説明

水中油型乳化組成物

【課題】粉体の分散安定性、乳化安定性及び使用感に優れた水中油型乳化組成物を提供する。
【解決手段】油相中に、疎水性粉体及び/又は疎水化処理粉体と、下記式で表わされる基を有するリジン誘導体変性シリコーンと、シリコーン油とを含有することを特徴とする油中水型乳化組成物。


(式中、Rは炭素数2〜30のアルキル基を表し、n及びmは1〜20の整数を表す。)リジン誘導体変性シリコーンを、油相中0.1〜20質量%含むことが好適である。また、シリコーン油及び/又はシリコーン油以外の極性油を、油相中50質量%以上含むことが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型乳化組成物、特にその使用感、粉体の分散性、乳化安定性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化チタンや酸化亜鉛等の無機粉体を配合した各種の化粧料が汎用されている。これらの化粧料の基剤としては、主に油中水型乳化組成物もしくは粉末化粧料が使用されているが、油感や粉末感が強く良好な使用感が得られないといった場合が多い。これに対し水中油型乳化組成物は、みずみずしい使用感をもつことから乳液、クリーム、乳化型ファンデーション等の化粧料に用いられている。
【0003】
また、酸化チタンや酸化亜鉛等の無機粉体表面を疎水化処理して得た疎水化処理粉体を水中油型乳化組成物に配合した技術が開発されている。このような疎水化処理粉体は肌へ塗布した後の耐水性が高く、化粧もちがよいことから、これを水中油型乳化組成物中に分散することで、塗布時の良好な使用感と共に塗布後の特性にも優れた組成物が得られる。
【0004】
しかしながら、無機粉体を配合した水中油型乳化組成物の場合には、粉末が凝集してしまうという問題があり、粉末を均一に分散させる必要性が生じていた。例えば、紫外線防止機能を付与する日焼け止め化粧料の場合には、粉末が凝集したままであると、紫外線防止効果低下の要因、また使用感触が異なる等、様々な問題があった。そこで、酸化チタンや酸化亜鉛等の無機粉体表面を疎水化処理して得た疎水化処理粉体を水中油型乳化組成物に配合した技術が開発されているが、疎水化処理粉体の分散性、及び乳化安定性が十分ではなかった。また、使用感触としては、使用後しっとりした感触は得られるものの、べたつき感を生じてしまうという問題点があった。
【0005】
これらの問題点を解決するために、経時や温度変化等に起因する乳化粒子の合一や粉体微粒子の凝集、沈降を防止して分散安定性を付与する技術(例えば、特許文献1,2参照)が報告されているが、これらの技術によっても、依然、疎水化処理粉体の分散安定性、乳化安定性、さらには使用感触の点で充分なものであるとはいえない。特に、疎水化処理微粒子二酸化チタンにおいては、紫外線防止能を有していることから、日焼け止め化粧料等に多量に配合することが望まれているが、多量に配合した際の分散安定性、及び乳化安定性を満足することは非常に困難であった。
【特許文献1】特公平7−94366号公報
【特許文献2】特開平8−310940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、良好な使用感と共に優れた分散安定性を両立する水中油型乳化組成物を得る技術にはさらに改良の余地がある。
本発明は前記従来技術の課題に鑑み為されたものであり、その目的は良好な使用感と共に優れた分散安定性をもつ水中油型乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、疎水化処理粉体と、特定構造を有するリジン誘導体変性シリコーンと、シリコーン油とを水中油型乳化組成物中に配合することにより、使用感、粉体の分散安定性、及び乳化安定性に優れ、特に疎水化処理酸化チタン又は疎水化処理酸化亜鉛を配合した場合の粉体の分散安定性及び乳化安定性が著しく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかる水中油型乳化組成物は、下記一般式(I)〜(III)のいずれかで表されるリジン誘導体変性シリコーンと、シリコーン油を含有することを特徴とするものである。
【化1】

(式(I)〜(III)中、R及びRは互いに同一でも異なっても良く、下記式(IV)で表される基を表し、xは1〜900の整数を表す。)
【化2】

(式(IV)中、Rは炭素数2〜30のアルキル基を表し、n及びmは1〜20の整数を表す。)
【0009】
前記組成物において、上記一般式(I)〜(III)のいずれかで表されるリジン誘導体変性シリコーンを、油相中0.1〜20質量%含むことが好適である。
前記組成物において、シリコーン油及び/又はシリコーン油以外の極性油を、油相中50質量%以上含むことが好適である。
前記組成物において、前記疎水化処理粉体として疎水化処理微粒子二酸化チタン又は疎水化処理微粒子酸化亜鉛を含有することが好適である。
【0010】
また、これらの前記組成物において、水溶性増粘剤を含有することが好適である。さらに、水溶性増粘剤としては、サクシノグリカン、キサンタンガム及びアクリルアミド系共重合体から選択される1種又は2種以上の増粘剤を配合することにより、粉体の分散安定性がさらに向上すると共に経時による乳化粒子の沈降やクリーミングを改善することができる。
【0011】
また、これらの前記組成物において、乳化剤および乳化助剤を含有することが好適である。さらに、乳化助剤としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチンから選択される1種又は2種以上の乳化助剤を配合することが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる水中油型乳化組成物によれば、疎水化処理粉体と、特定構造のリジン誘導体変性シリコーンと、シリコーン油を含有していることにより、使用感、粉体の分散安定性及び乳化安定性に優れており、特に疎水化処理酸化チタン又は疎水化処理酸化亜鉛を共に配合した場合の粉体の分散安定性及び乳化安定性が著しく改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の水中油型乳化組成物は、水相中に油相が乳化分散し、さらに該油相中に疎水化処理粉体が分散した構造をもつため、塗布時に粉感が少なく、塗布後の肌上での分散状態がよい。
以下、本発明について具体例を挙げることにより、さらに詳細に説明を行なうが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
<リジン誘導体変性シリコーン>
本発明におけるリジン誘導体変性シリコーンは、下記一般式(I)〜(III)で表される。
【化3】

(式(I)〜(III)中、R及びRは互いに同一でも異なっても良く、下記式(IV)で表される基を表し、xは1〜900の整数を表す。)
【化4】

(式(IV)中、Rは炭素数2〜30のアルキル基を表し、n及びmは1〜20の整数を表す。)
【0014】
上記化合物のうち、特に好ましい化合物は一般式(I)及び(II)の構造において、xが50〜200、n及びmが10、Rがエチル基もしくはイソブチル基である化合物である。
具体的には下記式(V)〜(VIII)で表される構造を有する化合物である。
【化5】

【0015】
本発明において、上記一般式(I)〜(III)で表されるリジン誘導体変性シリコーンの配合量は、油相中0.1〜20質量%、さらには0.1〜10質量%であることが好適である。配合量が0.1質量%未満または20質量%を超えると、乳化安定性、粉体の分散安定性が悪いことがある。また、20質量%を超えると使用感触が悪いことがあり、かつ製剤処方上好ましくない。
【0016】
<シリコーン油・極性油>
上記油相成分として用いられるシリコーン油としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、エチルフェニルポリシロキサン等の鎖状シリコーン油や、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン等の環状シリコーン油等が例示される。これらシリコーン油は1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
また、上記油相成分として用いられるシリコーン油以外の極性油としては、通常化粧品に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば合成、天然のエステル油、特定の紫外線吸収剤等が挙げられる。
合成エステル油としては、例えばミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−へプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2−へプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチルが挙げられる。
【0018】
天然系のエステル油としては、例えばアボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリンが挙げられる。
【0019】
極性油としての紫外線吸収剤としては、例えばオクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチルメトキシシンナメート、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート等の桂皮酸系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0020】
本発明の組成物は、シリコーン油及び/又はシリコーン油以外の極性油を、油相中50質量%以上含むことが好ましい。50質量%未満であると、粉末の分散安定性、乳化安定性が悪くなることがある。
また、油相には、シリコーン油や極性油以外の他の油相成分として、油脂、ロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール等から選ばれる任意の成分を配合することができ、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されない。例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、オゾケライト、プリスタン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等の液状、半固体状(グリース状)、又は固体炭化水素類等の非極性油の配合も可能である。なお、本発明の水中油型乳化組成物における油相の総含有量は、特に限定されるものではないが、組成物に対して5〜60質量%程度であり、好ましくは10〜35質量%である。油相が5質量%程度より少ないと、外用剤として用いた場合の使用性を良好にすることが困難であり、一方で60質量%を超えると、経時での乳化安定性が劣ることが多くなる。
【0021】
<疎水性粉体及び/又は疎水化処理粉体>
油相中に分散させる疎水性粉体および/または疎水化処理粉体は、無機粉体粒子の表面を例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類、デキストリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、金属石鹸、アルキルリン酸エーテル、フッ素化合物、またはスクワラン、パラフィン等の炭化水素類で、溶媒を使用する湿式法、気相法、メカノケミカル法等により疎水化処理したものであり、その平均粒子径は油相である乳化粒子のそれより小さいことが必要である。特に、粉体を紫外線散乱剤として使用する場合には湿式分散機で破砕後の平均粒子径が100nm以下のものが好ましい。疎水化処理する無機粉体粒子としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、雲母チタン、黒酸化鉄、黄酸化鉄、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム等が挙げられる。
また、疎水性粉体および/または疎水化処理粉体としては、あらかじめ疎水化処理されたものだけではなく工程中で疎水化処理されたものも含む。
【0022】
なお、本発明の水中油型乳化組成物において疎水化処理粉体を配合する場合には、まず、油相を構成する油分中に疎水化処理粉体、リジン誘導体変性シリコーン、シリコーン油を予め配合して、ビーズミル等の高い破砕力をもつ湿式分散機で粉体を微粉砕し、粉体分散液を得る。または、油相を構成する油分中に疎水化処理粉体、シリコーン油を配合して、ビーズミル等の高い破砕力をもつ湿式分散機で粉体を微粉砕したのちリジン誘導体変性シリコーンを配合し、粉体分散液を得る。得られた粉体分散液を、水相とホモミキサーで混合、乳化する。この際、生成する乳化粒子よりも大きい粒子径をもつ粉体粒子が存在すると、ホモミキサー処理により粉体の一部が油相から出て凝集物を形成してしまうので、粉体の平均粒子径は油相のそれより小さくする必要があるが、例えばビーズミルを使用する場合には、分散液のミルへのパス回数を増やすことで破砕粉末の粒子径を十分小さくし、乳化粒子径よりも十分小さい破砕粉末を得ることができる。
【0023】
<水溶性増粘剤>
本発明にかかる水中油型乳化組成物において、水溶性増粘剤、特にサクシノグリカン、キサンタンガムまたはアクリルアミド系共重合体などの耐塩性を有する水溶性増粘剤を配合することにより、経時による乳化油滴の沈降、クリーミングに対する安定性、さらには粉体の凝集に対する安定性が改善される。例えば、ポリアクリル酸等の一般的な増粘剤を使用した場合には、無機粉体微粒子から水相中へと経時的に徐々に溶出する塩が増粘剤に作用し、粘度を低下させてしまう場合がある。これに対して、サクシノグリカン等の耐塩性に優れた増粘剤を使用した場合には、無機粉体から溶出する塩による影響を受けず、このため、長期間にわたって、粉体の凝集や乳化粒子の沈降を防ぐものと考えられる。このような水溶性増粘剤、好ましくは耐塩性を有する水溶性増粘剤の配合量としては、組成物全量に対して0.1〜1質量%が好ましい。0.1質量%未満であると配合による効果が十分でなく、1質量%を超えるとよれが生じるなど使用感が悪くなることがある。
【0024】
また、前記耐塩性を有する水溶性増粘剤として、温度変化に対して保持力が大きく、大きな降伏値をもつことから、サクシノグリカンを用いることが特に好ましく、粉っぽさがなく、みずみずしい使用感を持つなどの使用性の効果に優れている。サクシノグリカンは、微生物に由来する多糖類の一種であり、より具体的にはガラクトース及びグルコースから誘導される糖単位に加え、コハク酸及びピルビン酸並びに随意成分としての酢酸、又はこれらの酸の塩から誘導される単位を含む微生物に由来する多糖類を意味する。
【0025】
サクシノグリカンは、より具体的には、平均分子量が約600万の以下の構造式を有するガラクトース単位:1,グルコース単位:7,コハク酸単位:0.8及びピルビン酸単位:1に、随意成分である酢酸単位を含むことのある下記構造式で表される水溶性高分子である。
【化6】

(式中、Glucはグルコース単位を、Galacはガラクトース単位を表す。また.括弧内の表示は糖単位同士の結合様式を表す。例えば(β1,4)は,β1−4結合を表す。)
【0026】
このサクシノグリカンの供給源となる微生物としては、例えばシュードモナス属、リゾビウム属、アルカリゲネス属又はアグロバクテリウム属に属する細菌を挙げることができる。これらの細菌の中でも、アグロバクテリウム属に属する細菌であるアグロバクテリウム・ツメファシエンスI−736〔ブタペスト条約に従い1988年3月1日に微生物培養締約国収集機関(CNCM)に寄託され、I−736の番号で公に入手し得る。〕が特にサクシノグリカンの供給源として好ましい。
【0027】
サクシノグリカンは、これらの微生物を培地中で培養することによって製造することができる。より具体的には、概ねグルコース、蔗糖、デンプンの加水分解物等の炭素源;カゼイン、カゼイネート、野菜粉末、酵母エキス、コーンスティープリカー(CSL)等の有機窒素源;金属の硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩等の無機塩類や随意微量元素等を含む培地で上記の微生物を培養することによって製造することができる。
【0028】
本発明にかかる水中油型乳化組成物中に、以上のようにして製造したサクシノグリカンをそのまま配合し得ることは勿論、必要に応じて酸分解、アルカリ分解、酵素分解、超音波処理等の分解処理物も同様に配合することができる。また、サクシノグリカンを増粘剤として配合した場合、場合によっては組成物を肌へ塗布した際に粉体のよれを生じることがある。これを改善するためには、保湿剤としてダイナマイトグリセリンを併用することが特に好適であり、粉体のよれをなくして使用感触を改善することができる。
【0029】
またアクリルアミド系共重合体としては、ビニルピロリドン/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、ジメチルアクリルアミド/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸アミド/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、ポリアクリル酸アミドとポリアクリル酸ナトリウムの混合物、アクリル酸ナトリウム/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリルアミド/アクリル酸アンモニウム共重合体、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体が挙げられる。
【0030】
<乳化剤>
本発明にかかる水中油型乳化組成物に用いる乳化剤としては、特に限定されるものではないが、油相中への溶解性が低く温度安定性が良いことから、親水性界面活性剤が好ましく、特に総HLBが10以上となる1種または2種以上の界面活性剤から構成されるものが好適である。具体的には、例えば、グリセリン又はポリグリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、POE脂肪酸エステル類、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、POEヒマシ油又は硬化ヒマシ油誘導体、POE蜜ロウ・ラノリン誘導体、アルカノールアミド類、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル類、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド等から選択される1種または2種以上を配合することができる。乳化剤の配合量としては、組成物の総量に対して0.5〜5質量%が好ましい。
【0031】
<カルボキシメチルセルロース等の乳化助剤>
また、本発明にかかる水中油型乳化組成物の温度安定性、粉体の分散安定性をさらに改善するために、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチンから選択される1種または2種以上を乳化助剤として0.1〜1.0質量%配合することが好適である。0.1質量%未満では配合による効果が充分でなく、1.0質量%を超えると使用感触が悪くなる傾向がある。
【0032】
本発明の水中油型乳化組成物には上記成分の他に本発明の効果を損なわない範囲において、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合し、常法により製造することが出来る。
保湿剤としては、例えば、グリセリン、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、アミノ酸、核酸、コラーゲン、エラスチン等のタンパク質、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類等が挙げられる。
【0033】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、〔4−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−3−メチルブチル〕−3,4,5,−トリメトキシケイ皮酸エステル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、ビス(レゾルシニル)トリアジン、2,4−ビス[{4−(2−エチルヘキソロキシ)−2−ヒドロキシ}−フェニル]−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0034】
pH調整剤としては、例えば、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、dl−リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。
【0035】
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。防腐剤、抗菌剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素等が挙げられる。
【0036】
本発明にかかる水中油型乳化組成物の使用用途は、特に限定されるものではないが、従来外皮に適用されている化粧料、医薬品、及び医薬部外品に広く適用することが可能である。例えば、ローション、乳液、クリーム、ファンデーション、口紅、クレンジングフォーム、シャンプー、ヘアリンス、リップクリーム、ヘアスプレー、ムース、日焼け止めまたは日焼け用クリーム、アイライナー、マスカラ、毛髪または爪の手入れ、クリーム、ボディーメーキャップ製剤等、種々の製品に応用することが可能である。また、これらのうち、特に日焼け止め化粧料として好適に用いることができる。
【0037】
本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
最初に、本発明に用いたリジン誘導体変性シリコーンの製造方法について説明する。
【実施例1】
【0038】
[製造例1]Nε−ラウロイル−L−リジンイソブチルエステル誘導体変性シリコーン
(1)20.1gのNε−ラウロイル−L−リジンを205mlのエタノールに懸濁させた。反応溶液を氷冷後、乾燥塩化水素ガスを飽和になるまで導入し、6時間撹拌した。
次にエタノールを留去後、250mlのジイソブチルエーテルを加え、吸引濾過後、精製水300mlを加えた。この溶液に精製水70mlに溶かしたモルホリン55gを撹拌しながらゆっくりと加え、析出した白色粉末をろ別した。得られた白色粉末は、n−ヘキサンから再結晶を行い、Nε−ラウロイル−L−リジンイソブチルエステル20.1gを得た。
(2)アジ化ナトリウム45.5gに精製水150gを加え、氷水中で冷却しながら、撹拌して完全に均一な溶液とした。ここに10−ウンデセノイルクロライド101.4gとアセトン150mlを混合した溶液を少しずつ、溶液の温度が10〜15℃の範囲になるように滴下した。添加終了後、12℃付近で1時間撹拌した。
次に溶液を分液ロートに移し、水層と有機層を分けた。有機層を60℃に維持した500mlのトルエンにゆっくりと加え、温度50〜60℃の範囲で3時間撹拌を行った。トルエンを留去後、減圧蒸留することで10−ウンデセノイルイソシアネート73.2gを得た。
(3)次式

で表されるSi−H化合物92.6gと10−ウンデセノイルイソシアネート7.4gをトルエン100gに加え、85℃に加温した後、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体トルエン溶液(白金濃度0.3質量%)0.33gを加え、3時間撹拌した。トルエンと余剰のイソシアネート化合物を減圧留去した後、新たにトルエン1000gとNε−ラウロイル−L−リジンイソブチルエステル10.5gを加え、90℃で6時間撹拌した。トルエンを留去後、得られた透明ゴム状固体をヘキサン1000gに加熱溶解させ、熱ろ過した。ろ液からヘキサンを留去後、固体を得た。
次に得られた固体を細かく砕き、25℃のヘキサンでよく洗いながら吸引ろ過を行った後、減圧乾燥することで上記式(V)で表される粉末状のリジン誘導体変成シリコーン(Nε−ラウロイル−L−リジンイソブチルエステル誘導体変性シリコーン)20.3gを得た。
【0039】
本発明者らは最初に、上記合成例に準じて各種リジン誘導体変性シリコーンを合成し、当該リジン誘導体変性シリコーンを配合した水中油型乳化組成物(日焼け止めクリーム)の評価を行った。各試験例の水中油型乳化組成物の配合組成と評価結果とを下記表1に併せて示す。なお、配合量は全て質量%である。評価基準は以下の通りである。
(1):「使用後のしっとり感」
各実施例及び比較例の水中油型乳化組成物を使用した後のしっとり感の有無について、専門パネラー10名により実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
<評価基準>
◎…パネラー8名以上が、使用後しっとり感があると認めた。
○…パネラー6名以上8名未満が、使用後しっとり感があると認めた。
△…パネラー3名以上6名未満が、使用後しっとり感があると認めた。
×…パネラー3名未満が、使用後しっとり感があると認めた。
【0040】
(2):「使用後のべたつき感のなさ」
各実施例及び比較例の水中油型乳化組成物を使用した後のべたつき感の有無について、専門パネラー10名により実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
<評価基準>
◎…パネラー8名以上が、使用後べたつき感がないと認めた。
○…パネラー6名以上8名未満が、使用後べたつき感がないと認めた。
△…パネラー3名以上6名未満が、使用後べたつき感がないと認めた。
×…パネラー3名未満が、使用後べたつき感がないと認めた。
【0041】
(3):「こく」
各実施例及び比較例の水中油型乳化組成物を使用中および使用した後のこくの有無について、専門パネラー10名により実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
<評価基準>
◎…パネラー8名以上が、こくがあると認めた。
○…パネラー6名以上8名未満が、こくがあると認めた。
△…パネラー3名以上6名未満が、こくがあると認めた。
×…パネラー3名未満が、こくがあると認めた。
【0042】
(4)粉体の分散安定性
各実施例及び比較例の水中油型乳化組成物を、50mlのサンプル管(直径3cm)に入れ、室温において45rpmの速度で4時間回転させ、粉体の凝集度合いを視覚にて評価した。評価基準は以下の通りである。
<評価基準>
○:目視で粉末凝集物は観察されなかった。
△:目視でやや粉末凝集物が観察された。
×:目視で相当量の粉末凝集物が観察された。
【0043】
(5)乳化安定性
各実施例及び比較例の水中油型乳化組成物を、50mlのサンプル管(直径3cm)に入れ、室温において45rpmの速度で4時間回転させ、乳化安定性を顕微鏡にて評価した。評価基準は以下の通りである。
<評価基準>
○:顕微鏡で乳化粒子による合一も認められなかった。
△:顕微鏡で若干乳化粒子による合一が認められた。
×:顕微鏡で乳化粒子による合一が認められた。










【0044】
【表1】

(製法)
比較例1−1:油相成分(11)、(12)、(14)を混合し、ビーズミル等の高い破砕力をもつ湿式分散機で十分に疎水化処理酸化チタンを微粉砕し、粉体分散液を得る。次いで得られた粉体分散液に油相成分(15)〜(17)を加え、油相パーツとしたのち、(1)〜(10)の水相成分からなる水相に対して徐添加し、ホモミキサーで均一分散し、水中油型乳化組成物を得た。
試験例1−1:油相成分(11)〜(14)を混合し、95℃で加熱しながらビーズミル等の高い破砕力をもつ湿式分散機で十分に疎水化処理酸化チタンを微粉砕し、粉体分散液を得る。次いで得られた粉体分散液を加熱溶解し、同じく加熱した油相成分(15)〜(17)を加え、油相パーツとしたのち、(1)〜(10)の水相成分からなる水相に対して徐添加し、ホモミキサーで均一分散し、水中油型乳化組成物を得た。
試験例1−2:油相成分(11)、(12)、(14)を混合し、ビーズミル等の高い破砕力をもつ湿式分散機で十分に疎水化処理酸化チタンを微粉砕し、粉体分散液を得る。次いで得られた粉体分散液に、油相成分(13)、(15)〜(17)を加え、95℃で均一攪拌して油相パーツとしたのち、(1)〜(10)の水相成分からなる水相に対して徐添加し、ホモミキサーで均一分散し、水中油型乳化組成物を得た。
【0045】
上記表1より明らかなように、疎水化処理微粒子二酸化チタンを多量に配合した水中油型乳化組成物の系において、いずれの組成物も乳化安定性、粉末の分散安定性は良好であったが、本発明の水中油型乳化組成物(試験例1−1、1−2)は、従来の油中水型乳化組成物(比較例1−1)と比較して、しっとり感があり且つこくがあるなど、優れた使用感を有するものであった。
また、試験例1−1および1−2はともに優れた乳化安定性および粉末の分散安定性を示し、製法におけるリジン誘導体変性シリコーンの添加順序によらないことがわかる。
【0046】
<リジン誘導体変性シリコーンの配合量>
つづいて、本発明者らは、リジン誘導体変性シリコーンの好適な配合量について検討するため、リジン誘導体変性シリコーンの配合量を各種変化させた水中油型乳化組成物について、上記試験と同様にして評価を行なった。各試験例及び比較例の水中油型乳化組成物の配合組成と評価結果とを下記表2に併せて示す。
【0047】
【表2】

(製法)
油相成分(11)、(12)、(14)を混合し、ビーズミル等の高い破砕力をもつ湿式分散機で十分に疎水化処理酸化チタンを微粉砕し、粉体分散液を得る。次いで得られた粉体分散液に、油相成分(13)、(15)〜(17)を加え、95℃で均一攪拌して油相パーツとしたのち、(1)〜(10)の水相成分からなる水相に対して徐添加し、ホモミキサーで均一分散し、水中油型乳化組成物を得た。
【0048】
上記表2より、疎水化処理微粒子二酸化チタンを多量に配合した水中油型乳化組成物の系において、油相中のリジン誘導体変性シリコーンの量が0.1〜20質量%であるとき、乳化安定性、粉末の分散安定性及び使用感に優れた油中水型乳化組成物が得られた。
油相中のリジン誘導体変性シリコーンの濃度が0.1%以下である比較例2−1はしっとり感、こくなどにおいて良好な使用感触が得られない。また油相中のリジン誘導体変性シリコーンの濃度が20%以上である比較例2−2においては粉末の凝集などがみられ、乳化安定性、粉体分散性に劣ることが確認された。
【0049】
<リジン誘導体変性シリコーンの種類>
リジン誘導体変性シリコーンの適性についてさらに検討するため、上記合成例に準じて各種リジン誘導体変性シリコーンを調製し、各種リジン誘導体変性シリコーンを配合した水中油型乳化組成物について、上記試験と同様にして評価を行なった。各試験例及び比較例の水中油型乳化組成物の配合組成と評価結果とを下記表3に併せて示す。
【0050】
【表3】

(製法)
油相成分(11)、(12)、(17)を混合し、ビーズミル等の高い破砕力をもつ湿式分散機で十分に疎水化処理酸化チタンを微粉砕し、粉体分散液を得る。次いで得られた粉体分散液に、油相成分(13)〜(16)、(18)〜(20)を加え、95℃で均一攪拌して油相パーツとしたのち、(1)〜(10)の水相成分からなる水相に対して徐添加し、ホモミキサーで均一分散し、水中油型乳化組成物を得た。
【0051】
上記表3より、疎水化処理微粒子二酸化チタンを多量に配合した水中油型乳化組成物の系において、各種リジン誘導体変性シリコーンを配合することにより、乳化安定性、粉末の分散安定性及び使用感に優れた油中水型乳化組成物が得られた。
【0052】
<油性成分の配合比>
また、本発明者らは、水中油型乳化組成物に配合する油性成分について検討するため、各種油分を配合した水中油型乳化組成物について、上記試験と同様にして評価を行なった。各実施例及び比較例の水中油型乳化組成物の配合組成と評価結果とを下記表4に併せて示す。
【0053】
【表4】

(製法)
油相成分(11)、(12)、(14)を混合し、ビーズミル等の高い破砕力をもつ湿式分散機で十分に疎水化処理酸化チタンを微粉砕し、粉体分散液を得る。次いで得られた粉体分散液に、油相成分(13)、(15)〜(19)を加え、95℃で均一攪拌して油相パーツとしたのち、(1)〜(10)の水相成分からなる水相に対して徐添加し、ホモミキサーで均一分散し、水中油型乳化組成物を得た。
【0054】
上記表4より、疎水化処理微粒子二酸化チタンを多量に配合した水中油型乳化組成物の系において、シリコーン油及び/又はシリコーン油以外の極性油を、油相中50質量%以上含むとき、乳化安定性、粉末の分散安定性及び使用感に優れた油中水型乳化組成物が得られた。
シリコーン油及び/又はシリコーン油以外の極性油が油相中50質量%未満である比較例4−1および4−2においては、乳化安定性、粉末の粉体分散性に劣ることが確認された。
【0055】
<耐塩性を有する増粘剤の配合>
また、本発明者らは、水中油型皮膚外用製剤中に配合する増粘性成分について検討するため、各種増粘剤を配合した水中油型乳化組成物について、上記試験と同様にして評価を行なった。各実施例及び比較例の水中油型乳化組成物の配合組成と評価結果とを下記表5に併せて示す。
【0056】
【表5】

(製法)
油相成分(14)、(15)、(17)を混合し、ビーズミル等の高い破砕力をもつ湿式分散機で十分に疎水化処理酸化チタンを微粉砕し、粉体分散液を得る。次いで得られた粉体分散液に、油相成分(16)、(18)〜(21)を加え、95℃で均一攪拌して油相パーツとしたのち、(1)〜(13)の水相成分からなる水相に対して徐添加し、ホモミキサーで均一分散し、水中油型乳化組成物を得た。
【0057】
上記表5より、リジン誘導体変性シリコーンとともに、耐塩性に優れる増粘剤成分であるサクシノグリカン、キサンタンガム、アクリルアミドを配合した場合には、特に粉体の分散安定性及び乳化安定性に優れていた(試験例5−1〜5−3)。一方、油相にリジン誘導体変性シリコーンを配合せずに、一般的な増粘剤として汎用されているポリアクリル酸Naを増粘剤として配合した場合には、分散安定性、乳化安定性ともに劣っていた(比較例5−1)のに対し、油相にリジン誘導体変性シリコーンを配合した試験例5−4においてはやや乳化安定性が向上した。
【0058】
なお、上記結果については、油相中の無機粉体微粒子(酸化チタン)から水相中へと経時的に処理剤由来の金属イオンが溶出し、例えば、比較例5−1に用いられているポリアクリル酸のような通常の増粘剤を使用した場合には、この塩が増粘剤に対して悪影響を及ぼすため、系の粘度が低下したために乳化安定性が低下していると考えられる。これに対して、試験例5−4のように油相中にリジン誘導体変性シリコーンを配合することにより、油相の粘度が増加し、無機粉体中からの塩の溶出が抑制され、このため、長期間にわたって粉体の凝集、及び乳化粒子の沈降を防いでいるものと考えられる。
【実施例2】
【0059】
以下、本発明にかかる水中油型乳化組成物のその他の実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例2−1:サンカット水中油型乳液 (質量%)
(1)疎水化処理微粒子二酸化チタン(シリコーン処理) 12
(2)ポリオキシブチレン(42モル)トリグリセリルエーテル 2
(3)デカメチルペンタシクロシロキサン 10
(4)リジン誘導体変性シリコーン(V) 0.2
(5)パラメトキシ桂皮酸オクチル 5
(6)トリー2−エチルヘキサン酸グリセリン 3
(7)PEG−60水添ヒマシ油 2
(8)1,3−ブチレングリコール 8
(9)サクシノグリカン 0.2
(10)カルボキシメチルセルロース 0.25
(11)エタノール 3
(12)イオン交換水 残余
(製法)
(1)〜(6)を混合し、95℃で加熱しながらビーズミルで分散破砕した後、(7)〜(12)を溶解した水相に対して、ホモミキサーをかけながら添加した。
【0060】
実施例2−2:水中油型乳液ファンデーション (質量%)
(1)疎水化処理微粒子二酸化チタン(シリコーン処理) 12
(2)疎水化処理黄酸化鉄 0.8
(3)疎水化処理黒酸化鉄 0.16
(4)疎水化処理ベンガラ 0.36
(5)ポリオキシブチレン(56モル)メチルトリグリセリルエーテル 3
(6)デカメチルペンタシクロシロキサン 10
(7)リジン誘導体変性シリコーン(V) 0.3
(8)パラメトキシ桂皮酸オクチル 5
(9)ミリスチン酸オクチルドデシル 3
(10)PEG−60水添ヒマシ油 2.5
(11)ダイナマイトグリセリン 4
(12)キサンタンガム 0.3
(13)カルボキシメチルセルロース 0.3
(14)エタノール 5
(15)イオン交換水 残余
(製法)
(1)〜(6)、(8)、(9)を混合し、ビーズミルで分散破砕して得られた粉体分散液に、(7)、を加え、95℃で均一攪拌して油相パーツとしたのち、(10)〜(15)を溶解した水相に対して、ホモミキサーをかけながら添加した。
【0061】
実施例2−3:紫外線防御美白美容液 (質量%)
(1)疎水化処理微粒子二酸化チタン(シリコーン処理) 20
(2)ポリオキシブチレン(42モル)メチルトリグリセリルエーテル 3.5
(3)デカメチルペンタシクロシロキサン 10
(4)リジン誘導体変性シリコーン(VI) 0.4
(5)4−t−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン 1
(6)パラメトキシ桂皮酸オクチル 5
(7)パルミチン酸イソプロピル 4
(8)PEG−60水添ヒマシ油 3
(9)ダイナマイトグリセリン 5
(10)サクシノグルカン 0.3
(11)カルボキシメチルセルロース 0.3
(12)エタノール 4
(13)クエン酸 適量
(14)クエン酸ナトリウム 適量
(15)アスコルビン酸グリコシド 2
(16)苛性カリ 適量
(17)イオン交換水 残余
(製法)
(1)〜(3)、(5)〜(7)を混合し、ビーズミルで分散破砕して得られた粉体分散液に、(4)、を加え、95℃で均一攪拌して油相パーツとしたのち、(8)〜(17)を溶解した水相に対して、ホモミキサーをかけながら添加した。
【0062】
実施例2−4:サンカット水中油型乳液 (質量%)
(1)ステアリン酸アルミニウム処理二酸化チタン 5
(2)ステアリン酸デキストリン処理酸化亜鉛 5
(3)両末端シリコーン化ポリエチレングリコール 3
(4)リジン誘導体変性シリコーン(V) 0.2
(5)デカメチルシクロペンタシロキサン 3
(6)トリパラメトキシ桂皮酸オクチル 5
(7)PEG−60水添ヒマシ油 2
(8)ダイナマイトグリセリン 6
(9)サクシノグリカン 0.3
(10)カルボキシメチルセルロース 0.3
(11)エタノール 5
(12)イオン交換水 残余
(製法)
(1)〜(6)を混合し、95℃で加熱しながらビーズミルで分散破砕した後、(7)〜(12)を溶解した水相に対して、ホモミキサーをかけながら添加した。
【0063】
実施例2−5:水中油型乳液ファンデーション (質量%)
(1)パルミチン酸アルミニウム処理二酸化チタン 5
(2)パルミチン酸アルミニウム処理酸化亜鉛 5
(3)金属石鹸処理タルク 3
(4)アルキル変性シリコーン樹脂被覆黄酸化鉄 0.8
(5)アルキル変性シリコーン樹脂被覆黒酸化鉄 0.15
(6)アルキル変性シリコーン樹脂被覆ベンガラ 0.35
(7)両末端シリコーン化ポリグリセリルエーテル 3
(8)POE変性メチルポリシロキサン 1
(9)リジン誘導体変性シリコーン(V) 0.3
(10)デカメチルシクロペンタシロキサン 15
(11)パラメトキシ桂皮酸オクチル 5
(12)PEG−60水添ヒマシ油 2
(13)ダイナマイトグリセリン 6
(14)キサンタンガム 0.3
(15)カルボキシメチルセルロース 0.3
(16)エタノール 5
(17)イオン交換水 残余
(製法)
(1)〜(8)、(10)(11)を混合し、ビーズミルで分散破砕して得られた粉体分散液に、(9)を加え、95℃で均一攪拌して油相パーツとしたのち、(12)〜(17)を溶解した水相に対して、ホモミキサーをかけながら添加した。
以上の各実施例の化粧料はいずれもみずみずしくさっぱりとしながらもしっとり感が感じられ、べたつきがなく、こくがある優れた使用感触であり、また、粉体の分散性、乳化安定性に優れたものであった。
【0064】
以上説明したように、本発明の水中油型乳化組成物によれば、油相中に疎水化処理粉体を分散したため使用感触及び肌上への塗布後における粉体の分散性に優れた水中油型乳化組成物が得られる。
そして、特定の油相成分に対してリジン誘導体変性シリコーンを配合することにより粉体の分散安定性、乳化安定性、また使用感触にも優れた水中油型乳化組成物が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)疎水性粉体及び/又は疎水化処理粉体と、
(b)下記一般式(I)〜(III)のいずれかで表されるリジン誘導体変性シリコーンと、
(c)シリコーン油と、
を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
【化1】

(式(I)〜(III)中、R及びRは互いに同一でも異なっても良く、下記式(IV)で表される基を表し、xは1〜900の整数を表す。)
【化2】

(式(IV)中、Rは炭素数2〜30のアルキル基を表し、n及びmは1〜20の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の水中油型乳化組成物において、上記一般式(I)〜(III)のいずれかで表されるリジン誘導体変性シリコーンを、油相中0.1〜20質量%含むことを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物において、シリコーン油及び/又はシリコーン油以外の極性油を、油相中50質量%以上含むことを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の水中油型乳化組成物において、極性油としてオクチルシンナメート、オクトクリレン、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンから選択される1種又は2種以上を含むことを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の水中油型乳化組成物において、前記疎水化処理粉体が、疎水化処理微粒子二酸化チタン、又は疎水化処理微粒子酸化亜鉛であることを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の水中油型乳化組成物において、さらに水溶性増粘剤を含むことを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の水中油型乳化組成物において、さらに乳化剤および乳化助剤を含むことを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の水中油型乳化組成物において、水溶性増粘剤がサクシノグリカン、キサンタンガム及びアクリルアミド系共重合体から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項9】
請求項7に記載の水中油型乳化組成物において、乳化助剤がカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする水中油型乳化組成物。

【公開番号】特開2007−284359(P2007−284359A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110589(P2006−110589)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】