて、S304とS305で車両Bの位置等が取得されマッピングされるものの、車両Bについての衝突判断部の判断においては、進行方向に歩行者はいないものと判断され(S307=N)、歩行者の存在情報は送信されずに処理を終了する。
【0032】
なお、加速度パターンDBに格納されるデータと、それに基づく実際に携帯されているかどうかの判断においては、上記のように、瞬間的な加速度の大きさを用いる以外の方法も考えられる。例えば、携帯電話の歩行センサは一定の時間の加速度を継続的に記録し、その時間中に閾値を超えるような加速度が複数回働けば、歩行者に所持されていると判断しても良い。これにより、大型車の通過による一時的な振動や突風の影響を排除することができる。あるいは、加速度が働いた方向も記録し、歩行に相当するような上下方向の動きがあれば歩行者に所持されていると判断しても良い。これにより、判断の精度を向上させることができる。
【0033】
また、マッピングを行う際には、車両の位置と進行方向、速さに基づいて近い将来の車両の位置を予測し、その位置と歩行者の位置が重なるか接近する場合に情報送信するようにしても良い。
【0034】
本実施形態のような歩行者検知システムによれば、基地局サーバは、携帯電話が実際に歩行者に携帯されているかどうかを判断した上で、携帯されていると判断したときだけ車両に歩行者の存在情報を通知する。これにより、故意に交差点に携帯電話を投げ入れられた時や、歩行者が携帯電話を落とした場合に、車両に歩行者がいるという誤った情報が通知されることがなくなり、スムーズな車両運行と安全運転の実現が可能になる。
【0035】
<実施形態2>
本実施形態では、上記の実施形態1に加えて、携帯電話が操作情報を取得し、基地局サーバがその操作情報も用いて判断を行う場合について説明する。本実施形態の携帯電話は、歩行者が自機に何らかの操作を行っている場合は、その内容を操作情報として基地局サーバに送信する点を特徴とする。ここで、操作情報とは、歩行者が携帯電話を実際に所持していないとできないような行動を指す。例えば、歩行者が音声通話をしていることや、メール作成等のためのボタン操作、その他物理的な操作などである。携帯電話の送信部は
、具体的な操作内容を送信しても良いし、単に「何かの操作が行われている」という情報を送信しても良い。
【0036】
基地局サーバは、上記の操作情報を受信すると、歩行センサが取得した加速度情報に加えて、実際に携帯されているかどうかの判断材料として用いることができる。そして、携帯電話に働く加速度が所定の値(閾値)より小さい場合であっても、携帯電話に対して何らかの操作が行われていることが分かれば、携帯電話が歩行者によって実際に携帯されていると判断する。これにより、加速度のみによる判断に比べて、判断の精度を向上させることができる。また、操作が行われているかどうかの判断は、例えば通話中かどうか、あるいはボタンが押されているかどうか、など、明確に行うことができる場合が多いので、基地局サーバの判断に要する時間を短縮することができる。
【0037】
<実施形態3>
本実施形態では、上記の実施形態1で基地局サーバから車両に歩行者の存在情報が通知される際に、同時に携帯電話にも車両の接近情報が通知される例について説明する。本実施形態の基地局サーバは、車両の進行方向に歩行者が存在すると判断した場合、車両に加えて歩行者が携帯している携帯電話に対しても、情報を送信する。これにより、携帯電話は適切な後続処理を行って歩行者の注意を喚起し、衝突事故を回避させることが可能になる。後続処理とは、例えば、携帯電話のスピーカから音声メッセージを出力する、バイブレータ機能を用いて振動させる、LED等により発光する、あるいはそれらを組合せてアラートを発するような動作である。これにより、歩行者の側でも車両の接近を早期に知ることができるので、回避動作を取る時間が生じ、衝突事故が起こる確率を下げることができる。
【0038】
以上の実施形態の記載では、判断手段は基地局サーバが備えるものとして説明を行った。しかし、実際はこれに限る必要はない。例えば、判断手段を携帯電話等の携帯通信装置の側に組み込んで処理を行うことも可能である。この場合の携帯電話での処理は、まず加速度センサで加速度情報を取得し、次いで判断手段で実際に歩行者に携帯されているかどうかの判断を行い、携帯されている場合だけ歩行者の位置情報を基地局サーバに送信する。そして基地局サーバは車両と歩行者の位置関係を判断する。これにより、実際に携帯されていない場合は歩行者の情報が送信されず、通信トラフィックが削減される。また基地局サーバが実際の携帯の有無を判断しなくて済むため、演算の負荷が軽減される。あるいは、基地局サーバを設けず、携帯通信装置と車両が直接通信する構成も考えられる。このような構成において、判断手段を携帯通信装置側が備えた場合は、携帯通信装置が実際の携帯の有無を判断し、携帯されている場合に位置情報を車両に送信する。車両は自車と歩行者との位置関係に基づいて衝突危険性を判断し、適切な後続処理を行う。この場合は、車両側の判断時間を短縮できるというメリットがある。また、判断手段を車両側が備えた場合は、携帯通信装置から受信した加速度に基づいて実際の携帯の有無を判断し、携帯されている場合は歩行者の位置情報を利用して衝突危険性を判断する。この場合は、携帯通信装置の構成を単純化できるというメリットがある。
【0039】
また、以上の記載では、携帯通信装置として携帯電話を例にとって説明したが、実際はこれに限らない。歩行者とともに移動する、通信機能とGPSと加速度センサを備える装置であれば何でも用いることができる。例えば、歩数計には通常加速度センサが備えられているので、これに通信機能とGPSを持たせても良い。また、子供に携帯させて保護者に現在位置を通知するGPS装置や、車いすに、必要な機構を備えつけて用いることもできる。
【符号の説明】
【0040】
2 携帯通信装置
24 歩行センサ
3 基地局サーバ
4 車載通信装置
44 走行センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自機の位置と、自機に働く加速度とを取得する携帯通信装置と、
車両に搭載され、前記車両の位置、進行方向および速さを取得する車載通信装置と、
前記携帯通信装置に働く加速度に基づいて、前記携帯通信装置が実際に歩行者によって携帯されているかどうかを判断し、携帯されていると判断した場合は、前記携帯通信装置の位置と、前記車両の位置、進行方向および速さとに基づいて、前記車両の進行方向に歩行者が存在するかどうかを判断し、存在すると判断した場合、前記車載通信装置に歩行者の存在情報を通知する判断手段と、
を有する歩行者検知システム。
【請求項2】
前記携帯通信装置は、自機に何らかの操作が行われているかどうかを示す操作情報をさらに取得し、
前記判断手段は、前記携帯通信装置に働く加速度に基づく判断においては前記携帯通信装置が実際に携帯されているとは判断できない場合であっても、前記操作情報が何らかの操作が行われていることを示すものであれば、前記携帯通信装置が歩行者によって実際に携帯されていると判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行者検知システム。
【請求項3】
前記判断手段は、車両の進行方向に歩行者が存在すると判断した場合、前記携帯通信装置に車両が接近しているという情報を通知する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の歩行者検知システム。
【請求項4】
前記携帯通信装置は、前記加速度の取得を定期的に行うものであり、
前記判断手段は、所定の時間以内に行った判断結果を記憶しており、現在から所定の時間以内に前記携帯通信装置が歩行者によって実際に携帯されていると判断したことがある場合は、最新の情報に基づく判断結果にかかわらず、歩行者の存在情報を前記車載通信装置に送信する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の歩行者検知システム。
【請求項5】
前記判断手段は、前記携帯通信装置および前記車載通信装置と情報の送受信を行う基地局サーバが備えるものである
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の歩行者検知システム。
【請求項6】
前記携帯通信装置は、携帯電話端末である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の歩行者検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−287161(P2010−287161A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142284(P2009−142284)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】