説明

水中油型乳化皮膚化粧料

【課題】界面活性剤や油剤等に由来するべたつき・ヌルつきを感じさせない優れた使用性を有し、保存安定性の高い水中油型乳化皮膚化粧料を提供する。
【解決手段】下記(a)〜(d)成分を含有する水中油型乳化皮膚化粧料であって、(a)成分と(b)成分の含有量の比(a):(b)が7:1〜1:2、水中油型乳化皮膚化粧料の総量に対する(a)成分と(b)成分の合計含有量が0.3〜10質量%、総油剤量に対する(c)成分の含有量が20質量%以上である水中油型乳化皮膚化粧料。
(a)エチレンオキサイド(EO)付加モル数が20〜100で、HLBが10以上のポリオキシエチレン(POE)付加型ノニオン界面活性剤、
(b)HLBが6以下のノニオン界面活性剤、
(c)25℃における動粘度が1×10-52/s(10cSt)以下の低粘度シリコーン油、
(d)架橋型メチルポリシロキサン

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用性に優れた水中油型乳化皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚塗布時におけるべたつき・ヌルつきを感じさせない乳化物の調製法として、少量の油剤を界面活性剤を使用して乳化させる方法、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子を使用して乳化させる方法、及びそれらを併用する方法などが知られている。また、高級アルコール、アシルスルホン酸塩型アニオン界面活性剤及び極性油を組合せた、安定性が良好でべたつき等がない使用感触に優れた水中油型乳化組成物が報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−044866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの調製法を用いても、界面活性剤、油剤、水溶性高分子由来のべたつき・ヌルつきを感じさせない、十分に満足し得る乳化物を得ることは難しかった。特にべたつき感の軽減を目的としてシリコーン油を配合すると、保存安定性が悪化する場合あった。このように、優れた使用性と同時に保存安定性にも優れた水中油型乳化組成物が求められていた。すなわち本発明は、界面活性剤や油剤等に由来するべたつき・ヌルつきを感じさせない優れた使用性を有し、保存安定性の高い水中油型乳化皮膚化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、低粘度シリコーン油を含有する油剤に架橋型メチルポリシロキサンを配合し、HLB10以上でPOE付加型ノニオン界面活性剤とHLB6以下のノニオン系面活性剤との組合せにより乳化させることで、使用感と保存安定性とを両立した水中油型乳化皮膚化粧料が得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記(a)〜(d)成分を含有する水中油型乳化皮膚化粧料であって、(a)成分と(b)成分の含有量の比(a):(b)が7:1〜1:2、水中油型乳化皮膚化粧料の総量に対する(a)成分と(b)成分の合計含有量が0.3〜10質量%、総油剤量に対する(c)成分の含有量が20質量%以上である水中油型乳化皮膚化粧料を提供するものである。
(a)エチレンオキサイド(EO)付加モル数が20〜100で、HLBが10以上のポリオキシエチレン(POE)付加型ノニオン界面活性剤、
(b)HLBが6以下のノニオン界面活性剤、
(c)25℃における動粘度が1×10-52/s(10cSt)以下の低粘度シリコーン油、
(d)架橋型メチルポリシロキサン
【発明の効果】
【0007】
本発明の水中油型乳化皮膚化粧料は、低粘度シリコーン油を含有する油剤及び架橋型メチルポリシロキサンを、HLB10以上のPOE付加ノニオン界面活性剤及びHLB6以下のノニオン界面活性剤により乳化させることにより、界面活性剤、油剤及び高分子由来のべたつき・ヌルつき感のない極めて使用性に優れ、且つ保存安定性にも優れた水中油型乳化皮膚化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の(a)成分であるEO付加モル数が20〜100で、HLBが10以上のPOE付加型ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。
これらの(a)成分の好ましいEO付加モル数は、20〜80がより好ましく、好ましいHLBは10〜16である。当該EO付加モル数20〜100及びHLB10以上は、本発明水中油型乳化皮膚化粧料の保存安定性及び使用感の点で重要である。HLBが10以上のノニオン界面活性剤であってもPOE付加型でないノニオン界面活性剤を用いると、(c)成分である低粘度シリコーンとの相性が良くないため、安定な乳化系とすることが難しい場合がある。
(a)成分のノニオン界面活性剤の脂肪酸部分及びアルキル部分の炭素数は8〜24が好ましい。
(a)成分としては、具体的には、POE(20)硬化ヒマシ油、POE(30)硬化ヒマシ油、POE(40)硬化ヒマシ油、POE(60)硬化ヒマシ油、POE(80)硬化ヒマシ油、POE(100)硬化ヒマシ油、POE(20)ヤシ油脂肪酸ソルビタン、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ステアリン酸PEG−15グリセリル、オレイン酸PEG−15グリセリル等を使用することができる。これらのうち、保存安定性が一層向上することから、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、POE(60)硬化ヒマシ油が特に好ましい。
【0009】
本発明の(b)成分であるHLBが6以下のノニオン界面活性剤は、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のEO鎖を持たないノニオン界面活性剤が挙げられる。ここで(b)成分のノニオン界面活性剤の脂肪酸部分の炭素数は8〜24が好ましく、HLBは3〜6が好ましい。(b)成分としては、具体的には、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル等が好ましく用いられ、保存安定性が一層向上することからステアリン酸グリセリルが特に好ましく用いられる。
【0010】
本発明では、(a)成分と(b)成分の含有量の比(a):(b)を7:1〜1:2の範囲、好ましくは、5:1〜1:1とする。この配合比を外れると十分な保存安定性が得られない場合がある。さらに、本発明では水中油型乳化皮膚化粧料の総量に対する(a)成分と(b)成分の合計含有量を、0.3〜10質量%の範囲、好ましくは1〜5質量%の範囲とする。この範囲内であれば、ローションからクリームまでの広い使用用途を満たすことができる。この範囲を外れると保存安定性が低下したり、べたつきやヌルつきを感じて使用性が損なわれる場合がある。
【0011】
本発明において、HLB(ydrophile−ipophile alance)は、HLB=(Σ無機性値/Σ有機性)×10により計算される。ここで、Σ無機性値/Σ有機性は、IOB値(norganic−rganic alance)と呼ばれ、各種原子及び官能基毎に設定された「無機性値」、「有機性値」に基いて、界面活性剤等の有機化合物を構成する原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することにより算出することができる(甲田善生著、「有機概念図−基礎と応用−」、11〜17頁、三共出版、1984年発行参照)。
【0012】
本発明の(c)成分は、25℃における動粘度が1×10-52/s(10cSt)以下の低粘度シリコーン油であり、界面活性剤、油剤、高分子等に由来するべたつき・ヌルつきを軽減させる効果を有する。動粘度が上記値を超えるものを使用すると、軽減効果が発揮できないだけでなく、シリコーン由来の過剰な滑り感が出てしまい逆効果となる場合がある。但し、粘度の高いシリコーン油を配合しないことを前提とするものではなく、過剰な滑り感を感じない程度に配合することは可能である。本発明で用いられる低粘度シリコーン油としては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、メチルポリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン等が挙げられる。これらのうち、本発明ではデカメチルシクロペンタシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシランが好ましく用いられ、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましく用いられる。
【0013】
本発明における(c)成分の含有量は、油剤の総量を基準として20質量%以上とする。この含有量未満であるとべたつき・ヌルつきを軽減させる効果が弱く、明確な効果が確認しづらい。特に(c)成分の含有量を30質量%以上とすると、より明確な効果が感じることができるため好ましい。総油剤量中の(c)成分の含有量の上限は、特に限定されず、100質量%でもよい。
【0014】
本発明における油剤としては、(c)成分も含めた通常化粧料に用いられる油性成分が挙げられ、具体的にはトリグリセリド(液体天然油脂、固体天然油脂)、ロウ類、エステル油、炭化水素油、ステロール類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、フッ素油等が挙げられる。これら油剤の含有量は、水中油型乳化皮膚化粧料の形態によって異なるが、水中油型乳化皮膚化粧料の総量に対し0.1〜40質量%、さらに0.2〜30質量%であるのが使用感及び保存安定性の点で好ましい。
【0015】
液体天然油脂としては、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボガド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油、卵黄油、牛脚脂、肝油等がある。
【0016】
固体天然油脂としては、カツオ脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油、牛脂、羊脂、豚脂、馬脂、硬化油、硬化ヒマシ油、モクロウ、シアバター等がある。
【0017】
ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、カポックロウ、サトウキビロウ、ホホバロウ、セラックロウ等がある。
【0018】
エステル油としては、オクタン酸セチル等のオクタン酸エステル、ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル、パルミチン酸オクチル等のパルミチン酸エステル、ステアリン酸イソセチル等のステアリン酸エステル、イソステアリン酸イソプロピル等のイソステアリン酸エステル、イソパルミチン酸オクチル等のイソパルミチン酸エステル、オレイン酸イソデシル等のオレイン酸エステル、アジピン酸ジイソプロピル等のアジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエチル等のセバシン酸ジエステル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリオクタン酸グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリン等のトリグリセライド、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等のトリメチロールプロパン脂肪酸エステル、テトラオクタン酸ペンタエリスリット等のペンタエリスリトール脂肪酸エステル等がある。
【0019】
炭化水素油としては、流動パラフィン、α−オレフィンオリゴマー、スクワラン、スクワレン、プリスタン、パラフィン、イソパラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等がある。
【0020】
ステロールとしては、コレステロール、シトステロール、フィトステロール、ラノステロール等がある。
【0021】
本発明の(d)成分は、架橋型メチルポリシロキサンであり、(c)成分の低粘度シリコーン油を含有する水中油型乳化皮膚化粧料の使用感及び保存安定性をより優れたものとする。架橋型メチルポリシロキサンは、メチルポリシロキサンが三次元架橋された架橋構造を有する重合物で、例えば、ジメトキシジメチルシロキサンを重合させてメチルポリシロキサンを製造する時に、架橋剤として少量のメチルトリメトキシシロキサンを加えることにより三次元架橋構造を導入することができる。架橋型メチルポリシロキサンは、粉体のまま使用しても、水性媒体若しくは油性媒体中に分散されているものを使用してもどちらでも良い。架橋型メチルポリシロキサンの市販品としては、BY29−140、PF−2001、PF−3003(以上、東レ・ダウコーニング社製)、KSG−15、KSG−16(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。本発明の水中油型乳化皮膚化粧料における(d)成分の含有量は、化粧料の総量に対して0.01〜5質量%が好ましく、特に0.05〜3質量%が好ましい。この範囲内であれば、使用感と保存安定性が特に優れる。
【0022】
本発明の水中油型乳化皮膚化粧料には、水、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、中和剤、pH調整剤、酸化防止剤、抗菌剤、薬剤、各種の抽出液等の通常化粧料に用いられる各種の原料が使用できる。
【0023】
増粘剤としては、アラビアゴム、トラガカント、ガラクタン、キャロブガム、グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物系高分子、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー(GF Goodrich社製CARBOPOL941など)等のビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機系増粘剤等がある。これらをべたつき及び/又はヌルつきを感じない程度の少量を配合することで、保存安定性がさらに向上する。
【0024】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、[4−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−3−メチルブチル]−3,4,5,−トリメトキシケイ皮酸エステル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタン等がある。
【0025】
金属イオン封鎖剤としては、アラニン、エデト酸ナトリウム塩、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸等がある。
【0026】
中和剤としては、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム等がある。
【0027】
pH調整剤としては、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、dl−リンゴ酸、クエン酸ナトリウム、リン酸水素ニナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等がある。
【0028】
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等がある。
【0029】
抗菌剤としては、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、フェノキシエタノール、クロルフェネシン等がある。
【0030】
薬剤としては、ビタミンA油、レチノール、パルミチン酸レチノール、イノシット、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ビタミンD2(エルゴカシフェロール)、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類、エストラジオール、エチニルエストラジオール等のホルモン、アルギニン、アスパラギン酸、トラネキサム酸、シスチン、システイン、メチオニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸、アラントイン、アズレン等の抗炎症剤、アルブチン等の美白剤、酸化亜鉛、タンニン酸等の収斂剤、L−メントール、カンフル等の清涼剤やイオウ、γ−オリザノール等がある。
【0031】
各種の抽出液としては、ドクダミエキス、オウバクエキス、メリロートエキス、オドリコソウエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、キナエキス、ユキノシタエキス、クララエキス、コウホネエキス、ウイキョウエキス、サクラソウエキス、バラエキス、ジオウエキス、レモンエキス、シコンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、スギナエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、キイチゴエキス、メリッサエキス、ニンジンエキス、カロットエキス、マロニエエキス、モモエキス、桃葉エキス、クワエキス、ヤグリマギクエキス、ハマメリス抽出液、プラセンタエキス、胸腺抽出物、シルク抽出液等がある。
【0032】
また、上記薬物は遊離の状態で使用されるほか、造塩可能なものは酸又は塩基の塩の型で、またカルボン酸基を有するものはそのエステルの形で使用することができる。
【0033】
さらに、本発明の水中油型乳化皮膚化粧料には、必要に応じて適当な香料、色素等を乳化安定性を損なわない範囲で添加できる。
【0034】
本発明の水中油型乳化皮膚化粧料の用途は任意であり、ローション、乳液、クリーム、美容液等どのような剤型でもよい。
【実施例】
【0035】
次に実施例を挙げて、本発明を具体的に明らかにする。なお本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下に示す配合量は質量%である。
【0036】
実施例1〜5、比較例1〜10(クリーム)
表2に示す種々の組成のクリームを製造し、高温及び低温保存安定性と使用性について下記評価法に従って評価した。尚、クリームの製造はAの油相部にBの水相部を加えて、乳化機で乳化することによって行った。
【0037】
(保存安定性評価)
評価試料を、高温条件下(50℃)又は低温条件下(−20℃、凍結状態)で1ヶ月保持し、1ヶ月後の状態を目視にて評価した。外観に特に問題がない場合は「○」、分離若しくは結晶の析出が確認できる場合は「×」と評価した。
【0038】
(使用性評価)
女性パネル15名により、評価試料のべたつき・ヌルつきについて官能評価し、下記基準により評価点をつけた。評価結果は15名の評価点の平均点により示した(小数点以下第2位で四捨五入)。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
表2の安定性評価結果が示すように、本願の特定(a)成分と特定(b)成分を7:1〜1:2の割合になるように配合することで、高温及び低温保存安定性に優れた水中油型乳化皮膚化粧料が得られることが分かる。また、比較例10は、従来技術の高分子化合物に頼った安定化処方であるが、従来処方では十分な保存安定性が得られないことが分かる。
【0042】
使用性評価結果が示すように、低粘度のシリコンを総油剤量の20%以上配合することで、油剤及び活性剤に由来するべたつきやヌルつきを感じさせない優れた使用性が発揮されることが分かる。さらに、本願の特定(a)成分と特定(b)成分を規定割合で配合しても、それらの合計量が本願の特定範囲外だと、十分な安定性が得られなかったり、安定性に優れていても使用性が悪くなってしまうことが分かる。
【0043】
実施例6(ローション)
表3に示す組成のローションを、エタノール相(A)を水相(B)に添加し、乳化機で乳化することによって作製した。作製したローションを上記と同様に評価したところ、本実施例のローションは、実施例1〜5と同様に、べたつき・ヌルつきの点で優れた使用性を示し、保存安定性が高いことが分かった。
【0044】
【表3】

【0045】
実施例7(美容液)
表4に示す組成の美容液を、エタノール相(A)に水相(B)を添加後、乳化機で乳化することによって、作製した。作製した美容液を上記と同様に評価したところ、本実施例の美容液は、実施例1〜5と同様に、べたつき・ヌルつきの点で優れた使用性を示し、保存安定性が高いことが分かった。
【0046】
【表4】

【0047】
実施例8(乳液)
表5に示す組成の乳液を、油相(A)と水相(B)をそれぞれ80℃に加熱溶解させた後、油相(A)を水相(B)に加え、乳化機で乳化し、次に乳化物を冷却することによって作製した。作製した乳液を上記と同様に評価したところ、本実施例の乳液は、べたつき・ヌルつきの点で優れた使用性を示し、保存安定性が高いことが分かった。
【0048】
【表5】

【0049】
上記実施例6〜8で使用した香料の組成を表6に示す。
【0050】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明により、界面活性剤、油剤及び高分子由来のべたつき・ヌルつき感のない使用性に優れた、且つ保存安定性にも優れた水中油型乳化皮膚化粧料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(d)成分を含有する水中油型乳化皮膚化粧料であって、(a)成分と(b)成分の含有量の比(a):(b)が7:1〜1:2、水中油型乳化皮膚化粧料の総量に対する(a)成分と(b)成分の合計含有量が0.3〜10質量%、総油剤量に対する(c)成分の含有量が20質量%以上である水中油型乳化皮膚化粧料。
(a)エチレンオキサイド(EO)付加モル数が20〜100で、HLBが10以上のポリオキシエチレン(POE)付加型ノニオン界面活性剤、
(b)HLBが6以下のノニオン界面活性剤、
(c)25℃における動粘度が1×10-52/s(10cSt)以下の低粘度シリコーン油、
(d)架橋型メチルポリシロキサン
【請求項2】
(a)成分がPOE硬化ヒマシ油、POEソルビタン脂肪酸エステル及びPOEグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項1記載の水中油型乳化皮膚化粧料。
【請求項3】
(b)成分がグリセリン脂肪酸エステルである、請求項1又は2記載の水中油型乳化皮膚化粧料。

【公開番号】特開2011−126810(P2011−126810A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286024(P2009−286024)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】