説明

歩行者用エアバッグ装置

【課題】重量増加や大型化を招くことなく、フロントピラーの前面側に好適に膨張したエアバッグを配置可能な歩行者用エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】歩行者用エアバッグ装置M1では、作動時に膨張用ガスを吐出するインフレーター25と、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて膨張して、フロントピラー5の前面5a側を覆うエアバッグ27と、を備える。エアバッグ27は、フロントピラーの前方側で、かつ、フードパネルの左右方向に沿った車外側に位置するフロントフェンダーパネル12に覆われた部位に、折り畳まれて収納される。フロントフェンダーパネルは、フロントピラーに接近した後縁12a側に位置して、折り畳まれたエアバッグの上方を覆うように配置されるとともに、フロントピラーの前面側を覆い可能にエアバッグを突出させるように、膨張時のエアバッグに押された際に変形して開くカバー部16、を配設させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動時、膨張用ガスを流入させて膨張し、フロントピラーの前面側を覆うエアバッグを備えた歩行者用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者用エアバッグ装置では、フードパネルの後縁下方に、折り畳んだエアバッグを収納し、作動時、エアバッグに膨張用ガスを流入させ、フードパネルの後縁を押し上げつつ、エアバッグを、フードパネルの後縁の下方側から上昇させ、そして、フロントピラーの前面側に配置させるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−264146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の歩行者用エアバッグ装置では、膨張するエアバッグ自体が、フードパネルの後縁側を押し上げて、フードパネルの後縁とその下方のカウルとの間に、エアバッグの突出用開口を形成していた。このフードパネルは、通常、撓み易い薄い板金製のアウタパネルとアウタパネルより剛性の高いインナパネルとを備えた二枚構造であり、さらに、フードパネルの後縁側には、フードパネルを開け閉めする際のヒンジ部が配設され、膨張するエアバッグは、そのヒンジ部自体若しくはその周囲のインナパネル等を塑性変形させて、フードパネルの後縁を押し上げることとなっていた。しかしながら、ヒンジ部やその周囲の構造は、フードパネルの安定した開け閉めを確保できるように、剛性を高くしており、そのため、ヒンジ部付近をエアバッグによって変形させるためには、エアバッグの内圧を高くする必要が生じ、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターとして、高い出力のものを使用する必要が生じ、インフレーターを強固に保持する等の構造を含めて、エアバッグ装置の重量増加や大型化を招いていた。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、重量増加や大型化を招くことなく、フロントピラーの前面側に好適に膨張したエアバッグを配置可能な歩行者用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る歩行者用エアバッグ装置では、作動時に膨張用ガスを吐出するインフレーターと、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて膨張して、フロントピラーの前面側を覆うエアバッグと、を備えた歩行者用エアバッグ装置であって、
フロントピラーの前方側で、かつ、フードパネルの左右方向に沿った車外側に位置するフロントフェンダーパネルに覆われた部位に、エアバッグが折り畳まれて収納され、
フロントフェンダーパネルが、フロントピラーに接近した後縁側に位置して、折り畳まれたエアバッグの上方を覆うように配置されるとともに、フロントピラーの前面側を覆い可能にエアバッグを突出させるように、膨張時のエアバッグに押された際に変形して開くカバー部、を配設させて、構成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る歩行者用エアバッグ装置では、作動時、インフレーターから膨張用ガスが吐出されて、エアバッグに膨張ガスが流入すれば、エアバッグが膨張する。その際、エアバッグは、フェンダーパネルの後縁側のカバー部を、変形させつつ押し開いて、フロントピラーの前面側を覆うこととなる。そして、フェンダーパネルは、アウタパネルとインナパネルとからなる二枚構造として開閉操作するようなフードパネルと相違して、車両のフレーム側に対して、静止させて取り付けられるものであって、通常、一枚状の薄い板金等から形成されて、塑性変形や弾性変形を伴って、容易に撓むように変形する。そのため、エアバッグの内圧は、フードパネルを持ち上げるような高いものでなく、歩行者をフロントピラーから保護できるクッション作用を確保できる程度の低い内圧でよく、使用するインフレーターとして、コンパクトで小出力のものを使用でき、その保持強度を低減できる。
【0007】
したがって、本発明に係る歩行者用エアバッグ装置では、重量増加や大型化を招くことなく、フロントピラーの前面側に、好適に、膨張したエアバッグを配置させることができる。
【0008】
そして、フロントフェンダーパネルが、カバー部とカバー部以外の一般部とを備えて構成されて、カバー部と一般部とが、それぞれ、車両のフレーム側に取り付けられる取付部を備えていれば、カバー部の取付部は、一般部の取付部より、フレーム側から分離され易い取付強度として、構成することが望ましい。
【0009】
このような構成では、カバー部は、エアバッグ装置の作動前の状態において、カバー部の取付部をフレーム側に連結させており、ガタツキ等を生じさせずに配設され、そして、膨張するエアバッグに押された際、カバー部の取付部をフレーム側から分離させて、容易に、開くこととなる。すなわち、このような構成では、エアバッグの膨張時の開き易さを阻害することなく、カバー部の不用意な開きやガタツキを抑制することができる。
【0010】
この場合、カバー部の取付部を、フレーム側への取付座に対して、ボルトの締結により取り付ける構造として、取付部若しくは取付座の一方に、ボルトを挿通させる挿通孔を設けるとともに、挿通孔の周縁に、エアバッグの押圧によるカバー部の開き時に、ボルトを挿通孔から相対的に離脱可能に逃がして、取付部と取付座との連結を解除する逃がし用開口を、設けて構成することが望ましい。
【0011】
このような構成では、単に、ボルトの締結により、カバー部を安定してフレーム側の取付座に取り付けることができる。そして、カバー部の開き時には、ボルトを、逃がし用開口を経て、挿通孔から相対的に外すこととなって、ボルトの外れる方向を一定にできて、カバー部の開きの軌跡を安定させることができ、エアバッグを円滑に展開膨張させてフロントピラーの前面側に配置させることができる。
【0012】
また、カバー部が、開き時のフレーム側からの離隔距離を規制可能に、フレーム側に固定された連結材を連結させて、配設されていれば、カバー部の開きを抑制できて、カバー部の飛散や、カバー部の縁の歩行者との干渉を防止することが可能となる。さらに、このような構成では、連結材によるカバー部の離隔距離の規制により、開いたカバー部が、その裏面側で、エアバッグをフロントピラー側に押さえることも可能となり、エアバッグのフロントピラーの前面側からの外れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の歩行者用エアバッグ装置(以下、単にエアバッグ装置とする)M1は、図1に示すように、車両Vのフロントガラス4の左右のフロントピラー5の部位の前方側に搭載されている。
【0014】
なお、本明細書の前後・上下・左右の方向は、車両Vの直進時における車両Vの前後・上下・左右の各方向に対応するものである。
【0015】
また、各実施形態では、車両Vの右側のフロントピラー5の前面5a側を覆うエアバッグ27を備えたエアバッグ装置について説明するが、左側のフロントピラー5の前面5a側を覆うエアバッグを備えた各エアバッグ装置は、右側の各エアバッグ装置と左右対称形としているだけであり、左側のフロントピラー5側の各エアバッグ装置に関しては、説明を省略する。
【0016】
そして、エアバッグ装置M1は、フードパネル3の左右方向の車外側方向ODに配置されるフロントフェンダーパネル(以下、単にフェンダーパネルとする)12の後縁12a側に配設され、車両Vのフロントピラー5の前面5a側を覆い可能なエアバッグ27、を備えて構成されている。エアバッグ装置M1は、図2に示すように、エアバッグ27、作動時にエアバッグ27へ膨張用ガスを供給するインフレーター25、インフレーター25とエアバッグ27とを収納するケース24、及び、フェンダーパネル12に設けられて、膨張するエアバッグ27に押し開かれるカバー部16、を備えて構成されている。
【0017】
ケース24は、板金製の上方を開口させた箱形状として、インフレーター25と折り畳んだエアバッグ27とを収納している。ケース24には、収納したインフレーター25に雨水が侵入しないように、エアバッグ27の膨張時には容易に開く蓋材28が配設されている。
【0018】
インフレーター25は、ケース24とエアバッグ27とを共締めして車両Vの構造材となるフレーム7側、第1実施形態の場合には、フードリッジリインホース8側、にナット26止めする複数のボルト25aを備えている。そして、このインフレーター25は、所定のエアバッグ作動回路からの作動信号を入力させて、膨張用ガスを図示しないガス吐出口から吐出させて、エアバッグ27に供給することとなる。なお、エアバッグ作動回路は、車両Vのフロントバンパ1に配置されて歩行者との衝突を検知可能なセンサ2(図1参照)からの信号を入力した際、インフレーター25を作動させることとなる。そして、このインフレーター25は、供給する膨張用ガスによって膨張するエアバッグ27が、フードパネル3を持ち上げなくとも、歩行者をフロントピラー5から保護できるクッション作用を確保できればよく、極力、コンパクトで小出力のものが使用されている。
【0019】
エアバッグ27は、インフレーター25からの膨張用ガスを流入させた膨張完了時、ケース24から上方に突出して、蓋材28とカバー部16とを押し開き、フロントガラス4の左右方向の車外側方向ODに配置されたフロントピラー5の前面5aを覆うように、上下方向に延びる略直方体形状の袋状としている。
【0020】
フェンダーパネル12は、図1〜3に示すように、第1実施形態の場合、一枚状の板金製として構成され、フロントピラー5に近接してフロントピラー5の前方側に位置し、折り畳んでエアバッグ27を収納したケース24の上方を覆うように配置されるカバー部16と、カバー部16以外の一般部13と、を備えて構成されている。カバー部16は、フェンダーパネル12のフロントガラス4の近傍の部位(後縁部)16aを頂点として、後縁16aから斜め下方向に延びるようなテーパ状に広がる部位に、頂点(後縁部)16aに対向する底辺を設けたような略三角板形状として、配設され、その底辺部位を、開き時のヒンジ部17とするように、薄肉に形成している。
【0021】
そして、このカバー部16には、図3に示すように、フードパネル3側の内縁16b側に、フードリッジリインホース8に設けられた取付座10に取付固定される取付部18が、形成されている。取付部18は、下方に突設されたボルト19を備えて構成されている。取付座10は、ボルト19を挿通させる挿通孔10aを備えて、ボルト19を挿通孔10aに挿通させて、ボルト19にナット20を締結すれば、ボルト19を取付座10に締結して、カバー部16を車両Vのフレーム7側に固定することができる。
【0022】
但し、第1実施形態の場合、取付座10の挿通孔10aの周縁には、フードパネル3側に開口する逃がし用開口10bが配設されて、挿通孔10aに挿入させてナット20止めしたボルト19を、逃がし用開口10bを利用し、ボルト19の軸直交方向のフードパネル3側(エンジンルームER側)に移動させて、取付座10から離脱可能に設定されている。なお、このようなボルト19をフードパネル3側に押圧する押圧力は、第1実施形態の場合、膨張するエアバッグ27のカバー部16を押し開く押圧力を、利用している。
【0023】
フェンダーパネル12の一般部13にも、ボルト19が配設されて構成される複数の取付部14が、配設され、各取付部14は、車両のフレーム7側のフードリッジリインホース8等に設けられた取付座9に、取付固定されている。取付座9は、一般部13の外周縁付近等に設けられた複数箇所の取付部14に対応して、配設され、ボルト19を挿通させる挿通孔9aを備えて構成されている。但し、一般部13に対応した取付座9は、カバー部16に対応した取付座10と相違して、ボルト19を離脱させるような逃がし用開口10bを備えていない。そのため、各取付部14のボルト19を取付座9の挿通孔9aに挿入させて、ボルト19にナット20を締結すれば、各取付部14は、取付座9から外れる虞れはなく、安定して、フレーム7側に取付固定されることとなる。
【0024】
さらに、第1実施形態の場合、カバー部16の裏面16cには、図2に示すように、フレーム7のフードリッジリインホース8側に固定された可撓性を有した連結材22が連結されている。この連結材22は、膨張するエアバッグ27に押されて開くカバー部16のフードリッジリインホース8側からの離隔距離を規制するものである。そして、第1実施形態の場合、連結材22は、フードリッジリインホース8側の元部22aからカバー部16側の先端部22bまでの長さ寸法Lを、開いたカバー部16の後縁16a側が膨張したエアバッグ27の下部27a側をフロントピラー5の前面5a側に押し付け可能な長さ、として設定されている。
【0025】
そして、この第1実施形態のエアバッグ装置M1では、車両Vに搭載された後、エアバッグ作動回路からの信号によって、インフレーター25が作動されれば、インフレーター25の図示しないガス吐出口から膨張用ガスが吐出され、エアバッグ27が、膨張用ガスにより、図1の二点鎖線や図3の二点鎖線に示すように膨張し、その際、図2に示すように、蓋材28を押し開いてケース24から突出するとともに、ヒンジ部17を塑性変形させて、フェンダーパネル12の後縁12aのカバー部16を撓ませつつ押し開く。そして、エアバッグ27は、カバー部16の後縁16aとフロントピラー5の前面5aとの間で拡大した突出用開口POから、上方へ突出して、フロントピラー5の前面5a側を覆うこととなる。この時、フェンダーパネル12は、アウタパネルとインナパネルとからなる二枚構造として開閉操作するようなフードパネル3と相違して、車両のフレーム7側に対して、静止させて取り付けられるものであって、一枚状の薄い板金から形成されて、塑性変形を伴って、容易に撓むように変形する。そのため、エアバッグ27の内圧は、フードパネル3を持ち上げるような高いものでなく、歩行者をフロントピラー5から保護できるクッション作用を確保できる程度の低い内圧でよく、使用するインフレーター25として、コンパクトで小出力のものを使用でき、その保持強度も低減できる。
【0026】
したがって、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、重量増加や大型化を招くことなく、フロントピラー5の前面5a側に、好適に、膨張したエアバッグ27を配置させることができる。
【0027】
そして、第1実施形態では、フェンダーパネル12が、図3に示すように、カバー部16とカバー部16以外の一般部13とを備えて構成されて、カバー部16と一般部13とが、それぞれ、車両のフレーム7側の取付座10,9に取り付けられる取付部18,14を備えて構成されている。そして、エアバッグ27の膨張時、カバー部16の取付部18が、挿通孔10aの周縁の逃がし用開口10bを経て、ボルト19を挿通孔10aから外して、取付座10から離脱可能として、取付座9から離脱不能に取り付けられた一般部13の取付部14に比べて、フレーム7側から分離され易い取付強度として、構成されている。そのため、第1実施形態では、カバー部16が、エアバッグ装置M1の作動前の状態において、カバー部16の取付部18をフレーム7のフードリッジリインホース8側に連結させており、ガタツキ等を生じさせずに配設され、そして、膨張するエアバッグ27に押された際、カバー部16の取付部18をフレーム7側から分離させて、容易に、開くこととなる。すなわち、第1実施形態では、エアバッグ27の膨張時の開き易さを阻害することなく、カバー部16の不用意な開きやガタツキを抑制することができる。
【0028】
特に、第1実施形態では、カバー部16の取付部18を、フレーム7側への取付座10に対して、ナット20を利用したボルト19の締結により取り付ける構造として、取付座10に、ボルト19を挿通させる挿通孔10aを設け、さらに、挿通孔10aの周縁に、エアバッグ27の押圧によるカバー部16の開き時に、ボルト19を挿通孔10aから離脱可能に逃がして、取付部18と取付座10との連結を解除する逃がし用開口10bを、設けている。そのため、第2実施形態では、単に、ボルト19の締結により、カバー部16を安定してフレーム7のフードリッジリインホース8側の取付座10に取り付けることができる。そして、カバー部16の開き時には、ボルト19を、逃がし用開口10bを経て、挿通孔10aから外すこととなって、ボルト19の外れる方向を、挿通孔10aの周縁における逃がし用開口10bの開口側、実施形態では、エンジンルームER側に一定にできて、カバー部16の開きの軌跡を安定させることができ、エアバッグ27を円滑に展開膨張させてフロントピラー5の前面5a側に配置させることができる。
【0029】
また、第1実施形態では、カバー部16が、開き時のフレーム7のフードリッジリインホース8側からの離隔距離を規制可能に、フレーム7側に固定された連結材22を連結させて、配設されている。そのため、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、カバー部16の開きを抑制できて、カバー部16の飛散や、カバー部16の後縁16aや内縁16bの歩行者との干渉を防止することが可能となる。さらに、第1実施形態では、連結材22が、開いたカバー部16における後縁16aの裏面16c側で、エアバッグ27をフロントピラー5側に押え可能に、フレーム7側からのカバー部16の離隔距離を規制する長さ寸法Lを設定しており、そのため、第1実施形態では、連結材22によるカバー部16の開き規制により、エアバッグ27が、フロントピラー5の前面5a側からの外れを防止することができ、エアバッグ27が、歩行者を受け止めても、フロントピラー5の前面5a側からの外れを防止でき、安定して、歩行者をフロントピラー5から保護することができる。
【0030】
なお、フェンダーパネル12に設けるカバー部16の形状としては、第1実施形態では、略三角板状としてものを例示してが、図4〜7に示す第2実施形態のエアバッグ装置M2のように、カバー部16Aが、前後方向に沿うヒンジ部17Aにより、少なくとも、フロントピラー5近傍において、車外側方向ODに開くように、設定してもよい。第2実施形態のエアバッグ装置M2は、第1実施形態と同様なケース24、インフレーター25、エアバッグ27、及び、蓋材28を備えて構成されており、それらの説明は省略する。
【0031】
そして、この第2実施形態のフェンダーパネル12Aも、一枚状の板金製として構成され、フロントピラー5に近接してフロントピラー5の前方側に位置し、折り畳んでエアバッグ27を収納したケース24の上方を覆うように配置されるカバー部16Aと、カバー部16A以外の一般部13Aと、を備えて構成されている。カバー部16Aは、図4,6に示すように、フードパネル3側の内縁16b側から車外側方向ODの若干下方側に落ち込むエリアの略長方形板状として、フロントピラー5におけるフロントガラス4の側方から下方に下がったエリアまでを後縁16aとして、後縁16aの下端16abから前方に延びるように、カバー部16Aの開き時の薄肉のヒンジ部17が形成されている。そして、フェンダーパネル12Aのヒンジ部17Aの下方のエリアが、一般部13Aとして構成されている。
【0032】
このカバー部16Aには、図5,6に示すように、フードパネル3側の内縁16b側の前後二箇所に、フードリッジリインホース8に設けられた取付座10A,9Aに取付固定される取付部18Aが、形成されている。取付部18Aには、ボルト19を挿通可能な挿通孔18aが形成されている。
【0033】
一方、フレーム7のフードリッジリインホース8側の取付座9A,10Aには、ボルト19を挿通可能な挿通孔9a,10aが形成されている。そして、後部側の取付座10Aの挿通孔10aには、ボルト19を逃がし可能な逃がし用開口10bが、配設されている(図5,7参照)。なお、第2実施形態の取付座10Aでも、第1実施形態と同様に、挿通孔10aに挿入させてナット20止めしたボルト19を、逃がし用開口10bを利用し、ボルト19の軸直交方向のフードパネル3側(エンジンルームER側)に移動させて、取付座10Aから離脱可能とするように、逃がし用開口10bが、挿通孔10aの周縁におけるエンジンルームER側に開口されている。勿論、第2実施形態でも、このようなボルト19をフードパネル3側に押圧する押圧力は、膨張するエアバッグ27のカバー部16を押し開く押圧力を、利用している。
【0034】
なお、第2実施形態の場合には、各取付部18や各取付座9A,10Aが、二本ずつのボルト19を挿通させるように構成されている。
【0035】
また、一般部13Aのフレーム7側への取付部位には、取付部18Aや第1実施形態の取付部14が配設されて、それらの取付部18A,14に対応して、フレーム7側には、取付座9A,9が配設されている。
【0036】
さらに、第2実施形態の場合にも、カバー部16Aの裏面16cには、フレーム7のフードリッジリインホース8側に固定された可撓性を有した連結材22Aが連結されている。この連結材22Aも、第1実施形態と同様に、膨張するエアバッグ27に押されて開くカバー部16Aのフードリッジリインホース8側からの離隔距離を規制するものであり、さらに、フードリッジリインホース8側の元部22aからカバー部16A側の先端部22bまでの長さ寸法Lを、開いたカバー部16Aの後縁16a側が膨張したエアバッグ27の下部27a側をフロントピラー5の前面5a側の押し付け可能な長さ、として設定されている。なお、第2実施形態では、先端部22bが、挿通孔18aに挿通されてナット20止めされるボルト19を利用して、取付座10Aに対応した後部側の取付部18Abに固定されている。
【0037】
この第2実施形態のエアバッグ装置M2でも、作動時、インフレーター25から膨張用ガスが吐出されて、エアバッグ27に膨張ガスが流入すれば、エアバッグ27が膨張する。その際、エアバッグ27は、フェンダーパネル12Aの後縁12a側のカバー部16Aを、ヒンジ部17Aを変形させつつ押し開いて、フロントピラー5の前面5a側を覆うこととなり、その際、フェンダーパネル12Aが、第1実施形態と同様に、容易に撓むように変形するため、エアバッグ27の内圧を、フードパネル3を持ち上げるような高いものでなく、歩行者をフロントピラー5から保護できるクッション作用を確保できる程度に低くできて、使用するインフレーター25として、コンパクトで小出力のものを使用でき、その保持強度も低減できる。
【0038】
したがって、第2実施形態のエアバッグ装置M2でも、重量増加や大型化を招くことなく、フロントピラー5の前面5a側に、好適に、膨張したエアバッグを配置させることができる。
【0039】
そして、第2実施形態でも、ボルト19の締結により、カバー部16Aを安定してフレーム7側の取付座10Aに取り付けることができる。そして、カバー部16Aの開き時には、ボルト19を、逃がし用開口10bを経て、挿通孔10aから外すこととなり、ボルト19の外れる方向をエンジンルームER側一定にできて、カバー部16の開きの軌跡を安定させることができ、エアバッグ27を円滑に展開膨張させてフロントピラー5の前面5a側に配置させることができる。
【0040】
勿論、この第2実施形態でも、エアバッグ装置M2の作動前の状態において、カバー部16Aの取付部18Ab,18Aが、ボルト19とナット20とを利用して、フレーム7側の取付座10A,9Aに取り付けられており、ガタツキ等を生じさせずに配設され、そして、膨張するエアバッグ27に押された際、取付部18Abをフレーム7側から分離させて、容易に、開くこととなる。そのため、第2実施形態でも、エアバッグ27の膨張時の開き易さを阻害することなく、カバー部16Aの不用意な開きやガタツキを抑制することができる。
【0041】
なお、第2実施形態では、前部側の取付座9Aには、挿通孔9aに、逃がし用開口10bが配設されていないことから、カバー部16Aの後縁16a側を大きく上方に移動可能であるものの、カバー部16の内縁16bでは、後部側より前部側を小さな上方移動となるように抑制されている。
【0042】
また、第2実施形態でも、カバー部16Aが、開き時のフレーム7側からの離隔距離を規制可能に、フレーム7側に固定された連結材22Aを連結させて、配設されており、カバー部16Aの開きを抑制できて、カバー部16Aの飛散や、カバー部16Aの後縁16aや内縁16bの歩行者との干渉を防止することが可能となり、さらに、開いたカバー部16Aが、その後縁16a側の裏面16cで、エアバッグ27をフロントピラー5側に押さえることも可能となり、エアバッグ27のフロントピラー5の前面5a側からの外れを防止することができる。
【0043】
なお、第1,2実施形態では、取付座10,10A側に、ボルト19を挿通させる挿通孔10aと逃がし用開口10bとを設けたが、カバー部16,16A側の取付部18,18Ab側に、カバー部16,16Aをフレーム7のフードリッジリインホース8側に取り付けるボルト19の挿通孔を設けるように設定し、その挿通孔の周縁に、ボルト19を逃がし可能な逃がし用開口を設けてもよい。この場合には、第1,2実施形態のボルト19が開き時のカバー部16,16Aと一体的に移動する場合と相違して、ボルト19がフレーム7側に残って、カバー部16,16A側の挿通孔を有した取付部18,18Ab側が、移動することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態の歩行者用エアバッグ装置の車両への搭載状態を説明する斜視図である。
【図2】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時を説明するフェンダーパネルのカバー部付近の前後方向に沿った概略縦断面図である。
【図3】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時を説明する概略斜視図である。
【図4】第2実施形態の歩行者用エアバッグ装置の車両への搭載状態を説明する斜視図である。
【図5】第2実施形態のエアバッグ装置の作動時を説明するフェンダーパネルのカバー部付近の前後方向に沿った概略縦断面図である。
【図6】第2実施形態のエアバッグ装置の作動時を説明する概略斜視図である。
【図7】第2実施形態のカバー部の開き状態を説明する車両の左右方向に沿った概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0045】
3…フードパネル、
5…フロントピラー、
5a…(フロントピラーの)前面、
7…フレーム、
9,9A,10,10A…取付座、
9a,10a…挿通孔、
10b…逃がし用開口、
12,12A…フェンダーパネル、
13,13A…一般部、
14,18,18A…取付部、
16,16A…カバー部、
16a…(カバー部の)後縁、
18a…挿通孔、
19…ボルト、
22,22A…連結材、
25…インフレーター、
27…エアバッグ、
V…車両、
OD…車外側方向、
M1,M2…歩行者用エアバッグ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動時に膨張用ガスを吐出するインフレーターと、該インフレーターからの膨張用ガスを流入させて膨張して、フロントピラーの前面側を覆うエアバッグと、を備えた歩行者用エアバッグ装置であって、
前記フロントピラーの前方側で、かつ、前記フードパネルの左右方向に沿った車外側に位置するフロントフェンダパネルに覆われた部位に、前記エアバッグが折り畳まれて収納され、
前記フロントフェンダパネルが、
前記フロントピラーに接近した後縁側に位置して、折り畳まれた前記エアバッグの上方を覆うように配置されるとともに、前記フロントピラーの前面側を覆い可能に前記エアバッグを突出させるように、膨張時の前記エアバッグに押された際に変形して開くカバー部、を配設させて、
構成されていることを特徴とする歩行者用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記フロントフェンダパネルが、前記カバー部と前記カバー部以外の一般部とを備えて構成されるとともに、前記カバー部と前記一般部とが、それぞれ、車両のフレーム側に取り付けられる取付部を備え、
前記カバー部の前記取付部が、前記一般部の前記取付部より、前記フレーム側から分離され易い取付強度として、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記カバー部の前記取付部が、前記フレーム側への取付座に対して、ボルトの締結により取り付けられ、
前記取付部若しくは前記取付座の一方が、前記ボルトを挿通させる挿通孔を備えるとともに、該挿通孔の周縁に、前記エアバッグの押圧による前記カバー部の開き時に、前記ボルトを前記挿通孔から相対的に離脱可能に逃がして、前記取付部と前記取付座との連結を解除する逃がし用開口を、備えて構成されていることを特徴とする請求項2に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記カバー部が、開き時の前記フレーム側からの離隔距離を規制可能に、前記フレーム側に固定された連結材を連結させて、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の歩行者用エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−149753(P2010−149753A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331230(P2008−331230)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】