説明

水中に圧縮流体エネルギを貯蔵するシステムおよび同システムを配置する方法

水中に圧縮流体エネルギを貯蔵するシステムおよび方法は、水域の水底に配置された流体格納容器を含む圧縮流体貯蔵システムを含み、流体格納容器は、水底で容器を安定させるために容器内に配置された堆積物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年9月23日出願の米国特許出願第12/888,971号、2009年9月23日出願の米国仮特許出願第61/245,279号、2010年3月1日出願の米国仮特許出願第61/309,415号、2010年7月14日出願の米国仮特許出願第61/364,364号、および2010年7月14日出願の米国仮特許出願61/364,368号に対する優先権を主張するものであり、これらの特許の開示は本明細書に援用される。
【0002】
本発明の実施形態は、概略的には、圧縮流体エネルギ貯蔵に関し、より詳細には、水中貯蔵装置に圧縮流体を貯蔵し、水中貯蔵装置からエネルギを抽出する方法および装置に関する。圧縮された流体が空気である実施形態では、かかる発明は、圧縮空気エネルギ貯蔵(CAES)システムとして公知のエネルギ貯蔵システムのクラスに属するが、本明細書では、任意の圧縮流体エネルギ貯蔵システムを一般的に指すものとしてCAESを使用する。
【0003】
再生可能なエネルギ(RE)源は、次第に少なくなる再生不可能なエネルギ源と高い炭素放出との時代の従来の動力源に対する代替物となる。しかし、多くの形態の再生可能エネルギは、需要がビークのときに入手できないことから、RE源が十分に利用されないことも多い。例えば、RE源は、所望しないピーク外の時間中に最も入手可能性が高くなり得、あるいは人口密集地または電力が最も必要とされる場所から離れた領域に配置されており、ピークの時間中に他のすべてのピークにある動力源とともに配電網を共有しなければならないことがあり得る。
【0004】
RE源には、例として、水力、地熱、海洋温度差発電(OTEC)があり得る。水力は、例えば、貯水池と組み合わせた場合に、変化する電力負荷に合わせて、または負荷に追従して流量を増減できる1つのRE源である。地熱およびOTECも良好なベースロードRE源であるが、それらの使用に当たって所在地の可変性が限定されがちである。当然のことながら、海洋温度差発電機は、海洋の温度躍層にまたがって従来から利用されているが、それに加えて、表面水と深層水との間に温度差がある淡水域に適用することもできる。RE源には、例として、ソーラ、風、波、および潮もあり得る。しかし、これらの動力源には、電力を供給できるのが間欠的であるという傾向がある。したがって、これらの動力源が配電網によるエネルギ供給に実質的に寄与するには、エネルギ貯蔵が望ましい。
【0005】
例えば、風力エネルギは、kWh当たりのコストに関してコスト効率を高くし得るが、エネルギが必要なときにエネルギを発生させないことがある。風力エネルギでは、主に、配電網の需要に応じて送電できないだけでなく、風力レベルに応じて制御不能に変動するその電力出力のタイミングに起因して、適度な配電網浸透レベルであっても障害に直面する。コスト効率の高い貯蔵が利用できない限り、この問題は、あらゆる種類のより多くのRE源が配電網に加えられるとともに悪化する。エネルギの需要と供給とを調整するエネルギ貯蔵を行わない場合、再生可能エネルギの割合が20%を超えると、多くの場合、配電網は安定性を失う。
【0006】
配電網用のコスト効率の高い貯蔵が、電力供給の初期から求められてきたが、まだ利用できていない。1日全体を通した、および季節間の電力需要の変動により、一部の期間だけ利用される発電資産を有することが必要となり、これは、最大容量未満で使用される資産の資本費、運転費、および保守費を上昇させ得る。さらに一部の発電資産は、出力を絞るか、または停止させることが困難であり、短期間で最大出力に戻すことが困難である。エネルギ貯蔵は、電力の需要と供給に、より良好に合わせるための一時保管領域を提供することができ、動力源がより高い適応力で、ひいてはより高い効率で機能するのを可能にする。
【0007】
大規模なエネルギシステムに対して、いくつかの先行貯蔵技術のコストパラメータを考慮してもよく、各技術はそれ自体の原価作用因を有する。例えば、揚水式発電は、何十年にもわたって使用されており、他の配電網エネルギ貯蔵のアイデアを評価する基準とされることが多い。揚水式発電は、エネルギ容量の観点から効率的であり、貯蔵されるエネルギの収集時に燃料を全く消費しないが、限定された所在地にしか配置することができず、単位電力当たりの資本費が高い。通常、かなりの高低差および2つの貯水池が必要とされる。また、北アメリカにおける実現可能な現場のほとんどはすでに開発されたと考えられ、コストに関係なく、揚水発電がエネルギ貯蔵容量を大きく増やすのに寄与できるとは思えない。揚水発電はまた、発電コスト($/kW)の点でかなり高価であるが、それでもなお、単位エネルギ当たりのコスト($/kWh)がかなり安価であるために、利用できる場合は幅広く使用されている。
【0008】
CAESは、公知のエネルギ貯蔵技術の多くの欠点を解決する魅力的なエネルギ貯蔵技術である。CAESの従来の手法は、個別設計したガスタービン発電装置を使用するものであり、コンプレッサを駆動し、地下の洞窟または帯水層に圧縮空気を貯蔵する。エネルギは、圧縮空気をコンプレッサの下流のタービンシステムに射出することで収集され、圧縮空気は、天然ガスを燃料とする燃焼空気と混合されるか、またはそれによって加熱され、膨張してタービンを通過する。適度な容積の空洞または帯水層を利用するために、システムは高圧で動作する。そのため、貯蔵および取り出しプロセス時に一定容積および可変圧力で動作するシステムとなり、そのような広範な圧力にわたって動作することが必要となるため、結果として、コンプレッサおよびタービンシステムに余分なコストがかかる。地下のCAESは地理的な制約を受ける。洞窟は、動力源、負荷地点、または配電網送電線の近くにないかもしれない。対照的に、工業化世界において90%を超える電気負荷が、水中CAESが実用的であるのに十分な水深の近くにある。水中CAESでは、地下CAESが受ける地理的制約の多くが取り除かれる。
【0009】
また、流体の効率的な圧縮および膨張のための重要な因子は、圧縮中に発生する熱と、膨張中に必要とされる熱とに対処することである。従来のCAESは、天然ガスの燃焼を使用して(多くの場合、ガスタービン排気ガスからの熱を吸収することで)空気を再加熱し、圧縮の熱を周囲環境に放散する。そのようなシステムは、断熱運転を可能にするために、熱貯蔵装置を含むことができる。そのようなシステムはまた、圧縮および膨張段階用の個別の装置を有することが多く、したがって、資本経費がより高くなり、さらには天然ガスの使用により、運転コストがより高くなり、複雑さが増す。その結果として、購入したピーク外電力を利用して空気貯蔵器に畜圧すると、発電装置は、ピーク需要期間中に電力を生成できるが、設備が増え、燃料費がより高くなる。
【0010】
したがって、外部燃料を必要とすることなく、従来の動力源との競合力がある、より効率的かつコスト効率の高い様式で、圧縮流体エネルギ貯蔵システムにエネルギを貯蔵および回生する装置および方法を設計することが望ましい。
【発明の概要】
【0011】
本発明の一態様によれば、圧縮流体貯蔵システムは、水域の水底に配置された流体格納容器を含み、流体格納容器は、容器を水底で安定させるために容器内に配置された堆積物を含む。
【0012】
本発明の別の態様によれば、圧縮流体貯蔵システムを配置する方法は、堆積混合物を可撓性の流体貯蔵バッグ内に圧送することを含み、堆積混合物は水域の水底から収集された堆積物を含む。方法はまた、堆積混合物が可撓性流体貯蔵バッグ内に積もって、堆積混合物からの堆積物が可撓性流体貯蔵バッグを水底で安定させることを可能にすることと、流体ホースを介して可撓性流体貯蔵バッグを圧縮ユニットに接続することとを含み、圧縮ユニットは、貯蔵するために、圧縮流体を可撓性流体貯蔵バッグに送るように構成される。
【0013】
本発明のさらに別の態様によれば、圧縮流体貯蔵システムは、水域の下の水底に配置された流体貯蔵システムを含み、流体貯蔵システムは、堆積物バラストを部分的に充填された複数の可撓性流体貯蔵チューブを含む。所定の量の流体を第1の圧力から、より高い第2の圧力に加圧するように構成された流体圧力変換システムが組み込まれる。システムはまた、流体圧力変換システムに接続され、流体圧力変換システムに所定の量の流体を加圧させるように構成された動力源と、流体圧力変換システムと流体貯蔵システムとの間で加圧流体を移動させるように構成された加圧流体搬送システムとを含む。
【0014】
他の様々な特徴および利点が、下記の詳細な説明および図面から明らかになるであろう。
【0015】
図面は、本発明を実施するために現時点で考えられる実施形態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施形態の実施形態の一般的な機能を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態による、図1に示した機能を有するシステムを示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態による、海に配置されたシステムの基本構成要素を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態による、陸に配置されたシステムの基本構成要素を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブアセンブリの等角図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブを示す概略図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブを示す概略図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブを形成するために使用される材料の構成要素を示している。
【図9】図9は、本発明の実施形態によるチューブ作製技術を示している。
【図10】図10は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブを配置する技術を図解で示している。
【図11】図11は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブアセンブリを海底に配置することを企図された本発明の実施形態を示している。
【図12】図12は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブアセンブリを海底に配置することを企図された本発明の実施形態を示している。
【図13】図13は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブアセンブリを海底に配置することを企図された本発明の実施形態を示している。
【図14】図14は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブアセンブリを海底に配置することを企図された本発明の実施形態を示している。
【図15】図15は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブに貯蔵された圧縮流体塊の様々な充填レベルに対する表面積変化を示す等角図である。
【図16】図16は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブに貯蔵された圧縮流体塊の様々な充填レベルに対する表面積変化を示す等角図である。
【図17】図17は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブ用の構造支持体を示す等角図である。
【図18】図18は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブに貯蔵された圧縮流体塊の様々な充填レベルに対する形状変化を示す等角図である。
【図19】図19は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブアセンブリの配列を示す概略図である。
【図20】図20は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブアセンブリの配列を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態は、海洋、海、湖、貯水池、湾、港、入り江、川、または他の任意の人工もしくは天然水域の水底に圧縮流体貯蔵容器を配置または設置することを含む。本明細書において、「海」とは任意のかかる水域を指し、「海底」とは海の底を指す。本明細書において、「流体」とは、空気、CO2などの圧縮可能な任意のガスまたは液体、さらには超臨界流体を指す。本明細書において、「堆積物」(例えば、「海底堆積物」)とは、海の底または海底からの海洋物質を指し、例として、砂利、砂、沈泥、粘土、マッド、海底に積もった有機または他の材料があり得る。
【0018】
本システムの開示された実施形態では、圧縮流体は、水域の中(または「下」とも称される)のバッグに貯蔵される。周囲の水の静水圧は、コンプレッサを介してバッグに加圧充填される圧縮流体に対する主要な抑制パラメータになる。従来の「揚水発電」の貯蔵では、水はかなり高い地理的高度を通って揚水される。対照的に、本開示のシステムの実施形態では、水域の水準は、基本的に、下方に流体を補給する機構によって高められる。その技術は、海洋、または陸上の湖もしくは貯水池に同等にうまく適合する。本開示のシステムは、多くの場合、(水深に基づいて)従来のCAESよりも低い圧力比で動作し、これらの低い圧力比と、大きなヒートシンクとして水を使用することとにより、いくつかの実施形態で説明するように、膨張段階の直前か、または膨張段階中に化石燃料で流体を再加熱する必要がなくなる。また、本システムは、ほぼ一定の貯蔵圧力で動作し、より単純でより効率的なコンプレッサ/膨張機(C/E)構造を可能にする。
【0019】
ここで図1を参照すると、本開示のシステムの実施形態の一般的な機能が示されている。システム10は、本発明の実施形態において、例として、風力、(例えば、「ソルターカム式波力発電装置」による)波力、流力、潮力、またはソーラパワーなどの再生可能なエネルギ源から取り込むことができる入力動力12を含む。別の実施形態では、入力動力12は配電網から取り込んでもよい。再生可能エネルギ(RE)源の場合、そのような動力源は間欠動力を供給することがある。配電網の場合、システム10は配電網に接続することができて、深夜または早朝時間中などのピーク外の時間中に電力を引き込むことができ、圧縮流体エネルギとして貯蔵することができ、次いで、システム10から引き出されたエネルギを額面以上(すなわち、電気エネルギの裁定取引)で売ることができるピークの時間中に回生できるか、または安価なベースロード電力を貯蔵することでピーキング能力が得られるように、石炭などのベースロード発電システムを増強するために回生できる方式で制御することができる。別の使用方法として、石炭などの従来の動力源の代わりに、概ね静的なモードで低コスト電力を供給するベース電源としてシステム10を使用し、負荷が変動し、システム10からの供給量を超えたときに一時的な電力を供給するピーク電力システムとして従来の動力源(例えば、天然ガス、ディーゼルなど)を使用し、こうして平均電力コストを削減する方法がある。
【0020】
また、システム10は上記の動力源に限定されるのではなくて、間欠的に利用できる動力源、または低コストの、もしくはピーク外の時間中に引き出すことができ、電気負荷のピーク時または発電所の供給停止時間中などの望ましい期間中に売ることができる動力源を含む任意の動力源に適用することができる。さらに、システム10は、単一の入力動力12に限定されるのではなくて、システム10に接続することができる複数の動力源を含んでもよい。言い換えると、組み合わせた複数の動力源を入力動力12として単一のシステム内に含むことができる。入力動力12は、流体吸入口16からの流体を圧縮するために、機械力14に連結されている。
【0021】
流体圧縮18は、回転方向に応じて流体を圧縮することも膨張させることもできる、Wankelタイプのコンプレッサ/膨張機(C/E)などの装置から得てもよい。ただし、本発明はそのように限定されるものではなく、本発明の実施形態に応じて、流体を圧縮するのに機械力を使用する任意のコンプレッサを実装することができ、本発明の実施形態に応じて、機械エネルギを発生させるために流体を減圧する任意の膨張機を実装することができる。本発明の実施形態では、C/Eは、0.2MW〜3MWの電力を発生させることができるが、本発明はそのように限定されるものではなく、0.0001MW程度の低い電力、および5MW以上の高い電力を含むことがあり得るシステム要求に見合った任意の範囲の電力を発生させることができる。したがって、流体圧縮18は、機械力14が流体入力16を使用した結果として起こる。流体圧縮18は、1つまたは複数のサイクルで行うことができ、当技術分野で公知のように、ポンプおよび熱交換器を介して段間で冷却を行うことができる。冷却は、圧縮流体と冷却用流体との間の直接接触を通じて行うこともできる。流体圧縮18からの流体は、流体入力22を介して圧縮流体貯蔵器20に送られる。また、圧縮流体貯蔵器20は、バラストとして堆積物を使用して、湖、(自然の、または人工の)貯水池、または海などの水域内で、かつ流体を圧縮し、後で膨張させるために貯蔵することができる水深で安定することができるバッグ、または他の共形流体格納装置とすることができる。したがって、流体塊が、流体の量に応じて、かつ水域内の水深に応じてほぼ等圧で貯蔵される。
【0022】
流体貯蔵バッグまたはチューブは50℃と見積もることができる。本発明の実施形態による1つのコンプレッサ構造では、圧縮熱は回収および貯蔵され、膨張機から流体ホースに入る流体の予測される出口温度は、水温よりも約5.5℃だけ高い。周囲水だけを使用して圧縮段を冷却し、最終段後に熱交換器がない場合、流体ホースに入る流体の温度は周囲温度を30℃超えることがある、言い換えると、海面温度が15℃の場合に45℃を超えることがある。何らかの理由でチューブ温度限界を超える場合、温度アラームによりコンプレッサを停止することができる。1つまたは複数の温度センサをCAESシステムの流体貯蔵チューブの長手方向に配置することができ、それにより、流体貯蔵チューブの温度を観測することができる。例えば、温度アラームは、温度限界に達したか、または超えたことをシステムオペレータに知らせることができる。さらに、システムコンプレッサに対するアラームシャットダウンにより、コンプレッサは、影響を受ける流体チューブに圧縮流体を供給するのを止めて、流体貯蔵チューブ、または影響を受ける流体貯蔵チューブに接続された流体ホースの損傷を軽減するか、または防止することができる。バッグは、可変容積構造により一定の圧力を受け、したがって、バッグ内でのさらなる加熱は起こらない。
【0023】
貯蔵されたエネルギをシステム10から引き出すのが望ましい場合、流体出力24を介して圧縮流体貯蔵器20から圧縮流体を引き出すことができ、流体膨張26が起こる。当技術分野で公知のように、流体膨張26により利用可能なエネルギが得られ、利用可能なエネルギは、例えば、機械装置に送ることができ、機械装置は、発電30用の機械力28を抽出することができ、発電30は、配電網、または電力を送電するのが望ましい他の装置に送ることができる。排出流体32は、一般標準の圧力または周囲圧力で環境に放出される。本発明の実施形態では、機械力28は、例として、Wankelタイプの膨張機から発生させることができる。さらに、説明するように、流体圧縮18用の機械力14と流体膨張26から得られる機械力28とは、同じ装置(すなわち、圧縮/膨張装置または「C/E」装置)によるか、またはシステム10内の異なる、もしくは分離した装置を介したものとすることができる。
【0024】
原則的には、C/Eは、等温運転、断熱運転、またはそれらの組み合わせで使用することができる。別の例では、別個の熱交換器を使用せず、熱貯蔵器を使用しないC/Eを実装することができる。当技術分野で公知のように、流体が圧縮されると流体は熱くなり、流体が膨張すると流体は冷える。したがって、本発明の実施形態は、流体圧縮18からの流体を冷却する強制対流冷却34と、流体膨張26からの流体を加熱する強制対流加熱36とを含む。流体貯蔵は、概ね周囲の温度および圧力で(すなわち、説明したように水域内の深部で)行われるため、流体圧縮18用の冷却34も流体膨張26後の加熱36もシステム10を囲む大量の流体(すなわち、湖水または海水)を使用して行うことができる。したがって、システム10は、一部の実施形態において、圧縮段階中に流体を周囲の近くまで冷却し、膨張段階中に流体を周囲の近くまで加熱する概ね等温の様式で動作することができる。他の実施形態では、システム10は、圧縮からのエネルギが制御された熱伝達プロセスを経て熱貯蔵タンクに貯蔵され、さらに、膨張後に流体を加熱するエネルギが、貯蔵タンクに貯蔵されたエネルギから引き出される、周囲の環境との熱交換が比較的少ない概ね断熱の様式で動作することができる。そのような方式では、システムには、圧縮流体の顕熱を調整、または回収する方法が含まれる。もっとも、当技術分野ではよく知られているように、どちらの場合も、ポンプおよび熱交換器を使用して、システム内の所望の位置で冷却することができる。
【0025】
さらに別の実施形態では、流体圧縮18からのエネルギがそれ自体貯蔵されるのではなくて、水面温度と深部の温度との間の自然の温度差を利用して、水がシステム10に選択的に引き込まれる。そのような実施形態では、流体圧縮18中に深部(すなわち、水面よりも十分に下の部分)から得られた比較的冷たい水を使用して冷却34を行うことができ、流体膨張26中に水面に近い部分から得られた比較的温かい水を使用して加熱36を行うことができる。この様式でこの温度差を利用することは、実際上、エネルギ貯蔵サイクルに熱エンジンサイクルを加えることであり、したがって、水域からの熱エネルギ入力により、保存されたエネルギよりも多くのエネルギが抽出されると考えられる。
【0026】
システム10は、システム10の構成要素に制御可能に接続できるコントローラまたはコンピュータ38を含む。
【0027】
ここで図2を参照すると、複数の、図1のシステム10などのシステムを本発明の実施形態に従って配置することができる。さらなる図を参照して下記にさらに詳細に説明するように、各システム10は、一体の、または双方向のコンプレッサ/膨張機(C/E)ユニットを含むことができ、コンプレッサ/膨張機ユニットは、水域の水面よりも十分に下に配置された流体貯蔵チューブアセンブリに接続されている。各C/Eは、エネルギ源および発電機に接続されている。エネルギ源は、風力もしくは波力などの再生可能資源とするか、またはエネルギを配電網もしくは太陽電池アレイなどの再生可能資源から引き出すモータとして動作する発電機自体から得ることができる。
【0028】
したがって、図2は、図1、ならびに次の図およびイラストに示すようなシステム10を複数有する全システム50を示している。各システム10は、動力入力54を有するように構成され、さらに、発電機56(またはモータ/発電機)に連結されたC/E52を含む。各発電機56は、それぞれの電力出力58を有するように構成されている。一実施形態では、各電力出力58は、負荷または電力系統に個別に接続されるが、示したような別の実施形態では、2つ以上の発電機56からの複数の電力出力58を統合して、統合した電力出力60を負荷または電力系統に出力することができる。
【0029】
各C/E52は、流体貯蔵チューブアセンブリ62に接続され、流体貯蔵チューブアセンブリ62は、さらに説明するように、深部に配置され、それぞれのC/E52から圧縮流体を受け取るように構成されている。本発明の実施形態によれば、各C/E52は、チューブまたはパイプ64を介して複数の流体所蔵チューブアセンブリ62に接続することができる。したがって、単一のC/E52は、多数の流体貯蔵アセンブリ62に接続することができ、例として、搬送管の数量と、流体貯蔵チューブアセンブリ62が配置される地形とによって限定されることがある。全システム50の動作は、コンピュータまたはコントローラ66によって制御することができ、当業者には、各システム10が、全体にわたって分布する制御弁、圧力センサ、温度センサなどを含むことができると分かるであろう。コントローラ66は、動力が動力源から入手できる場合に、流体を加圧し、加圧流体をC/E52、すなわち加圧段から流体貯蔵チューブアセンブリ62に進ませ、動力が流体貯蔵チューブアセンブリ62から引き出されるのが選択として望ましい場合に、加圧流体を流体貯蔵チューブアセンブリ62からC/E52、すなわち膨張段に進ませ、加圧流体を膨張させるように構成されている。
【0030】
したがって、全システム50は、複数のシステム10を有するモジュールの方式で配置することができる(図2にはシステム10が2つだけ示されている)。結果的に、このモジュール方式により、システムの一部が作動を停止し、一方、システムの残りの部分は運転を続けるのを可能にすることで、システムの障害許容力と、現場において最小限の全システム中断時間でユニットを交換する能力とが付与される。モジュール方式はまた、別のシステムが異なるモードで同時に動作する(すなわち、一方のシステムがエネルギを収集/貯蔵し、他方が動力を発生させる)のを可能にする。したがって、図2に示すように、複数のCEが連動してモジュール式を可能にする。また、例えば、個々の流体貯蔵チューブアセンブリ62をそのそれぞれのC/E52から切り離す、または分離することができる方式で各システム10を制御することができる。結果として、運転中に、個々のシステム10または個々の特定のシステム10の構成要素を、障害解決、修理、または定期保守のために運転から外すことができる。したがって、点検のために全システム50を停止する必要がないことから、モジュール方式によって点検が容易になり、全体的な信頼性が高まる。
【0031】
さらに、全システム50がモジュール方式であるため、運転中に、さらなるシステム10を全システム50に漸次追加するか、またはさらなる貯蔵器を各システム10に追加することができる。したがって、電力需要は長い間に変わる(すなわち、所与の配電領域での人口増加または人口減少)ため、図2に示すものと同じモジュールの方式で、長期にわたり、システム要求の変化に合わせて動力および/または貯蔵容量を追加したり、あるいは取り除いたりすることができる。したがって、モジュールシステムは拡張可能であり、全システムの中断時間および運転に及ぼす影響を最小限にして、他のシステムを構築し、稼働させることができる。
【0032】
さらに、全システム50のシステム10は、互いから切り離した方式で同時に運転することができる。例えば、一連のシステム10の一部では、システム10の1つが強い風を受けることがあり、したがって、圧縮モードで運転されて、そのそれぞれの流体貯蔵チューブアセンブリ62にエネルギを貯蔵することができる。一方、それと同時に、システム10の別の1つが風をほとんど受けないか、または全く受けない領域に存在することがあり、したがって、膨張モードで運転されて、そのそれぞれの流体貯蔵チューブアセンブリ62からエネルギを引き出すことができる。
【0033】
したがって、全システム50は、複数の運転モードを可能にする自由度の高い方式で運転することができ、さらに、全システム50を停止する必要なしに、保守、修理、および作業のために全システムの一部を一時的に停止するか、または永続的に運用から外すことを可能にするようにモジュールの方式で構成することができる。
【0034】
さらに、全システム50の構成および動作は、決して所与の例に限定されるものではない。例えば、風力エネルギの代わりに、システム10は、さらなる例として、波エネルギ源または水流源に接続することができる。システム10は、それぞれ複数のC/E52を使用してもよく、C/E52が、それらの間で流体貯蔵器を共有するように構成されてもよい。したがって、一例では、一方のシステム10の1つのC/E70を他方のシステムの流体貯蔵チューブアセンブリ72と別々に接続するように補助搬送管68を配置および構成することができる。そのような方式では、例えば、1つのC/E70の修理または保守中に、流体貯蔵チューブアセンブリ72の貯蔵容量を使用することができる。さらに、搬送管68に例が示されるように、経路の変更により、モジュール性と、システムの障害許容力と、動力容量の漸次拡張性と、C/Eユニットの現場交換性と、一方のC/Eを圧縮モードで、他方のC/Eを膨張モードで運転できることとを含むさらなる利点を得るための複数のC/E52、70の協同使用が可能になる。これらの利点により、グレースフルデグラデーションと、システム全体の単一障害点がないことと、動力要求および貯蔵要求が大きくなったときに容量を追加する適応性とを備えたシステムが得られる。経路の変更はまた、原動機(例として、風力発電機、(例えば、「ソルターカム式波力発電装置」を介する)波力発電機、流力発電機、潮力発電機、および海洋温度差発電機など)からの動力が、流体を圧縮する第1のC/Eを通過し、任意選択で貯蔵され、膨張モードで第2のC/Eを通過し、配電網用の電力を発生させる貫流運転モードを可能にする。そのような実施形態は、システムの立ち上げおよび立ち下げ時間をなくし、遅延することなく、要求に応じてすぐにでも動力を取り込み、動力を送出する待機運転モードを可能にする。
【0035】
ここで図3を参照すると、海に配置されたシステム10の基本構成要素が示されている。システム10の構成要素は、水面に近いプラットフォーム98に配置することができる。したがって、図3は、海100および海底102を示している。海100には、海洋、湖、またはダムを設けた川などにある貯水池が含まれ、この実施形態およびすべての実施形態では、海100は、いかなる特定の水域にも限定されない。システム10は、標準的な深さ106に配置された可撓性の流体バッグまたは流体バッグアセンブリ104と、発電機110に連結された単方向または双方向流体圧力変換装置、またはコンプレッサ/膨張機(C/E)108と、熱伝達システム(図1を参照して説明したポンプおよび熱交換器は図示されていない)とを含む。C/E108は、複数の膨張および圧縮段を含むことができ、熱交換器一式(図示せず)は、圧縮段間または膨張段間で流体をそれぞれ冷却または再加熱することができる。加圧流体を搬送するチューブが循環水中に浸されるか、またはより一般的には、フィン付きチューブの内部を流れる加圧流体が、内部のフィン付きチューブ熱交換器を通り過ぎる。システム10は、実質的に、ほぼ等温または断熱モードで動作するように構成することができる。
【0036】
図3のシステム10は、それらに限定されるものではないが、制御システム、コンピュータ、およびシステム10の構成要素を機械的に連結する1つまたは複数のクラッチなどの他の装置を含むことができると当業者には分かるであろう。バッグ104はバラストを積まれているため、膨張したときも水面に浮かぶことはない。
【0037】
流体ホースまたはパイプ、あるいは加圧流体搬送システム112は、海100の水面で、または水面近くで流体貯蔵バッグアセンブリ104をC/E108に接続する。C/E108は、一実施形態では、風力タービンが使用するのと同じ発電機である発電機110にクラッチを用いて連結される(図4を参照のこと)。発電機110は、エネルギを貯蔵するときに、コンプレッサモードのC/E108を駆動するモータとして良好に機能することができる、すなわち、風が吹いている場合に、発電機110に風力を導入することができる。したがって、例えば、配電網のピーク需要期間中など、システムからの最大電力が望まれる場合、貯蔵した流体がC/E108を通って膨張し、発電機110へのトルクが増大する。実施形態では、発電機110はA/C(交流)発電機であり、他の実施形態では、発電機110はDC(直流)発電機である。
【0038】
送電線間の変換ステーションにコストがかかるために、DC送電が陸上での送電に使用されることは多くない。しかし、DC送電線の効率は、特に塩水中で、A/C線よりも高くすることができる。DC送電の他の利点として、より明瞭な電力流れ解析と、DC線によって接続された、独立した配電網セクション間を同期させる必要がないこととがある。送電線の静電容量に起因して、送電線が水中に延びる場合にDC送電のさらなる利益を得ることができる。したがって、今日、多くのDC送電システムが存在している。
【0039】
C/E108は、流体を圧縮することも膨張させることもできる。一実施形態では、C/E108は、仕事が入力された場合に流体を圧縮し、仕事を取り出すために流体を膨張させることができる単一の構成要素である。そのような実施形態では、単一の流体ホースまたはパイプ12が流体貯蔵チューブアセンブリ104とC/E108との間に配置され、流体は、流体ホースまたはパイプ112を使用して流体貯蔵チューブアセンブリ104に送り込まれ、これから引き出される。したがって、動力がC/E108に入力される(114)と、C/E108は流体を圧縮するように動作し、流体ホースまたはパイプ112を介して圧縮流体を流体貯蔵チューブアセンブリ104に送り、その中にエネルギを貯蔵する。動力114は、風、波動、潮汐運動などの再生可能資源を介して供給されてよく、または、例えば、配電網からエネルギを引き出すことができるモータとして運転される発電機110を介して供給されてもよい。また、C/E108は、圧縮および貯蔵されたエネルギを流体ホースまたはパイプ112を介して流体貯蔵チューブアセンブリ104から引き出すことで逆回りに動作することができる。したがって、その運動を反転させることで、C/E108は、動作または回転の方向に基づいて、流体を二者択一的に圧縮するか、または膨張させることができる。一実施形態では、発電機110は電力を供給することに留意されたい。あるいは、発電機110を使用することなく、膨張機から直接機械力を利用することができる。
【0040】
一方、別の実施形態では、C/E108の圧縮機能と膨張機能とは分離される。この実施形態では、膨張機116は、流体ホースまたはパイプ112を介して流体貯蔵チューブアセンブリ104に接続され、コンプレッサ118は、同じ流体ホース112、または、それに代えて、別の流体ホース、パイプ、もしくはパイプシステム120を介して流体貯蔵チューブアセンブリ104に接続される。したがって、この実施形態では、動力は、例えば、圧縮流体を流体貯蔵チューブアセンブリ104に間欠的に供給できる再生可能エネルギ源から、別の流体ホースまたはパイプ120を介して、コンプレッサ118に入力する(114)ことができる。この実施形態では、エネルギは、流体貯蔵チューブアセンブリ104から流体ホースまたはパイプ112を介して膨張機116に同時に引き出すことができる。したがって、動力の貯蔵および引出しを同時に行うシステムの柔軟性をもたらすが、この実施形態は、分離したコンプレッサ118および膨張機116(さらなるコンプレッサおよび膨張機は図示せず)を有するだけの費用をかけてそのようにする。
【0041】
ここで図4を参照すると、陸上に配置されたシステム10の基本構成要素が示されている。図3のシステム10とほぼ同様に、図4のシステム10は、配電網、1つまたは複数の再生可能エネルギシステム、またはその両方から動力を受け取ることができる。このシステムはまた、C/E装置で圧縮されたエネルギを水中の等圧流体貯蔵バッグまたはチューブアセンブリに貯蔵し、やはりC/E装置を介して流体貯蔵チューブアセンブリからエネルギを抽出することができる。システムは、等温または断熱モードで動作するように構成可能である。
【0042】
水面からバッグまでの流体流路が剛性であるべきか、または可撓性であるべきかの重要な因子は、水面ユニットが浮動しているか、または海底に固定されているかである。より深い水深では、多くのRE収集方式は、浮動および錨留めベースを使用する。そのため、風または波の方向が変わった場合、ベースの位置は、係留索が新たな方向で張った状態になるまで移動する。
【0043】
剛性流体パイプは、沖合海事産業で一般的に使用される直径を有する単なる鋼製パイプとすることができるため、通常あまり高価でない。深い、または長いパイプにするために現場継手(現場継手は製造場ではなく現場で連結される)が必要とされるため、展開技術が若干必要とされることがある。可撓性ホースは、より容易に岸で完全に組み立てられ、より容易に配置されるが、より複雑で費用のかかる構造を必要とする。そのようなホースは、一実施形態において、圧力負荷を担持する、金属またはガラス繊維のような高強度材料からなる編組の被覆を備えた流体シールを形成する比較的可撓性のライナを有する。2.5MWのC/Eユニット(海上風力タービンと同様の容量)用のこれらのホースの直径は、一実施形態では、100mの深度にあるバッグに対して直径を約28cm(11インチ)とすることができ、110万パスカル(165PSI)の動作圧力を有する。海上プラットフォームは、浮動する係留プラットフォームと、底部堆積物への「剛性」連結体(例えば、ドリルシャフト)とに対応するため、可撓性ホースは、厳密には、そのような係留プラットフォームに必要とされない。パイプの全長にわたる偏向歪みは、パイプの構造上の性能の限界内にうまく収まることができる。また、内部流体と外部圧力との間の圧力差は、深度とともに変わることに留意されたい。パイプ/ホースの底部付近では圧力差は小さく、これが、薄いプラスチックバッグが海底で加圧流体を保持できる理由であり、可撓性の全く補強されていないホースをバッグの近くで使用でき、剛性の単純なパイプを上側部分で使用できる複合型の、または組み合わせの問題解決策を示唆している。
【0044】
図4は、圧縮流体の移送用および貯蔵用以外の構成要素が陸地122に配置されたシステム10を示している。したがって、このシステムでは、海上での設定および運転に関連するコストをなくすことで資本費を削減することができる。しかし、100フィートまたはさらに深い水中での運転が望ましい場合に、運転場所がより限定されることがある。したがって、そのような望ましい深さに達するために、より長い距離にわたって加圧流体を搬送することが必要であり得る。さらに、多くの場合、環境上、美観上、および他の理由からRE動力システムを人口集中地域から十分に離れて配置することが望ましい。さらに、風力などの再生可能エネルギは通常、陸の形状物および他の風障害物から距離を置いた位置ではるかに大きな動力を供給する。そういうものとして、図4は、本発明の実施形態による、陸上で動作するように構成されたシステム10を示している。図4のシステム10は、上記した図1〜3の要素を組み込むことができる。一実施形態では、双方向C/E108は、流体ホースまたはパイプ112を通して流体を貯蔵器まで進ませる圧縮段階中に第1の回転方向126に動作して、第1の流れ方向で流体を圧縮するように構成されたシャフト124を含む。この実施形態では、C/E108のシャフト124は、貯蔵器からの流体を膨張させ、その流体を第2の流れ方向132でC/E108に通すことで、第1の回転方向126と反対の第2の回転方向130で動作することができる。クラッチ134は、この実施形態では、シャフト124を発電機110に連結して、発電機110による貯蔵器からのエネルギの抽出を可能にし、動力が、発電機110以外の動力源によってC/E108に入力される場合に、発電機110を切り離す。また、図4を参照すると、双方向運転が示されているが、当然ながら、本明細書に開示したすべてのシステムは、単方向にも良好に構成することができる。
【0045】
図5は、本発明の実施形態による、海底142に配置された流体貯蔵チューブアセンブリ140を示している。このタイプの配置は、拘束力として静水圧を使用することで、容器構造部を最小限にすることができ、海が等温運転用のヒートシンクになる。図5の流体貯蔵チューブアセンブリ140は、複数の流体容器、チューブ、またはバッグ144を有するように示されているが、流体貯蔵チューブアセンブリ140は、バッグ144を1つだけ有してもよい。流体バッグ144は、海底堆積物146を流体貯蔵バッグ144の内部に置くことで安定するため、膨らんだ場合に浮き上がることはない。バッグ144は、レベルが同じでないバッグ、すなわち、均一でないバラスト敷設に対して上乗せ分の安定余裕をもたらし、流体を海水およびバラスト材料から分離する特別な特徴を有する。一実施形態では、バッグの断面積の約半分は、沈泥または堆積物146で満たされる。
【0046】
図5に示すように、流体貯蔵容器144は、平行な列をなして配置することができ、複数のバッグ144が、流体貯蔵チューブアセンブリ140を構成することができる。一実施形態では、アセンブリ140の流体貯蔵チューブ144は、流体貯蔵チューブアセンブリ140に出入りする圧縮流体が、すべての流体貯蔵チューブの間で分割され得るように、平行な配列で流体的にまたは空気的に互いに接続される。図5、図6、および図7を参照すると、流体貯蔵チューブ144は、バラストがむき出しになったバラストバッグ150の内側に流体チャンバ148を含み、テーパの付いた端部152を含む。実施形態では、流体チャンバ148は、バラストバッグ150に対して開放することができるし、またはバラストバッグ150に対して閉じることもできる。テーパの付いた端部152により、バッグ150のバラスト敷設部が、圧縮流体を収容する流体チャンバ148を越えて延びるのが可能になる。テーパ付き端部152は、端部キャップ154とともに堆積物バラストの減少を抑制するのに寄与する。流体貯蔵チューブ144の反対側の端部も同様に水流に対して開放され、テーパが付いてもよく、または本明細書で説明するように閉じられてもよい。
【0047】
水中流体貯蔵容器144は、予測される構造負荷に対応し、長年の海底耐久性を有しながら、相当する鋼および複合材の圧力容器よりもはるかに低コストで構築されるように設計される。図8は、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブを構築するために使用される材料の例を示している。図8は必ずしも一定の縮尺で示されていない。本明細書で説明する流体貯蔵チューブは、両側の一般的な熱可塑性材料層160内に(例えば、熱間圧延などによって)、例えば、繊維158が約55%封入された繊維強化ポリマーマトリクス156とされるフィルムまたは壁材で構築することができる。そのようなマトリクス156構造体は、例えば、約0.14mm(0.055インチ)の厚さとすることができる。このタイプのマトリクス156は、薄く、安価で、拡張可能であり、非常に頑強な海洋用途の容器を可能にする。熱可塑性材料160は、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、またはポリエステル、さらにはフッ素重合体などのプラスチックとすることができる。他の材料も考えられる。材料は、混合材料プラスチック、または使用もしくは運転から外された流体貯蔵チューブからのリサイクルプラスチックで作ることもでき、そのような流体貯蔵チューブは、取り外した流体貯蔵チューブが設置現場に全く残らないように設備から取り外される。他のリサイクル可能なプラスチック資源も考えられる。
【0048】
繊維158は、例えば、ガラス、炭素、または金属繊維などの材料から構築することができ、方向性をもつ複合積層板の中で向きを合わされ、その方向は、例として、主応力の1つまたは複数の方向と一致することができる。例えば、ガラス繊維は非常に高価であり、通常、長期間の水浸に対する耐性が非常に高い。ガラス繊維はまた、特に、その耐久性、信頼性、長寿命性、海洋環境に対する適合性、および塩水に対する耐性のために、海洋産業で幅広く使用されている。様々なタイプのガラス繊維はそれぞれ、異なる用途でそれら独自の利点を有する。一例では、ガラス繊維は、引張り強度に対して最適化できる比較的高価なS−2ガラス材料とすることができる。別の例では、ガラス繊維は、E−ガラス材料とすることができる。
【0049】
繊維158は、複合材容器144の重要な構造要素である。繊維の引張り強度は、使用される熱可塑性マトリクスよりも100倍程度高くなり得る。繊維の張力は、堆積物バラストの重量とともに流体の浮力に対抗し、そして、容器内に接線方向の応力が発生する。これらの張力は、チューブの直径のまわりに担持されさえすればよい。したがって、直径が数メートルのチューブは、何百メートルの長さであっても、数メートルの距離にわたって応力を受ける。この応力の局所化により、薄く、コスト効率の高い繊維入りポリマーマトリクスが可能になり、その一方で、それでもなお、何千トンものバラストおよび浮力を単一のチューブ内に保持する。使用される任意の繊維材料に対して、その構造は海水から繊維158を保護する。プラスチックのみで材料強度を得ようとすると、製造コストが大幅に上がり、結果として得られた厚さでは十分な可撓性がない。
【0050】
実際に海水に触れる繊維強化熱可塑性ポリマーマトリクス156のマトリクス材料は、海水環境で広範に使用されている。繊維158は、繊維強化熱可塑性ポリマーマトリクス156に埋め込まれ、次いで、繊維158を完全に封入するために上部162および底部164に薄板を積層されるため、通常の条件下では海水に直接触れない。外側薄板162、164の材料は通常、繊維158を完全に封入する薄い「表面板」の熱可塑性材料160と同じである。
【0051】
各流体貯蔵チューブ144の重要な機能は、内部の圧縮流体用の蒸気バリアまたは物理的分離バリヤを提供することである。流体貯蔵チューブ144の壁を通じて流体を外部環境に送り出す圧力差は通常非常に小さい。すなわち、流体は流体力学的平衡状態で貯蔵されるため、流体を薄膜156から押し出す圧力差は非常に小さい。流体貯蔵チューブ144は、長年にわたって塩水中で安定し、深水部に見られる凍結温度近くで可撓性を有し、製造および配置コストが安くなるように設計される。
【0052】
繊維強化ポリマーマトリクス156材料はまた、修復可能なように設計される。例えば、穴または裂け目が材料156にできた場合、穴のまわりの材料156を再接合するか、または同じ材料のパッチもしくは穴のまわりの材料に貼り付け可能な別のパッチを張り付けることにより応急処置を施すことができる。深部に配置されている場合、そのようなパッチは、ダイバーではなく、遠隔操作車両によって施すことができる。
【0053】
図9は、本発明の実施形態によるチューブ作製技術を示している。非常に長いバッグ144は、螺旋溶着技術を使用して単一シートのガラス強化プラスチック156から作製することができる。ガラス強化プラスチックからなる1枚の連続するシートを、螺旋パターンで、またはチューブを形成する方向に、縁部間で重ね溶着する螺旋溶着技術を使用して、任意の長さおよび任意の直径の流体貯蔵チューブを構築することができる。直径は、流体貯蔵チューブ材料の応力との相関関係に基づいて前もって求めることができる。封入されたマトリクス内の強度の高い繊維158は通常一軸繊維であり、製造プロセス時に、中心または軸方向のチューブ軸168に沿うのではなく、製造されるチューブの円周方向またはθ方向166に沿ってより接近して配置されるという意味で、封入されたマトリクス内で向きを合わされる。例えば、繊維158は、中心円筒軸に対して実質的に平行な方向よりも、実質的に円筒状チューブ軸のまわりのθ方向により高い強度が得られるように配置される。この様式で、繊維158は通常、円筒の輪のまわりに円周方向に延びており、そのため、非常に大きい曲げ半径を有する。これは、環状構成のより容易な配置を可能にする。
【0054】
さらに、主封入繊維158を補助する軸方向繊維170をむしろ流体貯蔵チューブ144の長軸168に平行な方向に向け、円筒軸に沿った二次応力方向168の二次応力を調整する助けとすることができる。
【0055】
図10では、本発明の実施形態による流体貯蔵チューブ144を配置する技術が示されている。流体貯蔵チューブ144は、水よりもはるかに重くすることができるスプールアセンブリ172に巻き取られる。配置する場合、流体ホース112および浚渫機174がホース176を介して流体貯蔵チューブ144の端部に取り付けられる。浚渫機174および流体貯蔵チューブ144が海底に配置されると、浚渫機174は、海底から堆積物と水との混合物を取り出し、堆積混合物を流体貯蔵チューブ144に導入するように制御され、これにより、流体貯蔵チューブ144がスプールアセンブリ172から展開される。チューブ144が堆積混合物で十分に膨らむと、チューブ144の内部の堆積物は、チューブ144の底部に沈降して、チューブ144を海底に維持するバラストを形成することができ、浚渫機174への接続が解除される。さらに、流体ホース112が、例えば、図2〜4に示すようなシステムのコンプレッサ/膨張機に接続される。代替の実施形態では、スプール172が巻きを解かれると、チューブ144が遠端で開放されて、より多くの混合体がチューブ144の全長を貫流し、チューブ144の遠端から出ていくときに、より多くの浚渫材料がチューブ144を通り、チューブ内で沈降するのを可能にする。別の実施形態では、浚渫装置は、水面上に据えることができて、バッグの近くまたは遠くから堆積物を収集し、その堆積物を流体貯蔵容器に圧送し、水上で駆動されるモータまたはエンジンから動力を供給される。さらに別の実施形態では、流体ホース112および浚渫ホース176は、最初に浚渫材料用になり、後で圧縮可能流体用になる単一のチューブを含む。
【0056】
この様式で配置することは、配置コストを低く維持する助けとなる。配置は、ダイバーの必要性をなくすことができるように、水面から完全に行われるように設計される。そのような配置装置の組立は、水面において船のデッキで行うことができ、次いで、海底に配置することができる。流体貯蔵チューブ144は、スプールアセンブリ172に巻き取られ、解放可能に投下されるか、時限投下されるか、または当業者に公知のものと同様に投下されるかのいずれかである。図10は、流体貯蔵チューブ144の完全に閉じた端部を示しているが、本明細書に開示した端部キャップを有する流体バッグは、完全に展開されると(図示せず)、バッグの内部空間が、例えば、チューブ144の遠端でチューブ144の外の水と流体連通できるようにも企図される。
【0057】
図11〜14は、流体貯蔵チューブアセンブリ140を海底142に配置することを企図された本発明の実施形態を示している。図11に示すように、バラストがむき出しになった複数のバラストバック150が海底142の上に並んで配置されている。バッグ150は、例えば、図10に示した技術によって堆積物178を充填することができる。堆積物のみのバラストバッグ180は、端部にある流体バッグを支持して、断面形状の変形を最小限にするために、流体貯蔵チューブアセンブリ140の一端または両端に配置することができ、他の流体チューブにバラストを補給することもできる。
【0058】
図12は、むき出しのバラストが内部流体に暴露された状態で、並んで配置され、一部が海底142に埋め込まれた複数の閉じた流体チューブ150を示している。例えば、堆積物をチューブ150に導入するために使用される浚渫作業の一部として、図10を参照して説明した技術は、チューブ150が置かれるチャネル182を浚渫することを含むことができる。この場合に、スプールアセンブリ172からのチューブ150の展開には、形成されたチャネル182の中にチューブ150が置かれるようにチューブ150を展開することが含まれる。この様式で、チューブ150の堆積物部分の断面形状が海底142の近くで維持され、横方向に固定する別個のバラストバッグ180は必要とされない。図12の構成は、流体チューブ150の下の堆積物を漸進的に移動させ、流体チューブ150を海底142の中に沈ませることにより得ることもできる。
【0059】
図13および図14は、図11および図12に示すバッグ150と同様の構成で、バラストが閉じ込められたバラストバッグ184の横に並んだ配置を示している。バラストが閉じ込められたバラストバッグ184は、薄膜190によって流体またはドーム部分188から遮断された堆積物部分186を含む。流体部分188から遮断された堆積物部分186を有する場合、埋め込まれない設置において、バッグ184の緊張を利用してバラストの形状の平坦化または変化を最小限にする。また、堆積物部分186を遮断することで、加圧流体が流体部分188に出入りするときにバラストの減少が最小限になる。流体貯蔵容器の形状は、圧縮流体部が海水から切り離されてもそうでなくても変わる。近くの水は、水が容器壁の内側にあるか、または外側にあるかによって、その位置と、結果として生じるバッグに作用する応力とを様々な形で調整する。(水が容器内にある、または容器内にない)どちらの実施形態とも実用的である。
【0060】
図15および図16は、本発明の実施形態による、海底の中に部分的に沈められた、バラストがむき出しのバラストバック150の流体部分またはドーム部分における、貯蔵された圧縮流体塊の様々な充填レベルに対する表面積の変化を示している。図16は、図15に示すバッグの末端を圧縮流体および水の様々な充填レベルで示している。端部キャップ154は、バッグ150のドーム194内の圧縮流体の量の変化に応じて、水および流体がバッグ開口192を通過するように設計されている。圧縮流体196は、流体ホース112を介してチューブ150に流入し、水198は、チューブ150の外に移動する。チューブ150内の圧縮流体196の量により、圧縮流体196が末端キャップ154の底部に達した場合、圧縮流体196は、バッグ開口192を通って外部環境の水中に放出される。チューブ150内の圧縮流体の量が減少すると、水198が末端キャップ154の下から流入し、圧縮流体196塊と置き換わる。また、余分な圧縮流体196もバッグ開口192から出ることができる。
【0061】
バッグ開口192の大きさは(バッグの長手方向の任意の角度の付いた斜面とともに)ドーム194が保持できる圧縮流体196の量を求めるのに役立つ。バッグ150の末端200は、その頭部端202よりも低い位置に設置することができる。図15および図16に示すように、1つには、バッグ150に作用する水圧と、バッグ150の壁が折れ曲がるのを回避する傾向があることとに起因して、貯蔵される圧縮流体196の量が増えてもバッグ150の表面積は大きく増大しない。流体貯蔵バッグ150は、堆積物178、水198、および圧縮流体196を収容する。圧縮流体の量が増加すると、水量は減少し、そのため、より多くの圧縮流体196がバック150内にある状態でバッグ150が形状を若干変化させるときに起こる容積変化を除いて、表面積または総容積はほとんど変化しない。バッグがさらに膨らむとともに、バッグ内の圧縮流体196の量は増えるが、バッグ150の表面積はほとんど変化しない。
【0062】
内部の流体196の量が変化すると、バッグ150は曲がるが、通常、最小および最大膨張時でも鋭利な折り目または曲がりはない。結果的に、流体チューブ150は可撓性であるが、流体196が流体チューブから取り出されたときにつぶれることはない。これらの特徴は、浸食および生物汚染剥離の主要問題となり得る折り目を回避するのに寄与する。
【0063】
図15はまた、動的な不安定性を軽減するために、バッグ150の堆積物部分にバッグ150の全長に沿って配置できる1つまたは複数の隔壁204を示している。隔壁204は、堆積物178を複数の領域に分割して、流体貯蔵チューブ150の一端から他端への堆積物178の移動を抑制するか、またはなくす。この手法は、堆積物178の長手方向の移動を最小限にする。隔壁204は、ポリマー、繊維、セメント、コンクリート、または当技術分野で公知の他の材料を含むことができる。
【0064】
隔壁204は、バッグまたは流体貯蔵チューブ150の壁に取り付けられてもよく、または隔壁の質量および/または近くの堆積物178の質量によって所定の位置に保持されてもよい。
【0065】
図17は、末端キャップ154に連結され、バッグ150の上部でドーム194に連結された複数のガセット206を示している。配置するために巻き取られた場合に、ガセット206により、ドーム形状部が容器150の上部に折り重なるのが可能になり、展開された場合に、ドーム194がこれらのガセット206によって支持される。
【0066】
図18は、本発明の実施形態による、図15に示すバッグ150の頭部端202を示している。示すように、流体ホース112は、圧縮流体の入口と出口との境界面および流体ホースがドーム194の頭部端202に存在するように、バッグ150の閉じた頭部端202に挿入しながら取り付けられる。閉じた頭部端202は、例えば、重ね溶着または当技術分野で公知の他の技術を使用して組み立てられて、バッグ150内の圧縮流体の量が少ない場合にしわまたは折り目ができないようなドームタイプの形状を形成する。
【0067】
一実施形態では、図15〜18の流体貯蔵チューブ150は、流体貯蔵チューブ150の末端200が頭部端202よりも高い水圧の位置に配置されるように、頭部から尾部に向かって、下り坂によって偏向させて配置することができる。環境が許す状況において、バッグの末端200は、斜面の若干下の方に置くことができる。バッグ150の末端200は、海水に開放された状態にしておくこともできる。バッグ150が膨張すると、水はバッグ150の尾部200から出ていき、それに対して、圧縮流体がバッグ150から抽出されると、水はチューブに再度流入して、バッグ全体の容積を維持する。全長500メートル、直径6mのバッグ144が2%の下り坂に置かれた場合、この幾何学的形態により、流出が始まる前に、流体バッグ144を85%満たすことが可能になる。このように、流体バッグ144は封止されるのではなくて、85%の膨張容積で流体静力学的に安定を保つ。バッグ144の上部は数psiをよりも大きい超過圧力を受けることはない。超過充填すると、バッグ144が破裂するのではなくて、安全な気泡が海面に浮かぶ。
【0068】
さらに、挿入/配置ツールが、バッグ144の末端200を他のバッグ部分よりも深く堆積物に挿入して、基本的に、流体容器144の最終部分に局所的な傾斜を生じさせる。そのため、傾斜が非常に浅い、または実質的に水平であるとしても、バッグ144のこの端部200にある流体−水境界線を上方に調整して、その境界を端部キャップ154の縁部から離れる方向に移動させることができる。この様式で、当技術分野で公知の家庭用排水管のPトラップに多少似た形状を有するように、端部200を成形することもできる。これは、水が、管理された形で流れるが、内部の流体を閉じ込めるのを可能にする。この実施形態では、端部200は、峡谷、溝、または他の窪みの下り坂に沿って設置することができる。一実施形態では、溝は流体バッグ144を配置する前に形成することができる。所望するならば、バッグ144に出入りする良好な水の流れを保証するために、さらなる形状を追加して、この陥没した端部200を通る水の通路を形成することができる。
【0069】
図19は、本発明の実施形態による流体チューブアセンブリ208の垂直偏向配置を示している。流体チューブアセンブリ208が、上り坂方向210を有する海底に配置されて示されている。中央流体ホース212は、概ね傾斜方向210に沿って配置され、流体チューブアセンブリ208の流体チューブ214は、複数の分岐ホース216を介して中央流体ホース212に接続されている。中央流体ホース212は、流体貯蔵チューブアセンブリ208を、例えば、図2〜4に示すようなシステムのコンプレッサ/膨張機に接続する。流体チューブ214は、上記の本発明の実施形態に従って構築することができ、封止された頭部端218および開放された末端220を有する。中央流体ホース212からの圧縮流体は頭部端218に流入し、頭部端218を通って中央流体ホース212に戻る。圧縮流体が頭部端218を通って流入することで、流体チューブ214内の圧縮流体の量が貯蔵容積を超える場合、余分な圧縮空気は周囲の水域に出ていくことができる。頭部端218よりも高い水圧の位置に(したがって、より深い水深に)流体チューブ214の末端220を配置して垂直偏向させることで、水平配置の流体チューブと比較して、(開放された末端の例において)より大量の圧縮流体を流体チューブ214に貯蔵することが可能になる。さらに、そのような杉綾模様で流体チューブ214を配置することで、貯蔵した圧縮流体をより大きい割合で回収し、電力を発生させるために使用することが可能になる。
【0070】
図20は、本発明の別の実施形態による、図19の流体チューブアセンブリ208の垂直偏向配置を示している。流体貯蔵チューブアセンブリ208が、一方の側の第1の上り坂方向222と、他方の側の第2の上り坂方向224とを有する海底尾根に配置されて示されている。この様式では、流体チューブ214の末端220は、頭部端218よりも高い水圧の位置に配置されている。さらに、各流体貯蔵チューブ214は、各流体貯蔵チューブ214を、例えば、図2〜4に示すシステムのコンプレッサ/膨張機に接続するために延びる専用の流体ホース226に接続されている。別の実施形態では、図20に示す流体貯蔵チューブアセンブリ208は、その代わりとして、図19を参照して上記に説明した中央流体ホースおよび分岐ホースを使用して、システムのコンプレッサ/膨張機に接続できることが企図される。さらに、図19に示す流体貯蔵チューブアセンブリ208は、図20を参照して説明した専用流体ホースを使用して、システムのコンプレッサ/膨張機に接続できることが企図される。
【0071】
この水中での本発明の実施形態は、地下のCAESよりも広範な潜在的用途を有する。本発明の実施形態は、ほぼすべての主要な沿岸人口密集地に近接する沖合に配置することができ、さらに、内陸の人口密集地に近接する湖および貯水池に配置することもできる。CAESシステムは通常、適切な地形の用地を含むが、そのような用地は、多くの主要な動力源、需要地、または送電線の近くで得られないことが多い。送電線の混雑および容量制限があるために、エネルギ貯蔵施設を需要地から遠く離れて配置することは実行不可能である。したがって、地下のCAESは地理的により限定され、配電網規模のエネルギ貯蔵のニーズに対して普遍的な問題解決策を提供する潜在的可能性がない。
【0072】
本発明の実施形態は、それらに限定するものではないが、従来の風力、波および海底タービンなどの水運動システム、ならびに海洋温度差発電(OTEC)システムを含む既存の海洋REシステムを用いた構造および運転を含む。ただし、本発明の実施形態はさらに、既存のREシステムを利用しない、遠く離れて海洋環境に配置できる独立型貯蔵システムを含む。
【0073】
さらに、REシステムの悪影響を低減するか、またはなくすために、一実施形態では、バッグは底生ゾーンに配置される。通常、底生ゾーンは、海洋または湖などの水域の、底生生物と呼ばれる生物が住む生態学的領域である。底生生物は通常、水域の底部または水底と緊密な関係で暮らし、底生生物の多くは永続的に底部に付着する。底生領域は海岸線で始まり、大陸棚の表面に沿って下方に延びる。大陸棚の縁部、通常約200メートルの水深で、海底に向かって深く延びる大陸斜面として周知の深い斜面が始まる。したがって、本発明の実施形態によれば、底生ゾーンであるが、光合成生物による生物付着を最小限にする、光合成が通常可能な深さより下にシステムを配置するのが望ましい。構築材料は通常非毒性である。海底のわずかな部分を貯蔵に割り当てて、底生生物に大きな生息地を提供し、その一方で、貯蔵容量の目的も達成する。
【0074】
CO2が作動流体を構成する場合、海水による大きな自由表面により、大量のCO2が海水に溶ける。深部でのそのような溶解には、大気からの人為起源の炭素の大部分の最終的な到着地である海洋深層水中にCO2ガスを隔離することが含まれる。海洋物理学に従事する同業者には、500メートル以上の深部の水は、例えば、地球の極に向かう横移流の影響、または安定した海水の密度勾配にわたっての垂直拡散の両方を原因として、通常何百年ものタイムスケールで水面に出現すると分かるであろう。そのようなタイムスケールは、カーボンクレジットの資格を得るための100年のU.N.F.C.C.C(気候変動に関する国際連合枠組条約)要件よりも長い。したがって、そのような手法は、この様式で深層水に溶けた一部のCO2に対するCO2隔離の有効な方法をなす。残りの部分はエネルギを回生するのに利用可能である。
【0075】
したがって、本発明の一実施形態によれば、圧縮流体貯蔵システムは、水域の水底に配置された流体格納容器を含み、流体格納容器は、容器を水底で安定させるために容器内に配置された堆積物を含む。
【0076】
本発明の別の実施形態によれば、圧縮流体貯蔵システムを配置する方法は、堆積混合物を可撓性の流体貯蔵バッグ内に圧送することを含み、堆積混合物は水域の水底から収集された堆積物を含む。方法はまた、堆積混合物が可撓性流体貯蔵バッグ内に積もって、堆積混合物からの堆積物が可撓性流体貯蔵バッグを水底で安定させることを可能にすることと、流体ホースを介して可撓性流体貯蔵バッグを圧縮ユニットに接続することとを含み、圧縮ユニットは、貯蔵するために、圧縮流体を可撓性流体貯蔵バッグに送るように構成される。
【0077】
本発明のさらに別の実施形態によれば、圧縮流体貯蔵システムは、水域の下の水底に配置された流体貯蔵システムを含み、流体貯蔵システムは、堆積物バラストを部分的に充填された複数の可撓性流体貯蔵チューブを含む。所定の量の流体を第1の圧力から、より高い第2の圧力に加圧するように構成された流体圧力変換システムが組み込まれる。システムはまた、流体圧力変換システムに接続され、流体圧力変換システムに所定の量の流体を加圧させるように構成された動力源と、流体圧力変換システムと流体貯蔵システムとの間で加圧流体を移動させるように構成された加圧流体搬送システムとを含む。
【0078】
本明細書は、最良のモードを含めて、例を使用して本発明を開示し、さらに、任意の装置またはシステムを作製および使用することと、任意の統合した方法を行うこととを含めて、すべての当業者が本発明を実施することを可能にする。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が思いつく他の例を含むことができる。そのような他の例が、特許請求の範囲の文字的言語と異なることのない構造要素を有する場合に、または特許請求の範囲の文字的言語と実質なく相違する等価の構造要素を含む場合に、そのような他の例は請求項の範囲内であるものとする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域の水底に配置された流体格納容器を含む圧縮流体貯蔵システムであって、前記流体格納容器が、前記水底で前記容器を安定させるために前記容器内に配置された堆積物を含むことを特徴とする圧縮流体貯蔵システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記流体格納容器は可撓性であることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記流体格納容器は、
所定の量の前記圧縮流体を収容するように構成されたドーム部分と、
前記ドーム部分が圧縮流体を充填された場合に、前記流体格納容器が前記水底に接したままであるように、所定の量の前記堆積物を収容するように構成された堆積物部分と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記ドーム部分は、前記流体格納容器の第1の端部に第1の端部キャップを含み、前記ドーム部分内に第1の量の前記圧縮流体を捕捉および貯蔵するように構成され、
前記圧縮流体が、前記ドーム部分の第1の端部から前記水域に放出され得るように、前記第1の端部キャップと前記堆積物部分との間のギャップにより、前記ドーム部分の前記第1の端部が前記水域に流体的に接続されることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記ドーム部分は、前記第1の端部と反対側の、前記流体格納容器の第2の端部に第2の端部キャップを含み、前記第2の端部キャップは、前記ドーム部分内の前記第1の量の前記圧縮流体を捕捉および貯蔵するように構成され、
前記圧縮流体が、前記流体格納容器の前記第1の端部から前記水域に放出され得るように、前記第2の端部キャップと前記堆積物部分との間のギャップにより、前記ドーム部分の第2の端部が前記水域に流体的に接続されることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記ドーム部分は、前記第1の端部と反対側の、前記流体格納容器の第2の端部に、封止された端部を含み、前記封止された端部は、前記第2の端部を前記水域から遮断するように構成されて、前記圧縮流体が、前記流体格納容器の前記第2の端部から前記水域に放出されるのを防止することを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、前記流体ホースは、前記流体格納容器の反対側の端部に配置された末端よりも、封止された頭部端に近接して前記流体格納容器に接続されることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムにおいて、前記流体格納容器の前記第1の端部は第1の水深に配置され、前記流体格納容器の前記第2の端部は第2の水深に配置され、前記第1の水深は、前記第2の水深よりも水圧が高いことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記第1の端部キャップおよび前記ドーム部分に連結された複数のガセットをさらに含み、前記複数のガセットはドーム部分を支持するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記堆積物部分は、堆積物のそれぞれの部分を収容し、1つの堆積物部分から他の堆積物部分への堆積物の流れを低減するように構成された複数の隔壁を含むことを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記堆積部分は、薄膜によって前記ドーム部分から分離されることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムにおいて、
圧縮流体を出力するように構築された圧縮ユニットと、
前記圧縮ユニットと前記流体格納容器とを接続し、前記圧縮ユニットと前記流体格納容器との間で前記圧縮流体を移動させるように構成された流体ホースと、
をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記流体ホースは、剛性ホース、可撓性ホース、ならびに剛性ホースおよび可撓性ホースの組み合わせのうちの1つを含むことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記流体格納容器は、繊維がポリマーマトリクス内に封入された材料で構築されることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、前記ポリマーマトリクスには、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、またはフッ素重合体のうちの1つまたは複数が含まれることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項14に記載のシステムにおいて、前記繊維には、ガラス、炭素、および金属のうちの1つが含まれることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項14に記載のシステムにおいて、前記材料は、繊維がチューブのまわりを螺旋方向に延びる流体貯蔵チューブを形成するのに、螺旋溶着でそれ自体に接合されることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムにおいて、前記流体格納容器の少なくとも1つの端部が、前記流体格納容器の中央部分に対して先細りになっていることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項17に記載のシステムにおいて、前記流体貯蔵チューブの端部部分の内径が、前記チューブの中央部分の内径よりも小さいことを特徴とするシステム。
【請求項20】
圧縮流体貯蔵システムを配置する方法であって、
堆積混合物を可撓性の流体貯蔵バッグ内に圧送し、前記堆積混合物は水域の水底から収集された堆積物を含むステップと、
前記堆積混合物が前記可撓性流体貯蔵バッグ内に積もって、前記堆積混合物からの堆積物が前記可撓性流体貯蔵バッグを前記水底で安定させることを可能にするステップと、
流体ホースを介して前記可撓性流体貯蔵バッグを圧縮ユニットに接続し、前記圧縮ユニットは、貯蔵するために、圧縮流体を前記可撓性流体貯蔵バッグに送るように構成されるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記可撓性流体貯蔵バッグをスプール上に巻くステップをさらに含み、
前記堆積混合物を前記可撓性流体貯蔵バッグに圧送するステップには、前記可撓性流体貯蔵バッグが前記堆積混合物により膨張し、前記スプールから巻きを解かれるように、前記流体バッグの内部空間に前記堆積混合物を充填することが含まれることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法において、前記水域の前記水底から堆積物および水を含む前記堆積混合物を浚渫により収集するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項20に記載の方法において、前記水底のチャネルを浚渫するステップをさらに含み、
前記堆積混合物を前記可撓性流体貯蔵バッグに圧送するステップには、前記可撓性流体バッグの堆積物部分が前記チャネル内に配置されるように、前記流体バッグの内部空間に前記堆積混合物を充填することが含まれることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法において、前記堆積混合物を圧送するステップには、前記堆積混合物を前記流体ホースを介して前記可撓性流体貯蔵バッグに圧送することが含まれることを特徴とする方法。
【請求項25】
圧力流体貯蔵システムであって、
水域の下の水底に配置され、堆積物バラストを部分的に充填された複数の可撓性流体貯蔵チューブを含む流体貯蔵システムと、
所定の量の流体を第1の圧力から、より高い第2の圧力に加圧するように構成された流体圧力変換システムと、
前記流体圧力変換システムに接続され、前記流体圧力変換システムに前記所定の量の流体を加圧させるように構成された動力源と、
前記流体圧力変換システムと前記流体貯蔵システムとの間で加圧流体を移動させるように構成された加圧流体搬送システムと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項25に記載のシステムにおいて、前記加圧流体搬送システムは、前記複数の可撓性流体貯蔵チューブを前記流体圧力変換システムに接続するように構成された複数の流体ホースを含むことを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項26に記載のシステムにおいて、前記複数の流体ホースは、
前記複数の可撓性流体貯蔵チューブのそれぞれの第1の端部に隣接して走る中央ホースと、
それぞれの可撓性流体貯蔵チューブの第1の端部を中央ホースにそれぞれが空気接続する複数の分岐ホースと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項27に記載のシステムにおいて、前記複数の可撓性流体貯蔵チューブのそれぞれの第2の端部が、それぞれの分岐ホースの水深よりも深い水深で配置されることを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項28に記載のシステムにおいて、前記複数の可撓性流体貯蔵チューブは杉綾模様に倣って配置されることを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項27に記載のシステムにおいて、前記複数の可撓性流体貯蔵チューブのそれぞれの前記第1の端部は、前記可撓性流体貯蔵チューブ内の加圧流体が前記第1の端部を通って周囲の水に流入するのを防止するように封止されることを特徴とするシステム。
【請求項31】
請求項25に記載のシステムにおいて、前記流体圧力変換システムは、電気エネルギを発生させるために、前記加圧した所定の量の流体を前記第2の圧力から前記第1の圧力に減圧するようにさらに構成されることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2013−506098(P2013−506098A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531030(P2012−531030)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/050023
【国際公開番号】WO2011/038131
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512072946)
【氏名又は名称原語表記】FRAZIER,Scott Raymond
【出願人】(512072946)
【氏名又は名称原語表記】FRAZIER,Scott Raymond
【出願人】(512072957)
【氏名又は名称原語表記】VON HERZEN,Brian
【Fターム(参考)】