説明

歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置および歯科ハンドピース

【課題】転がり音をなくし、メンテナンスフリーを実現する歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置および歯科ハンドピースの提供。
【解決手段】切削工具を取り付け、タービンにより駆動される回転軸を一対の軸受部によってケースに回転自在に支持する歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置10であって、この流体動圧軸受装置10は、ラジアル軸受面29Rとその両端に形成したスラスト軸受面23T、23Tを備えた外側部材20と、この外方部材20の内側に配置され、前記ラジアル軸受面29Rとスラスト軸受面23T、23Tのそれぞれに対向するラジアル軸受面12Rとスラスト軸受面13T、13Tを備えた内方部材11とからなり、前記外方部材20と内方部材11のラジアル軸受面29R、12R間のラジアル軸受隙間Rおよびスラスト軸受面23T、13T間のスラスト軸受隙間Tを形成し、これらの軸受隙間R、Tに潤滑油を介在させて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、切削工具を取り付け、タービンにより駆動される回転軸をケースに回転自在に支持する歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置および歯科ハンドピースに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科ハンドピースは、切削工具が回転軸の先端に取り付けられ、エアタービンにより駆動され、タービンが取り付けられた回転軸のタービンの軸方向両側を一対の転がり軸受で支持するタイプが一般的である(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、回転軸の後端部にタービンを設け、タービンの側面中央部とそれと相対する受面中央部にスラスト軸受を形成し、回転軸のジャーナル部とケースとの間に設けた流体動圧軸受により支持した構成のものが試みられた例がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−173453号公報
【特許文献2】特開平6−292689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の転がり軸受で支持するタイプでは、転がり軸受の課題として、毎分30万回転を超える高速回転の際の転がり音の低減や、高温高湿雰囲気にさらされる滅菌処理によって潤滑油が流れ出してしまうため、都度、潤滑油を補給しながら使用しなければならず、メンテナンスフリーの要求が高い。

【0006】
特許文献2のハンドピースでは、回転軸の後端部にタービンを設け、タービンの側面中央部とそれと相対する受面中央部にスラスト軸受を形成し、回転軸のジャーナル部とケースとの間に設けた流体動圧軸受により支持した構成のものであり、ハンドピースの軸受構造として、特殊な専用構造となっている。そのため、組立作業性や製造コスト面で問題がある。
【0007】
本発明の課題は、歯科ハンドピース用としての流体動圧軸受装置の構成に着目することにより、転がり音をなくし、メンテナンスフリーを実現する歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置および歯科ハンドピースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の発明者らは、前記課題を種々検討した結果、以下の新しい着想に至り、これらが相俟って本発明をなし得ることができた。
(1)歯科ハンドピースとして、転がり軸受と同サイズの汎用性の高い流体動圧軸受装 置を構成すること
(2)ラジアル軸受面とスラスト軸受面を備えた内方部材を焼結金属製とすること
(3)ラジアル軸受面とスラスト軸受面を備えた外方部材を板材のプレス加工により形 成すること
(4)前記外方部材として、内方部材をインサート部品とした樹脂の射出成形品とする こと
【0009】
本発明は、切削工具を取り付け、タービンにより駆動される回転軸を一対の軸受部によってケースに回転自在に支持する歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置であって、この流体動圧軸受装置は、ラジアル軸受面とその両端に形成したスラスト軸受面を備えた外側部材と、この外方部材の内側に配置され、前記ラジアル軸受面とスラスト軸受面のそれぞれに対向するラジアル軸受面とスラスト軸受面を備えた内方部材とからなり、前記外方部材と内方部材のラジアル軸受面間のラジアル軸受隙間およびスラスト軸受面間のスラスト軸受隙間を形成し、これらの軸受隙間に潤滑油を介在させて構成されており、前記外方部材がケースに取り付けられる外周面を有すると共に、前記内方部材が回転軸に取り付けられる内周面を有することを特徴とするものである。上記のような構成により、部品点数が少なく、高精度で、かつ低コストに製造可能であると共に静粛性に優れる。また、転がり軸受と同サイズで形成できるので、汎用性が高く、取り扱いに優れると共にメンテナンスフリーを実現することができる。
【0010】
そして、内方部材のラジアル軸受面およびスラスト軸受面の少なくとも1つに動圧溝を形成することにより、潤滑油の動圧作用により回転軸を非接触に支持することができ、静粛性に優れる。
【0011】
また、内方部材が焼結金属で形成される場合、内方部材のラジアル軸受面に動圧溝を転造加工する際の塑性流動を焼結金属の内部気孔で吸収できる。このため、塑性流動による表面の盛り上がりが抑えられ、動圧溝を精度良く形成することができる。
【0012】
歯科ハンドピースは、毎分30万回転を超える高速で運転される。回転軸と締め代等により取り付けられる焼結体からなる内方部材は、作用するフープ応力に耐える必要があるので、内方部材を構成する金属焼結体の材質は100MPa以上の引っ張り許容応力を有することが望ましい。
【0013】
焼結体をセラミックスとすると、軽量化できるので、高速運転に有利である
【0014】
一方、外方部材が、第1外方部材と第2外方部材の2つの部材から形成され、これら2つの部材の縦断面形状をいずれも略L字形状に形成した場合は、第1外方部材と第2外方部材の嵌合長さを確保でき、精度と結合状態を向上することができる。
【0015】
第1外方部材の半径方向部の内側面および第2外方部材の半径方向部の内側面の少なくとも一つにプレス加工により動圧溝が形成されている。この場合、第1外方部材と第2外方部材を板材からプレス加工により成形する際に、動圧溝がプレス加工により形成されるので、動圧溝を高精度に、かつ効率よく形成できる。
【0016】
第1外方部材および第2外方部材がステンレス系材料からなり、少なくとも内側に嵌合され、内周にラジアル軸受面を有する第2外方部材はSUS430としている。滅菌処理時に高湿雰囲気に暴露されても、耐食性に優れると共にプレス加工に適し、かつ耐摩耗性が良好である。
【0017】
また、外方部材を、内方部材をインサート部品とした樹脂の射出成形品とすることができる。この場合には、部品点数および組立工数を削減することができる。
【0018】
外方部材の樹脂成形部の軸方向の成形収縮により外方部材のスラスト軸受面を内方部材から剥離して、スラスト軸受隙間を形成したので、隙間の設定が容易となる。さらに、外方部材に芯金を設け、外方部材を、内方部材と、この内方部材の外径側に配置した芯金とをインサート部品として樹脂で射出成形したことにより、隙間を高精度に設定することが可能となる。
【0019】
軸受隙間に充填する潤滑油は、人体に影響のないものを使用する。国際衛生科学財団(NSF)の規格であるNSF H1基準を満たすものを使用する。そして、耐熱性および耐水性よりポリαオレフィン(PAO)を基油とする潤滑油が望ましい。
【0020】
ハンドピースのケースと流体動圧装置の外方部材との間にダンパー機構が設けられている。ダンパー機構としてメッシュバネなどを使用する。このダンパー機構により、治療時の荷重や振動を低減することができる。
【0021】
ケースのタービン収容空間と外部とを連通する通気孔が設けられている。この通気孔により、加圧エアを供給してタービンを駆動した際、タービン収容空間の圧力上昇による流体動圧軸受装置の潤滑油が押し出されることを防止することができる。
【0022】
回転軸の切削工具取り付け側において、ケースの内周面にシール部材を設け、このシール部材を回転軸の外周面と接触させる。シール部材としては、フェルトにワックス(潤滑油)をしみこませたものが好適である。このように流体動圧軸受装置とは別体のシール機構を設けたことにより、潤滑油の漏れを一層防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置よれば、部品点数が少なく、高精度で、かつ低コストに製造可能であるとともに静粛性に優れたものとなる。また、転がり軸受と同サイズで形成できるので、汎用性が高く、取り扱いに優れると共に、流体動圧軸受装置のメンテナンスフリー、ひいてはハンドピースのメンテナンスフリーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】歯科ハンドピースの外観図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の流体動圧軸受装置を組み込んだ歯科ハンドピースの縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の流体動圧軸受装置の縦断面図である。
【図4】内方部材に形成された動圧溝を示す正面図および側面図である。
【図5】図3の要部を拡大した縦断面図である。
【図6】第1実施形態の変形例の流体動圧軸受装置の縦断面図である。
【図7】第1実施形態の別の変形例を示す縦断面図である。
【図8】本発明の歯科ハンドピースの別の実施形態の縦断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の流体動圧軸受装置を組み込んだ歯科ハンドピースの縦断面図である。
【図10】第2の実施形態の流体動圧軸受装置の縦断面図である。
【図11】図10の要部を拡大した縦断面図である。
【図12】第2の実施形態の内方部材に形成された動圧溝を示す正面図である。
【図13】第2の実施形態の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1に、本発明の実施形態に係る流体動圧軸受装置が組み込まれるハンドピースの外観図を示す。歯科ハンドピース1は、把持部2の先端に設けたヘッド3のケース4内に回転軸を収容する。この回転軸に切削工具5を取り付けられ、他端のエア供給管から加圧エアを供給し、回転軸に取り付けられたタービン(図示省略)によりを切削工具5が回転駆動される。
【0027】
図2は、図1のケース4の部分の縦断面図である。この図に基づき、本発明の第1の実施形態の歯科ハンドピース用流体軸受装置10を説明する。図2にハンドピース1のケース4の内部を示す。タービン7が回転軸8のほぼ中央部に取り付けられ、回転軸8のタービン7の軸方向両側位置においてケース4と蓋部材9の内周面4a、9aと回転軸8の外周面8aとの間に流体動圧軸受装置10、10が組み込まれ、回転軸8がケース4に対して回転自在に支持される。詳細には、ケース4と蓋部材9の内周面4a、9aの奥側に肩面4b、9bが設けられており、この肩面4b、9bに流体動圧軸受装置10、10の端部を当接させた状態で組み込まれている。流体動圧軸受装置10、10の外周面27および内周面11aは、ケース4と蓋部材9の内周面4a、9aおよび回転軸8の外周面8aに軽圧入で組み込まれ、接着剤で固定される。ケース4のほぼ中央に大径内周面4bが形成され、この内部の空間4cにタービン7が収容される。ヘッド3の内部に設けられたエア供給管6からタービン7に加圧エアが噴きつけられ、タービン7が駆動される。回転軸8の先端には、図示しないが切削工具が取り付けられる。
【0028】
図3に基づき、本実施形態の流体動圧軸受装置10の構成を説明する。流体動圧軸受装置10は、図3に示すように、内方部材11と、この内方部材11を回転自在に支持する外方部材20とを備える。内方部材11は、その内周面11aが回転軸8の外周面8aに嵌合固定され、外方部材20は、その外周面25がケース4の内周面4aに嵌合して取り付けられる(図2参照)。軸方向および半径方向で互いに対向する内方部材11と外方部材20の各面間(ラジアル軸受隙間Rおよびスラスト軸受隙間T)には潤滑油が介在している(図5参照)。尚、図1中の流体動圧軸受装置10、10は、同一構造である。
【0029】
図3に示すように、内方部材11は、焼結金属で形成され、外周面12と両側面13、13を有する。外周面12がラジアル軸受面12Rを形成し、両側面13、13がスラスト軸受面13T、13Tを形成する。外周面12は円筒面状をなし、ラジアル軸受隙間Rに満たされた潤滑油に接触している(図5参照)。外周面12には動圧溝12aが形成されている。詳細には、図4(b)に示すように、外周面12の全面に形成され、V字状に屈曲した動圧溝12aと、これを区画する丘部12b(図中クロスハッチングで示す)とを、円周方向に交互に配置したヘリングボーン形状を呈する。動圧溝12aは、例えば転造加工により形成される。本実施形態では、内方部材10が焼結金属で形成されるため、転造加工の圧迫による外周面12の塑性流動を焼結金属の内部気孔で吸収できる。このため、塑性流動による内方部材11の表面の盛り上がりが抑えられ、動圧溝12aと丘部12bを精度良く形成することができる。
【0030】
内方部材11の両側面13、13は、軸線Aに直角な半径方向の平坦面をなし、スラスト軸受隙間Tに満たされた潤滑油に接触している(図5参照)。両側面13、13には動圧溝13a、13aが形成されている。詳細は、図4(a)、(c)に示す。図4(a)は左側の側面13を示し、図4(c)は右側の側面13を示す。図示のように、両側面13、13の内径側の一部を除いた部分に形成され、V字状に屈曲した動圧溝13a、13aと、これを区画する丘部13b、13b(図中クロスハッチングで示す)とを、円周方向に交互に配置したヘリングボーン形状を呈する。内方部材11が焼結金属で形成されるため、両側面13、13の動圧溝13a、13aは、プレス加工により精度良く形成することができる。また、内方部材11のサイジングと同時に動圧溝13a、13aを型成形することができる。
【0031】
内方部材11は、例えば内周面11aを回転軸8の外周面8aに圧入(軽圧入)することにより、あるいは、内周面11aと回転軸8の外周面8aとの間に接着剤を介在させることにより、回転軸8に固定される(図2参)。
【0032】
歯科ハンドピース1は、毎分30万回転を超える高速で運転される。回転軸8と締め代等により取り付けられる焼結体からなる内方部材11は、作用するフープ応力に耐える必要があるので、内方部材11を構成する金属焼結体の材質は100MPa以上の引っ張り許容応力を有することが望ましい。
【0033】
また、内方部材11の金属焼結体は、ステンレス系材料としている。具体的には、硫化マンガン(MnS)が1〜3wt%添加されているSUS304とする。一般的な銅鉄系の金属焼結体では、引っ張り強度100MPaは確保できないが、ステンレス系材料であれば、焼結温度が1300℃程度と高いため、上記の引っ張り強度100MPaを確保することができる。また、ステンレス系材料のため、滅菌処理を行っても金属焼結体の腐食を防止することができる。また、内方部材11の、少なくともラジアル軸受面12Rを形成する外周面12は、焼結体の表面開孔率を2〜20%とする。表面開孔率が2%未満では潤滑油の循環が十分でなく、表面開孔率が20%を超えると潤滑油の圧力が低下する。さらに、焼結体の密度は、潤滑油の連通性や塑性加工性を維持するために、6〜8g/mm3とする。
【0034】
図3に示すように、外方部材20は、第1外方部材20aと第2外方部材20bの2つの部材から形成され、第1外方部材20aと第2外方部材20bは、共に、縦断面が略L字形状に形成されている。具体的には、第1外方部材20aは、円筒部20a1と、この円筒部20a1の一端に形成された半径方向部20a2を有する。また、第2外方部材20bは、円筒部20b1と、この円筒部20b1の一端に形成された半径方向部20b2を有する。第1外方部材20aと第2外方部材20bは、円筒部20a1の外周面21と円筒部20b1の内周面22との間で嵌合され、接着剤を介在させて固定されている。第2外方部材20bの円筒部20b1端面が第1外方部材20aの半径方向部20a2の外側面より下がった位置にあるので、接着剤の注入がしやすい。
【0035】
第1外方部材20aと第2外方部材20bは、共に板材をプレス加工して略L字形状に形成されている。この実施形態では、第1外方部材20aの円筒部20a1の内周面29がラジアル軸受面29Rを形成する。第1外方部材20aの半径方向部20a2の内側面23および第2外方部材20bの半径方向部20b2の内側面24が、それぞれスラスト軸受面23T、24Tを形成する。内周面29および内側面23、24はいずれも凹凸のない滑らかな面で形成されている。第1外方部材20aの半径方向部20a2の内径側端部に小径内周面25および第2外方部材20bの内径側端部に小径内周面26が形成されている。円筒部20a1の外周面21と円筒部20b1の内周面22との間の嵌合長さが大きいので、安定した組立と固定結合を実現することができる。
【0036】
この実施形態の流体動圧軸受10のスラスト軸受隙間Tを設定して組み立てる方法としては、例えば、固定治具の上に前記第2外方部材20bをそのスラスト軸受面24が上方を向く姿勢で設置し、この第2外方部材20bのスラスト軸受面24Tに当接するよう内方部材11を挿入し、第2外方部材のスラスト軸受面24Tに内方部材11のスラスト軸受面13Tを当接させる。その後、移動治具より内方部材11を第2外方部材20bからスラスト軸受隙間の合計量(両側のスラスト軸受隙間分)だけ上方に隔離させる。その状態で、内方部材11のスラスト軸受面13Tに第1外方部材20aのスラスト軸受面23Tが当接するまで、第1外方部材20aを第2外方部材20bに押し込む。そして、両外方部材20a、20bを接着剤で固定する。この方法により、スラスト軸受隙間を高精度に、かつ容易に設定することができる。
【0037】
第1外方部材20aの半径方向部20a2の内径側端部にある小径内周面25および第2外方部材20bの内径側端部にある小径内周面26は、回転軸8の外周面8aと適宜の隙間をもって対向している。小径内周面25、26には、潤滑油の漏れ出しを防止するために、撥油剤が塗布される。
【0038】
歯科ハンドピース1では、滅菌処理時に高湿雰囲気に暴露されるため、腐食しやすい材料は使用せず、耐食性に優れるオーステナイト系ステンレス、例えば、SUS304などが使用される。第1外方部材20aおよび第2外方部材20bも、プレス加工に適し、かつ耐摩耗性を有するステンレス系材料を使用する。さらに、少なくとも内側に嵌合され、ラジアル軸受面およびスラスト軸受面を有する第1外方部材20aはSUS430を使用することが望ましい。
【0039】
この実施形態では、動圧溝12a、13a、13aはヘリングボーン形状で一方向回転用である。回転方向を識別するために、第1外方部材20aと第2外方部材20bとが異なる色相の表面を有する。これにより、誤組みを防止することができる。異なる色相の表面を形成するために、異なる色相の材質を用いたり、表面処理を施す。
【0040】
この実施形態の流体動圧軸受装置10は、歯科ハンドピースとして、転がり軸受と同サイズ(外径、内径、幅寸法)で形成されており、汎用性の高く、取り扱いに優れている。
【0041】
以上の構成からなる流体動圧軸受装置10の内部空間には焼結金属製の内方部材11の内部気孔を含めて、潤滑油が充填される。潤滑油は、図5に拡大して示すように、ラジアル軸受隙間Rの全域およびスラスト軸受隙間Tの内径端付近まで満たされる。潤滑油は、スラスト軸受隙間Tの毛細管力により外径側(ラジアル軸受隙間R側)に引き込まれる。潤滑油の油面は、スラスト軸受隙間Tに保持される。尚、説明を分かりやすくするため、ラジアル軸受隙間Rおよびスラスト軸受隙間Tは、誇張して図示している。
【0042】
上記の軸受隙間に充填する潤滑油は、人体に影響のないものを使用する。そこで、国際衛生科学財団(NSF)の規格であるNSF H1基準を満たすものを使用する。そして、耐熱性および耐水性よりポリαオレフィン(PAO)を基油とする潤滑油が望ましい。
【0043】
上記の流体動圧軸受装置10を組み込んだ歯科ハンドピース1では、図2に示すように、ヘッド3の内部に設けられたエア供給管6からタービン7に加圧エアが噴きつけられてタービン7が駆動され、回転軸8が回転する。回転軸8が回転すると、図5に示すように、流体動圧軸受装置10の内方部材11の外周面12と外方部材20の内周面21との間のラジアル軸受隙間Rおよびに内方部材11の両側面13、13と外方部材20の内側面23、24との間のスラスト軸受隙間Tに油膜が形成される。そして、回転軸2の回転に伴い、ラジアル軸受隙間Rの油膜の圧力が動圧溝11aにより高められ、この油膜の動圧作用により回転軸2および内方部材10がケース4に取り付けられた外方部材20に対して、ラジアル方向およびスラスト方向に非接触支持される。
【0044】
本発明の第1の実施形態の変形例を図6に基づいて説明する。これ以降の実施形態では、前述した第1の実施形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0045】
この変形例では、内方部材11はセラミックスで形成される。内方部材11は、外周面12と両側面13、13を有する。ラジアル軸受面12Rおよびスラスト軸受面13T、13Tには動圧溝12a、13a、13aが形成されている。内方部材11は、セラミックス粉体を用いたセラミックス射出成形法、すなわち、CIM(セラミックス・インジェクション・モールディング)成形法により形成される。セラミックス粉体とバインダーを混練して作った成形材料を射出成形した後、この成形体を焼結炉の中に入れて加熱し、バインダー成分を熱分解させる。例えば、このCIM成形では、内方部材11のラジアル軸受面12Rおよびスラスト軸受面13T、13Tには動圧溝12a、13a、13aのない滑らかな表面形状で形成される。その後、動圧溝12a、13a、13aをレーザー加工することにより、高精度に仕上げることができる。
【0046】
内方部材11を構成するセラミックスの種類は特に限定されないが、耐摩耗性の面から、ジルコニア、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素および窒化アルミナが例示される。その中でも、他のセラミックスに比べて機械的強度が高く、靭性に優れるジルコニアが好ましい。また、ジルコニアは線膨張係数が金属とほぼ同等であるため他方の部材(例えば軸部材)を金属部材で構成しても温度変化による軸受隙間の変化が小さいので、望ましい。他の部分は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0047】
本発明の第1の実施形態の別の変形例を図7に基づいて説明する。この変形例では、スラスト方向の動圧溝23a、24aが、第1外方部材20aの半径方向部20a2の内側面23と第2外方部材20bの半径方向部20b2の内側面24に、それぞれ形成されている。そして、内方部材10の両側面13、13は、凹凸のない平滑な面で形成されている。スラスト方向の動圧溝23a、24aは、例えば、第1外方部材20aと第2外方部材20bを板材からプレス加工により成形する際に、プレス加工により形成される。したがって、この動圧溝23a、24aにおいても、高精度に形成できる。動圧溝23a、24aの形状は、図4の(a)および(c)に示すものと同様である。その他の部分は、第1の実施形態と同様である。
【0048】
次に、本発明の歯科ハンドピースの別の実施形態を図8に基づいて説明する。この実施形態では、ケース4の内周面4a、蓋部材9の内周面9aと流体動圧軸受装置10の外方部材20との間にダンパー機構30が設けられている。ダンパー機構30としてメッシュバネなどを使用する。このダンパー機構30により、治療時の荷重や振動を低減することができる。
【0049】
ケース4のタービン収容空間4cと外部とを連通する通気孔31、32が設けられている。この通気孔31、32により、加圧エアを供給してタービン4を駆動した際、タービン収容空間4cの圧力上昇が抑制され、流体動圧軸受装置10の潤滑油が押し出されることを防止することができる。
【0050】
回転軸8の切削工具取り付け側において、ケース4の内周面にシール部材33を設け、このシール部材33を回転軸8の外周面8aと接触させる。シール部材33としては、フェルトにワックス(潤滑油)をしみこませたものが好適である。このように流体動圧軸受装置10とは別体のシール機構を設けたことにより、潤滑油の漏れを一層防止することができる。
【0051】
さらに、本発明の第2の実施形態の流体動圧軸受装置10を図9〜図12に基づいて説明する。図9は、本実施形態の流体動圧軸受装置10を図1の歯科ハンドピースと同様のものに組み込んだ状態を示す。
【0052】
図10に示すように、この実施形態の流体動圧軸受装置10では、内方部材11の軸方向両側の側面14、14は、内方部材11の軸方向中央面に関して対称な形状を成している。側面14は、図11に拡大して示すように、外径側に設けられたテーパ面14aと、内径側に設けられた平坦面14bとからなる。テーパ面14aは、外径側に向けて軸方向中央部側(すなわち、側面14、14が互いに接近する側)に傾斜して設けられる。平坦面14bは、テーパ面14aの内径端から内径側に延びる。テーパ面14a及び平坦面14bは、スラスト軸受隙間Tの潤滑油に接触する。本実施形態では、テーパ面14a及び平坦面14bは凹凸のない平滑な面で、それぞれスラスト軸受面14aT、14bTを形成する。
【0053】
内方部材11は、例えば金属でリング状に形成され、本実施形態では焼結金属で形成される。内方部材11の外周面12は円筒面状を成し、ラジアル軸受隙間Rに満たされた潤滑油に接触している(図11参照)。内方部材11の外周面12はラジアル軸受面12Rを形成し、動圧溝12aが形成される。本実施形態の動圧溝12aは、図12に示すように、外周面12の全面に形成され、V字状に屈曲した動圧溝12aと、これを区画する丘部12b(図中クロスハッチングで示す)とを円周方向に交互に配列したヘリングボーン形状を呈する。動圧溝12aは、第1の実施形態と同様に、例えば転造加工により形成される。本実施形態では、内方部材11が焼結金属で形成されるため、転造加工の圧迫による内方部材11の外周面12の塑性流動を焼結金属の内部気孔で吸収できる。このため、塑性流動による内方部材11の表面の盛り上がりが抑えられ、動圧溝12aおよび丘部12bを精度良く形成することができる。
【0054】
内方部材11の内周面11aは、図10に示すように、軸方向両端部に設けられた面取り部11bを有する。内方部材11は、例えば内周面11aを回転軸8の外周面8aに圧入(軽圧入)することにより、あるいは、内周面11aと回転軸8の外周面8aとの間に接着剤を介在させることにより、回転軸8に固定される。
【0055】
外方部材20は、内方部材11の外径側に配されたリング状を成し、芯金Mと、芯金Mをインサート部品として射出成形された樹脂成形部Nとで構成される。芯金Mは、例えば金属でリング状に形成され、本実施形態では焼結金属で形成される。図10に示すように、芯金Mの外周面M1及び軸方向両端面M2、M2の全面と、内周面M3の軸方向両端部が、樹脂成形部Nにより密着保持されている。
【0056】
外方部材20は、軸方向断面が内径向きに開口した略コの字形状を成し、大径内周面21と、大径内周面29の軸方向両側に設けられた一対の小径内周面25、25と、大径内周面29の軸方向両端部と小径内周面25、25との間に形成された一対の肩面23、23とを備える。大径内周面29は、平滑な円筒面状に形成され、本実施形態では芯金Mの内周面M3で構成される。大径内周面29は、ラジアル軸受面29Tを形成する。大径内周面29は、ラジアル軸受隙間Rを介して内方部材11のラジアル軸受面12Rを形成する外周面12と対向する(図11参照)。
【0057】
小径内周面25、25は樹脂成形部Nに形成され、大径内周面29より小径となっている。本実施形態では、小径内周面25、25が、内方部材11の側面23の平坦面23bの径方向範囲内(図示例では、平坦面23bの径方向略中央部)に位置している。小径内周面25、25には、潤滑油の漏れ出しを防止するために、撥油剤が塗布される。
【0058】
一対の肩面23、23は樹脂成形部Nに形成され、軸方向中央面に関して対称な形状を成している。肩面23は、図11に拡大して示すように、外径側に設けられたテーパ面23aと、内径側に設けられた平坦面23bとからなる。テーパ面23aは、外径側に向けて軸方向中央部側(すなわち、肩面23、23が互いに接近する側)に傾斜して設けられる。平坦面23bは、テーパ面23aの内径端から内径側に延びる。テーパ面23a及び平坦面23bは、それぞれスラスト軸受面23aT、23bTを形成し、スラスト軸受隙間Tを介して、それぞれ内方部材11の側面23のテーパ面23a及び平坦面23bと対向する。本実施形態では、テーパ面23a及び平坦面23bは凹凸のない平滑な面となっている。
【0059】
芯金Mの軸方向寸法は、内方部材11の軸方向寸法よりも大きい。詳しくは、芯金Mの軸方向両端面M2、M2が、内方部材11の側面14、14の平坦面14b、14b、及び、この面と軸方向に対向する外方部材20の肩面23、23の平坦面23b(詳細は後述する)よりも、軸方向外側に位置している。これにより、樹脂成形部Nの芯金Mよりも内径側の部分が、芯金Mの軸方向両端面M2、M2よりも軸方向中央側に突出した状態となる。
【0060】
外方部材20の外周面27は樹脂成形部Nに形成され、図10に示すように、ケース4への取り付け面となる円筒面27aと、円筒面27aの軸方向両端部に設けられた面取り部27bとを有する。円筒面27a(取り付け面)は、ケース4側に圧入や接着等の適宜の手段で固定される。
【0061】
外方部材20は、芯金Mと内方部材11をインサート部品として樹脂の射出成形で形成される。内方部材11と外方部材20の一体品のうち、外方部材20の樹脂成形部Nには成形収縮が生じる。一般に、樹脂成形品の成形収縮は、肉厚の中央部に向けて生じる。図10に示す樹脂成形部Nが軸方向中央側に成形収縮すると、外方部材20の肩面23が内方部材11の側面14に押し付けられる恐れがある。そこで、本実施形態では、外方部材20に芯金Mをインサート部品として配置する。芯金Mは、内方部材11よりも軸方向寸法が大きく、内方部材11の軸方向両側にはみ出すように設けられる。この芯金Mにより、樹脂成形部Nの軸方向中央側への収縮を妨げている。すなわち、外方部材20の肩面23の軸方向の成形収縮は、芯金Mの軸方向両端面M2の軸方向位置を基準として生じ、この領域の樹脂成形部Nの樹脂は基準位置に向けて軸方向両側から収縮する。その結果、内方部材11の側面14に密着した外方部材20の肩面23が、内方部材11から剥離する方向に収縮して、後退する。これにより、内方部材11の側面14と外方部材20の肩面23との間に軸方向の隙間が形成され、この隙間がスラスト軸受隙間Tとして機能する。
【0062】
射出成形に際し、金型に内方部材11と芯金Mを位置決めしたとき、内方部材11の外周面12と芯金Mの内周面M3との間の径方向隙間(ラジアル軸受隙間Rに相当する隙間)には、溶融樹脂が入り込まず、且つ、内方部材11と外方部材20(芯金M)とが滑らかに相対回転可能な値に設定する必要があり、例えば10〜50μm、好ましくは20〜40μmの範囲内に設定される。本実施形態では、内方部材11及び芯金Mを何れも成形性に優れた焼結金属で形成しているため、内方部材11及び芯金Mを優れた寸法精度で成形することができる。従って、これらの間に形成される隙間を高精度に設定することができ、この隙間を上記のような微小な範囲内に設定することが可能となる。
【0063】
この状態で溶融樹脂を射出する。溶融樹脂の主成分樹脂としては、収縮率が大きいもの(1%以上)が好ましく、例えばポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、液晶ポリマー(LCP)等を使用することができる。これらのうち、収縮率が特に大きいポリアセタールが最も好ましい。この主成分樹脂に、強化材や導電化材等の各種充填材を必要に応じて配合したものが溶融樹脂として用いられる。この溶融樹脂に配合する充填材の種類や配合量を適宜設定することで、射出成形時に、内方部材11と芯金Mとの間の径方向隙間に溶融樹脂が入り込みにくくすることができる。
【0064】
以上の構成からなる本実施形態の流体動圧軸受装置10の内部空間には、焼結金属製の内方部材11及び芯金Mの内部気孔を含めて、潤滑油が充填される。潤滑油は、図11に示すように、ラジアル軸受隙間Rの全域及びスラスト軸受隙間Tの内径端付近まで満たされる。潤滑油は、スラスト軸受隙間Tの毛細管力により外径側(ラジアル軸受隙間R側)に引き込まれる。潤滑油の油面は、スラスト軸受隙間Tに保持され、好ましくは、スラスト軸受隙間Tの平坦面13b、23b間に保持される。
【0065】
回転軸8が回転すると、流体動圧軸受装置10の内方部材11の外周面12と外方部材20の大径内周面21(芯金Mの内周面M3)との間のラジアル軸受隙間Rに油膜が形成される。そして回転軸8の回転に伴い、ラジアル軸受隙間Rの油膜の圧力が動圧溝12aにより高められ、この油膜の動圧作用により回転軸8および内方部材11が外方部材20に対してラジアル方向に非接触支持される。
【0066】
これと同時に、流体動圧軸受装置10の内方部材11の両側面14、14と、これらに対向する外方部材20の肩面23、23のとの間のスラスト軸受隙間Tに油膜が形成される。そして回転軸8の回転に伴い、スラスト軸受隙間Tの油膜の圧力が高められ、この油膜の動圧作用により内方部材11が外方部材20に対して両スラスト方向に非接触支持される。
【0067】
この実施形態では、スラスト軸受隙間Tに面する内方部材11の側面14や外方部材20の肩面23が、凹凸のない平滑な面に形成されているが、これに限らず、例えばスラスト軸受隙間Tを介して対向する何れか一方の面に、スラスト軸受隙間Tの潤滑油に動圧作用を積極的に発生させる動圧溝を形成してもよい(図示省略)。スラスト用の動圧溝を、スラスト軸受隙間Tの潤滑油を外径側(ラジアル軸受隙間R側)に押し込むポンプアウトタイプの動圧溝とすれば、潤滑油をラジアル軸受隙間R側に引き込むことができ、油漏れをより確実に防止できる。焼結金属製の内方部材11にスラスト用動圧溝を形成すれば、内方部材11のサイジングと同時に型成形することができる。一方、外方部材20の樹脂成形部Nにスラスト用動圧溝を形成すれば、外方部材20の射出成形と同時にスラスト用動圧溝を型成形することができる。
【0068】
また、この実施形態では、内方部材11の外周面12に動圧溝12aを形成した場合を示したが、これに限らず、例えば内方部材11の外周面12を円筒面状とする一方で、これと径方向に対向する外方部材20の大径内周面21にラジアル動圧発生部を形成してもよい。あるいは、ラジアル軸受隙間Rを介して対向する内方部材11の外周面12及び外方部材20の大径内周面21を共に円筒面状とすることにより、いわゆる真円軸受を構成してもよい。この場合、何れの面にもラジアル用動圧溝は形成されていないが、内方部材11の回転に伴ってラジアル軸受隙間Rの潤滑油が流動することにより、動圧作用が発生する。
【0069】
本発明の第2の実施形態の変形例を図13に示す。上記の第2の実施形態では、外方部材20が芯金Mを有する場合を示しているが、これに限らず、例えば図13に示すように、外方部材20を樹脂成形部Nのみで構成してもよい。この場合、外方部材20は、内方部材11をインサート部品とした樹脂の射出成形で形成される。射出成形した後、樹脂成形部Nの成形収縮により、外方部材20の大径内周面21及び端面23、23が内方部材10から剥離する。このとき、外方部材20に芯金Mを設けなくても、外方部材20の大径内周面21及び端面23、23が内方部材11から剥離する方向に成形収縮するような材料で、樹脂成形部Nを形成する必要がある。例えば、液晶ポリマー(LCP)を主成分とする樹脂で樹脂成形部を形成すれば、上記のような成形収縮を生じさせることが可能である。
【0070】
以上の実施形態では、動圧溝12a、13a、22a、23a、24aをヘリングボーン形状で構成したが、スパイラル形状、ステップ形状、円弧形状など適宜の動圧溝で構成することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 歯科ハンドピース
4 ケース
7 タービン
8 回転軸
10 流体動圧軸受装置
11 内方部材
11a 内周面
12a 動圧溝
12R ラジアル軸受面
12T スラスト軸受面
13a 動圧溝
13T スラスト軸受面
14aT スラスト軸受面
14bT スラスト軸受面
20 外方部材
20a 第1外方部材
20b 第2外方部材
23a 動圧溝
23T スラスト軸受面
23aT スラスト軸受面
23bT スラスト軸受面
24a 動圧溝
24T スラスト軸受面
27 外周面
29R ラジアル軸受面
33T スラスト軸受面
30 ダンパー機構
31 ダンパー機構
32 連通孔
33 シール部材
A 軸線
M 芯金
N 樹脂成形部
R ラジアル軸受隙間
T スラスト軸受隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具を取り付け、タービンにより駆動される回転軸を一対の軸受部によってケースに回転自在に支持する歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置であって、この流体動圧軸受装置は、ラジアル軸受面とその両端に形成したスラスト軸受面を備えた外方部材と、この外方部材の内側に配置され、前記ラジアル軸受面とスラスト軸受面のそれぞれに対向するラジアル軸受面とスラスト軸受面を備えた内方部材とからなり、前記外方部材と内方部材のラジアル軸受面間にラジアル軸受隙間を形成し、かつスラスト軸受面間にスラスト軸受隙間を形成し、これらの軸受隙間に流体を介在させて構成されており、前記外方部材がケースに取り付けられる外周面を有すると共に、前記内方部材が回転軸に取り付けられる内周面を有することを特徴とする歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項2】
前記軸受隙間に介在する流体が潤滑油であることを特徴とする請求項1に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項3】
前記内方部材のラジアル軸受面およびスラスト軸受面の少なくとも1つに動圧溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項4】
前記内方部材のラジアル軸受面の動圧溝が転造加工により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項5】
前記内方部材が焼結体で形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項6】
前記焼結体が、ステンレス系材料であることを特徴とする請求項5に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項7】
前記焼結体が、100MPa以上の引っ張り許容応力を有する金属焼結体であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項8】
前記焼結体が、セラミックスであることを特徴とする請求項5に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項9】
前記外方部材が、第1外方部材と第2外方部材の2つの部材から形成され、これら2つの部材の縦断面形状がいずれも略L字形状であり、第1外方部材の半径方向部の内側面にスラスト軸受面が形成されると共に、第2外方部材の円筒部内周面にラジアル軸受面が形成され、かつ半径方向部の内側面にスラスト軸受面が形成されたものであって、第1外方部材の円筒部内周面に第2外方部材の円筒部外周面が嵌合されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項10】
前記第1外方部材の半径方向部の内側面および第2外方部材の半径方向部の内側面の少なくとも一つにプレス加工により動圧溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項11】
第1外方部材および第2外方部材がステンレス系材料であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項12】
第1外方部材および第2外方部材の内、少なくとも内側に嵌合される外方部材がSUS430であることを特徴とする請求項11に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項13】
前記外方部材が、内方部材をインサート部品とした樹脂の射出成形品であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項14】
前記外方部材の樹脂成形部の軸方向の成形収縮により外方部材のスラスト軸受面を内方部材から剥離して、スラスト軸受隙間を形成したことを特徴とする請求項13に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項15】
前記外方部材に芯金を設け、外方部材を、内方部材と、内方部材の外径側に配置した芯金とをインサート部品として樹脂で射出成形したことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項16】
前記内方部材の両スラスト面を、外径側に向かって互いに接近する方向に傾斜したテーパ状に形成し、このスラスト面を覆う半径方向部を前記外方部材に一体に射出成形したことを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項17】
前記軸受隙間に介在する潤滑油がNSF H1基準を満たすことを特徴とする請求項2〜16のいずれか1項に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項18】
前記軸受隙間に介在する潤滑油がポリαオレフィン(PAO)を基油とすることを特徴とする請求項2〜17のいずれか1項に記載の歯科ハンドピース用流体動圧軸受装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の流体動圧軸受装置を組み込んだ歯科ハンドピースであって、ケースと外方部材との間にダンパー機構を設けたことを特徴とする歯科ハンドピース。
【請求項20】
前記ダンパー機構がメッシュバネによるものであることを特徴とする請求項19に記載の歯科ハンドピース。
【請求項21】
前記ハンドピースのケースにおけるタービン収容空間と外部とを連通する通気孔を設けたことを特徴とする請求項19又は請求項20に記載の歯科ハンドピース。
【請求項22】
前記ハンドピースの回転軸の切削工具取り付け側において、流体動圧軸受装置とは別体で、回転軸と接触するシール機構を設けたことを特徴とする請求項19〜21のいずれか1項に記載の歯科ハンドピース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−206121(P2011−206121A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74446(P2010−74446)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】