説明

水中油型乳化組成物の製造方法

【課題】 強いせん断力を加えることなく、多量の油性成分を配合でき、広い温度範囲で安定であって、かつ透明または半透明の乳化組成物を安価に、簡便に製造する方法を提供すること。
【解決手段】 (A)炭素数10〜30の疎水鎖を有するアミン化合物、(B)多価アルコール、及び(C)油性成分を混合して透過度80%以上の液体を調製し、これと(D)酸、及び水とを混合する水中油型乳化組成物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強いせん断力を加えることなく、油性成分を多量に配合できる、広い温度範囲で安定な透明性の高い水中油型乳化組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年化粧料では、外観的に透明又は半透明の製剤が好まれる傾向にあるが、油性成分を透明に配合する方法として、界面活性剤のミセル内に油性成分を可溶化する方法がある。しかしながら、可溶化される油性成分の量は極くわずかであり、油性成分の機能を発揮させるには充分な量ではない。
この点を解決したのが、マイクロエマルションを利用した手法である。マイクロエマルションは油の粒子径が10〜100nmの水性分散系であり、通常はミセルが膨張した熱力学的に安定な可溶化系と考えられるが、本明細書ではエマルションの粒子が小さくなったものも包含するものとする。
【0003】
従来知られているマイクロエマルションは、次のようなものである。第一はポリオキシエチレン鎖を有する非イオン性界面活性剤と油を用いて得られるもの(例えば、非特許文献1参照)、第二は特定のアニオン性界面活性剤とオクタノール等のコサーファクタントとを組み合わせた乳化剤系を用いるもの、第三は特定のアニオン性界面活性剤と親油性非イオン性界面活性剤,あるいはイオン性界面活性剤と親油性非イオン性界面活性剤に電解質を加えた乳化剤系を用いるものである(例えば、特許文献1又は2参照)。
上記第一のマイクロエマルションは、非イオン性界面活性剤の曇点の手前で、油性成分の可溶化量が急激に増大する領域を利用したものである。しかし、ポリオキシエチレン鎖を有する非イオン性界面活性剤は温度によってHLB(親水−親油バランス)が大きく変わり、例えば高温(40〜50℃程度)で親油化の傾向を帯び、可溶化能が減退するため、耐温性(高温又は低温でのエマルションの安定性)を得るには過剰量の界面活性剤を必要とする。
第二及び第三のマイクロエマルションは、上記の各組成の中から系のHLB(親水−親油バランス)が釣り合った狭い比率の範囲で油性成分の可溶化量が急激に増大する領域を利用しようとするものであり、広い発現温度領域が得られる。しかしながら、他の水性成分や油性成分の影響を受けるため、HLBを釣り合わせることが難しく、調製が困難である。
一方、高圧乳化機を用いて、強いせん断力で油性成分を多量に配合した乳化組成物を得る方法があるが、調製に専用の装置が必要であり、処理能力が低く、生産コストがかかる等の問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−128311号公報
【特許文献2】特開昭58−131127号公報
【非特許文献1】篠田耕三著、「溶液と溶解度」、丸善、1991年、p.209−225
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、強いせん断力を加えることなく、多量の油性成分を配合できる、広い温度範囲で安定な透明または半透明の乳化組成物を安価に、簡便に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、特定のアミン化合物、多価アルコール及び油性成分から透過度80%以上の液体を調製し、これに酸又は酸水溶液を加えて該アミン化合物をイオン性界面活性剤に変化させることで広い温度範囲で安定な透明または半透明の水中油型乳化組成物を製造する新規な乳化組成物の製造方法を発明し、前記問題点を解決するための手段としたものである。
すなわち、本発明は、(A)炭素数10〜30の疎水鎖を有するアミン化合物、(B)多価アルコール、及び(C)油性成分を混合して透過度80%以上の液体を調製し、これと(D)酸、及び水とを混合する水中油型乳化組成物の製造方法を提供するものである。ここで、透過度80%以上の液体とは、紫外可視吸光光度計により評価でき、セル長1cm、波長550nmの光の透過率が80%以上であることをいう。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、強いせん断力を加えることなく、多量の油性成分を配合できる、広い温度範囲で安定な水中油型乳化組成物を安価に、かつ簡便に製造することができる。しかも、本方法によれば、一般に好まれる透明または半透明の水中油型乳化組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の水中油型乳化組成物の製造方法は、まず(A)炭素数10〜30の疎水鎖を有するアミン化合物、(B)多価アルコール、及び(C)油性成分を混合して透過度80%以上の液体を調製する点に特徴がある。該透過度80%以上の液体を調製するに際しては、適宜加熱してもよく、通常は60〜85℃の加温下で混合することが好ましい。特に(A)〜(C)成分に固体状のものを含む場合には、各成分の融点以上に加温することが好ましい。なお、ここで透過度80%以上の液体とはゲルも包含される。
本発明で用いる(A)炭素数10〜30の疎水鎖を有するアミン化合物における疎水鎖は特に限定されず、例えば直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基などが好適に挙げられ、特に分岐を有する炭化水素基、及び不飽和の炭化水素基が好ましい。また該疎水鎖には、酸素、硫黄、窒素原子などを含有していてもよい。
より具体的には、例えば下記一般式(I)で示されるアルキルアミン、下記一般式(II)で示される脂肪族アミドアミン、下記一般式(III)で示されるスフィンゴシン類などが好適に挙げられる。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
上記一般式(I)中、R1は炭素数10〜30の炭化水素基であって、置換基を有していてもよい。R2及びR3はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R2とR3はそれぞれ同一でも異なってもよい。一般式(I)で示されるアルキルアミンの具体例としては、モノオレイルアミン、トリラウリルアミンなどが挙げられる。
次に、上記一般式(II)中、R4は炭素数10〜30の炭化水素基であって、置換基を有していてもよい。R5及びR6はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R5とR6はそれぞれ同一でも異なってもよい。mは2〜5の数を示す。一般式(II)で示される脂肪族アミドアミンの具体例としては、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドなどが挙げられる。
また、上記一般式(III)中、R7はヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Yはメチレン基、メチン基又は酸素原子のいずれかを示し;X1、X2、及びX3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Yがメチン基の時、X1とX2のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X4がオキソ基を形成する時、X3は存在しない。);R8及びR9は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;a個のRは各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;aは2又は3の数を示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す。
一般式(III)で示されるスフィンゴシン類の具体例としては、スフィンゴシン,フィトスフィンゴシンなどが挙げられる。
【0013】
一般式(I)〜(III)で表されるアミン化合物のうち、一般式(III)で表されるスフィンゴシン類が感触の点で好ましく、多量の油剤を透明に配合できる点で効果的である1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノールが特に好ましい。
(A)成分の含有量は、透明又は半透明な水中油型乳化組成物が得られる点から、水中油型乳化組成物に対して、0.01〜5質量%の範囲が好ましい。
【0014】
次に、(B)成分である多価アルコールとは、分子内に2個以上の水酸基を有するアルコールをいい、分子内にメチル基を有するものと、有さないものに分類される。具体的には、分子内にメチル基を有するものとして、プロピレングリコール,1,3-ブチレングリコール,ジプロピレングリコール,ポリオキシエチレンメチルグルコースなど、分子内にメチル基を有さないものとして、エチレングリコール,グリセリン,ジグリセリン,ポリエチレングリコール,ポリグリセリン,ソルビトール,マルチトール,ソルビタン,グルコース,フルクトース,シュクロース,マルトースなどが挙げられる。簡便に透過度80%以上の液体を調製するには、メチル基を有する群および有さない群からそれぞれ選ばれる多価アルコールを組み合わせることが好ましく、特にはジプロピレングリコールとグリセリンの組み合わせが効果的である。
【0015】
(B)成分の含有量としては、透明又は半透明な水中油型乳化組成物が得られる点から、水中油型乳化組成物に対して、0.0003〜70質量%の範囲が好ましく、さらには0.4〜30質量%の範囲が好ましい。
また、(B)成分の含有量は(A)成分の含有量に対して((B)成分/(A)成分の質量比として)、(A)成分を十分に溶解できる点から、3以上が好ましく、さらには3〜100の範囲、特には4〜70の範囲であることが好ましい。なお、(B)多価アルコールは、(A)〜(C)成分を混合して透過度80%以上の液体を調製する段階で混合されるほか、(D)酸、及び水を混合する際に溶媒の一部として、含有させることができる。また(D)成分混合後、(B)成分の一部を単独で添加し、最終的に乳化組成物中の(B)成分の含有量を制御することもできる。
【0016】
本発明における(C)油性成分としては特に限定されず、例えば、流動パラフィン,スクワラン,n−ヘキサデカン,シクロヘキサンなどの炭化水素油;ジオクチルエーテル,セチルジメチルブチルエーテル,エチレングリコールオクチルエーテル,エチレングリコールジオクチルエーテル,グリセロールモノオレイルエーテルなどのエーテル油;ミリスチン酸オクチルドデシル,パルミチン酸イソプロピル,ステアリン酸ブチル,ミリスチン酸ミリスチル,ミリスチン酸イソプロピル,アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル,セバチン酸ジイソプロピル,ジカプリン酸ネオペンチルグリコール,トリオクタノイン等のエステル油;セチルアルコール,ステアリルアルコール,イソステアリルアルコール等の飽和高級アルコール;オレイルアルコール,ラノリンアルコールなどの不飽和高級アルコール;エイコセン酸,イソミリスチン酸,カプリン酸等の高級脂肪酸;オリーブ油などの植物油;ジメチルポリシロキサン,環状ジメチルポリシロキサン,メチルフェニルポリシロキサン,アミノ変性シリコーン,エポキシ変性シリコーン,カルボキシ変性シリコーン,アルコール変性シリコーン,アルキル変性シリコーン,ポリエーテル変性シリコーン,フッ素変性シリコーンなどのシリコーン油;パーフルオロアルキルエチルリン酸,パーフルオロアルキルポリオキシエチレンリン酸,パーフルオロポリエーテル,ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系油;コレステロール,フィトステロールなどのステロール類;トコフェロール,酢酸トコフェロール,グリチルリチン酸ステアリルなどの薬効剤などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、炭化水素油、エーテル油が挙げられ、具体的には、スクワランやセチルジメチルブチルエーテルが挙げられる。
【0017】
(C)成分の含有量としては、透明又は半透明な水中油型乳化組成物が得られる点から、水中油型乳化組成物に対して、0.0001〜40質量%の範囲が好ましく、さらには0.01〜20質量%の範囲が好ましい。また、透明又は半透明な乳化組成物が得られる点から、(C)成分の含有量は(A)成分の含有量に対して((C)成分/(A)成分の質量比として)、5以下が好ましく、さらには0.5〜3の範囲であることが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法は、(A)〜(C)成分を混合して透過度80%以上の液体を調製した後、これと(D)酸、及び水とを混合することを特徴とする。ここで用いる酸は、酸としての機能を有すれば特に限定されず、無機酸及び有機酸のいずれであってもよい。また、水溶性であることが好ましい。酸と水は別々に添加されてもよいが、酸は水溶液として添加されることが好ましい。
無機酸としては、リン酸,塩酸,硝酸,過塩素酸,炭酸などが挙げられ、入手及び取扱の容易さの点で、リン酸,塩酸が好ましい。有機酸としては、水への溶解性などの点から炭素数5以下の酸が好ましく、具体的には、酢酸,プロピオン酸,酪酸等のモノカルボン酸;コハク酸,フマル酸,シュウ酸,マロン酸,グルタル酸等のジカルボン酸;グリコール酸,クエン酸,乳酸,ピルビン酸,リンゴ酸,酒石酸等のオキシカルボン酸;グルタミン酸,アスパラギン酸等のアミノ酸等が挙げられる。好ましくは、電離度が1より著しく小さいと定義される弱酸、さらには、コハク酸,乳酸,グルタミン酸が好ましく、多量の油を配合できる点で、グルタミン酸が最も効果的である。
【0019】
(D)成分として加える酸の添加量は、酸の種類に応じた最適な添加量が存在するが、耐温性を得る点から、通常は、水中油型乳化組成物に対して0.00005〜20質量%の範囲であり、好ましくは0.05〜5質量%の範囲である。
また、(D)成分を添加することで水中油型乳化組成物のpHが制御されるが、(A)成分の水溶性を制御する点、及び耐温性の点から、pHは6.5以下であることが好ましく、さらには3〜6の範囲、特には3〜5.5の範囲が好ましい。
なお、(D)成分を添加するに際しては、必要に応じ加温することができ、(A)〜(C)成分により透過度80%以上の液体を調製する温度に準じて決められ、室温〜85℃、更に60〜85℃の範囲が好ましい。
さらに、必要に応じて追加して水を加えることができる。水は、混合する透過度80%以上の液体を調製する温度に準じて決められ、室温〜85℃、更に60〜85℃の範囲が好ましい。また、水には、必要に応じて任意成分を混合してもよい。
【0020】
本発明の乳化組成物は、上記成分の他に、必要に応じて以下の任意成分を適宜配合できる。グリシンベタイン,尿素,中性アミノ酸,塩基性アミノ酸などの保湿剤;メタノール,エタノール等の一価アルコール;塩化ジメチルジステアリルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤;カルボキシビニルポリマー,アルギン酸ナトリウム,キサンタンガム,カチオン化グアーガム,等の増粘剤;セルロースパウダー,ナイロンパウダー,架橋型シリコーン末,架橋型メチルポリシロキサン等の有機粉体;無水シリカ,酸化亜鉛,酸化チタンなどの無機粉体;メントール,カンファー等の清涼剤等の他、植物エキス,pH緩衝剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,防腐剤,香料,殺菌剤,色素等である。
【0021】
本発明において、上記必要に応じて添加し得る任意成分は、通常(D)成分に混合して配合されるか、又は(D)成分を配合した後の乳化組成物に単独で、又は水に溶解して配合されるが、(A)〜(C)成分を混合して得られる透過度80%以上の液体中にも、上記任意成分を含有させることができる。また、(A)〜(C)成分を混合して得られる透過度80%以上の液体中には、透過度80%以上に保つ範囲で水を含むことができる。
【0022】
本発明の製造方法によって得られる水中油型乳化組成物は、透明又は半透明の外観を有する点から、分散粒子の平均粒径が微細であることが好ましい。具体的には、分散粒子の平均粒径が0.01〜0.2μmの範囲が好ましく、さらには0.03〜0.15μmの範囲が好ましい。なお、ここでいう平均粒径とはレーザー回折/散乱法にて測定した値であって、散乱光強度分布による中位粒径(D50)をいう。
また、本発明の製造方法によって得られる水中油型乳化組成物は、強いせん断力を加えることなく、プロペラ攪拌機などの通常の乳化機を用いて、油性成分を多量に配合できるものであるが、所望により、さらに強力なせん断力を与えうる乳化機、例えば高圧ホモジナイザーなどを使用することもできる。
【0023】
本発明の製造方法によれば、分散粒子の平均粒径が微細であって、外観が高い透明性を呈する安定なマイクロエマルションを製造することができる。ここで、透明とは、紫外可視吸光光度計により評価でき、セル長1cm、波長550nmの光の透過率が60%以上、半透明とは、光の透過率が20%以上であることをいう。
【実施例】
【0024】
評価方法
(1)外観の評価;(D)成分を添加する前については、紫外可視吸光光度計(島津製作所製:UV-160)を使用し、1cmセル中で波長550nmの光の透過率を測定することにより評価した。また、(D)成分を添加して乳化組成物を製造した直後の外観を肉眼により判定した。
(2)安定性評価;50℃、室温、−5℃に1週間及び4週間放置した後の外観を肉眼により判定した。評価基準は以下のとおりである。
○:いずれの温度でも安定性が良く、乳化分離が認められなかった。
△:何れかの温度で、外観上の変化が認められた。
×:何れかの温度で乳化分離が認められた。
(3)透明性評価;紫外可視吸光光度計(島津製作所製:UV-160)を使用し、1cmセル中で波長550nmの光の透過率を測定することにより評価した。
(4)分散粒子の平均粒径(D50);レーザー回折/散乱式粒度分布測定機(堀場製作所製「HORIBA−500」)を用いて測定した。
(5)pHの測定;(A)成分の量が0.2質量%となるように精製水で希釈した後、20℃にてフタル酸塩標準液で補正後、HORIBA pH METER F-22で測定した。
【0025】
実施例1〜6
第1表に示す(A)、(B)及び(C)成分を300mlビーカーに入れ、80℃にて加熱混合し、溶解して透過度80%以上の液体を得た。これに、プロペラ攪拌(300rpm)下で80℃に加温した(D)成分を加え、転相、乳化した。なお、(B)成分には多価アルコールであるグリセリンを86%含む水溶液を用いたが、必要に応じて、透過度80%以上の液体を得る際、及び(D)成分を加える際に分けて加えた。その後精製水を加え、25℃まで冷却して水中油型乳化組成物を製造した。上記評価方法にて評価した結果を第1表に示す。
【0026】
比較例1
実施例4と同様の配合であり、(B)成分と(D)成分の添加順序を逆転させたこと以外は実施例4と同様にして乳化組成物を製造した。すなわち、(A)、(B)及び(C)成分を80℃にて加熱混合するところを、(B)成分の代わりに(D)成分を用い、また後に(D)成分を添加するところを(B)成分に代えたこと以外は実施例4と同様にして乳化組成物を製造した。評価結果を第1表に示す。
【0027】
比較例2
実施例4と同様の配合であるが、(A)成分を最初に添加せず、(D)成分と同時に後から添加したこと以外は実施例4と同様にして乳化組成物を製造した。すなわち、(A)、(B)及び(C)成分を80℃にて加熱混合するところを、(B)及び(C)成分のみを加熱混合し、後に(D)成分を添加するところを(A)成分及び(D)成分を添加すること以外は実施例4と同様にして乳化組成物を製造した。評価結果を第1表に示す。
【0028】
【表1】

*1 透過度80%以上の液体を得る際に加える。
*2 (D)成分と同時に加える。
【0029】
第1表に示すように、本発明の実施例1〜6で製造した水中油型乳化組成物は、いずれも透明な外観を示し、安定性が高いことがわかる。一方、同様の配合組成を用いた場合であっても、添加順序が異なる場合には、透明性及び安定性が低く、本発明の効果を達成し得ないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の製造方法によれば、強いせん断力を加えることなく、多量の油性成分を配合でき、広い温度範囲で安定であって、かつ透明または半透明の乳化組成物を安価に、簡便に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数10〜30の疎水鎖を有するアミン化合物、(B)多価アルコール、及び(C)油性成分を混合して透過度80%以上の液体を調製し、これと(D)酸、及び水とを混合する水中油型乳化組成物の製造方法。
【請求項2】
(A)アミン化合物の疎水鎖が、分岐及び/又は不飽和部分を有する請求項1記載の水中油型乳化組成物の製造方法。
【請求項3】
(A)アミン化合物がスフィンゴシン類である請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物の製造方法。
【請求項4】
(B)成分がメチル基を有する多価アルコールを含む請求項1〜3のいずれかに記載の水中油型乳化組成物の製造方法。


【公開番号】特開2006−281038(P2006−281038A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101893(P2005−101893)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】