説明

気道疾患の処置のためのインダカテロール誘導体およびホスホジエステラーゼの組合せ

炎症性または閉塞性気道疾患の処置において同時に、連続してまたは別々に投与するための、(A)遊離形もしくは塩形または溶媒和形の式I
【化1】


〔式中、W、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRは本明細書に記載のとおりの意味を有する〕の化合物、ならびに(B)PDE4阻害剤およびPDE5阻害剤からなる群から選択される1種またはそれ以上の化合物を別々にまたは一緒に含む薬剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機化合物および特に炎症性または閉塞性気道疾患の処置のための医薬としてのそれらの使用に関する。
【発明の開示】
【0002】
第1の局面において、本発明は、炎症性または閉塞性気道疾患の処置において、同時に、連続してまたは別々に投与するための、
(A)遊離形もしくは塩形または溶媒和形の式I
【化1】

〔式中、Wは式
【化2】

の基であり、
およびRは両方−CH−または−(CH−であり;
は水素、ヒドロキシ、またはC−C10−アルコキシであり;
およびRはそれぞれ独立して水素またはC−C10−アルキルであり;
、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C−C10−アルコキシ、C−C10−アリール、C−C10−アルキル、1個またはそれ以上のハロゲン原子または1個またはそれ以上のヒドロキシもしくはC−C10−アルコキシ基により置換されているC−C10−アルキル、1個またはそれ以上のヘテロ原子により中断されているC−C10−アルキル、C−C10−アルケニル、トリアルキルシリル、カルボキシ、C−C10−アルコキシカルボニル、またはR11およびR12はそれぞれ独立して水素またはC−C10−アルキルである−CONR1112であるか、
またはRおよびR、RおよびR、またはRおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、5、6もしくは7員炭素環式環または4から10員ヘテロ環式環を示し;そして
、RおよびR10はそれぞれ独立して水素またはC−C−アルキルである〕の化合物;ならびに
(B)PDE4阻害剤およびPDE5阻害剤からなる群から選択される1種またはそれ以上の化合物;
を別々にまたは一緒に含む薬剤を提供する。
【0003】
別の局面において、本発明は処置を必要とする対象に有効量の上記定義のとおりの(A)および上記定義のとおりの(B)を投与することを含む炎症性または閉塞性気道疾患を処置する方法を提供する。
【0004】
さらなる局面において、本発明は有効量の上記定義のとおりの(A)および上記定義のとおりの(B)の混合物を、所望により少なくとも1種の薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0005】
本発明はさらに炎症性または閉塞性気道疾患の処置において(A)および(B)の同時の、連続したまたは別々の投与による組合せ治療のための医薬の製造における上記定義のとおりの(A)および上記定義のとおりの(B)の使用を提供する。
【0006】
本明細書で使用される用語は下記の意味を有する:
本明細書で使用される“所望により置換されていてもよい”なる用語は、言及されている基がその前に記載の基の1個またはいずれかの組合せにより1個またはそれ以上の位置で置換され得ることを意味する。
【0007】
本明細書で使用される“ハロ”または“ハロゲン”なる用語は元素周期表の17族(以前はVII族)に属する元素を示し、それは、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり得る。好ましくは、ハロまたはハロゲンはフッ素または塩素である。
【0008】
本明細書で使用される“C−C10−アルキル”なる用語は1から10個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖アルキルを示す。好ましくは、C−C10−アルキルはC−C−アルキルである。
【0009】
本明細書で使用される“C−C10−アルキレン”なる用語は1から10個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖アルキレンを示す。好ましくは、C−C10−アルキレンはC−Cアルキレン、とりわけエチレンまたはメチルエチレンである。
【0010】
本明細書で使用される“C−C10−アルケニル”なる用語は2から10個の炭素原子および1個またはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含む直線上のまたは分岐した炭化水素鎖を示す。好ましくは、“C−C10−アルケニル”は“C−C−アルケニル”である。
【0011】
本明細書で使用される“C−C10−アルキニル”なる用語は2から10個の炭素原子および1個またはそれ以上の炭素−炭素三重結合を含む直線上のまたは分岐した炭化水素鎖を示す。好ましくは、“C−C10−アルキニル”は“C−C−アルキニル”である。
【0012】
本明細書で使用される“5、6もしくは7員炭素環式環”なる用語は5から7個の環炭素原子を有する炭素環式基、脂環式基、例えば、C−C−シクロアルキル、または芳香族基、例えば、フェニルを示し、これは1個またはそれ以上の、通常1または2個のC−C−アルキル基により置換されていてもよい。
【0013】
本明細書で使用される“C−C10−シクロアルキル”なる用語は3から10個の環炭素原子を有するシクロアルキル、例えば、1個またはそれ以上の、通常1または2個のC−C−アルキル基により置換されていてもよい、単環式基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルもしくはシクロデシル、または二環式基、例えば、ビシクロヘプチルもしくはビシクロオクチルを示す。好ましくは、C−C10−シクロアルキルはC−C−シクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルである。
【0014】
本明細書で使用される“C−C10−ハロアルキル”なる用語は1個またはそれ以上のハロゲン原子、好ましくは、1、2または3個のハロゲン原子により置換されている上記定義のとおりのC−C10−アルキルを示す。
【0015】
本明細書で使用される“C−C10−アルキルアミノ”および“ジ(C−C10−アルキル)アミノ”なる用語は上記定義のとおりの1または2個のC−C10−アルキル基により各々置換されているアミノを示し、これは同じまたは異なり得る。好ましくは、C−C10−アルキルアミノおよびジ(C−C10−アルキル)アミノは各々C−C−アルキルアミノおよびジ(C−C−アルキル)アミノである。
【0016】
本明細書で使用される“C−C10−アルキルチオ”は1から10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキルチオを示す。好ましくは、C−C10−アルキルチオはC−C−アルキルチオである。
【0017】
本明細書で使用される“C−C10−アルコキシ”は1から10個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖アルコキシを示す。好ましくは、C−C10−アルコキシはC−C−アルコキシである。
【0018】
本明細書で使用される“C−C10−アルコキシ−C−C10−アルキル”なる用語はC−C10−アルコキシにより置換されている上記定義のとおりのC−C10−アルキルを示す。好ましくは、C−C10−アルコキシ−C−C10−アルキルはC−C−アルコキシ−C−C−アルキルである。
【0019】
本明細書で使用される“C−C10−アルコキシカルボニル”なる用語はその酸素原子を介してカルボニル基に結合している上記定義のとおりのC−C10−アルコキシを示す。
【0020】
本明細書で使用される“C−C10−アリール”なる用語は6から10個の炭素原子を含む一価の炭素環式芳香族基を示し、これは、例えば、単環式基、例えば、フェニルまたは二環式基、例えば、ナフチルである。好ましくは、C−C10−アリールはC−C−アリール、とりわけフェニルである。
【0021】
本明細書で使用される“C−C10−アリールスルホニル”なる用語はその炭素原子を介してスルホニル基に結合している上記定義のとおりのC−C10−アリールを示す。好ましくは、C−C10−アリールスルホニルはC−C−アリールスルホニルである。
【0022】
本明細書で使用される“C−C14−アラルキル”なる用語はアリール、例えば、上記定義のとおりのC−C10−アリールにより置換されているアルキル、例えば、上記定義のとおりのC−C−アルキルを示す。好ましくは、C−C14−アラルキルはC−C10−アラルキル、例えば、フェニル−C−C−アルキル、特にベンジルまたは2−フェニルエチルである。
【0023】
本明細書で使用される“C−C14−アラルキルオキシ”なる用語はアリール、例えば、C−C10−アリールにより置換されている上記定義のとおりのアルコキシ、例えば、C−C−アルコキシを示す。好ましくは、C−C14−アラルキルオキシはC−C10−アラルキルオキシ、例えば、フェニル−C−C−アルコキシ、特にベンジルオキシまたは2−フェニルエトキシである。
【0024】
本明細書で使用される“Ar”なる用語は、例えば、非置換であるかまたはハロゲン、ヒドロキシ、C−C10−アルキル、C−C10−アルコキシ、C−C10−アルコキシ−C−C10−アルキル、フェニル、フェニルにより置換されているC−C10−アルキル、フェニルにより置換されているC−C10−アルコキシ、C−C10−アルキル−置換されているフェニルおよびC−C10−アルコキシ−置換されているフェニルから選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されているフェニレンであり得る。好ましくはArは非置換であるかまたはハロゲン、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、またはフェニルにより置換されているC−C−アルコキシから選択される1または2個の置換基により置換されているフェニレンである。好ましくはArの1個の置換基がRに対してパラ位であり、そしてArの任意の2個目および3個目の置換基がRに対してメタ位である。
【0025】
本明細書で使用される“少なくとも1個の環窒素、酸素または硫黄原子を有する4から10員ヘテロ環式環”なる用語は、例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、ピペリジン、ピペラジン、トリアジン、オキサジン、モルホリノ、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、インダンまたはインデンであり得る。好ましいヘテロ環式環はチアゾール、ピロリジン、ピペリジン、アザシクロヘプタンおよびイソキサゾールを含む。
【0026】
“4から10員ヘテロシクリル−C−C10−アルキル”なる用語は上記定義のとおりの4から10員ヘテロ環式環により置換されているアルキル、例えば、上記定義のとおりのC−C10−アルキルを示す。好ましくは、4から10員ヘテロシクリル−C−C10−アルキルは少なくとも1個の環窒素、酸素または硫黄原子を有する4から8員ヘテロ環式環により置換されているC−C−アルキルである。
【0027】
“C−C−アルキルスルホニル”なる用語は上記定義のとおりのC−C−アルキルにより置換されているスルホニルを示す。
【0028】
“ヒドロキシ−C−C−アルキル”なる用語は1個またはそれ以上、好ましくは1、2または3個のヒドロキシ基により置換されている上記定義のとおりのC−C−アルキルを示す。
【0029】
脂環式環として結合している炭素原子と一緒にR13およびR14は、例えば、所望により1または2個のC−C−アルキル基により置換されていてもよいシクロペンタン環、所望により1または2個のC−C−アルキル基により置換されていてもよいシクロヘキサン環、またはシクロヘプタン環であり得、好ましくはシクロペンタン環である。
【0030】
特許請求の範囲を含む明細書にわたって、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、“含む”なる用語、または例えば、“含み”または“含んでなる”なる派生語は規定の整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を含むが、他のいかなる整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を除外しないことを意味することが理解されよう。
【0031】
式Iの好ましい化合物は
、RおよびR10がそれぞれHであり、RがOHであり、RおよびRがそれぞれHであり、そして
(i)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれCHO−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであるか;
(ii)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであり、そしてRおよびRがそれぞれCHCH−であるか;
(iii)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであり、そしてRおよびRがそれぞれCH−であるか;
(iv)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれCHCH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであるか;
(v)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであり、そしてRおよびRが一緒に−(CH−を示すか;
(vi)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであり、そしてRおよびRが一緒に−O(CHO−を示すか;
(vii)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであり、そしてRおよびRがそれぞれCH(CH−であるか;
(viii)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであり、そしてRおよびRがそれぞれCH(CH−であるか;
(ix)RおよびRが両方−(CH−であり、R、R、RおよびRがそれぞれHであるか;または
(x)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであり、そしてRおよびRがそれぞれCHOCH−であるものを含む。
【0032】
これらは8−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−(インダン−2−イルアミノ)−エチル]−1H−キノリン−2−オン、5−[2−(5,6−ジメトキシ−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン、5−[2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−3−メチル−1H−キノリン−2−オン、5−[2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−メトキシ−メトキシ−6−メチル−1H−キノリン−2−オン、5−[2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−6−メチル−1H−キノリン−2−オン、8−ヒドロキシ−5−[2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン、5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−2−メチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン、塩酸(S)−5−[2−(4,7−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン、塩酸5−[(R)−1−ヒドロキシ−2−(6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン−7−イルアミノ)−エチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン、マレイン酸(R)−5−[2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン、塩酸(R)−5−[2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン、(R)−8−ヒドロキシ−5−[(S)−1−ヒドロキシ−2−(4,5,6,7−テトラメチル−インダン−2−イルアミノ)−エチル]−1H−キノリン−2−オン、8−ヒドロキシ−5−[(R)−1−ヒドロキシ−2−(2−メチル−インダン−2−イルアミノ)−エチル]−1H−キノリン−2−オン、5−[2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−エチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン、8−ヒドロキシ−5−[(R)−1−ヒドロキシ−2−(2−メチル−2,3,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[b]ナフタレン−2−イルアミノ)−エチル]−1H−キノリン−2−オン、および5−[(S)−2−(2,3,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[b]ナフタレン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オンを含む。
【0033】
とりわけ好ましい式Iの化合物は、遊離形もしくは薬学的に許容される塩形または溶媒和物形の式II
【化3】

の化合物、とりわけマレイン酸塩、すなわちマレイン酸(R)−5−[2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシエチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オンである。
【0034】
遊離形もしくは塩形または溶媒和形の式Iの化合物は国際特許出願WO2000/075114に記載されている方法を使用することにより製造し得、この内容を出典明示により本明細書に包含させる。
【0035】
式IIの化合物は(R)−8−ベンジルオキシ−5−オキシラニルカルボスチリルと5,6−ジエチルインダン−2−イルアミンを反応させ、8−ベンジルオキシ−5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−IH−キノリン−2−オンを得、次いで後者をベンジル基を水素に置換するため脱保護反応に付し、そして得られる遊離形もしくは塩形または溶媒和形の式IIの化合物を回収することにより遊離形もしくは塩形または溶媒和形で製造され得る。このような方法はWO2004/76422に記載されており、この内容を出典明示により本明細書に包含させる。(R)−8−ベンジルオキシ−5−オキシラニルカルボスチリルはWO1995/25104に記載のとおりに製造できる。5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミンはWO2003/76387に記載のとおりに製造できる。
【0036】
遊離形の式Iの化合物は慣用の方法で塩形に変換でき、そして逆もまた同様である。遊離または塩形の化合物は水和物または結晶化のために使用される溶媒を含む溶媒和物の形態で得ることができる。式Iの化合物は反応混合物から回収でき、そして慣用の方法で精製できる。異性体、例えば、エナンチオマーは慣用の方法、例えば、分別結晶または例えば、対応して不斉に置換された光学活性な出発物質からの不斉合成により得ることができる。
【0037】
式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、無機酸、例えば、ハロゲン化水素酸、例えば、ハロゲン化水素酸、塩酸、臭化水素酸またはヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸;および有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、トリフェニル酢酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、脂肪族ヒドロキシ酸、例えば、乳酸、クエン酸、酒石酸またはリンゴ酸、ジカルボン酸、例えば、フマル酸、マレイン酸またはコハク酸、およびスルホン酸、例えば、メタンスルホン酸またはベンゼンスルホン酸との塩を含む酸付加塩であり得る。これらの塩は既知の塩形成法により式Iの化合物から製造できる。薬学的に許容される溶媒和物は一般に水和物である。
【0038】
PDE4阻害剤は4型アイソザイムに対して選択的に環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)アイソザイム阻害活性を示す物質または薬剤である。このような物質は抗炎症、抗気道過敏性および気管支拡張特性を有する。それらはまた免疫抑制およびTNFα分泌阻害活性を有し得る。PDE4阻害活性はWO03/39544に記載されているPDE4アイソザイム阻害アッセイを使用して測定され得る。
【0039】
適当なPDE4阻害剤はシロミラスト(アリフロ(登録商標)GlaxoSmithKline)、ロフルミラスト(Byk Gulden)、V−11294A(Napp)、BAY19−8004(Bayer)、SCH−351591(Schering−Plough)、Arofylline(Almirall Prodesfarma)、PD189659/PD168787(Parke−Davis)、AWD−12−281(Asta Medica)、CDC−801(Celgene)、SelCID(TM)CC−10004(Celgene)、VM554/UM565(Vernalis)、T−440(田辺)、KW−4490(協和発酵工業)、ならびにWO92/19594、WO93/19749、WO93/19750、WO93/19751、WO98/18796、WO99/16766、WO01/13953、WO03/104204、WO03/104205、WO03/39544、WO04/000814、WO04/000839、WO04/005258、WO04/018450、WO04/018451、WO04/018457、WO04/018465、WO04/018431、WO04/018449、WO04/018450、WO04/018451、WO04/018457、WO04/018465、WO04/019944、WO04/019944、WO04/019945、WO04/045607、WO04/037805、WO04/063197、WO04/103998、WO04/111044、WO05/012252、WO05/012253およびWO05/013995、WO05/030212、WO05/030725、WO05/087744、WO05/087745、WO05/087749およびWO05/090345に記載されているものを含む。
【0040】
PDE5阻害剤は5型アイソザイムに対して選択的に環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)アイソザイムを阻害する活性を示す物質または薬剤である。このような物質は、男性勃起機能障害および女性性機能障害を含む性機能障害、早産、陣痛、月経困難症、良性前立腺肥大、膀胱排尿障害、失禁、安定、不安定および異型(プリンツメタル)狭心症、高血圧、肺高血圧、うっ血性心不全、アテローム性動脈硬化症、血管開通性減少の状態、例えば、経皮経管冠動脈形成術後の状態、末梢血管障害、気管支炎、喘息、アレルギー性鼻炎、緑内障、耳鳴、腸運動性の障害により特徴付けられる疾患、例えば、過敏性腸症候群、子癇前、川崎症候群、硝酸耐性、多発性硬化症、糖尿病性末梢神経障害、卒中、アルツハイマー病、急性呼吸不全、乾癬、皮膚壊死、癌、転移、脱毛症、食道のナッツクラッカー症候群、裂肛および低酸素性血管収縮の処置に有用である。PDE5阻害活性はWO2001/77110に記載されているPDE5アイソザイム阻害アッセイを使用して測定され得る。
【0041】
適当なPDE5阻害剤はEP463756、EP526004、WO94/28902、WO96/16657またはWO98/49166に記載されているピラゾロピリミジノン;EP201188に記載されている5−置換ピラゾール[4,3−d]ピリミジン−7−オン;EP214708およびEP319050に記載されているグリセオリン酸誘導体;EP293063に記載されている2−フェニルプリノン(phenylpurinone)誘導体;EP347027に記載されているフェニルピリドン誘導体;EP347146に記載されている縮合ピリミジン誘導体;EP349239に記載されている縮合ピリミジン誘導体;EP351058に記載されているピリミドピリミジン誘導体;EP352960に記載されているプリン化合物;EP371731に記載されているキナゾリノン誘導体;EP395328に記載されているフェニルピリミドン誘導体;EP400583に記載されているイミダゾキン(imidazoquin)−オキサリノ(oxalinone)誘導体またはそれらのアザ類似体;EP400799に記載されているフェニルピリミドン誘導体;EP428268に記載されているフェニルピリドン誘導体;EP442204に記載されているピリミドピリミジン誘導体;EP579496に記載されている4−アミノキナゾリン誘導体;EP584487に記載されている4,5−ジヒドロ−4−オキソ−ピロロ[1,2−a]キノキサリン誘導体またはそれらのアザ類似体;WO91/19717に記載されている多環グアニン誘導体;WO93/07124に記載されている窒素ヘテロ環式化合物;WO94/19351に記載されている2−ベンジル−多環グアニン誘導体;US4060615に記載されているキナゾリン誘導体;US5294612に記載されている6−ヘテロシクリルピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−オン;日本公開5−222000に記載されているベンゾイミダゾール;European Journal of Pharmacology,vol.251,(1994),1に記載されているシクロヘプタイミダゾール;WO94/22855に記載されているN−含有ヘテロ環;EP636626に記載されているピラゾロピリミジン誘導体;EP640599に記載されている4−アミノピリミジン誘導体;EP668280に記載されているイミダゾキナゾリン誘導体;EP0686625に記載されているアントラニル酸誘導体;US5436233に記載されている4−アミノキナゾリン誘導体;WO95/19978に記載されているテトラ環状誘導体(タダフィルを含む);EP0669324に記載されているキナゾリン化合物;EP722936に記載されている縮合ピリダジン化合物;EP0758653に記載されているイミダゾキノリン化合物;WO96/28159に記載されている置換ピラゾロキノリンアミン;WO96/28429に記載されている置換ピラゾロピリミジノン;WO96/32379に記載されているインドール誘導体;WO97/03070に記載されているベンゾイミダゾール誘導体;WO99/24433に記載されている2−フェニル置換イミダゾトリアジノン誘導体(バルデナフィルを含む);ならびにWO2001/77110に記載されているものを含む。
【0042】
とりわけ好ましいPDE5阻害剤は5−[2−エトキシ−5−(4−メチルピペラジニルスルホニル)−フェニル]−1−メチル−3−n−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(WO94/28902に記載されているシルデナフィル、バイアグラ(登録商標))、(6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−ピラジノ(2’,1’:6,1)ピリド(3,4−b)インドール−1,4−ジオン(WO95/19978に記載されているタダフィル、シアリス(登録商標))、4−エトキシ−N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)−3−(5−メチル−4−オキソ−7−プロピル−3,4−ジヒドロイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(WO99/24433に記載されているバルデナフィル、レビトラ(登録商標))、4−フェニル−メチルアミノ−6−クロロ−2−(1−イミダゾリル)−キナゾリン(US5436233に記載されている)、4−フェニルメチルアミノ−6−クロロ−2−(3−ピリジル)キナゾリン(US5436233に記載されている)、1,3−ジメチル−6−(2−プロポキシ−5−メタンスルホニルアミドフェニル)−1,5−ジヒドロピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−オン(EP636626に記載されている)および1−シクロペンチル−3−エチル−6−(3−エトキシ−4−ピリジル)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−オン(US5294612に記載されている)を含む。
【0043】
上記記載のとおりの、すなわち混合物のまたは別々の(A)および(B)を含む薬剤または医薬組成物の投与は好ましくは吸入によるものであり、すなわち(A)および(B)またはそれらの混合物は吸入可能形である。薬剤、すなわち(A)および/または(B)の吸入可能形は、例えば、高圧ガス中の溶液または分散媒体の活性成分、すなわち(A)および(B)を別々にまたは混合して含む霧化可能組成物、例えば、エアロゾル、または水性、有機性または水性/有機性媒体中に活性成分の溶液または分散媒を含む噴霧可能組成物であり得る。例えば、薬剤の吸入可能形は高圧ガス中の溶液または分散媒体の(A)および(B)の混合物を含むエアロゾル、または高圧ガス中の溶液または分散体の(A)を含むエアロゾルと高圧ガス中の溶液または分散体の(B)を含むエアロゾルの組合せであり得る。他の例において、吸入可能形は水性、有機性または水性/有機性媒体中に(A)および(B)の分散体、またはこのような媒体中の(A)の分散体とこのような媒体中の(B)の分散体の組合せを含む噴霧可能組成物であり得る。
【0044】
吸入可能形の薬剤として使用するためのエアロゾル組成物は、当分野で既知であるすべての高圧ガスから選択され得る高圧ガス中の溶液または分散体の活性成分を含み得る。適当なこのような高圧ガスは、炭化水素、例えば、n−プロパン、n−ブタンもしくはイソブタン、または2種またはそれ以上のこのような炭化水素の混合物、およびハロゲン−置換炭化水素、例えば、塩素および/またはフッ素−置換メタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパンまたはシクロブタン、例えば、ジクロロジフルオロメタン(CFC12)、トリクロロフルオロメタン(CFC11)、1,2−ジクロロ−1,1,2,2テトラフルオロエタン(CFC114)または、特に、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA227)、または2種またはそれ以上のこのようなハロゲン−置換炭化水素の混合物を含む。活性成分が高圧ガス中に懸濁液で存在するとき、すなわちそれが高圧ガス中で分散された粒子状形で存在するとき、エアロゾル組成物はまた当分野で既知の滑剤および界面活性剤から選択され得る滑剤および界面活性剤を含み得る。他の適当なエアロゾル組成物は界面活性剤非含有または実質的に界面活性剤非含有エアロゾル組成物を含む。エアロゾル組成物は高圧ガスの重量に基づいて約5%以下、例えば、0.0001から5%、0.001から5%、0.001から3%、0.001から2%、0.001から1%、0.001から0.1%、または0.001から0.01%の活性成分を含み得る。存在するとき、滑剤および界面活性剤はエアロゾル組成物の重量あたり各々5%以下および0.5%以下であり得る。エアロゾル組成物はまた、特に加圧定量噴霧吸入デバイスからの投与のために、組成物の重量あたり30%以下の量の共溶媒、例えば、エタノールを含み得る。エアロゾル組成物はさらに例えば、組成物の重量あたり20%以下の、通常0.001から1%の量の充てん剤、例えば、糖、例えば、ラクトース、スクロース、デキストロース、マンニトールまたはソルビトールを含み得る。
【0045】
本発明の他の態様において、吸入可能形は乾燥粉末であり、すなわち(A)および/または(B)は、微粉砕された(A)および/または(B)を、所望により、好ましくは乾燥粉末吸入組成物の担体として既知の物質、例えば、単糖、二糖、多糖および糖アルコール、例えば、アラビノース、グルコース、フルクトース、リボース、マンノース、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、デンプン、デキストラン、マンニトールまたはソルビトールを含むサッカリドから選択される1種またはそれ以上の既知の物質であり得る少なくとも1種の粒子状の薬学的に許容される担体と一緒に含む乾燥粉末で存在し得る。とりわけ好ましい担体はラクトースである。乾燥粉末は、単回投与または複数回投与デバイスであり得る乾燥粉末吸入デバイスで使用するための、例えば、ゼラチンまたはプラスチックのカプセルに、または(例えば、アルミニウムまたはプラスチックの)ブリスターに単位用量として、好ましくはカプセルあたり5mgから50mgの粉末の総重量をもたらす量の担体と共に投与単位の(A)および/または(B)で含まれ得る。あるいは、乾燥粉末は、例えば、作動あたり3−25mgの乾燥粉末を送達するために適応させた複数投与用の乾燥粉末吸入デバイスの貯蔵部に含まれ得る。
【0046】
微粉砕された粒子状形の薬剤において、および活性成分が粒子状形で存在するときのエアロゾル組成物において、活性成分はおよそ10μm以下、例えば、0.1から5μm、好ましくは1から5μmの平均粒子直径を有し得る。存在するとき粒子状の担体は一般に最大粒子直径300μm以下、好ましくは212μm以下を有し、そして好都合には40から100μm、例えば、50から75μmの平均粒子直径を有する。活性成分の粒子サイズおよび乾燥粉末組成物に存在するときの粒子状の担体の粒子サイズは慣用の方法、例えば、エアージェットミル、ボールミルまたは振動ミルにおける粉砕、ふるい、ミクロ沈澱、スプレー乾燥、凍結乾燥または慣用の溶媒または超臨界媒体からの制御された結晶化により所望のレベルまで減少できる。
【0047】
吸入可能薬剤は吸入可能形のために適当な吸入デバイスを使用して投与でき、このようなデバイスは当分野で既知である。したがって、本発明はまた、上記記載のとおりの吸入可能形の上記記載のとおりの薬剤または医薬組成物と1種またはそれ以上の吸入デバイスを一緒に含む医薬品を提供する。さらなる局面において、本発明は上記記載のとおりの吸入可能形の上記記載のとおりの薬剤または医薬組成物を含む吸入デバイス、または2種またはそれ以上の吸入デバイスのパックを提供する。
【0048】
活性成分の吸入可能形がエアロゾル組成物であるとき、吸入デバイスは定量、例えば、10から100μl、例えば、25から50μlの組成物を送達するために適応させたバルブを備えたエアロゾルバイアル、すなわち定量吸入器として既知のデバイスであり得る。適当なこのようなエアロゾルバイアルおよびエアロゾル組成物をその中に圧力下で入れる方法は吸入治療の当業者に既知である。例えば、エアロゾル組成物は、例えば、EP−A−0642992に記載されているコーティングされた缶から投与され得る。活性成分の吸入可能形が噴霧可能水性、有機性または水性/有機性分散体であるとき、吸入デバイスは既知の噴霧器、例えば、1から50ml、一般的に1から10mlの分散体を含み得る、例えば、慣用の空気噴霧器、例えば、エアジェット噴霧器、または超音波噴霧器;または慣用の噴霧器よりも非常に少量の噴霧量、例えば、10から100μlを可能とする、ソフト・ミストまたはソフト・スプレー吸入器として呼ばれることもある携帯型噴霧器、例えば、電子的に制御されたデバイス、例えば、AERx(Aradigm、US)またはAerodose(Aerogen)、または機械デバイス、例えば、RESPIMAT(Boehringer Ingelheim)噴霧器であり得る。活性成分の吸入可能形が微粉砕された粒子状形であるとき、吸入デバイスは、例えば、投与単位の(A)および/または(B)を含む乾燥粉末を含むカプセルを含むカプセルまたはブリスターから送達するために適用される乾燥粉末吸入デバイス、または例えば、作動あたり投与単位の(A)および/または(B)を含む3−25mgの乾燥粉末を送達するために適応させた複数投与用の乾燥粉末吸入(MDPI)デバイスであり得る。乾燥粉末組成物は好ましくは希釈剤または担体、例えば、ラクトース、および水分による成分の性能低下に対する保護に役立つ化合物、例えば、典型的に0.05−1.5%のステアリン酸マグネシウムを含む。適当なこのような乾燥粉末吸入デバイスは既知である。例えば、カプセル形内の乾燥粉末を送達するために適当なデバイスはUS3991761に記載されているものであり、一方適当なMDPIデバイスはWO97/20589に記載されているものである。
【0049】
本発明の薬剤は好ましくは上記定義のとおりの(A)および上記定義のとおりの(B)の混合物を、好ましくは少なくとも1種の上記定義のとおりの薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬組成物である。
【0050】
化合物(A)のステロイド(B)に対するモル比は一般に100:1から1:300、例えば、50:1から1:100または20:1から1:50、好ましくは10:1から1:20、より好ましくは5:1から1:10、3:1から1:7または2:1から1:2であり得る。化合物(A)およびステロイド(B)が同じ比で別々に投与され得る。
【0051】
吸入のための特にマレイン酸塩としての化合物(A)の適当な1日用量は20μgから2000μg、例えば、20から1500μg、20から1000μg、好ましくは50から800μg、例えば、100から600μgまたは100から500μgであり得る。
【0052】
(B)がPDE4阻害剤のとき、吸入のための適当な1日用量は20μgから5000μg、例えば、20から4000μg、50から3000μg、50から2000μg、50から1000μg、50から500μg、50から400μg、50から300μg、50から200μgまたは50から100μgであり得る。
【0053】
(B)がPDE5阻害剤のとき、吸入のための適当な1日用量は20μgから5000μg、例えば、20から4000μg、50から3000μg、50から2000μg、50から1000μg、50から500μg、50から400μg、50から300μg、50から200μgまたは50から100μgであり得る。
【0054】
本発明の1つの好ましい態様において、本発明の薬剤は、例えば、一カプセル吸入器から吸入するための単位用量の(A)および(B)を含むカプセル中の乾燥粉末である医薬組成物であり、該カプセルは適当には、例えば上記記載のとおりの単位用量の(A)、および、上例えば記記載のとおりの単位用量の(B)を、カプセルあたり例えば、5mgから50mg、例えば、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mgまたは50mgの乾燥粉末の総重量をもたらす量の上記記載のとおりの薬学的に許容される担体と一緒に適当に含むカプセルである。
【0055】
本発明の他の好ましい態様において、本発明の薬剤は、例えば、作動あたり単位用量の(A)および(B)を含む3mgから25mgの粉末を送達するために適応させた複数投与乾燥粉末吸入器の貯蔵部から投与するための乾燥粉末である医薬組成物であり、例えば、ここで、(A)がマレイン酸塩形のとき、該粉末は20から2000重量部、例えば、60から1000重量部、100から500重量部、または100から300重量部の(A);25から800重量部、例えば、25から500重量部、50から400重量部、または100から400重量部の(B);および2000から25000重量部、例えば、4000から15000重量部または4000から10000重量部の上記記載のとおりの薬学的に許容される担体を含む。
【0056】
本発明のさらに好ましい態様において、本発明の薬剤は、作動あたり単位用量の(A)および単位用量の(B)、または既知の割合の単位用量の(A)および既知の割合の単位用量の(B)を含むエアロゾルを送達するために適応させた定量吸入器から投与するための、例えば、上記記載のとおりの高圧ガス中に上記記載のとおりの比で(A)および(B)を、所望により上記記載のとおりの界面活性剤および/または充てん剤および/または共溶媒、例えば、エタノールと一緒に含むエアロゾルである医薬組成物である。したがって、例えば、吸入器が作動あたり単位用量の半分の(A)および(B)を送達するとき、単位用量は吸入器の2回の作動によって投与され得る。
【0057】
上記にしたがって、本発明はまた有効量の(A)および(B)の投与のために適当である形である別々の単位投与形の上記定義のとおりの(A)および(B)を含む医薬キットを提供する。このようなキットは適当にはさらに(A)および(B)の投与のための1個またはそれ以上の吸入デバイスを含む。例えば、該キットはカプセルから乾燥粉末を送達するために適応させた1個またはそれ以上の乾燥粉末吸入デバイス、投与単位の(A)を含む乾燥粉末を含むカプセルおよび投与単位の(B)を含む乾燥粉末を含むカプセルを一緒に含み得る。他の例において、該キットは(A)を含む乾燥粉末を貯蔵部に含む複数投与用の乾燥粉末吸入デバイスおよび(B)を含む乾燥粉末を貯蔵部に含む複数投与用の乾燥粉末吸入デバイスを含み得る。さらなる例において、該キットは高圧ガス中に(A)を含むエアロゾルを含む定量吸入器および高圧ガス中に(B)を含むエアロゾルを含む定量吸入器を含み得る。
【0058】
本発明の薬剤は炎症性または閉塞性気道疾患の処置に有効であり、非常に有効な気管支拡張および抗炎症特性を示す。例えば、それは本発明の組合せ治療を使用して、治療効果を得るために必要なコルチコステロイドの用量をコルチコステロイド単独での処置で使用する必要な用量と比較して減少させることが可能であり、それによっておそらく望ましくない副作用を最小限にできる。特に、これらの組合せは、特に(A)および(B)が同じ組成物であるとき、一定の抗炎症効果のために必要であるコルチコステロイドの量が式Iの化合物と混合したときに減少でき、それによって炎症性または閉塞性気道疾患の処置に関連するステロイドに対する反復暴露からの望ましくない副作用の危険性を減少させるような、高い抗炎症効果の達成を容易にする。さらに、本発明の組合せを使用して、特に(A)および(B)を含む組成物を使用して、作用の速やかな発生および長期作用を有する薬剤が調製できる。さらに、このような組合せ治療を使用して、肺機能の著しい改善をもたらす薬剤が調製できる。別の局面において、本発明の組合せ治療を使用して、閉塞性または炎症性気道疾患の有効な制御、またはこのような疾患の悪化の減少を提供する薬剤が調製できる。さらなる局面において、(A)および(B)を含む本発明の組成物を使用して、短時間作用型救助薬剤、例えば、サルブタモールまたはテルブタリンでの処置に対する必要性を減少または除去する薬剤を調製できる;したがって(A)および(B)を含む本発明の組成物は一つの薬剤での閉塞性または炎症性気道疾患の処置を容易にする。
【0059】
本発明の炎症性または閉塞性気道疾患の処置は対症的または予防的処置であり得る。本発明が適用される炎症性または閉塞性気道疾患は内因性(非アレルギー性)喘息および外因性(アレルギー性)喘息の両方、軽度の喘息、中度の喘息、重度の喘息、気管支喘息、運動誘発喘息、職業的喘息および下記の細菌感染誘導喘息を含むいかなるタイプのまたは起源の喘息も含む。喘息の処置はまた、喘鳴症候群を示し、主要な医学的懸念の確立された患者カテゴリーであり、しばしば初期のまたは早期の喘息として同定される“喘鳴小児”と診断されるまたは診断できる、例えば、4または5歳以下の対象の処置を包含すると理解されるべきである。(便宜上、この特定の喘息状態は、“喘鳴小児症候群”と呼ぶ。)
【0060】
喘息の処置における予防効果は例えば、急性喘息または気管支収縮発作の頻度または重症度の減少、肺機能の改善または気道過反応性の改善により証明され得る。さらに、他の対症療法、すなわち症候発作を、それが起きたとき、制限もしくは中止するための、またはそれを意図した治療、例えば、抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド)または気管支拡剤の必要性の減少により証明され得る。喘息における予防効果は、特に“モーニングディッピング(morning dipping)”になる傾向の対象において明らかになり得る。“モーニングディッピング”なる用語は喘息のかなりの割合に共通する、認識された喘息症候群であり、例えば約4−6a.m.の時間、すなわち、前に投与された何らかの喘息対症治療から通常相当離れた時間に起こる喘息発作により特徴付けられる。
【0061】
本発明が適用される他の炎症性または閉塞性気道疾患および状態は、急性肺外傷(ALI)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性気管支炎および呼吸困難を含む慢性閉塞性肺(pulmonary)、気道もしくは肺嚢(lung)疾患(COPD、COADまたはCOLD)、気管支拡張症ならびに他の薬剤治療、特に、他の吸入薬剤治療の結果生じる気道過敏症の悪化を含む。本発明が適用されるさらなる炎症性または閉塞性気道疾患は、例えば、アルミニウム肺症、炭粉沈着症、石綿肺症、石肺症、ダチョウ塵肺症、鉄沈着症、珪肺症、タバコ症および綿肺症を含む、いかなるタイプのまたは起源の塵肺(しばしば気道の閉塞を伴い、慢性または急性であり、しばしば粉塵の繰り返し吸入により起こる、肺の炎症性の、一般に職業的な疾患)を含む。
【0062】
本発明は下記の実施例により説明される。
【実施例】
【0063】
実施例
化合物A1
(R)−5−[2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オンマレート
この化合物は国際特許出願WO2000/075114に記載されている方法を使用して製造される。
【0064】
化合物B1
この化合物はPDE4阻害剤シロミラストである。
化合物B2
この化合物はPDE4阻害剤ロフルミラストである。
化合物B3
この化合物はPDE5阻害剤シルデナフィルである。
化合物B4
この化合物はPDE5阻害剤タダフィルである。
化合物B5
この化合物はPDE5阻害剤バルデナフィルである。
【0065】
実施例1−60
US3991761およびEP1270034に記載されているようなカプセル吸入器において使用するために適当なゼラチンカプセルを製造し、各カプセルは1から5μmの平均粒子直径に挽いた化合物A1および化合物B1ならびに212μm未満の粒子直径を有するラクトース一水和物を下記表1に示されるとおりの量で混合することにより得られる乾燥粉末を含む:
表1
【表1】

【表2】

【0066】
実施例61−105
WO97/20589に記載されている複数回投与の吸入器の容器から送達するために適当な乾燥粉末を、1から5μmの平均粒子直径に挽いた化合物A1および化合物B2ならびに212μm未満の粒子直径を有するラクトース一水和物を下記表2に示されるとおりの量で混合することにより製造する:
表2
【表3】

【表4】

【0067】
実施例106−150
WO97/20589に記載されている複数回投与の吸入器の容器から送達するために適当な乾燥粉末は、1から5μmの平均粒子直径に挽いた化合物A1および化合物B3ならびに212μm未満の粒子直径を有するラクトース一水和物を、0.5重量%のステアリン酸マグネシウムを含む以外、表2に示されるとおりの量で混合することにより製造する。
【0068】
実施例151−168
エアロゾル製剤は、バイアルに微粉化活性成分、化合物A1および化合物B4、ならびに所望により充填剤としてラクトースを分配し、定量バルブでバイアルを密閉し、バルブを介して予混エタノール/高圧ガスおよび所望の界面活性剤をバイアルに注入し、そして固体粒子を分散させるためバイアルを超音波エネルギーに付すことにより製造する。使用する成分および量を下記表3に示す:
表3
【表5】

【0069】
実施例169−178
エアロゾル製剤は、バイアルに微粉化活性成分、化合物A1および化合物B5、ならびに所望により充填剤としてラクトースを分配し、定量バルブでバイアルを密閉し、バルブを介して予混エタノール/高圧ガスおよび所望の界面活性剤をバイアルに注入し、そして固体粒子を分散させるためバイアルを超音波エネルギーに付すことにより製造する。使用する成分および量を下記表4に示す:
表4
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性または閉塞性気道疾患の処置において、同時に、連続してまたは別々に投与するための、
(A)遊離形もしくは塩形または溶媒和形の式I
【化1】

〔式中、Wは式
【化2】

の基であり、
およびRは両方−CH−または−(CH−であり;
は水素、ヒドロキシ、またはC−C10−アルコキシであり;
およびRはそれぞれ独立して水素またはC−C10−アルキルであり;
、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C−C10−アルコキシ、C−C10−アリール、C−C10−アルキル、1個またはそれ以上のハロゲン原子または1個またはそれ以上のヒドロキシもしくはC−C10−アルコキシ基により置換されているC−C10−アルキル、1個またはそれ以上のヘテロ原子により中断されているC−C10−アルキル、C−C10−アルケニル、トリアルキルシリル、カルボキシ、C−C10−アルコキシカルボニル、またはR11およびR12はそれぞれ独立して水素またはC−C10−アルキルである−CONR1112であるか、
またはRおよびR、RおよびR、またはRおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって5、6もしくは7員炭素環式環または4から10員ヘテロ環式環を示し;そして
、RおよびR10はそれぞれ独立して水素またはC−C−アルキルである〕の化合物;ならびに
(B)PDE4阻害剤およびPDE5阻害剤からなる群から選択される1種またはそれ以上の化合物;
を別々にまたは一緒に含む薬剤。
【請求項2】
有効量の(A)および(B)の混合物を、所望により少なくとも1種の薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬組成物である請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
(A)がR、RおよびR10がそれぞれHであり、RがOHであり、RおよびRがそれぞれHであり、そして
(i)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれCHO−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであるか;
(ii)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであり、そしてRおよびRがそれぞれCHCH−であるか;
(iii)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであり、そしてRおよびRがそれぞれCH−であるか;
(iv)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれCHCH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであるか;
(v)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであり、そしてRおよびRが一緒に−(CH−を示すか;
(vi)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであり、そしてRおよびRが一緒に−O(CHO−を示すか;
(vii)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであり、そしてRおよびRがそれぞれCH(CH−であるか;
(viii)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであり、そしてRおよびRがそれぞれCH(CH−であるか;
(ix)RおよびRが両方−(CH−であり、R、R、RおよびRがそれぞれHであるか;または
(x)RおよびRが両方−CH−であり、そしてRおよびRがそれぞれHであり、そしてRおよびRがそれぞれCHOCH−である式Iの化合物である請求項1または2に記載の薬剤。
【請求項4】
(A)が遊離形もしくは薬学的に許容される塩形または溶媒和物形の式II
【化3】

の化合物である請求項1から3のいずれかに記載の薬剤。
【請求項5】
(A)がマレイン酸塩である請求項4に記載の薬剤。
【請求項6】
(B)がシロミラスト、ロフルミラスト、V−11294A、BAY19−8004、SCH−351591、アロフェリン(arofylline)、PD189659、PD168787、AWD−12−281、CDC−801、CC−10004、VM554/UM565、T−440およびKW−4490からなる群から選択されるPDE4阻害剤である請求項1から5のいずれかに記載の薬剤。
【請求項7】
(B)が5−[2−エトキシ−5−(4−メチルピペラジニルスルホニル)−フェニル]−1−メチル−3−n−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン、(6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−ピラジノ(2’,1’:6,1)ピリド(3,4−b)インドール−1,4−ジオン、4−エトキシ−N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)−3−(5−メチル−4−オキソ−7−プロピル−3,4−ジヒドロイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド、4−フェニル−メチルアミノ−6−クロロ−2−(1−イミダゾリル)−キナゾリン、4−フェニルメチルアミノ−6−クロロ−2−(3−ピリジル)キナゾリン、1,3−ジメチル−6−(2−プロポキシ−5−メタンスルホニルアミドフェニル)−1,5−ジヒドロピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−オンおよび1−シクロペンチル−3−エチル−6−(3−エトキシ−4−ピリジル)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−オンからなる群から選択されるPDE5阻害剤である請求項1から5のいずれかに記載の薬剤。
【請求項8】
高圧ガス中に溶液または分散体の(A)および(B)の混合物を含むエアロゾル、または高圧ガス中の溶液中または分散体の(A)を含むエアロゾルと高圧ガス中の溶液または分散体の(B)を含むエアロゾルとしての吸入可能形の請求項1から7のいずれかに記載の薬剤。
【請求項9】
水性、有機性または水性/有機性媒体中の(A)および(B)の分散体を、または該媒体中の(A)の分散体と該媒体中の(B)の分散体の組合せを含む噴霧可能組成物としての吸入可能形の請求項1から7のいずれかに記載の薬剤。
【請求項10】
(A)および/または(B)が微粉砕された(A)および/または(B)を、所望により少なくとも1種の粒子状の薬学的に許容される担体を一緒に含む乾燥粉末として吸入可能形で存在する請求項1から7のいずれかに記載の薬剤。
【請求項11】
(A)および/または(B)が10μm以下の平均粒子直径を有する請求項8または10に記載の薬剤。
【請求項12】
(A)の(B)に対するモル比が5:1から1:10である請求項1から11のいずれかに記載の薬剤。
【請求項13】
カプセル中の乾燥粉末であり、該カプセルが、単位用量の(A)、単位用量の(B)およびカプセルあたり5mgから50mgの乾燥粉末の総重量をもたらす量の薬学的に許容される担体を含む、請求項2に記載の薬剤。
【請求項14】
20から2000重量部のマレイン酸塩形の(A)、25から800重量部の(B)および2000から25000重量部の薬学的に許容される担体を含む乾燥粉末である請求項2に記載の薬剤。
【請求項15】
作動あたり単位用量の(A)および単位用量の(B)、または既知の割合の単位用量の(A)および既知の割合の単位用量の(B)を含むエアロゾルを送達するために適応させた定量吸入器からの投与に適した、高圧ガス中に請求項1または12に記載のとおりの比の(A)および(B)を、所望により界面活性剤および/または充てん剤および/または適当な共溶媒と一緒に含むエアロゾルである請求項2に記載の薬剤。
【請求項16】
別々の単位投与形(該形は有効量の(A)および(B)の投与のために適当である)の請求項1から7のいずかに記載の(A)および請求項1に記載の(B)を、(A)および(B)の投与のための1個またはそれ以上の吸入デバイスと一緒に含む医薬キット。
【請求項17】
実施例のいずれかに実質的に記載されている薬剤。

【公表番号】特表2008−542319(P2008−542319A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514006(P2008−514006)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005154
【国際公開番号】WO2006/128675
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】