説明

殺菌性アルコール可溶性第四級アンモニウムポリマー

【課題】 アルコール若しくはグリコール可溶性、水不溶性殺菌剤組成物ならびに皮膚を含む様々な表面を殺菌するため、および永続的抗菌特性を提供するために同一物を使用する方法。
【解決手段】 本組成物は、(1)少なくとも1つのグリコールまたは少なくとも1つのグリコールとアルコールとの混合物、および(2)金属若しくは金属含有化合物を使用せずに表面へ抗菌特性を付与することのできる抗菌ポリマーを含む。本組成物は、表面に塗布され、前記基質上に抗菌ポリマーのコーティングを残して蒸発させられる。または、本組成物は、前記基質中若しくは内側に組み込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングおよび接着剤用途のための殺菌剤組成物に関する。殺菌剤は、それらを表面に塗布した後に長期間にわたって持続性のある抗菌活性を提供する。
【背景技術】
【0002】
ヒトおよび動物の健康は、細菌、酵母、ウイルス、真菌、カビ、および原虫を含む多数の微生物により有害な影響を受ける可能性がある。ヒトおよび動物と微生物との接触は、多種多様な疾患、疾病、および病気を引き起こすことが知られている。
【0003】
硬表面(例えば、調理器具の表面および手術室の設備)、食品(例えば、果物および野菜)、および皮膚(例えば、手)を石鹸と水で洗うことにより、これらの表面から多数の微生物を除去できることは周知である。石鹸で手を洗うことによる微生物の除去は、主に石鹸の界面活性作用(surfactancy)と洗うという行為の機械的作用との組み合わせによるところが大きい。石鹸を用いた洗浄はすでに存在する相当に多数の微生物を除去するのに効果的であるが、すでに洗った手にその後で接触する微生物に対する永続的または持続的効果はあるとしてもほんの僅かに過ぎないので、ウイルス、細菌、および他の微生物の蔓延を減少させるためには頻繁に手を洗うように推奨されることが多い。この推奨に従うことは一個人の健康および衛生にとって重要であるが、健康および食品産業に従事する個人にとっては特に重要である。
【0004】
皮膚を含む表面から微生物を除去するための抗菌洗浄製品は、様々な種類で入手することができる。個人の衛生のために、ならびに健康および食品産業に従事する職員によって利用される最も一般的な種類には、石鹸を含有する種類、およびアルコールを含有する種類が含まれる。
【0005】
洗剤および石鹸などの従来の水で洗い流せる殺菌用製品は、適切な方法で使用されれば、表面上に存在する微生物数を減少させることには一般に有効である。例えば、トリクロサンを含有するDial(登録商標)液体石鹸は、手の洗浄に使用した場合には、標準的な医療従事者手洗い試験(Health Care Personal Handwash Tests:HCPHWT)によって測定すると、30秒間の手洗いを1回行った後に皮膚上に存在する細菌数を約2.0〜2.5桁(99.0〜99.7%)減少させることが証明されている。つまり、洗浄後には、洗浄された皮膚は、30秒間の手洗い前の洗っていない皮膚のたった0.3%〜1.0%の細菌数でしか汚染されていない。石鹸は、適切に使用されれば存在する大部分の細菌を除去できるが、表面上に残留する抗菌活性の持続性は僅かであるため、手を洗った直後には他の汚染された表面と接触することで手の再汚染が始まる。さらに、これら従来の水で洗い流せる殺菌剤製品は、相当に多量の水を使用する洗浄法で使用するように開発されているので、それらの使用は相当に多量の水を利用可能な場所に限定される。
【0006】
別の一般的に使用される種類の殺菌剤は、比較的に高濃度のアルコールを含有する製品である。アルコールをベースとする殺菌剤は、処理された表面上に存在する微生物のかなりの部分を直ちに除去または不活性化する。アルコール、典型的にはエタノールをベースとする殺菌剤は、アルコールが体温で皮膚から容易に蒸発するので、殺菌剤としての追加の利点を有する。Purell(登録商標)は、有効成分としてアルコールを使用する皮膚殺菌剤の一例である。この場合も、適切に塗布されたアルコールをベースとする殺菌剤は、塗布前の皮膚に存在する細菌を除去または破壊することに有効であるが、処理直後には、他の汚染された表面と接触することで処理された皮膚の再汚染が始まる。
【0007】
最近の研究は、アルコール含有量が約60%未満であるアルコールをベースとする除菌剤は所望の抗菌活性度を提供するには適していない可能性があり、95%を超えるアルコール含有量は、水の非存在下ではタンパク質が容易に変性しないために効力が低いことを示している[「Hand Hygiene Revisited:Another Look at Hand Sanitizers and Antibacterial Soap」SAFEFOOD NEWS−Spring 2004−Vol.8 No.3,Colorado State University Cooperative Extension]。
【0008】
皮膚殺菌剤中では、アルコールの代わりに、またはアルコールと併用して、他の水溶性有効成分が使用されている。Birnbaumら(米国特許第6,441,045号明細書)は、皮膚用殺菌剤として使用するための水溶性第四級化合物を開示している。Beerseら(米国特許第6,217,887号明細書)は、水で洗い流すのではなく残留することを意図した、水を98.85%まで含有する溶液中に抗菌活性剤、アニオン性界面活性剤、およびプロトン供与剤を含有する皮膚用抗菌組成物を開示している。Petersenら(米国特許第6,627,207号明細書)は、アルコール含有量が低い(<30%)、水をベースとする速乾性ゲルタイプの殺菌用組成物を開示している。Osborneら(米国特許第5,776,430号明細書および同第5,906,808号明細書)は、0.65〜0.85%のグルコン酸クロルヘキシジン、または薬学的に許容される塩、および50〜60%の変性アルコールを含有する局所抗菌洗浄組成物について記載している。Kross(米国特許第5,597,561号明細書)は、微生物感染の予防を目的とし、プロトン酸、金属亜塩素酸塩、およびゲル化剤を含有する、水をベースとする粘着性の殺菌用組成物を開示している。Smythら(米国特許第5,916,568号明細書)は、アルコール、過酸化水素、および皮膚刺激の防止に役立つ皮膚軟化剤から成る、速乾性の手の除菌用ローションを開示している。Sawanら(米国特許第6,180,584号明細書)は、担体中にポリマー膜形成材料および金属系殺生剤を含む殺菌用組成物を開示しており、この組成物は、表面に塗布されると、殺生剤が非浸出性で結合している、複合体形成している、連結している、または分散している表面上に水不溶性ポリマー膜を形成する。
【0009】
Caustonら(米国特許第5,869,600号明細書)は、制汗剤として利用される膜形成ポリマーとして使用するための、ある濃度の第四級アンモニウム基を含有する水不溶性、アルコール可溶性コポリマーの使用について開示している。
【0010】
他のアプローチは、反応性シランをベースとする第四級アンモニウム化合物をシロキサン結合によって特定基質に結合させる方法を利用してきた。例えば、AEGIS Environment社の製品ラインには、3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライドのポリマーを利用する製品が含まれており、一般にはアルコールをベースとする溶液を用いて塗布される。製品に関する文献によれば、AEM5700は43%の3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライドのメタノール溶液であり、布地および他の物体表面をコーティングするために利用することができる。この方法は、第四級アンモニウム抗菌化合物と処理される表面との間に永続的な共有結合の形成を生じさせる。そこで、アルコールをベースとする溶媒を用いた場合でさえ、塗布された抗菌剤の除去はほぼ不可能である。さらに、反応性トリメチルシリル化合物は毒性であり、皮膚上への使用には適していない。
【0011】
Sawan(米国特許第6264936号明細書)は、接触した微生物を殺滅する抗菌コーティングまたは層を基質表面上に形成するために使用できる抗菌物質について記載している。文献内で「非浸出性」であると特徴付けられた抗菌コーティングまたは層は、殺生性金属物質をマトリックスと結合させるように基質表面上に固定化された有機マトリックスの組み合わせである。微生物がコーティングまたは層に接触すると、殺菌性金属物質が殺菌に十分な量で微生物の方に移動する。詳細には、使用される金属系殺菌剤は銀である。この方法は「非浸出性」コーティングを提供することを目的としているが、殺菌性金属物質が微生物の方に「移動する」という単なる事実は非浸出性の一般的定義とは反対である。さらに銀および銀塩は非常に溶解度が低いが、抗菌活性のメカニズムは銀イオン溶液の限定された濃度に依存することは知られている。実際に、Sawanは後に(第3段落、第9行)、上記の記述を「実質的に低い浸出物」と読めるように修飾している。Sawanの特許の好ましい実施形態によると、有機物質はポリヘキサメチレンビグアニドポリマーを有し、これがN,N−ビスメチレンジグリシジルアニリンなどのエポキシドと架橋し、架橋ネットワークまたはマトリックスを形成する。この架橋工程は、マトリックスの溶解を防ぐために必要である。Sawanが記載している物質は、一般的に80〜120℃の範囲の硬化工程を必要とし、多くの基質には、特にヒトの皮膚には適さない。さらに、好ましい有機マトリックスポリマー(ポリヘキサメチレンビグアニド)は、高濃度ではヒト細胞に毒性を持つことが知られている(米国特許第6,369,289B1号明細書を参照)。抗菌剤として銀を使用することもまた、望ましくない作用を招く。このアプローチの1つの不利点は、銀に耐性のある特定の細菌が発達できたことである(Silver S.,「Bacterial silver resistance:molecular biology and uses and misuses of silver compounds.「FEMS Microbiology Reviews,2003;27:341−353)。このアプローチのもう1つの不利点は、拡散した銀が創傷に入って皮膚に染みを作る可能性がある点である。さらに銀の追加の不利点は、原料費が高いことである。同様のアプローチは、米国特許第6,180,584号明細書、第6,126,931号明細書、第6,030632号明細書、第5,869,073号明細書、第5,849,311号明細書、および第5,817,325号明細書において報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
個人の衛生向上だけでなく、健康および食品産業両方における潜在的汚染源を減少させるためにも、表面を殺菌するための改善された手段および方法が必要である。現在使用されている非永続的殺菌剤では、健康産業(例えば、医師、看護師、および患者)ならびに食品産業(例えば、食品取扱業者、食品調理者、料理人、および給仕人)の職員は石鹸などの殺菌剤を皮膚に1日数回、時には20回若しくはそれ以上塗布する必要がある。結果として、個人の衛生ならびに健康および食品産業内の衛生のために、表面を効果的に消毒することができ、処理された表面と接触する微生物にその後も効くように、その表面で持続的に活性である殺菌剤が必要である。
【0013】
効果的で持続性のある表面殺菌剤の必要性は、健康産業のあらゆる態様で感じられている。手術、注射、瀉血、およびカテーテル挿入前の皮膚消毒に本発明が有用であることは、本発明の1つの観点である。微生物は、皮膚が穿通、破損、または裂けた場合は常に、患者の健康および安全性にとって脅威となる。例えば、そのような病原体は外科手術中に危険となる可能性がある。手術前に切開部位を十分に消毒しないと、皮膚に存在する微生物は手術中または手術後に切開部位に接近して感染を引き起こす。そのような感染を防ぐために、高い抗菌活性と広範な作用範囲を有する殺菌剤を用いて、手術前に切開部位を消毒することは重要な意味を持つ。外科手術は長時間にわたって続く可能性があるため、切開部位の最初の消毒が持続し、長時間持続する抗菌活性を提供することも重要である。米国では食品医薬品局が、手術前皮膚殺菌剤により、腹部などの乾燥した皮膚領域のフローラ数を少なくとも2.5桁、または確実に定量するためには低すぎるレベル(約25cfu/cm未満)まで減少させることができることを要求している。鼠径部などの湿潤した皮膚において、殺菌剤は、初期微生物集団を少なくとも3.2対数(1.5×10cfu/mL)減少させ、このレベルを少なくとも4時間維持できなければならない。
【0014】
効果的で持続性および永続的表面殺菌剤に対する必要性は、食品収集(例えば、乳牛乳頭の衛生)、食品加工(例えば、食肉処理場)、食品包装(例えば、魚の缶詰工場)、および食品流通(例えば、レストランおよび食料品店)を含む食品産業のあらゆる態様でも感じられている。本組成物は、人が食品を取り扱う責任を有するあらゆる場合に常に有用であり、特に同一人が食品と金銭を扱う責任を有するために(例えば、調製食料品店のレジ係および給仕係)、適切な衛生が困難なあらゆる場合において有用であることは、本発明の1つの実施形態である。
【0015】
多数の微生物が抗菌化合物に対する耐性を発達させる能力は重大な問題である。メタシリン(methacillin)耐性黄色ブドウ球菌(MSRA)などの微生物による感染が蔓延しているとの報告は報道機関にあふれている。そのような耐性は、多くの抗生物質、および金属をベースとする系(銀など)で発生することが知られている。これに対して、第四級アンモニウム化合物は、耐性菌の発達を促進しない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
産業上の利用
本発明は、皮膚を含む様々な表面を殺菌するため、および持続性のある抗菌特性を提供するのに適した、グリコール若しくはアルコール可溶性、水不溶性の抗菌ポリマーを含む殺菌用組成物を提供する。
【0017】
本発明は、基本的にグリコールから成る溶媒、または基本的にグリコールおよびアルコールを含む混合液から成る溶媒を含む殺菌用組成物であって、抗菌ポリマーは、アルコール、グリコール若しくはその混合液中に易溶性であるが水には不溶性であり、溶媒は前記抗菌ポリマーを表面に適用するための担体として機能し、それにより前記表面は抗菌ポリマーのコーティングを獲得する殺菌用組成物を提供する。
【0018】
抗菌ポリマーが前記表面に持続性のある抗菌活性を付与することは、本発明の1つの利点である。
【0019】
流体殺菌をもたらす濃度で、接触している流体への浸出、溶出、または放出を必要としない、接触殺菌メカニズムに基づいて抗菌活性が発生するように抗菌ポリマーが選択されることは、本発明の1つの実施形態である。さらに、抗菌ポリマーは、抗菌組成物が塗布された表面から感知できるほどに浸出、溶出、または放出しないことが好ましい。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、アルコール含有溶媒は、基本的にグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタングリコール、それらの異性体および誘導体、ならびに上記のいずれかの混合物から成る群から選択される少なくとも1つのグリコールから基本的に成る。殺菌剤溶液のグリコール含有量は、60重量%〜95重量%であるのが好ましい。
【0021】
本発明の特定の実施形態において、アルコール含有溶媒は、基本的に少なくとも1つのアルコールおよび1つのグリコールの混合物から成るが、アルコールは、エタノール、メタノール、およびイソプロパノールから成る群から選択され、グリコールは、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタングリコール、それらの異性体および誘導体、ならびに上記のいずれかの混合物から成る群から選択される。殺菌剤溶液のアルコール−グリコール混合物含有量は、60重量%〜95重量%であるのが好ましい。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、抗菌ポリマーは、少なくとも1つのアリルまたはビニル含有モノマー部分から引き出された、または製造された分子から基本的に成ってもよい。本発明の一部の実施形態において、抗菌ポリマーは、少なくとも1つの第四級アンモニウム含有モノマー部分を有する分子から基本的に成る。
【0023】
第四級アンモニウム部分が抗菌ポリマーに共有結合している、または共有化学結合により抗菌ポリマーの分子構造に結合している、およびポリマーの分子構造の一部であること、ならびに前記第四級アンモニウム部分がポリマーの主鎖、またはポリマーの側鎖のいずれかに位置することは、本発明の1つの実施形態である。そこで第四級アンモニウム部分は、またはポリマー構造の唯一の部分である、ポリマー構造内に組み込まれている、またはポリマー構造に結合している可能性がある。「主鎖」および「側鎖」はポリマーの分子構造の説明に一般に用いられる用語であり、当業者であれば精通している。
【0024】
本発明において使用される一部の抗菌ポリマーは、例えば共有化学結合によりポリマーの分子構造に結合しているモノマー部分内に少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含有するポリウレタンポリマーを形成するための二官能性アルコールとジイソシアネートとの反応によるなどの逐次重合によって合成することができる。好ましくは、ポリウレタンポリマー中の第四級アンモニウム基の数は、ポリウレタンポリマー650g当たり少なくとも1モル(6.02×1023)である。より好ましくは、ポリウレタンポリマー中の第四級アンモニウム基の数は、ポリウレタンポリマー350g当たり少なくとも1モル(6.02×1023)である。
【0025】
抗菌ポリマー分子は、5〜25,000、好ましくは50〜10,000、およびより好ましくは100〜5,000の平均重合度を有してもよい。
【0026】
本発明の1つの態様において、殺菌用組成物は表面に塗布されるが、この表面は動物の皮膚、ヒトの皮膚、非生物多孔質表面、または非生物無孔質表面であってもよい。
【0027】
例えば、殺菌用組成物は医学的処置の前に皮膚に塗布することができる。用語「医学的処置」には、これに限定されるものではないが、手術、注射、瀉血、およびカテーテル挿入が含まれ、皮膚を切り開く他の処置がさらに含まれる。さらにまた、殺菌用組成物は獣医学的処置の前に動物の皮膚に塗布することもできる。用語「獣医学的処置」には、これに限定されるものではないが、手術、注射、カテーテル挿入、および動物の皮膚または皮革を切り開く他の処置が含まれる。
【0028】
本発明の別の実施形態において、感染患者間または患者の感染部位間の細菌の伝搬を最小限に抑えるために、殺菌用組成物を医療従事者の手に塗布することができる。
【0029】
本発明の別の実施形態において、殺菌用組成物は、化粧品内での細菌増殖を減少させる、または防止するために化粧品調製物中に組み込むことができる。
【0030】
本発明の1つの利点は、抗菌ポリマーコーティングの多数の実施形態が皮膚に目に見える染みを作らず、そして無色である点である。
【0031】
本発明の別の実施形態は、コーティングを可視化できる色素を含有する殺菌用組成物を提供する。一部の実施形態において、色素は抗菌ポリマーに結合しており、それにより、コーティングからの色素の移動を防止する。
【0032】
本発明の多数の実施形態の1つの利点は、溶媒が消散した後に、コーティングが概して無臭であることである。
【0033】
本殺菌用組成物の多数の実施形態は、約5〜約9、好ましくは6.5〜8.0のpHを有する。
【0034】
本殺菌用組成物の様々な実施形態は、液体、ゲル、フォーム、およびエアロゾルから成る群から選択される形態で皮膚に塗布することができる。
【0035】
選択的に、本殺菌用組成物は、薬物、抗菌剤、防腐剤、増粘剤、保湿剤、皮膚軟化剤、ビタミン、一時的色素、持続的色素、および紫外線吸収剤から成る群からさらに選択される、少なくとも1つの添加物を含有する。そのような添加物が抗菌性の場合は、添加物は、持続的な活性を有する抗菌ポリマーの溶媒としても機能するアルコールであってもよい。抗菌性または防腐性添加物は、第四級アンモニウム塩、ビグアニド、またはフェノール化合物であってもよい。特定の実施形態において、追加される抗菌剤または防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ジメチルジデシルアンモニウムクロライド、またはそれらの混合物などの第四級アンモニウム塩である。別の実施形態において、追加される抗菌剤または防腐剤は、クロルヘキシジンまたはポリ(ヘキサメチレンビグアニド)などのビグアニドである。別の実施形態において、追加される抗菌剤または防腐剤は、フェノールまたはトリクロサンなどのフェノール化合物である。一部の実施形態において、皮膚軟化剤は、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、鉱油、脂肪アルコール、イソプロピルパルミテート、ラノリン、例えばラノリンのエトキシル化アセチル化アルコールおよび界面活性アルコール誘導体などのラノリンの誘導体、スクアラン、脂肪アルコール、グリセリン、ならびに例えばジメチコン、シクロメチコン、若しくはシメチコンなどのシリコン類、またはそれらの混合物である。別の実施形態において、薬物は、抗生物質、抗炎症薬、鎮痛薬、または麻酔薬である。
【0036】
一部の実施形態において、抗菌ポリマーは、1種類のモノマーを少なくとも1つの種類の異なる他のモノマーと混合する工程と、これらのモノマーを共重合させる工程であって、モノマーの少なくとも1つは少なくとも1つの第四級アンモニウム部分を有する工程と、アルコールに易溶性で水に不溶性のコポリマーを製造する工程とによって製造することができる。
【0037】
一部の実施形態において、抗菌ポリマーは、モノマーを重合させる工程であって、モノマーの少なくとも1つは少なくとも1つの第四級アンモニウム部分を有する工程と、アルコールに易溶性で水に不溶性のコポリマーを製造する工程とによって製造することができる。
【0038】
本発明の別の選択的実施形態において、どちらもポリマー分子構造に共有結合している、または共有化学結合によりポリマー分子構造に結合しているので、ポリマー分子構造の一部であり、ポリマーの主鎖、またはポリマーの側鎖のいずれかに位置する色素(例えば、フルオレセイン)および抗菌剤(例えば、第四級アンモニウム)単位の両方を含有するポリマーが提供される。
【0039】
基本的にアルコールおよび/またはグリコールから成る溶媒に易容性であるが、水に不溶性である、共有化学結合によりポリマーの分子構造に結合した少なくとも1つの第四級アンモニウム部分を含有し、および表面に塗布された場合に永続的抗菌活性を提供することができるポリウレタンポリマーを提供することは、本発明の1つの実施形態である。
【0040】
抗菌ポリマーとそれが塗布される基質の間に共有化学結合が形成されないことは、本発明の1つの実施形態である。さらに、抗菌ポリマーは、それが塗布されている基質から、アルコール、グリコール、または有意なアルコール含有量を有する溶媒を用いることにより、取り除くことができる。
【0041】
金属または金属塩が抗菌物質として使用されないことは、本発明の1つの実施形態である。
【0042】
表面に塗布された後、抗菌ポリマーに不溶性を付与するために硬化する工程を必要としないことは、本発明の1つの実施形態である。
【0043】
抗菌ポリマーの全ポリマー重量の約50%未満が水または水溶液中に可溶性であることは、本発明の1つの実施形態である。この実施形態は、抗菌ポリマーの永続的および即効性特性を強化する。この活性の強化は、低分子量ポリマーを用いると達成できる。
【0044】
本発明のアルコール可溶性またはグリコール化溶性の抗菌ポリマーを、医療機器および家庭用品を含むポリマー器具の成分として利用できることは、本発明の1つの実施形態である。本発明の抗菌ポリマーは、例えば化粧品調製物、縫合糸、または創傷ドレッシングなどの他の製品に組み込むことのできる、またはそれらを形成するために使用できるフィルム、繊維、ゲル、フォーム、接着剤、シーラント若しくはコークを製造するために利用することができる。
【0045】
本発明の別の実施形態は、例えば医療用縫合糸または多繊維ポリエステル縫合糸などの合成縫合糸のための永続的抗菌処理を提供することである。
【0046】
本発明の別の実施形態は、非浸出性抗菌性創傷ドレッシングとして使用される親水性ポリウレタンフォーム中に組み込むことができる、水不溶性であり、アルコール可溶性またはグリコール化溶性のいずれかである抗菌ポリマーを提供することである。
【0047】
プラスチックフィルム若しくはシートに塗布できる紫外線硬化型コーティングに組み込むことができる、水不溶性であり、アルコール可溶性またはグリコール化溶性のいずれかである抗菌ポリマーを提供することは、本発明の1つの実施形態である。コーティングされたフィルムおよびシートは、所望の形状を有する抗菌製品へさらに熱成形または真空成形することができる。
【0048】
基質を殺菌する方法であって、基質を、第四級アンモニウム部分を含む水不溶性の抗菌ポリマーの溶液で処理する工程であって、溶媒および/またはポリマー溶液は全部が、若しくは部分的に基質の表面内に溶解する、吸収される、さもなければ浸透することのできる工程と、溶媒を除去して、基質へ抗菌ポリマーを含浸させる、注入する、コーティングする、接着させる、結合させる、若しくは浸透させるために基質を乾燥させる工程であって、基質に抗菌特性が付与され、液体への曝露によって除去されない工程とを含む方法を提供することは本発明の1つの実施形態である。
【0049】
その中に含浸したポリマーを有する基質は、相互貫入ネットワーク(IPN)を含むことができる。基質は、例えばフィルム若しくは繊維などの最終使用形にあるポリマーであってもよい、または例えば樹脂、ペレット、押し出し材、または粉末を製造するための操作などの成型若しくは成型作業においてその後に使用することを目的とするポリマーであってもよい。
【0050】
基質は、さらにまた布地、木材、または紙であってもよい。基質は、全体に、または部分的にのみポリマー溶液が注入されてもよい。部分的注入の場合には、抗菌ポリマーは、基質の内部全体とは対照的に、基質の表面の大部分に、または直下に沈着させられる。基質は、抗菌ポリマー溶液を調製するために使用される溶媒に不溶性であってもよい;しかし、溶媒が基質材料内に浸透できることが必要である。例えば、ポリマーおよび溶媒の一部の特定の組み合わせは、溶媒の溶解を誘発せずに、基質内への溶媒およびポリマー溶液の吸収を生じさせることができる。
【0051】
溶媒は、さらにまた完全に、または部分的かいずれかで基質を溶解させることができる。例えば、基質を完全に溶解させることのできるポリマー溶液は、ポリマー溶液によって基質の表面が影響を受けることを可能にするために十分に長いが、しかし基質が溶解するほど長くない期間にわたって基質に塗布することができる。この方法で、基質の表面は抗菌ポリマーを用いて修飾されるようになる。
【0052】
本発明の1つの実施形態は、どちらも溶媒中で溶解している第四級アンモニウム部分および少なくとも1つの他のポリマーを含む水不溶性抗菌ポリマーを含む溶液を提供することである。抗菌ポリマーの(アルコール若しくは他の溶媒中の)溶液は、異なるポリマーの溶液と結合することができる、または異なるポリマーを抗菌ポリマー溶液に添加する、またはその中に溶解させて、製品若しくは物体を調製するためにさらに加工処理する;フィルム、チューブ、シート、ロッド、繊維、コーティング、若しくは粉末に形成若しくは成型する;または基質を処理するために使用することのできる適切な溶液若しくは混合物を形成することができる。
【0053】
用語の定義
本願明細書で用いられる以下の用語は、以下の意味を有する。
【0054】
「病原菌(microbe)」若しくは「微生物(microorganism)」は、細菌、ウイルス、原虫、酵母、真菌、カビ、またはこれらのいずれかによって形成された胞子など、あらゆる微生物または微生物の組み合わせを意味する。
【0055】
「抗菌」は、微生物を殺滅する、破壊する、不活性化する、若しくは中和する、または微生物の増殖、生存能力、または伝搬を防止する、若しくは減少させることを可能にする化合物、組成物、物品、または物質の殺菌若しくは静菌特性を意味する。
【0056】
「殺菌剤」は、微生物を破壊する、中和する、またはさもなければ微生物の増殖若しくは生存を妨害する作用物質である。
【0057】
「アルコール」は、化学式C2n+2−x(OH)(式中、nは1〜10の整数であり、xは1〜3の整数である;好ましくは、nは1〜5であり、xは1若しくは2である;およびより好ましくは、nは2若しくは3であり、xは1である)を有する揮発性の液体を意味する。本明細書で使用する用語[アルコール」は、モノヒドロキシアルコール(x=1)ならびに2つ若しくはそれ以上のヒドロキシル基を有するグリコール(x=2、3)を含む。好ましいグリコールは、非毒性である。
【0058】
「可溶性」は、物質が、グリコール、アルコールまたは水など、多量の特定の液体に溶解できることを意味する。アルコール溶媒中に可溶性である多数のポリマーは、グリコール溶媒中にも可溶性である。
【0059】
「易容性」は、問題の溶質が実質的に100%可溶性で、室温において、例えば、特定のグリコール、アルコール、またはアルコールとグリコールとの組み合わせなどの特定溶媒中に20重量%までの溶質を含有する溶液を形成できることを意味する。
【0060】
「不溶性」は、物質が、例えば水などの特定溶媒の(例えば100倍を超える)過剰量にも有意に溶解しないことを意味する。
【0061】
「揮発性」は、溶媒または液体が室温で完全に蒸発することを意味する。
【0062】
「耐久的」は、水に不溶性で、例えば、汗、液体との偶発的接触、または液体で軽く洗う行為によって容易には取り除かれないことを意味する。
【0063】
「付与する」は、基質に機能的特徴若しくは特性を染み込ませる、授ける、伝搬する、運搬する、またはさもなければ組み込むことを意味する。例えば、第四級アンモニウム基は、何かに抗菌活性を付与することができる。
【0064】
「結合する」は、一部の基質を基質内若しくは上に注入する、コーティングする、結合させる、含浸させる、浸透させる、吸収させる、混合する、さもなければ物理的に組み入れることを意味する。
【0065】
「非加水分解性」結合は、結合を含有する物質の通常の使用下で結合が曝露させられると予想される標準条件下では加水分解しない化学結合である。例えば、本発明による創傷ドレッシング若しくは縫合糸の非加水分解性結合は、創傷浸出液、体液、微生物、酵素、防腐性塗剤、クリーム剤、軟膏剤、およびその他の正常な生理的pH範囲内にある水性媒体への曝露などの通常の貯蔵条件下で当該結合の分裂を生じさせる加水分解タイプの反応を経験しない。
【0066】
「接触殺菌」は、流体殺菌を生じさせ得るレベルでは接触している流体への浸出、溶出、または放出を必要としない微生物を殺滅する特性を意味する。
【0067】
「抗菌性金属物質」は、組成物に抗菌活性を付与することができる形態にあるコロイド状銀などの金属、または金属塩を意味する。本発明は、抗菌性金属物質の非存在下で抗菌活性を提供する。
【0068】
「基質」は、「表面」と同義語の場合があり、本明細書に記載した組成物を使用できる抗菌保護を必要とするあらゆる物質を意味する。基質は、組成物とは別個の独立した製品として存在することができ、動物の皮膚、ヒトの皮膚、非生物多孔質表面、または非生物無孔質表面を含むことができる。表面は、ポリマー、樹脂、粉末、布地、木材、紙、皮膚を含むことができ、ペレット、衣服、縫合糸、創傷ドレッシング、および様々な他の製品の構成成分であってもよい。または、本組成物は、例えば、フィルム、繊維、シート、ゲル、フォーム、接着剤、シーラント、コーク、成型品、ロッド、チューブ、医療器具、化粧品調製物、および家庭用品などを含むポリマー器具または物体を形成するために基質と合体することができる。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明の1つの典型的実施形態は、1種類のモノマー部分から構成されるポリマー分子を有する抗菌ポリマーを利用する;または、ポリマー分子は2種類以上のモノマー部分から構成されてもよい。本発明の典型的な実施形態では、モノマー部分の第四級アンモニウム基は、ポリマー分子に抗菌活性を付与する。望ましくは、第四級アンモニウム基を含むそのようなモノマー部分は、ポリマー分子の少なくとも2重量%、より好ましくはポリマー分子の少なくとも10重量%、最も好ましくはポリマー分子の少なくとも25重量%を構成する。好ましくは、抗菌ポリマー中の第四級アンモニウム部分の数は、ポリマー650g当たり少なくとも1モル(6.02×1023)である。より好ましくは、抗菌ポリマー中の第四級アンモニウム部分の数は、ポリマー350g当たり少なくとも1モル(6.02×1023)である。
【0070】
第四級アンモニウム部分が抗菌ポリマーに共有結合している、または共有化学結合により抗菌ポリマーの分子構造に結合している、およびポリマーの分子構造の一部であること、そして前記第四級アンモニウム部分がポリマーのバックボーンとも記載される主鎖、またはポリマーの側鎖のいずれかに位置することは、本発明の1つの実施形態である。そこで第四級アンモニウム部分は、またはポリマー構造の唯一の部分であってもよい、ポリマー構造内に組み込まれてもよい、またはポリマー構造に結合してもよい。「主鎖」および「側鎖」は、ポリマーの分子構造の説明に一般に用いられる用語であり、当業者であれば精通している。ポリマーの主鎖内の基は、さらにまたポリマーの「バックボーン」内にあるとも記載される。側鎖基である基は、ポリマー鎖のバックボーンに「吊り下がっている(ペンダント)」であるとも記載される。
【0071】
本発明の好ましい実施形態では、抗菌ポリマーの第四級アンモニウム部分はポリマーバックボーンに吊り下がっているのではなくポリマーバックボーンの主鎖またはバックボーン内に含有されている。
【0072】
本発明の好ましい実施形態では、抗菌ポリマーの第四級アンモニウム部分は、非加水分解性である安定性化学構造および共有結合によってポリマー分子構造に接続されている。加水分解性結合または構造の例としては、エステル、アミド、および無水物が挙げられる。非加水分解性である結合および構造の例としては、ウレタン、尿素、エーテル(C−O−C)、炭素−炭素(C−C)、および炭素−窒素(C−N)結合が挙げられる。
【0073】
抗菌ポリマーは、水に不溶性であり、および少なくとも75重量%のアルコール、グリコール、またはそれらの混合物の水溶液中に易溶性であるように調製される。より好ましくは、抗菌ポリマーは、水に不溶性であり、および少なくとも50重量%のアルコール、グリコール、またはそれらの混合物の水溶液中に易溶性であるように調製され、最も好ましくは、抗菌ポリマーは水に不溶性であり、および少なくとも25重量%のアルコール、グリコールまたはそれらの混合物の溶液中に易溶性であるように調製される。抗菌ポリマーをルコール含有溶媒中に溶解させて、皮膚を含む表面に適用できることは、本発明の1つの実施形態である。
【0074】
異なる溶媒中でのポリマーの相対溶解度は、自明ではない。本発明は、アルコールおよびグリコール中には可溶性であるが、水には不溶性であるポリマーに関する。この特性の特定の組み合わせは、多数の異なる種類の公知の天然ポリマーおよび合成ポリマーの中でも相当に少数でしか示されない。ポリマーは、一般に水溶性および水不溶性の2群に分類することができる。一部の水不溶性ポリマーは、様々な有機溶媒に可溶性の可能性がある。溶解性は、一般に特定のポリマーと溶媒の組み合わせの特性に依存し、可溶性の組み合わせはポリマーと溶媒の化学構造が類似する場合に生じる。溶媒の極性は、おそらく最も重要な検討材料である。一部の一般的溶媒の極性は、極性が最も高いものから最も低いものへ並べると:水、エタノール、エーテル、トルエン、およびヘキサンとなる。多数の水溶性ポリマーはアルコールにも可溶性である。アルコールでは、極性はメタノール、エタノール、およびイソプロパノールの順に低下し、メタノールの極性が最も水の極性に近い。そこで、多数の水溶性ポリマーは、エタノールまたはイソプロパノールよりもメタノールに溶け易い。エタノール、イソプロパノール、および非毒性グリコールは、本発明を実施するために好ましい溶媒である。イソプロパノールは、一般的には大多数のポリマーにとってあまり優れた溶媒ではない。水に高溶解性であるポリエチレンオキシドでさえ、イソプロパノールには不溶性であり、多数の他の水溶性ポリマー、例えばポリDADMAC、アルギン酸塩、ポリアクリレート、およびポリ(ビニルアルコール)さえと同様である。天然ポリマーおよび合成ポリマー両方の大部分はイソプロパノール中では不溶性である。ポリマーがさらに水に不溶性であるというまた別の要件は、本発明を実施するために有用なポリマーの選択を一層より重要にする。
【0075】
アルコール含有若しくはグリコール含有溶媒は、担体としてだけではなく、速効性の殺菌剤として、二重の目的を果たすことができる。アルコール含有若しくはグリコール含有溶媒が蒸発した、吸収された、または消散した後には、抗菌ポリマーのコーティングが皮膚または他の基質上に残留する。このコーティングは永続的であり、水に不溶性であるので、例えば、汗、液体との偶発的接触、または液体で軽く洗う行為によって容易には取り除かれない。
【0076】
これに限定されるものではないが、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、またはペンタングリコールを含むグリコールが溶媒および担体として使用されることは、本発明の1つの実施形態である。グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、およびペンタングリコールの様々な異性体および誘導体もまた、本発明にとって適切な溶媒である。例えば、ペンタングリコールのファミリーには、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、およびまた別の異性体が含まれる。グリコールの他の誘導体は、本発明のために適切な溶媒の可能性がある。例えば、ハロゲン化グリコールは、本発明の適切な実施形態において使用できる。
【0077】
グリコール類は、一般に低級アルコール(例えばエタノール)ほど揮発性ではない;しかしそれでも本発明の抗菌ポリマーのための溶媒/担体としての有用性を有する可能性がある。例えば、プロピレングリコールは、抗菌ポリマーが皮膚へ塗布するための化粧品調製物中に組み込まれる場合の溶媒/担体として使用できる。プロピレングリコールは蒸発するのではなくむしろ皮膚内に吸収され得るので、持続性のある抗菌ポリマーコーティングが残る。このアプローチは、低級アルコールを使用した場合に起こり得る望ましくない作用(例えば、皮膚刺激、皮膚の乾燥、または炎症)を回避する。
【0078】
アルコールおよびグリコールを含む混合物が溶媒および担体として使用されることは、本発明の1つの実施形態である。この混合物のアルコール成分は、これに限定されるものではないが、エタノール、メタノール、イソプロパノール、およびそれらの混合物を含むことができる。溶媒混合物のアルコール成分が変性アルコール、詳細には、5%イソプロパノール変性剤を有するエタノール(つまり、95%エタノール/5%イソプロパノール)として、米国国税庁の酒税およびたばこ税課(Alcohol and Tobacco Tax Division)が定める市販の非飲料グレードの変性アルコールのDenatured Alcohol SDA 3−Cであることは、本発明の典型的実施形態の1つの実施形態である。混合物のグリコール成分は、例えば、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタングリコール、またはそれらの異性体若しくは誘導体、あるいは上記のいずれかの混合物であってもよい。殺菌剤溶液混合物の結合アルコール−グリコール混合液含有量は、60重量%〜95重量%であるのが好ましい。
【0079】
抗菌ポリマーは、例えばアセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、エーテル、エステル、ベンゼン、トルエン、炭酸塩、炭化水素、または塩素化炭化水素などの他の有機溶媒中にも溶解可能であってもよく、これらの溶媒のいずれかに溶解させた抗菌ポリマーの溶液を使用すると、抗菌組成物を調製することができる;しかしこれらの溶媒は、必ずしもアルコール若しくはグリコールによって提供されるような即時殺菌の利点を提供することはできない。
【0080】
抗菌特性がポリマー構造内に永続的に固定されることは、本発明の1つの特徴である。これは、例えば、ポリマーの分子構造内に抗菌特性を備える化学官能基を直接的に組み込むことによって達成できる。これは、抗菌作用の永続性および持続性を提供するだけではなく、可溶性抗菌成分、例えば低分子量の成分が抗菌コーティングから浸出して基質内に進入する、または抗菌活性を有することが望ましくない領域に移動することも防止する。例えば、皮膚に塗布した場合、本組成物は、永続的抗菌活性を提供する;しかし抗菌活性は、アルコールをベースとする担体溶媒の蒸発後に、ポリマーから移動して皮膚表面に浸透したり、望ましくない作用を有する可能性がある細胞内に進入することはない。
【0081】
本組成物が細菌兵器物質に接触する危険性がある個人(例えば、軍人および郵便作業員)を、彼らの皮膚を処置することによって、またはこれらの個人が接触する装置および物質の表面を処置することによって、保護するために有用であることは、本発明の1つの利点である。
【0082】
本発明の組成物を動物の皮膚上に使用できる(例えば、乳牛乳頭の消毒、外科手術、および獣医学的手術)ことは、本発明の1つの実施形態である。
【0083】
活性抗菌剤として第四級アンモニウム化合物を利用すること、および第四級アンモニウム化合物がMRSAまたはVREなどの耐性菌の発達を促進しないことは、本発明の1つの利点である。そのような細菌に対する本発明の物質の効果を証明するために、以下の実施例を提供する。
【0084】
本発明の殺菌用組成物は、他の不活性または活性成分を追加して含有することができる。例えば、増粘剤は、粘性を高めるため、またはゲル状形態の製品を提供するために含めることができる。例えば保湿剤、皮膚軟化剤、ビタミン類、紫外線吸収剤、薬物、抗菌剤、または他の不活性剤および活性剤などの添加物を加えることもできる。そのような添加物は、一時的に作用することでその目的を果たすことができるので、さもなければ、ポリマーコーティングに取り込まれることにより、液体によって容易に取り除かれないように安定化されるので、水不溶性である必要はない。さらに、ポリマーコーティングの存在の視覚的指標として機能させるために、持続的または一時的色素を組成物に添加する、またはその代わりに表面に塗布された後にポリマーコーティングに塗布することができる。
【0085】
本発明の組成物は非浸出抗菌特性を備えるポリマーフィルム若しくはコーティングを提供するが、追加の効力を提供するためには、状況によって追加の抗菌剤若しくは防腐剤を本組成物に組み込むことが望ましい場合もある。この追加の物質はポリマーには共有結合しないので、浸出する可能性がある。これは、上述した抗菌ポリマーの非浸出性を変化させない。追加の抗菌剤が本組成物から完全に浸出しても、本抗菌ポリマーは、依然として非浸出性の抗菌活性を提供する。さらに、本抗菌ポリマーマトリックスは、追加の物質の浸出速度を緩徐化するために機能するので、追加された物質の効力を延長することができる。有用な抗菌性または防腐性添加物の例としては、第四級アンモニウム塩、ビグアニド、およびフェノール化合物が挙げられる。所定の実施形態では、追加される抗菌剤または防腐剤は、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジメチルジデシルアンモニウム、またはそれらの混合物などの第四級アンモニウム塩である。
【0086】
別の実施形態において、追加される抗菌剤または防腐剤は、クロルヘキシジンまたはポリ(ヘキサメチレンビグアニド)などのビグアニドである。別の実施形態において、追加される抗菌剤または防腐剤は、例えばフェノールまたはトリクロサンなどのフェノール化合物である。
【0087】
本組成物が、長時間の抗菌作用を達成するために、液体、ゲル、フォーム、またはエアロゾルスプレーとして調製できること、およびヒトまたは他の動物の皮膚を含む表面に塗布できることは、本発明の1つの実施形態である。
【0088】
以下の実施例は、グリコール可溶性、アルコール可溶性、水不溶性の抗菌ポリマー分子の合成および適用を示している。これらのポリマー分子は、一般には、2種類のモノマー、つまり第1モノマー(A)および第2モノマー(B)で、そのうちの少なくとも1つは第四級アンモニウム基を含有するモノマーの混合物のフリーラジカルビニル重合によって合成できることは、本発明の1つの実施形態である。第1モノマー(A)、およびモノマーAのホモポリマーは水溶性であるが、第2モノマー(B)は一般的に水不溶性である。モノマーAおよびBに対して相互に有効である溶媒(例えば、アルコールまたはグリコール)は、2つのモノマーの共重合に適した均質溶液を調製するために使用することができる。A+Bのコポリマーは、アルコールまたはグリコールに可溶性である。これは、本組成物を調製するために考えられる例示的方法の1つに過ぎず、当業者であれば、アルコール可溶性、水不溶性の抗菌ポリマー分子を調製するために使用できる多数の他の方法があることを理解できる。3若しくはそれ以上のモノマーの混合物もまた、適切な抗菌コポリマーを調製するために使用することができる。
【0089】
ポリマー分子がポリウレタンポリマーを形成するための二官能性アルコールとジイソシアネートとの反応によるなどの逐次重合により合成できることは、本発明の1つの実施形態である。これに限定されるものではないが、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、およびポリウレアを含む他のタイプの逐次ポリマーも利用できることは、本発明の1つの実施形態である。抗菌部分のポリマー内への組み込みは、反応性官能基を備える抗菌化合物を利用することによって実施することができる。例えば、Akzo Nobel社は、Ethoquad(商標)の商標名で販売されている一連の化合物を提供している。1つの例は、ポリマーの主鎖構造内に第四級アンモニウム部分を含有する抗菌ポリウレタンポリマーを形成するために、トリレン−2,4−ジイソシアネート(TDI)などのジイソシアネートと反応させることのできる2つの反応性ヒドロキシエチル置換基を備えるメチル/C12第四級アンモニウム化合物である、Ethoquad(商標)C/12−75DKである。
【0090】
本発明の1つの実施形態では、本組成物に非浸出性の可視マーカーを提供するために、色素分子を抗菌ポリマー構造内に組み込むか、または共有結合させることができる。例えば、フルオレセイン色素分子は、ポリウレタン構造の一部を形成するためにジイソシアネートと反応することのできる2つの水酸基を含有する。フルオレセインとEthoquad(商標)C/12−75DKの混合物をTDIと反応させると、生じたポリマーは、ポリマー主鎖構造内に色素(フルオレセイン)および抗菌剤(第四級アンモニウム)の両方を含有する。
【0091】
抗菌部分は、ポリマー形成後にポリマー内に組み込むこともできる。これは、例えば、エステル交換または、Ethoquad(商標)とポリアクリレートとの反応などの他の置換反応により達成することができる。
【0092】
合成されたポリマー分子は、(1分子当たりのモノマー部分が)5〜25,000だが、しかしより好ましくは50〜10,000、および最も好ましくは100〜5,000の平均重合度を有する。ポリマーを生成する際に使用するために適したビニルモノマーには、これに限定されるものではないが、アリル含有モノマー、ビニル含有モノマー、スチレン誘導体、アリルアミン、アンモニウム塩、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート(塩化メチル第四級塩)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(塩化ベンジル第四級塩)、ジメチルアミノエチルアクリレート(塩化メチル第四級塩)、ジメチルアミノエチルアクリレート(塩化ベンジル第四級塩)、および他のCH=CR−(C=O)−X−(CH−NR'R''R'''//Y構造(式中、Rは水素若しくはメチルであり、nは2若しくは3に相当し、XはO、S、若しくはNHのいずれかであり、R'、R''、およびR'''は独立的にH、C1〜C16アルキル、アリール、アリールアミン、アルカリル、およびアラルキルから成る群から選択され、Yは第四級窒素の正荷電に対する陰イオン性対イオンである)を備える他の化合物(ジアリルジメチルアンモニウム塩;ビニルピリジンおよびその塩;ならびにビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩)が含まれる。
【0093】
本ポリマーを生成する際に使用するために適したフリーラジカル開始剤には、これに限定されるものではないが、例えばAIBNおよび関連化合物などのアゾ化合物、ならびに例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、t−ブチルヒドロペルオキシド、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、過酸化ナトリウムなどの過酸化物、およびフリーラジカル重合開始剤として一般的に使用される他の過酸化物およびヒドロペルオキシドが含まれる。光開始重合もまた使用することができ、この場合は光線への曝露により重合を開始する、適切な光開始剤(例えば、ベンゾフェノン誘導体)が使用される。放射線重合もまた使用することができるが、この場合は電離放射線(例えば、ガンマ線)への曝露により重合が開始される。
【0094】
本明細書に記載した抗菌ポリマーおよび組成物の抗菌効力を測定するためには、様々な試験法を使用できる。以下では、「担体持続性試験(Carrier Persistence Test)」、つまりCPTについて記載する。本発明の組成物および物質は、CPTによって試験した場合に素晴らしい結果をもたらすことが見いだされている。細菌集団の減少は、一般には6対数を超える(生菌減少率99.9999%)。本発明に記載した物質は、CPT法により試験すると、細菌の3対数減少を生じさせることができる。好ましくは、本発明に記載した物質は、CPT法により試験すると、細菌の4対数減少を生じさせることができる。より好ましくは、本発明に記載した物質は、CPT法により試験すると、細菌の5対数減少を生じさせることができる。一層より好ましくは、本発明に記載した物質は、CPT法により試験すると、細菌の6対数減少を生じさせることができる。CPTは、抗菌物質を抗菌剤で処理していないコントロール物質と比較する比較試験であると理解すべきである。特定のCPT試験で得られる最大理論対数減少は、未処理のコントロール上の細菌集団の増殖によって限定される。そこで、実際の対数減少が規定数値未満である場合でさえ、実質的に100%の生菌除去率を得ることができる。
【0095】
本発明の一部の適用では、抗菌ポリマーの一部分(全ポリマーの約50重量%未満)が水または液体中に可溶性であることが望ましい場合がある。この方法で、可溶性抗菌成分からの即効性抗菌効力、ならびに不溶性抗菌ポリマーからの長期間永続的抗菌活性を結合した利点を実現することができる。これは、例えば、本ポリマーの一部分にある程度の水溶性を提供するためにポリマー構造内への親水単位の組み込みによって実施することができる。例えば、親水性−CH−CH−O−CH−CH−単位は、ビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルとTDIとを反応させることによってポリウレタンをベースとする抗菌ポリマー内に組み込むことができる。水溶性若しくは浸出性抗菌含有量の強化は、さらにまた減少した分子量(低い平均重合度)を備える抗菌ポリマーを調製することによっても達成できる。ポリマー分子量または重合度を減少させるための方法は、当業者であれば精通している。
【0096】
コーティングとしてのそれらの使用に加えて、本発明のアルコール可溶性/水不溶性抗菌ポリマーは、さらにまたポリマー器具または例えば医療器具および家庭用品を含む物体の構成成分としても利用することができる。これは、例えば、抗菌ポリマー若しくはその溶液を、他のポリマー若しくはその溶液、または重合可能なモノマー若しくはプレポリマー、またはその溶液とブレンドすることによって実施することができる。本発明の抗菌ポリマーは、例えば医療器具、ポリマー器具、またはその他の物体における構成成分として使用できるフィルム、繊維、ゲル、フォーム、接着剤、シーラントおよびコークを形成するためにも利用することができる。
【0097】
本発明の1つの実施形態は、どちらもEthicon社によって販売されているMersilene(登録商標)(未被覆)およびEthibond Excel(登録商標)(ポリブチレート被覆)のような多繊維ポリエステル縫合糸などの、身体内に残留する合成縫合糸のための永続的抗菌処理を提供することである。これらの縫合糸は、心臓外科手術後の合併症の原因となる術後深部創傷感染症などの重大な脅威を防止するのに役立つ(Immer FF,Durrer M,Muhlemann KS,Erni D,Gahl B,Carrel TP.「Deep sternal wound infection after cardiac surgery:modality of treatment and outcome」.Ann Thorac Surg.2005 Sep;80(3):957−61)。この文献によると、深部胸骨創傷感染症の発生率は1%〜3%の間で変動する。数件の試験によって証明された細菌スペクトルは、主として黄色ブドウ球菌(41.8%)およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(32.7%)による感染症を同定した。感染症に関連する罹患率に起因して、縫合糸の抗菌性を持続させることによって血液媒介性感染症からの保護を提供することもまた望ましい。
【0098】
本発明の別の実施形態は、非浸出性抗菌活性を備える創傷ドレッシングとして使用される親水性ポリウレタンフォーム中に組み込むことができるアルコール可溶性/水不溶性抗菌ポリマーを提供することである。
【0099】
本発明の別の実施形態は、硬化したコーティングへ非浸出性抗菌効力を付与するために紫外線硬化型コーティング系中に組み込むことができるアルコール可溶性/水不溶性抗菌ポリマーを提供することである。この紫外線硬化型コーティングは、引き続いて所望の形状を備える製品へ熱成形または真空成形することのできるプラスチックフィルムに塗布することができる。
【0100】
本発明の別の実施形態は、医療器具を皮膚へ固定するために使用される接着剤などの接着剤の成分として使用でき、それにより接着剤に抗菌特性を提供できるアルコール可溶性/水不溶性抗菌ポリマーを提供することである。
【0101】
実施例
以下の実施例は、本発明を図示し、当業者に対象物の作製方法および使用方法を教示するために提供される。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものとして判断すべきではない。
【0102】
実施例A1
(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)トリメチルアンモニウムクロライドおよびブチルメタクリレートの共重合
2.5gの第四級ビニルモノマーである(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)トリメチルアンモニウムクロライドの75%水溶液(Aldrich Chemical社)、7.5gのブチルメタクリレート(Aldrich Chemical社)、および0.1gのAIBN(2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(Aldrich Chemical社)を10gのエタノール中に溶解させることによって溶液を作製した。この溶液にアルゴンガスを60秒間噴霧し、溶存酸素を放出させ、アルゴン雰囲気下でガラスバイアルに密閉した。このバイアルを70℃の乾燥器に24時間入れた。次にコポリマー含有溶液をエタノール中で希釈した(1:25)。
【0103】
実施例A2
皮膚への組成物の塗布
実施例A1で生成した溶液約1mLをヒトボランティアの手の甲の皮膚に塗布し、乾くまで手袋をはめた指で伸ばして擦り込んだ。乾いた後、目立たない膜が残ったが、粘性でも粘着性でもなく、実質的に、ボランティアには感知できなかった。ブロモチモールブルー(BTB)指示染料は、第四級アンモニウム化合物へ強度に結合することが知られている。ポリマーコーティングの存在を可視化するために、ポリマー含有溶液が塗布された手の領域を、pH10に調整したBTB指示染料の0.5%水溶液ですすぎ洗いした。手をぬるめの流水で30秒間、指先を軽く用いてすすぎ洗いし、過剰なBTB指示染料溶液を除去した。コポリマー溶液で処理した皮膚の領域は青/緑色を示したが、周辺の皮膚は青/緑色を示さず、塗布されたポリマーの存在を示していた。コーティングは、洗剤溶液で強力にスクラブ洗浄した後にのみ、BTB指示染料検査がポリマーコーティングの存在をもはや示さない程度まで減少させられた。
【0104】
実施例A3
(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロライドおよびブチルメタクリレート(H−1)の共重合
2.5gの第四級ビニルモノマーである(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロライド(Aldrich Chemical社)、7.5gのブチルメタクリレート(Aldrich Chemical社)、および0.1gのAIBN(2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(Aldrich Chemical社)を20gのメタノール中に溶解させて溶液を作製した。この溶液にアルゴンガスを60秒間噴霧し、溶存酸素を放出させ、アルゴン雰囲気下でガラスバイアルに密閉した。このバイアルを70℃の乾燥器に24時間入れた。次にコポリマー含有溶液をエタノール中で希釈した(1:2)。この組成物を「H−1」と指名し、この後の実施例ではそのように称する。
【0105】
実施例A4
ポリプロピレンへの組成物の塗布
実施例A3で生成した溶液を使用して、溶液を充填し、一晩充填したまま放置することにより、数本の15mLポリプロピレン遠心分離管の内面をコーティングした。次に溶液を破棄し、50℃に設定した低温乾燥器でアルコールを完全に蒸発させた。遠心分離管内面にポリマーコーティングが存在することを可視化するため、BTB指示染料の0.5%水溶液約5mLを遠心分離管の1本に添加した後、管を振とうして内面全体をコーティングした。遠心分離管を蒸留水で数回すすぎ洗いした後、遠心分離管の内面は濃い青色のままであったため、遠心分離管の内面が水不溶性のポリマーでコーティングされたことを示していた。
【0106】
実施例A5
ポリマー組成物の抗菌活性
黄色ブドウ球菌の一晩培養液の10−4希釈液(約1×10CFU/mL)の2mLアリコートを、実施例A4で処理したポリプロピレン遠心分離管1本(サンプル)および未処理のポリプロピレン遠心分離管1本(コントロール)に添加した。37℃での一晩のインキュベーション中に、細菌培養液と遠心分離管の内面とが確実に接触するように、遠心分離管を緩徐に回転させた。翌日、各遠心分離管から採取された細菌培養液の段階希釈液を、細菌培養プレート上に画線培養した。非処理コントロール遠心管から採取された培養液は2.5×10CFUとなったが、処理されたサンプル管から採取された培養液で画線培養されたプレート上ではコロニーが全く観察されなかった。計数されたコロニー数の差は、細菌集団における少なくとも4.4対数の減少と言い換えられる。
【0107】
実施例A6
アルコールに可溶性であるが水に不溶性である第四級アンモニウムポリウレタン(H3−C)の合成
50gのEthoquad(商標)C/12−75DK(Akzo Nobel社)を丸底フラスコに入れ、これをロータリーエバポレータに取り付け、乾燥するまで蒸発させた。残渣(約37.5g)は、約50℃で攪拌しながら70mLのテトラヒドロフラン(THF)中に再溶解させた。40gのトリレン−2,4−ジイソシアネート(TDI)を添加し,この溶液を約50℃で維持した水浴に浸しながら、1時間混合した。溶液の粘度はこの時間の間に上昇し、溶液は室温に冷却した場合に透明なままであった。この溶液を一晩室温で保管すると、粘性の追加の上昇が観察された。9gのジプロピレングリコールを添加し、この溶液を4時間にわたり50℃で混合した。次に、混合物をロータリーエバポレータに入れ、約50℃での真空ストリッピング(stripping)により全揮発性溶媒(主にTHF)を除去した。次に、この混合物を100mLのイソプロパノール中に溶解させ、真空ストリッピングを繰り返した。次に、この混合物を100mLのイソプロパノール中に再び溶解させ、真空ストリッピングを再び繰り返した。この混合物を100mLのイソプロパノール中に再溶解させると、約56重量%の固体ポリマー含有量を備える透明な粘性の黄色がかった溶液が得られた。その後、このポリマー溶液を固体1%〜10%の範囲の様々な濃度に希釈し、これらの溶液を使用して、スライドガラスおよびポリプロピレン試験管など様々な物体をコーティングした。コーティングは、乾燥すると透明から僅かに不透明で、非粘着性であり、基質に付着した。さらに、コーティングは水または食塩水ですすぎ洗いしても除去されなかった。生成物のポリマーは、ポリマーの主鎖構造内に第四級アンモニウム単位を備える直鎖状ポリウレタンを含むと考えられる。この実施例の生成物は「H3−C」とコード化し、以下の実施例の一部において抗菌コーティングとして用いた。
【0108】
実施例A7
アルコールに可溶性であるが水に不溶性である、共有結合したフルオレセイン部分を含有する第四級アンモニウムポリウレタン(H3−F)の合成
50mgのフルオレセイン色素(天然分子)を3mLのTHF中に溶解させ、次に8gのトリレン−2,4−ジイソシアネート(TDI)と混合した。この溶液を約50℃で1時間混合した後、室温で一晩保管してから、事前に真空ストリッピングによりイソプロパノール溶媒が除去されて、約50℃で攪拌しながら14gのテトラヒドロフラン(THF)に再溶解させておいた10gのEthoquad(商標)C/12−75DK(Akzo Nobel社)と混合した。この混合物を数時間にわたり約50℃で混合し、その後に真空ストリッピングにかけた。次に、この混合物をイソプロパノール中に溶解させ、真空ストリッピングした。溶解/ストリッピングをさらにもう1回繰り返し、生成物を約50mLのイソプロパノール中に溶解させた。この溶液は17.4重量%の固体含有量を有することが見いだされた。この反応の生成物は、ポリマー主鎖構造内に第四級アンモニウム部分を含有する、フルオレセイン標識直鎖状ポリウレタンであると予想される。さらに、このポリマーは、ポリマー主鎖構造内にフルオレセイン部分を含有すると予想される。フルオレセイン部分は、ポリマーの存在、分散、持続性、および移動を測定するために有用な診断ツールを提供する。コーティングは、前述の実施例で説明したように様々な基質上で調製したが、これらのコーティングは上述したコーティングと類似の特性を有していた。コーティングしたガラス製顕微鏡用スライドは、15mLの脱イオン水または15mLのリン酸緩衝食塩水いずれかを含有する50mLの培養管に入れ、37℃で数時間にわたり振とう培養器に入れた。この溶液を次に495nmでの可視分光法(Spectronic 20)によって分析した。フルオレセインの浸出は検出できず、これは色素がポリマー構造内に完全に組み込まれたことを示していた。
【0109】
実施例A8
抗菌コーティング組成物の調製
適切な量の上述の第四級ポリウレタン(H3−C)およびグリセロールをイソプロパノール中に希釈すると、10重量%のH3−Cおよび5重量%のグリセロールを含有する組成物が得られた。この溶液は透明なままで、コーティングをスライドガラス上で調製した場合に、ポリマーのフィルム形成および付着特性は有害な影響を受けなかった。
【0110】
実施例A9
皮膚軟化剤を含有する抗菌コーティング組成物(SS−1C)の調製
10重量%のH3−C、5重量%のプロピレングリコール、および5重量%のジプロピレングリコールを含有し、残りはイソプロパノール(80重量%)である最終組成物を得るために、適切な量の上述した第四級ポリウレタン(実施例A6のH3−C)およびグリセロールをイソプロパノール中に希釈した。この溶液は透明なままで、コーティングをスライドガラスまたはブタ皮膚上で調製した場合に、ポリマーのフィルム形成および付着特性、ならびに抗菌効力は有害な影響を受けなかった。プロピレングリコールおよびジプロピレングリコールは皮膚軟化特性を有することが知られ、ローションおよび化粧品などの局所皮膚製品に広く使用されている。
【0111】
実施例A10
皮膚軟化剤を含有する抗菌コーティング組成物の調製
実施例A9の調製物(SS−1C)は、イソプロパノールを用いて、1部のSS−1C対1部のイソプロパノール、および1部のSS−1C対3部のイソプロパノールの比率で希釈した。
【0112】
実施例A11
皮膚軟化剤および紫外線吸収剤を含有する抗菌コーティング組成物の調製
実施例A9の調製物(SS−1C)は、皮膚を紫外線の吸収から保護し、日焼けを防ぐために、紫外線吸収性若しくは紫外線遮断性日焼け防止成分を含むように修飾した。紫外線吸収性若しくは紫外線遮断性添加物は、パラ−アミノ安息香酸(PABA)、PABAエステル、桂皮酸塩、ベンゾフェン、サリチル酸塩、オクトクリレン、ジベンゾイル−メタン、アボベンゾン、オキシベンゾン、酸化亜鉛、および二酸化チタンを含むリストから選択した。
【0113】
実施例A12
皮膚軟化剤およびビタミンEを含有する抗菌コーティング組成物の調製
実施例A9の調製物(SS−1C)は、1%のビタミンEを含むように修正した。ビタミンEは、水に実際に不溶性であるが、アルコールには溶け易い。
【0114】
実施例A13
抗菌添加物を含有する抗菌コーティング組成物(SS1C−BAC3)の調製
抗菌コーティング組成物(SS1C−BAC3)は、1.1gの塩化ベンザルコニウムおよび35.5gの実施例A9の調製物(SS−1C)を混合することによって調製した。塩化ベンザルコニウムは完全に溶解し、この溶液は無色透明であった。この組成物の抗菌効力について、以下に記載するように、ASTM試験法番号E1874−97(「カップ・スクラブ(Cup Scrub)法による抗菌洗剤評価のための標準試験法(「Standard Test Method for Evaluation of Antibacterial Washes by Cup Scrub Technique」))の修正版を利用して試験した。生きているヒト被験者ではなく、食肉処理場から収集したブタ皮膚を用いるなどの変更を含んでいた。SS1C−BAC3物質に加えて、イソプロパノール中の5%プロピレングリコールと5%ジプロピレングリコールとから成るプラセボを調製した。結果は以下に示した。
【0115】
ブタ皮膚に対する修正カップ・スクラブ法の概要と結果
1.ブタ皮膚サンプルの調製と滅菌
1.1 本方法では試験生成物3サンプル(SS1C−BAC3)、プラセボ3サンプル、および陰性コントロール3サンプルの合計9サンプルを使用した。これらのサンプルは、サンプルがペトリ皿の底部を完全に内張りするのに適切なサイズとなるように、1枚のブタ皮膚から、皮膚上にペトリ皿の底部をなぞって書き写し、円形ピースに切り取ることによって切り取った。皮膚1枚から各9サンプルを切り取り、角質層を上に向けて、各々固有のペトリ皿の底部に配置した。
1.2 ペトリ皿に入れたら、サンプル皮膚は70%アルコールを完全に染み込ませたタオルで拭い、次に約10分間にわたり乾燥するまでBSC(生物学的安全キャビネット)内で紫外線下に置いた。ペトリ皿の蓋もサンプルと一緒に紫外線下に(上向きで)配置した。
【0116】
2.試験生成物およびプラセボの塗布
2.1 紫外線下で乾燥させた後、BSCは送風機のスイッチを入れて蛍光に切り替え、各皮膚の上にインクマーカで1×1の正方形を描いた。これを塗布部位として使用した。蓋は依然として上に向けたまま、皮膚をマーキングしながら汚染が発生しないことを保証するために、紫外線のスイッチを数分間にわたり再び入れた。
2.2 送風機のスイッチを入れながらBSCを蛍光に戻し、蓋はサンプルを含有するペトリ皿の上に戻した。
2.3 一度に1サンプルずつ、ペトリ皿から蓋を持ち上げ、最初の3サンプルには0.5mLずつの試験生成物を(指定した正方形の中に)塗布した。滅菌ピペットの先端は、1回の塗布毎に交換した。
2.4 プラセボを用いて工程2.2を3回繰り返し、残りの3サンプルの皮膚は陰性コントロールとして残した。
【0117】
3.カップ・スクラブ法の性能
3.1 生成物とプラセボを塗布したら、9サンプルそれぞれにカバーをしてBSC内に残し、試験のために1回に1サンプルを取り出した。
3.2 カップ/皮膚の密着を形成するために、しっかりと圧力を加えながらカップ(直径約1.5cm、高さ1.5cm)をサンプルの塗布位置の中心に置いた。最初に95%アルコールでカップを消毒し、火力乾燥させた。カップ/皮膚の密着を保護するために、1人がカップに一定の圧力をかけ、もう1人がカップ内に0.25mLの接種菌を分注した。分注したら、接種菌を5分間曝露させた。
3.3 5分後、95%アルコールで消毒し、火力乾燥させたガラス棒を用いて、カップ内の皮膚の周囲を30秒間スクラブした。30秒後、滅菌ピペットを用いて0.5mLの中和剤中に流体を回収した。
3.4 サンプル流体を回収したら、第2回収のために中和剤0.25mLを同一試験部位に分注し、新しく火力乾燥させたガラス棒でさらに30秒間スクラブした。この流体を第1回のスクラブから同一溶液中に回収した。
3.5 残り8サンプルについて、工程3.2〜3.4を繰り返した。
【0118】
4.データ収集
結果は回収したスクラブ流体の標準段階希釈液を作製することにより定量し、次にスプレッド・プレート法を用いてプレーティングした。プレートを一晩インキュベートし、陰性コントロールとプラセボの両方について対数減少を計算した。
【0119】
5.結果
抗菌コーティング組成物(SS1C−BAC3)対大腸菌の試験では、2回連続の成績は完全殺菌を示し、これは生菌の場合における平均4.5対数の減少に相当した。
プラセボは、試験細菌への作用を全く示さなかった。
【0120】
実施例A14
アルコールに可溶性であるが水に不溶性である、および分子構造内に組み込まれた柔軟性疎水性単位を有する第四級アンモニウムポリウレタン(SS50H)の合成
実質的には実施例A6の方法に従った;しかしEthoquad(商標)に代えて1,6−ヘキサンジオールとEthoquad(商標)の等モル(1:1)混合物を使用した。生じたポリマーは水不溶性であり、イソプロパノールと少なくとも一部には非混和性であることが見いだされた;しかし、エタノールには完全に可溶性であった。エタノール中のこのポリマーの溶液(40.6重量%ポリマー)を強力に攪拌しながら高度に過剰な蒸留水に滴下した。沈降したポリマーを濾過によって収集し、真空乾燥器内で乾燥させた。生じた乾燥ポリマーは、濾過、乾燥、および回収中に沈降した物質の相当に大きな消失が観察されたにもかかわらず、原料の85%を超える回収率を構成した。これは、このポリマーが水に高度に不溶性であることを示した。さらに、このタイプの再沈降処理は、存在する可能性があるあらゆる水溶性(浸出性)成分を除去するので、完全に非浸出性組成物が所望である場合に有用である。
【0121】
実施例A15
アルコールに可溶性であるが水に不溶性であり、分子構造内に組み込まれた柔軟性疎水性単位を有し、および低分子量を有する第四級アンモニウムポリウレタン(SS25HL)の合成
実質的には実施例A14の方法に従った;しかし3:1のモル比のEthoquad(商標)対1,6−ヘキサンジオールを利用した。さらに、ヒドロキシル末端基を備える短鎖の形成を促進するために、等モル量未満のTDI(約65%)を使用した。そこでこの物質は、低分子量を有し、相当に高い比率の浸出性(水溶性)抗菌成分を含有すると予想された。このポリマーの正確な分子量は未知である;しかし、このポリマーと上述したポリマーの溶液の粘度の比較は、このポリマーの方が低い分子量を有することを示した。
【0122】
実施例A16
本明細書に記載した様々な組成物の即効性抗菌効力の比較
実施例A6、A14、およびA15に記載した組成物を即効性(5分間)抗菌効力について以下の方法を用いて試験した。
【0123】
ポリマー溶液(アルコール中で10%)を調製した。50μLの各溶液をプラスチック製の24ウエル細胞培養プレートの個別ウエル内へピペットで注入した。アルコールの蒸発を促進するために、携帯型ドライヤーの下でプレートを旋回させた。細菌の希釈標準溶液は、標準方法を用いて調製した。250μLの細菌溶液(10cfu/mL)を各コーティングウエルに加えた。24ウエル細胞培養プレートは所望の時間間隔(5分間、15分間、30分間、若しくは60分間)にわたりインキュベート/振とうし(37℃/100rpm)、次に250μLのLetheen培養液(中和剤溶液)を加えた。この溶液をウエルから取り出し、100μLをTSA上でプレーティングし、標準スプレッド・プレート法を用いて塗り広げた、または段階希釈液を作製するために使用し、プレーティングした。プレートは37℃で一晩インキュベートし、次にコロニー数を計数し、抗菌効力を計算した。試験は、黄色ブドウ球菌および霊菌(セラチア・マルセッセンス)に対して実施した。3種のポリマーの比抗菌効力は、A15(SS25HL)>A14(SS50H)>A6(H3C)であると決定された。サンプルA15は、たった5分後にSAおよびSMの完全殺菌を示した。サンプルA14は、たった5分後にSAの完全殺菌を示した。サンプルA6は、30分後にSAの完全殺菌を示した。
【0124】
実施例A17
抗菌組成物がコーティングされた縫合糸材料の調製
実施例A6の方法によって調製したポリマーを使用して、どちらもEthicon社によって製造および販売されている多繊維ポリエステル縫合糸材料(Mersilene(登録商標)(未被覆)およびEthibond Excel(登録商標)(ポリブチレン被覆)をコーティングした。縫合糸(各々長さ約10cm)を5分間にわたり70%イソプロパノール中で洗浄し、脱イオン水で3回すすぎ洗いして表面の汚染を除去した。縫合糸を完全に乾燥させ、その後に抗菌ポリマーを塗布した。サンプルを50mLの円錐形遠心分離管に入れ、20mLの適切な処理液(0.5、2.0または10重量%いずれかの濃度でイソプロパノール中に溶解させた実施例A6のポリマー)で完全に被覆した。遠心分離管は、高度に親水性のポリエステル繊維に捕捉された空気を除去するために3〜5分間にわたり超音波処理した。これらのサンプルは、処理溶液から取り出し、60〜80℃で乾燥させた。均一な被覆を保証するためにコーティングプロセスを2回繰り返した(計3回のコーティング)。縫合糸は臨床的に重要な細菌:黄色ブドウ球菌、SA(ATCC番号6538);大腸菌、EC(ATCC番号15597);緑膿菌、PA(ATCC番号15442);およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌、MRSA(ATCC番号33593)に対して試験した。細菌懸濁液は、標準方法に従って調製した。懸濁液中の細菌の濃度は、分光光度計(Milton Roy Spectronic 20D分光光度計)を全細菌について580nmで使用して測定した。黄色ブドウ球菌の測定値は、約10の力価を生じさせた。ストック液中の細菌濃度は、PBSを用いた実験的試験のための標準接種菌(1×10cfu/mL)が得られるように調整した。最終濃度は、さらにまたコロニー形成単位(cfu)法によって確認した。処理およびコントロール縫合糸サンプルは無菌法により長さ4〜5cmにカットし、使用時まで室温で保管した。個別滅菌縫合糸区間を無菌の大ウエル培養プレートの隔離ウエル内に入れ、3時間にわたり4mLの細菌懸濁液に曝露させた。標準化接種菌は、段階的プレート計数によって確認した。縫合糸は、インキュベーション工程の期間中に120rpmに設定した攪拌器を用いて攪拌している間に、接種培地中で自由浮遊していた。試験菌株に曝露させた後、縫合糸区間は非付着性細胞を除去するためにPBS中で穏やかに(3回[3×])洗浄した。次に、縫合糸区間を0.25%のTriton−Xを含有するPBS中に入れ、3回[3×]ボルテックスにかけ、2〜5分間にわたり20kHzで同一溶液中で超音波処理した。縫合糸超音波処理物は、PBS中で段階希釈し、その後プレーティングし、37℃で24時間にわたりインキュベートした。1回の接種菌惹起毎に3つの縫合糸区間を評価した。細菌回収率は、log 10(対数)cfu/cm(縫合糸区間)として表示した。以下の結果が得られた[受領したまま[未被覆]縫合糸材料に比較した対数減少]。
【0125】
表1

【0126】
実施例A18
紫外線硬化により抗菌組成物でコーティングされたプラスチックフィルムの調製
実施例A6に記載したポリマーを紫外線硬化型コーティング組成物と混合し、この混合物を使用して様々なプラスチック基質上のコーティングを調製した。「寒天スラリー法(Agar Slurry Method)(ASTM試験法E2180−01)を用いたその後の試験は、コーティングが黄色ブドウ球菌および大腸菌を含む様々な細菌微生物に対して有意な抗菌活性を有することを決定したが、この場合にコーティング中の抗菌ポリマーの含有量は乾燥コーティングの重量で10重量%〜30重量%であった。
【0127】
実施例A19
抗菌特性を備える親水性ポリウレタンフォームの調製
この実施例は、創傷ドレッシング材料として有用な非浸出性抗菌親水性ポリウレタンフォームを調製するために使用される調製物中への実施例A6によって記載されたアルコール可溶性/水不溶性抗菌ポリマーの組み込みを例示している。水溶液は、90mgの四ナトリウムEDTAを12gの水に溶解させ、次に10gのPluronic(登録商標)F−88界面活性剤(BASF社)の0.25%溶液を加え、次に非イオン性分散剤(NanoShield(登録商標)ZN−3010、Alfa−Aesar社)を備える3gのZnO 50%懸濁液を加え、その後完全に混合した。25gのHypol(登録商標)−2000(Dow社)をイソプロパノール中の実施例6に記載したポリマー4gの40%溶液と、約1分間にわたり完全に混合した。次に「水溶液を」この混合物に加え、スチール製スパチュラを用いて一様に混合され、発泡の証拠が観察されるまで約20〜30秒間にわたり完全に攪拌した。この混合液を次に1枚のシリコン剥離紙上に注入し、所望の厚さ(約1/16''〜1/4'')のスペーサによって第1紙の表面の上方に保持した2枚目のシリコン剥離紙で迅速に被覆した。次に、この混合物を2枚の剥離紙間に一様な厚さへ広げるために、2枚目の剥離紙の上面を横断するようにストレートエッジのスプレッダ・バーを移動させた。この物質を数分間にわたり室温で硬化させた。次に上に乗っている剥離紙を取り除いた。下になっている剥離紙にまだ結合している、生じたフォームを次に15分間にわたり110℃の乾燥器内へ配置した。生じた黄色のフォームは、次に使用または試験するために剥離紙から取り除くことができよう。
【0128】
硬化したフォームは、その表面上に置かれた水滴を迅速に(<5秒間)吸収することが観察された。フォームの吸収能力(滴り落ちない)は、5分間浸漬した後に、1%食塩溶液の自重の約15.9倍であると決定された。
【0129】
このフォームをATCC試験法第100番に従って試験すると、非抗菌親水性ポリウレタンフォーム製創傷ドレッシング(Tielle(登録商標)、J&J社の製品)と比較した場合に、カンジダ・アルビカンスの5.99対数減少、黄色ブドウ球菌の7.81対数減少、および緑膿菌の6.36対数減少が見いだされた。フォーム抗菌活性の非浸出性の性質は、10cfu/mLの黄色ブドウ球菌がスプレッド・プレーティングされていた寒天プレートのマーキングされた領域上に20μLの抽出物の液滴を配置することで、フォーム(37℃で24時間、20mLのPBSにつき60cmのフォーム)の抽出物を試験することによって証明された。37℃で一晩インキュベーションし、その後に視覚的に観察した後に、マーキングされた領域では増殖阻害の証拠は観察されなかった。
【0130】
実施例A20
アルコールに可溶性であるが水に不溶性である、および分子構造内に組み込まれた柔軟性疎水性および/または親水性単位を有する第四級アンモニウムポリウレタンの合成
ジエチレングリコール(ビス−(2−ヒドロキシエチル)エーテル)を1,6−ヘキサンジオールの全部または一部と置換することを除いて、実施例A14に記載した方法に従った。ポリマー生成物は、ジエチレングリコールの相対含有量が高いほど親水性になる。
【0131】
実施例A21
浸出性抗菌剤(CHG)および安定剤/保存料(EDTA)もまた含有する、皮膚を消毒するための長期永続的効力を備える透明な、ゲルをベースとする抗菌剤(SSG2)の調製
以下の成分:10gのCHG(クロルヘキシジンジグルコネート、Aldrich社)の20%水溶液、水4.0gに溶解させた1.0gの四ナトリウムEDTA、イソプロパノール中の25gのSS−1C(実施例6)の40%溶液、および70/30(容量%)のイソプロパノール/水中に溶解させた60gのPEG[ポリ(エチレンオキシド)(MW=600,000)、Aldrich社]の2%溶液を結合し、しっかりと混合して100gの上述した調製物を作製した。PEGは、この調製物に粘性のゲル稠度を与えるために使用した。EDTAは、安定剤、および/または保存料として、および/または抗菌効力を強化するために加えた。上述の組成物はASTM試験法E1874−97(「カップ・スクラブ法による抗菌洗剤評価のための標準試験法」を使用して、ヒトボランティアを対象に試験した。試験菌は霊菌であり、「完全殺菌」は、非永続的コントロール消毒用組成物(Purell(登録商標)手の除菌用ローション)と比較した場合に、細菌負荷の3.5対数を超える平均減少を伴って得られた。抗菌効力の結果は、調製物を皮膚へ塗布した約5分後に試験した場合、および皮膚へ塗布した4時間後に試験した場合に類似であった。さらに、処理した皮膚を石鹸と水、またはアルコールを用いてすすぎ洗いした後でさえ、大きな抗菌活性が同様に検出された。
【0132】
実施例A22
抗菌特性を備える医用接着剤の調製
実施例A14に記載したポリマーを低Tg(ガラス転移温度)アクリレートコポリマーと混合し、医用接着剤として使用するために適した組成物を得た。この混合物を使用して、プラスチック基質上にコーティングを調製した。これらのコーティングは、有用な接着特性を有することが見いだされた。「寒天スラリー法」(ASTM試験法E2180−01)を用いたその後の試験は、コーティングが黄色ブドウ球菌および大腸菌を含む様々な細菌微生物に対して有意な抗菌活性を有することを決定したが、この場合にコーティング中の抗菌ポリマーの含有量は乾燥コーティングの重量で10重量%〜30重量%であった。
【0133】
実施例A23
分子構造内に組み込まれた柔軟性疎水性単位を有し、低分子量を有する、ヒトの皮膚へ塗布するための抗菌バリアフィルム(溶液「G11」)の調製
実質的には実施例A14の方法に従った;しかし20gのEthoquad(商標)溶液(75重量%)対7.5gの1,6−ヘキサンジオールを利用した。さらに、ヒドロキシル末端基を備える短鎖の形成を促進するために、等モル量未満(約65%)のTDIを使用した。この物質は、低分子量を有し、相当に高い比率の浸出性(水溶性)抗菌成分を含有すると予想された。このポリマーの正確な分子量は未知である;しかしこのポリマーと上述したポリマーの溶液の粘度の比較は、このポリマーの方が低い分子量を有することを示した。生じたポリマーは、以下の組成物:抗菌ポリマー(10重量%);PEG 600K増粘剤(1%);水(12%);イソプロパノール(27%);およびエタノール(50%)を備える溶液に調製した。この調製物は、以下の考察ではG−11と呼ぶ。
【0134】
ASTM試験法E1874−97(カップ・スクラブ法による抗菌洗剤評価のための標準試験法」に従って、ヒトボランティアの皮膚上で、カップ・スクラブ法を使用して霊菌に対するG11の抗菌効力を試験した。すすぎ洗い工程を使用する追加の実験もまた実施した。結果は、乾燥したフィルムを水ですすぎ洗いした後でさえ高いG−11の抗菌効力を示しており、以下の表に表示した。
【0135】
ヒト皮膚上での消毒剤の乾燥時間 霊菌(ATCC番号13880)の殺菌レベル
T=0 >99.98%
T=4時間 >99.99999%
T=6時間 >99.99999%
すすぎ洗い試験: すすぎ洗い0回後の有効性 すすぎ洗い1回後の有効性**
G−11(被験者番号1) >99.9987% >99.9987%
G−11(被験者番号2) >99.973% >99.72%
G−11(被験者番号3) >99.9993% >99.9993%
完全殺菌を示す。
**すすぎ洗い工程は、標準スプレーボトルからポンプを20回(各約1mL)押して脱イオン水を適用した。
【0136】
調製物G−11は、以下のように、真菌であるカンジダ・アルビカンスに対する効力について評価した:
ローン・スプレッド法によるG11対カンジダ・アルビカンスの評価
調製物G11は、ローン・スプレッド(lawn spread)法によってカンジダ・アルビカンスに対して評価した。C.アルビカンスATCC番号MYA−905、およびATCC番号10231の培養は、48時間にわたり酵母培養液中のグリセロールストックから増殖させた。これらの培養を次に希釈接種菌として機能させるために10−2の希釈率へ希釈した。無菌消毒綿に接種菌を十分に染み込ませ、酵母寒天培養液の全表面にわたって均一に塗り広げた。次に3本の30μL量のG11を均一に間隔をあけてピペットで寒天上に移した。寒天プレートを48時間にわたり培養器へ移し、その後結果を評価した。
【0137】
結果は、ローン・スプレッドの塗布領域内でC.アルビカンスの両方の菌株の増殖を防止することを証明した。
【0138】
スライドガラスキャリア試験によるカンジダ・アルビカンスの評価
C.アルビカンスATCC番号MYA−905、およびATCC番号10231の2種の菌株は、48時間にわたり酵母培養液中のグリセロールストックから増殖させた。これらの培養を次に希釈接種菌として機能させるために10−2の希釈率へ希釈した。250μLのG11をスライドガラスキャリア各々に分布させた。塗布後、スライドは10分間の乾燥時間にわたり生物学的安全キャビネット内に配置した。スライドの各々に100μLのC.アルビカンスを加え、無菌ループを用いて穏やかに分布させ、その後5分間の接触時間をおいた。細菌の各菌株に対して、3本の処理スライドおよび3本の陰性コントロールスライドを使用した。
【0139】
全スライドを中和溶液中に回収し、G11対陰性コントロールスライドの計数は、標準段階希釈法およびプレーティング法によって実施した。
【0140】
結果は、菌株MYA−905については0.78の平均対数減少、菌株10231については1.71の平均対数減少を証明した。
【0141】
G11皮膚消毒剤サンプルについての抗菌効力分析は、独立研究所(BCS Laboratories社、フロリダ州Gainesville)によって実施された。この分析は、ヒトウイルスのモデルとしてバクテリオファージMS−2を用いて実施された。バクテリオファージMS−2は、多数の公表された研究試験において、水および保健産業における物理的および化学的殺菌剤の潜在的抗ウイルス特性を評価するためのヒトウイルスの不活性化についてのモデルとして広く使用されてきた。その不活性化/生残率は、多数のヒトウイルスと良好に相関している。G11について実施された抗菌効力試験は、ウエループレートモデルを用いて実施された。簡潔には、バクテリオファージMS−2(ATCC番号15597B1;大腸菌C3000に対して特異的な30nm RNAウイルス;ATCC番号15597)がヒトウイルスの代理モデルとして使用された。約10プラーク形成単位(pfu)/mLを含有するバクテリオファージストック液は、標準方法(Snustad and Dean,1971)に従って、惹起日の前にアッセイされた。MS−2ストック液は、リン酸緩衝食塩液(PBS;Fisher Scientificstock社)中で約10pfu/mLに希釈された。このファージ希釈液を使用して、皮膚消毒剤調製物の抗バクテリオファージ効力が評価された。実験の分析は、3回ずつ実施された。分析は、24ウエル細胞培養プレート(Corning社、ニューヨーク州)で実施された。
【0142】
100mLの試験溶液が各ウエルプレート内にピペットで入れられた。様々な時点に、100μLのMS−2溶液が、G11を含有するウエルに加えられた。評価のために選択される時間は、表面を被覆したG11の乾燥時間によって決定された;つまり、t=0(G11の添加直後)、t=30分間の乾燥、およびt=4時間の乾燥。G11の添加後の時点に依存して、ウエル表面は消毒剤で湿っていた(t=0分)、または表面上に乾燥した目に見えないフィルムが存在した(t=30分間およびt=4時間)。ウエルが湿っている場合(時間=0)、ウエル内の溶液は反復ピペッティングによって物理的に混合された。
【0143】
ファージおよび消毒剤は、直後(30秒間未満)および即効性(5分間)抗菌効力についてのデータを収集するために、相互に10秒間若しくは5分間のいずれかにわたり接触させられた。
【0144】
許容された接触時間後、2mLのDifco(登録商標)中和用バッファ(Becton Dickinson社、メリーランド州)が各ウエルに加えられ、消毒剤を中和させ、MS−2バクテリオファージが回収された。初期試験は、これが消毒剤中に存在する殺菌剤を中和するために適正であることを証明した。t=30分間およびt=4時間については、加えられたバクテリオファージは表面と10秒間または5分間のいずれかにわたって接触させられた。5分間の接触については、プレートはオービタル攪拌器(Hoefer、Red Rotor社、San Francisco)上に5分間にわたり定速で配置された。規定の接触時間後、中和バッファが各ウエルプレートに加えられた。コントロール(初期)バクテリオファージ力価は、空のウエルに100μLのバクテリオファージ溶液を加え、次に2mLの中和バッファを加えることによって決定された。上記の全部の場合において、中和バッファの添加後には、中和バッファはピペットで繰返し加えられ、次に無菌15mL試験管へ移された。バクテリオファージを含有する溶液の希釈は、計数前にPBS中で実施された。各サンプル中のMS−2バクテリオファージの数は、宿主大腸菌C3000および溶融トリプシン大豆寒天(TSA;Becton Dickinson社、メリーランド州)を使用する寒天プラークアッセイ法によってプラーク形成単位(pfu)として計数された。プレートは37℃で一晩インキュベートされ、次にプラークが計数され、コントロールと比較した減少率が決定された。各分析は、2回ずつプレーティングされた。反復実験の結果は匹敵しており、効力は各時点に再現された。結果は、以下の表に表示し、3回の分析から得られた平均数を表している。
【0145】
表2

【0146】
実施例A24
溶媒としての水不溶性抗菌プロピレングリコール溶液の調製
アルコール溶媒を除去するために実施例A14に記載したポリマーを50℃の真空下で乾燥させ、引き続いてプロピレングリコール中に再溶解させて、プロピレングリコール中の40%ポリマー溶液を得た。この溶液は、室温で保存した場合に透明で安定性であることが観察された。
【0147】
実施例A25
改良された物理的および審美的特性を有する、ヒト皮膚に塗布するための抗菌バリアフィルムの調製
実施例A23の組成物は、抗菌の目的には有効であったが、ヒトボランティアによって、皮膚へのこの溶液の塗布中または塗布後のいずれかで「ベタベタする」、「ネバネバする」、「ゴツゴツしている」、または「糸を引く」と感知された。これらの望ましくない物理的および/または審美的作用は、主としてこの調製物中に使用された増粘剤(1% PEG 600K)によって誘発されると決定された。この増粘剤は、高粘性を促進するために使用されるが、これは順に塗布中の生成物の「流出」を防止する。一般には、それでも所望レベルの増粘作用を提供する、できる限り小量の増粘剤を使用することが望ましい。さらに、増粘剤は、アルコール溶媒、および第四級抗菌ポリマーを含む本調製物の他の成分と適合性でなければならない。カルボマー(ポリアクリレートの1つ)は、皮膚調製物において使用される一般的増粘剤である。しかしカルボマーは第四級アンモニウムポリマーとは不適合である(沈降物形成)。本発明者らは、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース(HEC)を使用すると、優れた粘性特性を備え、望ましくない物理的若しくは審美的作用を生じさせない適合する調製物が得られることを見いだした。HECのグレードは、所望の物理的特性を最適化するために選択される。例えばメチルセルロース若しくはMethocel(Dow社)などのセルロースエーテルもまた、本発明を実施するために適切な増粘剤である。成分の添加順序は、有用な調製物を得るために重要である。
【0148】
調製物は、以下の方法に従って調製した:50mLの水に溶解させた1.07gのヒドロキシエチルセルロース(「HEC」)(Cellosize(登録商標)、製品番号QP−100M−H、Dow社)の溶液は、HECを水に分散させ、次に2時間にわたり70℃でロータリーミキサ上で回転させることによって調製した。この溶液を一晩保存すると、保存後にはより平滑な稠度を有するように思われた。次に計100g(126.5mL)の無水エタノールをHEC溶液に加え、その後に完全に混合した。そこで、約0.65重量%のHECおよび70%のエタノールを含む溶液が形成された。この溶液(105g)を10gの無水エタノールおよびエタノール中の15gの40%抗菌第四級アンモニウムポリマー溶液と混合すると、皮膚に塗布するための抗菌バリアフィルム調製物が得られた。使用した抗菌第四級アンモニウムポリマーは、実施例A14に記載した抗菌第四級アンモニウムポリマーと実質的に類似であった。この調製物をヒト皮膚へ塗布し、その後に指先を用いて擦り取ったが、望ましくない作用は全く生じなかった。この調製物は、申し分なく乾燥し、乾燥中も乾燥後も粘着性ではなかった。
【0149】
実施例A26
アルコール可溶性抗菌ポリマーおよび可塑剤を含有する自立型ポリマーフィルムの調製
25部のポリ(ビニルクロライド)(MW=47,000;Aldrich Chemical社、製品番号389323)、0.3部のCitroflex(登録商標)B−6可塑剤(Moreflex社)、テトラヒドロフラン(THF)中に溶解させた3.3部の25重量%の抗菌第四級アンモニウムポリマー、および20部のテトラヒドロフラン(THF)を、これらの構成成分が完全に溶解して混合物が一様になるまで混合することによって溶液を調製した。使用した抗菌第四級アンモニウムポリマーは、実施例A14に記載した抗菌第四級アンモニウムポリマーと実質的に類似であった。この溶液を平らなこびりつかないフライパンの上に注入し、一晩乾燥させた。フライパンは、一様なフィルム厚を促進するために水平面に配置した。乾燥したフィルムをフライパンから引き剥がした。コントロールフィルムを類似方法で調製した;しかし、このフィルムは抗菌ポリマーを含有していなかった。フィルムの抗菌効力について、ASTM「振とうフラスコ法」(ASTM番号E2149−抗菌表面試験「動的接触条件下で固定化された抗菌剤の抗菌活性を決定する(Determining the Antimicrobial Activity of Immobilized Antimicrobial Agents Under Dynamic Contact Conditions)」を用いて試験した。試験細菌はMRSA(ATCC番号BAA−44)であり、接触時間は30分間であった。抗菌内容物を備えるフィルムは、未処理フィルムに比較して、細菌の5.4対数減少(完全殺菌)を示した。両方のフィルムは、外観および物理的特性については類似であった。
【0150】
実施例A27
抗菌ポリマーの溶液を用いたポリウレタンペレットの注入
350mLのTHFおよび50mLのエタノールの混合液中に溶解させた、実質的に実施例A15に記載したものに類似する10gの抗菌第四級アンモニウムポリマーを含有する溶液を調製した。この溶液に直径約3mmおよび長さ3mmのペレット形にあるポリウレタン樹脂100gを加えた。この懸濁液をロータリーミキサ上で一晩混合した。これらのペレットは、この時間中に全溶液を吸収した。ペレットは、僅かに加熱しながら減圧下で乾燥させた。乾燥したペレットの外観は、処理ペレットが僅かに黄色い色を有することを除いて、未処理ペレットと実質的に類似であった。残留抗菌ポリマーまたはコーティングの目に見える証拠はみられなかった。ペレットの抗菌効力について、ASTM「振とうフラスコ法」(ASTM試験法E2149−抗菌表面試験「動的接触条件下で固定化された抗菌剤の抗菌活性を決定する(Determining the Antimicrobial Activity of Immobilized Antimicrobial Agents Under Dynamic Contact Conditions)」を用いて試験した。試験細菌はMRSA(ATCC番号BAA−44)であり、接触時間は30分間であった。抗菌内容物を備えるペレットは未処理ペレットに比較して、細菌の2.5対数減少を示した。
【0151】
実施例A28
抗菌ポリマーの溶液を用いた基質の処理
例えばポリ(ビニルクロライド)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、若しくはポリスチレンを含む熱可塑性ポリマーである基質を、適切な溶媒中に溶解させた水不溶性第四級アンモニウム抗菌ポリマーを用いて処理した;このとき、適切な溶媒および/またはポリマー溶液は、基質の表面内に溶解する(全体に、若しくは部分的に)、吸収される、またはさもなければ浸透することができる。前記基質は、例えば刷毛塗り法、スプレー法、または浸漬法を含む任意のあらゆる適切な手段によって前記溶液で処理することができる。前記処理後、処理された基質は前記適切な溶媒を取り除いて、基質に注入、コーティング、接着、結合、または浸透させられた前記水不溶性第四級アンモニウム抗菌ポリマーを残し、基質に抗菌特性を与えるために乾燥させることができる。
【0152】
薄膜効果検査(Thin Film Efficacy Test:TFET):
概要:薄膜効力試験(TFET)は、[Bhende,S;Rothenburger,S;Spangler,D.J;In Vitro Assessment of Microbial Barrier Properties of Dermabond Topical Skin Adhesive.Surgical Infections 3(3),pp251−257(2002)]に基づいて、抗菌溶液の静菌活性を決定するために開発された。TFETの方法工程は、抗菌溶液を適当な増殖培地プレートに塗布する工程と、この溶液を完全に乾燥させる工程とから成る。プレートには次に所望の細菌約1×10−6CFU/mLを接種した後、接種菌が完全に吸収された後に一晩インキュベートした。その後、塗布領域の静菌活性を確認した。
【0153】
プレート:このアッセイに用いた培養プレートは、それぞれの菌に適した選択的培養プレートである。1種類の菌につき60枚のプレートを使用した。
MSA:MSA(マンニット食塩寒天培地)は、黄色ブドウ球菌とMRSAの選択的培地である。
EMB:エオシン・メチレンブルー寒天は、大腸菌の選択的培地である。
EA:エンテロコッカス寒天は、VREの選択的培地である。
コーティング:抗菌溶液100μLを各プレートに塗布し、接種前に生物学的安全キャビネット内で最低1時間風乾させた。
接種:他に規定されていない限り、試験菌は適切な増殖培地中で増殖させ、一晩インキュベートした。接種菌は、10CFU/mLの力価を達成するように作製した。次にコーティングしたプレートに1,000μLの細菌溶液を接種し、プレートを円運動で動かしながら、接種菌を均一に塗布した。
曝露:他に規定されていない限り、サンプルを37℃の高湿度チャンバ内でインキュベートし、曝露時間は一晩とした。
結果:インキュベーション後、各プレートを塗布領域上での静菌活性について検査した。結果は、合格/不合格として示した。増殖がない場合、プレートは合格と表示し、領域上で増殖がある場合、プレートは不合格と表示した。
【0154】
実施例T1
TFET−結果:
薄膜効力試験(TEFT)を使用し、抗菌溶液の静菌能力を決定した。TEFTの方法工程は、担体として増殖培地プレートを用い、プレート中央に選択された抗菌溶液100μLを塗布する工程から成る。抗菌溶液は、接種前に少なくとも1時間にわたって風乾させた。コーティングしたプレートに力価10CFU/mLで1,000μLの接種菌を接種した。接種菌が完全にプレートの表面全体を被覆するまでプレートを回転させることによって、接種菌を均質に塗布した。次に接種したプレートを乾燥させた後、37℃で一晩インキュベートした。一晩インキュベートした後、抗菌溶液を塗布した領域を細菌増殖の抑制について検査し、結果を合格/不合格と表示した。細胞の抑制が観察されると、プレートは合格と見なした。細胞の抑制が観察されない場合は、プレートは不合格と見なした。黄色ブドウ球菌ATCC番号6538に使用した培地はマンニット食塩寒天培地(MSA)であり、使用した抗菌溶液は(実施例A6由来の)H3−Cであった。
黄色ブドウ球菌についての結果は以下の通りである。
【0155】
抗菌溶液 24時間後の結果 48時間後の結果
5% H3−C 合格60/不合格0 合格60/不合格0
10% H3−C 合格60/不合格0 合格60/不合格0
【0156】
実施例T2
実施例T2では、試験細菌としてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC番号BAA−44)を使用し、増殖培地として再びMSAを使用した。
MRSAについての結果は以下の通りである。
【0157】
抗菌溶液 24時間後の結果 48時間後の結果
5% H3−C 合格60/不合格0 合格60/不合格0
【0158】
実施例T3
実施例T3では、試験細菌として大腸菌ATCC番号15597を使用し、さらにエオシン・メチレンブルー寒天を増殖培地として使用した。
大腸菌についての結果は以下の通りである。
【0159】
抗菌溶液 24時間後の結果 48時間後の結果
5% H3−C 合格60/不合格0 合格60/不合格0
10% H3−C 合格60/不合格0 合格60/不合格0
【0160】
実施例T4
実施例T4では、試験細菌としてバンコマイシン耐性エンテロコッカス(VRE、ATCC番号700221)、さらに増殖培地としてエンテロコッコセル寒天培地を使用した。
VREについての結果は以下の通りである。
【0161】
抗菌溶液 24時間後の結果 48時間後の結果
5% H3−C 合格60/不合格0 合格60/不合格0
【0162】
実施例T5
実施例T5では、抗菌溶液としてH−1調製物(実施例A3を参照)を使用した。
黄色ブドウ球菌についての結果は以下の通りである。
【0163】
抗菌溶液 24時間後の結果 48時間後の結果
10% H−1 合格60/不合格0 合格60/不合格0
【0164】
実施例T6
実施例T6でも、抗菌溶液としてH−1調製物を使用した。
大腸菌についての結果は以下の通りである。
【0165】
抗菌溶液 24時間後の結果 48時間後の結果
10% H−1 合格60/不合格0 合格60/不合格0
【0166】
比較例T7
本発明の組成物と比較するため、比較例T7では抗菌溶液としてZero(登録商標)手の除菌用ローション(Aquagen International社)を用いた。
黄色ブドウ球菌についての結果は以下の通りである。
【0167】
抗菌溶液 24時間後の結果 48時間後の結果
Zero(登録商標) 合格8/不合格52 合格0/不合格60
【0168】
比較例T8
本発明の組成物と比較するため、比較例T8では抗菌溶液としてZero(登録商標)手の除菌用ローションを用いた。
大腸菌についての結果は以下の通りである。
【0169】
抗菌溶液 24時間後の結果 48時間後の結果
Zero(登録商標) 合格0/不合格60 合格0/不合格60
比較例T9
本発明の組成物と比較するため、比較例T9では、抗菌溶液としてPurell(登録商標)手の除菌用ローション(GOJO Industries社)を用いた。
黄色ブドウ球菌についての結果は以下の通りである。
【0170】
抗菌溶液 24時間後の結果 48時間後の結果
Purell(登録商標) 合格0/不合格60 合格0/不合格60
【0171】
比較例T10
本発明の組成物と比較するため、比較例T10では、抗菌溶液としてPurell(登録商標)手の除菌用ローション(GOJO Industries社)を用いた。
大腸菌についての結果は以下の通りである。
【0172】
抗菌溶液 24時間後の結果 48時間後の結果
Purell(登録商標) 合格0/不合格60 合格0/不合格60
【0173】
担体持続性検査(Carrier Persistence Test:CPT)
概要:この方法は、EPAの標準操作法である黄色ブドウ球菌、緑膿菌、およびウシ結核菌に対するスプレー殺菌剤の試験(Testing of Spray Disinfectants against Staphylococcus aureus,Pseudomonas aeruginosa,and Mycobacterium bovis)の修正版であり、EPAの標準操作法とは、ウシ結核菌(BCG)、緑膿菌、および黄色ブドウ球菌の3種類の検査菌に対する塗装面の殺菌剤としてのスプレー製剤の効果を判定するAOAC法を改訂したものである。
【0174】
CPTの方法工程は、選択した担体に抗菌検査溶液を塗布する工程と、担体を乾燥させた後に適当な試験細菌を接種する工程から成る。接種した後、担体を所定の曝露時間インキュベートした後、中和溶液中に入れ、段階希釈を行い、標準方法を用いた効力定量のためにプレーティングした。
【0175】
担体:担体は25cmとし、様々な物質から構成することができる。担体は担体の組成物に適した方法で滅菌した。これらのアッセイで使用した3種類の担体はホウケイ酸ガラス、Vitro−Skin(登録商標)、およびブタ皮膚であった;しかし、この方法で使用するために適した担体は前述のものに限られない。
ホウケイ酸ガラス:ホウケイ酸スライドガラスはエタノールで洗浄し、風乾させた。乾燥後、ホウケイ酸スライドガラスをペトリ皿内に配置し、15分間加圧滅菌処理した。
Vitro−Skin(登録商標):Vitro−Skin(登録商標)は、製造業者の仕様書に従って調製した。Vitro−Skin(登録商標)が非無菌になった場合は、製造業者の仕様書に従って70%アルコールで滅菌し、乾燥させ、再水和させる必要がある。Vitro−Skin(登録商標)は、製造業者(IMS社、コネチカット州Orange)から直接購入した。Vitro−Skin(登録商標)は、ヒト皮膚の表面特性を効果的に模倣した先進試験基質である。Vitro−Skin(登録商標)は、最適化されたタンパク質および脂質成分の両方を含み、ヒト皮膚に類似したトポグラフィ、pH、臨界的表面張力、およびイオン強度を有するように設計されている。
ブタ皮膚:ブタ皮膚は、70%アルコールで滅菌した。この方法は、70%アルコールで担体を十分湿らせる工程と、生物学的安全キャビネット(BSC)内で担体を十分風乾させる工程を含んでいた。代わりに、ブタ皮膚を10分間紫外線に曝露させることもできる。新鮮ブタ皮膚は、地元の食肉処理場から購入した。
塗布:抗菌溶液は、担体が十分湿るまで各担体に塗布する。溶液の容量は、1,000μLを超えてはならず、20μL未満であってはならない。抗菌溶液は、その後BSC内で少なくとも1時間にわたり風乾させ、その後に接種した。
接種:他に特に記載されていない限り、試験細菌は適切な増殖培地中で、一晩37℃でインキュベートした。接種菌は、10CFU/mLの力価を生成するように修飾した。抗菌溶液を担持する担体には、次に10μL〜20μLの接種細菌を接種した。接種細菌は、接種細菌が十分に染み込ませた無菌綿棒を用いて分布させる。曝露時間は、接種直後に開始された。
曝露:他に特に記載されていない限り、曝露時間は一晩とし、サンプルは高湿度チャンバ内で37℃でインキュベートした。
中和:接種した担体は、抗菌溶液の抗菌活性を停止させるために、細菌を回収する前に中和した。他に特に記載されていない限り、すべての中和は、少なくとも10分間で、50mLの円錐形遠心分離管内でLetheen培養液20mLを用いて実施した。
回収:細菌の回収は中和用の遠心分離管内で開始した。中和した担体は1分間ボルテックスをかけた後、細菌は標準段階希釈法およびプレーティング法によって回収した。プレートを37℃で一晩インキュベートし、翌日コロニー形成単位を定量した。
コントロール:抗菌コーティングが塗布されていない担体基質は、ベースライン時細菌増殖を決定するための陰性コントロールとして使用した。コントロール基質は、各サンプルセット内の試験基質と同一組成物であった。コントロール基質についてのコロニー数を報告した。
計算:計算は、Microsoft Excel(登録商標)表計算ソフトを用いて行われる。表計算ソフトの電子コピーならびにハードコピーを保管する。
担体当たりのCFU/mLを計算するには、
[(10−wについての平均CFU)+(10−xについての平均CFU)+(10−yについての平均CFU)+(10−zについての平均CFU)]/(10−w+10−x+10−y+10−z
(式中、10−w、10−x、10−y、および10−zは、プレーティングされた希釈率である)。1若しくはそれ以上の希釈率で計数が300超、または30未満のプレート計数を生じさせる場合、これらの計数および対応する希釈率は計算に使用されない。2枚のプレートのうち1枚のみで計数が300CFU以下となった場合は、そのプレートの計数と対応する希釈率は含められるが、平均は決定されない。
備考:プレート計数が0の場合は、すべての計算に含めなければならない。
対数減少を計算するためには、
LR=Log[(処理担体についてのCFU/mL)/(コントロール担体についてのCFU/mL)]
【0176】
実施例C1
担体持続性検査−結果:
H−1抗菌ポリマーの10%溶液(実施例A3を参照)は、ホウケイ酸スライドガラス担体に塗布した。ピペットの先端を用いて、250μLのNimbuDerm H−1をスライドガラス担体表面25cmの上方へ均一に塗布した。スライドガラス担体は、接種前に少なくとも1時間にわたり乾燥させた。担体に、10CFU/mLの目標負荷を保証するために、10μLの10CFU/mLの接種菌を接種した。使用した細菌は黄色ブドウ球菌ATCC番号6538であり、曝露時間は30分間であった。曝露後、接種したスライドガラス担体は、適切に中和するために10分間以上にわたり20mLのLetheen培養液の中和溶液中に入れた。Letheen培養液は使用前に4℃に冷却した。中和後、担体は、細菌の回収を促進するために1分間にわたり中和培養液中で1分間ボルテックスにかけた。生菌の回収は、標準段階希釈およびプレーティング法により行った。
結果は以下の通りであった。
【0177】
黄色ブドウ球菌のコントロール担体集団:3.20×10CFU/mL
担体:ホウケイ酸スライドガラス
曝露時間:30分間
サンプル 溶液 対数減少
1 10% H−1 6.51
2 10% H−1 6.51
3 10% H−1 6.51
4 10% H−1 6.51
=完全殺菌)
【0178】
実施例C2
実施例C2は、曝露時間を除いて実施例C1と同一であった。実施例C2で使用した曝露時間は16時間(一晩曝露)であった。
結果は以下の通りであった。
【0179】
黄色ブドウ球菌のコントロール担体集団:2.30E07 CFU/mL
担体:ホウケイ酸スライドガラス
曝露時間:16時間
サンプル 溶液 対数減少
1 10% H−1 7.36
2 10% H−1 7.36
3 10% H−1 7.36
4 10% H−1 7.36
5 10% H−1 7.36
6 10% H−1 7.36
=完全殺菌)
【0180】
実施例C3
実施例C3は、細菌を除いて実施例C2と同一であった。使用した細菌は、大腸菌ATCC番号15597であった。
結果は以下の通りであった。
【0181】
大腸菌のコントロール担体集団:1.06E05 CFU/mL
担体:ホウケイ酸スライドガラス
曝露時間:16時間
サンプル 溶液 対数減少
1 10% H−1 5.03
2 10% H−1 5.03
3 10% H−1 5.03
4 10% H−1 5.03
5 10% H−1 5.03
6 10% H−1 5.03
=完全殺菌)
【0182】
実施例C4
実施例C4は、担体を除いて実施例C3と同一であった。使用した担体は、Vitro−Skin(登録商標)であった。
結果は以下の通りであった。
【0183】
大腸菌のコントロール担体集団:2.87E06 CFU/mL
担体:Vitro−Skin(登録商標):
曝露時間:16時間
サンプル 溶液 対数減少
1 10% H−1 6.46
2 10% H−1 6.46
3 10% H−1 6.46
4 10% H−1 6.46
5 10% H−1 6.46
6 10% H−1 6.46
=完全殺菌)
【0184】
実施例C5
H−3抗菌ポリマーの10%溶液(実施例A6を参照)は、ホウケイ酸スライドガラス担体に塗布した。ピペットの先端を用いて、250μLのH−3(10%ポリマー含有量)をスライドガラス担体表面25cmの上方へ均一に塗布した。スライドガラス担体は、接種前に少なくとも1時間にわたり乾燥させた。担体に、10CFU/mLの目標負荷を保証するために、10μLの10CFU/mLの接種菌を接種した。使用した細菌は黄色ブドウ球菌ATCC番号6538であり、曝露時間は30分間であった。曝露後、接種したスライドガラス担体は、適切に中和するために10分間以上にわたり20mLのLetheen培養液の中和溶液中に入れた。Letheen培養液は使用に先行して4℃に冷却した。中和後、担体は、細菌の回収を促進するために1分間にわたり中和培養液中で1分間ボルテックスにかけた。生菌の回収は、標準段階希釈法およびプレーティング法によって実施した。
結果は以下の通りであった。
【0185】
大腸菌のコントロール担体集団:1.06E05 CFU/mL
担体:ホウケイ酸スライドガラス
曝露時間:16時間
サンプル 溶液 対数減少
1 10% H−3 5.03
2 10% H−3 5.03
3 10% H−3 5.03
4 10% H−3 5.03
5 10% H−3 5.03
6 10% H−3 5.03
=完全殺菌)
【0186】
実施例C6
実施例C6は、担体を除いて実施例C5と同一であった。使用した担体は、Vitro−Skin(登録商標)であった。
結果は以下の通りであった。
【0187】
大腸菌のコントロール担体集団:2.87E06 CFU/mL
担体:Vitro−Skin(登録商標):
曝露時間:16時間
サンプル 溶液 対数減少
1 10% H−3 6.46
2 10% H−3 6.46
3 10% H−3 6.46
4 10% H−3 6.46
5 10% H−3 6.46
6 10% H−3 6.46
=完全殺菌)
【0188】
実施例C7
実施例C7は、皮膚消毒剤溶液の濃度を除いて実施例C5と同一であった。H3−C皮膚消毒剤の濃度は、今度は7%に減少させた。
結果は以下の通りであった。
【0189】
大腸菌のコントロール担体集団:2.50E06 CFU/mL
担体:ホウケイ酸スライドガラス
曝露時間:16時間
サンプル 溶液 対数減少
1 7% H3−C 6.40
2 7% H3−C 6.40
3 7% H3−C 6.40
4 7% H3−C 6.40
5 7% H3−C 6.40
6 7% H3−C 6.40
=完全殺菌)
【0190】
実施例C8
実施例C8は、担体を除いて実施例C7と同一であった。使用した担体は、Vitro−Skin(登録商標)であった。
結果は以下の通りであった。
【0191】
大腸菌のコントロール担体集団:2.08E06 CFU/mL
担体:Vitro−Skin(登録商標):
曝露時間:16時間
サンプル 溶液 対数減少
1 7% H3−C 6.32
2 7% H3−C 6.32
3 7% H3−C 6.32
4 7% H3−C 6.32
5 7% H3−C 6.32
6 7% H3−C 6.32
=完全殺菌)
【0192】
実施例C9
実施例C9は、皮膚消毒剤溶液の濃度を除いて実施例C7と同一であった。H3−C皮膚消毒剤の濃度は、今度はさらに1%に減少させた。
結果は以下の通りであった。
【0193】
大腸菌のコントロール担体集団:2.77E04 CFU/mL
担体:ホウケイ酸スライドガラス
曝露時間:16時間
サンプル 溶液 対数減少
1 1% H3−C 4.44
2 1% H3−C 4.44
3 1% H3−C 4.44
4 1% H3−C 4.44
5 1% H3−C 4.44
6 1% H3−C 4.44
=完全殺菌)
【0194】
実施例C10
実施例C10は、細菌を除いて実施例C9と同一であった。使用した細菌は、黄色ブドウ球菌ATCC番号6538であった。
結果は以下の通りであった。
【0195】
黄色ブドウ球菌のコントロール担体集団:1.25E03 CFU/mL
担体:ホウケイ酸スライドガラス
曝露時間:16時間
サンプル 溶液 対数減少
1 1% H3−C 3.10
2 1% H3−C 3.10
3 1% H3−C 3.10
4 1% H3−C 3.10
5 1% H3−C 3.10
6 1% H3−C 3.10
【0196】
実施例C11
実施例C11は、細菌を除いて実施例C10と同一であった。使用した細菌は、緑膿菌ATCC番号15442であった。
結果は以下の通りであった。
【0197】
緑膿菌のコントロール担体集団:3.93E06 CFU/mL
担体:ホウケイ酸スライドガラス
曝露時間:16時間
サンプル 溶液 対数減少
1 1% H3−C 6.59
2 1% H3−C 6.59
3 1% H3−C 6.59
4 1% H3−C 6.59
5 1% H3−C 6.59
6 1% H3−C 6.59
=完全殺菌)
【0198】
実施例C12
H3−C抗菌ポリマーの1%溶液は、ホウケイ酸スライドガラス担体に塗布した。除菌用ローション液を染み込ませた不織布材料(ポリエステル/綿)で25cmのスライド表面を2回通過させ、除菌用ローション液を塗布した。この段階でコーティングされたスライドガラス担体は、接種前に1時間以上乾燥させた。コーティングされたスライドガラスには、目標負荷量の10CFU/mLを保証するために10CFU/mLの接種菌を接種した。使用した細菌は大腸菌ATCC番号15597であり、曝露時間は16時間であった。曝露後、接種したスライドガラス担体は、適切に中和するために10分間以上にわたり20mLのLetheen培養液の中和溶液中に入れた。Letheen培養液は使用に先行して4℃に冷却した。中和後、担体は、細菌の回収を促進するために1分間にわたり中和培養液中で1分間ボルテックスにかけた。生菌の回収は、標準段階希釈法およびプレーティング法によって実施した。
結果は以下の通りであった。
【0199】
大腸菌のコントロール担体集団:1.57E06 CFU/mL
担体:ホウケイ酸スライドガラス
曝露時間:16時間
サンプル 溶液 対数減少
1 1% H3−C 6.19
2 1% H3−C 6.19
3 1% H3−C 6.19
4 1% H3−C 6.19
5 1% H3−C 6.19
6 1% H3−C 6.19
=完全殺菌)
【0200】
実施例C13
実施例C13は、細菌を除いて実施例C12と同一であった。使用した細菌は、緑膿菌ATCC番号15442であった。
結果は以下の通りであった。
【0201】
緑膿菌のコントロール担体集団:4.70E06 CFU/mL
担体:ホウケイ酸スライドガラス
曝露時間:16時間
サンプル 溶液 対数減少
1 1% H3−C 6.67
2 1% H3−C 6.67
3 1% H3−C 6.67
4 1% H3−C 6.67
5 1% H3−C 6.67
6 1% H3−C 6.67
=完全殺菌)
【0202】
比較例C14
Purell(登録商標)手の瞬間除菌用ローション液(GOJO Industries社)をホウケイ酸スライドガラス担体に塗布した。ピペットの先端を用いて、250μLのPruell(登録商標)をスライドガラス担体表面25cmの上方へ均一に塗布した。スライドガラス担体は、接種前に少なくとも1時間にわたり乾燥させた。担体に、目標負荷量の10CFU/mLを保証するために、10μLの10CFU/mLの接種菌を接種した。使用した細菌は黄色ブドウ球菌ATCC番号6538であり、曝露時間は30分間であった。曝露後、接種したスライドガラス担体は、適切に中和するために10分間以上にわたり20mLのLetheen培養液の中和溶液中に入れた。Letheen培養液は、使用前に4℃に冷却した。中和後、担体は、細菌の回収を促進するために1分間にわたり中和培養液中で1分間ボルテックスにかけた。生菌の回収は、標準段階希釈法およびプレーティング法によって実施した。
【0203】
黄色ブドウ球菌のコントロール担体集団:1.02E05 CFU/mL
担体:ホウケイ酸スライドガラス
曝露時間:30分間
サンプル 溶液 対数減少
1 Purell 1.07
2 Purell 1.22
3 Purell 1.17
4 Purell 1.07
5 Purell 1.19
6 Purell 1.14
【0204】
比較例C15
実施例C15は、細菌を除いて実施例C14と同一であった。使用した細菌は、大腸菌ATCC番号15597であった。
結果は以下の通りであった。
【0205】
大腸菌のコントロール担体集団:4.70E06 CFU/mL
担体:ホウケイ酸スライドガラス
曝露時間:30分間
サンプル 溶液 対数減少
1 Purell 0.89
2 Purell 0.50
3 Purell −1.46
4 Purell −4.95
5 Purell 0.75
【0206】
比較例C16
実施例C16は、細菌を除いて実施例C14と同一であった。使用した細菌は、緑膿菌ATCC番号15442であった。
結果は以下の通りであった。
【0207】
緑膿菌のコントロール担体集団:4.70E06 CFU/mL
担体:ホウケイ酸スライドガラス
曝露時間:30分間
サンプル 溶液 対数減少
1 Purell 0.37
2 Purell 0.33
3 Purell 0.37
【0208】
比較例C17
実施例A9の物質(SS−1C)をブタ皮膚担体に塗布した。ピペットの先端を用いて、1,000μLのSS−1Cをブタ皮膚担体表面25cmの上方へ均一に塗布した。ブタ皮膚担体は、接種前に少なくとも1時間にわたり乾燥させた。担体に、10CFU/mLの目標負荷を保証するために、20μLの10CFU/mLの接種菌を接種した。使用した細菌は、霊菌ATCC番号13380であった。曝露時間は4時間であった。曝露後、接種したブタ皮膚担体は、適切に中和するために10分間以上にわたり20mLのLetheen培養液の中和溶液中に入れた。Letheen培養液は使用前に4℃に冷却した。中和後、担体は、細菌の回収を促進するために1分間にわたり中和培養液中で1分間ボルテックスにかけた。生菌の回収は、標準段階希釈およびプレーティング法により行った。
結果は以下の通りであった。
【0209】
霊菌のコントロール担体集団:1.18E07 CFU/mL
担体:ブタ皮膚
曝露時間:4時間
サンプル 溶液 対数減少
1 10% SS−C 7.07
2 10% SS−C 7.07
3 10% SS−C 7.07
【0210】
比較例C18
実施例C18は、細菌を除いて実施例C17と同一であった。使用した細菌は、大腸菌ATCC番号8739であった。
結果は以下の通りであった。
【0211】
大腸菌のコントロール担体集団:1.54E07 CFU/mL
担体:ブタ皮膚
曝露時間:4時間
サンプル 溶液 対数減少
1 10% SS−C 7.19
2 10% SS−C 7.19
3 10% SS−C 7.19
【0212】
実施例C19
実施例C19は、細菌を除いて実施例C17と同一であった。使用した細菌は、MRSA(メタシリン耐性黄色ブドウ球菌)であった。
結果は以下の通りであった。
【0213】
MRSAコントロール担体集団:2.63E07 CFU/mL
担体:ブタ皮膚
曝露時間:4時間
サンプル 溶液 対数減少
1 10% SS−C 7.42
2 10% SS−C 7.42
3 10% SS−C 7.42
【0214】
実施例C20
実施例C20は、細菌を除いて実施例C17と同一であった。使用した細菌は、VRE(バンコマイシン耐性エンテロコッカス)であった。
結果は以下の通りであった。
【0215】
VREコントロール担体集団:3.23E06 CFU/mL
担体:ブタ皮膚
曝露時間:4時間
サンプル 溶液 対数減少
1 10% SS−C 6.51
2 10% SS−C 6.51
3 10% SS−C 6.51
【0216】
最良の実施形態を含めて本発明を概して説明してきたが、当業者であれば、本発明が添付の特許請求項およびそれらの同等物に規定された本発明の実施形態を企図していることを理解する。しかし、当業者は、本発明の範囲は、単に本明細書に例示した特定の実施形態によってではなく、本明細書に添付の特許請求の範囲によって判定するべきであることを理解する。当業者であれば、さらにまた特許庁への本文書の出願の後により洗練された技術的進歩が出現することも理解する。これらの後に開発される改良が本開示の中心にある操作上の原理を実施する範囲では、それらの改良は同様に以下の特許請求の範囲内に含まれると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永続的抗菌活性を基質に付与する組成物であって、(1)実質的にグリコールから成る溶媒、若しくは実質的に少なくとも1つのグリコールと少なくとも1つのアルコールとの混合物から成る溶媒と、(2)抗菌ポリマーとを含み、前記抗菌ポリマーは前記ポリマーの分子構造に共有結合したモノマー部分を含み、前記モノマー部分は少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有し、前記抗菌ポリマーは前記溶媒中に易溶性であるが水に不溶性であり、前記溶媒は前記抗菌ポリマーを前記基質と結合するための担体として機能し、さらに前記抗菌活性は抗菌性金属材料によっては提供されない組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物において、前記抗菌ポリマーは、第1種のモノマー部分と第2種のモノマー部分とを含み、前記種の少なくとも1つは少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有するものである。
【請求項3】
請求項2記載の組成物において、前記第1モノマー部分はアリル若しくはビニル含有モノマー部分であり、前記第2モノマー部分はアリル若しくはビニル含有モノマー部分である。
【請求項4】
請求項1記載の組成物において、前記モノマー部分はアリル若しくはビニル含有モノマー部分である。
【請求項5】
請求項1記載の組成物において、前記抗菌ポリマーは、逐次重合を使用して合成されるものである。
【請求項6】
請求項1記載の組成物において、前記抗菌ポリマーは、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有するモノマー部分を含むポリウレタンポリマーであり、それにより前記組成物は基質に塗布された、若しくは基質内に組み込まれた場合に永続的抗菌活性を提供するものである。
【請求項7】
請求項6記載の組成物において、前記ポリウレタンポリマー350g当たり第四級アンモニウム基を有する少なくとも1モルの前記モノマー部分は、前記ポリマーの分子構造に共有結合しているものである。
【請求項8】
請求項1記載の組成物において、前記抗菌ポリマーは、5〜25,000の平均重合度を有するものである。
【請求項9】
請求項1記載の組成物において、前記溶媒は、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタングリコール、それらの異性体および誘導体から成る群から選択される1つ若しくはそれ以上のグリコールから実質的に成るものである。
【請求項10】
請求項9記載の組成物において、前記グリコールは前記組成物の60〜95重量%を含むものである。
【請求項11】
請求項1記載の組成物において、前記溶媒は、少なくとも1つのグリコールと少なくとも1つのアルコールとを含む混合物から基本的になり、前記アルコールはメタノール、エタノール、およびイソプロパノールから成る群から選択され、前記グリコールはグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタングリコール、ならびにそれらの異性体および誘導体から成る群から選択されるものである。
【請求項12】
請求項11記載の組成物において、前記混合物は、前記組成物の60〜95重量%を含むものである。
【請求項13】
請求項1記載の組成物において、前記抗菌ポリマーは、前記基質から接触する流体内へ流体殺菌を生じさせるレベルでは浸出、溶出、または放出しないものである。
【請求項14】
請求項1記載の組成物において、前記抗菌ポリマーは、無色、無臭、またはその両方である。
【請求項15】
請求項1記載の組成物において、前記組成物は、5〜9のpHを有するものである。
【請求項16】
請求項1記載の組成物において、前記組成物は、液体、ゲル、フォーム、およびエアロゾルから成る群から選択される形態にあるものである。
【請求項17】
請求項1記載の組成物において、前記組成物は、浸出性抗菌剤をさらに含むものである。
【請求項18】
請求項17記載の組成物において、前記抗菌剤は、第四級アンモニウム塩、ビグアニド、およびフェノール化合物から成る群から選択されるものである。
【請求項19】
請求項18記載の組成物において、前記抗菌剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ジメチルジデシルアンモニウムクロライド、またはそれらの混合物から成る群から選択されるものである。
【請求項20】
請求項18記載の組成物において、前記抗菌剤は、クロルヘキシジンおよびポリ(ヘキサメチレンビグアニド)から成る群から選択されるものである。
【請求項21】
請求項18記載の組成物において、前記抗菌剤は、フェノールおよびトリクロサンから成る群から選択されるものである。
【請求項22】
請求項1記載の組成物において、前記組成物は、皮膚軟化剤をさらに含むものである。
【請求項23】
請求項22記載の組成物において、前記皮膚軟化剤は、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、鉱油、脂肪アルコール、ラノリン、シリコン、イソプロピルパルミテート、スクアラン、グリセリン、それらの異性体若しくは誘導体、および上記のいずれかの混合物から成る群から選択されるものである。
【請求項24】
請求項23記載の組成物において、前記ラノリンは、ラノリンのエトキシル化アセチル化アルコール誘導体またはラノリンの界面活性アルコール誘導体であり、前記シリコンはジメチコン、シクロメチコン、若しくはシメチコンであるものである。
【請求項25】
請求項1記載の組成物において、前記組成物は、薬物、抗菌剤、防腐剤、増粘剤、保湿剤、皮膚軟化剤、ビタミン、一時的色素、持続的色素、および紫外線吸収剤から成る群から選択される少なくとも1つの添加物をさらに含み、これにより前記組成物はヒトまたは動物の皮膚に使用するために適合するものである。
【請求項26】
請求項25記載の組成物において、前記一時的色素若しくは持続的色素は、共有化学結合によって前記抗菌ポリマーに結合しており、これにより前記ポリマーからの前記色素の移動を防止するものである。
【請求項27】
請求項26記載の組成物において、前記色素は、フルオレセインである。
【請求項28】
請求項1記載の組成物において、前記組成物は、増粘剤をさらに含むものである。
【請求項29】
請求項28記載の組成物において、前記増粘剤は、ヒドロキシエチルセルロースまたはセルロースエーテルを含むものである。
【請求項30】
請求項1記載の組成物において、前記組成物は、CPT試験法を用いると、黄色ブドウ球菌の少なくとも3対数減少を生じさせるものである。
【請求項31】
請求項1記載の組成物において、前記組成物は、前記CPT試験法を用いると、緑膿菌の少なくとも3対数減少を生じさせるものである。
【請求項32】
基質を殺菌する方法であって、
a.前記基質に組成物を塗布する工程であって、前記組成物は、(1)基本的にグリコールから成る溶媒、若しくは基本的に少なくとも1つのグリコールと少なくとも1つのアルコールとの混合物から成る溶媒と、(2)抗菌ポリマーとを含み、前記抗菌ポリマーは前記ポリマーの前記分子構造に共有結合したモノマー部分を含み、前記モノマー部分は少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有し、前記抗菌ポリマーは前記溶媒中に易溶性であるが水不溶性であり、前記溶媒は前記抗菌ポリマーを前記基質と結合するための担体として機能し、および前記抗菌活性は抗菌性金属材料によっては提供されない工程と、
b.前記溶媒を除去するために前記基質を乾燥させる工程と、
c.前記抗菌ポリマーを前記基質の表面上に残し、それにより永続的抗菌活性が前記基質に付与されるものである工程と
を含む方法。
【請求項33】
請求項32記載の方法において、前記基質は、ヒトまたは動物の皮膚である。
【請求項34】
請求項33記載の方法において、前記溶媒は、グリコールである。
【請求項35】
請求項33に記載の方法において、前記工程a、b、およびcの適用は、医学的手術または獣医学的手術の前に行われるものである。
【請求項36】
請求項33記載の方法において、前記基質は、医療器具および家庭用品から成る群から選択されるポリマー器具である。
【請求項37】
請求項33記載の方法において、前記基質は、布地、木材または紙である。
【請求項38】
抗菌製品を作製する方法であって、
a.組成物を調製する工程であって、前記組成物は、(1)基本的にアセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、エーテル、エステル、ベンゼン、トルエン、カーボネート、炭化水素、塩素化炭化水素、アルコール、グリコール、またはそれらの混合物から成る溶媒と、(2)抗菌ポリマーとを含み、前記抗菌ポリマーは前記ポリマーの前記分子構造に共有結合したモノマー部分を含み、前記モノマー部分は少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有し、前記抗菌ポリマーは前記溶媒中に易溶性であるが水不溶性であり、および前記抗菌活性は抗菌性金属材料によっては提供されない工程と、
b.前記組成物を前記基質に塗布する工程であって、前記組成物は前記基質内に全体的に、若しくは部分的に、注入させる、吸収させる、穿通させる、さもなければ組み込ませ、それにより前記抗菌ポリマーを前記基質に、含浸する、注入する、コーティングする、接着させる、結合させる、若しくは浸透させ、それにより前記抗菌ポリマーは前記製品に抗菌特性を付与する工程と
を含む方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法において、前記溶媒は、基本的にエーテル、アルコール、およびグリコールから成る、または前記溶媒は少なくとも1つのグリコールと少なくとも1つのアルコールとの混合物から基本的に成るものである。
【請求項40】
請求項38に記載の方法において、紫外線硬化型コーティング組成物は、工程a.において前記抗菌組成物と結合させられ、工程b.の前記基質はポリマーシート若しくはフィルムである。
【請求項41】
請求項38記載の方法において、前記基質は、前記抗菌ポリマーを含む化粧品調製物である。
【請求項42】
請求項38記載の方法において、前記方法は、
c.前記溶媒を除去するために前記基質を乾燥させる工程であって、それにより前記抗菌ポリマーは、液体に曝露しても前記基質上に残留する工程を含む方法。
【請求項43】
請求項42記載の方法において、前記基質は、ポリマー、布地、木材または紙である。
【請求項44】
請求項42記載の方法において、前記基質は、縫合糸または創傷ドレッシングである。
【請求項45】
請求項38記載の方法において、前記方法は、
c.前記基質から、フィルム、繊維、ゲル、フォーム、接着剤、シーラント、コーク、チューブ、シート、ロッド、コーティング、または粉末から成る群から選択される製品を形成する工程であって、前記製品はその中に前記抗菌ポリマーを含む工程をさらに含む方法。
【請求項46】
請求項45記載の方法において、前記製品は、抗菌ポリマーを含む創傷ドレッシングである。
【請求項47】
請求項45記載の方法において、前記製品は、抗菌ポリマーを含む縫合糸である。
【請求項48】
請求項45記載の方法において、前記製品は、抗菌ポリマーを含む接着剤である。
【請求項49】
即効性および永続的抗菌活性を基質に提供する抗菌ポリマーを含む組成物の有効性を改良する方法であって、前記抗菌ポリマーは、前記ポリマーの前記分子構造に共有結合したモノマー部分を含み、前記モノマー部分は少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有し、前記抗菌ポリマーは、基本的にアルコール、グリコール、若しくはそれらの混合物から成る溶媒をさらに含む組成物の1つの成分であり、前記抗菌ポリマーは、前記溶媒中に易溶性であり、前記抗菌活性は抗菌性金属材料によっては提供されず、前記水溶性を前記抗菌ポリマーの全ポリマー重量の50重量%まで強化する工程を含む方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法において、前記強化する工程は親水性単位を前記抗菌ポリマー内に組み込む工程を含み、それにより前記親水性単位は水性媒体中での前記抗菌ポリマーの可溶性を増加させるものである。
【請求項51】
請求項49に記載の方法において、前記親水性単位はビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルおよびトリレン−2,4−ジイソシアネート(TDI)の反応によって生成される−CH−CH−O−CH−CH−単位である。
【請求項52】
請求項49に記載の方法において、前記強化する工程は、100までの平均重合度を備える抗菌ポリマーを製造する工程を含み、それにより水性媒体中での前記抗菌ポリマーの前記可溶性は、より高い平均重合度を有するポリマーの前記可溶性より高くなるものである。

【公表番号】特表2011−511103(P2011−511103A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542339(P2010−542339)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/030437
【国際公開番号】WO2009/089346
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(508056224)クイック−メッド テクノロジーズ、インク. (4)
【Fターム(参考)】