説明

気液分離器

【課題】分離した液体の排出性を向上させ得ると共にその逆流を抑制できる気液分離器を提供する
【解決手段】本分離器1は、筒状の分離器本体2と、該分離器本体に設けられ且つ気液混合気を該分離器本体の内部に接線方向に導入する導入部(導入管3)と、該分離器本体に設けられ且つ分離した液体を排出する液体排出部(オイル排出管4)と、該分離器本体に設けられ且つ分離した気体を排出する気体排出部(気体排出管5)と、を備える気液分離器1であって、前記液体排出部から排出される液体を貯留する貯留部(ハウジング7)と、該貯留部の下部に接線方向に開口して設けられ且つ貯留された液体を排出する貯留液体排出部(貯留オイル排出管9)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液分離器に関し、さらに詳しくは、分離した液体の排出性を向上させ得ると共にその逆流を抑制できる気液分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の気液分離器として、自動車エンジンの燃焼室から漏洩するブローバイガスをガスとオイルとに遠心分離するものが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
上記特許文献1には、オイルの排油性を向上させるためにオイル保持タンク6を備え、このオイル保持タンク6のオイル排出口61に、エンジン稼動中にオイル排出口61を閉鎖すると共に、エンジン停止時にオイル排出口61を開放する逆止弁7を設けてなる気液分離器が開示されている。
上記特許文献2には、分離器本体の壁面にオイル排出孔46を形成してなる気液分離器が開示されている。
【0003】
しかし、上記特許文献1では、エンジン稼動中に継続的にタンク内にオイルを貯留するようにしているため大容量のタンクが必要となる。また、逆止弁及びその開閉機構を備えているので、構造が複雑なものとなる。さらに、オイル粘度の増大や寒冷地での運転等によって、弁体の固着、凍結等が生じる恐れがある。
また、上記特許文献2では、オイル排出孔の孔径が大きい場合には、ブローバイガスの吸引時にオイル排出孔から分離したオイルが逆流することがあり、またオイル排出孔の孔径が小さな場合には排油性が低下してしまうといった問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−146972号公報
【特許文献2】特開2003−49625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、分離した液体の排出性を向上させ得ると共にその逆流を抑制できる気液分離器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.筒状の分離器本体と、該分離器本体に設けられ且つ気液混合気を該分離器本体の内部に接線方向に導入する導入部と、該分離器本体に設けられ且つ分離した液体を排出する液体排出部と、該分離器本体に設けられ且つ分離した気体を排出する気体排出部と、を備える気液分離器において、
前記液体排出部から排出される液体を貯留する貯留部と、該貯留部の下部に接線方向に開口して設けられ且つ貯留された液体を排出する貯留液体排出部と、を備えることを特徴とする気液分離器。
2.前記貯留部内に設けられ、且つ、該貯留部内を流れる気液混合気に旋回力を与える螺旋板を更に備える上記1.記載の気液分離器。
3.前記貯留部は、その上方に向って縮径するテーパ部を有している上記1.又は2.に記載の気液分離器。
4.前記貯留部及び/又は前記分離器本体内に設けられ、且つ、該貯留部内に貯留された液体の前記液体排出部への逆流を抑制する邪魔部を更に備える上記1.乃至3.のいずれか一項に記載の気液分離器。
5.前記貯留部は、前記分離器本体を覆うハウジングである上記1.乃至4.のいずれか一項に記載の気液分離器。
6.前記貯留部は、前記分離器本体の前記液体排出部が接続される貯留タンクである上記1.乃至4.のいずれか一項に記載の気液分離器。
7.前記気液混合気はブローバイガスである上記1.乃至6.のいずれか一項に記載の気液分離器。
【発明の効果】
【0007】
本発明の気液分離器によると、導入部から分離器本体内に接線方向に導入される気液混合気が旋回流となって気体と液体とに遠心分離され、その分離した気体は気体排出部から外部に排出される一方、その分離した液体は、液体排出部から排出されて貯留部内に一時的に貯留され、貯留液体排出部から外部に排出される。そして、気液混合気の吸引時に、貯留液体排出部から貯留部内に逆流する気液混合気は、貯留部内に接線方向に導入されて旋回流とされる。
このように、貯留部を備え、分離器本体で分離した液体を貯留しながら排出するようにしたので、貯留部の貯留液体排出部からの液体の排出性を向上させることができる。また、貯留部の貯留液体排出部に弁機構を設けていないので、貯留部の小型化及び構造の簡素化を実現できる。また、貯留部の下部に接線方向に開口して設けられる貯留液体排出部を備えているので、貯留部内に逆流する気液混合気を旋回流とすることができる。従って、貯留部内で気液混合気を遠心分離でき、その分離効率を向上させ得る。また、貯留部内で旋回流となる気液混合気によって、貯留部内の貯留液体に旋回力(遠心力)が与えられて貯留液体の跳ね上がり、飛散等を抑制できる。その結果、分離器本体の液体排出部への貯留液体の逆流を抑制できると共に、分離器本体の液体排出部からの液体の排出性を向上させることができる。
また、螺旋板を更に備える場合は、貯留部内で旋回する気液混合気をより確実に遠心分離することができる。
また、前記貯留部が、テーパ部を有している場合は、貯留部内で旋回する気液混合気をより確実に遠心分離することができる。
また、邪魔部を更に備える場合は、貯留部内の貯留液体が液体排出部へ逆流してしまうことをより確実に抑制できる。
また、前記貯留部が、前記分離器本体を覆うハウジングである場合は、ハウジングによって、分離した液体を貯留しながら排出できる。
また、前記貯留部が、前記分離器本体の前記液体排出部が接続される貯留タンクである場合は、貯留タンクによって、分離した液体を貯留しながら排出できる。
また、前記気液混合気がブローバイガスである場合は、ブローバイガスをガスとオイルとに遠心分離できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
1.気液分離器
本実施形態1.に係る気液分離器は、以下に述べる分離器本体、導入部、液体排出部、気体排出部、貯留部及び貯留液体排出部を備える。この気液分離器は、例えば、後述する螺旋板、邪魔部、連通部及び吸気部のうちの1種又は2種以上を更に備えることができる。
上記気液分離器の用途等は特に問わないが、例えば、車両エンジンのブローバイガスをガスとオイルとに遠心分離するものとして好適に用いられる。
【0009】
上記「分離器本体」は、筒状である限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。
上記分離器本体によって、その内部に導入された気液混合気が旋回されて気体と液体とに遠心分離される。
上記分離器本体は、例えば、円筒部2a,12aと、この円筒部の一端側に連なるテーパ筒部2b,12bと、を有することができる(図1及び5等参照)。
【0010】
上記「導入部」は、上記分離器本体に設けられ且つ気液混合気を分離器本体の内部に接線方向に導入する限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。
上記導入部は、例えば、上記分離器本体の上部に設けられ且つ分離器本体の接線方向に延びる導入管3,13であることができる(図1及び5等参照)。
【0011】
上記「液体排出部」は、上記分離器本体の下部に設けられ且つ分離した液体を排出する限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。
上記液体排出部は、例えば、上記分離器本体の下部に設けられた液体排出管4,14であることができる(図1及び5等参照)。
上記液体排出部は、例えば、後述の貯留部の中心側に開口するように配設されていることができる。これにより、例えば、車両が傾斜面を走行する際に、貯留部内に貯留された液体の液面が傾斜して、その液体が液体排出部に逆流してしまうことを抑制できる。
【0012】
上記「気体排出部」は、上記分離器本体に設けられ且つ分離した気体を排出する限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。
上記気体排出部は、例えば、上記分離器本体の内部で軸方向に延びる気体排出管5,15であることができる(図1及び5等参照)。
【0013】
上記「貯留部」は、上記液体排出部から排出される液体を貯留する限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。
上記貯留部としては、例えば、(1)上記分離器本体を覆うハウジング7である形態(図1等参照)、(2)上記分離器本体の液体排出部が接続される貯留タンク17である形態(図5等参照)等を挙げることができる。
上記(1)形態のハウジングは、例えば、車両エンジンを構成するヘッドカバーであることができる。
上記貯留部は、例えば、その上方に向って縮径するテーパ部8,17bを有していることができる(図1及び5等参照)。
【0014】
上記「貯留液体排出部」は、上記貯留部の下部で接線方向に開口して設けられ且つ貯留された液体を排出する限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。
上記貯留液体排出部は、例えば、上記貯留部の下部に設けられ且つ貯留部の接線方向に延びる貯留液体排出管9,19であることができる(図3及び6等参照)。
上記貯留液体排出部の開口面積aは、例えば、上記液体排出部の開口面積bより小さな値に設定されていることができる(図1及び5等参照)。
なお、上記貯留液体排出部から貯留部内に逆流する気液混合気の旋回方向と、上記導入部から分離器本体内に導入する気液混合気の旋回流とは、例えば、平面視で同じ方向であることができる(図2参照)。
【0015】
上記「螺旋板」は、貯留部内に設けられ且つ貯留部内を流れる気液混合気に旋回力を与える限り、その構成、形状、個数等は特に問わない。
上記螺旋板は、例えば、上記貯留部の内周壁に固定されていたり、上記分離器本体の外周壁に固定されていたりすることができる。
上記螺旋板は、例えば、上記ハウジングの高さの略全長にわたって設けられていたり、上記ハウジングの底側から分離器本体の液体排出部の開口端高さの間にわたって設けられていたりすることができる。
【0016】
上記「邪魔部」は、上記貯留部及び/又は上記分離器本体内に設けられ且つ貯留部内に貯留された液体の液体排出部への逆流を抑制する限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。
上記邪魔部は、例えば、上記貯留部の内壁に固定されていたり、上記分離器本体に固定されていたりすることができる。
上記邪魔部の形状としては、例えば、平板状、湾曲板状、塊状、異形状等を挙げることができる。
上記邪魔部は、例えば、上記液体排出部の開口に対向していることができる(図4等参照)。
【0017】
上記邪魔部は、例えば、上記第1邪魔部23aと、この第1邪魔部の周囲に設けられる第2邪魔部23bと、を有しており、これら第1及び第2邪魔部によって、貯留部の内部空間が液体排出部側の空間S1と貯留液体排出部側の空間S2とに上下に仕切られることができる(図4等参照)。上述の第1邪魔部及び第2邪魔部のうちの少なくとも一方は、例えば、水平面に対して傾斜するテーパ面24を有することができる。このテーパ面によって、分離器本体の液体排出部から排出される液体が貯留部の底側に円滑に案内される。
【0018】
上記「連通部」は、上記貯留部と分離器本体の気液分離領域の上流側及び/又は導入部とを連通するためのものである限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。
上記貯留部が上記ハウジング7である場合、上記連通部は、例えば、分離器本体の気液分離領域の上流側及び/又は導入部に設けられ且つハウジングの内部に開口する連通管6,6’であることができる(図1及び4等参照)。この連通管6は、例えば、分離器本体の接線方向に延びて形成されていることができる。
【0019】
上記「吸気部」は、上記貯留部の上部に設けられ且つ貯留部の外側の気液混合気を吸気する限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。
上記吸気部は、例えば、上記貯留部の上部に設けられた吸気管20であることができる(図4等参照)。この吸気管20は、例えば、上記貯留部の壁面から貯留部の少なくとも内方に延びて形成されていることができる。
上記吸気部は、例えば、貯留部の上壁に上下方向に開口して形成されていたり、貯留部の周壁に横方向に開口して形成されていたりできる。
上記吸気部の開口面積cは、例えば、上記導入部の開口面積dより小さな値に設定されていることができる(図4等参照)。
【実施例】
【0020】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
尚、本実施例では、本発明に係る「気液分離器」として、車両エンジンのブローバイガスをガスとオイルとに遠心分離するものを例示する。
【0021】
(実施例1)
(1)気液分離器
本実施例1に係る気液分離器1は、図1〜3に示すように、略円筒状の分離器本体2を備えている。この分離器本体2は、円筒部2aと、この円筒部2aの下端側に連なるテーパ筒部2bとを有している。この円筒部2aの周壁には、分離器本体2の接線方向に延びる導入管3(本発明に係る「導入部」として例示する。)が設けられている。また、この円筒部2aの周壁には、導入管3と平行であり分離器本体2の接線方向に延びる連通管6(本発明に係る「連通部」として例示する。)が設けられている。この連通管6は、後述のハウジング内に開口している。また、テーパ筒部2bの下端側には、後述のハウジングの中心部に開口し且つ上下方向に延びるオイル排出管4(本発明に係る「液体排出部」として例示する。)が設けられている。また、上記分離器本体2の上壁の中心部には、分離器本体2の内部で上下方向(旋回軸方向)に延びる気体排出管5(本発明に係る「気体排出部」として例示する。)が設けられている。
【0022】
上記気液分離器1は、分離器本体2の全体を覆う略円筒状のハウジング7(本発明に係る「貯留部」として例示する。)を備えている。このハウジング7の下部周壁には、ハウジング7の接線方向に延びる貯留オイル排出管9(本発明に係る「貯留液体排出部」として例示する。)が設けられている。この貯留オイル排出管9は、ハウジング7の接線方向に開口している。また、この貯留オイル排出管9の開口面積aは、上記オイル排出管4の開口面積bより小さな値に設定されている。
【0023】
(2)気液分離器の作用
次に、上記気液分離器1の作用について説明する。
車両エンジンの燃焼室から漏洩するブローバイガスが導入管3から分離器本体2内に接線方向から導入される。すると、その導入されたブローバイガスが旋回流となってガスとオイル(オイルミスト)とに遠心分離される。その分離後のガスは気体排出管5から外部に排出される一方、その分離後のオイルは自重により分離器本体2の内周面側を下方に向って流れてオイル排出管4からハウジング7内の底部に一時的に貯留される。その後、アイドリング時等の際に、貯留オイル排出管9から逆流するブローバイガスの吸引力が貯留オイルの重量より小さくなると、貯留オイルは貯留オイル排出管9から外部に排出される。
【0024】
そして、ブローバイガスの吸引時には、貯留オイル排出管9からハウジング7内に逆流するブローバイガスは、ハウジング7内に接線方向に導入され旋回流とされて遠心分離される。その分離後のガスはオイル排出管4を介して気体排出管5から外部に排出される一方、その分離後のオイルはハウジング7内の底部に一時的に貯留される。また、旋回流とされたブローバイガスによって、ハウジング7内の貯留オイルには遠心力が付与され、貯留オイルの液面は中心部より外周部が高レベルとされる(図1参照)。
また、貯留オイル排出管9からハウジング7内に逆流するブローバイガスの一部は、連通管6を介して分離器本体2の気液分離領域の上流側に流入されて分離器本体2内で遠心分離される。
なお、分離器本体2内のブローバイガスの旋回流と、ハウジング7内のブローバイガスの旋回流とは平面視で同じ方向となっている(図2参照)。また、ブローバイガスの吸引時には、気体排出管5にかかる吸引力(負圧)Qは、導入管3の吸引力Q1と貯留オイル排出管9の吸引力Q2との和となる(図1参照)。
【0025】
(3)実施例1の効果
本実施例1の気液分離器1では、ハウジング7によって、分離器本体2で分離したオイルを貯留しながら排出するようにしたので、ハウジング7の貯留オイル排出管9からのオイルの排出性を向上させることができる。また、ハウジング7の貯留オイル排出管9に、従来のような運転中閉状態となる弁機構を設けていないので、運転中でもハウジング7内の貯留オイルを排出することができ、ハウジング7の小型化及び構造の簡素化を実現できる。
【0026】
また、本実施例1では、ハウジング7の下部周壁に、接線方向に延びる貯留オイル排出管9を設けたので、ハウジング7内に逆流するブローバイガスを旋回流とすることができる。従って、ハウジング7内で逆流するブローバイガスを遠心分離でき、その分離効率を向上させることができる。また、ハウジング7内で旋回流となるブローバイガスによって、ハウジング7内の貯留オイルに遠心力が与えられて貯留オイルの跳ね上がり、飛散等が抑制される。その結果、分離器本体2のオイル排出管4への貯留オイルの逆流を抑制できると共に、分離器本体2のオイル排出管4からのオイルの排出性を向上させることができる。
【0027】
また、本実施例1では、貯留オイル排出管9の開口面積aを、オイル排出管4の開口面積bより小さな値に設定したので、貯留オイル排出管9へのブローバイガスの逆流をより確実に抑制できると共に、オイル排出管4からのオイルの排出性をより向上させることができる。
【0028】
また、本実施例1では、連通管6によって、貯留オイル排出管9からハウジング7内に逆流したブローバイガスを分離器本体2内に流入させて遠心分離するようにしたので、そのブローバイガスの逆流による貯留オイルの跳ね上がり、飛散等がより確実に抑制されると共に、その逆流ガスのオイル排出管4への流入がより確実に抑制される。
【0029】
(実施例2)
(1)気液分離器
本実施例2に係る気液分離器11は、図5及び6に示すように、略円筒状の分離器本体12を備えている。この分離器本体12は、円筒部12aと、この円筒部12aの下端側に連なるテーパ筒部12bとを有している。この円筒部12aの周壁には、分離器本体12の接線方向に延びる導入管13(本発明に係る「導入部」として例示する。)が設けられている。また、テーパ筒部12bの下端側には、後述の貯留タンクの中心部に開口し且つ上下方向に延びるオイル排出管14(本発明に係る「液体排出部」として例示する。)が設けられている。また、上記分離器本体12の上壁の中心部には、分離器本体12の内部で上下方向(旋回軸方向)に延びる気体排出管15(本発明に係る「気体排出部」として例示する。)が設けられている。また、分離器本体12内には、後述の貯留タンク内の貯留オイルがオイル排出管14へ逆流してしまうことを抑制する板状の邪魔部33が設けられている。
【0030】
上記気液分離器11は、分離器本体12のオイル排出管14に接続される略円筒状の貯留タンク17(本発明に係る「貯留部」として例示する。)を備えている。この貯留タンク17は、円筒部17aと、この円筒部17aの上端側に連なり上方に向って縮径するテーパ筒部17bとを有している。この円筒部17aの下部周壁には、貯留タンク17の接線方向に延びる貯留オイル排出管19(本発明に係る「貯留液体排出部」として例示する。)が設けられている。この貯留オイル排出管19は、貯留タンク17の接線方向に開口している。また、この貯留オイル排出管19の開口面積aは、上記オイル排出管14の開口面積bより小さな値に設定されている。
【0031】
(2)気液分離器の作用
次に、上記気液分離器11の作用について説明する。
車両エンジンの燃焼室から漏洩するブローバイガスが導入管13から分離器本体12内に接線方向から導入される。すると、その導入されたブローバイガスが旋回流となってガスとオイル(オイルミスト)とに遠心分離される。その分離後のガスは気体排出管15から外部に排出される一方、その分離後のオイルは自重により分離器本体12の内周面側を下方に向って流れてオイル排出管14から貯留タンク17内の底部に一時的に貯留される。その後、アイドリング時等の際に、貯留オイル排出管19から逆流するブローバイガスの吸引力が貯留オイルの重量より小さくなると、貯留オイルは貯留オイル排出管19から外部に排出される。
【0032】
そして、ブローバイガスの吸引時には、貯留オイル排出管19から貯留タンク17内に逆流するブローバイガスは、貯留タンク17内に接線方向に導入され旋回流とされて遠心分離される。その分離後のガスはオイル排出管14を介して気体排出管15から外部に排出される一方、その分離後のオイルは貯留タンク17内の底部に一時的に貯留される。また、旋回流とされたブローバイガスによって、貯留タンク17内の貯留オイルには遠心力が付与され、貯留オイルの液面は中心部より外周部が高レベルとされる(図1参照)。
また、邪魔部33によって、貯留タンク17内の貯留オイルのオイル排出管14への逆流が抑制される。
なお、分離器本体12内のブローバイガスの旋回流と、貯留タンク17内のブローバイガスの旋回流とは平面視で同じ方向となっている。また、ブローバイガスの吸引時には、気体排出管15にかかる吸引力(負圧)Qは、導入管13の吸引力Q1と貯留オイル排出管19の吸引力Q2との和となる(図5参照)。
【0033】
(3)実施例2の効果
本実施例2の気液分離器11では、貯留タンク17によって、分離器本体12で分離したオイルを貯留しながら排出するようにしたので、貯留タンク17の貯留オイル排出管19からのオイルの排出性を向上させることができる。また、貯留タンク17の貯留オイル排出管19に、従来のような運転中閉状態となる弁機構を設けていないので、運転中でも貯留タンク17内の貯留オイルを排出することができ、貯留タンク17の小型化及び構造の簡素化を実現できる。
【0034】
また、本実施例2では、貯留タンク17の下部周壁に、接線方向に延びる貯留オイル排出管19を設けたので、貯留タンク17内に逆流するブローバイガスを旋回流とすることができる。従って、貯留タンク17内でブローバイガスを遠心分離でき、その分離効率を向上させることができる。また、貯留タンク17内で旋回流となるブローバイガスによって、貯留タンク17内の貯留オイルに遠心力が与えられて貯留オイルの跳ね上がり、飛散等が抑制される。その結果、分離器本体12のオイル排出管14への貯留オイルの逆流を抑制できると共に、分離器本体12のオイル排出管14からのオイルの排出性を向上させることができる。
また、本実施例2では、貯留タンク17に、テーパ部17bを設けているので、貯留タンク17内で旋回するブローバイガスをより確実に遠心分離することができる。
【0035】
また、本実施例2では、貯留オイル排出管19の開口面積aを、オイル排出管14の開口面積bより小さな値に設定したので、貯留オイル排出管19へのブローバイガスの逆流をより確実に抑制できると共に、オイル排出管14からのオイルの排出性をより向上させることができる。
また、本実施例2では、貯留タンク17内に、オイル排出管14の開口に対向する邪魔部33を設けたので、分離器本体12のオイル排出管14への貯留オイルの逆流をより確実に抑制できると共に、分離器本体12のオイル排出管14からのオイルの排出性を更に向上させることができる。
【0036】
尚、本発明においては、上記実施例1及び2に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例1では、略円筒状のハウジング7を例示したが、これに限定されず、例えば、図1に一点鎖線で示すように、その底側から上方に向って縮径するテーパ部8を有するハウジング7’としてもよい。このテーパ部8によって、ハウジング7’内で旋回するブローバイガスをより確実に遠心分離することができる。
また、図1に仮想線で示すように、ハウジング7の内壁に螺旋板27を設けるようにしてもよい。この螺旋板27によって、ハウジング7内で旋回するブローバイガスに旋回力が付与されてブローバイガスをより確実に遠心分離することができる。また、この螺旋板27は、図5における貯留タンク17内に同様に設けてもよい。
【0037】
また、上記実施例1では、分離器本体2の円筒部2aに連通管6を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、分離器本体2のテーパ筒部2bの上部に連通管6を設けたり、図4に示すように、導入管3の途中に連通管6’を設けたりしてもよい。
【0038】
また、例えば、図4に示すように、ハウジング7の側壁上部に、その壁面からハウジング7の内方及び外方に延びる吸気管20を設けるようにしてもよい。この吸気管20によって、ブローバイガスの吸引時に、ハウジング7内に外部のブローバイガスが吸気され、貯留オイル排出管9からのブローバイガスの逆流を抑制できる。その結果、分離器本体2のオイル排出管4への貯留オイルの逆流をより確実に抑制できると共に、分離器本体2のオイル排出管4からのオイルの排出性を更に向上させることができる。この場合、上記吸気管20の開口面積cが上記導入管3の開口面積dより小さな値に設定されていることが好ましい。吸気管20からのブローバイガスの吸気量を必要最小限に抑えつつ、ブローバイガスの大部分を導入管3から分離器本体2内に導入させて遠心分離することができるためである。
【0039】
また、例えば、図4に示すように、ハウジング7内に、貯留オイルがオイル排出管4へ逆流してしまうことを抑制する邪魔部23を設けるようにしてもよい。この邪魔部23によって、分離器本体2のオイル排出管4への貯留オイルの逆流がより確実に抑制されると共に、分離器本体2のオイル排出管4からのオイルの排出性を更に向上させることができる。具体的には、上記邪魔部23は、第1邪魔部23a及び第2邪魔部23bからなっている。この第1邪魔部23aは、オイル排出管4の開口に対向して配設されている。また、この第1邪魔部23aの外周側には、支持リブ(図示せず)等を介して上記第2邪魔部23bが固定されている。この第2邪魔部23bの外周側は、ハウジング7の内壁に固定されている。これら第1及び第2邪魔部23a,23bの上面には、水平面に対して傾斜するテーパ面24が形成されている。そして、これら第1及び第2邪魔部23a,23bによって、ハウジング7の内部空間がオイル排出管4側の空間S1と貯留オイル排出管9側の空間S2とに上下に仕切られている。なお、上記第1及び第2邪魔部23a,23bの間には、両空間S1,S2を連通させる連通口25が設けられている。
さらに、上記邪魔部23の替わりに又は加えて、分離器本体2内に、貯留オイルがオイル排出管4へ逆流してしまうことを抑制する邪魔部23’(図4中に仮想線で示す。)を設けるようにしてもよい。
また、図5において、仮想線で示すように、邪魔部33をオイル排出管14の下方つまり貯留タンク17の上方部に設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
気液混合気を気体と液体とに遠心分離する技術として広く利用される。特に、車両エンジンのブローバイガスをガスとオイルとに遠心分離する技術として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施例1に係る気液分離器の縦断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】気液分離器の更に他の形態を説明するための縦断図面である。
【図5】本実施例2に係る気液分離器の縦断面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1,1’,11;気液分離器、2,12;分離器本体、3,13;導入管、4,14;オイル排出管、5,15;気体排出管、7,7’;ハウジング、17;貯留タンク、8,17b;テーパ部、9,19;貯留オイル排出管、23,23’,33;邪魔部、27;螺旋板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の分離器本体と、該分離器本体に設けられ且つ気液混合気を該分離器本体の内部に接線方向に導入する導入部と、該分離器本体に設けられ且つ分離した液体を排出する液体排出部と、該分離器本体に設けられ且つ分離した気体を排出する気体排出部と、を備える気液分離器において、
前記液体排出部から排出される液体を貯留する貯留部と、該貯留部の下部に接線方向に開口して設けられ且つ貯留された液体を排出する貯留液体排出部と、を備えることを特徴とする気液分離器。
【請求項2】
前記貯留部内に設けられ、且つ、該貯留部内を流れる気液混合気に旋回力を与える螺旋板を更に備える請求項1記載の気液分離器。
【請求項3】
前記貯留部は、その上方に向って縮径するテーパ部を有している請求項1又は2に記載の気液分離器。
【請求項4】
前記貯留部及び/又は前記分離器本体内に設けられ、且つ、該貯留部内に貯留された液体の前記液体排出部への逆流を抑制する邪魔部を更に備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の気液分離器。
【請求項5】
前記貯留部は、前記分離器本体を覆うハウジングである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の気液分離器。
【請求項6】
前記貯留部は、前記分離器本体の前記液体排出部が接続される貯留タンクである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の気液分離器。
【請求項7】
前記気液混合気はブローバイガスである請求項1乃至6のいずれか一項に記載の気液分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−38714(P2008−38714A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212641(P2006−212641)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】