説明

毛髪処理組成物及び方法

式(I):
D−L−CHQ−CH−SR (I)
の化合物であって、
Dは発色団であり;LはSO、NHCO、及びNHSOから選択される連結基であり;Qは水素又はハロゲン原子であり;RはC−Cアルキル、(CHCOOH、(CHCONH、(CHSOH、(CHCOOM、(CHPOH、(CHOH、(CHSSO、(CHNR、(CH、(CHNHCOR、PhSSO、PhSOH、PhPOH、PhNR、PhN、(CHCH(SH)R(CHCOOH、及び



から選択され、nは1ないし4の範囲にあり、同一分子内で各々のnが必ずしも同一ではない整数であり;Mはアルカリ土類金属、アルカリ金属、NH、又はNRのカチオンであり;RはC−Cアルキルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は材料、特に、例えば毛髪のようなケラチン性繊維材料に好適な化合物、それを含む組成物、かつ、それに関連する方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
好適な実施形態においては、ケラチン性繊維材料、例えば毛髪を着色し、その後材料から脱色する一方で材料のダメージを限定するプロセスに関する。着色及び脱色段階は連続して迅速に、あるいはその間に合理的な期間を伴って実行されうる。着色及び脱色段階は数回反復され、材料、例えば毛髪のダメージを限定する。
【0003】
人間の毛髪の色彩を変える願望は、現代の局面ではない。ローマ帝国の時代から、人間の毛髪の色彩は日常的にファッション及びスタイルの変化に順応して変化してきた。しかしながら、所望の期間毛髪によって維持される、高精度な初期色彩への到達は、依然として非常に獲得しづらい目標であった。高精度に持続する色彩を実現する毛髪着色用組成物の開発の困難性は、部分的には毛髪自体の固有構造によるものであり、部分的には有効な毛髪着色プロセスに必要な状態によるものである。
【0004】
一般的には、人間の毛髪の状態及び構造は、毛幹の長さ方向に沿って規則的ではない。人間の毛髪は例えば、コーミング、ブラッシング、シャンプー洗浄、ヒーティング、パーマ、及びストレート矯正、ならびに日光への露光等の、様々な化学的及び機械的処理に供される。このように、毛髪は毛幹の末端で、頭皮に近い新生毛髪と比べて、一般的には大きなダメージの兆候を呈示する。このダメージは、毛髪が染色される際に、毛幹の長さ方向に沿った毛髪着色剤の不規則的な取り込みによる一貫性のない着色を引き起こしうる。
【0005】
毛髪が着色された時点で、色彩が(洗浄耐性としても知られる)洗浄、発汗、ヘアスプレー、及び日光の作用といった他の外部因子の作用により引き起こされるような、退色に対し耐性があること、ならびに着色が予測通りの期間、一貫した様式で維持されることに対する要望がある。更に、上述のような不規則な染料取り込みの原因となりうる毛髪に対するダメージは、毛髪のダメージ部分の退色の増加、ひいては不規則なレベルで経時的に色落ちする原因となりうる。人間の毛髪の染色に共通に関連する更なる困難性は、毛髪の脆化、又は皮膚の刺激といった使用者の毛髪及び皮膚に対する任意の有害作用、あるいは皮膚の染色(着色)を避ける染色系に対するニーズである。
【0006】
従って、退色の減少を呈示し、通常の洗浄措置時の洗い流される耐性を改善し、毛髪全体に実質的に一貫した毛髪着色結果を実現でき、皮膚に対する刺激作用を低減し、皮膚に対する染色を低減し、使用者の毛髪に対する有害作用を低減した毛髪着色用組成物を開発すること、及び、毛髪に対するこのような毛髪着色用組成物の、便利でかつ簡便な実現方法を更に開発することが所望される。
【0007】
退色に対し耐性がある毛髪着色用組成物を提供することが所望されるが、時に使用者は染色した毛髪から脱色することを所望しうる。一般にこのことが所望される場合、染色した毛髪を酸化漂白することが必要である。しかしながら、着色及び染色した毛髪の酸化漂白の反復は、毛髪の顕著なダメージの原因となる。従って、染色した毛髪を酸化漂白することなく、ひいてはダメージを毛髪に限定することなく、毛髪から容易に除去されうる毛髪着色用組成物を提供することは非常に所望される。
【0008】
複数年にわたり、顕著な努力は、人間の毛髪の染色に関する多くの問題の解消に向けられてきた。毛髪の染色への様々なアプローチが、酸化染料、直接作用染料、天然染料、金属性染料、及び反応性染料の使用を含めて開発された。
【0009】
反応性染料の毛髪着色剤は、毛髪に対する毛髪色彩の多様性を実現するのに用いられうる。しかしながら、実質的な改良が、色彩開発の色彩度、初期色彩の高精度な一貫性、洗浄耐性の改善、毛髪の状態の改善、毛髪ダメージのレベルの低減の領域で必要である。毛髪着色剤として用いられる化学物質の環境への影響を考慮することが更に必要である。
【0010】
このように、従来技術と比較して特性の改善を示す、反応性染料の毛髪着色用化合物及び組成物に対するニーズがある。他のケラチン繊維、例えば羊毛、カシミヤ、モヘヤ、及びアルパカを染色する容易さは利点がある。
【0011】
本発明の第1の態様によると、式(I):
D−L−CHQ−CH−SR (I)
の化合物が提供され、
Dは発色団であり;LはSO、NHCO、及びNHSOから選択される連結基であり;Qは水素又はハロゲン原子であり;RはC−Cアルキル、(CHCOOH、(CHCONH、(CHSOH、(CHCOOM、(CHPOH、(CHOH、(CHSSO、(CHNR、(CH、(CHNHCOR、PhSSO、PhSOH、PhPOH、PhNR、PhN、(CHCH(SH)R(CHCOOH、及び


から選択され;nは1ないし4の範囲にあり、同一分子内で各々のnが必ずしも同一ではない整数であり;Mはアルカリ土類金属、アルカリ金属、NH、又はNRのカチオンであり;RはC−Cアルキルである。
【0012】
分子内に2以上のRがある場合、各々は同一であっても、異なっていてもよい。
【0013】
式(I)の化合物の1の好適なサブクラスは、
D−L−CHCH−SR (IA)
として規定してもよく、D、L、及びRは上述のとおりである。
【0014】
式(I)の化合物の別の好適なサブクラスは、
D−L’−CHQ−CH−SR (IB)
であり、D、Q、及びRは上述のとおりであり、L’は連結基NHCOを表す。これにおいては、サブクラスQは好適にはハロゲン原子である。
【0015】
上述の定義の範囲内にある酸性残基化合物のエステル及び塩は更に本発明の範囲内にある。
【0016】
連結基Lは好適には、SO及びNHCOから選択される。SOは特に好適である。
【0017】
ハロゲン原子(Hal)は好適にはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子であり、好適には塩素又は特に臭素原子である。
【0018】
ケラチン性繊維材料、特に毛髪用の着色剤としてのこのような化合物の使用は、例えば、繊維上の染料の洗浄耐性の改善、経時的な色落ちの低減、消費者認容度の改善、色彩の一貫性及び色彩度、繊維状態の改善、繊維ダメージ及び皮膚刺激の低減、ならびに健康及び安全及び/又は環境プロフィールの改善といった、数多くの利益を示した。
【0019】
本発明の新規化合物は、他方の末端が例えば、アミドの炭素原子又はスルホンの硫黄原子といった連結基に結合するエチレン基に対するチオエーテル結合を含む。更に、連結基は発色団部分、好適にはその炭素原子に結合する。
【0020】
式Iの官能基SRは好適にはSCHRである。
【0021】
複数の好適な実施形態においては、本発明の化合物は式(II)又は(IIA)に示される構造を有する。
D−L−CH−CH−SCHR (II)
D−L’−CH(Hal)−CH−SCHR (IIA)
ここで、D、L、L’及びHalは上述のとおりである。
【0022】
好適には、Rは(CHCOOX、(CHSOX、(CHNH、(CHNR、(CHNHCOR、及び(CHCH(COOX)NHから選択され;mは0ないし3の整数であり;Xは水素、アルカリ金属、CないしCアルキル基、及び置換型又は非置換型のアンモニウム塩から選択され;RはCないしCアルキル基であり;Rは水素及びCないしCアルキル基から選択される。
【0023】
好適には、mは0又は1である。Xは好適には、水素、ナトリウム、カリウム、NH、又はNH(Rから選択され、各々のRはCないしCアルキル、例えばメチルである。
【0024】
は好適には、水素、1ないし4の炭素原子を有するアルキル基、エステル、酸、アミド、アミン残基、又はアルコール残基から選択される。
【0025】
本発明の特に好適な化合物は、式(III)及び(IV):
D−SO−CH−CH−SCHCOOH (III)
D−SO−CH−CH−SCHCH(COOH)NH (IV)
ならびに、そのエステル及び塩である。好適なエステルは、メチルエステル及びエチルエステルを含む。好適な塩はアルカリ金属及びアンモニウムの塩を含む。
【0026】
本発明の化合物は発色団部分Dを含む。
【0027】
物質を染色するのに用いるのに好適な任意の発色団部分は、本発明で用いられうる。本明細書で用いられるような発色団という用語は、任意の光活性化合物を意味し、例えば、蛍光増白剤、UV吸収剤、IR吸収性染料などの任意の着色性又は無着色性の光吸収種を含む。
【0028】
本明細書における染料化合物で用いるための好適な発色団部分は、モノアゾ、ビスアゾ若しくはポリアゾの染料、又はそれに由来する重金属錯体アゾ染料、あるいはアントラキノン、フタロシアニン、ホルマザン、アゾメチン、ジオキサジン、フェナジン、スチルベン、トリフェニルメタン、キサンテン、チオキサンテン、ニトロアリール、ナフトキノン、ピレンキノン、又はペリレンテトラカルボイミドの染料のラジカルを含む。本発明で支持される短時間及び低温度で毛髪を染色するのに最も好適なのは、1500未満の分子量を有する発色団である。
【0029】
本明細書中の染料化合物で用いるための好適な発色団部分は、引用によって本明細書中に組み込まれる欧州特許公開第0,735,107号(Ciba−Geigy社)に開示のものを含み、染料化合物の水溶特性を増加させるスルホナート置換基といった有機染料で通例の置換基を含有する、そこに記載のラジカルを含む。
【0030】
好適な発色団部分Dはアゾ化合物、アントラキノン染料、又はフタロシアニン染料によるものを含む。
【0031】
本発明で用いるための好適なアゾ発色団部分は、式(V)のモノアゾ種と、式(VI)のビスアゾ種とを含む。
Ar−N=N−Ar−−−−L (V)
X−Ar−N=N−Ar−N=N−Ar−−−−L (VI)
【0032】
各分子の一部が連結基Lに結合されることが構造中の点線によって示される。
【0033】
Ar、Ar、Ar、Ar、及びArの各々は独立であり、任意に置換された芳香族残基を表す。これらは好適には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピペリジン、イミダゾール、パラゾール(parazole)、ピラゾロン(pyrazalone)、オキサゾール、チオフェン、ベンゾピレン、キノリン、イソキノリン、クロミン、イソクロミン、インドール、イソインドール、ベンゾフラン、ベンザミダゾール、及びピラゾールから選択される1以上の芳香環構造に基づいてもよい。
【0034】
上に詳述したようないくつかの実施形態においては、芳香族残基は縮合環系を含んでもよい。代替的に、任意のAr、Ar、Ar、Ar、及びArの各々は、単一の共有結合を介して相互に結合する2以上の芳香環を含んでもよい。
【0035】
複数の好適な実施形態において、Ar、Ar、Ar、Ar、及びArの各々は独立であり、ベンゼン、ナフテン、ピラゾール、及びその付加物による構造から選択される。
【0036】
任意の前記芳香族部分Ar、Ar、Ar、Ar、及びArは、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、アミド、COOH、ハロ、エーテル、チオエーテル、スルホキシル、シアノ、チオシアノ、エステル、及び、例えばメチルなどのアルキルから選択される1以上の置換基で置換してもよい。
【0037】
好適には、構造(V)中のAr及びArのうちの少なくとも1つは、官能基SOYで置換され、Yは水素又はアルカリ金属若しくはアンモニウムの塩である。好適にはYはナトリウムである。Ar及びArの各々は、このようなスルホナート残基を含んでもよい。Ar及びArの一方及び双方は、ポリスルホン化されてもよい。すなわち、一方及び双方が2以上のSOY残基を含んでもよい。
【0038】
構造(VI)においては、各々及び任意のAr、Ar、及びArは選択的に、アミノ、ヒドロキシ、アミド、COOH、エステル、チオエーテル、スルホキシ、シアノ、チオシアノ、エーテル、チオエーテル、ハロ、及び、例えばメチルなどのアルキルから選択される1以上の残基で置換してもよい。好適には、Ar、Ar、及びArのうちの少なくとも1つは、スルホン化されてもよい。
【0039】
構造(VI)においては、Xは水素、水酸化物、ニトロ、アミノ、エステル、COOH、エーテル、アミド、ハロ、アルキル、アルコキシ、スルホキシ、及びチオエーテルから選択してもよい。好適には、Xは式LCHCHSRの別の官能基である。
【0040】
好適なアントラキノンの発色団部分は式(VII):


であり、nは0ないし6であり、mは0ないし6であり、Xは水素及びアルカリ金属から選択され、Yはヒドロキシ、アミノ、アミド、COOH、エーテル、エステル、チオエーテル若しくはスルホキシ、アルキル、ハロ、又はニトロから選択される。置換基Y及びSOXは、一方又は双方のベンゼン環に存在してもよい。好適な実施形態においては、nは1又は2であり、mは1又は2であり、Xはナトリウムであり、YはNHCOCH、CH、又はOHである。Arは芳香族残基、好適には点線の結合によって示されるような官能基L−CHCHSRで置換されるベンゼン残基を表す。
【0041】
アントラキノン染料は耐光性の青色発色団部分を提供するのに有用である。特に好適な化合物は、1,4−ジアミノ又は1,4−置換ジアミノ誘導体を有するものである。スルホ基は好適には2位にある。
【0042】
好適なフタロシアニン染料は銅フタロシアニン、特にそのスルホン化又はポリスルホン化された残基に基づくものである。これらの化合物はブリリアントターコイズブルー及びエメラルドグリーンの発色団を提供する。このような化合物の例は、式(VIII)に示される。

【0043】
他のこのような銅フタロシアニン化合物は、モノスルホン化、ジスルホン化又はトリスルホン化されてもよい。上述の化合物はスルホニルクロリドに変換され、次いで、メタ位の塩基(1−アミノベンゼン−3−スルファトエチルスルホン)又はパラ位の塩基(1−アミノベンゼン−4−スルファトエチルスルホン)と、弱アルカリ水溶液条件下で反応して、スルファトエチルスルホン化合物を含む混合物を提供する。好適なチオールとの次の反応は、式(RSCHCHSO−Ar−NHSO1−3CuPc−(SOH)1−3を有する本発明の化合物を提供する。ここで、CuPcは銅フタロシアニン残基である。
【0044】
本明細書中で用いるための特に好適な発色団官能基Dは、Dystar社から商業上入手可能なレマゾール(登録商標:Remazol)染料にあるものである。このような発色団部分を組み込むこの形態の化合物は、代表的な式IXa、IXb、IXc、IXd、及びIXeによって示されると考えられる。

【0045】
式IXaの化合物はオレンジ色であり、IXbは青色であり、IXcは黒色であり、IXdは赤色であり、IXeは黄色である。異なる量の2以上のこれらの化合物の混合物の形成によって、広範で多様な色彩が得られうると理解されよう。
【0046】
本発明の第2の態様によると、第1の態様の化合物を調製する方法が提供され、この方法は式(X)又は(X’)の化合物を式(XI)のチオールと反応させるステップ:
D−L−CQ=CH (X) + HSR (XI) → D−L−CHQ−CH−SR (I)
又は、
D−L−CHQ−CH−Y (X’) + HSR (XI) → D−L−CHQ−CH−SR (I)
を具え、R、D、及びLは第1の態様に関連して記載されるとおりであり、Yは脱離基である。
【0047】
Yは好適には、ハロゲン、特に塩素、OPOH、OSOH、SSOH、及びNRから選択され、R及びRはC1−4アルキルであり、Rは水素又はC1−4アルキルである。
【0048】
式X又はX’の化合物は染色用前駆物質と見なしてもよい。
【0049】
第2の態様の方法においては、式X又はX’の化合物は標準的な反応条件下でチオールXIと好適に反応する。このような条件は当該技術分野の当業者によって容易に理解されるであろう。
【0050】
一般的には、これらの反応は−10ないし70℃、好適には0ないし60℃、例えば20ないし50℃の温度で行われる。
【0051】
好適には、反応は6ないし12、好適には7ないし11のpHで行われる。
【0052】
第2の態様の反応を行うための好適な溶媒は水である。
【0053】
反応は、例えばアルコール水溶液といった水性溶媒の混合系、又は水及びDMFの混合物で行ってもよい。
【0054】
第2の態様の方法は、第1の態様の化合物の混合物を調製するのに用いてもよい。このような場合、この方法は式X及び/又はX’の2以上の化合物を式XIの1以上のチオールと反応させるステップか、あるいは式X及び/又はX’の1以上の化合物を式XIの2以上のチオールと反応させるステップを具えてもよい。得られた生成物の混合物は、反応物の混合物と関連づけられ、生成物の色彩及び他の所望される特性について調整してもよい。
【0055】
式X及びX’の化合物は周知クラスの化合物であり、当該技術分野で周知の方法によって、又は類似の方法で生成してもよい。Lが官能基SOを含む化合物は、官能基NHCOを含有する化合物を有するように、多くの染色分子(末端官能基−SRを有しない)のための発色団含有型の前駆物質として用いられ、提唱されてきた。例えば、英国第1037648号及び英国第1351976号は適用可能な方法の記載として引用されうる。有用なバックグラウンドは更に、書籍“Wool Dyeing”,Ed.D.M.Lewis,Society of Dyers and Colourists,Bradford,1992,pp.225−227に見ることができる。
【0056】
本発明の第3の態様によると、材料を着色するための組成物が提供され、1以上の第1の態様の化合物と、選択的な希釈剤(又は、担体)と、更に選択的な成分とを含む。
【0057】
好適には組成物は、ケラチン性材料を着色するための組成物である。より好適にはケラチン性繊維材料を着色するための組成物であるが、更に、非繊維性のケラチン材料、例えば爪を染色するのに用いられうる。
【0058】
ケラチン性繊維材料は動物の外被又は毛皮(例えば、羊毛、又はカシミヤ、又はモヘヤ、又はアンゴラ、又はアルパカ)由来であってもよいが、好適には人間の毛髪である。便宜上、用語「毛髪(hair)」が以降で使用されるが、本発明はその範囲内で広範であり、一般的に以下の定義物が材料に塗布されると理解すべきである。
【0059】
組成物は希釈して毛髪に塗布され、所望の色彩を提供できる濃縮性組成物として提供してもよい。いくつかの実施形態においては、組成物は実質的に、2以上の第1の態様の化合物の混合物からなってもよい。
【0060】
複数の好適な実施形態においては、第3の態様の組成物は毛髪に直接的に塗布されて、その染色に影響を与えうる使用準備済の剤形を含む。
【0061】
本発明の毛髪着色用の使用準備済の剤形は、好適には少なくとも0.001重量パーセント、好適には少なくとも0.005重量パーセント、より好適には少なくとも0.01重量パーセント、好適には少なくとも0.05重量パーセント、及び最も好適には少なくとも0.1重量パーセントの、1以上の第1の態様の化合物を含む。このような剤形は最大25重量パーセント、例えば最大20重量パーセント又は15重量パーセント、好適には最大10重量パーセント、より好適には最大7重量パーセント、好適には最大5重量パーセント、及び最も好適には、最大3重量パーセントの、1以上の第1の態様の化合物を含んでもよい。
【0062】
各組成物で用いられる染料の形態及びレベルは毛髪の所望の濃淡に依存する。
【0063】
第1の態様の化合物に加えて、第3の態様の組成物は1以上の更なる成分を含んでもよい。このような成分は、別のチオール成分、pH制御剤、増粘剤、1以上の界面活性剤、他の染料物質、及び本明細書中に記載のような更なる付加物を含む。希釈剤は好適には含まれてもよい。希釈剤は濃縮形態で提供される組成物中に存在してもよい。希釈剤は組成物が使用準備済の剤形として提供される実施形態で存在する。
【0064】
本発明の第3の態様の組成物は好適には、安定組成物として提供される。このような組成物は好適には、少なくとも1週間、好適には1月、より好適には6月の期間、環境条件下で有意な分解なく密封された容器内に保存しうる。
【0065】
好適には、第3の態様の組成物は別のチオール成分を含む。別のチオール成分は、式X又はX’の染色用前駆物質と反応する必要量の式XIのチオール(一般的には1モル当量)に加えて存在する。いくつかの実施形態においては、別のチオール成分は式XIのチオールと同一であってもよい。従って、複数の好適な実施形態においては、過剰なモル量の全チオール(式XIのチオール及び別のチオール成分を含む)が提供される。(式XI及び別のチオール成分の)全チオールの式X又はX’の、染色用前駆物質に対するモル比は、好適には少なくとも1.05:1、より好適には少なくとも1.1:1、例えば少なくとも1.2:1、1.5:1、又は2:1である。少なくとも5:1、又は少なくとも10:1であってもよい。
【0066】
好適に十分に過剰なチオールは染色時に、ジスルフィドであるシスチンの、チオールであるシステインへの毛髪表面還元が得られるように添加される。理論で結びつかないが、チオールであるシステインが、本発明の染料化合物と反応する主要な反応求核剤として機能すると考えられる。チオールを用いる更なる利点は、毛髪構造を解放でき、染料を含む他の薬剤の透過を可能にすることである。
【0067】
上述のように、式XIのチオールはチオールの混合物を含んでもよい。別のチオール成分は、式XIのチオールと同一又は異なる化合物を含みうる単一のチオール又はチオールの混合物を含んでもよい。
【0068】
別のチオール成分として用いるための好適なチオールの例は、チオグリコール酸、チオ乳酸、ジヒドロリポアート、チオグリセロール、メルカプトプロピオン酸、システイン、N−置換システイン、システアミン、N−置換システアミン、チオエタノール、及び1−チオプロパン−3−スルホナートを含む。チオグリコール酸が特に好適である。
【0069】
好適には、別のチオール成分は、組成物の0.5ないし20重量パーセント、好適には1ないし15重量パーセント、より好適には1.5ないし10重量パーセントの量で存在する。別のチオール成分が式(XI)のチオールと同一の化合物である場合においては、これらの重量の定義は、組成物中の遊離チオール、すなわち、化合物(X)又は(X’)と(XI)との間の反応で消費されないチオールの量のことである。
【0070】
代替的及び/又は更には、毛髪着色用組成物は更に亜硫酸塩を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、一部又は総ての別のチオール成分を置換してもよい。好適な亜硫酸塩はアルカリ金属又はアンモニウムの塩である。最も好適なのは亜硫酸ナトリウムである。
【0071】
亜硫酸塩は存在する場合、0.1ないし15重量パーセント、好適には0.5ないし10重量パーセント、より好適には1ないし5重量パーセントの量で好適に存在する。
【0072】
本明細書中の別の好適な成分は組成物中の水素結合を破壊する物質(水素結合破壊剤)である。毛髪用染料組成物で用いるのに好適な任意の水素結合破壊剤は本明細書中で用いることができる。好適な例は、臭化リチウム、尿素、レゾルシノール、カテコール、ジヒドロキシアセトン、ホルムアミド、塩化カリウム、及び塩化マグネシウムを含む。本明細書中で用いるのに特に好適なのは尿素である。
【0073】
本発明の着色組成物は、好適には約6ないし約11、好適には約7ないし約10.5、好適には約9ないし約10.5の範囲内のpHを有する。このようにpHを維持するために、組成物は1以上の選択的なpH制御剤を含有してもよい。
【0074】
本発明で用いるのに好適なアルカリ性のpH制御剤の例は、水酸化アンモニウム;エチルアミン;ジプロピルアミン;トリエチルアミン;1,3−ジアミノプロパンといったアルカンジアミン;モノ、ジ、トリ−エタノールアミンであり、好適にはジメチルアミノエタノールといったアミン基で完全に置換されるようなアルカリ性のアルカノールアミン;ジエチレントリアミンといったポリアルキレンポリアミン又はモルフォリンといった複素環アミン;ならびに水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムといったアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムといったアルカリ土類金属の水酸化物;アラニン、ロイシン、イソロイシン、及びヒスチジンといった塩基性アミノ酸;ジメチルアミノエタノールといったアルカノールアミン;アミノアルキルプロパンジオール;及びその混合物を含む。好適なpH制御剤は、水溶性の塩基、例えばアルカリ金属及びアンモニウムの炭酸塩及び水酸化物、ならびにトリエタノールアミンを含む。
【0075】
本明細書中で用いるのに特に好適なpH制御剤は、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、水酸化アンモニウム、及び水酸化ナトリウムを含む。
【0076】
本発明の毛髪着色用組成物は更には、約0.05重量パーセントないし約20重量パーセント、好適には約0.1重量パーセントないし約10重量パーセント、より好適には約0.5重量パーセントないし約5重量パーセントのレベルで、増粘剤、好適には美容上承認された増粘剤を含む。本明細書中の組成物で用いるのに好適な増粘剤は、欧州委員会の保健及び消費者保護のための総局で管理される消費者製品科学委員会(SCCP)による美容用途に特異的なものを含む。SCCPはINCIリスト(美容成分の国際命名法リスト)と称される用いるための化学物質のリストを認可する。本発明の組成物で用いるのに好適な増粘剤は、オレイン酸、セチルアルコール、オレイルアルコール、塩化ナトリウム、セテアリルアルコール、ステアリルアルコール、Carbopol、Aculyn、及びAcrosylといった合成増粘剤、ならびにその混合物を含む。本明細書中で用いるのに好適な増粘剤は、ステアレス−20とメタクリル酸塩との共重合体のAculyn22(登録商標)、ポリウレタン樹脂のAculyn44(登録商標)、及びアクリレート共重合体のAcusol830(登録商標)であり、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアのRohm&Haas社から入手可能である。本明細書中で用いるのに好適な更なる増粘剤は、アルギン酸ナトリウム若しくはアラビアゴム、又はメチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩といったセルロース誘導体、あるいはいくつかの型のアクリルポリマーを含む。
【0077】
第3の態様の毛髪着色用組成物は選択的に尿素を含む。理論で結びつかないが、尿素は組成物中の染料化合物を可溶化し、及び/又は、毛髪(及び動物性繊維)中に見出されるケラチン性たんぱく質を変性するのを助け、繊維性物質との反応速度を増加させると考えられている。
【0078】
尿素は好適には組成物の少なくとも2重量パーセント、好適には少なくとも5重量パーセントの量で存在してもよい。
【0079】
尿素は好適には組成物の最大30重量パーセント、好適には最大20重量パーセント、最も好適には最大15重量パーセントの量で存在してもよい。
【0080】
本発明の組成物で用いるための好適な希釈剤物質はINCIリストから選択してもよい。水は、本発明の組成物で用いるのに好適な希釈剤である。しかしながら、このような組成物は更なる希釈剤物質として、1以上の更なる溶媒を含んでもよい。一般的には、本発明の着色組成物で用いるのに好適な溶媒は、水に混和性であり、皮膚に無害であることで選択される。本明細書中の更なる希釈剤として用いるのに好適な溶媒はC−C20の一価又は多価のアルコール、及びそのエーテル、グリセリンを含み、一価及び二価のアルコール及びそのエーテルが好適である。これらの化合物においては、2ないし10の炭素原子を含有するアルコール残基が好適である。従って、好適な希釈剤の好悪的な官能基は、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、及びその混合物を含む。水は、本発明の組成物における好適で主要な希釈剤である。本明細書中で規定するような主要な希釈剤は、存在する水のレベルがその他の希釈剤の全体レベルよりも高いことを意味する。
【0081】
希釈剤は本明細書中の組成物の、好適には約5重量パーセントないし約99.98重量パーセント、好適には約15重量パーセントないし約99.5重量パーセント、より好適には約30重量パーセントないし約99重量パーセント、特に約50重量パーセントないし約98重量パーセントのレベルで存在する。
【0082】
複数の好適な実施形態においては、希釈剤は少なくとも90重量パーセント、より好適には少なくとも95重量パーセントの水を含む。好適には希釈剤は実質的に水からなる。
【0083】
本発明の組成物は更に、界面活性剤系を含有できる。本発明の組成物で用いるための好適な界面活性剤はINCIリストで見つけてもよい。本発明の組成物に含むための好適な界面活性剤は一般的には、脂溶性の約8ないし約22の炭素原子の鎖長を有し、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、両性、両性イオン性の界面活性剤、及びその混合物から選択できる。
【0084】
本発明で用いるための好適な界面活性剤化合物は毛髪染料用の剤形で用いるのに周知の従来の形態であり、当該技術分野の当業者に良く理解されるであろう。好適な界面活性剤は美容産業で支持されるもの、例えば、強くなく非アレルギー性であるコカミドプロピルベタインなどである。
【0085】
本発明の毛髪着色用組成物は、式Iの化合物に加えて、選択的に他の染料物質を含んでもよい(好適な選択はINCIリストで見つけることができる)。選択的には、本発明による毛髪着色用組成物及びプロセスで用いるのに好適な他の染料は、半永久性、一時性、及びその他の染料の双方を含む。
【0086】
本明細書中で規定されるような非酸化染料は、いわゆる「直接作用染料」、金属性染料、金属キレート性染料、繊維反応性染料、ならびに他の合成及び天然染料を含む。様々な形態の非酸化染料は、“Chemical and Physical Behaviour of Human Hair”3rd Ed.by Clarence Robbins(pp250−259);“The Chemistry and Manufacture of Cosmetics”.Volume IV.2nd Ed.Maison G.De Navarre at chapter 45 by G.S.Kass(pp841−920);“cosmetics:Science and Technology”2nd Ed.,Vol.II Balsam Sagarin,Chapter 23 by F.E.Wall(pp279−343);“The Science of Hair Care”edited by C.Zviak,Chapter 7(pp235−261);及び“Hair Dyes”,J.C.Johnson,Noyes Data Corp.,Park Ridge,U.S.A.(1973),(pp3−91 and 113−139);に詳述されている。
【0087】
多数の更なる選択的な物質が、組成物の約0.001重量パーセントないし約5重量パーセント、好適には約0.01重量パーセントないし約3重量パーセント、より好適には約0.05重量パーセントないし約2重量パーセントのレベルで、各々で記載された本明細書中の着色組成物に添加されうる。このような物質はたんぱく質及びポリペプチドならびにその誘導体;水可溶性又は可溶化された保存剤;保湿剤;抗菌剤;低温相改質剤;粘性制御剤;第四級アミン化合物;毛髪調整剤;酵素安定剤;着色剤;TiO及びTiOでコーティングされた雲母;芳香剤及び芳香安定剤;ゼオライト;Ca2+/Mg2+捕捉剤;及び水軟化剤;を含む。例えば、安定剤、乳化安定剤、塗膜形成剤、乳化剤、抗酸化剤、キレート剤、帯電防止剤、アンチケーキング剤、pHバッファ、充填剤、UV吸収剤、保湿剤、乳白剤、マスキング剤、還元剤、湿潤剤、及び発泡剤といった、多数の他の剤形成分が組成物に添加されうる。
【0088】
このような機能のために用いられうる好適な化合物の例は、当該技術分野の当業者に公知であり、好適には毛髪染料用剤形で通常用いられるものから選択される。このような物質のリスト用の好適な基準点はINCIリストで見出しうる。
【0089】
本発明の第4の態様によると、第3の態様の組成物を調整する方法が提供され、この方法は1以上の第1の態様の化合物を選択的な希釈剤及び更なる選択的な成分と共に混合するステップを具える。
【0090】
用いられる第1の態様の各化合物の量は、所望される正確な色彩に依存する。各々の着色化合物の数、形態及び量はこのように得られた組成物の色彩全体を変えるであろう。
【0091】
第3の態様の組成物が使用準備済の剤形として提供される複数の好適な実施形態においては、第4の態様の方法は、希釈剤に1以上の第1の態様の化合物を添加するステップを具えてもよい。
【0092】
代替的に、第4の態様の方法は、希釈剤に式X又はX’の1以上の前駆物質及び式XIの1以上のチオールを希釈剤に添加するステップを具えてもよい。
【0093】
いくつかの好適な実施形態においては、第4の態様の方法は、チオール及びビニルスルホン残基を添加した商業上入手可能な発色団部分を希釈剤に添加するステップを具える。このような化合物の例は英国Dystar社によって商標名Remazolで売られるものであり、好適な化合物は第2の態様に関連して記載した前駆物質を含む。
【0094】
チオールは好適には式RCHSHの化合物であり、R及びRは第1の態様に関連づけて記載されたとおりである。最も好適には、チオールはチオグリコール酸、システイン、システアミン、N−置換システアミン、チオエタノール、1−チオプロパン−3−スルホナート、及びその混合物から選択される。好適なN−置換システアミンは式HSCHCHNR、及びHSCHCHNHCORの化合物を含み、RはCないしCアルキルであってもよく、Rは水素又はCないしCアルキルであってもよい。
【0095】
このような実施形態においては、チオール及び前駆物質が希釈剤に添加される場合に、第1の態様の化合物はインサイチューで形成される。
【0096】
好適には余剰のチオールが添加される。第3の態様に関連づけて記載されるように、過剰なチオールによって、我々は過剰な分子量の全チオールがチオール全体量を前駆物質X又はX’の全体量と比較した場合に存在することを示す。全チオールは式XIの1以上のチオールと、式XIの1以上のチオールと同一であるか、又は同一でない別のチオール成分とを含む。いくつかの実施形態においては、第4の態様の方法は、ほぼ等モル量の式X又はX’の1以上の前駆物質と式XIの1以上のチオールとを一緒に混合するステップと;これらの物質を好適な期間反応させるのを可能にするステップと;その後、別のチオール成分を添加するステップと;を具えてもよい。好適な実施形態においては、第4の態様の方法は、式X又はX’の1以上の前駆物質を、過剰なモル量の式XIの1以上のチオールで相互に混合するステップを具える。
【0097】
チオール及び前駆物質が希釈剤に添加される場合に第1の態様の化合物がインサイチューで形成される複数の実施形態においては、好適には、希釈剤に添加される(任意の別のチオール成分を含む)全体量のチオールは、少なくとも0.01重量パーセント、好適には少なくとも0.1重量パーセント、より好適には少なくとも0.5重量パーセント、例えば少なくとも0.8重量パーセント、好適には少なくとも1重量パーセント、及び最も好適には少なくとも1.2重量パーセントである。このような実施形態においては、希釈剤に添加されるチオールの全体量は最大20重量パーセント、例えば最大15重量パーセント又は最大10重量パーセントであってもよい。好適には、最大8重量パーセント、より好適には最大5重量パーセント、好適には最大3重量パーセントである。上述の定義物が混合物が存在する実施形態においては総てのチオール化合物の全体量に適用される。
【0098】
前駆物質が希釈剤に添加されるような実施形態においては、少なくとも0.01重量パーセント、好適には少なくとも0.05重量パーセント、例えば少なくとも0.1重量パーセント又は少なくとも0.5重量パーセントの量で添加される。前駆物質は最大10重量パーセント、例えば最大5重量パーセント又は最大3重量パーセントの量で添加されてもよい。上述の定義物が混合物が存在する実施形態においては総ての前駆物質の全体量に適用される。
【0099】
本発明の第5の態様によると、第1の態様の化合物又はその前駆物質を含有する着色組成物を含み、当該着色組成物のためにパッケージングされる、パッケージングされた繊維着色用生成物が提供される。
【0100】
本発明の反応性染料化合物及び組成物を実現するために任意の好適なパッケージングが用いられうる。好適なパッケージングの例はボトル、及び泡沫ポンプ等を含む。好適には、パッケージングは密封され、使用前に気密シールを提供する。
【0101】
第5の態様のパッケージングされた毛髪着色用生成物は、複数の別個の第1の態様の化合物、又はその前駆物質を含むキットであってもよい。キットはこのような着色組成物の同時利用に関する指示を具える。それらは例えば、毛髪への塗布前にブレンドすることによって;あるいは縞のようなコントラスト効果を得るために帯状に毛髪に塗布することによって;あるいは毛髪の奥行又は構造の外観を形成するために、毛髪の同一部分で連続して塗布する(1の毛髪着色用組成物によって生成されうるより均一な外観と対照的に)ことによって;一緒に用いられる。
【0102】
第5の態様のパッケージングされた繊維(例えば、毛髪)着色用生成物においては、生成物は別個の第1の態様の化合物を含んでもよい。代替的に、繊維材料への塗布前の混合時に、本発明の第1の態様の化合物を形成する前駆物質の化合物を含んでもよい。キットの場合においては、染料を保有する複数の前駆物質又は組成物、及びそのための共通の作用物質(例えば、上に示したような式(XI)の化合物)を含んでもよい。
【0103】
従って、本発明のパッケージングされた着色用生成物は、式X又はX’の1以上の化合物を含有する第1の組成物と、式XIの1以上のチオールを含有する第2の組成物とを具えてもよい。これらの組成物は好適には、繊維物質への塗布前にその混合物が第3の態様の組成物を提供するような形態で提供してもよい。
【0104】
パッケージングされた着色用生成物が2の前駆物質組成物を含む実施形態においては、各組成物は別個にパッケージングされ、好適には密封容器内にある。好適には、式XIの1以上のチオールを含む第2のパッケージングされた前駆物質組成物は、第1のパッケージングされた前駆物質組成物で提供される式X又はX’の1以上の化合物のモル数の全数と比較して過剰なモル数の前記化合物を含む。
【0105】
第1の前駆物質組成物と第2の前駆物質組成物との好適な単一混合物は、使用準備済みの第3の態様の組成物を提供する。選択的な更なる成分は第1の前駆物質組成物又は第2の前駆物質組成物の一方、あるいはその双方に含まれてもよい。このような更なる成分は、第3の態様と関連して記載されたような、例えばpH制御剤、増粘剤、及び他の成分を含む。
【0106】
パッケージングされた着色用生成物が第1の前駆物質組成物と、第2の前駆物質組成物とを含む実施形態においては、各前駆物質は、2の前駆物質組成物の混合が着色組成物の粘性の増加を提供するため、複合増粘系の部分を含みうる。
【0107】
このような増粘系は2の前駆物質組成物の混合時にpHの変化を生じさせ、合成組成物の粘性に影響を与える。複合増粘系は異なる方法で作用するが、最も通常にはpHの変化が生じる。例えば1の成分が、低いpH(例えば、pH4)で低い粘性と自由に流動する液体であるが、pHが(例えば、pH8.5に)増加すると粘性が増加し、厚いペーストを形成する、例えば商標名Aculyn22でRohm&Haas社で売られるような物質を含んでもよい。
【0108】
増粘剤系で求められる特性は、毛髪染色プロセス時に容易に頭部にわたって拡がり、その後要求された際に頭部の定位置に留まるような好適な粘性特性を有する組成物を提供することである。増粘剤又は複合増粘剤の選択は組成物内の更なる成分に依存し、このような選択は当該技術分野の当業者に公知である。好適な物質はINCIリストで見出されうる。
【0109】
本発明のパッケージングされた繊維着色組成物は好適には更に、例えば毛髪への塗布に対する指示を具えてもよい。更に、2以上の前駆物質組成物を混合することに対する指示を具えてもよい。
【0110】
本発明のパッケージングされた繊維着色用生成物は、複数の第3の態様の組成物の部分、又は複数の前駆物質組成物の部分を具えてもよい。各々のこのような部分は、単一の着色塗布に好適となりうる。
【0111】
本発明の第6の態様によると、繊維(例えば、毛髪)を染色する方法が提供され、この方法は第3の態様の組成物を繊維に塗布するステップを具える。
【0112】
好適には第6の態様の方法は、人間の毛髪を染色する方法である。好適には、この方法は0℃ないし60℃の温度で、例えば、15℃ないし50℃、好適には20℃ないし45℃の温度で、組成物を毛髪に塗布するステップを具える。好適には、毛髪に塗布される組成物は6ないし11、好適には7ないし10.5、好適には9ないし10.5のpHを有する。周囲温度より上の温度で人間の毛髪を染色する場合、好適なフードを用いて、所望の温度を得ることができる。
【0113】
組成物の更なる好適な特徴は、第3の態様に関連して記載されたとおりである。好適には第6の態様の方法においては、第3の態様の組成物は毛髪(好適には人間の頭部の「生きている」、すなわち成長中の毛髪)に塗布されて、所望のように完全又は部分的に被覆し、少なくとも30秒、例えば少なくとも1分又は少なくとも2分の期間、毛髪に放置される。組成物は最大2時間、例えば最大90分、又は最大60分、又は最大45分、又は最大30分の期間、毛髪に放置してもよい。
【0114】
本発明の特定の利点は、毛髪の着色が比較的短い時間、例えば3ないし20分、又は5ないし10分で得ることが可能なことである。
【0115】
好適にはこの期間に続いて、組成物は水で毛髪からすすがれる。好適には水がきれいになり、更なる色彩がすすがれなくなるまで、水ですすがれる。いくつかの好適な実施形態においては、毛髪はその後過酸化水素の弱酸性溶液(pH3ないし6.5、好適には4.5ないし5.5)ですすがれ、好適には再度水ですすぐ前に2ないし30分、好適には5ないし15分の滞留時間、放置される。
【0116】
第6の態様の方法によって処理される毛髪は均一な色彩分布を有することが見られ、毛髪に対するダメージの低減が観察された。
【0117】
更には、本発明の着色組成物は従来技術のものと比較して優れた洗浄耐性を提供することが観察された。例えば、12回のシャンプー洗浄適用後に、従来技術の一般的な「永久的な」着色組成物によって着色された毛髪は色あせを示した。しかしながら、本発明の組成物によって着色された毛髪は12回の洗浄後に実質的な退色を示さない。
【0118】
本発明の第6の態様の方法は好適には、頭部で成長中の人間の毛髪を着色する方法である。このような方法は第3の態様の組成物を添加する前に毛髪を漂白する第1のステップを具えて、より明るい初期の色彩と異なる全体的な結果を提供する。
【0119】
この第1の漂白ステップは、過カルバミン酸及び/又は過カルバミン酸ジアシルの使用によって実行でき、出願者の以前の欧州特許第1313830B号の方法によって、あるいは従来技術の別の標準的な漂白方法によってインサイチューで生成される。
【0120】
本発明の第6の態様の着色方法の後に毛髪から脱色することが所望される場合、これは発色団部分を還元できる化学薬品を含む組成物を毛髪に塗布することによってなされうる。このような組成物は当該技術分野の当業者に公知であり、このような状況での脱色は容易に行われる。
【0121】
しかしながら、本発明者は染色した毛髪から脱色するのに用いられうる特に有効な組成物及び方法を開発した。この方法は、従来技術の酸化性の毛髪用染料組成物を用いて染色された毛髪を脱色する点で有効である。しかしながら、第6の態様の方法によって処理される毛髪から脱色する点で特に有効である。従って、本発明は更なる毛髪脱色方法を提供できる。
【0122】
脱色方法は漂白方法ではない。実際に、本発明の脱色方法は、毛髪の酸化漂白に関与せず、ひいては漂白による脱色が引き起こしうるダメージを防止するため、特に有利である。
【0123】
本発明の脱色方法は、第6の態様の方法を用いて毛髪に塗布された色彩を脱色するのに用いることができ、あるいは、従来技術の酸化染料を用いて染色された毛髪から脱色するのに用いてもよい。このような染料は当該技術分野の当業者に既知である。従来技術の酸化染料の例は、選択的に置換されたアニリン及び選択的に置換されたフェノールの反応から形成される化合物を含み、選択的に置換されたビフェニル化合物を形成する。既知の酸化染料組成物は一般的には、0.01ないし0.05M、例えば約0.025Mの濃度である、1:1の比率でのフェノール及びアニリンの成分を反応させることによって形成されるビフェニル化合物を含む。本発明の脱色方法によって毛髪から除去される従来技術のこのような酸化染料は、フェノール及びアニリンの反応によって一般的に形成され、その各々が、ヒドロキシル、アミノ、及びメチルから選択される1以上の置換基で置換される。他の同様の化合物は更に、酸化染料として用いられ、これらは当該技術分野の当業者に公知である。
【0124】
好適な染料は商標名JarocolでハッダーズフィールドのJames Robinson Limited社から購入できる。
【0125】
本発明の毛髪脱色方法は好適には、染色した毛髪、好適には第6の態様の方法によって染色された毛髪に、求核剤又はその前駆物質を含む脱色用組成物を塗布するステップを具える。好適には、脱色用組成物は硫黄含有性求核剤又はその前駆物質を含む。好適な硫黄含有性求核剤は、チオシアナート、チオグリコール酸、チオカルバメート、カルバモイルスルフィン酸、ならびにその混合物及び/又は塩を含む。代替的及び/又は更には、脱色用組成物は求核剤の前駆物質を具えていてもよい。ある好適な求核剤の前駆物質は二酸化チオ尿素である。二酸化チオ尿素はそれ自体は求核性ではないが、求核性種HSO(ヒドロキシスルホキシラート)を形成するように加水分解されるホルムアミジンスルフィン酸を形成するように再配列される。
【0126】
特定の好適な実施形態においては、硫黄含有性求核剤は式HSO Mのスルホキシル酸の塩を含む。Mは好適には、水素、アルカリ金属、又は四級アンモニウム種である。このような塩は好適にはホルムアミジンスルフィン酸から生成してもよい。酸性条件下において、この化合物は二酸化チオ尿素の互変異性体として存在し、弱アルカリ性条件下において、活性染料除去剤であると考えられるHSO Mを放出するように加水分解するホルムアミジンの互変異性体が形成される。更に、ホルムアミジン/カルバモイルのスルフィン酸の混合物を用いて、反応種を生成することが可能である。
【0127】
脱色用組成物は好適には、少なくとも0.1重量パーセント、より好適には少なくとも1重量パーセント、最も好適には少なくとも4重量パーセントの硫黄含有性求核剤又はその前駆物質、例えば二酸化チオ尿素を含む。
【0128】
好適には脱色用組成物は、最大60重量パーセント、好適には最大45重量パーセント、より好適には最大30重量パーセント、及び最も好適には最大15重量パーセントの硫黄含有性求核剤又はその前駆物質、例えば二酸化チオ尿素を含む。
【0129】
いくつかの好適な実施形態においては、発色団部分Dが遷移金属(例えば、コバルト又はクロム)を含む事前金属化された染料である場合、脱色用組成物は捕捉剤を更に含む。当該技術分野の当業者に既知の任意の好適な捕捉剤が用いられうる。好適な捕捉剤は、N−メチルタウリン、ホスホネート、例えば商標名BriQuest及びDeQuest下で販売されるアミンアルキルホスホネート、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、及びエチレンジアミンジコハク酸(EDDS)を含む。
【0130】
脱色用組成物は更に、膨張剤、活性化剤、希釈剤、調整剤、及び増粘剤のうちの1以上を更に含んでもよい。
【0131】
捕捉剤は存在する場合、好適には1ないし20重量パーセント、より好適には5ないし10重量パーセントの量で存在する。
【0132】
好適な膨張剤は尿素を含む。
【0133】
脱色用組成物は好適には、少なくとも0.1重量パーセント、好適には少なくとも1重量パーセント、より好適には少なくとも3重量パーセント、最も好適には少なくとも5重量パーセントの尿素を含む。
【0134】
好適には、脱色用組成物は最大60重量パーセント、好適には最大45重量パーセント、より好適には最大30重量パーセント、最も好適には最大15重量パーセントの尿素を含む。
【0135】
好適な活性化剤は、例えば、二価及び三価の亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、及びカルシウムのイオンといった、二価及び三価の禁則種を含む。好適には、活性化剤は亜鉛又は特にマグネシウムイオンを含む。二価及び三価イオンは任意の好適な形態で提供してもよい。好適には、塩、例えば、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩、又はギ酸塩として提供される。より好適には、有機酸塩、例えばギ酸塩又は酢酸塩として提供される。好適には、活性化剤は酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、硫酸亜鉛、酢酸アルミニウム、酢酸カルシウム、及びその混合物から選択してもよい。酢酸亜鉛及び酢酸マグネシウムが特に好適である。
【0136】
二価又は三価金属の酢酸塩又はギ酸塩は存在する場合に、本発明の脱色用組成物で直接的に用いてもよい。代替的に、対応する酸及び異なる金属塩、例えば硫酸マグネシウム及び酢酸を用いてもよい。
【0137】
脱色用組成物は好適には、少なくとも0.1重量パーセント、より好適には少なくとも1重量パーセント、最も好適には少なくとも4重量パーセントの1以上の活性化剤を含む。
【0138】
好適には、脱色用組成物は最大60重量パーセント、好適には最大45重量パーセント、より好適には最大30重量パーセント、最も好適には最大15重量パーセントの1以上の活性化剤を含む。
【0139】
好適な希釈剤は水である。水は10ないし90重量パーセントの量で好適に存在する。
【0140】
好適なpHバッファは2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールを含む。
【0141】
好適には、脱色用組成物は6ないし12、より好適には7.5ないし10.5、最も好適には8.5ないし9.5のpHを有する。
【0142】
好適な増粘剤はヒドロキシエチルセルロースである。好適には脱色用組成物は1ないし20重量パーセントの増粘剤を含む。
【0143】
脱色用組成物の有効期間を最大化するために、使用前に簡単に互いに混合できる2の成分系としてパッケージングしてもよい。2のパック系を用いることによって、2の液体溶液を生成することが可能となり、組合わせると、毛髪で用いるのにより好適な増粘性生成物を生成する。これは、例えば粘性がpHとともに変化する美容上認可される増粘剤を用いることによって得られうる。脱色用剤形に好適な成分はINCIリストに見出すことができるか、当該技術分野の当業者に公知である。好適な系は本発明の第5の態様のパッケージングされた毛髪着色用組成物と関連して上述されている。
【0144】
本発明の脱色方法においては、脱色用組成物は好適に毛髪に塗布され、10ないし75℃、好適には20ないし70℃、より好適には30ないし65℃の温度で頭部に維持される。
【0145】
周囲温度より上の温度で人間の毛髪から脱色する場合、好適なフードを用いて、所望の温度を得ることができる。
【0146】
好適には完全な脱色は5ないし60、例えば15ないし30分の期間後に生じうる。
【0147】
好適には脱色用組成物は、0.1ないし60分、好適には0.5ないし30分、例えば1ないし15分の期間、毛髪に放置される。
【0148】
本発明の脱色方法は非常に有効であることが分かった。毛髪は任意の可視可能なダメージを生じることなく、染色される前にその元の色彩に戻されることが分かった。最初の漂白ステップが行われる複数の実施形態においては、毛髪はその漂白された色彩に戻ることが分かった。
【0149】
この方法は、毛髪を漂白することに頼る従来技術の脱色方法を超える多大な利点を提供する。このような従来技術の漂白脱色方法は、毛髪にかなりのダメージを引き起こし(特に、繰返し染色され、酸化漂白された毛髪の場合においては)、多くの場合元の色彩を提供しない。
【0150】
従って、本発明は毛髪処理方法を提供し、
(a)選択的に、毛髪を漂白するステップと;
(b)第3の態様の組成物を塗布することによって、前記毛髪を染色するステップと;
(c)選択的に、硫黄含有性求核剤を含む脱色用組成物を塗布することによって、毛髪から脱色するステップと;
を具える。
【0151】
ステップ(a)、(b)、及び(c)の各々の好適な態様は上述されている。ステップ(b)及び(c)は毛髪に生じるいずれの顕著なダメージなく反復されうる。好適には、ステップ(b)及び(c)は毛髪に対するダメージのいずれの顕著な増加も観察されることなく、2以上、好適には5以上、例えば10以上、それぞれ反復されうる。
【0152】
ステップ(a)は選択的な最初の漂白ステップであり、従来技術の好適な漂白方法を用いて行われうる。これは1回目の染色ステップの前に毛髪の最初の色を明るくすることが所望される場合に行われる。しかしながら、一度最初の色が塗布された場合、この色彩を脱色するのに更に毛髪を再度漂白することはステップ(c)で行われうるため必要がない。ステップ(a)は土台の濃淡をより明確にすることが要求される場合にのみ繰り返される。当然ながら、以前の着色までに成長した新しい毛髪を漂白することは更に必要であろう。
【0153】
ステップ(b)及び(c)は迅速に行われるため、使用者が毛髪の小さな部分(頭部上又は頭部外)を染色して、得られる色彩を正確に見て、所望でなかった場合にこの色彩を脱色することが可能となる。
【0154】
本発明の着色方法は非常に再現性があり、自然色まで迅速に開発され、退色耐性があり、容易に脱色可能であり、ひいては従来技術を超える多大な利点を提供する。
【0155】
本発明の第7の態様によると、人間の毛髪を着色するための第1の態様の化合物の使用が提供される。本発明の化合物の使用は、本明細書中に記載のように、従来技術の着色化合物を超える数多くの利点を提供する。
【0156】
本発明は以下の限定されない実施例によって表される。
【0157】
本明細書中の割合の値は、特に明記しない限りにおいては、存在する組成物の全重量に対する割合として表現される既定の成分の重量を示す。
【0158】
これらの実施例においては、好適な条件は毛髪の染色及び脱色用に与えられる。しかしながら、これらの条件は処理中の毛髪、及び店内で利用可能な装置に依存して好適に変化しうることは理解されよう。

[実施例]
【実施例1】
【0159】
[出発物質としてRemazol染料を用いたカルボシキメチルチオールエチルスルホン染料の合成]
カルボシキメチルチオールエチルスルホン染料は図1に示されるような合成経路を用いて調製できる。
【0160】
[図1]

【0161】
反応スキームにおいて、Dは発色団であり、出発染料が用いられることに依存して変化する。本実施例においては、Dystar社で商業上利用可能な多様なRemazol(登録商標)染料、特にレマゾールブラックB、レマゾールイエローGS、レマゾールオレンジG、レマゾールレッドB、レマゾールブルーR、レマゾールブルーB、及び本明細書中の実施例で述べた他のものは、出発物質として用いられる。
【0162】
[カルボシキメチルチオールエチルスルホン染料の合成]
精製されたRemazol(登録商標)染料の染料水溶液(0.1mol/100ml、pH10.5)が調製される。この溶液に対し、0.1molのチオグリコール酸ナトリウムの溶液(pH10.5)が23ないし25℃の温度でゆっくりとした滴下によって添加される。
【0163】
チオグリコール酸ナトリウムの添加後、系のpHは炭酸ナトリウムを用いてpH10.5で維持される。反応はその後、5ないし8時間、20ないし25℃、及びpH10.5で進行可能である。合成の終了時に、系のpHはpH2未満に低減し、濾過及び洗浄によって分離されるカルボシキメチルチオールエチルスルホンの染料化合物を沈殿させる。
【実施例2】
【0164】
[ヒドロキシエチルチオエチルスルホン染料の合成]
ヒドロキシエチルチオエチルスルホン染料は図2に示されるような合成経路を用いて調製できる。
【0165】
[図2]

【0166】
反応スキームにおいて、Dは発色団であり、出発染料が用いられることに依存して変化する。本実施例においては、レマゾールオレンジGが出発物質として用いられるが、レマゾールイエロー及びレマゾールブリリアントブルーRといった他の好適なスルファトエチルスルホン染料化合物は、更に出発物質として用いてもよい。
【0167】
0.1molのレマゾールオレンジG染料が炭酸ナトリウムを用いてpH10.5に調整された150mlの蒸留水に溶解され、フラスコに添加された。フラスコは水浴中に置かれた。0.1molのチオエタノールは次いで、攪拌下で反応混合物に液滴添加される。全添加時間は1時間である。反応スキームのpHはpH10.5で維持され、反応系の温度はチオエタノールの添加中20ないし25℃である。反応はその後、5時間、20ないし25℃、及びpH10.5(必要に応じて炭酸ナトリウムを用いて補正される)で進行可能である。反応の終了点は5分以上の間、一定に維持されるpHによって示される。この時点で、ヒドロキシエチルチオエチルスルホン染料が得られる。系のpHはその後pH2まで低減し、KCl(全溶液の35%)がその後染料を沈殿させるために反応混合物に添加される。Whatman社のフィルタぺーパーを用いた濾過が続く。沈殿はその後アセトンで4ないし5回(各回で50mlのアセトンが用いられる)洗浄され、最終染料生成物を得た。
【実施例3】
【0168】
[モノチオコハク酸−S−エチルスルホン染料の合成]
モノチオコハク酸−S−エチルスルホン染料は図3に示されるような合成経路を用いて調製できる。
【0169】
[図3]

【0170】
反応スキームにおいて、Dは発色団であり、出発染料が用いられることに依存して変化する。本実施例においては、レマゾールオレンジGが出発物質として用いられるが、レマゾールイエロー及びレマゾールブリリアントブルーRといった他の好適なスルファトエチルスルホン染料化合物は、更に出発物質として用いてもよい。
【0171】
0.1molの純性のレマゾールオレンジG染料と150mlの蒸留水が400mlのフラスコに導入され、pHは炭酸ナトリウムを用いてpH10.5に調整される。フラスコは水浴中に置かれた。0.1molのチオコハク酸は次いで、攪拌下で液滴添加される。添加時間は1ないし1.5時間である。反応系のpHはpH10.5で維持され、反応系の温度はチオコハク酸の添加にわたって20ないし25℃である。
【0172】
反応はその後、6時間、20ないし25℃、及びpH10.5(必要に応じて炭酸ナトリウムを用いて補正される)で進行可能である。6NのKClを用いて、系のpHはその後pH2まで低減する。KCl(全溶液の35%)がその後染料を沈殿させるために反応混合物に添加される。Whatman社のぺーパーを用いた濾過が続く。沈殿はその後アセトンで4ないし5回(各回で50mlのアセトンが用いられる)洗浄され、最終染料生成物を得た。
【実施例4】
【0173】
上に定義されたクラス(X)で示される、一般式Ar−N=N−[H酸]−NH−(C=O)−CH=CHのアクリルアミドの染色用前駆物質は、以下の通りに調製された:アニリン(0.1mol)は0.1molのHCL(50ml)に溶解され、0ないし5℃まで氷浴で冷却され、その後亜硝酸(1.2molのNaNOが30分にわたりゆっくりと滴下される0.1MのHClを最小限に溶解する)と反応させた。ジアゾ化はこの段階で完了した。過剰な亜硝酸は0.5molの尿素を添加することによって除去された。
【0174】
Ar−NH + HONO(HCl) → Ar−NCl + H
ジアゾニウム塩
【0175】
上述のジアゾニウム塩はその後、過剰な炭酸ナトリウムでpH10にバッファされたH酸(1molのナフタレン−1−アミノ−2−ヒドロキシ−3,6−ジスルホン酸)のアルカリ性水溶液に0ないし5℃でゆっくりと添加され、即時に明るい青みがかかった赤色が溶液中に形成された。反応は更に60分間攪拌された。pHを10で、温度を0ないし5℃で更に維持して、塩化アクリロイルが単独で、攪拌された混合物に滴下された。反応はこの条件下で更に1時間続き、この段階で、系は遊離芳香族アミンについて試験し(Ehrlich試験)、何も検出されない場合、生成物は十分に飽和された塩溶液の添加によって分離された。濾過ならびに飽和塩溶液及びエタノールでの洗浄、その後の乾燥でプロセスが完了した。分離されたアクリルアミド染料は95%より大きな純度を有する(HPLC)ことが分かった。
【0176】
式Xのブリリアント型の青みがかかった赤色の染色用前駆物質は、以下の式:


を有する。染色用前駆物質は本発明の式(I)の染料化合物を生成するために以降、上述のように反応させることができる。
【実施例5】
【0177】
染料溶液は実施例1によって調製される化合物を用いて生成され、好適なボトル型のパッケージにパッケージングされうる。
【0178】
【表1】

【0179】
【表2】

【0180】
【表3】

【0181】
【表4】

【0182】
【表5】

【実施例6】
【0183】
染料溶液は実施例1によって調製される化合物を用いて生成され、好適なボトル型のパッケージにパッケージングされうる。
【0184】
【表6】

【0185】
【表7】

【0186】
【表8】

【0187】
【表9】

【0188】
【表10】

【0189】
【表11】

【0190】
【表12】

【0191】
【表13】

【0192】
【表14】

【0193】
【表15】

【0194】
【表16】

【0195】
【表17】

【0196】
実施例5及び6で含む、本明細書中の割合の値は、存在する組成物の全重量に対する割合として表現される既定の成分の重量を示す。
【0197】
実施例1ないし4によって調製される任意の化合物は、上述の実施例5及び6の染料組成物における化合物で置換されうる。特に、実施例のパッケージングされた毛髪着色用組成物は、染色前に成分の混合が必要ないため、消費者認容度の点での改良を、及び洗浄耐性の改善を提供する。
【0198】
実施例5及び6の組成物は、本発明によって生成できる色調の単なる例示である。本質的には、生成できる色調に対する制限はない。
【0199】
実施例6の組成物は実施例5の組成物よりチオグリコール酸成分が高く、毛髪上で高レベルの反応を示す染料を得るために、強い着色効果を得るために、及び/又は迅速な着色を得るために特に好適になり得る。毛髪に対する迅速な反応、ひいては迅速な着色は高レベルのチオグリコール酸によって促進されると考えられる。
【0200】
本発明の目的は、塗布すべき染料分子の定量的反応(すなわち、染料分子の消耗)で、染料分子の粗い流しのない所望の着色を得ることである。当然ながら、これは理想的な目標であり、取り込みは多くの事象によって影響を受けうるが、チオグリコール酸の量は重要な因子であると考えられている。
【実施例7】
【0201】
実施例5及び6の組成物は一般的には以下の形態を用いて塗布してもよい:
・着色混合物を毛髪に擦りこみ、2.5:1の液体比率(2.5gの沈殿混合物:1gの一ふさの毛髪)を用いて25℃で10分間放置
・冷たい水又は温かい水ですすぎ
・処理後:30g/lの2.5g(上と同一液体比率)を用いて25℃で10分間
・過酸化水素溶液(36%)、約5のpH
・水ですすぎ
・シャンプー洗浄
・水ですすぎ
・乾燥
【実施例8】
【0202】
[実施例8a]
初めに漂白されたブロンドの外観を有する毛髪のサンプルは次のように処理した。
【0203】
【表18】

【0204】
上の表中の割合の値は、存在する一部の組成物の全重量に対する割合として表現される既定の成分の重量を示す。
【0205】
・3.2gの部1と7.9gの部2を混合することによる、毛髪処理混合物の調製
・混合物を毛髪にブラッシングし、2.5:1の液体比率(2.5gの沈殿混合物:1gの一ふさの毛髪)を用いて40℃で15分間放置
・温かい水ですすぎ
・上述の同一の液体比率を用いて30g/lの過酸化水素溶液(36%)処理後溶液でのマッサージ
・水ですすぎ
・シャンプー洗浄
・水ですすぎ
・必要に応じて乾燥
【0206】
得られた毛髪は、20のシャンプー洗浄後、可視できる退色又は色彩の変化を呈しないことが見出される明るい赤色であった。
【0207】
[実施例8b]
初めに漂白されたブロンドの外観を有する毛髪のサンプルは次のように処理した。
【0208】
【表19】

【0209】
上の表中の割合の値は、存在する一部の組成物の全重量に対する割合として表現される既定の成分の重量を示す。
【0210】
・3.2gの部1と7.9gの部2を混合することによる、毛髪処理混合物の調製
・混合物を毛髪にブラッシングし、2.5:1の液体比率(2.5gの沈殿混合物:1gの一ふさの毛髪)を用いて40℃で15分間放置
・温かい水ですすぎ
・上述の同一の液体比率を用いて30g/lの過酸化水素溶液(36%)処理後溶液でのマッサージ
・水ですすぎ
・シャンプー洗浄
・水ですすぎ
・必要に応じて乾燥
【0211】
得られた毛髪は、20のシャンプー洗浄後、可視できる退色又は色彩の変化を呈しないことが見出される明るいオレンジ色であった。
【0212】
[実施例8c]
初めに明るいオレンジ色の外観を有する実施例8bで生成される毛髪のサンプルは次のように処理した。
【0213】
【表20】

【0214】
上の表中の割合の値は、存在する一部の組成物の全重量に対する割合として表現される既定の成分の重量を示す。
【0215】
・2.0gの部1と9.3gの部2を混合することによる、毛髪処理混合物の調製
・混合物を毛髪にブラッシングし、2.5:1の液体比率(2.5gの沈殿混合物:1gの一ふさの毛髪)を用いて30℃で25分間放置
・温かい水ですすぎ
・必要に応じて乾燥
【0216】
得られた毛髪は以前の色にヒントのないブロンド色であり、ほとんど又は全くダメージがなかった。
【0217】
[実施例8d]
実施例8cで処理された毛髪はその後実施例8bの方法を用いて着色され、20のシャンプー洗浄後、可視できる退色又は色彩の変化を呈しないことが見出される明るいオレンジ色の毛髪を与えるプロセス。
【0218】
[実施例8e]
実施例8dで処理された毛髪はその後実施例8cに示されるような脱色系で処理され、ほとんど又は全くダメージがないブロンド色の毛髪を与えるプロセス。
【0219】
[実施例8f]
実施例8cのプロセスは脱色用組成物が15分間、60℃の温度で放置されることを除いて反復された。更に、得られた毛髪は以前の色にヒントのないブロンド色であり、ほとんど又は全くダメージがなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
D−L−CHQ−CH−SR (I)
の化合物であって、
Dが発色団であり;LがSO、NHCO、及びNHSOから選択される連結基であり;Qが水素又はハロゲン原子であり、RがC−Cアルキル、(CHCOOH、(CHCONH、(CHSOH、(CHCOOM、(CHPOH、(CHOH、(CHSSO、(CHNR、(CH、(CHNHCOR、PhSSO、PhSOH、PhPOH、PhNR、PhN、(CHCH(SH)R(CHCOOH、及び


から選択され;nが1ないし4の範囲にあり、同一分子内で各々のnが必ずしも同一ではない整数であり;Mがアルカリ土類金属、アルカリ金属、NH、又はNRのカチオンであり;RがC−Cアルキルであることを特徴とする化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物において、Qが水素であることを特徴とする化合物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の化合物において、LがSOであることを特徴とする化合物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の化合物において、前記式(I)の官能基SRがSCHRであり、Rが(CHCOOX、(CHSOX、(CHNH、(CHNR、(CHNHCOR、及び(CHCH(COOX)NHから選択され;mが0ないし3の整数であり;Xが水素、アルカリ金属、CないしCアルキル基、及び置換型又は非置換型のアンモニウム塩から選択され;RがCないしCアルキル基であり;Rが水素及びCないしCアルキル基から選択され;Rが水素、1ないし4の炭素原子を有するアルキル基、エステル、酸、アミド、アミン残基、又はアルコール残基から選択されることを特徴とする化合物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の化合物が、式(III)又は式(IV):
D−SO−CH−CH−SCHCOOH (III)
D−SO−CH−CH−SCHCH(COOH)NH (IV)
の構造あるいはそのエステル又は塩を有することを特徴とする化合物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の化合物を調製する方法であって、当該方法が、式(X)又は(X’)の化合物を式(XI)のチオールと反応させるステップ:
D−L−CQ=CH (X) + HSR (XI) → D−L−CHQ−CH−SR (I)
又は、
D−L−CHQ−CH−Y (X’) + HSR (XI) → D−L−CHQ−CH−SR (I)
を具え、R、D、及びLが請求項1に記載のとおりであり、Yが脱離基であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の化合物と、希釈剤又は担体とを含むことを特徴とする、材料を着色するための組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物において、請求項1ないし5に記載の化合物がインサイチューで形成されることを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の組成物が、チオグリコール酸、チオ乳酸、ジヒドロリポアート、チオグリセロール、メルカプトプロピオン酸、システイン、N−置換システイン、システアミン、N−置換システアミン、チオエタノール及び1−チオプロパン−3−スルホナートから選択されるチオールを更に含むことを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれかに記載の組成物が、尿素を更に含むことを特徴とする組成物。
【請求項11】
繊維を染色する方法であって、当該方法が請求項7ないし10のいずれかに記載の組成物を前記繊維に塗布するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項12】
染色した毛髪から脱色する方法であって、当該方法が、硫黄含有性求核剤又はその前駆物質を含む脱色用組成物を前記毛髪に塗布するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記硫黄含有性求核剤が式HSO Mのスルホキシル酸の塩を含み、Mが水素、アルカリ金属、及び四級アンモニウム種から選択されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の方法において、着色が請求項7ないし10の方法によって染色された毛髪から脱色されることを特徴とする方法。
【請求項15】
毛髪の処理方法であって、
(a)選択的に、前記毛髪を漂白するステップと;
(b)請求項7ないし10に記載の組成物を塗布することによって、前記毛髪を染色するステップと;
(c)選択的に、硫黄含有性求核剤を含む脱色用組成物を塗布することによって、前記毛髪から脱色するステップと;
を具えることを特徴とする方法。


【公表番号】特表2011−520776(P2011−520776A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550267(P2010−550267)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050233
【国際公開番号】WO2009/112858
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(507121345)ペラケム リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】PERACHEM LIMITED
【Fターム(参考)】