説明

歩行者誘導方式及びこれを用いた歩行施設または歩行者誘導システム

【課題】不特定多数の人が利用する公共施設の通路や階段において、歩く速さに応じた領域毎に区分し、区分する領域を通行量に応じて調整することによって、安全且つスムーズに人の流れを誘導し、混雑を緩和する。
【解決手段】歩く速さに応じた領域毎に通路や階段を区分し、区分する領域を通行量に応じて調整する。さらには、領域ごとに歩行者の歩速を誘導することによってよりスムーズに人の流れを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、公共施設の通路や階段において、安全且つスムーズに人の流れを誘導し、混雑を緩和する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駅構内、空港、地下街、展示場、競技場や遊園地などの不特定多数の人が利用する公共施設の通路や階段は歩く速さの様々な人が通行する。歩く速さの遅い人(以下、低速歩行者)の例としては、高齢者、子供連れ、妊婦、具合の悪い人、怪我をしている人、重い荷物或いは大きな荷物を持っている人、携帯電話を操作しながら歩行する人、道を探しながら歩行する人、友人などと話をしながら歩行する人や急ぐ必要のない人などが挙げられる。一方、歩く速さの早い人(以下、高速歩行者)の例としては通勤、通学または出張等で時間に遅れないように急ぐ人、最終電車に乗り遅れないように急ぐ人、他の電車に乗り継ぐために急ぐ人などが挙げられる。
【0003】
これまでの階段や通路では上り下りなどの方向を区別することはあるものの、歩く速度に応じた区分がなかった。このため、歩く速さの遅い人が通路または階段において分散してしまうとそれが律速となって、全体的な人の流れが遅くなってしまい、階段や通路における人の混雑を緩和することができなかった。また、エスカレータや歩く歩道のように、人が2列以上で並べる自動移動装置の場合は片側に人が立ち止まり、もう片側を人が歩行または昇降する習慣はあった。しかしながら、階段や通路等において、歩く速度に応じて区分された通路或いは階段は無かった。
【0004】
特に朝のラッシュアワー時に於いて、電車が駅に到着して扉が開いた直後から狭いホームや階段付近では人が込み合い、さらに歩く速度の遅い人が律速となってその混雑が中々解消されなかった。このため、電車を降りた歩行者(利用者)がホームから退去しきらないうちに次の電車が到着して一層混雑が増してしまい、最悪の場合、電車に接触する可能性もあり、非常に危険であった。
【0005】
また、朝のラッシュアワー程は混んでいなくとも、歩く速度の遅い人が分散しているところに、乗り換え等の為に急いでいる人が歩く速さの遅い人の間をすり抜けるように走って行くことも良くあった。すり抜けようとした際に急いでいる人が歩く速さの遅い人に接触し、階段から転落する場合もあり、非常に危険な場合もあった。さらに、夜間に於いては、最終電車等に乗車するために急いでいる人が酔った人に接触し、反応が鈍くなった酔った人が転落して怪我をするなど非常に危険であるばかりでなく、接触したことにより、口論または喧嘩に発展することもあった。
【0006】
上記問題を解決する手段として、歩行者の双方向進行通路において床面あるいは壁面あるいは天井面に錯視図形を適切に配置することによって、当該歩行帯に定められた進行方向がいずれの方向なのかを歩行者に無意識的に認知させ、その結果、歩行者動線を整理して歩行者のスムーズな歩行を実現する方法が特開2006−002431公報に開示されている。
【特許文献1】特開2006−002431公報(図指なし)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2006−002431公報の請求項及び実施例には具体的な記載がないが、(発明の効果)の項に記載された文章から推測すると、低速歩行帯と高速歩行帯に異なる知覚される速度に操作された錯視シートを通路に配置するものである。この公報に開示された提案では異なる歩行速度の通行量が常に一定である場合には対応可能ではあるが、タイミング、時間帯、曜日等短期的な人の流れの変化に対応することはできないため、この提案が有効に利用できる場所は限定されてしまう。
【0008】
具体的には、まず、タイミングによって通行量が変化する例を挙げると、乗換駅やターミナル駅の構内において、電車から離れる方向に進む歩行者の通行量は電車の到着前は皆無であるが、電車が到着して扉が開くと通行量が顕著に増加する。一方、電車に向かう歩行者の通行量は状況により様々であるが、他の電車が駅に到着して、乗り換えのために降車した歩行者の一団が当該電車に到着する頃に多くなる。このため、電車が発車後暫くは当該電車に向かう通行量に比べて当該電車から降車した人の集団による通行量は顕著に多い。一方、電車が到着するまでの暫くの間は電車から離れる方向の通行量に比べて当該電車に向かう通行量が多い。
【0009】
次に、時間帯によって通行量が変化する例を挙げると、ベッドタウンの駅構内において、朝の通勤通学時間帯では電車に乗るために改札を入ってホームに向かう人が殆どである一方、夕方或いは夜間の帰宅時間帯では電車から降りて改札を出る人が殆どである。また、別の例では、各種競技場や遊園地等では入場時間または入園時間前では当該施設に向かう歩行者が殆どである一方、試合終了時間や閉園時間では当該施設にから退場する歩行者が殆どである。
【0010】
さらに、曜日によって通行量が変化する例を挙げると、平日は通勤通学に用いられる通路においても休日や祝日等の時期では小さい子連れの家族等で一杯になる。通勤通学時間帯における歩行者が通行する際は急いでいる人が多く、ゆっくり歩く人が少ない一方、休日や祝日等において小さい子連れの家族が通行する際はゆっくり歩く人が多く、急いで歩く人が少ない。
【0011】
以上説明してきたように、タイミング、時間帯や曜日等の状況によって、異なる進行方向の歩行者の通行量が刻々と変化するため、歩行者の流れの変化に対応することはできない錯覚シートを通路に直接設置して歩行者を誘導することは非現実的である。さらには、時間帯や曜日等の状況によって、歩く速さの異なる歩行者の通行量が変化するため、歩行者の流れの変化に対応することはできない錯覚シートを通路に直接設置して歩行者を誘導することは非現実的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明においては、下記のいずれかに示す通路や階段を歩速に応じた領域に区分し、人の流れに応じて区分する領域を調整することにより、前記課題を解決しようとするものである。
【0013】
請求項1に記載の発明は、駅、空港または地下道などの不特定多数の人が利用する公共施設の通路や階段において、歩く速さに応じた領域に区分し、区分する領域を人の流れに応じて調整することを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の通路や階段において、区分した領域毎に歩く速さを誘導することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、歩速に応じた領域に区分するとともに、この区分する領域を歩行者の通行量に応じて調整可能とすることによって、タイミング、時間帯や曜日等の状況による歩行者の流れの変化に対応することができ、スムーズ且つ安全に混雑を緩和することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、区分した領域毎に歩速を誘導することによって、区分した領域の歩速を制御し、さらにスムーズで安全に混雑を緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
第1の発明を実施するための最良の形態として、駅や空港、地下道などの不特定多数の人が利用する公共施設の通路や階段を進行方向で分離すると共に、それぞれの方向において低速歩行区域と高速歩行区域とに分離し、通行量の状況に応じて区分する幅を調整する。図1に通路を分離し、区分する幅を調整する例を示す。図1(a)は低速歩行区域101と対向側低速歩行区域102、高速歩行区域103及び対向側高速歩行区域104における通行量が均等な場合の区分方法の例である。通路は単位構成部106により構成されており、単位構成部106の明暗、彩色或いはコントラスト等により通行領域を調整する構造となっている。
【0019】
図1(b)及び(c)は乗換駅の朝夕の混雑時において、双方の人の流れがタイミングにより大きく異なる場合の区分方法の例である。図1(b)は乗換駅の朝夕の混雑時において、図中、奥側に向かう人の流れが手前側に向かう人の流れに比べて多い場合で、対向側低速歩行区域102に比べて低速歩行区域101が広く、対向側高速歩行区域104に比べて高速歩行区域103が広く、さらに、各低速歩行区域101及び102に比べて各高速歩行区域103及び104が広くなっている例であり、図1(c)は図1(b)とは逆に、図中、手前側に向かう人の流れが奥側に向かう人の流れに比べて多い場合で、低速歩行区域101に比べて対向側低速歩行区域102が広く、高速歩行区域103に比べて対向側高速歩行区域104が広く、さらに、各低速歩行区域101及び102に比べて各高速歩行区域103及び104が広くなっている例である。
【0020】
図1(d)及び(e)はベットタウンの駅またはホームに向かう通路において、双方の人の流れが朝夕で大きく異なる場合の区分方法の例である。図1(d)はベットタウンの駅で駅またはホームに向かう通路において、図中、奥側に向かう人の流れが手前側に向かう人の流れに比べて多い場合で、対向側低速歩行区域102に対して低速歩行区域101の他に高速歩行区域103が設けられている例であり、図1(e)はその逆の流れの時間帯で、手前に向かう人の流れが奥側に向かう人の流れに比べて多い場合で、低速歩行区域101に対して対向側低速歩行区域102の他に対向側高速歩行区域104が設けられている例である。
【0021】
人の流れに応じて区分する幅を調整する方法として、通路を単位構成部106に分割し、分割された単位構成部106の内、少なくとも調整の必要な領域の単位構成部に、複数の異なる濃度或いは複数の異なる色を呈する構造を設け、単位構成部の濃淡或いは色彩の相違によって区分する幅を調整する方法が挙げられる。複数の異なる濃度或いは色を呈する構造の例として、複数の異なる色彩の発光体を複数設置するか或いは表示素子を設置することによって、通路の明暗或いは色彩を調整する。種々の発光体の例として、着色電球、有色蛍光管、ネオン管、発光ダイオードの他に、半導体レーザ等を用いることができる。また、発光体の応用例として導光パネルを用いることができる。表示素子として、液晶パネル、エレクトロルミネッセンスパネルやエレクトロクロミズムパネル等を用いることができる。
【0022】
発光体として蛍光管を用いた単位構成部の例を図2に示す。図2において、蛍光管111及び異なる色を呈する蛍光管112と、これらの蛍光管111及び蛍光管112上には高い耐荷重性能を有する光拡散板113が設けられており、蛍光管111或いは蛍光管112より発せられた光は耐荷重性を有する光拡散板113によって拡散され、拡散板全体から有色光が発せられる。ここで、蛍光管111と蛍光管112の点灯方法を制御することによって、区分する幅を調整する。具体的には、両方の蛍光管を消灯、蛍光灯111のみを点灯、蛍光灯112のみを点灯さらには両方の蛍光灯を点灯することによって、4通りの表現を行うことができる。
【0023】
また、単位構成部を詳細に分割した構造の例を図3に示す。図3において、単位構成部に遮蔽板124を設け、単位構成部を複数の領域に分割する。分割した各領域には複数の異なる色彩の発光体を施した発光体モジュール121をそれぞれ設置する。発光体モジュール121は各色彩の発光体を各々独立して制御することができるように構成されている。
【0024】
具体的な例として、図4に発光体モジュール121に光の三原色である赤132、緑133及び青134を呈する発光ダイオードを実装した例を示す。各発光ダイオードを単一で発光させる他、2色の発光ダイオードを同時に発光させるか、或いは全ての発光ダイオードを同時に発光させることにより、7通りの発光を呈することができる。さらには、各発光ダイオードの輝度を制御することにより、フルカラーの発光を呈することができる。
各単位構成部を遮蔽板124によって分割することにより、区分する区域をさらに細かく区分することができ、人の流れに応じてより細かく調整することができる。ここで、区分する区域の形状は矩形に限定されるものではない。
【0025】
さらに、表示素子として液晶パネルを用いた単位構成部の例を図5に示す。図5において、カラー液晶パネル141及び液晶を制御する制御ユニット142が単位発光部に設けられている。カラー液晶パネル141上には耐荷重性を有する透過板143が設けられている。カラー液晶パネルを用いることで、人の流れに応じて区分すべき区域の幅を詳細に変更することができる。このことによって、時間帯により人の流れが大きく異なる場合に臨機応変に対応することができる。
【0026】
以上は人の流れに応じて区分する幅を調整する方法として、分割された床に単位構成部を設け、該単位構成部に発光体を施したが、天井や壁等に投映機を設けることによって、床にその映像を投映しても良い。天井にプロジェクタを設けて、床にその映像を映写する例を図6に示す。図6において、天井151にはプロジェクタ155、プロジェクタ156及びプロジェクタ157が設けられている。プロジェクタ155は区域152に、プロジェクタ156は区域153に、プロジェクタ157は区域154に、それぞれの投影画像によって、各区域における色の幅を調整することができる。
【0027】
具体的な投影例について図7を用いて説明する。図7(a)は図中、奥側に向かう人の流れが手前側に向かう人の流れに比べて多い場合で、低速歩行区域171、対向側低速歩行区域174及び対向側高速歩行区域153に比べて高速歩行区域172が広くなっている例である。投光器Aより照射された色Eの光161により低速歩行区域171は投影されており、投光器Aより照射された色Fの光162及び投光器Bより照射された色Fの光163により高速歩行区域172は投影されており、投光器Cより照射された色Gの光164により対抗側高速歩行区域173は投影されており、投光器Cより照射された色Hの光165により対抗側低速歩行区域174は投影されている。
【0028】
図7(b)は図7(a)とは逆に、図中、手前側に向かう人の流れが奥側に向かう人の流れに比べて多い場合で、低速歩行区域171、高速歩行区域153及び対向側低速歩行区域174に比べて対向側高速歩行区域173が広くなっている例である。投光器Aより照射された色Eの光161により低速歩行区域171は投影されており、投光器Aより照射された色Fの光162により高速歩行区域172は投影されており、投光器Bより照射された色Gの光163及び投光器Cより照射された色Gの光166により対抗側高速歩行区域173は投影されており、投光器Cより照射された色Hの光165により対抗側低速歩行区域174は投影されている。
【0029】
第1の発明を実施するための別の形態として、駅や空港、地下道などの公共施設の階段を進行方向で分離すると共に、それぞれの方向において低速歩行区域と高速歩行区域とに分離し、通行量の状況に応じて区分する幅を調整する。図8に階段を分離し、区分する幅を調整する例を示す。階段には単位構成部189が設けられており、構造体189の明暗、彩色或いは発光により通行領域を調整する構造となっている。
【0030】
図8(a)及び(b)は乗換駅の朝夕の混雑時において、双方の人の流れがタイミングにより大きく異なる場合の区分方法の例である。図8(a)は乗換駅の朝夕の混雑時において、図中、階段を上る人の流れが階段を下る人の流れに比べて多い場合で、色188に発光させた下り低速歩行区域184に比べて色185に発光させた上り低速歩行区域181が広く、色187に発光させた下り高速歩行区域183に比べて色186に発光させた上り高速歩行区域182が広く、さらに、色185に発光させた上り低速歩行区域181に比べて色186に発光させた上り高速歩行区域182が広くなっている例である。
【0031】
図8(b)は図8(a)とは逆に、図中、階段を下る人の流れが階段を上る人の流れに比べて多い場合で、色185に発光させた上り低速歩行区域191に比べて色188に発光させた下り低速歩行区域194が広く、色186に発光させた上り高速歩行区域192に比べて色187に発光させた下り高速歩行区域193が広く、さらに、色188に発光させた下り低速歩行区域194に比べて色187に発光させた下り高速歩行区域193が広くなっている例である。
【0032】
人の流れに応じて区分する幅を調整する方法として、階段の一部に設けた構造体189の濃淡或いは色彩の相違によって区分する方法が挙げられる。複数の異なる濃淡或いは色を呈する例として、複数の異なる色彩の発光体を複数設置するか或いは表示素子を設置することによって、通路の明暗或いは色彩を調整する。種々の発光体の例として、着色電球、有色蛍光管、ネオン管、発光ダイオードの他に、半導体レーザ等を用いることができる。また、発光体の応用例として導光パネルを用いることができる。表示素子として、液晶パネル、エレクトロルミネッセンスパネルやエレクトロクロミズムパネル等を用いることができる。
【0033】
構造体の例を図9に示す。図9において、構造体189には複数の異なる色彩の発光ダイオードを搭載したモジュール198が設けられている。発光ダイオードモジュール196には発光ダイオード198と別の色彩の発光ダイオード199が設けられており、各々独立して制御することができるように構成されている。各発光ダイオードを単一で発光させる他、2色の発光ダイオードを同時に発光させることにより、3通りの発光を呈することができる。単位構成部を遮蔽板によって分割することにより、区分する区域をさらに細かく区分することができ、人の流れ(方向や歩く速度)に応じてより細かく調整することができる。
【0034】
第2の発明を実施するための最良の形態として、区分した区域ごとに歩行者の歩速を誘導する。具体的には区分された区域に設けられた電球やLEDを点滅させ、その点滅の時間的間隔或いは空間的間隔を低速歩行者用にはゆっくりとした点滅或いは点灯または消灯のままにし、高速歩行者用には高速歩行に適合した間隔で点滅させる。区分された区域を点滅させる例を図10に示す。図10(a)において、通路は低速歩行区域201、高速歩行区域202、対向側高速歩行区域203及び対向側低速歩行区域204に区分されおり、各区域は単独に制御可能な発光体を設けた単位発光部205に分割されている。
【0035】
発光部の発光状態の経時変化を示した様子を図10(b)から図10(e)に示している。低速歩行区域201の発光領域211及び高速歩行区域202の発光領域212は時間の経過と共に図中手前側から奥側に流れるように、図10(b)から図10(e)のように発光部が移動し、高速歩行区域202の発光領域212は低速歩行区域201の発光領域211に比べて高速に移動していることを示している。同様に、対向側高速歩行区域203の発光領域213及び対向側低速歩行区域204の発光領域214は時間の経過と共に図中奥側から手前側に流れるように、図10(b)から図10(e)のように発光部が移動し、対向側高速歩行区域203の発光領域213は対向側低速歩行区域204の発光領域214に比べて高速に移動していることを示している。
【0036】
具体的には、本実施例では各歩行区域の発光領域は横2列縦3列の合計6つの単位発光部によって構成されている。図10(b)、図10(c)、図10(d)、図10(e)へと時間の経過と共に、低速歩行区域201の発光領域A211は単位時間当たり単位発光部1つ分ずつ奥側に順次移動しているのに対して、高速歩行区域202の発光領域B212は単位時間当たり単位発光部2つ分ずつ奥側に順次移動している。同様に、対向側低速歩行区域204の発光領域D214は単位時間当たり単位発光部1つ分ずつ手前側に順次移動しているのに対して、高速歩行区域203の発光領域C213は単位時間当たり単位発光部2つ分ずつ手前側に順次移動している。
【0037】
ここで、本実施例では各歩行区域の発光領域は6つの単位発光部によって構成した例を示したが、本発明において、発光部を構成する単位発光部は6つに限定するものではなく、単一或いは6つ以外の複数でも一向に構わない。また、両方向における低速歩行区域及び高速歩行区域の幅を均等に分割したが、均等に分割する必要はなく、通行量に応じて適宜分割することができる。さらに、低速歩行区域は単位発光部1つ分ずつ、高速歩行区域は単位発光部2つ分ずつ移動したが、本発明では高速歩行区域を低速歩行区域に比べてより高速に移動すれば良く、移動する量を限定するものではない。
【0038】
このように、領域ごとに歩行者の歩速を誘導することによって、自分では速く歩いていると思い込んでいる人も、誘導手段によって自分が区分された区域の歩速に合致しているか否かを自覚することができる。このため、客観的に且つ平均的な流れを制御し、さらに低速歩行者を安全に歩行させ、高速歩行者をスムーズに歩行させることができるので、スムーズで安全に混雑を緩和することができる。
【0039】
また、区分した領域ごとに歩行者の歩速を誘導する別の方法として、図11に示すように、区分した領域ごとに図形が配列されており、配列された図形が順次表示されるような構造となっている。図形を順次表示する方法として、導光パネル、液晶パネル、エレクトロルミネッセンスパネルやエレクトロクロミズムパネル等を用いることができる。
【0040】
図形を順次表示する方法の具体例について図11を用いて説明する。図11(a)において、通路は低速歩行区域231、高速歩行区域232、対向側高速歩行区域233及び対向側低速歩行区域234に区分されおり、各区域は単独に制御可能な単位構成部225に分割されている。発光図形の経時変化を示した様子を図11(b)から図10(e)に示している。
【0041】
低速歩行区域221の発光図形231及び高速歩行区域222の発光図形232は時間の経過と共に図中手前側から奥側に流れるように、図10(b)から図10(e)のように発光図形が移動し、高速歩行区域222の発光図形232は低速歩行区域221の発光図形231に比べて高速に移動していることを示している。同様に、対向側高速歩行区域223の発光図形233及び対向側低速歩行区域224の発光図形234は時間の経過と共に図中奥側から手前側に流れるように、図10(b)から図10(e)のように発光部が移動し、対向側高速歩行区域223の発光図形233は対向側低速歩行区域224の発光図形234に比べて高速に移動していることを示している。
【0042】
単位構成部225の構造例を図12に示す。単位構成部225は図形の位置が互いに異なる2つの導光パネル241及び導光パネル244と図形の向きが逆で互いに位置が異なる2つの導光パネル247及び導光パネル250が配置されている。それぞれの導光パネルには複数のLEDをモジュール化したLED群が配置されている。導光パネルに設けられた図形より、LED群の光が導光パネルの表面に照射され、歩行者に図形が認識できる構造となっている。
【0043】
本実施例では各歩行区域において、2つの単位構造部によって歩行者の歩速を誘導している。具体的には、図11(b)、図11(c)、図11(d)、図11(e)へと時間の経過と共に、高速歩行区域222の発光領域B232は単位時間当たり図形1つ分ずつ奥側に移動しているのに対して、低速歩行区域221の発光領域A231は単位時間の2倍の時間で図形1つ分ずつ奥側に移動している。同様に、高速歩行区域223の発光領域C233は単位時間当たり図形1つ分ずつ手前側に移動しているのに対して、対向側低速歩行区域224の発光領域D234は単位時間の2倍の時間で図形1つ分ずつ手前側に移動している。
【0044】
上記は、導光パネルを4枚用いた例を示したが、4枚に限定する必要はなく、複数枚使用することによって、歩行者の歩速を誘導することができ、導光パネルの枚数を増やすことによって、より詳細に表現することができる。また、液晶パネル、エレクトロルミネッセンスパネルやエレクトロクロミズムパネル等を用いることにより、間隔を時間帯や曜日等の状況に対応してより詳細に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施例において区分する幅の調整の様子を示すブロック図
【図2】本発明の第1の実施例において単位構成部の構造を示すブロック図
【図3】本発明の第1の実施例において別の単位構成部の構造を示すブロック図
【図4】本発明の第1の実施例において単位構成部の発光部の構造を示すブロック図
【図5】本発明の第1の実施例において別の単位構成部の構造を示すブロック図
【図6】本発明の第1の別の実施例において通路を区分している様子を示すブロック図
【図7】本発明の第1の別の実施例において区分する幅の調整の様子を示すブロック図
【図8】本発明の第1の別の実施例において区分する幅の調整の様子を示すブロック図
【図9】本発明の第1の別の実施例において単位構成部の構造を示すブロック図
【図10】本発明の第2の実施例において歩速を誘導する様子を示すブロック図
【図11】本発明の第2の別の実施例において歩速を誘導する様子を示すブロック図
【図12】本発明の第2の別の実施例において単位構成部の構造を示すブロック図
【符号の説明】
【0046】
101 低速歩行区域、102 対向側低速歩行区域、103 高速歩行区域、104 対向側高速歩行区域、106 単位構成部、111 蛍光管、112 異なる色を呈する蛍光管、113 耐荷重性能を有する光拡散板、121 発光素子モジュール、122 遮蔽板、123 耐荷重性能を有する光拡散板、131 発光素子モジュール台、132 発光ダイオードA、133 発光ダイオードB、134 発光ダイオードC、141 カラー液晶パネル、142 液晶を制御する制御ユニット、143 耐荷重性を有する透明板、151 天井、152 低速歩行区域、153 双方向共通の高速歩行区域、154 対向側低速歩行区域、155 投光器A、156 投光器B、157 投光器C、161 投光器Aより照射された色Eの光、162 投光器Aより照射された色Fの光、163 投光器Bより照射された色Fの光、164 投光器Cより照射された色Gの光、165 投光器Cより照射された色Hの光、166 投光器Bより照射された色Gの光、171 低速歩行区域、172 高速歩行区域、173 対向側高速歩行区域、174 対向側低速歩行区域、181 低速昇降区域、182 高速昇降区域、183 対向側高速昇降区域、184 対向側高速昇降区域、185 発光色K、186 発光色L、187 発光色M、188 発光色N、189 構造体、191 低速昇降区域、192 高速昇降区域、193 対向側高速昇降区域、194 対向側高速昇降区域、196 発光素子モジュール、197 光拡散板、198 発光ダイオード、201 低速歩行区域、202 高速歩行区域、203 対向側高速歩行区域、204 対向側低速歩行区域、205 単位発光部、211 6つの単位発光部からなる発光領域A、212 6つの単位発光部からなる発光領域B、213 6つの単位発光部からなる発光領域C、214 6つの単位発光部からなる発光領域D、221 低速歩行区域、222 高速歩行区域、223 対向側高速歩行区域、224 対向側低速歩行区域、225 単位構成部、231 低速歩行区域における図形E、232 高速歩行区域における図形F、233 対向側高速歩行区域における図形G、234 対向側低速歩行区域における図形H、241 導光パネルK、242 図形K、243 LED群K、244 導光パネルL、245 図形L、246 LED群L、247 導光パネルM、248 図形M、249 LED群M、250 導光パネルN、251 図形N、252 LED群N


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不特定多数の人が利用する公共施設の通路や階段において、歩く速さに応じた領域に区分し、区分する領域を人の流れに応じて調整することを特徴とする通路または階段及びこれらを用いた施設及びこれらの施設を制御するシステム。

【請求項2】
請求項1に記載の通路や階段において区分した領域毎に歩く速さを誘導することを特徴とする通路または階段及びこれらを用いた施設及びこれらの施設を制御するシステム。


【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−38335(P2011−38335A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187117(P2009−187117)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(303052186)
【Fターム(参考)】