説明

水中水力発電装置及び方法

本発明の実施形態は、河川、水路、又は海洋からの絶え間ない水流を利用することによって使用可能な電力を生成し、且つ効率的に絶えずその装置から電気エネルギーを生成するための装置に関する。一実施形態において、水中水力発電装置は、連続軌道を支えるフレーム構造、複数のフィンであって、各フィンがそのフィンの底端縁を中心として回動可能に軌道に連結されたフィン、軌道と連携する発電機であって、回転機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を備え、複数のフィンのそれぞれは、そのフィンが連続軌道に沿ってフレーム構造の前部及び上部を通過している時、開位置にあり、複数のフィンのそれぞれは、そのフィンが連続軌道に沿ってフレーム構造の後部及び底部を通過している時、閉位置にある。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、2009年9月14日出願、審査中の米国仮特許出願第61/242043号明細書「水力発電装置及び方法」に基づいて優先権を主張し、この米国仮特許出願を参照によりその開示全体を本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明の実施形態は、一般に、水中水力発電装置及びその方法に関する。より詳細には、本発明の実施形態は、湖、河川、水路、又は海洋からの連続的な潮流及び水流を利用することによって使用可能な電力を生成し、且つ効率的に絶えずその装置から電気エネルギーを生成するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]自然の水流からのエネルギーを利用するという概念は、何世紀にもわたって実践されている。何らかの流れている水の運動体に存在する運動エネルギーを利用するこれらの既知の方法は、古くからの粉ひき臼に動力を与える水車又はパドルホイール(外車)から、ダムの建設及びタービンに水を通す他の構造物の建設を含む大規模な自治体の事業まであらゆる方法に及ぶ。設計に関係なく、これらの既知のシステムの一般的な概念は、重力又は潮流のいずれかによる水流をエネルギー源として変換することを包含する。
【0004】
[0004]より最新の技術においては、水力から電気を生成するために、様々な改良されたパドルホイール型の設計が提案されている。パドルホイール型の設計の大きな問題は、水中、例えば、海底上又は海底近くでの適用性に欠けることである。パドルホイールの設計が対称であると、水流から上部の羽根に第1の方向にかかる力は、底部の羽根に同じ第1の方向にかかる力と略同じであり、従って、パドルホイールは動かないままである。
【0005】
[0005]同様に、プロペラ又はタービン型の羽根を利用する様々な回転式の発電装置が、水力発電用に検討されている。これらのタイプのシステムを水中で適用する場合の主要な問題は、下流の海洋生物を完全に死滅させてしまうことである。まさにその設計によって、回転式の発電装置は、サンゴ礁、海洋生物の生息地を破壊し、結果的には砂床又は海底の浸食を引き起こす激しい乱流を生む。
【0006】
[0006]米国では、ほとんどのエネルギーが化石燃料発電所及び原子力発電所で生産されているが、全電力の約7%が水力発電所で生産されているので、水力発電も依然この国にとって重要である。残念なことには、水力発電による電力の多くは、ダムの使用により得られ、そのため、新しいダムの建設(即ち、既存の水源の閉塞)又は古いダムの破壊(即ち、下流での洪水の可能性)のいずれかにより、環境に劇的な影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
[0007]米国以外では、全世界の発電の約19%を水力発電が占めている。最近の研究によると、経済的に実現可能な潜在力のうち約3分の2がまだ開発されておらず、未開発の水力発電資源のかなりの部分は、ラテンアメリカ、中央アフリカ、インド、及び中国に豊富にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]既知の解決法により、従来の水力発電装置に様々な改良が提案されてきたが、既存の装置の欠点を克服するとともに水中での適用に適した、改良された水力発電装置及びその方法が依然必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]本発明の実施形態は、一般に、水中水力発電装置及びその方法に関する。更に具体的には、本発明の実施形態は、湖、河川、水路、又は海洋からの連続的な潮流及び水流を利用することによって使用可能な電力を生成し、且つ効率的に絶えずその装置から電気エネルギーを生成するための装置に関する。
【0010】
[0010]本発明の一実施形態において、水中水力発電装置は、連続軌道(無限軌道)を支持するフレーム構造と、複数のフィンであって、各フィンがそのフィンの底端縁を中心として回動可能に軌道に連結されたフィンと、軌道と連携する発電機であって、回転機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機とを備え、複数のフィンのそれぞれは、そのフィンが連続軌道に沿ってフレーム構造の前部及び上部を通過している時、開位置にあり、複数のフィンのそれぞれは、そのフィンが連続軌道に沿ってフレーム構造の後部及び底部を通過している時、閉位置にある。
【0011】
[0011]本発明の別の実施形態において、発電システムは、連続的に流れる水の水源と、水中水力発電装置と、電力消費体とを備える。水中水力発電装置は、連続軌道を支持するフレーム構造し、複数のフィンであって、各フィンがそのフィンの底端縁を中心として回動可能に軌道に連結されたフィンと、軌道と連携する発電機であって、回転機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機とを備え、複数のフィンのそれぞれは、そのフィンが連続軌道に沿ってフレーム構造の前部及び上部を通過している時、開位置にあり、複数のフィンのそれぞれは、そのフィンが連続軌道に沿ってフレーム構造の後部及び底部を通過している時、閉位置にあるものである。
【0012】
[0012]本発明の更に別の実施形態において、水力発電の方法は、水中水力発電装置を設けるステップであって、水中水力発電装置が、連続軌道を支持するフレーム構造、複数のフィンであって、各フィンがそのフィンの底端縁を中心として回動可能に軌道に連結されたフィン、軌道と連携する発電機であって、回転機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を備え、複数のフィンのそれぞれが、そのフィンが連続軌道に沿ってフレーム構造の前部及び上部を通過している時、開位置にあり、複数のフィンのそれぞれは、そのフィンが連続軌道に沿ってフレーム構造の後部及び底部を通過している時、閉位置にある装置である、ステップと、水中水力発電装置を連続的に流れる水の水源に配置するステップであって、フレーム構造の前部が、連続的に流れる水の方向を向いている、ステップと、軌道の回転機械エネルギーから電気エネルギーを生成するステップと、電気エネルギーを電力消費体に分配するステップとを含む。
【0013】
[0013]本発明の上述の特徴を詳細にわたり理解できるように、上に簡潔に要約した本発明の実施形態のより具体的な説明を、添付図面に例示する実施形態を参照して行う。しかし、添付図面は、本発明の範囲内で網羅する実施形態の内の典型的な実施形態のみを例示するものであり、従って、限定的とみなされるべきではなく、本発明に対して他の同等に効果的な実施形態を認めてもよいことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による水中水力発電装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による水中水力発電装置の上面図である。
【図3】本発明の一実施形態による水中水力発電装置において使用するフィンの斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態による水中水力発電装置において使用するフィンの側面図である。
【図5】本発明の一実施形態による水力発電システムの側面図である。
【図6】本発明の一実施形態による水力発電エネルギーを生成する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0020]本明細書で用いる見出しは、構成のみを目的とするものであり、本説明又は請求項の範囲を限定するために用いるよう意味するものではない。本出願全体にわたり用いるように、用語「may(〜できる、〜してよい、〜し得る)」は、許容の意味(即ち、〜する可能性があることを意味する)で用いるものであり、必須の意味(即ち、〜しなければならないを意味する)で用いるものではない。同様に、用語「include(含む)」「including(含んでいる)」、及び「includes(含む)」は、含むことを意味するがそれに限るものではない。理解しやすいように、図面に共通の同様の要素を示すために、できる限り同様の参照番号を用いている。
【0016】
[0021]以下の詳細な説明において、本明細書に説明する例示的実施形態又は他の例を完全に理解できるように、数多くの具体的な詳細を記載する。しかし、当然のことながら、これらの例を、具体的な詳細なしに実践してもよい。他の例では、以下の説明が曖昧にならないように、周知の方法、手順、及び構成要素については詳細に説明していない。更に、本明細書に開示する例は、例示のみを目的とするものであり、開示する例の代わりに、又は開示する例と組み合わせて、他の例を採用してもよい。
【0017】
[0022]本発明の実施形態は、一般に、水中水力発電装置及びその方法に関する。更に具体的には、本発明の実施形態は、湖、河川、水路、又は海洋からの連続的な潮流及び/又は水流を利用することによって使用可能及び/又は蓄積可能な電気エネルギーを生成し、且つ効率的に絶えずその装置から電気エネルギーを生成するための装置に関する。
【0018】
[0023]図1は、本発明の一実施形態による水中水力発電装置の斜視図を示す。一般に、本発明の実施形態によると、水力発電装置100は、連続軌道110を支持するフレーム構造、複数のフィン(又は突出した翼)1201−n、及び機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機130を備える。多くの実施形態において、水力発電装置100は、水流Cで示すような、湖、河川、水路、又は海洋からの絶え間ない潮流又は水流の中に配置することを目的としている。
【0019】
[0024]連続軌道110を支持するフレーム構造には、随意で水力発電装置100の一般的な位置決め用ハウジングを保持する、本発明の実施形態に適した任意のタイプのフレーム構造を含む。一実施形態において、フレーム構造は、連続軌道110の一部を構成する一組の対向する軌道レールを備える。更に別の実施形態においては、フレーム構造110は、少なくとも連続軌道110と、複数のフィン1201−nと、発電機130とを支持するハウジング構造を備える。フレーム構造の特定の実施形態について、本明細書において更に詳細に説明する。
【0020】
[0025]本発明の実施形態は、自立式/浮揚式装置として、又は浮き床等の浮揚装置と係合させてのいずれかで利用されるよう設計されている。第1の例において、水力発電装置100を、海洋、湖、又は河川の底に、任意の適切な手段で係留又は繋留することができる。随意ではあるが、そのような実施形態においては、係留手段により、装置が常に水流の方向と一直線になることが可能なように、水力発電装置100の回転運動が可能となるようにすることができる。
【0021】
[0026]水力発電装置100を、浮き床等の浮揚装置と係合させる特定の実施形態においては、水力発電装置100を、浮き床が向いている任意の方向に配置してよいが、ふつうは水流の方向である。しかし、浮き床が自走手段又は曳航のいずれかにより動いている時、水力発電装置100は、その移動の方向を向いていることができ、その場合、水流の相対的な動きは、水力発電装置100の動作に適切な方向のままとなる。
【0022】
[0027]連続軌道110には、本発明の実施形態に適した任意のタイプの軌道を含むことができる。一実施形態において、連続軌道110は、水力発電装置100が動作する時に持ちこたえる力を支えることが可能な硬い材質のループ(例えば、連結した金属板、鎖、ロープ等)を備える。多くの実施形態において、連続軌道110はまた、複数のフィン120を係合するよう設けられている。連続軌道の実施形態について、本明細書において更に詳細に説明する。
【0023】
[0028]発電機130には、機械エネルギーを本発明の実施形態に適した代替のエネルギー形態に変換することが可能な任意のタイプの発電機を含むことができる。一実施形態において、発電機130には、電磁誘導、又はエネルギー形態を変換する同様の手段を用いて回転機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を含む。本発明の代替実施形態においては、他の任意のタイプの電力変換装置又は電力蓄積装置を採用してもよく、そのような装置は当業界では周知である。
【0024】
[0029]発電機130は、一般に、フレーム支持体と一体で配置されるが、特定の実施形態おいては、単に機械的にそれと係合しているだけであってもよい。一実施形態において、発電機130は、シャフト、歯車又は複数のフィン1201−n、例えばフィン1201−nそれぞれを連結している連続軌道110と係合した他の回転構造を備える。従って、フィン1201−nが連続軌道110によって画定された経路の周りを動くと、回転運動が発電機130の回転構造に伝わる。そして、発電機130が、そのような回転運動を電気エネルギーに変換するが、その電気エネルギーを、すぐに遠隔の用途に利用するか、又は後に使用するために蓄積してもよい。
【0025】
[0030]フィン1201−n(以下まとめて「フィン120」と称する)それぞれは、第1の端部でフレーム支持体の軌道110の少なくとも一部に回動可能に連結された翼(airfoil)を備える。多くの実施形態において、フィン120は全て、軌道内でベルトタイプ又は鎖タイプの連結手段で相互に連結されている。そのような実施形態においては、1つのフィンが動くと、等距離の動きで、軌道の周りを全てのフィンが動く。
【0026】
[0031]フィン120は、一般に、水流又は潮流が水中水力発電装置100を通過する時、水流又は潮流を捉える働きをする。多くの例において、水流が水力発電装置100に接近すると、前部のフィンが、ある特定の体積流量(例えば、100cu.ft./秒)で流れる水量を捉える。水量が前部のフィンの表面に当たると、フィンに直接力が加わる。本発明の実施形態によると、そのような力が閾値に達する(それは測定可能な最もわずかな力が加わるだけでほとんど瞬時に起こり得る)と、フィンは、連続軌道の周りを時計回りに水流の方向に動かされる。
【0027】
[0032]フィン120は相互に連結されているので、多くの実施形態において、前部のフィンが連続軌道110の周りを時計回りに動くと、フィン120の全てが連続軌道110の周りを時計回りに動く。前部のフィンが、一般に水力発電装置100内のフィン120間の距離にほぼ相当するある十分な距離を動くと、後続のフィンが前部のフィンとなる位置にあり、この循環が継続していく。
【0028】
[0033]上述のように、フィン120は、一般に、フレーム支持体の軌道110に連結された第1の端部を中心にして回動可能である。多くの実施形態において、フィン120の回動は、約0度から約90度の位置間の回動に限定されている。そのような実施形態においては、フィン120の回動を、フィン120の背側に取り付けられた機械的な止め具、ブレース等により、90度で止めることができる。フィンは、連続軌道110により、0度の位置まで閉じることができる。
【0029】
[0034]いくつかの実施形態においては、フィン120には、随意であるが、フィン120の上背部に取り付けられた浮揚装置122が設けられる。浮揚装置122は、最も早く妥当な条件が整った時点で、前部のフィンを略90度に近い位置まで容易に展開することが可能な、本発明の実施形態に適した任意の材質を含むことができる。そうすることにより、前部のフィンが、その前面に水流を捉え、水中水力発電装置100の最初の駆動フィンとなることが可能となる。同様に、フィンが水力発電装置100の戻り側を周って動く時、浮揚装置122は、連続軌道110の底部に対して略平行又は平らになる0度の位置までフィンを閉じるのに役立つ。
【0030】
[0035]当然のことながら、水力発電装置100の構成要素には、本発明の実施形態に適した任意の大きさのものを含むことができる。特定の実施形態においては、水力発電装置100は、約4分の1マイル以上の長さで、そこに数百又は数千のフィンを有するような、工業規模に適合することができる。別の実施形態においては、水力発電装置100は、河川又は水路上に位置する個人の住居での使用に適合することができ、その場合、約8フィート〜約20フィートの間の長さで、そこに10〜20のフィンを有するものであることができる。更に別の実施形態においては、水力発電装置100は、わずかな水流しかない装飾用の噴水での使用に適合することができる。そのような実施形態においては、水力発電装置100は、約数インチの長さで、そこに2〜3のフィンを有するものであることができる。
【0031】
[0036]水力発電装置100の構成要素のそれぞれに利用される材質には、本発明の実施形態に適した任意の非腐食性の材質を含むことができる。一実施形態において、水力発電装置100の構成要素として利用される材質には、ステンレススチール、亜鉛、チタニウム、マグネシウム、カドミウム、グラファイト等といった非腐食性又は低腐食性金属の少なくとも1つを含む。或いは、水力発電装置100の構成要素として利用される材質には、ポリスチレン、ポリ(メチル)メタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、カーボンファイバ、ナイロン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン等といった、ポリマーを含むことができる。
【0032】
[0037]図2は、本発明の一実施形態による水力発電装置の上面図を示す。水力発電装置200は、一般に、連続軌道210、複数のフィン220、及び発電機230を備える。水力発電装置200は、水力発電装置200へ水流が出入りしやすくするための前部ノズル構造240、及び後部ディフューザ構造250を更に備えることができる。更に、水力発電装置200はまた、随意であるが、水力発電装置200の側壁に沿って複数の入口260を備えて、そこから更に水が上部チャネルに入るようにし、軌道をたどるフィンが発電機230の駆動力を補助することができるようにしてもよい。
【0033】
[0038]前部ノズル構造240には、水力発電装置200に水流が入りやすくするのに適した任意のタイプの物理的構造を含むことができる。「ノズル」と称しているが、当然のことながら、任意の基本構造(例えば、ノズル、ディフューザ等)が、本発明の実施形態に適し得る。多くの実施形態において、前部ノズル構造240の機能は、水力発電装置200に入る水量が、前部のフィンを捉える前に、確実にできる限り層となって流れているようにすることである。他の実施形態においては、前部ノズル構造240の機能は、最大限の体積流量を水力発電装置200に供給することである。このように、前部ノズル構造240は、水力発電装置200に入る望ましい流動特性を促進する任意のサイズ、形状、長さ等であることができる。
【0034】
[0039]一実施形態において、前部ノズル構造240は、円錐型構造として設計され、第1の端部が略頂点形で終結している。そのような構造の第2の端部は、前部のフィンが略90度の開位置に展開される交点で終結することができる。ノズルとして動作して、前部のフィンが受け入れの開位置に到達するやいなや、前部のフィンにかかる力を増大させことができる。
【0035】
[0040]後部ディフューザ構造250には、環境への影響を最小限に抑えて、水力発電装置200から水流が出やすくするのに適した任意のタイプの物理的構造を含むことができる。「ディフューザ」と称しているが、任意の基本構造(例えば、ノズル、ディフューザ等)が、本発明の実施形態に適し得ることは理解されよう。
【0036】
[0041]多くの実施形態において、後部ディフューザ構造250の機能は、水力発電装置200から出る水量が、水力発電装置を取り巻く海洋生物に害を与えないよう、確実にできる限り層流となって流れているようにすることである。他の実施形態においては、後部ディフューザ構造の機能は、例えば、ある特定の環境構造を保護するために何らかの直接の水流(自然流又は人工的な流れ)を偏向する必要があるところで、出力水量を、通常なら流れていいたであろう方向とは異なる方向に向けることである。このように、後部ディフューザ構造250は、水力発電装置200から出る望ましい流動特性を促進する任意のサイズ、形状、長さ等であることができる。
【0037】
[0042]随意ではあるが、水力発電装置200の側壁に沿って複数の入口260を設けて、水力発電装置200の上部チャネルへ更に水が出入りできるようにしてもよい。水力発電装置200の最初の駆動力は、如何なる所与の例においても前部のフィンであるが、全てのフィンにかかる力全体を最大にして、発電機230を駆動する回転動力を最大にすることが望ましい。随意で入口260を設けることによって、軌道をたどるフィン220に入る体積流量が増し、従って、フィン220にかかる力全体を増大させることができる。
【0038】
[0043]入口260に加えて、フィン220にかかる力全体を増大させる別の手段は、フィンが水力発電装置200の戻り側に到達し、0度の閉位置まで倒れ始めると、フィンそれぞれにかかる抗力を最小にすることである。本発明の実施形態によると、随意で、フィン220に、1つ又は複数の解放ドア224を取り付けてもよい。
【0039】
[0044]解放ドア224は、枢動可能にフィン220に取り付けられることができ、フィン220の前面に向かって枢動する。フィン220が水力発電装置200の戻り側を周って動く時、解放ドアは水の力を考慮すると、自然にそのフィン220の背面になる方に開く。解放ドアを開けることにより、フィン220の背面の表面積全体が縮小され、従って、そこにかかる抗力が低減する。
【0040】
[0045]図3は、本発明の一実施形態による水中水力発電装置において使用するフィンの斜視図である。フィン300は、一般に、連続的に流れている流体源に浸水させた時流体を捉える前面320を有する十分に硬い部材を備える。多くの実施形態において、フィン300は、略矩形であり、高さは底端縁330と上端縁340との間で画定され、幅は2つの側縁間で測定される。多くの実施形態において、フィン300の厚さは、幅又は高さの何れよりも相当に小さい。この厚さはフィンの前面320と背面310との間で測定される。特定の実施形態においては、フィン300は、本発明の実施形態に適して決められるように、厚さが変化する。
【0041】
[0046]いくつかの実施形態においては、フィン300は、上述のように1つ又は複数の解放ドア350を備える。解放ドア350の前部の表面積は、フィン300の前面320の表面積全体の約10%〜約75%の間のいずれかを含むものであることができる。上に説明したように、解放ドア350を、枢動可能にフィン300に連結することができ、それにより、解放ドア350は、水がフィン300の背面310に作用している時、水がフィン300を通過しやすくすることができる。代替実施形態においては、解放ドア350は、一方向にのみ通過性のある材質を含んでもよく、それにより、水は一方向にのみ通過することができ、逆方向には通過できない。同様に、他の実施形態においては、解放ドア350は、上述と同じ機能を果たす一方向弁を備えてもよい。
【0042】
[0047]本発明の多くの実施形態において、フィン300には、その前面320に関してある度合いの凹みが設けられており、それにより、フィン300が、連続的に流れている流体源を捉え、更に翼として作用する位置にある時、フィンにかかる抗力を最大にし、抑制力を避ける位置にある時、抗力を最小にすることができる。フィン300の凹みの度合いは、フィン300の平均の反り線に関して測定され、本発明の一実施形態の商業用の適用に応じて、変化させることができる。
【0043】
[0048]フィン300の底端縁330は、一般に、枢動可能な係合手段を備えることができ、それにより、本明細書に説明するように、フィン300は連続軌道(図示せず)に連結又は係合することができる。本発明の実施形態で利用される連続軌道のタイプによる構造の変化に応じて、枢動可能な係合手段は、任意の適切な装置又は構造を備えることができる。例えば、一実施形態において、枢動可能な係合手段はヒンジを含み、それにより、ヒンジの片側が底端縁330でフィン300に連結され、ヒンジの反対側が連続軌道に取り付けられる。本発明の更なる実施形態においては、本発明の実施形態に任意のタイプの枢動可能な構造が適し得ることは理解されよう。
【0044】
[0049]本発明のいくつかの実施形態においては、随意で車輪支持体360を設けてよく、それにより、フィン300が、本明細書で述べるようにフレームの戻り側及び下側を周って通過する時、レールに係合し、閉位置におけるフィン300の適切な動き及び位置決めを確実にするのに役立つようにすることができる。
【0045】
[0050]図4は、本発明の一実施形態による水中水力発電装置において使用するフィンの側面図を示す。図3と同様に、フィン400は、一般に、上端縁440及び底端縁430を備える。フィン400はまた、一般に、少なくとも1つの解放ドア450を備えることができる。図に示すように、解放ドア450は、フィン400の背面に力Fが作用している時、ヒンジ454の周りで開位置に振れることができる。多くの実施形態において、力Fは、水量によって引き起こされる。このように、解放ドア450が開位置にある時、水量がフィン400の空間452を通過することができる。同様に、開位置にある時、フィンの背面の表面積が大いに低減され、従って水圧によりフィンに作用するいかなる力も最小となる。解放ドア450は、フィン400の上端440に最も近い端部にそって枢動可能であるように示されているが、解放ドア450は、本発明の実施形態の特定の適用によって決められるように、その何れの端縁の周りで枢動可能であってもよい。同様に、解放ドア450は、その性能を最適化するために、実質的に、本発明の実施形態の文脈内で実行可能な任意の形状を備えることができる。
【0046】
[0051]フィン400はまた、上で紹介したように、随意で車輪支持体460を備えてもよい。そのような実施形態において、車輪支持体460は、ブラケット構造464によってフィン400の背面から離れて支持される単一の車輪462を備えることができる。フィン400の側縁に近接して示されているが、車輪支持体460は、一般に、連続軌道と連携し、フィン400の幅全体を展開することはできない。特定の実施形態においては、2つ以上の車輪支持体460を、フィン400上に設けてもよい。また、代替実施形態においては、同様の構造(即ち、同様の機能を提供するための構造)を利用して、フィン400が適切な動き及び位置決めを達成するようにしてもよい。
【0047】
[0052]図5は、本発明の一実施形態による水力発電システムの側面図を示す。多くの実施形態において、水力発電システム500は、水流Cで示される連続的に流れている水源、水中水力発電装置、及び電力消費体(例えば、ビル、工場、照明器具、機械、船、容量性デバイス等)(図示せず)を備える。本発明の実施形態によると、水中水力発電装置は、一般に、連続軌道510を支持するフレーム構造570、複数のフィン520であって、各フィン520がそのフィンの底端縁を中心として回動可能に軌道510に連結されたフィン、軌道と連携して回転機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機530、及び電気エネルギーを電力消費体に伝送する送電線580(例えば、業界標準の工業用電力ケーブル)を備える。
【0048】
[0053]水中水力発電装置のフレーム570は、一般に、上部572、底部574、水源Cに向けて配置された前部(図示せず)、及び前部の反対側の後部を備える。随意ではあるが、フレーム570に、基部取り付け装置又は他の繋留装置を設けて、水力発電装置を絶えず流れる水源の底590(例えば、川床、海底等)に置くことができるようにしてもよい。前部は水流Cに向けて配置されると説明したが、当然のことながら、水力発電装置全体を、水流Cの平均の方向に対してある特定の角度で位置付けてもよい。即ち、水流Cは、水力発電装置全体に対して変化する迎え角を有してもよい。
【0049】
[0054]図には示していないが、フレーム570にはまた、本発明の実施形態を動作させるのに必要であれば、ハウジング又は他の保護用及び/又は囲うための面を設けてもよい。例えば、いくつかの実施形態においては、水力発電装置及びその構成要素全体を流水にさらしたままではなく、装置の内部、即ち連続軌道510で画定された容積部内を、ハウジングで密封してもよい。大抵、システム500の適用の特質により、最適に動作するためにそのようなハウジングが実行可能及び/又は必要であるかどうかが決まる。
【0050】
[0055]本発明の多くの実施形態において、動作中、複数のフィン520は、そのフィン520が連続軌道510に沿ってフレーム構造570の前部及び上部572を通過している時、開位置にあり、複数のフィン520は、そのフィン520が連続軌道510に沿ってフレーム構造570の後部及び底部574を通過している時、閉位置にある。このように動作することによって、開位置にある(即ち、フレーム570の上部572に沿っている)フィン520上で水流Cによって生成される力は、閉位置にある(即ち、フレーム570の底部574に沿っている)フィン520上で生成される力より著しく大きくなる。
【0051】
[0056]いくつかの実施形態においては、連続軌道510は、発電機530が回転エネルギーを受け取ることを可能にする手段512を備える。図に示すように、手段512は、軌道510の内面に複数の突起を備えることができる。そのような実施形態においては、突起が一次歯車532に係合することができ、その一次歯車が続いて発電機530の駆動歯車534に係合する。代替実施形態においては、発電機530の駆動歯車534に回転エネルギーを伝える任意の構造配列を利用してもよい。例えば、歯車、シャフト、又は軌道の任意の配列が、本発明の実施形態に適し得る。
【0052】
[0057]上述のように、フィン520は、解放ドア550、及び車輪支持体560を備えてもよい。フィン520はまた、浮揚装置522を備えてもよく、それは、フィン520がフレーム570の前部を通っている時、開位置に、フレーム570の後部を通っている時、閉位置に到達するのに役立つ。図に示すように、フレーム570の後部から底部574へと通る時、フィン520の車輪支持体560がフレーム570又はその一部に係合して、フィン520が、フレーム570の前部に到達するまで確実に閉位置のままであるようにすることができる。
【0053】
[0058]図6は、本発明の一例示的実施形態による水力発電エネルギーを生成する方法のフロー図を示す。方法600は、ステップ610において開始する。ステップ620において、本発明の一実施形態による水中水力発電装置を設ける。そのような実施形態において、水中水力発電装置は、少なくとも、連続軌道を支持するフレーム構造、複数のフィンであって、各フィンがそのフィンの底端縁を中心として回動可能に軌道に連結されたフィン、及び、軌道と連携して回転機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を備えるものとすることができる。
【0054】
[0059]ステップ630において、水中水力発電装置を、連続的に流れている水源に配置する。例えば、一実施形態において、水中水力発電装置を、河川、水路、海洋等の中に配置する。多くの実施形態において、水中水力発電装置を、流れの向きが予測可能な連続的に流れている水源内(例えば、潮流予定が予測可能な海洋、又は測定された降雨量に基づき1年の特定の時期の流量がわかっている河川)に配置すると有益であり得る。大抵、水中水力発電装置を水中に配置する時、水中水力発電装置を、水源の底、浮き床、ブイ等といった固定された又は制御可能な物体に係留、繋留、又は取り付けることが望ましい。同様に、水源の特質に応じて、水中水力発電装置を、対向する水流に絶えず面するように垂直軸の周りを回転できるようにすることが望ましい。
【0055】
[0060]ステップ640において、電気エネルギーを、水中水力発電装置の連続軌道の機械エネルギーから生成する。上述のように、複数のフィンのそれぞれは、そのフィンが連続軌道に沿ってフレーム構造の前部及び上部を通過している時、開位置にあるため、且つ、複数のフィンのそれぞれは、そのフィンが連続軌道に沿ってフレーム構造の後部及び底部を通過している時、閉位置にあるため、水中水力発電装置が水中に浸水している時、絶えず「時計回り」の動きが軌道に伝わる。発電機が回転エネルギーを受けることを可能にする、本明細書に説明した何れかのタイプの手段を利用することによって、発電機は、絶えず回転機械エネルギーを受け取っている。発電機(例えば、電磁発電機)の特質によって、電気エネルギーをそこで生成することができる。
【0056】
[0061]ステップ650において、そのような電気エネルギーを電力消費体に分配することができる。多くの実施形態において、電力消費体は水面より上に存在する。電気エネルギーを利用できる任意のタイプの構造、装置、機器等が、電力消費体に適し得る。特定の実施形態において、電力消費体には、電気エネルギーを将来使用するために蓄積するための容量性デバイス(例えば、バッテリー)を含んでもよい。そのようなタイプの実施形態においては、水中水力発電装置によって生成されたエネルギーを、水源から遠く離れたところで利用することができる。
【0057】
[0062]方法600は、ステップ660において終了する。
【0058】
[0063]本発明の代替実施形態によると、水中水力発電装置は、本明細書に開示した実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく、数多くの方法で修正及び変更することができる。例えば、水中水力発電装置のフレーム及び連続軌道構造全体は、略楕円形又は略矩形で開示しているが、ある特定の用途に最適の結果を生み出す任意の適切な形(例えば、円形、正方形、三角形等)を含むことができる。
【0059】
[0064]前述は、本発明の実施形態に向けたものであるが、本発明の更なる他の実施形態を、本発明の基本的範囲から逸脱することなく考案してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続軌道を支えるフレーム構造と、
複数のフィンであって、前記フィンのそれぞれが該フィンの底端縁を中心として回動可能に前記軌道に連結されている、フィンと、
前記軌道と連携する発電機であって、回転機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と
を備え、
前記複数のフィンのそれぞれは、該フィンが前記連続軌道に沿って前記フレーム構造の前部及び上部を通過している時、開位置にあり、前記複数のフィンのそれぞれは、前記フィンが前記連続軌道に沿って前記フレーム構造の後部及び底部を通過している時、閉位置にある、水中水力発電装置。
【請求項2】
前記フィンのそれぞれが、前記フィンの前面に関して所定の凹みを備える、請求項1に記載の水中水力発電装置。
【請求項3】
前記フィンのそれぞれが、流体を通過させる解放ドアを備える、請求項1に記載の水中水力発電装置。
【請求項4】
前記解放ドアが、前記フィンに枢動可能に連結され、前記フィンの前面に向かって回動可能である、請求項3に記載の水中水力発電装置。
【請求項5】
前記フィンのそれぞれが、該フィンの背面に配置され前記フレーム構造の底部に係合する車輪支持体を更に備える、請求項1に記載の水中水力発電装置。
【請求項6】
前記フィンのそれぞれが、該フィンの背面に配置された浮揚装置を更に備える、請求項1に記載の水中水力発電装置。
【請求項7】
前記発電機が回転エネルギーを受けることを可能にする手段を更に備える、請求項1に記載の水中水力発電装置。
【請求項8】
前記手段が、前記軌道の内面に設けられた複数の突起を備える、請求項7に記載の水中水力発電装置。
【請求項9】
連続的に流れる水の水源と、
水中水力発電装置と、
電力消費体と
を備える発電システムであって、
前記水中水力発電装置が、
連続軌道を支持するフレーム構造と、
複数のフィンであり、前記フィンのそれぞれが該フィンの底端縁を中心として回動可能に前記軌道に連結された、フィンと、
前記軌道と連携する発電機であり、回転機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と
を備え、前記複数のフィンのそれぞれは、該フィンが前記連続軌道に沿って前記フレーム構造の前部及び上部を通過している時、開位置にあり、前記複数のフィンのそれぞれは、該フィンが前記連続軌道に沿って前記フレーム構造の後部及び底部を通過している時、閉位置にある、発電システム。
【請求項10】
前記フィンのそれぞれが、流体を通過させる解放ドアを備える、請求項9に記載の発電システム。
【請求項11】
前記解放ドアが、前記フィンに枢動可能に連結され、前記フィンの前面に向かって回動可能である、請求項10に記載の発電システム。
【請求項12】
前記フィンのそれぞれが、該フィンの背面に配置され前記フレーム構造の底部に係合する車輪支持体を更に備える、請求項9に記載の発電システム。
【請求項13】
前記フィンのそれぞれが、該フィンの背面に配置される浮揚装置を更に備える、請求項9に記載の発電システム。
【請求項14】
前記発電機が回転エネルギーを受けることを可能にする手段を更に備える、請求項9に記載の発電システム。
【請求項15】
前記手段が、前記軌道の内面に設けられた複数の突起を備える、請求項14に記載の発電システム。
【請求項16】
前記連続的に流れる水の水源は、河川、水路、又は海洋の内の1つである、請求項9に記載の発電システム。
【請求項17】
前記電力消費体は、ビル、工場、照明器具、機械、船、又は容量性デバイスの内の1つである、請求項9に記載の発電システム。
【請求項18】
水中水力発電装置を設けるステップであって、前記水中水力発電装置が、
連続軌道を支持するフレーム構造と、
複数のフィンであり、前記フィンのそれぞれが該フィンの底端縁を中心として回動可能に前記軌道に連結された、フィンと、
前記軌道と連携する発電機であり、回転機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と
を備え、前記複数のフィンのそれぞれは、該フィンが前記連続軌道に沿って前記フレーム構造の前部及び上部を通過している時、開位置にあり、前記複数のフィンのそれぞれは、該フィンが前記連続軌道に沿って前記フレーム構造の後部及び底部を通過している時、閉位置にある装置である、ステップと、
前記水中水力発電装置を連続的に流れる水の水源に配置するステップであって、前記フレーム構造の前記前部が、前記連続的に流れる水の方向を向くようにされた、ステップと、
前記軌道の回転機械エネルギーから電気エネルギーを生成するステップと、
前記電気エネルギーを電力消費体に分配するステップと
を含む、水力発電方法。
【請求項19】
前記連続的に流れる水の水源は、河川、水路、又は海洋の内の1つである、請求項18に記載の水力発電方法。
【請求項20】
前記電力消費体は、ビル、工場、照明器具、機械、船、又は容量性デバイスの内の1つである、請求項18に記載の水力発電方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−504714(P2013−504714A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528987(P2012−528987)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/048759
【国際公開番号】WO2011/032143
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(512058652)
【Fターム(参考)】